マーケティングへのフロー・アプローチ
著者 光澤 滋朗
雑誌名 同志社商学
巻 58
号 1‑2‑3
ページ 1‑25
発行年 2006‑11‑30
権利 同志社大学商学会
ドウシシャ ダイガク ショウガッカイ
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007350
マーケティングへのフロー・アプローチ
光 澤 滋 朗
はじめに 蠢 原義 蠡 実証研究 蠱 意義 蠶 その後の試み
おわりに
は じ め に
マーケティングへのフロー・アプローチ(flow approach to marketing)とは,マーケ ティングをフロー,つまり流れの観点から研究することをいう。
このアプローチでは,論者はまずいくつかのフローを設定し,その各々について分析 を進める。設定されるフローはその数や内容とも論者によって相違する。たとえば
Buck- lin(1970)は漓商品それ自体の移転,滷名義(所有権)の移転,澆交換(交渉)の移
転,潺情報の移転,潸資金の移転をあげ,またRosenbloom(1991)も同様に 5
種類で あるが,漓商品フロー,滷交渉フロー,澆所有権フロー,潺情報フロー,潸促進フロー と,「資 金」が な く「促 進」が 入 っ て い る な ど や や 異 な1
る。Stern(1989)や
Bell
(1996)は,そのネーミングや順序はやや異なるが,以下の
9
フローをあげてい2
る。漓 物的占有フロー,滷所有権(または名義)フロー,澆促進(または販売促進)フロー,
潺交渉フロー,潸金融フロー,澁危険負担フロー,澀注文フロー,潯支払いフロー,潛
市場情報(または消費者情報)フローがそれである。
このようにフロー分類は論者によって様々であるが,諸論者の試みでやや疑問に思わ れることは,第
1
にフローといわゆる機能との関連である。この点について,たとえば ある論者はいう。「フロー表とマーケティング機能表との間には明白な類似性がみられ る。それは偶然の一致ではない。『機能』はマーケティング・プロセスに固有の,その 全体に及ぶ主要な経済活動である。またそれは連続的な分業を通して専門化される傾向 にある。それゆえに,マーケティング機能はチャネル全体で遂行される。これらの機能 は個別の機関よりチャネル構造と関連させて考える方がより論理的であ3
る」と。すなわ
────────────
1 Bucklin(1970),p. 18 : Rosenbloom(1991),p. 12.
2 Stern, El-Ansary and Brown(1989),p. 14. : Bell(1966)p. 121.
3 Bell(1966),p. 121.
(1)1
ち,ここではフローは事実上,機能と同一のものと考えられてい
4
る。
しかしもしそうだとすれば,以下のような問題が新たに生じる。漓フローあるいは機 能表においてほとんどすべての論者がとりあげる「所有権」および「物的占有」(「商 品」や「商品それ自体」も前後関係から「物的占有」と同じものと考えられる)は,果 してマーケティング機能といえるかどうかである。もっとも「所有権」を「所有権移転 のための機能」と解釈することも可能であるが,もしそうだとすれば「所有権」ととも にとりあげている「交換」「交渉」「促進」などの機能とそれがどのように異なるのかが 明らかにされなければならないであろう。もちろん筆者は所有権フローの存在を否定す るものではないが,所有権は「フローの客体」ではあっても,いわゆる機能ではないの ではないだろうか。同様のことは,いまひとつの「物的占有」についてもいえる。した がって,諸論者のフローあるいは機能表には,フローの客体と機能が混在しているとい わざるをえないのである。
滷いま上の所有権と物的占有を除き,一般にマーケティング機能と考えられる他のも
のについてみても,諸論者のフロー表には一般にマーケティング論でいう物的流通(あ るいは物流)機能,具体的には運送や保管などがまったく見られない点である。物流機 能はひょっとして上のフロー表の「商品」「商品それ自体」「物的占有」のフローに包摂 されると考えられているのかもしれないが,もしそうだとすれば,上の「所有権」につ いても同じことがいえるのであって,所有権がとりあげられている限り,所有権の移転 に必要な交換や交渉や促進は当然,不要となるであろう。あるいはそうではなくて,物 流機能はマーケティング機能ではないのであろうか。否,決してそうではあるまい。
第
2
のさらに重要な問題は,フロー・アプローチの目的にかかわる。フローと機能を 同一視する上の問題はいま措くとしても,フロー・アプローチによって一体,何が明ら かにされるのかである。多くの論者はフロー・アプローチを採用することによって,当 該機能またはフローが流通過程で果す役割や問題点を明らかにしている。しかしただそ れだけのことであれば,いわゆる伝統的な機能的アプロー5
チでも大なり小なり行ってき たことではないだろうか。つまり諸論者はフロー・アプローチを機能的アプローチとま ったく同じものとはいわないとしても,その延長線上にとらえているのではないかとす ら考えられる。しかしこのような取り扱いは,反面,このアプローチがもつ本来の意義 や効用を大いに減殺してきたように思われる。
以下では,先ずフロー・アプローチ本来の意味を確認し,マーケティングへのフロー
・アプローチの意義と問題点について検討することにしたい。
────────────
