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9章 成長ステージアプローチによるベンチャーマネジメント(

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9 章   成 長 ス テ ー ジ ア プ ロ ー チ に よ るベ ン チ ャ ー マ ネ ジ メ ン ト (V.M. )     変革理論

1.成長ステージ別経営特性

  資料4−4成長ステージ別経営特性の概要では、企業革新期までを含めた、主要な項目 のみの経営特性をすでに示した。ここでは、準備期、スタートアップ期、急成長期、経営 基盤確立期が、体系的ベンチャー企業経営論のメインの対象期間であるという認識から、

これら4期に絞り、より詳細な項目で準備期・成長ステージ別の経営特性を明らかにした のが資料9−1である注 9 − 1

  準備期は、会社設立前であるが起業家によってはさまざまな試行を行うケースもあり、

その場合は経費が発生するが、会社設立以前などの表面に出てこないケースが多い。この ような場合は、経費分がマイナス売上となる。ということは、実質的に赤字となる。この 時期は、起業家は、ビジネスプランを作成しつつ、パートナー探しや、エンジェル、V.C.

探しを行う必要がある。そして、ビジネスプランをもとに、家族や友人等周辺の人々を説 得し、協力を得ることが必要である。家族の賛同が得られず、結局起業はしたものの破綻 してしまうケースも多いからである。

  スタートアップ期には、会社設立活動そのものが含まれ、会社設立からが、真のスター トということになる。しかし、準備期における諸準備が、その後に大きな影響を与えるこ とから、経営学や中小企業論にない発想で準備期をとりあげたのである。スタートアップ 期の始まりは、従業員数でみると1人〜10人とごくわずかな人数でスタートするのが普 通である。このためごく小人数のため、逆に言えば1人1人の重要性が重い。この段階の 人材は、創業者に共感を覚えるとか、共通の夢を持った人達で構成されることが望ましい。

なぜなら、この時期の待遇は悪く、しかもハードワークで働くことが必要であるからであ る。このような場合、共同出資者が一部分パートナーとして参画している場合が多い。急 成長期は売上規模では約3億円から約50億円の規模であり、従業員数は10人〜100 人程度に拡大する。この時期は、商品やサービスが市場から受容され、急成長する場合で、

毎日が戦場のような状況になる。この時期は、中途採用で即戦力としてそれまでの人数の 数倍の従業員が増加するため、スタートアップの時にあったチームワークや共通の価値観 が弱体化する可能性がある。思い切った拡大をする一方、内部管理や起業家の理念を定着 する努力が必要である。急成長期に、資金ショートが起きるリスクが増える。充分な資金 の手当てや日々の注意深い資金コントロールが必要となる。しかし、急成長期は何といっ ても、市場でのシェアを拡大し、先行者としてのメリットを充分に確立する必要あり、追 随者を振り切るチャンスでもある。そこで、思い切って拡大の一方で、注意深いコントロ ールという矛盾を解決していく必要がある。思い切った手を打つことが成長につながり、

そこから矛盾は発生するが、その矛盾は、次の成長を生み出すという前向きな考え方が大

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切である。すべてほどほどというのは、リスクや矛盾も生じないが、最も大切な成功をも たらしてはくれない。失敗することを過度に恐れると普通の中小企業の枠から出ることは できない。もちろん、生存し続けることを第一義的に考え、慎重な経営で企業を永続させ ることは、価値のあることである。しかし、ベンチャー企業が、イノベーションによる新 規性で勝負し、社会にインパクトを与えるとともに、大きな成功を目指す考え方とは、異 なる。しかし、普通の中小企業は、ベンチャー化することもあり、逆にベンチャー企業が 普通の中小企業になってしまうということはありうるということは、前から論じて来た通 りである。

  経営基盤確立期の最大のポイントは、株式公開(上場)の時期を迎えるということであ る。資料3−5にベンチャー向け株式市場の比較を示したが、例えばマザーズでは時価総 額10億円以上で売上高が計上されていれば良く、利益基準はない。このようにベンチャ ー企業にとって、急性長期に入れば株式公開の可能性がでてくるので、この経営基盤確立 期になると、その準備に入ることになる。上場に際しては、幹事証券や取引所の審査があ り、起業家や企業の体制について、いろいろな面から審査される。特に創業者個人と企業 との関係において公私の区分ができているか、企業の管理体制が決められた社規・社則等 によって行われているかなどが重点的に審査される。これは、株式公開ブームに乗って公 開した企業が、その後不祥事を起こしたり、業績悪化による株価の下落をまねいたりした ことに対する対応である。また、株式を公開するということは、不特定多数の投資家に株 式を売却するという、まさに社会的存在になるのであるから当然のことである。株式上場 を目的化したような起業家の行動は、厳しくチェックされるべきである。

