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鉱業税制及び関連規制

II. 鉱業関連法規の概要

2. 鉱業税制及び関連規制

(1)

鉱業税制の概要

SK

州における鉱業収益については、原則的には、連邦所得税法(Income Tax Act - 連邦

ITA)

86、SK 州所得税法(Income Tax Act, 2000 - ITA)87、及び、SK州官有鉱物ロイヤルティ規則(Crown Mineral

Royalty Regulations)

88に基づき、連邦法人所得税、州法人所得税及び州鉱物ロイヤルティが課せられ

る。

SK

州法人所得税は、カナダ歳入局 (Canada Revenue Agency) が連邦法人所得税と一括して管理して おり、法人所得税の申告はカナダ歳入局へ一括して行う。

(2)

法人所得税(連邦

ITA)

連邦

ITA

に基づく鉱業収入に対する連邦税は、企業の収益に対する法人所得税として、その他の業種 の法人所得税と同じ税率で課せられる。SK 州法人税法も同じく企業収益に対して課せられる。2018 年度の課税率は以下のとおりである。

2-6

カナダ連邦・SK州法人所得税率89 小企業収益*1 非小企業

収益*2

製造・プロセ ス収益

投資収益

(1)

一般法人所得税率

38.0% 38.0% 38.0% 38.67%

(2)

軽減率

(10.0%) (10.0%) (10.0%) (10.0%)

(3)=(1)-(2) 28.0% 28.0% 28.0% 28.67%

(4)

小企業軽減率又は製造プロセス軽減率

(18%) - (13%) - (5)

一般税率軽減率

(0.0%) (13%) (0.0%) (0.0%) (6)

払戻可能税*3

- - - 10.67

(7)連邦法人所得税率 =(3)-(4)-(5)+(6) 10.0% 15.0 15.0 38.67

(8) SK

州法人所得税率

2.0% 12.0% 10.0% 12%

(9)

連邦・州法人税率合計

=(7)+(8) 12.0% 27.0% 25.0% 50.67%

*1: 小企業収益とは500,000C$未満をいう。

*2: 非小企業収益とは小企業収益を超える企業収益をいう。

*3: 払持可能税とは、投資収益で配当として配分しない収益に課せられる税。

探鉱活動、開発活動、生産活動を行うには、通常、初期段階でかなりの額の支出が必要であり、よっ て、これら支出に対する税務上の優遇措置が重要なポイントとなる。連邦法に基づく鉱業に対する優 遇措置としては、以下のものが挙げられる90

① 州鉱業税、ロイヤルティ控除

州に支払った鉱業税、ロイヤルティは、連邦法の法人所得税の計算上、収益より全額控除することが できる。

86 Income Tax Act (R.S.C., 1985, c.1): https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/I-3.3/index.html

87 The Income Tax Act, 2000: http://www.publications.gov.sk.ca/freelaw/documents/English/Statutes/Statutes/I2-01.pdf

88 http://www.publications.gov.sk.ca/freelaw/documents/English/Regulations/Regulations/C50-2R29.pdf

89 Corporation tax rates, Government of Canada

https://www.canada.ca/en/revenue-agency/services/tax/businesses/topics/corporations/corporation-tax-rates.html

90 Mining-Specific Tax Provisions (Natural Resources Canada): http://www.nrcan.gc.ca/mining-materials/taxation/mining-taxation-regime/8892

42

② 資本コスト控除

償却可能有形資産については、資本コスト控除(Capital Cost Allowance – CCA)として償却額の控除 が認められる。償却資産は資産の種類によりクラス分けがなされており、各クラスにより償却率が定 められている。鉱山活動を行うための資産は通常「クラス41」に分類される、このクラスの償却率は 25%となっている。

大半の資産については、取得初年度に「Half Year Rule」が適用され、適用償却率によって算出される年 間償却額の半分が限度額となるとともに、「Available-for-Use Rule」により、CCAを控除する前に当該 資産が使用可能でなければならない。