4 近藤(1989)も大略,同意見と見られる。
5 いわゆる「機能的アプローチ」については,森下(1956)が詳しい。
同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
2(2)
Ⅰ 原 義
フロー・アプローチに先鞭をつけたのはブレイヤー(R. F. Breyer)である。本節で はまずかれの所説を通して,フロー・アプローチの原義を確認することにしたい。
1
ブレイヤーの研究ブレイヤーがフロー・アプローチに言及しているのは,Breyer(1934)および
Breyer
(1949)である。
まず
Breyer(1934)では,商品流通現象が電流現象に類似すると見る特異な発想か
ら出発する。すなわち,彼によれば,電気は必ず陽極から陰極に流れるが,それと同様 に商品も陽極(=供給力をもつ企業や個人)から陰極(=需要力を持つ企業や個人商 品)に流れる。もちろん等しく流れるとしても商品流通上の特殊性は存在する。第
1
に 陽極(=売り手)と陰極(=買い手)はそれぞれ陽電荷(=販売ニーズ)や陰電荷(=購買ニーズ)をもつこと,第
2
に販売・購買ニーズは必ずしも一種類のものではないこ と,第3
にこれらの電荷は取引の完了とともに消滅するなど,がそれである。これらの 条件の下に,陽極と陰極は互いに相手をサーチ(=探索,接触)し,スパーク(=交 渉)し,回路が閉鎖され(=売買契約が成立し),電気が流れる(=注文,商品,支払 いが流れる)と見る(第1
図,参照)。なお次頁図については以下の注意が必要である。
(1)商品の受け渡しと代金の支払いが同時に行われる場合は,「注文」は省略される が,そうでない場合は,買い手から注文書または買い受け契約書,売り手から注文請け 書または売り渡し契約書が発送される。
(2)「注文」「商品」「支払い」の
3
フローは,売買契約の成立(「申込み」を意味する 注文書の送付)およびその履行(「引き渡し」および「代金の支払い」)にかかわるが,それ以前には取引そのものを成立させるフローが存在する。「販売」や「購買」がそれ である(彼は「購買」「販売」という伝統的な用語に代えて「接触」「交渉」という,個 別行為ではなく相互行為に注目する)。なお,彼の機能(あるいは課業)表は,接触,
交渉,保管,測定,品質決定,包装,輸送,支払い,金融,危険負担の
10
からなる が,このうち,保管から輸送までの5
機能は「物流」にかかわり,金融および危険負担 の2
機能は「取引」および「物流」を援助・補完する機能と考えられる。(3)流通機関のうち代理商(販売代理商及び購買代理商)は特異な働きをする。すな わち,代理商は一般に依頼者の代理人として行為するに過ぎないから,通常の商人(卸 売商や小売商)と異なり上の「極」を構成しない,したがって供給力あるいは需要力を もたない。代理商は「注文」のフローには関与するが「商品」および「支払い」のフロ
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (3)3
ーにはかかわらない,としている。この点は,機能と機関の相互関連を考える場合に重 要な指摘と見られる。
要するに,彼の主張は,流通機関と流通機能をそれぞれ別個に研究するのではなく,
両者を相互に関連づけることによってマーケティング(商品流通または移動)を研究す るところにある。これはまたかれのいう「制度的アプローチ」でもあ
6
る。
第1図 マーケティング回路
(1)回路閉鎖前
(2)回路閉鎖後
出所:Breyer(1934),同訳書,98, 102ページ。
同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
4(4)
生 産 者
生 産 者 倉 庫
販 売 代 理 商
卸 売 商
営 業 倉 庫
小 売 商
消 費 者
Sa G
Se T
迂回 機能委託
また,後年の
Breyer(1946)は,フロー・アプローチをさらに発展させている。す
なわち,フロー客体としての商品を「商品それ自体」とその権利である「所有権」に分 け,その両者と流通機関との関連を追及している。下図がそれである。上図からも明らかなように,「販売」と「商品」のフローではそれぞれ持ち手が異な る。さらに「販売」のフローも「販売活動」と「移転活動」に分けると,ここでも持ち 手が異なる。ただここでは,salesと
selling
など,用語上やや紛らわしい点が見られ るが,商品を商品それ自体(物的占有)とその名義や権利である所有権に分けて,その フローを研究しようとする点は明らかに看取される。ここに,いうところのフロー・ア プローチはその大枠において完成すると見てもよい。2
ヴェイル=グレサー=コックスの研究ブレイヤーはフロー・アプローチを開拓したが,彼の所説を継承し体系化したのは,
Vail, Grether and Cox(1952)である。彼らが提示する次頁図は,すでに半世紀も前の
────────────
6 ブレイヤーのマーケティング研究方法は「商品別アプローチ」と「制度的アプローチ」からなるが,後 者は機関と機能の相互関連からマーケティングを研究することにある。したがってフロー・アプローチ は彼のいう「制度的アプローチ」を具体化したものと見てもよい。
第2図 マーケティング・チャネルの構成
備考:Sa : sales, G : goods, Se : selling, T : transfer 出所:Breyer(1949),p. 31.