  しかし、異なった角度からこの株式公開にふさわしい企業の体制ということになると、

多くの起業家(創業者)にとつては、180度の変身(変態)を迫られることになる。な ぜなら、苦しいスタートアップ期を切り抜け、急成長を駆け上がって来た起業家はそれな りの成功体験を持ち、自らのマネジメントに自信を持っている。しかも、自らが陣頭指揮 して来たという自負心がある。しかし、株式上場に際しては、組織規定にもとづいた組織 が形成され、それが組織規定通りに運営されているかがチェックされ、それまでの属人的 マネジメントは脱皮を迫られるのである。これに、柔軟に対応できるか否かがベンチャー 企業としての基盤を築けるか否かの大きな分岐点となる。しかも、これらの変態は創業後 5年〜10年ぐらいでおとずれることになり、短期間の中での180度の変態は、そのこ とが矛盾であるとともに、大きな困難であり、変態にまつわるリスクが発生することにも なる。しかし、この変態に成功すれば、中堅企業としての次の新成長期への飛躍が始まる ことになり、革新型企業への路が拓けたことになる。このように、成長ステージ別にベン チャー企業は、変態を遂げながら成長することが明らかになったが、次にそれぞれの期の 特徴をアンケート調査により明らかにしたい。

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資料9−1

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2.成長ステージ別経営特性のアンケート調査による分析

1)アンケート調査の概要

  早大アントレプレヌール研究会では、1995年6月ベンチャーマネジメント(V.M.)

変革の条件を探るためアンケート調査を行った。サンプル対象は「活力ある経営を目指し ている中堅・中小企業」を中心とした。具体的には、1985年以降の新規公開企業、新 聞・雑誌などで株式公開の意向を発表している企業、ベンチャーキャピタル(V.C.)やベン チャーエンタープライズセンター(VEC)、投資育成会社などが投融資している企業などで ある。サンプル数は3381社、回答数612社(回答率18.1%)であったが、その 回答企業の属性を資料9−2に示す。売上高は平均56億円(95年時点以下同じ)、従業 員平均191人、社歴27年、社長の平均年齢52歳ということで、規模はある程度大き い企業のウエイトが高い結果となっている注 9 − 2

  この612社に資料9−3に示すような質問をして、95年現在どの成長ステージにい

るかを、自社での判定を求め、その集計結果が資料9−3に示してある。

資料9−2  アンケート回答企業の属性

(出所)「ベンチャーマネジメントの変革  日本経済新聞社     1996年4月  柳孝一・山本孝夫編著」

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これでみると、スタートアップ期4.08%、急成長期11.11%、経営基盤確立期4 1.50%、新成長期その他40.20%となっている。この分析では、スタートアップ 期が4.08%と低いが、これはもともとサンプル数自体が把握しにくいことに加え、回 答率そのものが超多忙な為、低いということと関係していると考えられる。そして次に成 長ステージ別属性について資料9−4に示す。スタートアップ期の属性は、平均売上高5.

4億円、従業員数22.7人、設立後社歴3.9年で、売上高、従業員数が先の資料9−

1の平均像より少し大きくなっている。急成長期の属性は、平均売上高36.2億円、従 業員数79.4人、社歴17.5年となり、さすがに対前年売上成長率は26.5%で他 に比べ、圧倒的に高い。ここでは大体資料9−1の経営特性の範囲に入っているが、社歴 が、長いのが目立つ。社歴については、全体として資料9−1の平均像より長くなってい る。というもは、資料9−1は、現時点(2003年9月)での、今までの研究の結果の 中で妥当な内容を整理してある。ところが、本アンケート調査は、95年6月現在である のと、85年以降の新規公開企業等を含み、社歴の長い、規模の大きな企業が多く含まれ ているからである。

  経営基盤確立期の属性は、平均売上高60.6億円、平均従業員204.3名、社歴2 9.9年となり、対前年売上成長率は5.7%となっている。これも社歴を除けば、ほぼ 資料9−1に示す範囲に入っている。全体としてこれらの属性をみると、各成長ステージ の特性が、それぞれ想定される水準で、順序も理論通りとなっており、アンケート調査と しての客観性は充分であろう。

資料9−3  調査対象企業の成長段階(ステージ)

(出所)資料9−2に同じ

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  さらに、直近で成長段階が変わったのはいつかという質問をしているが、全体の70%

が、1991年以降と答えており、かなりの企業が5年単位で成長ステージを変化させて いることが明らかになった。そして、その成長ステージを変化させている理由についての データが資料9−5に示してある。これをみると最も回答率が高いものは、マーケット変 化78.59%、競争環境変化61.93%となっており、マーケットの外部環境変化が 大きい。ついで、新製品の導入51.47%、積極的な設備投資40.36%販売体制等 の変更43.63%とマーケットにおける主体的な活動も大きな変化理由となっている。

その他の内部管理体制の変更は、ステージ変化への効果は間接的と考えられ理由としての 比率は低い。以上、アンケート調査による成長ステージ別属性を中心に分析して来たが、