③ 加速資本コスト控除

上記の通常25%のCAAに加え、最高100%の加速資本コスト控除(Accelerated Capital Cost Allowance – ACCA)が認めらる。ACCAが認められる資産は、商業生産を開始する前に取得されたもの又は1996 年以降の大規模拡大のために取得されたもので、関連鉱山よりの総収益の5%を超える部分の投資支 出に対応するものでなければならない。ACCAは2020年までに年次控除率が暫定的に削減され、2020 年には無くなることとなっている。

表2-7 鉱山に対するACCAの経年削減率

2013-2016 2017 2018 2019 2020 2021以降

償却率 100% 90% 80% 60% 30% 0%

④ カナダ探鉱費用

カナダ探鉱費用(Canadian Exploration Expense – CEE)は、カナダにおいて鉱物資源の存在、位置、程 度、品質を決定するために費やされた費用で、次に説明するカナダ開発費用(Canadian Development

Expense - CDE)に該当しない費用をいう。2018

年まではこれには生産前活動費用(清掃、表土の除

去、立抗の沈設又は掘削、坑道の建設など、鉱山が生産活動を開始する前に、新鉱山の生産活動を開 始するために生じた費用)も含まれる。CEEは、累積カナダ探鉱費用(Cumulative CEE – CCEE)のプ ールに含め、毎年、課税所得額を上限に

CCEE

の残額全額まで控除することができる。CCEEの残額 は無期限に繰越することができる。

2-8

生産前活動費用の取扱い

201320142015201620172018年以降

CEE

対象分

100% 100% 80% 60% 30% 0%

CDE

対象分

0% 0% 20% 40% 70% 100%

⑤ カナダ開発費用

カナダ開発費用(Canadian Development Expense CDE)とは、以下の費用をいう。

• 鉱山が商業生産開始した後に発生した立抗の沈設又は掘削、主坑道その他の坑内作業のため の施設建設のための費用

• 生産前活動費用(2018年以降)

• カナダの鉱物資産に関する費用

CEEと同様、CDEは累積CDE(CCDE)のプールに含め、これより当該年中にカナダ国内の資源資産の

売却により生じた収益を差し引いたCCDEの残額の30%までを、収益の額に関わらず控除することが できる。

43

⑥ 鉱山再生資金

建物や設備の撤去、廃鉱物処理場の安定化、再緑地化等の鉱山再生活動に費やした費用(Mine Reclamation Funds)は全額が控除の対象となる。また、1994年2月22日以降に、法令で拠出が義務付け られている適格環境信託(Qualifying Environmental Trusts – QET)へ支払った拠出金も控除の対象とな る。ただし、当該信託より発生した収益、当該信託より引き出した額は課税対象となる。

⑦ フロースルー株式制度

フロースルー株式制度(Flow-Through Shares – FTS)は、カナダにおける鉱物の探鉱及び開発にかか る費用を調達するための制度で、株式発行法人が株式の対価額相当まで探鉱費用と開発費用を投じる ことができるという合意のもとに株式を発行するものである。税法上、探鉱開発費用はFTSを購入し た投資家(納税者となる個人並びに会社)の経費(費用)とみなされる。この株式に投資を行った投 資家は、当該株式への投資額全額分の所得税控除と、費用によっては更に15%の税額控除(後述)が 可能であるとともに、将来投資した会社が成長した場合は、投資に対する大きなリターンが期待でき る。FTSを発行する会社はカナダの会社である必要はないが、FTSによる費用の控除を行おうとする 個人はカナダの納税者でなければならない。CEEとCDEがこのFTSの対象とされており、FTS発行企業 の主要ビジネスが鉱業であることが前提条件となっている。

⑧ 探鉱開発税額控除

FTSを購入した個人投資家には、特定の費用に係るFTSにつき、更に15%の探鉱開発税額控除(Mineral Exploration Tax Credit)が認められている。同制度は、新参の鉱山会社がFTSにより資金を調達するの を援助するため、2000年10月に連邦政府により一時的措置として導入され、その後数回延長され、2019 年3月31日で打ち切られる予定であったが、2018年秋の経済声明において、これを更に5年間延長する ことが決定した91

