• 検索結果がありません。

雑誌名 同志社商学

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "雑誌名 同志社商学"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

経済的、社会的及び文化的諸権利 : グローバリゼ ーションと人権の全面的享受に対するそのインパク

著者 嶋田 巧

雑誌名 同志社商学

巻 53

号 2‑3‑4

ページ 81‑106

発行年 2001‑12‑15

権利 同志社大学商学会

ドウシシャ ダイガク ショウガッカイ

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007222

(2)

《資 料》

経済的,社会的及び文化的諸権利

──グローバリゼーションと人権の全面的享受に対するそのインパクト──

嶋 田 巧

グローバリゼーションという語は,きわめて多義的に用いられており,明確に定義することは 必ずしも容易ではない。しかし,その特徴のひとつとしてIMF,世界銀行,世界貿易機関WTO などの国際機関が,その推進において重要な役割を演じていることは否定できない。また,それ が経済的側面だけでなく,広く社会的・文化的側面など人間の生活全体に巨大な影響を及ぼしつ つ,1999年末シアトルで劇的に示されたような反グローバリズムの動きを生み出していること も明白であろう。このような反グローバリズムの運動の背景に何があるのかを探ることは,現代 のグローバリゼーションをその負の面から照射することにほかならない。

以下は,国連・経済社会理事会の人権小委員会第53回会合(2001年8月)に提出された報告 書,Economic, Social and Cultural Human Rights : Globalization and its impact on the full enjoyment of human rights, Progress Report submitted by J. Oloka−Onyango and Deepika Udagama, in accordance with Sub−Commission resolution 1999/8 and Commission on Human Rights decision 2000/102.(E/CN.

4/Sub. 2/2001/10)の翻訳である。

この報告書は,発展の権利を含む人権の視点から,国際機関とくにWTOのTRIPS協定や紛 争解決メカニズムなどに焦点をすえて,グローバリゼーションを批判的に検討したものとして,

きわめて示唆に富む資料である。

目 次 パラグラフ ページ

序 1− 3 3

Ⅰ グローバリゼーションと人権の普遍的かつ全面的な尊重に対する

その持続的な関連 4−13 4

Ⅱ 国際経済法と国際人権レジーム:緊張と相互補完性 14−53 7

A.グローバリゼーションと知的財産権の問題 19−34 9

B.WTOにおける紛争解決 35−48 17

C.多角的諸機関と貧困現象 49−53 23

Ⅲ 国際人権法と多角的諸機関へのその適用:再構築に向けて 54−64 25

Ⅳ 市民社会とグローバリゼーション:ポジティブの拡大,ネガティ

────────────

*本号では序,Ⅰ及びⅡを訳出した。ただし,注・参考文献は省略した。

231

)81

(3)

ブの撲滅 65−71 30

Ⅴ 結論と勧告 72−75 32

1.2000年4月17日の決定2000/102のなかで人権委員会は,委員会決議1999/59を想起し,人 権の促進と保護に関する小委員会の決議1999/8に特別の注意を払い,グローバリゼーションと すべての人権の全面的な享受に対するその影響の問題とに関する研究を引き受けるために,研究 の焦点と方法を洗練するものとして小委員会と委員会によってなされた勧告に特別の注意を払い つつ,Mr. J. Oloka−OnyangoとMs. Deepika Udagamaを特別報告者として任命することを承認す ると決定した。

2.人権の促進と保護に関する小委員会の第52回会合で,特別報告者はその主題に関する予備的

なレポートを提出した。そのレポートのなかで,グローバリゼーションの主要な機関agentsの 制度的なフレームワークと,今日の世界が直面している主要な人権の諸問題として,平等と無差 別の状況に関するグローバリゼーションの諸効果に関連した諸問題に特別の注意が向けられた。

人権の遵守と保護に対する全体的なアプローチのための必要性を繰り返すコンテキストにおい て,そのレポートは,女性の状況とその生活条件を増進したり逆に低下させることもあるグロー バリゼーションのさまざまなあり方に,特別の注意を払った。多角的な諸機関MLlsの中でも特 別の検討がなされたのは国際通貨基金IMFと世界銀行であったが,そのレポートはまた,世界 貿易機関WTOについても若干の予備的な考察をおこなった。特別報告者の関心はまた,国連諸 機関とそのメカニズム全体の役割と機能,及びこれら諸機関がグローバリゼーションの問題を取 上げようと努めた方法に向けられた。

3.この経過報告は初期の研究の分析をさらに発展させている。まず第1に,それはグローバリ

ゼーションの領域で重要な特別の概念的かつ実際的な最新の発展を跡づけ,検討している。これ らのうちで決定的なものは,国際経済法と国際人権──グローバリゼーションについての論争に 組み込まれている主要な法的レジーム──との間に存在するいくつかの未解決の緊張を要約した ものである。この分析に誘われてわれわれは,学者,政治家及び活動家の間におけると同様に,

国際的フォーラムや地域的フォーラムにおいてグローバリゼーションについての論争を支配して いる,若干の最も対立的な問題を再検討する。これらは,WTOの紛争解決メカニズムの一定の 次元と同様に,知的財産権の貿易関連側面TRIPSに関する協定に特別の焦点をすえた,貿易自 由化と知的財産権IPRsの問題に関連する主要な発展を含む。それはまた,世界銀行の重債務貧 困国HIPCイニシアティブやIMFのより最近の貧困削減・成長ファシリティPRGFに特に注目 して,多角的機関における貧困撲滅に焦点をすえた人権のレビューを提供する。この報告は国際 人権法のもとでの多角的機関の諸義務を考察する。そしてグローバリゼーションの積極的な側面 を拡大しネガティブな帰結を最小限にするために,これらの諸機関や諸国家また国際コミュニテ ィによってさらなる手段がとられるべきことを力説する。この議論において,市民社会の位置を

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

82(

232

(4)

批判的に検討して終わっている。予備的なリポートと同様,グローバリゼーションの人権の次元 や個々の男性や女性がそれによって影響されるあり方に,われわれは主として関心を有してい る。その一方で,同時に,この問題の議論の継続において,重大な参加者である諸国家,非国家 アクターNSAsおよび国際諸機関の役割に光をあてている。

グローバリゼーションと人権の普遍的かつ 全面的尊重に対するその持続的な関連

4.グローバリゼーションの現象は,政策立案者,外交家,活動家及び普通の人々からかなりの 注目を集めつづけている。その広範囲にわたる影響は,21世紀の生活に深刻な結果を生み出す であろう。今日の人間存在において,グローバリゼーションのさまざまな帰結から自由な領域 は,事実上,まったくない。このようなものとしてグローバリゼーションは,国際的なコミュニ ティによる持続的な吟味と注目を要する問題である。グローバリゼーションの定義は数多くかつ 多様であるが,この報告の目的のために特別報告者は,それを次のようにみなしている。グロー バリゼーションは,国民経済の高度に増大した世界的な規模での統合によって,主として特徴づ けられる多くの属性を有する。それは主として情報通信技術ICTの発展によって刺激を受け,

グローバルな貿易の障壁の削減と資本のより速やかな移動によって促進される。この文脈におい て非国家アクター──多国籍企業からわれわれの最後の報告で検討した多角的機関まで──の行 動と政策が,特別の重要性をもった。それらは,なかんずく,国家の役割の削減,公企業の民営 化及び経済の持続的な規制緩和の強調を含む。