本論での成長ステージ別分析とほぼ整合するため次に、成長ステージ別各成長期の内容に 入りたい。本アンケート調査は筆者編著「ベンチャーマネジメントの変革」の執筆を目的 として、かつ「ベンチャー企業の経営と支援  日本経済新聞社  1994年  松田修一監 修」の成長ステージ分析を発展させることも考え、設計した。当然、本論の基礎のひとつ

資料9−4  成長ステージ別属性

(出所)資料9−2に同じ

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になっているのが「ベンチャーマネジメントの変革」であるため、全部の整合性はとれて いる。しかし、本論で始めてスタートアップ期の前に、準備期を新たに追加したため、本 アンケート調査に準備期は設定されていない。

2)準備期の特性

  資料9−1に本論において始めて「準備期」を新たに付け加えた。準備期は、会社設立 前であるから社史等文献にも登場しないし、分析しにくいステージである。しかし、この 準備期がいかにベンチャー企業にとって大事であるかは、ベンチャー企業の教科書ともい

えるJeffry A.Timmons著「New Venture Creation ダイヤモンド社  千本倖生訳」の内容

で、実に全体の約80%はいわゆる準備期についての記述である。このように大変重要な 意味を持つ準備期であるが、先にも述べたように本アンケート調査の中には、調査対象に 入っていない。そこで、ここではいくつかのケースによってその重要さを検証してみたい。

すでに先に述べたが、ギャガコミュニケーションの創業者藤村会長は、起業前にビジネス プランを書き何回も書き直し、それでエンジェルを説得している注9−3。これは、藤村会長 が、起業以前に外資系ベンチャーキャピタルの仕事についた経験があり、ビジネスプラン がいかに大切であるかをその時の体験で知っていたからである注9−4。このように、起業前 にビジネスプランを書いて成功したケースとしては、アントレプレナーセンターの福島社 長、ソフトバンクの孫社長等々が文献では明らかである。しかし、ビジネスプランを起業 前に作成するという考え方は、10年ほど前には日本では存在していなかった。筆者が学 長をしているKSPベンチャービジネススクールは、10年前に開校したが、ビジネスプラ

資料9−5  成長ステージの変化理由

(出所)資料9−2に同じ

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ンを卒業論文とするいう方針を出したが、当時としては初めてであった。しかし現在では、

起業前にビジネスプランを作成するのは当然のことであり、ビジネスプランコンテストも 早大アントレプレヌール研究会でも行っているように完全に定着している。

  また、準備期に試行をして、テスト的に確かめるといったやり方もある。C.C.Cの増田社 長は、鈴屋の社員であった時に、枚方駅前で喫茶店と併設の貸しレコード店「LOFT」を開 店し、大当たりしてサラリーマンを続けるか否かまよったが、最終的決断まで1年かかっ ている注9−5。21LADY(トゥエニーワンレィディ)の広野道子社長は2000年3月に 当社を資本金4億735万円で立ち上げた。その主要株主は、それまで4〜5社で役員等 をして仕事での実績を積み重ねたネットワークで獲得したと述べている(2003年6月 24日  早大公開講座での講義)。このように、準備期にはさまざまな活動が必要であるが、

最も一般的なのはMBA等での起業についての学習であろう。筆者のゼミ生関連で起業し たケースは、10社程度になるが、いずれもMBAコースの中での学習がベースになってい る。このようなケースでは、全員がビジネスプランを作成しており、今後の準備期のパタ ーンは、ビジネスプラン中心型にシフトすると思われる。

3)スタートアップ期の特性

  スタートアップ期からは、先のアンケート調査があるので、その内容を用いて、特性を 明らかにしたい。資料9−6に成長ステージ別成長要因を示している。

スタートアップ期の回答率が全体の回答率より高いのは、国内既存マーケット45.45%

で2倍近い回答率となっている。次いで、製品・サービスの多様化で22.73%となっ ており、全体より5.5ポイント高くなっている。ここでみられるように多くの場合国内

資料9−6  成長ステージ別成長要因

(出所)資料9−2に同じ

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既存マーケットの中で頑張り、せいぜい行えるのが製品・サービスの多様化であるといっ た姿が明確になった。逆に全体の回答率よりも低いものは、新規事業、他社の買収で回答 率は0.0%であった。ベンチャー企業の場合、ここでの新規事業というのは、進出した 事業とは別の新規事業ということであるから、この両者が0.0%というのは当然であり、

他の項目も全体として低い回答率となっている。つまり、進出した国内既存マーケットで 成長するだけでも大変で他のことを行う余力がない姿が浮き彫りになっている。次に、資 料9−7で成長ステージ別社内管理体制の整備状況をみてみたい。

スタートアップ期が、他の期に比べ「十分」「満足」と回答した比率があまり変わらないも のは、在庫、売掛金の管理とコンピュータの活用のみで、ほとんどは皆低い水準である。

これは、在庫・売掛金の管理がいいかげんだとすぐに倒産してしまうということをよく認 識しているからだと考えられる。またコンピュータについては、社歴が新しいだけに最初 から導入していると考えられる。特に低い水準は中・長期経営計画、部門別業績評価、社 内諸規定の整備であり、ある意味ではこの時期には必要性が低いものもあり当然といえよ う。

