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沖縄県石垣市におけるカーボンマイナスツアーと 環境保全活動への助成

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(1)

1 はじめに

地球温暖化や自然環境の変化などにより、環境に対する意識が高まるなか、宿泊業界や航空 業界などの観光関連産業においても省エネルギーや自然環境の保全などの取り組みがみられる。

特にカーボンオフセット

1)

に関しては、観光業界においても導入が盛んになってきた。また、

環境保全活動への助成に関して、企業や団体などが企業の社会的責任(CSR)として助成する団 体を公募し、その活動に対して助成を行うことも増加している。自然環境を主な観光資源とし ている観光地では、持続可能な観光を維持するためにも、観光と環境を関連づけた取り組みが 必要となっている。

上江洲(2011a、2011b)は観光と環境に関する研究として、ごみやし尿などの一般廃棄物 の対応や宿泊施設の環境保全対策に関する取り組み内容やその意識について明らかにした。し かし、観光関連産業におけるその他の環境保全の取り組みは明らかに出来なかった。

以上のことを踏まえ、本稿は石垣市を 事例に、石垣市商工会のカーボンマイナ スツアーと石垣市内の観光関連産業が中 心となって設立された「美ら海・美ら山 募金推進協議会」の取り組みを中心に、

離島観光地における観光関連産業の環境 保全への取り組みを明らかにすることを 目的としている。

なお、本稿は、沖縄国際大学沖縄経済 環境研究所の研究プロジェクト「八重山 地域における観光と環境に関する総合調 査」(2009〜2010年度)の一環として、

2009年9月に聞き取り調査を行い、その 後、補充調査として2011年9月に行った 聞き取り調査とその他の資料などから作 成した。

Vol.2 March 2012, pp.1−16

沖縄県石垣市におけるカーボンマイナスツアーと 環境保全活動への助成

―石垣市商工会と美ら海・美ら山募金推進協議会の取り組みを事例としてー 上江洲 薫

0 8D

石垣島 

竹富町  石垣市 

石垣やいま村 

やいま大通り  牛種子牧場  モニターツアー  で植樹した畑 

● 

● 

● 

● 

平久保 

久宇良  明石 

伊原間  多良間 

大田  伊野田  吉原  米原 

川平 

平久保 

久宇良  明石 

伊原間  多良間 

大田  伊野田  吉原 

川平  崎枝 

名蔵 

於茂登  開南 

宮良 白保  平得  登野城  新川  美崎町 

冨崎  牛種子牧場 

モニターツアー  で植樹した畑 

崎枝 

宮良 白保  平得  登野城  新川  美崎町  竹富 

冨崎 

図1 研究対象地域の概略図

(2)

2 石垣市商工会のブランディングプロジェクト

(1)石垣島ブランディングプロジェクトの特徴

石垣島ブランディングプロジェクトは、2010年に石垣市商工会の事務局長になった平田睦氏 の熱意から生まれた。石垣島出身である平田氏は渡嘉敷村商工会より石垣市商工会に転勤して 石垣島の状況を見て、観光の経済効果の推計値よりも地元事業者に経済効果をもたらしていな いことを感じた。そこで今後は県外大手や外資の企業による開発では地元への経済効果が少な いため、地元への経済効果を高める仕組みが必要であること、また、2006年に2012年に石垣 新空港の開港することがわかり、大手資本や外資が増加していくことにより更なる経済効果の 流出が予想されため、ブランディングプロジェクトのような仕組みづくりが必要であった。

したがって、カーボンマイナスツアーは、当初から環境をテーマに観光を行うことが真の目 的ではなく、石垣島の事業者などに収入が得られる仕組みづくりを作り上げることが目的であ った。そして、このような仕組みづくりには、石垣島の事業者や住民などが持続的に行えるブ ランド化が必要であると考えられた。以上の理由から、ブランディングプロジェクトの目的は、

地域内経済循環システムの構築と持続可能な観光産業とし、石垣島の地域や住民が豊かにする ことになった(図2)。この目的を達成するために、推進委員会を立ち上げ、島外の専門家の助 言を受けながら、3つの部会を設立して事業を推進することになった(図3)。 「エコポイント研 究部会」は環境保全活動による付加価値を地域経済の循環につなげ、 「エコツーリズム研究部 会」はカーボンオフセットツアーを実施し、「メディアミックス研究部会」は多様なメディア を活用していしがきブランディングプロジェクトの取り組み内容の広報を行う

2)

2007年6月に、ブランディングプロジェクト推進委員会が設置され、事業一年目には、同 プロジェクトが日本商工会議所・全国商工会連合会の「2007年度小規模事業者全国展開支援 事業」に採択され、小規模事業者の経営向上を図ることを目的とした「地域ブランドセミナー」