5.グローバリゼーションのこれらの諸側面についての論争に適切な,われわれが最も関心を有 する人権フレームワークは,何か?。初期の研究でわれわれは,人権とグローバリゼーションの プロセスとの間のリンクに関する議論が基づくべき,四つの基軸的なプラットフォームを強調し たフレームワークを精緻化した。すなわち,

(a)世界人権宣言,市民的政治的権利の国際規約ICCPR及び経済的社会的文化的権利の国 際規約ICESCRを含む人権の国際的目録;

(b)女性,子供,先住の人々など,歴史あるいは地位によってマージナル化された特別の集 団の状況やマイノリティの権利をとりあげることを企図した,より最近のインスツルメ ント;

(c)経済的自由化と人権の促進と保護に関する論争においてますます重要な役割をもってい る地域的及びサブ地域的なイニシアティブとコンテキスト;そして

(d)発展の権利−1986年宣言で具体化されたが,1993年のウィーン世界人権会議にはじま る多くの世界会議でさらに明確化された。人権の不可分性,相互依存及び相互関連の観 念は,これらに由来する。

要するに,グローバリゼーションのプロセスは,条約の中であれ慣習的な国際法の規程rubric のもとであれ,手続き的性格の諸権利から過去半世紀にわたって精緻化されてきた実体的な権利 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

233

)83

(5)

の内容まで,人権の全域に影響を及ぼす。続く分析の目的のために,人権法は主として国家の義 務に関係するけれども,それは他の実体を排除しないという事実を強調することもまた重要であ る。

6.それゆえ,人権のパースペクティブからみれば,われわれの主要な関心は,グローバリゼー ションが生み出しあるいは拡張してきた二分法と,人権の全般的な促進と保護にこれらが関連す るあり方でなければならない。一方では,グローバリゼーションはICT革命を通じて,アイデ アとその伝達の真の爆発をひきおこし,表現の自由の権利や情報へのアクセスという付随的な権 利を発露した。同様に,医療研究,宇宙踏査及びバイオテクノロジー的イノベーションなどの領 域における技術的発展の進度と速度が,巨大な重要性をもっている。これらは,健康,食料,生 活水準の改善の権利を含む人権全体を実現する希望を強めている。グローバリゼーションは,移 民,学生,学者としてであれ,あるいは単に旅行者としてであれ,人々のずっと大きな移動を促 してきた。同様に,異なった文化,エスニシティズ及び宗教の間の相互作用が,地理的な空間と 時間の圧縮によって促進された。要するに,グローバリゼーションによって生み出されてきた変 化の多くは,人権全般にとっては明瞭でポジティブである。

7.人権のフレームワーク内でより批判的にみるためには,より深く探求し調査することが求め られる。すなわち,グローバリゼーションのプロセスによって先触れされたすべての目覚しい発 展から誰が利益を得てきたのか?。どの程度までグローバリゼーションは,小農,先住の人々,

女性及び普通の働く人々──人権の法的レジームが通常関心を持つひとにぎりの異なるカテゴリ ーだけに言及するとして──を助けてきたのか?。グローバリゼーションは,その市民に対する 基本的かつ原則的な人権の諸義務を満たすために,とくに低レベルの人的発展にあり経済的諸資 源を欠いた諸国家の能力を,いかに改善してきたか?。最後に,これらの諸機関は──ローカル であれ,国家的,地域的あるいは国際的なものであれ──,グローバリゼーションの多様なプロ セスによって提起された挑戦を満たすために,必要なツールを準備して人権を保護する機能を割 り当てられているか?。こうして,グローバリゼーションの輝かしい面しかみない人によって予 告されたグローバルなコミュニケーションや技術的発展を再検討することで,それが純然たる不 均衡の海としてしか描かれえない形で生じている,という事実の認識にいたることもまた不可欠 である。世界の多くの地域における重大な病い,飢え,不適切な衣服,不十分な住居,労働脱臼

dislocation及び食料不足の持続(と増大)が,増大しつつある懸念の原因である。鉱物その他の

自然資源の利用とそのための競争の増大は,(シェラェオネやアンゴラで産出される)いわゆる 血 のダイヤモンドやコンゴ民主共和国で最も多く産出される悪名高いタンタル鉱/コルンブ 石(ColTan)において,緊張と対立を高めている。これら諸国や類似の状況にあるその他の諸国 が,難民危機の泥沼におちいっていることは単なる偶然ではない。グローバリゼーションは,強 いられた排除や移動に責任のある,しばしば認められていない諸要因のひとつである。

8.これらの発展を所与とすれば,今日の世界は,ある観察者が グローバリゼーションとマー

ジナリゼーションの同時発生 として描写したものによって特徴づけられうる。人類の一部が成 長し発展しつつある──白熱のグローバリゼーションのなかで文字通りその恩恵に浴す──一方

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

84(

234

(6)

で,他の人々はますます落胆を強め絶望に打ちのめされている。グローバリゼーションと最も密 接に結びついたプロセスは,矛盾に満ちている。たとえば, 苦汗工場 ──発展途上国に位置し て,しばしば過酷な条件のもとでの長時間労働に低賃金を支払っている多国籍企業の子会社──

で存在する諸条件は,決定的な注目を集めてきたほんのわずかな問題だけに言及すれば,健康へ の権利,労働条件,及びジェンダー差別に関連する多くの人権的諸問題を引き起こしてきた。し かしながら,そこで発展をみた苦汗工場は,これらの諸国(とくに東南アジア)における成長,

開発及び繁栄のエンジンであったと,一部の観察者は論じた。グローバリゼーションは自由貿易 の観念と密接に結びついているけれども,アメリカやEUの加盟国など多くの開発諸国は,逆 に,経済政策の基礎的な制度として保護主義的なレジームと補助金を維持している。他方で,発 展途上国はそれ自身の経済を開放し,自由化するように圧力を受けている。皮肉にもこれら諸国 は開発世界の経済,とくに比較優位を持つ農業や繊維などの部門にアクセスする試みおいて,な お巨大な障害に直面している。

9.グローバリゼーションはこのようにして巨大なベネフィットをもたらしてきたが,それはま た,とくに世界の発展途上地域や低開発の災難を免れてきたと信じられている世界の諸地域にお いてさえも,重大な社会的な脱臼dislocationをもたらしてきた。この問題のこうした検討にお いて,グローバリゼーションが単なる自由貿易,増大する投資,自由化された金融レジームの問 題ではないということを,われわれは想起しなければならない。むしろグローバリゼーションの 諸効果は,広範な領域の──社会的,文化的次元から経済的,環境的,政治的次元まで──,コ ンテキストにおいて明白である。北部ナイジェリアにおける最近の交戦状態の増大を,グローバ リゼーションの影響の増大と部分的に結びつけて,Ali Mazruiは次のように論じている。 グロ ーバリゼーションの反響のひとつは,それが経済的スケールの拡張とともにエスニック的文化的 なスケールの破砕を促進することである 。このようにして世界中でグローバリゼーションは,

