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鉱業に関するその他の法制度

II. 鉱業関連法規の概要

3. 鉱業に関するその他の法制度

(1)

環境法

鉱業活動に関しては各州に管轄権が与えられているため、環境法についても基本的には各州の環境関 連法が適用されるが、連邦政府の管轄に属するものについては連邦法が適用されることがある。

1)

連邦環境法

環境に関連する連邦法の主なものとしては、

1999

年カナダ環境保護法、カナダ水法、漁業法等があり、

以下に概要を記載する。

(i)

カナダ環境保護法(

Canadian Environmental Protection Act, 1999 - CEPA

1988

6

月に制定されたカナダ環境保護法は、その後数回の改正を経て

1999

年に現行法96が制定さ れた。持続可能な開発、汚染防止、有害物質の環境への排出の実質的排除、生態系に基づくアプロー チ、予防原則、政府間協力、全国的基準、汚染者負担原則、科学に基づく判断を主な原則として掲げ る。「CEPAを理解するためのガイド(Guide to understanding the Canadian Environemtal Protection Act)97」 にその内容が詳しく説明されている。

主な規定としては、カナダの環境管理制度、環境保護管理プロセス、既存の有害物質リスト、新規有 害物質規制、動物製品の取扱い、海洋環境と海への廃棄、有害廃棄物、調査と監視、環境監視への一 般参加などがある。

(ii)

カナダ環境影響評価法(Canadian Environmental Assessment Act - CEAA)

i)

適用

連邦法であるカナダ環境影響評価法(CEAA)98は現在改正手続きが進められており、2019年には新 法が施行されることとなっているが、それまでは現行法が適用されるため、以下に概略を説明する。

CEAA

は、物理的活動指定規則(Regulations Designating Physical Activities)99に定めるプロジェクト及 び連邦環境省が特に環境に悪影響を与える可能性があるとして指定するプロジェクトに適用される。

この規則で指定されているプロジェクトは全部で

48

プロジェクトあり、そのうち

30

プロジェクトは カナダ環境評価局(Canadian Environmental Assessment Agency)、8プロジェクトは連邦エネルギー委 員会(National Energy Board)、10プロジェクトはカナダ原子力安全委員会(Canadian Nuclear Safety

Commission)の管轄の下で環境影響評価が行われる。金属鉱山及びウラン鉱山に関わる主な活動で指

定プロジェクトに該当するものとしては以下のものが挙げられる。

A.

カナダ環境評価局管轄プロジェクト

• 野生生物生存地域又は渡り鳥保護区域内での鉱山、廃棄物処理施設等の建設、操業、解体及び 廃止

• 年間

10,000,000m

3以上の水を自然水域より別の自然水域へ迂回させることとなる構造物の建

設、操業、解体及び廃止

• 一日

3,000t

以上の生産能力を有する金属鉱山、一日

4,000t

以上の処理能力のある金属ミル、

一日

600t

以上の鉱石生産能力を有する金鉱山等、一日

3,000t

以上の生産能力のある石炭鉱山、

96 http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/c-15.31/

97 https://www.canada.ca/en/environment-climate-change/services/canadian-environmental-protection-act-registry/publications/

guide-to-understanding.html

98 http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/c-15.21/index.html

99 http://www.gazette.gc.ca/rp-pr/p2/2012/2012-07-18/html/sor-dors147-eng.html

47

一日

3,000t

以上の生産能力を有するダイヤモンド鉱山等の新規建設等

• 既存の上記鉱山等の

50%以上の拡張で拡張により上記の生産能力を超えるものとなるもの B.

カナダ原子力安全委員会管轄プロジェクト

• 既存のウラン鉱山又はウランミルの許可区域外での新規ウラン鉱山又はウランミルの建設、

操業、解体及び廃業

• 既存の上記鉱山、ミルの

50%以上の拡張

• 年間

100t

以上のウラン、トリウム、プルトニウムの処理、再処理、分離施設及びウラン、ト リウム、プルトニウムより発生する製品の生産施設

• 上記施設の

50%以上の拡張

ii)

連邦環境評価審査進行中プロジェクト

現在

SK

州内で

CEAA

に基づき環境評価審査が進行中の鉱山プロジェクトは次の

1

件のみであ る。

プロジェクト:

McClean Lake Operation

Athabasca Basin

南部の坑内掘りウラン鉱山開発

管轄当局: カナダ原子力安全委員会 審査開始時: 2009年

8

21

申請者: Cameco Corporation

iii)

カナダ環境評価法に基づく環境影響評価の種類とプロセス

CEAA

に基づく環境影響評価には次の二種類がある。

A.

管轄当局(カナダ環境評価局、連邦エネルギー委員会、又は、カナダ原子力安全委員会)による 環境影響評価

CEAA

上、管轄当局による環境評価は、審査開始後

365

日までの間に審査結果を下すこととなってい るが、環境大臣は審査開始通知より

60

日以内に審査を審査委員会に付託することができ、審査委員 会は付託後

2

年以内に結論を下さなければならない。しかし、この期間は他の管轄当局の協力を求め る期間として

3

ヶ月延長することができ、また、環境大臣の勧めにより総督は更にこれを延長するこ とができる。この期間には申請者が当局よりの要請に応えるために要する期間は含まれない。100 管轄当局による審査の流れは以下のとおりである101

1.

プロジェクト説明書(Project Description)の提出

プロジェクトが指定事業に該当する場合は、規定の内容を記載したプロジェクト説明書を管 轄当局へ提出。

2.

プロジェクト説明書の受理

3.