  次に資料9−8に成長ステージ別経営問題の回答率を示している。スタートアップ期の 回答が、全体回答を大きく上回るのは、資金の不足17.48ポイントの差、次いで従業 員の人材不足14.08ポイント、経営幹部の人材不足12.12ポイント、経営幹部の

(出所)資料9−2に同じ

資料9−7  成長ステージ別社内管理体制の整備状況

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不和が11.21ポイントの順となっている。スタートアップ期の圧倒的問題は、資金の 不足であり問題の深刻さが明確に検証された。そして、人材不足も重要な問題であり、さ らに経営幹部の不和が、この段階で出てくるのは意外でもある。それだけに信頼できるパ ートナーを選別することが、大切であり結局スタートアップ期を乗り切るには、資金と人 材であるというきわめて当然のことであるが、確認された。

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資料9−8

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4)急成長期の特性

  急成長期の成長要因についての回答率(資料9−6)で、全体の回答率より高かった項 目は、多いが分散している。相対的に差が多い項目は業態の変化1.28ポイント、技術 革新1.06ポイントで他はあまり差はない。逆に全体の回答率より低い項目は、国内既 存マーケット2.79ポイント少なく、国内の地域的拡大2.11ポイント少ない結果と なっている。要するに急成長期は、既存マーケットで急成長中であり、業態変化や技術革 新での努力はしているが、あまり新しい対策は、必要なく、勢いに乗ることを心がけてい る姿が見えてくる。

  社内管理体制(資料9−7)でみると、他の期に比べ相対的に遅れているのが、部門別 業績評価、コンピュータの活用、社内諸規定の整備、年次予算制度である。特に、コンピ ュータの活用、年次予算制度は、他の期に比べ最も低い整備状況となっている。これらは、

急成長しているため内部管理体制の整備が追いつかないといった状況が、明確になってお り経営基盤確立期へのハードルが高いことが明らかである。

  経営問題(資料9−8)について、全体より回答率が多かった項目は、社内管理組織の 未成熟11.28ポイント、諸経費の上昇7.36ポイント、従業員の人材不足6.86 ポイント、設備費の上昇6.21ポイントとなっている。急成長の中で社内管理組織が未 成熟であり、一方急成長に伴い諸経費や設備費が上昇し、従業員の人材不足も続いている といった実態である。急成長期は、ベンチャー企業にとって待ちに待った成果であるが、

一方で新しい問題が生じてくることが鮮明に見えてきている。逆に需要の低迷とか、従業 員の過剰とかいう問題はほとんど問題になっていないのである。

5)経営基盤確立期

  経営基盤確立期の成長要因(資料9−6)についての回答率で、全体の回答率より多か った項目は、国内既存マーケット1.09ポイントぐらいで、他はほとんど多くても同水 準である。また逆に全体より少なかった項目でも、差はほとんどなく、経営基盤確立期の 成長要因は、全体回答とほとんど同じパターンを示しているということが明らかになった。

これは、この経営基盤確立期に属する社数が、全体の43.12%を占めるというウエイ トの問題も影響している。しかし、この傾向は、新成長期に属する41.77%を占める 企業にもほぼ当てはまる。ここでやはり、今まで仮説的に考えて来たベンチャー企業の変 態は、スタートアップ期から急成長そして経営基盤確立期への段階が一番大きく、経営基 盤確立期から新成長期への変革はあまり大きくないということが検証されたとも言えよう。

このようなことから、本論では、新成長期は、直接的分析対象には含めないというのは説 得的であろう。この分野は、中堅企業論という形で、体系的ベンチャー企業経営論に継続 する形で構築されるべきであろう。

  社内管理体制の整備状況(資料9−7)でみると経営基盤確立期ではいずれも高い水準 となっている。その中であえて新成長期と格差があるのが、在庫・売掛金の管理、月次決

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算制度である。特に在庫・売掛金の管理については、新成長期との差が11.57ポイン ト差があるだけでなく、スタートアップ期より低い水準であり、要注意である。

  経営問題(資料9−8)でみて、全体の回答率より高いものは、需要の低迷9.52ポ イント、価格の低下5.82ポイント、マーケティング力の不足3.63ポイント、在庫 の過剰3.18ポイント、経営幹部の人材不足3.15ポイントとなっている。これをみ ると、急成長期を終わり需要の低迷、価格の低下、マーケティング力不足、在庫の過剰と 見事に市場での競争激化で悩んでいる状況が浮き彫りになっている。また、経営幹部の人 材不足が再び多くなっているのが注目され、社内管理体制を進める上での問題となってい ることがうかがえる。

  さてここで参考のために、新成長期との比較をしてみたい。経営基盤確立期に比べ、新 成長期の方が多い項目は、新規事業の失敗2.64ポイント、法的トラブル2.07ポイ ント程度で、他の項目は大差ない。この2つの項目は企業の成長段階が進めば、当然起き てくることが予想されることである。逆に経営基盤確立期に比べ少ない項目は、需要の低 迷10.72ポイント、価格の低下6.77ポイント、マーケティング力不足5.81ポ イントとなり、新成長期に入りこれらのマーケティング全体の問題は解消されつつある傾 向を示している。同様に社内管理組織の未成熟5.71ポイント、経営幹部の人材不足5.