や「島・発展する観光産業と共生するくらしかた」をテーマにした「ライフスタイルフォーラ

目的①地域内経済循環システムの構築 

目的 ② 持続可能な観光産業  利益を地元事業所で循環させる 

+ 

島(地域・住民)が豊かになる  自然環境の保全と有効活用 

+ 

+ 

将来  像 

いしがきブランディングプロジェクト 

推進委員会  専門家 

によるア  ドバイス 

エコポイン  ト研究部 

会 

エコツーリ  ズム研究部       会 

メディアミッ  クス研究部 

会      ブランディングプロジェクト 

推進委員会 

図2 いしがきブランディングプロジェクトの目的 資料:いしがきブランディングプロジェクト推進

委員会の資料による。

図3 いしがきブランディングプロジェクト組織図 資料:いしがきブランディングプロジェクト推進委員会の

資料による。

(3)

ムなどが行われた。このフォーラムでは自然観察会やメーンフォーラム、コンサートの3部構 成で行われ、メーンフォーラムでは「環境経済学からみる観光と環境の調和」をテーマにした 講演や八重山商工高校商業科観光コースの生徒による手作りの石垣ツアーの報告会も行った。

いしがきブランディングプロジェクト推進委員会が主催したライフスタイルフォーラムは、

毎年2月に行われ、小学生から高校生、商店街などが参加し、自然環境の保全や石垣島の将来 像などを考え、意見交換を図るイベントとなっている。

2009年のフォーラムでは、「美崎大通り会(現:やいま大通り会)」が人と環境に優しい商店 街を目指して取り組み「エコ宣言」を行い、エコ活動に協力する買い物客に特典が受けられる

「エコパートナーサービスカード」を発行することになった。また、石垣小学校4年生が排水 溝などの脇に環境保全を訴えるペインティングを親子で行った。このペインティングはいしが きブランディングプロジェクト推進委員会が推進する「いしがきエコアイランド推進事業」の 一環で、「この先、海です。」プロジェクトが2009年1月に総合学習の時間に行われた学習プ ログラム(NPO 法人海の自然史研究会が開発したプログラム)を受けて実施された。石垣島で は下水処理施設の整備が遅れていることもあり、捨てられたタバコの吸い殻や空き缶などが雨

取り組み内容  日 

月  年  2007年6月25日  2007年10月18日  2008年1月12日  2008年2月16日  2008年8月7日  2008年9月8日  2008年11月7日  2008年11月8日  2008年12月8日  2009年1月9日  2009年2月8日  2009年2月19・23日  2009年6月24日  2009年10月 

 2009年12月7〜25日   2010年1月2〜12日  2010年2月6日  2010年9月6日〜 

10月13日   2011年2月5日

  2011年8月6日 

第1回いしがきブランディングプロジェクト推進委員会  地域ブランドセミナー 

おーりたぼーり石垣島 in ハッピロード大山商店街 

「石垣島ライフスタイルフォーラム2008〜島を活かし、島に生きる〜」 

いしがきブランディングプロジェクトの中間報告  カーボンオフセットツアー(モデルツアー)開催  いしがきブランディングプロジェクトの中間報告  第1回カーボンオフセットモニターツアー  第2回カーボンオフセットモニターツアー 

「この先、海です。」プロジェクト 

「石垣島ライフスタイルフォーラム2009〜島と共生する共生する暮らし方」 

カーボンオフセットセミナー 

石垣島カーボンマイナスツアーの記者発表  石垣島カーボンマイナスツアー販売開始 

「東京ステーションエコプレゼント」の1等商品として「石垣島カーボン  マイナスツアー・ハッピーエイト」が採用 

「イシガキ・スパイス・クリエターズ・マーケット」(小田急百貨店) 

「石垣島ライフスタイルフォーラム2010〜島を活かして島に生きる」 

農商工連携等人材育成事業「いしがきブランディング研修」 

 

「石垣島ライフスタイルフォーラム2011〜石垣島的農商工連携未来予想  図〜」 

「いしがきアトム通貨」の流通開始  注:聞き取り調査と新聞記事などにより作成 

表1 いしがきブランディングプロジェクトの主な取り組み

(4)

水溝や排水溝などに流れ込み、直接川や海に流れてしまう事が多い。この現状を小学生に理解 しもらい、ファーラム時にペインティングを行うことで、ごみを捨てる市民などに訴えるイベ ントになった。

