シティズンシップという言葉は「市民権」、「市民性」な どと訳されて使用されていますが、なじみがあるとはいえ ません。社会で個々人が必要としている資質のことです。
一人ひとりが協力したり、みんなで一緒になって進めたり する必要があるでしょうが、十分とはいえません。特に若 者には課題があります。若者は社会との結びつきよりも、
自らの考えを優先させがちです。若者のこのような行動や 態度は大人になるため、また自立する点では有効なので すが、社会人になるうえでは十分とはいえないでしょう。
【第1期:英国シティズンシップ教育の研究】 若者の 社会性育成は多くの国で課題とされてきました。20世紀 末、それに対していち早く対応したのが英国でした。英 国は、その対応策として、学校の教科として「シティズ ンシップ」を設置し、意図的に育てようとしました。そし て、それに必要な要素を示しました。それが社会的道徳 的責任、コミュニティへの参加、政治的リテラシー(そ の後、多様性とアイデンティティを付加)です。これら の要素とその構成の仕方が世界に大きく影響し、教育学 や社会科学の領域で活発にシティズンシップ教育の研究 が行れるようになりました。筆者たちのグループもこの一 端を担い、英国関係機関の調査を通して、英国のシティ ズンシップ教育の現状を集約しました(写真1)。
【第2期:グローバル・スタンダードに基づく日本のシ ティズンシップ教育の位置と発信】 続いて、世界と日本 のシティズンシップ教育の関係を研究し、グローバルな 視点から見て、我が国のシティズンシップ教育を意義づ け、その成果を “Citizenship Education in Japan”
(Continuum、2011)として刊行しました(写真2)。
本書は、世界に日本の教育事情を体系的に説明し、日本 型というシティズンシップ教育の基本形態を発信するこ とができました。
【第3期:世界のシティズンシップ教育の比較とその類 型化】 世界には、多様なシティズンシップ教育が存在し、
それぞれについて各研究者が研究しています。シティズ ンシップ教育を研究している国際学会CitizEDの第9回国 際会議を筆者のグループが引き受け、東西の比較を行い ました。さらに国際会議を開き、各教科、品格や徳とシティ ズンシップの教育を比較し、多様な類型化を図っていま す(写真3・4)。
シティズンシップ教育は学校だけでなく、社会全体の 問題です。社会を構成する人々が、家族、学校(小中高校)、
大学、会社、地域社会など、それぞれの社会組織に関わ ることが必要です。シティズンシップ教育を社会組織の 構成員教育の一形態と位置づけ、学校とともに社会でも それを具体的にどのように教育としての枠組みを構築し ていくかがこれからの研究課題となっています。
関連するwebサイト
http://www.hiroshima-u.ac.jp/orp/interview/IkenoNorio/
http://hiroshima-u.jp/gcdc_yr/interview_p/22_ikeno 研究の背景
研究の内容と成果
今後の課題
シティズンシップ教育の研究
広島大学 大学院教育学研究科 教授
池野 範男
〔お問い合わせ先〕 TEL:082-424-6799 E-MAIL:[email protected]
関連する主な科研費
2005-2008年度 基盤研究(A)「我が国との比 較を視点にした英国シティズンシップ教育の計画・
実施・評価・改善の研究」
2009-2012年度 基盤研究(A)「グローバル・ス タンダードに基づくシティズンシップ教育の評価研究」
2013-2016年度 基盤研究(A)「多様性と民主主 義を視点としたシティズンシップ教育の国際比較研究」
写真1 共同研究の成果報告書(2009) 写真3・4 第9回CitizED国際会
議(2013年東京開催)
写真2 “Citizenship Education in Japan”(2011)
人文・社会系
Humanities & Social Sciences■科研費NEWS 2016年度 VOL.2 6
最近の研究成果トピックス
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