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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

カゲン ウンドウ ニ オケル ケイタイ ジョウホウ ト オクユキ テガカリ ニ カンスル シンリガクテキ ケンキュウ

西郷, 賀津雄

松下電器 : 画質評価,画像圧縮

https://doi.org/10.11501/3110735

出版情報:Kyushu Institute of Design, 1995, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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  氏 名・本籍(国籍)  西 郷 賀津雄 (山口県)

  学 位 の 種 類  博士(芸術工学)

  学 位 記 番 号  甲第5号   学位授与の日付  平成8年3月18日

  学位授与の要件  学位規則第4条第1項該当

  学位論文題 目  仮現運動における形態情報と奥行き手がかりに関する心理学的研 究

  審 査 委 員 会  幹事 教 授 大 村 英 子        委員 教 授 津 村 尚 志        委員 助教授 山 下 由己男       論文内容の要旨

 2つの対象(第1刺激と第2刺激)を適切な空間を隔てて、順次継時的に提示すると、あ たかも単一の対象が、第1刺激の位置から第 2刺激の位置へ連続的に移動するように見え る。このように客観的に静止している 2 つの対象が、それぞれ瞬時的に出現し、消失する ことによって生じる主観的な運動印象は「仮現運動」と呼ばれている。これは映画やテレ ビ、アニメーションなどの動画像の基本原理をなすものである。

 ところで、仮現運動は早くから動画像の製作に応用されてきたが、この現象生起の視覚 メカニズムとなると、まだ科学的に解明されるまでには至っていない。とりわけ、運動誘 導刺激の形、奥行き、色といった視覚的属性が、最終の運動事象として、いかに統合され るかという問題は心理学だけでなく光学、神経生理学、情報工学等を含めた、いわゆる認 知科学全般に共通した課題でもある。その解明は、視覚系の処理課程の全体像を得る上で の必須の前提である。

 本論文は、このような観点のもとに、かつ、同上の課題の一翼を担うべく、「仮現運動に おける視覚情報、とりわけ刺激の形態情報と奥行き手がかりの役割」と題して、次の 5 つ の具体的事項について、実験的研究を行ったものである。

 (1) 仮現運動の型と刺激の幾何学的変換形式

 2刺激間仮現運動の研究では、これまで、概ね、その「時間空間的条件」の分析に主たる 関心が向けられてきた。このため、同一の線分や光点が刺激として用いられた。これに対 して、形の異なる刺激間の形態関係が仮現運動の生起に及ぼす効果といった側面について は、あまり注意が払われていなかった。2刺激間に単一対象の運動が成立するということは、

2つの刺激間の同定を意味するが、いかなる視覚情報が対象同定の知覚を規定するかという 問題については、これまでのところ、構成的特徴比較説(Neisser、1967)と、生態学的変 換可能性説(Pittenger & Show、1975)が提唱されている。前者は、図形の静的な形態 的特徴の類似性を強調し、後者は、生態学的に妥当な数学的変換のもとで不変性を保つ幾 何学的抽象的特性を重視している。本論文では、この 2 つの説を比較検討し、いずれも、

刺激の幾何学的変換形式と仮現運動の型との対応関係が考慮されていない点を指摘し、こ

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れを時間条件を介して検討した。結果は、1)視覚系が刺激形態の違いを処理する方式として、

平行移動、輪郭の可塑的変形、2次元回転、3次元奥行回転の4種あることを見いたした。

2)これら4種の知覚的運動の型は、用いられた刺激の幾何学的変換の形式と対応した。すな

わち、刺激の恒等変換には平行移動が、合同変換ないし射影変換には可塑的変形運動と回 転運動が、アフィン変換ないしトポロジー変換には可塑的変形運動がそれぞれ対応した。3) 刺激の持続時間を増大すると、射影変換ないし合同変換にあっては、可塑的変形運動から2 次元的ないし 3 次元的回転運動へと移行した。よかもこの場合、可塑的変形運動は、回転 運動に比して、相対的に小さなSOAで生起した(回転運動の優位性)。

(2) マスキング抑制下の刺激の形態情報と仮現運動の知覚

 仮現運動における形態情報の役割を、マスキングによる形態情報抑制条件下で検討した。

得られた結果は、1)運動生起にとって2刺激のうち、少なくともいずれか一方の刺激の形態 情報が必須であった。2)刺激のいずれか一方が抑制されても、なお、回転運動や可塑的変形 運動の型が見られた。これらは、抑制された形態情報が依然として仮現運動に関与し、何 らかの形で、もう一方の非抑制刺激の形態情報の知覚に働きかけていることを物語るもの である。3)両刺激のマスキング条件間で、運動の生起率に差がなく、しかも運動の型別生起 率の変化の傾向も同じであった。このことは第 1刺激と第2 刺激の形態情報の等価性を示 すものである。

(3) 仮現運動知覚に及ぼす刺激形態価の相違

 実際輪郭長方形、それに対応する主観的輪郭、そのいずれも生じないコントロール図形、

のこれら3種の刺激パターンのうち、2種を対にすることによって、運動における刺激の形 態情報の縮減効果をしらべた。その結果、1)実際輪郭図形を第1刺激とし、主観的輪郭を第 2刺激として提示しても、あるいは、その逆の順序で提示しても、運動生起率に差はなかっ