諸社会に多様な影響を及ぼしている。

10.グローバリゼーションの諸プロセスが,社会的緊張と政治的軋轢の増大という状況のなかで 生じていることにかなりの懸念がある。生活のあらゆる歩みから引き出された活動家達のグロー バルな運動の成長は,グローバリゼーションの不利な諸結果についての論争において,発言権を 得ることを追求している。このようにしてケベックは,グローバリゼーションの多様な諸結果に 対する抗議──それは1999年11月のシアトルから始まった──にさらされた一連の諸都市のな かで最新の都市となった。本年のメーデー(国際労働日)の頃にみられたほとんど同時的な世界 中の諸都市における反グローバリゼーションのデモは,何か深刻な問題があることを例証してい る。人権のパースペクティブからみると,これらの運動の組織と活動及びそれに対する報復は,

表現の自由,集会,結社の権利に関連して多くの問題を引き起こした。究極的にはそれはまた,

参加,排除及び差別についての問題──人権の全域を構成し多くの諸機関のコアにある人権レジ ームの諸特徴──も提起している。最小限,人権活動家は,国家当局によってこうした抗議が処 理される方法について,またこれらの抗議が向けられた諸機関がそれによって提起された諸問題 に対する関心を,どの程度示しているかについて,懸念を表明しなければならない。

経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

235

)85

(7)

11.グローバリゼーションは,それゆえ,単なる経済学の問題ではない。それはすぐれて政治的 な現象である。こうしてグローバリゼーションの政治と取り組むことは,国際的な経済と統治の オールタナティブな構造をデザインするための不可欠の前提である。グローバリゼーションの政 治を理解することは,次のことを意味する。反グローバリゼーションの抗議を,反戦行動に陶酔 した時期に郷愁をもつ不満を抱く前ヒッピーの陰謀として,単純に片付けることは誤りである。

グローバリゼーションが生み出した不均衡に対して適切に対応するためには,Balakrishnan Ra-

jagopalのことばを借りれば, ……シアトルの抵抗を,貿易ゲームのなかで敗北した何百万の

人々の声として ,いっそう深く熟視し認識することが必要である。特殊的には貿易自由化のプ ロセスについての,一般的にはグローバリゼーションのプロセスについての将来及び進行中の議 論にとって,シアトルの激動から引き出された多くの教訓および示唆がある。最も重要な教訓 は,最も適切な方法でグローバリゼーションのポジティブな側面を拡張し,ネガティブな側面に 立ち向かい除去するために,立ち止まって批判的に熟考することの緊急の必要である。そのとき にのみわれわれは,人権の保護と促進を主眼とする持続的な人間発展の目標に対して,グローバ リゼーションのプロセスが敏感に反応することを確保しうる。

12.特別報告者の意見では,上述の発展はグローバリゼーションが超越的に進行するのではない こと,さらにその基本的な教義が論議から排除されてもいないことを例証している。すなわち,

それは 自然的な出来事,統合された経済成長と発展の不可避的なグローバルな進展 ではな い。むしろグローバリゼーションの現象は,人間社会の産物である。このようなものとしてそれ は,特定のイデオロギー,利害及び機構によって誘導されている。換言すれば,グローバリゼー ションは人類が形成してきた諸構造から独立した,アプリオリなあるいは必然的な存在ではまっ たくない。それゆえこれらの諸要因を考慮しながら,グローバリゼーションと関わり,それとと りくむことが不可欠となる。このようにしてその条件と帰結に向きあい,また検討するための多 様な方策を確認できる。そうすることで,グローバリゼーションによって提出された可能性と限 界は何か,そしていかに戦略的かつ創造的にそれと取り組むことができるかを,われわれは自ら に問わねばならない。グローバリゼーションと人権に対するその影響に関する議論において,最 も重要なのは,その現象を具体化し促進する意思決定プロセスへの意味のある参加と包含の諸原 則を,われわれがいかに支持し,また聴取の機会を求めている多様な見解を認識することを,ど のように確保するかということである。その現象をはっきりと支持するにせよ反対するにせよ,

これらの見解は,グローバリゼーションの諸力の前進的な展開によって関連づけられてきた,人 権の諸問題をとりあげるためのより全体的なアプローチの追求において重要である。

13.グローバリゼーション論争における二つの側面を,相互にずっと熱心に語る必要があるとの 認識が高まっている。一方では経済協力開発機構OECD, G 7,毎年ダボスに集まる世界経済フ ォーラムWEFなどの諸機構によって代表されるグローバリゼーションの主要な推進者と,他方 では他のところでその会合を広めている異議申立て者やその他の批判家の間におけるモノローグ

(ダイアローグというよりむしろ)によって,われわれは圧倒されている。二つの極端の間で,

われわれは現在の決定的な諸問題に対応しなければならない。諸国が経済的自由の増大という教 同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

86(

236

(8)

義を支持するならば,グローバリゼーションは実際にすべてのものにベネフィットを生み出す慈 悲深い力であろうか?。国連におけるグローバル・コンパクトからアフリカ成長・機会法AGOA や米州自由貿易地域FTAAに向かう動きに及ぶ,無数の双務的及び多角的なイニシアティブの 現実のベネフィットは何か?。貧困とその帰結への焦点の転換は,グローバリゼーションのより 思いやりのある 形態のための脱出口を提供するであろうか?。このような疑問に対する答え は,グローバリゼーションのプロセスによって押し出されている根本的な諸問題を解決しないで あろう。だがそれは,とくに国際的な人権の促進と保護に卓越した位置を与えるというパースペ クティブからみて,われわれが問題を創造的にとりあげることのできるきわめて多くの方法の一 部に取り組むことに役立つであろう。

国際経済法と国際人権のレジーム:緊張と補完性

14.進行中のグローバリゼーションの諸プロセスと関係する主要な法的レジームは,主として,

国際貿易,投資及び金融に関連するものである。概括的にいえば,それらは国際的経済法の範疇 にはいるもので,主要には国際経済の内部における発展を支える諸原則と制度的メカニズムに関 係する。このようなものとして,国際的人権法と国際貿易,投資,及び金融を統括する法との間 の結びつきと緊張に関するわれわれの検討は,次のような多くの基本的な疑問を前提としうるで あろうか。すなわち,国際貿易,投資,金融のリベラルなレジームは──とくにグローバリゼー ションの支配的な擁護者によって支持された──,いつでも人権の促進と保護を助長するか?。

第2に,国際貿易,投資,金融の増大と人権の間で,必要な支援の相乗効果や連関は存在する か?。最後に,二つのレジームが対立するような状況は存在するか?。これらの予備的な疑問を 背景として,この両方の法的なレジーム(とくにそれらに影響を及ぼすように企図した制度的メ カニズム)が,いかにその諸目的のバランスを実現してきたか,とくに持続的な人間的発展とい う目標の達成を追求してきたかを,考察する。そうすることによって,われわれは二つの法的な レジームが素朴に自足的に分離して存在するとの一般的な誤解を提示する。二つの法的機関のノ ルムと基準を創出し採択してきたのは,同じ実体(諸国家)であるから,必要となっていること は,両者の間でより大きな一貫性を確保することである。

15.上にあげた疑問への答えは明快ではない。これらから生じるさまざまな概念的な諸問題につ いての拡張された議論にたずさわることは,われわれの意図することではない。次のように言う ことで十分である。すなわち,国際経済法は,大部分は明らかに,国際的人権に多くの注意を払 ってこなかったのであり,その逆もまた事実である。発展の権利RTDの議論が再生するまで,