55、諸経費の上昇4.94ポイントそれぞれ少なくなっており、軽減の傾向がみられる。

全体としては、この経営問題でも、経営基盤確立期と新成長期との間には、他の期に比べ るほどの差がみられず、安定的な成長ステージの中での変革であることが明らかであり、

再び中堅企業論で取り扱うべきと主張したい。

3.ベンチャー・マネジメント(V.M.)変革の構図

1)起業家(社長)の役割

  今まで述べて来たように、資料9−1に示した成長ステージ別には、さまざまな局面に おいて、成長ステージの期ごとに特性が異なり、かかえている経営問題も異なることが検 証された。このように、同一の生命体であるベンチャー企業が変態と表現されるほどの各 期別のステージの変革をどのように成し遂げるかをこの V.M.変革の構図で明らかにしたい。

まずそのためには、準備期から経営基盤確立期までの間で決定的な力を持つ、又は持たざ るを得ない起業家(社長)の役割について解明してゆきたい。

  準備期での起業家の役割は資料9−1に示すようにすべてである。自らビジネスプラン を作成しつつ、エンジェル等を探しつつ資金調達をする。さらに、パートナーを探しなが ら、会社の設立準備をし、各分野における知識等の学習・準備を続けるのである。この段 階では、まだ会社は設立されておらず、組織的活動ではなく個人的活動なので分析対象と しては、限界がある。さて、会社設立後すなわちスタートアップ以降の社長の役割をアン ケート調査で検証するに当たり、資料9−9に社長の属性を示したい。

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まず、本アンケート調査での社長の年齢は、50歳以上が67%、40歳代が25%、3 0歳代が6%となっており、社歴の長さもあって年齢は高い。また経歴からみると創業者 は中小企業出身23%、大企業出身17%、自営6%、卒業後創業5%で全体で51%と なっている。創業者以外は、2代目21%、雇われ12%、派遣6%となっており、必ず しも創業者型だけではない。また、学歴では、大学卒69%,短大卒7%で合計78%と

資料9−9  社長の属性と社長の性格

(出所)資料9−2に同じ

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なっており、大変高学歴である。これは、85年以降の新規公開企業等をサンプルに加え ている「活力ある経営を目指す中堅・中小企業」に焦点を当て、その結果資料9−10に 示すように、すでに上場、店頭公開企業の比率は33%に達しているためでもあろう。

参考までに、資料5−10にも示したが1997年6月に早大アントレプレヌール研究会 によって行われた「世界の起業家調査からみた日本のベンチャー支援の課題と方向性」に よる、大学卒以上の比率は、52.0%である注9−6。社長の性格についても、すでに資料 5−12にも、別のアンケート調査結果を示しているが、バランス型、合理主義型、即断 即決型、攻撃型が多くほぼ同じ結果となっている。

  さて、ポイントとなる社長の成長ステージ別役割を資料9−11に示す。まず全体とし て回答率が高いのは、ビジョンの提示21.16%、新規事業立ち上げ13.46%、後 継者育成12.02%、ビジネスプラン作成10.93%、人材確保10.33%、顧客 確保9.79%の順となっている。このような全体としてのウエイトになったが、各成長 ステージごとにどのようにこのウエイトが変化していくかを見てみたい。スタートアップ 期では、全体のウエイトより多い項目が、顧客確保4.50ポイント、資金調達4.45 ポイント、人材確保3.96ポイントとなっている。顧客確保は、14.29%で最も多 く、かつ全体に比べても4.50ポイントの差は、最大である。次いで、資金調達は、全 体回答では6.66%にすぎないのが、スタートアップでは11.11%となっており格 差が2番目となった。これに加えて、人材確保が、スタートアップ期の社長の役割として 重要であることが、確認できる。

  次に急成長で全体のウエイトよりも多い項目は、資金調達4.71ポイント、人材確保 2.22ポイントとなり顧客確保は0.80ポイントに下がっている。スタートアップ期 に比べて重要度が上昇している項目は、対外関係1.91ポイント、後継者育成1.08

資料9−10  成長ステージ別の株式公開の状況

(出所)資料9−2に同じ

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ポイントの増加である。つまり、スタートアップ期に比べると顧客確保が3.70ポイン ト下がり、代わりに対外関係、後継者育成が上がるということで、社長の役割の幅が広が って来ていると言える。