いしがきブランディングプロジェクトの2年目である2008年度における取り組みは、「いし がきエコアイランド推進事業」が中心となっている。この事業は、経済産業省の「環境負荷低 減国民支援ビジネス推進事業」として採択され、 「石垣島の原風景を取り戻す」をテーマにして、

石垣島民と観光客とが協力し合いながら、地域の経済発展と環境保全の両立とを目指し、エコ ツアーの開催やエコポイント事業などを展開した。2009年度は「石垣島カーボンマイナスツア ー・ハッピーエイト」や「石垣島スパイスマーケット」などが行われた。このスパイスマーケ ットは「ナンゴク・エシカル・ライフスタイル」をキーワードに、石垣島の素材を活用し商品 を通じて石垣島の情報を発信していくことを目的としている。これに関連して、2010年1月 には小田急百貨店新宿店において「イシガキ・スパイス・クリエイターズ・マーケット」と称し てミニ物産展示会が開催された。また、2010年度は農商工連携等人材育成事業の「いしがき ブランディング研修」、2011年度は地域通貨の「アトム通貨」

3)

の流通などが行われている。

(2)カーボンオフセットとカーボンマイナスツアーの特徴

石垣島自然観察の会を主催する谷崎樹生氏は以前から石垣島でボランティアによる自然観察 会を実施していた。推進委員会ではこの自然観察が着地型観光の一形態として有望であるとし て、持続的に実施できる観光メニューとしてブランド化を目的に、商品化の可能性を探ること になった。ブランディングプロジェクトの1年目である2007年に、モニターツアーを島民や 観光客を対象にモニターツアーが数回開催され、調査票調査を行い商品化の可能性を探った。

しかし、ブランディングプロジェクトの事務局では自然観察会だけでは旅行商品になるのは難 しいと考えていたが、カーボンオフセットという仕組みを知り、2008年に、自然観察会とカー ボンオフセットを組み合わせることになった。しかしながらカーボンオフセット自体が賛否両 論あり、また、正式なカーボンオフセットでないモデルツアーの内容だと、旅行会社は相手に してくれない状況であったため、2009年に、カーボンオフセットを実施してくれる企業で、横 浜市に会社がある「カーボンフリーコンサルティング株式会社」の中西武志社長から助言を受 け、ツアー客によるフクギの植樹体験をツアーに組み入れたカーボンマイナスツアーを実施す ることになった。

2008年11月と12月にモニターツアーが2回実施された。11月のモニターツアーでは関西

からの観光客を中心とした35名が参加し、移動中のバスでも冷房を入れず、昼食も地産地象

を意識した食事メニューを注文するなど、環境に配慮したフルパッケージ型のモニターツアー

となった。参加者にはデータセンターやレンタルサーバー運営会社などのIT関連業者の社長

も参加しており、「上海など中国やアジアからの観光客も誘客してもいいのでは」とのアドバイ

スも受けている。12月のモニターツアーでは湯布院温泉旅館の女将14名が参加した。11月の

(5)

モニターツアーが環境意識の高い団体旅行 を、12月のモニターツアーが個人の観光客 を視野に実施された。

この2回のモニターツアーは、東京や大阪 発で、那覇から石垣へ、また、石垣島内の二 酸化炭素排出量を計算して、その分のフクギ の本数を植樹しただけとなっており、排出権 を購入するなど、国際的なルールに適応させ た純粋にカーボンオフセットになっていな い。したがって、モニターツアーの参加者に は、石垣商工会の会長名が入った「植樹証明 書」を発行して、そこに本来の目的に沿った カーボンオフセットになっていないことを明 記し、また、モデルツアー実施前にも説明を行っている(図4)。

石垣市商工会では、2009年4月頃から「株式会社国際旅行社」と石垣に観光関係で最も貢 献し続けている航空会社であるJTAと協議し、2009年6月に、両社と提携して「石垣島カーボ ンマイナスツアー・ハッピーエイト」が正式に動き始めた。2009年6月にツアー内容を発表 し、7月から受付、10月からツアーを開始することになった。このツアーはダイビングツアー などと異なり、多数の観光客誘致できる形態でないため、高収入を見込めない。しかし、国際 旅行社が企業の社会貢献的・社会的事業(CSR)として位置付けたことにより、石垣市商工会 との提携が行われた。大手旅行社の場合、最大ツアー人数が15名であると利益が出にくいとし て提携してくれない。また、無理やり大手と組んでいくと、大手に振り回されることになり、

カーボンマイナスツアーが一般的なパッケージツアー一緒に取り扱われ、疲弊したサービスに なる恐れがあった。自然観察会やモニターツアーを実施した結果、30名から40名のツアーだ とガイドの説明や意図が伝わりにくいなどの理由から、ツアー参加人数がある程度制限された。