(3) SK州税制

SK

州において鉱山を操業する場合、前述の連邦法人所得税に加え、

ITA

92及び、

SK

州官有鉱物ロイヤ ルティ規則(Crown Mineral Royalty Regulations)93に基づき鉱物税(mineral tax)が課せられる。

1)

州法人所得税(ITA)

前述のとおり、SK 州の法人所得税はカナダ税務局が連邦法人所得税と共に州に代わり徴収すること となっており、連邦法人所得税申告と別個に州法人所得税申告を行なう必要はない。州の法人所得税 率は低率(小企業率)と高率(一般企業率)とに分かれており、その対象と税率は以下の通りである。

2-9 SK

州法人所得税率

区分 率 対象

低率(小企業率)

2%

収益

600,000C$以下

高率(一般企業率)

12%

収益

600,000C$超

SK

州独自の鉱山活動に対する優遇税制措置としては、SK 州探鉱税額控除(Mineral Exploration Tax

Credit - SMETC)

94がある。

91https://www.budget.gc.ca/fes-eea/2018/docs/statement-enonce/chap03-en.html

92 The Income Tax Act, 2000: http://www.publications.gov.sk.ca/freelaw/documents/English/Statutes/Statutes/I2-01.pdf

93 http://www.publications.gov.sk.ca/freelaw/documents/English/Regulations/Regulations/C50-2R29.pdf

94 Saskatchewan Mineral Exploration Tax Credit: https://www.saskatchewan.ca/business/agriculture-natural-resources-and-industry/mineral-exploration-and-mining/take-advantage-of-the-saskatchewan-mineral-exploration-tax-credit

44

SK

州内で探鉱活動を行う企業は

FTS

の発行の申請を

SK

州エネルギー・資源省に行い、許可された 場合はこれを発行し、株主はこれに対する追加の税額控除を受けることができる。

2)

ロイヤルティ

SK

州では、鉱物に対してはロイヤルティを支払わなければならないこととなっているが、ウランと ウラン以外の鉱物では計算方法が異なる。

①. ウラン以外の金属鉱物のロイヤルティ95

ウラン以外の金属鉱物の商業生産額に対しては

10

年間のロイヤルティ・ホリデーという免除期 間が設けられており、この期間中はロイヤルティの支払いが免除される。この期間満了後は、以 下のロイヤルティの支払いが義務付けられる。

2-10 SK

州鉱物ロイヤルティ

鉱物の種類 販売量 ロイヤルティ率

貴金属 販売量

1,000,000oz

未満 純利益の

5%

販売量

1,000,000oz

以上 純利益の

10%

ベースメタル 販売量

1,000,000t

未満 純利益の

5%

販売量

1,000,000t

以上 純利益の

10%

ただし、当初探鉱・開発費用の

150%を回収するまではロイヤルティを支払う必要はない。

ロイヤルティ計算上の純利益は鉱物の総販売額より以下の費用を引いた額とされる。

• 鉱山・ミル費用実費

• 一般管理費

• 新規市場開拓費

• 保険料

• 市町村学校税

• 当年探鉱費用

• 資産償却費

• 生産開始前費用(ただし、商業生産前に生産した鉱物の販売収益と資産処理による収益は これより減額される。また適格費用は商業生産前

10

年間の生産鉱山のデザイン、開発、

建設にかかった費用)

• 鉱山再生・閉山費用

• 再生保証金

• 輸送費

• 繰越損失

また、ロイヤルティを支払う場合は、探鉱に使用した燃料税(車のガソリン代は除く)が免除さ れる。

②. ウランのロイヤルティ

ウランのロイヤルティは基礎ロイヤルティと利益ロイヤルティよりなるが、基礎ロイヤルティは

SK

州鉱物クレジットの対象となる。

95 Summary of Crown Royalty for Saskatchewan Metallic/Industrial Minerals

http://publications.gov.sk.ca/documents/310/97785-Metallic%20and%20Industrial%20Minerals%20Information%20Circular.pdf

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