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (5)5
物的占有 所有権 販売促進
交渉 金融 危険負担
注文 支払い 原
材
料
生
産
者
物的占有 所有権 販売促進
交渉 金融 危険負担
注文 支払い 加
工 業 者
・ 製 造 業 者
消
費
者
・
個
人
企
業
ものであるが,今日でも多くの論者がとりあげる図でもある。
なお上図は先のブレイヤーの図と比較して,漓原初的売り手と最終的買い手の間に中 間項が挿入されていること,滷フローとして各種のものが想定されていること以外は特 に大きな変化は見られない。ただ上図には,漓「物的占有」と「所有権」が「販売促 進」から「支払い」までの
6
機能と並置されている,滷運送や保管などの物流機能が欠 落しているなどの問題が見られる点に注意する必要がある。この点はまた以後の多くの 論者に誤解と混乱を与える元となったが,彼ら(とくにコックス)によるその後の実証 研究(後述)を勘案すると,漓「物的占有」と「所有権」はフローの客体である,滷「販売促進」以下の
6
フローは機能である,澆上図は所有権フローの例示であり,物流 機能は省略されている,と考えられる。なお,フローの客体と機能を区別し,物流機能も含めて,フロー全体を整理すると下 表のようになろう。
要するに,フロー・アプローチとは,原義的には,流通客体である商品(商品それ自 体と所有権の両者が含まれる)を対象に,流通機能と流通機関との相互関係から,流通 システムの構造と問題点を明らかにする方法である。
第3図 マーケティング・フロー
注:→はフローの方向を示す。したがって最初の3つのフロー,「物的占有」「所有権」
「販売促進」は売り手から買い手に流れ,最後の2つ,「注文」「支払い」は逆に買い 手から売り手に流れる。また中間の「交渉」「金融」「危険負担」は双方向的に流れる ことを示している。なお原文では,上図には見られない「情報」が双方向的に流れる 機能として説明されているので,「情報」も加えるとフローは全部で9つになる。
出所:Vail, Grether and Cox(1952),p. 107.
第1表 フローの客体と機能
客 体 所有権 商品それ自体
機 能
接 触 交 渉 金 融 危険負担 情 報
運 送 保 管
!"
!"
#
同 左 同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
6(6)
カントリー エレベーター 農家
製粉業者
混合飼料
会社 卸売業者 小売業者 消費者 ターミナル
エレベーター
マカロニ 製造業者
製パン 業者
Ⅱ 実 証 研 究
Breyer
(1934)によって開拓されたフロー・アプローチはその後,Vail, Grether and Cox(1952)に継承され体系化されることになるが,それと並行してその実証研究がみられ ることになった。ここではとくにコックスによる精力的な努力が注目され
7
る。以下,そ の概要について見ることにしよう。彼の実証研究には,産業レベルと国家レベルのもの がみられる。
1
産業レベルの研究Cox and Goodman(1956)による『建材マーケティング』は,フロー・アプローチを
建材業界に適用したものである。もっともこれと類似の研究はそれ以前にも見られる。たとえば古くから各種農産物の流通実態を調査してきた合衆国農務省の流通調査などは その典型例である。いま一例として,小麦および小麦関連製品のフローについて見る と,下図の通りである。
もちろんフロー・アプローチが単に流通量を明らかにすることだけであれば,これで も十分である。しかしここでは流通の機能的関連が明らかでなく,したがってまたフロ ー・アプローチでいうところの機能と機関との相互関係も明らかではない。つまりこの
────────────
7 なおこれと関連して,かつて故E. T.グレサーはR.コックスを評して,「フロー分析はコックスのマー ケティング分析方法で最も重要なものとなった」と指摘したことがある(Grether 1986, p. 116).
第4図 合衆国における小麦,関連製品の物的フロー
備考:上段数字:流入額 下段数字:流出額 差額:加工付加価値
A:5,000万ポンド以下
出所:U. S. Department of Agriculture, Bureau of Agricultural Economics, 1939.
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (7)7
※フィラデルフィア以外の場所はすべて仮名。
0 1 2 3 4 5 6 7 8
57 58 59 60
69 70 71 72 73 74
86 87
115 116 117
176 177 178 179 180 181
ウィンドウ・ユニット(56+)
ウィンドウ・ユニット(56#)
ガラスのはめ込み(21#)
ガラスのはめ込み(21#)
枠組づくり 6ft.b.m.net.