オフセット   100% 

排出権  100% 

ツアー催  行により  排出する  温暖化効  果ガス 

100 % 

−  = 

社会的責任 

100 % 

植林30 %  マ イ ナ ス 

30 %  社会貢献  図5 カーボンマイナスツアーの概念図

注:羽田空港〜石垣空港間および島内でのバス移動などで排出されるCO2(511kg)分の排出枠を旅行代金の一部で 購入することにより、カーボンオフセット(=二酸化炭素相殺)ができる。これに加えて植樹をするため、プラス マイナスゼロからさらにCO2削減効果が見込まれる。よってカーボンマイナスという図式が成立する。

資料:いしがきブランディングプロジェクト推進委員会の資料による。

図4 カーボンマイナスツアー植樹記念証 資料:http://www.ishigaki-eco.com/

carbonminus. html(2009年9月7日閲覧)

(6)

カーボンマイナスツアーでは、オフセットの部分は京都議定書に則したニュージーランドの 森林吸収源による排出枠を購入し、その後に直ちに償却し日本政府の排出目標に貢献している。

そのためツアー代金に1人当たり2000円で上乗せしている。ツアー客には国連を通じてカー ボンオフセットの証書が渡せ、植樹をすればその分がカーボンマイナスとなる(図5)。

(3)石垣島カーボンマイナスツアー・ハッピーエイトの発売後の状況

カーボンマイナスツアーの実績をみると、2010年2月25日から2011年3月6日までは、参 加者が275名、最低本数がフクギ275本、苗木一人1本(2、3本植樹することがあるため、総 数は把握されていない)と種も植えていることから、フクギ1000本位は植えていることにな る。植樹の時間は1時間程度で、植樹はツアーのオプションとして、植樹を希望した場合にツ アーに組み込まれることが多くなっている。

2009年12月に東京駅やその周辺の商店が始めた「東京エコステーションエコプレゼント」

のキャンペーンで、石垣島カーボンマイナスツアー・ハッピーエイトが1等賞品として採用さ れたり、駅構内に宣伝パンフレットが掲示された。フルパッケージ型のカーボンマイナスツア ーが1等賞品となり3組6名が当選した。この他、地元の通り会の人がクリスマス時に植樹し たり、日野工業高校など高校の修学旅行、旅のペンクラブ、大学ゼミで155名4クラスが最多 であった。また、沖縄島北部に立地し、ホテルやゴルフ場などがある「カヌチャリゾート」は 年末にライトアップイベント「スターダストファンタジア」があり、このイベント時に排出さ れる二酸化炭素の一部を、フクギ10本を植樹することによりカーボンオフセットを行い、カヌ チャリゾート名が入ったプレートを飾っている。石垣市観光協会が主体となって行っているイ ベントの「サンゴウィーク」時にもフクギの植樹によるカーボンオフセットを行っている。

カーボンマイナスツアーの値段は、植樹を行うことによりカーボンオフセットをする場合に は5000円、ガイド料と商工会長名が入った記念植樹証を受け取ると3000円(ツアー参加人数 が多くなると2500円)となっている。この金額は現地集合と現地解散の場合で、ツアー団体 が移動手段を持っている場合のみの金額である。植樹以外の観光を含めた2泊3日のツアーで は10万程度となっている。東京発で石垣2泊、バスは終日、ガイドがついているパックツアー の代金である。費用的にも5000円の価格設定はある程度採算に見合う値段となっている。

カーボンマイナスツアーは、冬季に修学旅行生や団体の参加者が多く、例年、12月頃からツ アーが開催され、3月位でツアーの開催が終わる事が多い。石垣島では夏期にレンタカーで移 動する個人客が多く、2〜4名の個人客で、4名グループの若者が木を植樹しない傾向ある。

カーボンマイナスツアーは、一般旅行商品ではなく、意識の高い人や教育関係者の参加するツ アーが多くなると事務局では考えている。また、事務局では宣伝能力やその資金もないために 口コミでしか広報していない状況にあり、今後も無理に集客せずに持続可能な範囲でカーボン マイナスツアーを実施していく予定となっている。

なお、石垣市商工会は、カーボンマイナスツアーなどの取り組みで、2009年11月29日に開

(7)