人権法とそのプラクティスは,大部分,諸国家の責任と義務に関連してきた。国際経済の現行の 規制システムは,人権やその他の社会的価値にとっての余地あるいは時間をほとんど有していな い。基準は存在しているけれども,人権の諸原則の普遍的な批准,適切な実施あるいはグローバ ル経済を運営するメカニズムまたは機構への統合は存在しない。実際,最近まで,グローバル経 済に重要な役割を演じる世界銀行,IMF,及びWTOなどの多くの諸機関の側は,その問題に関 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

237

)87

(9)

して幅広い議論をすることを顕著にいやがってきた。その上こうした議論が生じたときには,こ れらの諸機関の活動,政策,統治の手続き及び説明責任を人権政策に統合するより,むしろ対外 的な次元に主として焦点をすえてきたのである。このような状況において諸国家──原則として 人権システムに責任を持つと認識されている──は,深刻なハンディキャップに直面する。なぜ なら,こうした諸機関によって諸国家に課された諸義務のために,その人権的な諸事業が掘り崩 されたりあるいは侵害されるであろうからである。当該の関心の究極の主体と想定されている諸 個人は,これらの諸機関において常任の有効な代表を欠いているため,いっそう不利にさえな る。このハンディキャップは,経済的社会的文化的権利の委員会CESCRによるグローバリゼー ションに関する初期の声明のなかで注目された。現在も該当するものとして,それは続いてい る。こうした諸機関が本質的に諸国家から構成されていることは事実であるが,このような想定 は,その活動や政策形成のコンテキストにおいて,諸国家が直面しているパワー,諸資源及び不 平等の諸関係をとりあげていない。発展の権利の宣言が発表された背後で,その論争を特徴づけ たのは,まさにこのような懸念である。

16.一方で,国際的人権の促進と保護に関連する法的レジームは,それ自身,問題から自由では ない。人権の普遍的性格についての主張にもかかわらず,概念的な性格のものであれ実施的な性 格のものであれ,いくつかの問題が未解決のままである。このようにして国際的人権法の狡猾な カテゴリー化が,人権の不可分性,相互依存及び相互関連に関するウイーン宣言の発表や,CESCR によるこの権利のカテゴリーを明確化するための注目に値する努力にもかかわらず,継続してい る。市民的政治的権利に関してはリップサービスをする一方で,実施,資源あるいはいわゆる非 司法性non-justiciabilityによって制約されることで,それは時として,ネットでは,経済的社会 的文化的諸権利の重要性を削減する効果をもった。第2に,国際的人権の実施メカニズムは,も し行動を促す政治的あるいは経済的性格をもった圧倒的な利害が存在しなければ,脆弱かつおざ なりなものにとどまる。Antony Anghieの見解によれば, ……グローバリゼーションを促進す る諸機関や諸アクターが,その事業において一致団結する一方で,人権や社会的福祉を保護する 機能をもつ重要な国際的な諸機構は,グローバリゼーションに挑戦するより,躊躇し,懐柔する ことを,より多く意図しているように思われる 。

17.これらの緊張を背景として,グローバル経済における新しい発展から,一部の諸国がベネフ ィットを得ていないという問題は残っている。このような諸国における多くの諸個人も,国際的 人権への注目の増大から何も得ていない。多くの途上国が,逆説的にも,WTOレジーム内部で 導入されたメカニズムは単に保護主義の偽装にすぎない,と論じていることは驚くべきであろう か?。なぜなら,それはより低い労働基準と環境的基準を持つ発展途上国が,平準化された市場 で競争する権利を否定しようとしているのであるから。過去10年間,多くの諸国──とくに発 展途上国と後発途上国LDCs──が,すべてグローバリゼーションのプロセスから最大限のベネ フィットを引き出すという名目で,自由な為替相場,(農産物を含む)商品のための市場と価格 の規制緩和,貿易・金融障壁の撤廃を含めて自由化された経済に関するすべての基本的な教義 を,採択するのを目撃してきた。しかしながら,後発途上国に関する国連貿易開発会議UNCTAD

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

88(

238

(10)

の最近の報告における結論は,明るいものではない。すなわち,最貧国の経済のほとんどはなお ひどい状況にあり,部分的には,単一の現金穀物への依存,援助国の不十分な支援,そして戦争 とクーデターの介在のために,一部の国では自由化以前よりも悪化さえした。だが問題は,まさ に自由化の政策とプログラムの概念化に由来するものであろう。

18.これらの問題を所与とすれば,両方の法的レジームに問題があることは明白である。Steve

Charnovitzのことばにおいては,国際貿易法は ……一つの国家がその市民に負うノルムを設立

するうえで,より多く国際的な人権法のようになる ことが必要である。その一方, 国際的な 人権法は,強制的な紛争解決と不承諾に対する潜在的なペナルティを通じてノルムを実施する国 際貿易法のように,より多くなることが必要である。 緊張を解決しより密接に二つの法的レジ ームを結びつけることが,とるに足らない仕事でないことはまったく明らかである。報告の次の 節では,知的財産権IPRsの問題,WTOでの紛争解決,及び貧困に関する論争における世界銀 行とIMFの進展する役割に特別の焦点をあて,そのギャップを埋めることに貢献することを,

われわれは希望する。

A.グローバリゼーションと知的財産権の問題

19. WTOのTRIPs協定のインプリケーションと同様に,IPRsと人権の関係ほど,この研究にお いてわれわれが関心を持った緊張を,劇的に示した問題はほとんどない。知的財産は,何年もの 間認識され,保護されてきた。実際,人権宣言(第27条2項)及びICESCR(第15条1項)で さえも,そのインスツルメンツにおける他の諸権利との関連でその地位について多くの論争があ ったけれども,こうした諸権利に一般的に言及している。しかしながら,IPRsと貿易の結びつ きは,より最近の争点である。あるパースペクティブからは,TRIPSは,国際貿易の成長,情 報技術の爆発,不適切なIPR保護──とくに技術輸入国における──に起因する競争力の侵食 に対する懸念と,IPR紛争解決のメカニズムの一方的な利用の結果であったと,論じられてい る。他のものは,より広い資本主義的発展の政治経済と,グローバルな経済的段階において独占 を維持するための発展した工業諸国と多国籍企業による要求という文脈において,TRIPSをと らえている。真実が何であれ,一般にIPRsは特殊的にはTRIPS協定は,国際的な人権の全面的 な遵守と保護に重要な意義を有している。とくに,まず第1に,IPR論争に含まれた私的利益と 人間的利益の競合に対して,TRIPSが適切にバランスをとっているかどうかについて,疑問が 生じる。第2に,その協定が,個人の権利対集団/コミュニティの権利という観念の間で,そし て生物多様性の持続的な利用及び幾世代に渡る知識,利用,保護の非西欧的形態の認識という文 脈における環境保全の観念の間で,必要なバランスを達成したかどうかについて,懸念が表明さ れてきた。最も広い意味においては,これらの諸問題は発展の権利の諸議論と結びついている。

より特殊的には,多くの他の人権,たとえば健康,食料,文化,適切な生活基準及び健全で持続 的な環境もまた,その論争にまきこまれている。

20. TRIPSは,IPRsに関する以前の国際協定を,大幅に統合し,強化する。この点で,TRIPSは 実質的に新しいものではない。しかしながら,グローバリゼーションと人権の全面的な遵守に対 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