環境評価をが必要であるかどうかを検討中である旨及びコメント募集期間の通知をカナダ環 境評価登記所のインターネットサイト(Canadian Environment Assessment Registry Internet Site -

CEARIS)に掲載

上記の通知とともにプロジェクトの内容が掲載され、20 日間、環境への影響などに関する一

100 Basics of Environmental Assessment (Canadian Environmental Assessment Agency):

https://www.canada.ca/en/environmental-assessment-agency/services/environmental-assessments/basics-environmental-assessment.html#gen03

101 同上。

48

般よりのコメントを求める。

4.

環境評価が必要であるか否かの決定

管轄当局は通知掲載後

45

日以内に、環境評価が必要であるかどうかを決定し、

CEARIS

に結 果を掲載する。

5.

環境評価開始通知掲載

環境評価が必要であると決定された場合、管轄当局は

CEARIS

に環境評価が開始された旨を 掲載する。

6.

環境影響評価書(Environmental Impact Statement - EIS)ガイドライン案作成とコメント受付 管轄当局が作成するガイドラインに従い、申込者は、環境への影響とこれへの対応策を記載 する

EIS

ガイドライン案を作成する。

これに従い、管轄当局が

EIS

ガイドライン案を CEARISに掲載し、一般のコメントを求める。

7.

最終

EIS

ガイドライン発行

管轄当局は先住民よりのコメントを含めた一般のコメント及び連邦政府当局よりのインプッ トを検討の上、最終

EIS

ガイドラインを発行する。

8.

参加者融資申請及び決定

影響を受ける個人、非営利団体、先住民は、コメントを提出する上で必要な費用に対する管轄 当局よりの融資プログラム(Participant Funding Program)に申込むことができ、管轄当局は融 資の可否を決定する。

9.

プロジェクト申込者による環境調査の完了と

EIS

の提出

10.

管轄当局による

EIS

の形式上の要件審査

管轄当局は

EIS

が審査委員会が審査を行うのに十分な情報を記載したものであるかを審査す る。審査にあたり、管轄当局は先住民を含む一般よりのコメントを受付け、これを参考に追加 情報や更なる説明が必要な場合はこれを申請者に求める。

11.

管轄当局による

EIS

の内容審査

管轄当局は

EIS

の内容が十分なものであるか、正確なものであるかを審査する。管轄当局は 申請者に、環境への影響及び提案される影響軽減措置を理解するために説明、追加情報を求 めることがある。

12. EIS

へのコメント受付

EIS

及び

EIS

レポート(Environmental Impact Statement Report)が CEARISに掲載され、これ に対するコメントを受け付ける。

13.

申込者による

EIS

の修正及び追加情報の提出

必要に応じ、申込者は

EIS

の修正及び追加情報の提出を行う。

14.

管轄当局による環境評価報告書案(Environmental Assessment Report - EAR)の作成

管轄当局は、プロジェクトの環境への影響の可能性、緩和措置、緩和後の環境への影響、フォ ローアッププログラム等を記載する

EAR

を作成

15. EAR

へのコメント受付

16.

管轄当局による最終

EAR

の作成と環境大臣への提出

17.

プロジェクトの環境への重大な悪影響の可否決定

49

環境大臣がプロジェクトが環境へ重大な悪影響を与えると判断した場合は、カナダ総督

(Governor in Council=内閣)に最終判断を求める。

18.

環境大臣が環境評価決定書と強制執行可能な条件を発表

環境評価の決定が、環境に重大な悪影響なし、又は、環境に重大な悪影響はあるが状況に鑑み 正当化されるというものである場合は、大臣が発表する環境評価決定書中に、実施者がプロジ ェクト実施において遵守しなければならない緩和措置及びフォローアッププログラムに関す る条件が記載される。

19.

規制上の決定

許可やライセンスの発行を要するか否か等の連邦規制上の決定が必要な場合は、環境評価完 了後にのみ当該決定はなされる。

20.

緩和措置及びフォローアッププログラムの実施

環境評価決定評価書に記載される緩和措置をプロジェクト計画書に組入れ、実施する。また、

環境評価が正確なものであったか、緩和措置が効果のあるものであるかを評価するため、フォ ローアッププログラムを実施する。

B.

審査委員会(review panel)による環境評価

審査委員会による環境評価は、上記の管轄当局による環境評価より高いレベルの環境評価である。環 境大臣が審査委員会に環境評価を委ねるのが公共の利益に供すると判断する場合は、環境大臣が必要 な知識、経験、能力を有する公正な立場の個人の専門家を指名し、これら専門家より成る審査委員会 を設立しこれに審査を委ねる。

このタイプの審査においては、審査委員会は公聴会を開催し、これにより先住民を含む利害関係者が 意見、懸案事項、証拠等を提出することができる。審査委員会には証人を召喚し、証人に証拠提出を 求め、記録を作成する権限が与えられる。

申請プロジェクトが連邦政府のみならず、州政府その他の管轄当局と共同で環境影響評価をする必要 がある場合は、これら管轄当局との共同審査委員会を設立して参加管轄当局が合意書を締結の上、審 査にあたることもある。

審査委員会によるプロセスは以下のとおりである102

1~7

管轄当局による審査と同じ。

8.

審査委員会への付託

環境評価開始後

60

日以内に、大臣が環境評価を審査委員会に付託するかどうかを決定する。

決定に当たっては、以下を考慮する。

• プロジェクトが環境へ重大な悪影響を与える可能性

• プロジェクトが与える可能性のある環境への重大な悪影響に関する一般の懸案事項

• 他の管轄当局との調整

審査委員会への付託にあたり、大臣は、委員会の設立、委員会による

EIS

レポートの大臣への 提出、レポートに基づく大臣の環境評価決定についてのタイムライン(24 ヶ月以内)を設定 する。

102

Basics of Environmental Assessment

(前記)

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