  さらに、経営基盤確立期で、全体より多い項目は、組織改革1.86ポイント、後継者 育成0.81ポイント程度でやはり、この段階で組織改革における社長の役割が重要視さ れている。急成長期に比べて増加している項目は、ビジョン提示3.99ポイント、後継 者育成3.81ポイント、組織改革3.21ポイントとなって来ている。このように、経 営基盤確立期には、将来ビジョンを明確にし、後継者育成を行いながら組織改革を断行す るといった、それまでの創業者型から、いわゆる経営者型への社長の役割が変わっていく ことが、明確に示された。また、成長ステージの変化は、単に外部環境の変化だけではな く、能動的な戦略によって、スタートアップ期から急成長期へ入ることができる。

その実態をアンケート調査で検証したのが、資料9−12である。急成長期へのステージ 変化の理由を資料9−12に示す。これは、急成長期へのステージ変化が何によってもた らされたかというデータである。これによると、新製品の導入、積極的な設備投資、販売 体制等の変更が契機となっていることを示している。これらの戦略を実行する意思決定者 は社長であり、多くの場合起業家(創業者)である。

  以上の分析を基礎としながら、V.M.変革の構図の内容により詳細な形で入りたい。

資料9−11  成長ステージ別社長の役割

(出所)資料9−2に同じ

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2)経営要素と成長ステージ別内容変革

  アンケート調査では、成長ステージ別に経営問題が異なることやそれぞれにおける社長 の役割に変化が求められていることを明らかにした。ここでは、成長ステージ別により詳 細な経営要素内の内容がどのように変化するのかについて分析してみたい。資料9−13 には、4つの経営要素別の、成長ステージ別に評価項目すなわち、その期に必要とされる 経営内容が示されている。出所は、平成2年度通産省委託調査「ニュービジネス評価診断 手法の開発調査研究報告書  平成3年3月」である。この調査は平成元年に行われた「ニ ュービジネス評価診断手法の開発調査研究」をより完成させ、ニュービジネス評価チェッ クリストを作成することを目的とした。筆者は、この2つの調査において委員長(多摩大 学経営情報学部教授当時)を努め、全体のまとめを行った。この調査では、スタートアッ プ期、急成長期、経営基盤確立期別に、どのような経営内容が重要であり、それをチェッ クすべきかという問題意識で文献調査をベースに、4つの経営要素別に約300項目をピ ックアップした。その項目を、ニュービジネス協議会の会員企業1800社及び東洋経済

「法人所得番付」第3次産業申告所得1億円未満の企業のうち各業態のバランスをとれる ようピックアップした1300社、合計アンケート配布数3100社への調査をかけ回収 企業数500社の回答によりチェックした。さらに、このアンケート調査協力企業から1 0社(スタートアップ3社、急成長期6社、経営基盤確立期1社)を選び、インタビュー 調査を行った。それらの集約された結果が、資料9−13の各項目である。作業としては、

当初の300項目をアンケート調査による評価と意見により、経営者20項目、マーケッ ト・マーケティング30項、供給システム20項目、マネジメント30項目、合計100

資料9−12  急成長期へのステージ変化の理由

(出所)資料9−2に同じ

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項目に整理集約した。しかし、100項目ではまだ数が多すぎるため、ひとつひとつの項 目が持った重要性を可能な限り均等になるように、インタビューによるフィードバックを 行いながら、成長ステージ別にすべて20項目になるように調整したのが資料9−13に 集約してある。4つの経営要素のうち経営者の項目は、他の3つと相互独立的ではない。

つまり、経営者はすべての経営要素にからむため独立的でないことは充分に認識した上で、

ニュービジネス(ベンチャー企業)については、経営者(起業家)のウエイトがあまりに 大きいので、経営者個人の能力に近い部分だけを取り出して独自に立てることとしたので ある。また経営機能別に細分化するよりは、ニュービジネスにふさわしく、マーケット・

マーケティング、供給システム、管理システムというように大くぐりの分類としている。

しかし、20項目については逆に細心の注意を払って集約とウエイトの平均化を行ったの である。スタートアップ期の経営者は、ビジネスへの思い入れ、実行力、決断力が必要で、

リーダーシップ、優れた経営センスが必要で人望も大切である。一方で計数感覚も必要と される。そして、マーケット・マーケティングでは、新しいニーズの発掘、顧客の新しさ、

コンセプトの一貫性、新規性、顧客を取り込む仕組みが重要である。全体としては、スタ ートアップは、新規性の勝負が、最重要である。一方、この時期からマーケットの成長性、

環境の変化への対応も重要である。供給システムでは、経営者のサポート人材と資金力が 重要である。これが、スタートアップ期の集約された重要な項目の内容ということになる。

  急成長期に入ると、経営者の項目は、リーダーシップと優れた経営センスになり、マー ケット・マーケティングでも新規性、売上・客数の急成長に変わってくる。最も変わるの は、供給システムに急成長を支える多様な内容が重要となり登場してくる。すなわち、チ ェーン化、業務の標準化、コンピュータの活用、人材教育の仕組み等々である。さらに管 理システムでは、従業員の処遇や事業リスクへの対応が必要とされる。このように、急成 長期は、急成長を支える供給システムの内容が、充実しその重要性が高まることになる。

  経営基盤確立期の経営者は、内容的にはスタートアップ期とは180度の変身(変態)