た。2)形態情報が豊富で等しい刺激対による運動生起率は、形態情報が貧弱で不等な刺激対

のそれらよりもかなり高かった。この事実は、両刺激によって構成される刺激の全体的特 性の重要性を意味するものである。

(4) 仮現運動による動的遮蔽知覚と刺激の奥行き手ががり

 一方の運動対象が他方の運動対象を遮蔽してしまう、仮現運動のいわゆる「動的遮蔽知 覚」は、Anstjs (1985) によれば、遮蔽する対象の不透明性によるものとされる。本研究で は、動的遮蔽知覚を、運動誘導刺激の奥行き手がかりに関連づけて検討した。その結果、1) 動的遮蔽知覚の発現は、2刺激の奥行き手ががりと密接に関係していた。すなわち、動的遮 蔽知覚は、遮蔽対象のほうが被遮蔽対象よりも、大きさや輝度が大である刺激条件でしか 起こり得ず、逆の条件ないしは奥行きのない条件では、そのような知覚は全く生じなかっ

た。2)大きさと輝度が奥行きにおいて競合する刺激条件では、動的遮蔽知覚は起こりにくか

った。3)刺激提示時間の増大は、動的遮蔽知覚の生起を促進した。これらの結果は、動的遮 蔽知覚にとって遮蔽対象の不透明性以外に、2刺激間に生じる奥行き情報、時間情報の重要 性を示すものである。

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(5) 仮現運度の軌道と刺激の奥行き手ががり

 2つの運動誘導刺激の間に第3の対象を介在させる場合、仮現運動の軌道が介在刺激を迂 回して変化することは知られているが、この迂回を規定する因子については、まだ明らか にされていない。そこで、本研究は、誘導刺激と長さ、大きさ、輝度において異なる静止 刺激を介在させ、そこに生じる奥行き手ががりと仮現運動の軌道との関係を検討した。そ の結果、1)誘導刺激が静止刺激よりも長さ、大きさ、あるいは輝度において大(ないしは 小)である時、単一対象が、静止刺激の前方(あるいは後方)の前額平行面上を移動する ように知覚された。2)これに対し、誘導刺激が静止刺激と同一である時、奥行き不明瞭な 運動か、あるいは静止刺激の提示位置で湾曲する運動、特に静止刺激の後方を湾曲する運 動が多く知覚された。これらの結果は、次のように解釈される。すなわち、仮現運動時に、

運動対象と介在刺激(静止刺激)とが衝突しないように両者が一定の奥行きをもって前額 平行的な軌道を選択する。しかも、この場合、その軌道の設定には、奥行き手ががりが活 用されたものと推定される。他方、奥行き手ががりが存在しない場合には、運動対象は、

介在刺激の後方を湾曲運動して衝突を避けようとする傾向がみられた。

       論文審査の結果の要旨

 2つの対象が、適切な時間・空間間隔をおいて提示される時、知覚される単一対象の運動 印象は仮現運動と呼ばれ、早くから映画やテレビ等の動画像の製作に応用されてきた。し かし、そのメカニズムについてはまだ解明されていない。とりわけ、運動誘導刺激の視覚 的属性がいかに統合されて、運動事象が生ずることになるのかという問題は、今や、心理 学だけでなく神経生理学や情報工学を含めた認知科学全般に共通した課題である。

 このような観点から、本論文は、「仮現運動における視覚情報、とりわけ刺激の形態情報 と奥行き手ががりの役割」を問題とした。第 1 章では、史的考察、理論的背景、ならびに それに基づく問題を5つ提起し(研究1〜5)、第2章では、それぞれについて実験的検討を 行った。

 仮現運動の研究では、従来もっぱら、同一の線分や光点が刺激として用いられてきた。

しかし、形を異にする刺激間の形態関係や奥行き手ががりが運動の生起にいかに影響する かといった運動の質的側面には全く関心が払われていなかった。

 研究(1)では、刺激の幾何学的変換形式と運動の型との対応関係を、時間条件を介して検 討した。

その結果、視覚系には 4 種の形態情報の処理方式があるということ、刺激の幾何学的変換 の形式は運動の型を決定するということ、及び時間要因は 3 次元奥行き運動の生起率と関 連するという知見を得た。

 研究(2)と(3)では、マスキングによる形態情報の抑制及び主観的輪郭の導入による情報の 縮減効果を検討した。その結果、異なる 2 刺激の形態によって構成される全体的特性が、

質的にも量的にも運動知覚の生起にとって重要であることが明らかになった。

 研究(4)及び(5)では、動的遮蔽知覚及び仮現運動の軌道に及ぼす奥行き手がかりの効果を

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検討した。ここでは、両現象とも運動誘導刺激によって引き起こされる奥行き情報が重要 な規定因であり、さらにこれら現象の生起を強めるものは時間情報であるという結果を得 た。

 以上の結果を要約すると、次のようになる。刺激の形態情報や奥行き情報は、仮現運動 の型、動的遮蔽、奥行き軌道といった運動知覚の質的側面と密接に関連する。また時間情 報は、形態情報や奥行き情報に規定される運動の質をより安定させる方向へと作用する。

以上の知見は、視覚系における知的、推理的振る舞いを示唆するものであり、仮現運動に おける高次の統合的プロセスを解明する端緒となるものと期待される。

 また、本研究の成果は、コンピュータグラフィックス、バーチャルリアリティーヘの応 用はもとより、領域形状、相対的奥行き、隠蔽関係等に基づく画像符号化の技術的発展に 寄与するものと思われる。

 よって本論文は、芸術工学博士の学位論文に価するものと認められる。

最終試験の結果の要旨

 本論文に関し、審査委員より、1)実験で用いられた刺激の幾何学的変換形式の中、トポロ ジー変換図形について、2)研究の成果が、具体的に応用分野でいかに適用できるか、との質 問があったが、十分満足な説明が得られた。また、論文内容、発表等より学力も十分と認 められた。

 論文公聴会には、学内・外より多数の出席者があり、講演内容について活発な討論が行 われたが、いずれも納得のいく説明が得られた。

 以上の結果により、著者は、試験に合格したものと認定した。

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