239

)89

(11)

するこの協定の最も重要な意義は,IPR保護の普遍化,調和化及び最小限基準の適用と,WTO 紛争解決メカニズムを通じた実施の方法にある。ウルグアイ・ラウンドの他のアジェンダとは対 照的に,TRIPSに対する交渉は貿易の自由化についてのものではなかった。むしろそれは,よ り多くの保護とより厳しいコントロールについてのものであった。これが意味するものは何 か?。多国籍企業が最大の比率のIPRsを保有していることを所与とすれば,その交渉の主要な 脅威が独占的企業のパワーの強化を有利とした点にあることは,きわめて明白である。こうし て,開発諸国におけるIPRsの所有と強力な非政府アクターの集中を促進するTRIPSについて表 明された懸念は,きわめて理解しうる。これはとくにIPRの有力な規定が,知識の使用者より むしろその生産者(あるいは所有者)の利害をより多く考慮しているので,うなずける。要する に,TRIPSのもとでのIPRsの保護は,国際経済法におけるパラドクスを代表する。それは自由 化の基本的な教義と対立して,独占的な制限とコントロールを支持している。国際的な人権に関 しては,パテント所有者は競争を阻止し,また従属を創出するために,あるいは,単に適当な時 点でたなぼた的な利益を得るために,独占的制限の時期を利用することができるので,このよう な保護は基本的な人間存在に深刻な諸結果をもたらしうる。健康,食料,情報へのアクセスの権 利及び教育への権利さえその実現の進展を確保すること以上に,より高度の優先権がこうした独 占のコントロールに与えられる危険がある。このような独占的コントロールは,モノカルチャー の発展と生物多様性の喪失をもたらしうる。それによって普通の農民の生活する権利が影響を受 け,低開発諸社会の発展を何も助けない従属の諸条件と不均等なコントロールが発生する。Van-

dana Shivaのことばによれば, 企業の戦略と生産物は商品の多様性を導くことはできるが,そ

れは自然の多様性を豊かにすることはできない 。

21.協定の多くの条項が,無視できない注目の焦点となってきた。とくに第27条1項(パテン

トの主題の問題に関する),第27条3項(植物多様性と生物資源に関する),第33条(パテント の条件に関する)及び第65, 66, 67条(過渡期,後発途上国の状況,技術協力に関する)であ る。発展途上国及び後発途上国にとって,TRIPSの主要な意義は,実質的に国内のIPR法制の 検討,拡張及び強化を,一定の期間内に引き受けることである。このようにして,協定で採択さ れた諸基準は,主として開発諸国のコンテキストと意図から引き出されたものであるから,IPRs 実施の点でTRIPSはこれらの諸国の肩にかかる負担をかなり増加させた。協定が,全面的なIPR 保護の逆効果から守る手段をとることをこれら諸国に許容するように企図したいくつかの条項を 含んでいたという事実にもかかわらず。それはたとえば,第6条(非差別的 並行輸入 )第7 条(技術革新と移転の促進),第8条1項(公共の利益と同様公衆の健康及び栄養の保護),第8 条2項(研究の例外, Bolar 条項),第30条(パテントの例外),第31条(その他の使用すな わち 強制ライセンシング )及び第40条(反競争的慣行のコントロール)である。だが,これ らの保護手段が適切であるかどうかについて,また裁量の余地が人権にネガティブな影響を持ち うる一定の曖昧さを残していないかどうかについて,疑問が生じてきた。これらの懸念と,適合 のために行使された巧妙なあるいは公然たる圧力が,制限あるいは規制のどんな試みも無効にす るであろう,という事実が結びついている。実際TRIPSが,IPR保護の高い水準を確立するよ

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

90(

240

(12)

うにこれら諸国に向けられた一方的な圧力を終焉させる(あるいは不法化する)であろうという 希望は,大部分,根拠薄弱であったことが証明されてきた。換言すれば,TRIPSは法的レジー ムについてのものであると同様に,政治的経済的パワーに関するものである。協定の解釈と実施 がWTOのメンバー諸国の手中にあることはきわめて明白であるが,パワー,影響力,資源の格 差が,実際に協定に規定されている裁量の余地を明白に制限している。

22. TRIPSにおいて最も論争的な人権問題のひとつは,第27条1項で規定されたパテント保護 の物質とプロセス両方への拡張である。TRIPSの実施以前には,多くの途上国は,製薬プロセ スに対してパテントを許容していたが,最終物質には許容していなかった。他の途上国は,医薬 品をパテント法の領域から単に除外していた。これはパテントを持つ医薬品のジェネリック版を 現地で製造することを可能とした。このようにして医薬品のコストを引下げることができただけ でなく,現地の技術革新の開発能力も拡張した。パテント保護は現地で製造されたものだけでな く輸入された製品もカバーすべきであるとTRIPSが規定しているゆえに,一部の観察者は,あ る製品のパテントがその権利を供与している国の内部でワークする必要はまったくない,と論じ てきた。この議論に従えば,パテントをコントロールする企業は,その国への技術移転あるいは 外国直接投資の代りに最終製品を輸出することで,パテント独占のもとでグローバル市場に供給 できる。こうした立場は,現地の技術の発展と人間生活の他のいくつかの領域に深刻な意味をも ちうる。それはまた,人々の生活条件を実質的に改善するであろう,新しい高価な諸技術へのア クセスに関する問題を引き起こす。この問題は,最近撤回されたアメリカとブラジルの間におけ るWTO紛争の核心であった。そこでブラジルは,特許を供与する前提として,製品が現地で製 造されなければならないという要件(いわゆる 現地ワーキング 条項)を,国内法において課 すことを求めた。この問題は灰色の領域にとどまっている。なぜなら,手続きの中止は,その条 項の権威ある解釈がまったく存在しないことを意味したからである。いうまでもないことである が,人権の漸進的な実現に深刻な結果をもたらしうる手段を実施するために,アメリカがWTO に頼ることができるという事実は,次のことを示す。最低でもTRIPSにおける保護は,乗ずる 隙のないものではないことである。さらに,和解はこの問題に関するアメリカの立場の変化を現 わすものではない。

23.一般にグローバリゼーションのいくつかの挑戦と結びついているIPRsと健康の必要につい

ての固有の論争は,健康の権利の実現を提起する。世界保健機構WHOは,次のことに注目し ている。適切に運営されていない保健市場やあるいはこれに追加できるであろう利潤動因が卓絶 した市場で生じうる,潜在的に重大な帰結に対して保護することが重要である。多くの発展途上 国における保健政策が,グローバリゼーションの要求にますます対応することを強いられてきて いる状況において,病院その他の形態のヘルスケアや巡回サービスのコストの増大,そして老齢 者のケアのプライバタイゼーションを含むいくつかの結果が生じている。さらに医薬品と同様に ヘルスケアに対する利用者の料金の支払いは,政府支出が圧縮あるいは全面的にカットされた構 造調整プログラムSAPsと関連している。

24.これらの経済的改革の手段すべてが,到達できる最高度の健康基準を享受するという人権宣 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

241

)91

(13)

言の第25条1項及びICESCRの第12条に規定された基本的な人権の漸進的実現に,実質的に

(そしてほとんどネガティブに)影響を及ぼしてきた。とくに後者は,次のことを規定してい る。この権利の全面的な実現の達成のために諸国家によってとられるべきステップの中でも,