加工 加工 在庫品カット 在庫品カット
フィラデルフィア フィラデルフィア
輸送 輸送
輸送
建築場所 倉庫
倉庫 作業場
倉庫 倉庫 サイディング サイディング
―
― サイディング
工場 工場 倉庫 倉庫 サイディング
―
―
―
― 荷下ろし
保管 保管 組み立て
保管 保管 荷下ろし 荷下ろし
―
― 荷積 ガラス工事
保管 サッシ製造
サッシ製造
保管 保管 切断 保管 保管 荷下ろし
トラック
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
アイオア州 リバートン
アイオア州 リバートン
鉄道車輌 単位輸送 鉄道車輌 単位輸送 鉄道車輌 単位輸送
製材品の 製造業者 製材品の
製造業者
製材品の 製造業者
―
―
―
―
―
―
―
―
― 荷下ろし
移動
移動 荷積
―
―
―
―
―
―
―
―
―
― 移動
―
―
― 荷積
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
― 1005
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
― 2277
―
―
―
― 建築業者 小売業者
小売業者 鉄道会社
鉄道会社
鉄道会社
製材品の 製造業者
製材品の 製造業者
180ewt 208+税 製材所
正価 規定 運賃 配送 費
小売業者
―
―
―
―
―
―
―
―
― 小売業者 小売業者 鉄道会社
鉄道会社
―
―
―
―
―
―
―
―
―
― 鉄道会社
小売業者
―
―
―
―
―
―
―
―
― 鉄道会社
鉄道会社
―
―
―
―
―
―
―
―
―
― 鉄道会社
17.64 4.03 3.84 3.70 2.19 1,166
製材品の 製造業者
建築業者 小売業者
小売業者
―
―
―
―
―
―
製材品の 製造業者
建築業者 小売業者
小売業者 仲買業者
仲買業者
移動−
荷下ろし
移動−
荷下ろし
屋 外
施設 作業 施設 作業 移動 製品 屋外施設 移動施設 製品 移動施設 場所※
形 態 価格 料金
時間 移 動 作業管理 所有権
荷 積
− 移 動
− 荷 下ろ し
ような調査ではフローの量的側面は明らかであるとしても,その質的側面の詳細が不明 である。
さて,コックスらの研究は『建材マーケティング』は,建材流通における機能と機関 の相互関係を明らかにし,いずこに問題があるか,またその改善策としてどのようなも のがあるかを検討する。
(1)分析目的
家屋コスト低減の一環として建材マーケティングの効率的な方法を探索することにあ
第2表 フロー・チャート
出所:Cox and Goodman(1956),p. 42.
同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
8(8)
る。調査対象としてフィラデルフィアのあるタイプの家屋が選ばれた。その家屋は連邦 住宅庁(FHA)のモデル住宅で「単一家族が住み,2階建ての
6
部屋,1風呂付きの1
戸建,石基礎の住宅」である。1951年夏の標準価格は13,250
ドルであり,内,原材料・資材費が
9,300
ドル(70%)で,残額が敷地・造成費用,建築業社の間接費・利益,工賃,運送費など流通費となっている。
(2)分析用具
分析用具として「フロー・チャート」と「製品モノグラフ」が開発された。
「フロー・チャート」は家屋の建築に必要な原材料(木材製品,金属製品,非金属製 品,各種の合成製品が含まれる)が生産現場から建築現場に移動する過程の詳細(移動 距離,日数,その間の作業,作業者,作業施設,作業内容ほか,製品の所有権者,価格
・料金など)を明らかにした一覧表である。本調査では家屋原材料の中から
43
品目が 選ばれた(これらは総重量の95%,価値の 81% を占める)
。これらの品目中の一例と して,ウインドウ・ユニットについてみれば,前頁表のとおりである。この表から,マーケティング作業量を算定するための資料が得られる。たとえば,分 析中の製品や先行材料の各々の存在場所と日々の変化,形態変化の時点と場所,荷役の 時期と業者,運送の距離やその業者,材料と運送施設を手配した業者,材料と運送施設 の所有権を持つ業者,材料の所有権が変化する日時,主要段階における材料の価値,支 払われた料金(とくに運賃)などがそれである。
他方,「製品モノグラフ」は,「フロー・チャート」を開発するさいの基礎資料を提供 する。たとえば,43品目のそれぞれの重量,価格,加工日数,荷役場所・期間,輸送 トンマイル数,参加企業数・取引数,一日あたりの投資額などについてみれば,次頁表 の通りである。
この表では,フィラデルフィア地区の住宅で使用される材料が,少なくとも
148
のさ まざまな地域から採集,加工,取引されたこと分かる。建築資材は各種の運搬車に積み 込まれ,新しい場所に移動し,加工・保管や建築に使用するために積み下ろしされ,そ れが全体で424
回も及んでいる。遂行された輸送の総額──5万トンマイル──は,1 軒の住宅をニューヨークからワシントンに移送するのに等しい額であった。これらの資 材を最初の採取地点から建築地点に届ける日数は424
日,またそれに投下された累積資 本は約30
万ドル,また370
近くの識別可能な事業単位がこの資材の流れに参加したこ とを明らかにしている。(3)分析結果
以上の建材フローの分析から,彼らは以下の結論を得る。
漓輸送関係
一般に建材の流通では「不必要な輸送が多い」と批判されるが,そのための確かな証
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (9)9
蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆 蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆蟆
拠は見当らない。たとえば輸送距離についてみれば,建材の多くは(総重量の