を必要とする。すなわち脱個人経営であり、経営を柔軟に行える柔軟性である。これは前 から指摘して来た、変態そのものである。スタートアップ期は、ビジネスへの思い入れや リーダーシップが重要とされていたが、ここではまさに逆の経営スタイルに変態が必要と されるのである。これは、急成長期を経由して売上高や従業員数などが急拡大したため、

起きた必然的な結果であるが、起業家個人としては大変な努力を要することとなる。マー ケット・マーケティングは、特徴的な地位を確保しつつ新たな業界の確立が必要となる。

供給システムは、機械化・省力化、営業支援のシステム化が必要とされる。この期で最も 充実が必要なのは管理システムである。権限委譲、経営管理システム、外部経営資源活用 が必要とされる。

  以上述べたように、成長ステージ別に4つの経営要素の内容が、それぞれ大きく変わる 必要がある。これが、変態のひとつの側面である。

(19)

1 ビジネスへの思い 入れ

2 実行力・決断力 3 リーダーシップ 4 優れた経営セン

5 人望 6 計数感覚

1 使命感・思い入れ

2リーダーシップ・決断力

3優れた経営センス

4 計数感覚

1脱個人的経営

2 柔軟性 経営者

マー ケット・

マーケ ティング

経営供給 システム

管理 システム

経営要素 成長ステージ

7 新しいニーズの発掘 8 顧客の新しさ 9 コンセプトの一貫性 10 新規性

11 顧客を取り込む仕組み 12 トライアル・その手応え 13 採算性

14 マーケットの成長性、流動性 15 環境変化への対応

16 法則性・社会性

5 新規性の持続

6 売り上げ・客数の急成長

7 新業界の形成

8 環境条件

3 特徴的な地位 4 マーケットの拡大

5 新しい業界確率

6 環境条件

17 事業拡大の芽

18 新技術の可能性

9 チェーン化・大規模化

10 業務の標準化

11 新技術・省力化

12 販売方法の新しさ

13 仕入れ・物流等の新しさ

14 コンピューターの活用 15 人材教育の仕組み 16 参入障壁の形成

7 チェーン化・大規模化

9 機械化・省力化

10 営業支援のシステム化

13 権限委譲 14 従業員の処遇

15 中長期ビジョン 16 環境変化察知の仕組み 17 経営管理システム 18 高収益性

19 新事業への取り組み 20 外部経営資源活用 17 経営者サポート人材

18 従業員の処遇

19 資金的対応 20 事業リスクへの対応 19 経営者サポート人材

20 資金力

11 人材獲得・教育 8 業務の標準化

12 参入障壁の形成

(30%) 20%) (10%)

50%) (20%) 20%)

10%) 40%) 30%)

(10%) 20%) (40%)

(出所)「平成2年度通産省委託調査  ニュービジネス評価診断手法の      開発調査研究報告書  ㈱野村総合研究所  平成3年3月      ニュービジネス評価チェックリストより筆者作成 資料9−13  4つの経営要素別内容と成長ステージ別変化

(20)

3)経営要素のウエイト変革

  これは、資料9−13に示した各成長ステージ別の経営要素の重要性のウエイトが変化 するということである。経営者のウエイトは、スタートアップ期の30%から20%へ、

そして経営基盤確立期には10%へと減少する。マーケット・マーケティングは、50%

→20%→20%となる。供給システムは10%→40%→30%と急成長期がピークの パターンをとる。さらに、管理システムは、10%→20%→40%というように、成長 ステージの後になればなるほどウエイトが上昇し、経営者のウエイトとは、逆のパターン をとることになる。このように全体の項目数を20に絞り込んで、それぞれの数によって ウエイト変化を表している。この手法が有効であるためには、次のような前提が必要であ る。

① 当初の300項目を、3100社へのアンケート調査(500社回答)によって評価し、

100項目に集約した過程の客観性と集約された内容の正しさ。

② 100項目を10社へのインタビュー調査とフィードバックにより20項目に集約し た内容の正しさ。

③ 全体の方法論と経営者、学者、通産省担当官及び野村総合研究所研究員によって構成さ れた委員会での結論の正しさ。

以上の点について、筆者自身が委員長を務めたため自己判断の要素が入るが、当時の考 えうる最大限の努力と膨大な作業がおこなわれ、国のプロジェクトとしてオーソライズさ れた内容になっている。以上の背景からこの手法が認められるとすると、変態のもうひと つの側面を経営要素のステージ別のウエイト変化で表すことができるのである。すなわち、

成長ステージ別の変革(変態)は、経営要素の内容の変革と経営要素のウエイト変化が同 時に起きることであると結論づけられる。

4)二輪構造による変革のエネルギー

  ベンチャーマネジメントの変革は、経営要素の内容変革と経営要素のウエイト変革で可 能になると述べた。しかし、これは経営者の項目でも述べたように、大変な努力と意思と 能力が必要であり、しかもドラスチックな変革であるために変革に伴うリスクすら発生す る。ベンチャー企業は、存続しつづけるために成長しなければならないし、成長する時は 変革のリスクが発生することになる。このような状況を突破するには、大きな変革のエネ ルギーが必要であるが、このエネルギーをどこに依存するのか、又は、どうやって生み出 すのかという大きな命題が残っている。この大きな命題への筆者なりの回答が、資料9−