感染症,皮膚病,職業病その他の病気の予防,治療及びコントロール と 病気の際にあらゆ る医療的サービスと世話を確保するための諸条件の創出 のために必要な措置が含まれるべきこ とを。こうした背景に反して,IPRsはとくに発展途上及び低開発のコンテキストにおいて,特 別の関連を有している。とくに1975年から1997年の間に市場に出された新しい化学物質のわず

か1% だけが熱帯病に関連するものであったという事実を考慮するならば,IPRの保護基準の強

化は,必ずしも人権の遵守を改善しないであろう。パテント保護の厳密なレジームは,有効な医 薬品がパテントで保護され,それによって禁止的に高価となることを意味しうるであろう。最後 に,もし保護の主要な目的が(より広い社会的目的よりむしろ),市場をコントロールするもの の利害に役立つことになるならば,その時には,製薬企業がいわゆる 利益にならない病気 を ターゲットとする新薬を開発するインセンティブは,さらに減退さえするであろう。

25.状況はTRIPS領域の外部で,複合している。なぜなら,協定で規定されたよりも拡張的に

IPRの保護を付与するように,諸国に圧力がかけられているからである。これはいわゆる TRIPS プラス のコンテキストというフレームワークの内部にあることである。TRIPSの最小限20年 間を超えるパテント期間を拡張し,TRIPSのもとで必ずしも規定されていない方法で強制ライ センシングを制限し,そしてジェネリクスの迅速な導入の促進に例外を課すように国内法を制定 する試みとして,WHOによって描かれたこうした方法は,人権を促進し保護するための全面的 な闘いの強化に帰結するであろう。eコマースなどのグローバル経済のエマージング部門に拡張

的なTRIPSを適用することは,もう一つのこうした手段である。これらのタイプの圧力に関す

る追加的な問題は,それらがほとんど,フレキシビリィティがよりいっそう制限される二国間の 文脈で,行使される点にある。このような懸念は,たとえばアメリカ経済への市場アクセスの可 能性によって誘導されたAGOAのコンテキスト内で生じてきた。アフリカ諸国は,TRIPS協定 で規定されたより高いIPRsの承認と保護に関して,譲歩を強いられるであろう。

26.上述の挑戦を所与として,多くの諸国が,TRIPS協定が許容するより制限的と考えられる

立法を企図してきた。多くの途上国と後発途上国は,強制ライセンシング及び並行(あるいは 灰色の )輸入などのメカニズムを用いている。前者がパテントの終了以前における強制ライセ ンスの供与を含むのに対して,後者はパテント保有者の承認なしにある国から他の国への製品輸 入を含んでいる。このような手段は,TRIPS協定のもとで禁止されていないが,それにもかか わらず,発展途上国政府と多国籍製薬企業の間に対立を生みだしてきた。ほとんどの対立は,HIV

/AIDSの治療を意図した救命的な医薬品を焦点とするものであった。これらの医薬品をめぐる闘

いのもっとも顕著な例は,ケニア,インド,ブラジル,ガーナ,及び南アフリカに関連したが,

それは唯一のケースではなかった。南アフリカでは対立は,医薬品及び関連品規制(修正)法に 関して生じた。製薬企業のパースペクティブからみた最も論争的な条項は, より入手可能な医 薬品の供給を確保する手段 と題された新しい15 C節であった。その条項は,単なる行政的措

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

92(

242

(14)

置によっていつでもパテントと商標権を無効とする権限を保健相に与えるように求めている,と いう見解を製薬企業はとった。39の会社が,法の発効を阻止すべく,南アフリカ政府を提訴す るために相互に団結した。提起された行動は,世界的な規模で注目を集め,市民社会を行動に駆 り立て,実際に提訴の取り下げをもたらした。

27.提訴の取り下げは,医薬品とくに最近まで禁止的な高価格であったHIV/AIDS治療のため

の医薬品に対する,より大きなアクセスの可能性を追求する側の重要な成功を示した。要する に,それは健康の権利を漸進的に実現するための一つの勝利を代表する。しかしながら,これら の最近の発展は,非常な犠牲を払って得られた引き合わない勝利にすぎない。多くの観察者が,

この取り下げが一時的な猶予を代表するにすぎない,という事実を指摘した。Samanta Senによ れば, 取り下げの決定は,社会的な責任の突然かつ共同の発見というより,むしろ戦術的な動 きであった。判決が製薬企業に不利なものであろうことについて,すでに裁判所から十分な示唆 が存在していたのである。 多くのEU諸国が南アフリカの立法を支持する声をあげたが,アメ リカとイギリスは,沈黙することで目だった。国際貿易の舞台における企業と政府の利害の結び つきを大胆に浮き彫りにして示すことで,アメリカは企業に戦術的な支持さえ与えた。これらの 諸政府に対する企業アクターの全体的な影響と,この訴訟事件以前,問題が宣伝活動の破局とな る様相を示すまで,アメリカ政府が南アフリカ政府に対して双務的な圧力を行使しようと試みた という事実を所与とすれば,こうした支持が先細りになるとは思えない。同じ問題がブラジルに 反対するアメリカの措置に関連して生じたが,それ自体は,インドに対する類似の措置に先行す るものであった。本年1月のブラジルのケースでは,アメリカはブラジルの1996年工業所有権 法に反対して,すなわち,その法律は輸入された製品を差別しTRIPSを侵害すると論じて,WTO に公式に申立をおこなった。紛争に関するヒアリングを延期し,ブラジルを一方的な貿易制裁を 許容するスペシャル301条の 監視国 に指定して,双務的フォーラムのなかで(インドと南ア フリカの両方のケースでそうであったように)圧力を強めた。WTOに対する申立の停止を声明 したときでさえも,アメリカは双務的フォーラムにおいてさえ,問題を蒸し返す権利を留保し た。これらの展開とあらゆる方面からの厳しい批判の波のなかで,製薬企業は防衛的な宣伝を続 けた。HIV/AIDSの予防,研究,治療におけるいくつかのイニシアティブを発表し,またとくに 若干のアフリカ諸国では,以前には高い価格をつけていた医薬品をジェネリクスに匹敵する価格 で提供さえしたのである。

28.その信認のために,WTOもまた,進行中の協定のレビューという全体的な文脈の内部で,

結核,マラリア,HIV/AIDSなどの病気を撲滅する必須救命医薬品へのアクセス可能性と入手可 能性にとってのTRIPSの意義に取り組んできた。たとえば,TRIPS理事会は,貧しい諸国によ る低価格薬へのアクセスに対する,IPRsと医薬品パテントの影響に関する特別討論を開いた。

最近の声明においてWTO事務局長Mike Mooreは──Jeffrey Sacks教授のような経済学者の声 に合流して──,製薬企業が豊かな国より貧しい諸国で医薬品に低い価格を設定する,異なる価 格付けのアイデアを広めた。 研究のために巨大なリスクをおかしている 企業に報いるパテン トシステムなしには,反AIDS薬は存在しないであろう,と主張しながら。Moore氏は,発展途 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

243

)93

(15)