10
分の9)は建設現場から 100
マイル以内という近距離から輸送されている。また廃棄物の輸送については,建材では一般に廃棄物が大きな問題となるが,廃棄物は建材の種類に応 じて区々である。廃棄物が多く出る建材(たとえば,鉄,胴,石などを使用した非木材 製品)は,産地で事前に処理されているが,問題は木材製品である。木材製品は産地で 事前に処理するのがよいのか,あるいは建築現場で加工切断されるのがよいのか,いい かえると「投機」がよいのか「延期」がよいのかは,物流コストや現場のニーズなど具
第3表 製品モノグラフ
「モデル」住宅に含まれるマーケティング作業
材料製品
重量
( ポ ン ド)a
価値
(1995 年のド ル)
最大加 工日 数b
荷役場 所数c
荷積,
移動,
荷下ろ し時間
輸送の トン−
マイル 数
参加企 業数c
取引 数d
一日当 りの投 資額
パーセント 総重量 総価値 トン−
マイル 投資額
A.木材製品 木材:
マツ寸法………
マツの板と小板………
ベイマツ寸法………
斜角を付けたサイディング
(ヒマラヤスギ) ………
オークの床………
ベイマツの合板………
製材:
ガラスをはめられたウィンドウ・ユ ニットになるボンデローサマツ … ボンデローサマツの塑造………
ベイマツの室内ドア………
階段製作………
台所の壁と基礎飾り棚…………
分析された製品の小計………
分析されなかった木材製品……
木材製品の合計………
B.非金属鉱物および関連製品 化粧煉瓦………
野石………
シンダーブロック………
生コンクリート………
ポートランドセメント…………
10,249 6,088 3,420 197 1,163 224 896 556 374 497 230 23,894 1,464 25,358 55,300 110,000 34,020 28,900 10,156
398.50 242.85 144.79 58.83 164.18 27.06 282.24 167.67 103.18 118.80 92.00 1,800.10 189.86 1,989.96 486.64 250.00 202.50 83.09 118.67
110 110 217 251 175 274 387 246 329 263 325
−
−
− 38 4 72 89 55
3 3 3 3 3 6 20 4 8 8 10 50
− 57e 2 2 7 5 4
3 3 4 3 3 8 22 4 10 9 11 80
− 89e 1 1 9 9 6
3,454 2,078 11,449 310 396 374 1,420 1,003 664 220 101 21,469 2,937 24,406 1,714 550 2,309 619 569
6 6 7 5 5 13 33 8 17 13 17 93
− 105e 4 2 11 6 6
4 4 4 4 3 8 20 5 11 10 11 84
− 97e 2 1 6 4 4
23,101 16,351 13,725 5,631 9,963 3,172 19,208 15,531 11,587 11,591 5,686 140,546 16,535 157,081 3,082 700 7,206 2,383 4,188
2.8 1.6 0.9 0.1 0.3 0.1 0.2 0.1 0.1 0.1 0.1 6.4 0.4 6.8 14.9 29.6 9.1 7.8 2.7
7.4 4.5 2.7 1.1 3.1 0.5 5.3 3.1 1.9 2.2 1.7 33.6 3.5 37.1 9.1 4.7 3.8 1.6 2.2
7.0 4.2 23.1 0.6 0.8 0.8 2.9 2.0 1.3 0.4 0.2 43.2 5.9 49.1 3.5 1.1 4.6 1.2 1.1
9.2 5.3 4.5 1.2 3.3 1.0 6.3 5.1 3.8 3.8 1.9 46.0 5.4 51.4 1.0 0.2 2.4 0.8 1.4 E.全材料と製品
分析された製品全体………
分析されなかった製品全体……
合計………
F.要約
木材製品………
非金属鉱物および関連製品……
単一金属製品………
各種の合成製品………
合計………
351,672 20,550 372,222 25,358 337,732 4,218 4,914 372,222
4,355.29 1,004.61 5,359.90 1,989.96 1,699.68 626.40 1,043.86 5,359.90
−
−
−
−
−
−
−
− 121
− 148e
57e 25e 19e 65e 148e
297
− 424e 89e 68e 95e 172e 424e
42,349 7,318 49,667 24,406 15,051 6,578 3,632 49,667
276
− 366e 105e 59e 68e 163e 366e
259
− 374e
97e 50e 82e 145e 374e
242,183 63,586 305,774 157,081 31,617 24,877 92,199 305,774
94.5 5.5 100.0 6.8 90.7 1.1 1.3 100.0
81.3 18.7 100.0 37.1 31.7 11.7 19.5 100.0
85.3 14.7 100.0 49.1 30.3 13.2 7.3 100.0
79.2 20.8 100.0 51.4 10.3 8.1 30.2 100.0 注:パーセントは端数処理を行なっているため,合計には加えられていない。
*0.05パーセント以下。
a 建築場所での廃棄物を控除しない重さを含む。敷地へ配送される全重量。
b 最初の重要な構成部品または先行物である製品の生産日から完成品が建築場所へ配送されるまでの日数。
c 複製物を排除した後の正味の数。
d 売買に担当する企業内移転を含む。
e 分析されなかった製品のために見積もられた正味の加算分を含む。
出所:Cox and Goodman(1956),pp. 45−46.