14である。

(21)

まず、準備期で起業家によってためられていたエネルギーは、「小さなビックバン」と言わ れるエネルギーの結晶となって起業に結実する。起業により会社(企業)

が設立されるが、企業はヒト、モノ、カネ、情報、時間という経営資源がある目的の為に 結合した組織体である。組織体は、生誕した時から、自己の生存欲求を持ち活発に活動を 開始する。これが、自己回転運動であり、増殖活動でもあり、資料9−14に示したよう

資料9−14  ベンチャーマネジメント変革の構図

(22)

に輪として表現してある。この経営資源の結合体、すなわち企業が具体的な活動として行 うのが、先に資料9−13に示した経営要素であり、スタートアップ期であれば、経営者 30%、マーケット・マーケティング50%、供給システム10%、管理システム10%

の結合体として、具体的な経営活動を行っている。それをもうひとつの輪として表現する と「二輪構造」となるが、この2つの輪は車輪で結合されている。つまり、経営資源の結 合体としての企業(組織)が、経営要素(マネジメント)の結合体としての経営そのもの を車軸によるエネルギー伝達で、回転運動を与えるという構図である。つまり、組織体(企 業)は、生れた時から自己生存欲求と増殖欲求というエネルギーを持ち、自己回転運動を するが、そのエネルギーで経営要素の結合体であるマネジメントにも回転力を伝え、効率 的活用によって進化のエネルギーを伝達するのである。そして、企業は回転運動の過程で ヒト、モノ、カネ、情報、時間という経営資源を自らの活動によって新たな蓄積を行い、

輪をひとまわり大きく増殖する。これは組織内でのヒトの能力の向上や、商品の改良、新 技術開発による新情報の獲得等を考えれば納得できよう。また、時間については、使い方 や行動様式の問題であるからPlan―Do―See―Checkのサイクルを短縮化することによっ て、理論的には無限に増殖することも可能である。

  このように、自己回転運動を始めた企業は、周辺からの新規の経営資源の獲得も含めて、

1まわり大きくなり、回転速度も上がり、次の急成長期への階段を登るエネルギーを持ち、

急成長期に入ることになる。この場合、上の輪の経営要素における経営者(起業家)の成 功欲求の強さも、変革のエネルギーを生み出すし、経営者の意志で新たな経営資源の注入 も行われる。すなわち、この二輪は回転しながら相互作用力を持ち、両輪の回転力によっ て、さらにエネルギーを高めることが可能となる。

  マネジメントの変革(変態)は、非連続的であり、変革に伴うリスクすら発生する。し かし、その変革のエネルギーの源であり、推進力(エンジン)を生み出しているのは、経 営資源の結合体としての企業である。この経営資源の結合体はひと回り大きくはなるが、

継続した組織体である。変革という側面だけをみると、非連続で不安定要素だけが目につ くが、その原動力は継続している同一組織である。つまり、継続体と変革体という矛盾を 持つ2つの輪が車軸を通して、矛盾を解決しながら上方へ駆け上がる力となるのである。

  さらに、環境変化や支援システムの整備によってこの「二輪構造」に力を与えることも 期待できるし、急成長期に入れば、株式公開による経営資源の導入も可能になる。このよ うに変革という非連続的活動に伴うリスクは、継続体としての経営資源(企業)によって、

支えられていることで克服され、変革の実現化が可能になるのである。しかし、この継続 体(経営資源)と変革体(経営要素)は、車軸で連結されているだけに、本質的な性格が 異なることから「矛盾」が常に生ずる。つねに「きしみ」が生じながらも、この二輪構造 は上向に駆け上りつづけるのである。しかし、二輪のバランスが崩れた時、坂道からころ がり落ちることもありうるのである。

(23)

注9−1「ベンチャー企業の経営と支援  松田修一監修  1994年4月  日本経済新聞 社図表3−6  p98〜99」には準備期が含まれていないので付け加えた。逆に 新成長期、経営革新期、が入っているが、これは本論での取扱い範囲を超えるの で削除した。

注9−2「ベンチャーマネジメントの変革  日本経済新聞社  1996年4月  柳孝一・

山本孝夫編著」に、アンケート調査による分析が記載されている。

注9−3「ケースで学ぶ起業戦略  日経BP社  1994年12月(株)グロービス  第7 章  事業計画書及びトップインタビュー」

注9−4「フツーのボクが起業家になれた  徳間書店  1996年9月  藤村哲哉著  p8 6〜p90」

注9−5「情報楽園会社  徳間書店  1996年3月  増田宗昭著  p15〜p20」

注9−6「起業論  日本経済新聞社  1997年10月  松田修一著  p76〜p77」

参照

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