上国のためにこうした医薬品へのアクセスを改善する新しい方法を見出さねばならないと述べて いる。WTOとWHOによる最近の共同セミナーは,異なる価格付けと必須医薬品のファイナン シングの問題にもっぱら焦点を据えた。これらの協議から生じてきた若干の示唆は,豊かな国と 貧しい国の間で異なる価格を設定すること(厳密なパテント保護を継続しながら),イノベーシ ョンのためのインセンティブを保護するための二つの市場の分離,そして グローバル・ヘルス 基金 の創出を含んでいる。WTOはまた,その協定の範囲に関してUNAIDSと重要なリンケ ージを設立した。

29. WTO事務局によれば,これらの諸議論を特徴づけているのは,生命を救うというより広い

社会的人間的目標(TRIPS第7条で確保された)と発明やイノベーションに対する製薬企業の 意欲を阻害しないことを確保する必要のあいだの, バランス の探求である。バランスの必要 はきわめて明白であるけれども,次のことに注目せざるを得ない。その尺度が一方に傾いている のでなければ正当化されないほどに,コスト回収の問題とイノベーションや発明を保護する問題 に,ずっと大きな優越性が与えられている。利潤動因は(あるいは実際には単なる投資回収の追 求でさえも)決して,製薬分野であれ技術的発明の他のどんな分野であれ,新しい発明の背後に ある唯一の要因ではない。抗ウイルス薬のコストにおいて価格引下げあるいは市場区分化の追求 にほとんど排他的に焦点を当てることは,人権に関連する二つの主要な問題をまったくとりあげ ないことである。第1は,引下げられた医薬品の価格でさえも,常に貧しくマージナル化された ほとんどのHIV/AIDS患者にとっては,なお禁止的であろう事実である。これはアクセスと

(ICESCR第12条のことばを用いれば) …最高の健康基準… の達成の問題が,なお適切に提 起されていないことを示唆する。第2に,それは,TRIPSの第7条,第8条,ICESCRのいくつ かの条項及び発展の権利の宣言に規定された,技術移転及び社会的経済的技術的発展を伴わない で,多国籍企業に対する発展途上国の不等な依存を継続する。このような依存は,より腐食的で ないあるいは現在市場で利用できる抗AIDS薬の多くに付随することが周知のネガティブな副作 用をもたない,現地または独特の代替薬を見出す努力をさらに阻害するであろう。一括してとり あげれば,健康への権利に対するその含意は,まったく明白である。

30.インセンティブ/異なる価格付け論争に対して,追加的な人権の次元がある。まず第1に,

かなり多くの救命医薬品のテスト及び臨床的な治験が,途上国や後発途上国あるいは開発諸国の より特権的でない出身の人々に関して実行されている。R & Dプロセスにおけるこのようなイ ンプットは,ほとんど認識されていない。皮肉にも,試験的治験のために自らを提供した人々と おなじ層の人々が,禁止的なコストと不正なパテントシステムのために,まさに最終的医薬品に よるベネフィットから排除されているのである。第2に,R & D投資の強調は,都合良く,こ の研究のためのファイナンスの一部が公的資金からきているという事実への言及をおこたってい る。すなわち,その際,このような投資からひき出されるベネフィットは,主として私的利害に 還元されるべきであると主張することが,どのように正当化されうるであろうか。最後に,(豊 かな諸国と貧しい)諸国の間における価格の差別化に焦点をすえることは,開発諸国内において もまた同じ薬を入手できない多くの人々がいるという事実の考察を排除する。これはアクセスの

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

94(

244

(16)

困難なまたは不親切なヘルス・ケアシステム(コストの点であるいは適切な社会的福祉メカニズ ムの欠如の点で)あるいは,人種,ジェンダー,性的オリエンテーションその他の形態の差別の ためであろう。議論が主としてイノベーションと発明の保護を保証する方向に歪められてきたの で,その問題に全体的かつ人権に鋭敏な方法でなおアプローチしなければならない。

31.上のことすべてを所与として,特別報告者の熟慮した意見は次の点にある。厳格なパテント 保護をイノベーションと発明の促進に不可欠として擁護する議論は,資本の所有者に過大な特権 を付与するものである。すでに指摘したように,これらは常に多国籍企業でありがちである。グ ローバルな人間の安全保証にネガティブな影響を及ぼすと考えられる,HIV/AIDSのような病気 にとって有効な医薬品の発展を促進するために,他のインセンティブを適切に提供することがで きる。医薬品へのアクセスに関するTRIPS理事会の最近の特別討議における欧州同盟EUのこ とばを借りれば,必要とされていることは, ……補完的な社会,経済,保健政策と実践の混合 である 。さらに,より広い社会的責任の問題がある。それは以前には,ポリオのような病気に 関連して訴えられ,最近では,HIV/AIDSのような病気に対して,多くの民間や公的部門の対応 をもたらしている問題である。その価格を引下げることに極端に抵抗してきた多くの製薬企業 は,今や,競合するジェネリクスと匹敵する価格で(そしてより安価で)販売するために争って いる。このことは,R&Dのコストについての議論が,以前に主張されたほどの重要性を持たな いという事実を,証明している。これらの理由のために,価格と市場の差別化に関する議論は──

TRIPS理事会の会合でアフリカグループによって指摘されたように──, 医薬品へのアクセス

を改善するためのより広範な一連のイニシアティブの一部 としてのみ考慮されるべきである。

このようなより広いイニシアティブは,その定式化において人権の指標を含まなければならな い。

32.生命形態,植物新品種及び事前の広い同意のない現地の人々の知識に基づいた技術に関する パテントの問題は,IPRsについての現代の論争において最も対立的なものである。多くのコメ ンテイターは,次のように論じてきた。TRIPS第1条は,協定におけるどんな言及の遺漏も保 護的な法律の実施に対する障害として考慮されるべきでないという理由で,伝統的な知識の保護 を包括するに十分なほど広い,と。他のものは逆の見解に立って,こうした権利の承認のために より明白な規定が必要とされる,と主張した。事実は,この問題がIPRsについての議論のフレ ームワーク内で,優先されてこなかったことにある。少なくとも伝統的なIPRレジームは,個 人主義的及び私的財産に基づくIPRに対するアプローチとは適合しないグループあるいは集団 的権利の概念を認識する上で,一定の困難を有している。さらに,資本集約的農業における殺虫 剤やその他の手段の利用の増大をともなって,種子やバイオ産業で生じている独占化のプロセス の増加に懸念が表明された。 遺伝子略奪gene pirating のプロセスはまた,こうした海賊行為 を禁止するために技術的産業的諸資源が単に不適切である国の農民にとって深刻な意義を持つ。

世界中の小農は,企業独占のプラクティスによって抹殺されるほかないという脅威の増大のもと にある。これらの経済主体が,同様の諸資源を持たない諸国にもたらすことのできる,巨大な商 業的政治的な強打の利用・誤用に関連するこれらのプラクティスに対して,主要な恐れが表明さ 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

245

)95

(17)