同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
10(10)
体的な条件による。交互輸送(同一商品が同一ルートを交互に輸送される)や逆輸送
(商品が輸送先から転送される)問題については,一般の商品では交互輸送や逆輸送が 多々見られるが建材では稀である。輸送トンマイル数については,重量のある嵩高建材 は一般に大量輸送(トラック,貨車,貨物船単位の輸送)されるため,トンマイル数は 一貫して低下してきた。
滷保管関係
多くの建材では,「集中保管の原理」(principle of massed reserves)が採用されてきた
(今日では「投機の原理」として知られている)。しかしマーケティング費用は「延期の 原理」(建築現場での保管)によっても削減される。たとえば,燃料タンク・ダクト
(通気口),窓用サッシなどは現場の条件に合わせて,切断・加工され,設置されてき た。また中継地点での廃棄鉄鉱石の保管もその
1
種と見ることができる。これらの操作 によっても,マーケティング費用は大幅に削減される。澆その他の費用削減方法
その他の費用削減方法として,原料価格の上昇に対応する方法(たとえば,基礎材,
防音材,タイル素材の価格上昇に伴う素材変更による費用削減)がみられてきたのは当 然であるが,マーケティングでもとくに嵩高品材料における直送(需要地へ直接,輸送 すること),配管や基礎作業における「下請け」(他の業者に作業を代行させる)の利用 が見られてきた。また建材業界の特殊性,たとえば漓小規模かつ多数の建築業者による 価格競争,滷売り手・買い手間の継続的取引関係も,家屋コストの削減に貢献してき た。
潺改善のための提案
最後に,改善のための提案を行う。漓統合。小規模かつ多数の業者によって構成され る業界では統合がしばしば提案されるが,この業界ではこれまで統合が発展してこなか った理由も同時に考慮する必要があるとする。たとえば,原材料の種類が多いとか,荷 役・加工過程上の差異が大きいとかが指摘されなければならない(これは中・低コスト 住宅を除いて,統合には限界があることを示している)。滷モジュール化。モジュール
(事前に調整された寸法)の使用は,家屋コストの低減に貢献すると見られる。ただモ ジュールの採用には時間がかかるので,その全体的な効果を見るためには一定の時間的 経過が必要である。澆プレハブ化。プレハブ(組立て式)住宅は輸送トンマイル数を削 減するので,費用削減効果は大きいと考えられるが,反面,大量の長距離輸送や逆輸送 が生じ,トンマイル数が逆に増大することも考えられる。したがってプレハブ住宅の費 用削減効果は非プレハブ住宅との注意深い比較研究が必要である,と見る。
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (11)11
2
国家レベルの研究Cox and Goodman(1956)はみられるように建材業界という産業レベルの研究である
が,フロー・アプローはさらに国家レベルにも適用される。Cox, et al.(1965)による『高度経済下の流通問題』がそれである。それ以前の類似のものとして有名な
Stewart et al.
(1939)の「合衆国における物的フロー」が見られるが,Cox et al.(1965)はフロー 客体として所有権をとりあげる。(1)所有権フローの実態
かれらは
1947
年度の国民所得統計データ(当時としては最新のデータ)を利用し て,合衆国における所有権の全体的な流れを計測する。まず,10の経済主体を特定す る。漓農業者,滷農業以外の採取業者,澆輸入業者,潺公益・運送・サービス業者,潸 製造・建設業者,澁中間取引業者(一般には「卸売業者」をいうが,意味が不明確であ るとして「中間取引業者」を使用),澀小売業者,潯家計消費者,潛政府機関,濳投資 業者(経済学の用語では「私的資本形成」)および輸出業者,すなわちそれである。つ ぎに,産業連関分析の手法を用いて経済主体間の所有権のフローを計測する。下図がそ の結果である。図中の矩形は
10
の経済主体をあらわす。商品およびサービスは矩形の左から流入(購買)し,右側から流出(販売)する。矩形の高さは購買額あるいは販売額をあらわ す。流出(販売)額と流入(購買)額の差額が当該経済主体による付加価値である。こ れによると,流通システムは
1947
年に取引総額6,757
億ドルのうち,4,351億ドル(2/3)の中間的な購買と販売に関与し,2,406
億ドル(約1/3)の最終的な購買と販売にも
たらしたことを示している。つまり,ごく大まかにいえば,売買
3
ドルのうち,1ドル は最終の販売であり,2ドルがその前段階における中間取引であったということを示し ている。またこの中間的取引も,その2/5
以上(42.3%)が中間取引業者と小売業者に よって行われていたことが分かる。彼らによる所有権フローの研究は,合衆国における複雑な所有権フローの実態,すな わち,所有権フローの総額をはじめ,各種のフローや迂回の実態,フローにかかわる機 関やその全体における重要性を余すところなく明らかにしている。
(2)市場付加価値の測定
しかし彼らは単に所有権フローの実態を明らかにしただけではない。この実態からさ らに経済全体の中で流通がどの程度,寄与したかを計測する。
コックスらは先ずこの種の測定に多用されてきたマークアップやグロスマージンは
「ある種の意図」(たとえば社会全体の流通費用賦課の大きさを示す)には効果的である が,それをそのまま経済各部門の付加価値額とすると二重計算をもたらすとして,産業 連関分析を利用した「流通の正味付加価値額の推計」を行う(同書,付録
C,参照)
。同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
12(12)
第5図 合衆国における所有権フロー(1947年)
備考:ブロック左側:購買額,ブロック右側:販売額,総額6,760億ドル。
出所:Cox et. al.(1965),同訳書,40ページ。
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (13)13
ただし流通の寄与分は,漓流通産業,滷流通活動のいずれをとりあげるかによって大 きく相異するとして,以下では両者を分けて検討している。
[1]流通産業による付加価値
流通産業としては,一般に卸売業および小売業があげられるが,輸送,倉庫,広告業 もこれに加えられるべきだとして,漓輸送業,滷倉庫・保管業,澆卸売業,潺小売業,
潸広告業の
5
産業の付加価値を算出する。1947年に経済は,(イ)すべての最終購買者 に対して,約2,250
億ドルの市場価値を配付した。そのうち,約2/3(1,480
億ドル)は 財貨生産業による付加価値,他の1/3
はサービス生産業による付加価値を示している。また総額
2,250
億ドルのうち,72%(1,610億ドル)は家計購買者に配付された。この2,250
億ドルのうち1,780
億ドル(79.3%)は採取業,製造業など非流通産業によって創造されたが,残りの約
470
億ドル(20.7%)は流通産業によって創造されたことを示 している。(ロ)また家計購買者に対しては,市場付加価値1,612
億ドルのうち1,670
億 ドル(78.9%)は非流通産業によって創造されたが,残りの340
億ドル(21.1%)は流 通産業によって寄与されたことを示している。つまり,1947年には家計購買者が商品 やサービスに1
ドル支出するごとに,流通産業に21
セント,非流通産業に79
セント支 払ったことを示している。第4表 流通及び非流通産業による市場付加価値(1947年)
(単位:100万ドル)
市場付加価値の生産
市場付加価値の配付
すべての最終購買 家計購買
全産業 財貨産業 サービス産業 全産業 財貨産業 サービス産業
計 (1)
$224,557
(2)
$147,860
(3)
$76,697
(4)
$161,200
(5)
$95,682
(6)
$65,518 非流通産業
農・林・漁業 鉱業 製造業 公益事業 サービス業 雑 流通産業
鉄道運送業 トラック運送業 海上輸送業 他の水上運送業 航空輸送業 パイプライン輸送業 倉庫および保管業 卸売商業 小売商業 広告業
177,963 20,978 8,306 80,959 6,359 55,575 5,786 46,594 6,094 2,656 1,551 526 157 284 292 12,949 19,448 2,637
106,489 18,922 6,517 71,593 2,246 7,051 160 41,371 5,180 2,299 1,444 437 67 231 203 10,976 18,630 1,904
71,474 2,056 1,789 9,366 4,113 48,524 5,626 5,223 914 357 107 89 90 53 89 1,973 818 733
127,205 18,471 4,596 45,445 4,940 48,475 5,278 33,995 3,384 1,650 264 321 33 190 195 8,527 17,366 2,065
65,899 16,564 3,409 38,573 1,456 5,744 153 29,783 2,706 1,395 223 256 26 153 145 6,782 16,581 1,516
61,306 1,907 1,187 6,872 3,485 42,730 5,125 4,212 678 255 41 65 7 37 50 1,745 785 549 出所:Cox et. al.(1965),同訳書,136ページ,表8−1。