れた。

33.これらの問題のほとんどが,TRIPSの実施に先立つものであることはきわめて明白であ

る。すなわち,バイオパイラシー──伝統的な形態の知識の開発と私的な専有──は,数世紀も さかのぼるプラクティスである。それにもかかわらず,グローバリゼーションとTRIPSによっ て創出されたさまざまな実体的かつ手続き的なフレームワークの文脈の内部において,これらの 諸問題が重要となってきた。このような理由によって,なかでもTRIPS協定の第27条3項b を焦点として,非常に大きな注目がおかれるようになってきた。それは基本的には,植物と動物 のパテント適格性からの除外と,パテントによるものであれ独自のsui generisシステムを通じ たものであれ,植物新品種の保護の除外に関連する。生物多様性,農民と農業コミュニティの諸 権利,公衆衛生及び伝統的なコミュニティの間における知識形成のプロセスの承認に関連する多 数の疑問が,これらの諸問題に関する論争に包含されている。植物新品種のためのパテントシス テムかあるいは独自のシステムのデザインの導入に関連して,諸国(とくに発展途上国と後発途 上国)は二つのレベルで主要な挑戦に直面している。第1は,概念の問題で,そこでは食料安 保,持続的な農業経営の諸問題及び環境的に持続可能な作物の発展が十分に考慮されて,問題が 商業的な種子育成者の権利の保護に還元されるべきではないことである。第2の挑戦は,パテン ト保護と実質的に異ならない保護のレジームを採用するように,このような諸国にもたらされて いる政治的圧力に関連する。このようにして,多くのこれら諸国は,植物育成者の諸権利を支持 する植物新品種保護の国際条約UPOVのもとで創出されたレジームの採択を強いられている。

このような圧力は,人類にとって非常に重要な領域における独占的諸権利の創出を導きうる。

IPRsを土地の権利と比較して,Cullet教授は,次のように述べた。 生物多様性の運営における 知的財産権の導入は,もし財産権の配分がとくにすべての人の基本的な食料の必要の実現を促進 するために引き受けられないならば,正確に同じ欠陥を持つであろう。 こうして,この問題に 関して人権に鋭敏なアプローチを一貫して維持することは,第27条3 b項の継続的なレビュー

におけるTRIPS理事会と同様に,このような諸国の責任である。

34.この問題に関する議論は,多くのフォーラムでおこなわれている。例えば,アフリカ統一機 構OAUによって提案された,現地コミュニティ,農民及び種子育成者の権利の保護とバイオ資 源へのアクセスを規制するためのアフリカモデル法制は,生物多様性条約CBDに沿った形で,

現地コミュニティ,農民及び種子育成者の保護とバイオ資源へのアクセスの規制とのあいだにバ ランスを樹立することを求めている。植物新品種を保護する問題とそれに関連する多くの倫理 的,政治的及び人権の諸問題は,製薬企業に対する闘争とほとんど同じような注目を集め,論争 となった。権利のパースペクティブからは,それがIPRsと人権の間の結びつきに関する全体的 な議論にとって,同様に重要であり死活的であることに疑問はまったくない。この点では,それ は確実に,今年11月にカタールのドーハで開催が予定されている第4次WTO閣僚会議での主 要な論点となるであろう。こうして人権のパースペクティブを射程に入れることを確保すべく,

この問題に関する議論を積極的にモニターし貢献することは,国際社会の責任である。グローバ リゼーションに関して対立する法的なフレームワーク内で,緊張と補完性に関する検討の継続に

同志社商学 第53巻 第2・3・4号(2001年12月)

96(

246

(18)

おいて,われわれは今や,WTOにおける紛争解決メカニズムに眼を向けることにしよう。

B. WTOにおける紛争解決

35.最近,開発諸国と発展途上国の両方で,WTOの紛争解決システムはかなりの注目を集めて

きた。たとえば,アメリカでは強制的な紛争解決システムの裁定が,主権を侵害するであろうと の若干の懸念が表明された。他方で,発展途上国にとって主要な問題は,そのシステムのアクセ スの容易さ,公明正大さ,独立性,そしてWTOレジームが不均等な舞台で機能するという事実 にそのシステムが実際にセンシティブかどうか,ということに関連する。ウルグアイ・ラウンド は,より古いGATTレジーム(1947年)におけるずっとルーズでインフォーマルなメカニズム とは対照的な,洗練された紛争解決システムを導入した。WTOの紛争解決了解DSUは,その 機関の全メンバーを強制的に拘束するシステムを詳細に規定している。DSUで詳細に示された スキームは, 貿易法の国際的なルール の維持を援助する,ルールに基づいた貿易レジームの 機能にとって枢軸であると,WTOによって考えられている。DSU第3条2項が言明しているよ うに, WTOの紛争解決システムは,多角的な貿易システムにとって安全保証と予測可能性を 提供するうえで中心的要素である。

36.実際に,紛争解決のルールに関する確実さは,所与の法のレジームにおいて潜在的に信認を 拡大する。しかしながら,どんな制度的なメカニズムも,とくに性格上司法的で法のルールを促 進することを追求するメカニズムは,司法への平等なアクセスの提供,公明正大さ,及び独立と いう特質を,必ず保持しなければならない。さらに有効な救済と実施の提供について,利害関係 者の側に信認があることが肝要である。紛争解決機関DSBによって採択された紛争解決パネル DSPsや上級委員会ABの,さまざまなレポートによって指摘された実体的な諸問題の分析にた ずさわるより,報告のこの部分ではむしろ,より多く体系的な観点から紛争解決メカニズムを評 価することに努める。換言すれば,我々はここでは,そのメカニズムにおける実体的な諸要素よ り,むしろ手続き的な要素に関心を寄せている。なぜなら,それらは人権の促進と保護に,より 直接的な意義を有しているからである。一方では,それは有効な救済策へのアクセスと加盟国と くに発展途上国の正当な法的手続きに関する権利の諸問題を生じる。他方では,DSPsの非代表 的な性格や政府官僚のパネリストとしての任命などの体系的な諸問題が,特定のイデオロギー的 なポジションに偏向したシステムを生みだすであろうという深い懸念がある。それは,たとえば GATT第20条あるいはTRIPSレジームの例外のもとで,厳格な自由貿易に対して人権や環境的 懸念とを均衡させる既存の可能性を,とりわけ不当に損なうであろう。実際に,既存のWTOシ ステム内で,こうした均衡を最大限可能な限り実現することの決定的な必要性を認識する人によ って,紛争解決メカニズムに関連した期待が保有されるべきことは,必然であるにすぎない。特 別報告者は,この目標を達成するために,以下に明らかにした体系的な諸問題のプロブレマティ ックな性格を,建設的な方法で認識しとりあげる必要があるとの熟慮した見解に立っている。

37. DSUは多層的なシステムを導入している。歓迎すべき動きの中で,そのシステムはフォーマ

ルな裁決に非敵対的方法を結合する。紛争当事国はまず協議あるいは 斡旋 ,仲裁,調停を通 経済的,社会的及び文化的諸権利(嶋田) (

247

)97

参照

関連したドキュメント

 平成1 0年1 2月に図書館が定めた「関西大学図書館がめ 図書館フォーラム第8号 (2 0 0

同志社商学 第6 1巻 第4・5号(2 0 1 0年1月).

同志社商学 第6 0巻 第3・4号(2 0 0 8年1 2月). 6

同志社商学 第5 7巻 第2・3・4号(2 0 0 6年1月)..

同志社商学 第5 6巻 第2・3・4号(2 0 0 4年1 2月). 2 4

同志社商学 第5 5巻 第4・5・6号(2 0 0 4年3月).. 2

同志社商学 第5 4巻 第4号(2 0 0 3年2月). 5

同志社商学 第5 4巻 第1・2・3号(2 0 0 2年1 2月). 1 9