同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
14(14)
[2]流通活動による付加価値
上の流通産業による付加価値は統計資料の観点からは容易に算定されるが,流通活動 を実施するのは流通産業だけではないから,上の流通産業による付加価値は現状を過小 評価することになる。そこで,流通業だけではなく,製造業・鉱業・農林水産業・サー ビス業などによる流通活動を加える。とはいえ,実際の処理はそう簡単ではない。コッ クスらは卸売業者や小売業者が若干の製造加工をすることを十分承知するものの,こと 流通業に関してはその付加価値のすべてが流通活動からもたらされた価値の追加である との仮定の下で進めている。一方,製造業,農業など非流通業の付加価値のうちどの程 度が彼らの流通活動によるものかの処理については,既存統計調査などから配分率を推 計するという方法を取っている。製造業について付加価値のうち
21.1%(家計購買財の
場合),農林漁業について10.9% が彼らの流通活動が付加した価値と見なされている。
そこで流通活動そのものによる付加価値の計算が必要となる。ただ統計データは活動に よって分類されていないから,若干の「工夫」が施されている。漓費用分析技術の援 用,滷流通産業による付加価値はすべて流通活動による付加価値とする(この仮定も完 全に正確だとはいえない。けだし,卸・小売も若干製造や加工を行うからである。しか しこれも他の産業による逆の誤差によって相殺されるものとみられる)。澆物販業に限
第5表 流通および非流通活動による市場付加価値(1947年)
──家計購買者──
計
(100万ドル)
非流通活動
(100万ドル)
流通活動
(100万ドル)
計
(%)
非流通活動
(%)
流通活動
(%)
計 $95,682 $54,941 $40,741 100.0 57.4 42.6
非流通産業 農・林・漁業 鉱業 製造業 公益事業 サービス業 雑 流通産業
運送および保管業 鉄道運送業 トラック運送業 海上輸送業 他の水上運送業 航空輸送業 パイプライン輸送業 倉庫および保管業 卸売商業
小売商業 広告業
65,899 16,564 3,409 38,573 1,456 5,744 153 29,783 2,706 1,395 223 256 26 153 145 6,782 16,581 1,516
54,941 14,759 3,133 30,431 6,618
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
10,958 1,805 276 8,142 735 29,783 2,706 1,395 223 256 26 153 145 6,782 16,581 1,516
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
83.4 89.1 91.9 78.9 90.9
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
16.6 10.9 8.1 21.1 10.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 計(公益事業,サービス
業および雑を除く) 88,329 48,323 40,006 100.0 54.7 45.3 出所:Cox et. al.(1965),同訳書,157ページ,表9−1。
マーケティングへのフロー・アプローチ(光澤) (15)15
定し,サービス業は除外している(けだしサービス産業による付加価値を流通活動と非 流通活動に分けることは不可能に近いからである)などがそれである。
家計購買者についてみれば,前頁表の通りである。
つまり,アメリカの家計購買者が
1947
年に購買した総額883
億2,900
万ドル(公益 事業,サービス業などからの購買を除く)の市場価値のうち,45.3% が流通活動によっ て付加されたという。また,これをすべての最終購買者についてみれば,下表の通り,流通活動による付加 価値は
41.7% である。
Ⅲ フロー・アプローチの意義
コックスらによるフロー・アプローチの実証研究の概要は以上のごとくである。この 種の開拓的研究には並々ならぬ創意工夫と調査上の苦労が不可避のことと思われるが,
これらの開拓的研究を通して,フロー・アプローチの意義として以下が指摘されるので はないかと思われる。
第6表 流通および非流通活動による市場付加価値(1947年)
──すべての最終買い手──
計
(100万ドル)
非流通活動
(100万ドル)
流通活動
(100万ドル)
計
(%)
非流通活動
(%)
流通活動
(%)
計 $147,860 $89,161 $58,699 100.0 60.3 39.7
非流通産業 農・林・漁業 鉱業 製造業 公益事業 サービス業 雑 流通産業
運送および保管業 鉄道運送業 トラック運送業 海上輸送業 他の水上運送業 航空輸送業 パイプライン輸送業 倉庫および保管業 卸売商業
小売商業 広告業
106,489 18,922 6,517 71,593 2,246 7,051 160 41,371 5,180 2,299 1,444 437 67 231 203 10,976 18,630 1,904
89,161 16,860 5,989 57,801 8,511
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
17,328 2,062 528 13,792 946 41,371 5,180 2,299 1,444 437 67 231 203 10,976 18,630 1,904
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
83.7 89.1 91.9 80.7 90.0
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
16.3 10.9 8.1 19.3 10.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 計(公益事業,サービス
業および雑を除く) 138,403 80,650 57,753 100.0 58.3 41.7 出所:Cox et. al.(1965),同訳書,159ページ,表9−2。
同志社商学 第58巻 第1・2・3号(2006年11月)
16(16)