催された環境省主催のストップ温暖化大作戦「一村一品知恵の環境事業」沖縄大会において、

地域の特色を活かした地球温暖化対策に関する取り組みが評価され、九州地方環境事務所所長 特別賞を受賞した。

(4)フクギの植樹

2009年に実施されたカーボンオフセットのモニターツアーでは、事務局の平田氏の祖父の 畑に植えられたが、石垣島自然観察会の谷崎氏の提案を受けてフクギの苗木を畑に植樹するこ とになった。モニターツアー視察先のひとつである沖縄県農業研究センター石垣支所では、台 風の来襲時でもフクギ並木の内側は大きな影響を受けていなかった。このようにフクギは台風 対策にもなるが、実際に農家が畑では作付面積が減ることや日差しも遮ることから植えられて いない。フクギの植樹は全ての農地が適しているとはいえないが、果樹など台風の影響を緩和 する事が出来る畑では有効である。しかし、フクギの成長には20〜30年程度の時間を有する こと、また、費用や手間もかかることから農家が防風林にしない理由だと平田氏は感じていた。

その状況を改善し観光とマッチングさせるために、カーボンマイナスツアーを企画された。

モニターツアーの実施後、一軒の農家が自分の農地にも植樹をすることを事務局に依頼したり、

他にも何件か問い合わせがあった。農家はお金を支払わずに観光客が農地にフクギを植えてく れるため、カーボンオフセットツアーに興味を持ち始めた。

モニターツアーの前の実験ツアー身内だけのテストツアーでは月桃も植えられたが、フクギ は強くて成長し管理がしやすく、また、種からだと発芽率が高い。モニターツアーで植えたフ クギの種の多くは順調に成長している。

カーボンオフセットツアーでは、観光客が苗木を1本植える以外、種も植えている。苗木だ とポットで育成している関係で、根が渦をまいて、添え木をしないと倒れてしまう。種から植 えると2、3年管理が必要であるが、まっすぐに成長し台風に負けないため、種から植えるこ とになった。苗木だと勢力の小さい台風でも倒れてしまう可能性があるなど、維持管理に多く の時間と労力、お金が必要となる。苗木を植える方法として、細長いポットに種を植え、苗木

写真1 モニターツアーで使用された畑

(2009年9月12日、筆者撮影)

写真2 モニターツアーで植樹されたフクギ

(2009年9月12日、筆者撮影)

(8)

の根をまっすぐに成長させ、そして、植樹の時に、細長い穴を掘り、苗木を植えていく。この 方法だと女性でも手間がかからず、手が少し汚れるだけで、植樹するために特に着替えたり雨 靴を履いたりする必要もない。普段着で植樹が出来るため、種と短い苗木の両方をツアーでは 使用している。

エコツアーなどは20歳代、30歳代の女性も多く、汚れてもいいと思いツアーに参加するが、

客層を広めるためにも汚れない植樹の方法が必要となってくる。今後は気軽にフクギの植樹が 出来るように植樹方法の改良を重ね、フクギの植樹を続ける予定となっている。しかし、関係 者内では将来はフクギではなく、材木になるような木を、また、サンゴやマングローブを植樹 したほうがいいという意見もあるものの、いしがきエコアイランド推進事業では「石垣島の原 風景を取り戻す」がテーマとなっていることもあり、いしがきブランディングプロジェクトで は陸地をきれいにすることで最終的には海を綺麗になるとして、植樹の場所を陸地とするとし ている。

2009年10月からのカーボンマイナスツアーではフクギの植樹場所が環境配慮型観光牧場を 目指す「牛種子牧場」となり、植樹後のフクギを牛種子牧場側が管理することになった。植樹 されたフクギ並木は観光資源となるため植樹を行け入れている。

カーボンマイナスツアーは、多くのツアー客が来ても、フクギの苗や種が多く確保できない ため、今後2、3年は団体を中心に地道に植えていく形しかないと考えている。フクギを植樹 する場所は、牛種子牧場で行っているが、古民家が移築・保存され、動植物や琉球舞踊も鑑賞 できるテーマパークの「石垣やいま村」でのフクギの植樹も計画されている。この理由として、

牧場は単なる植樹の場所となっているのに対して、テーマパークであれば観光資源を楽しむ中 での植樹体験が可能であり、テーマパーク側による植栽管理も十分に行えるからである。修学 旅行では、宮良川でカヌーをした後に牧場へ移動し植樹をしており、流れ的にスムーズに植樹 に移行できる。しかし、これも移動しないといけないため、事務局の考えとして、石垣やいま 村が植樹場所として現状ではベストと考えている。商工会では植樹後の草刈りなどの管理は困 難であり、仕組みづくりだけで精一杯であるため、カーボンマイナスツアーの仕組みを上手く 活用してくれる相手と連携していけばいいと考えている。

(5)「エコポイント」と地域通貨の「アトム通貨」

いしがきエコアイランド事業には、「カーボンオフセットツアー」、マイ箸づくりや廃油キャ ンドル作りなど「エコチャレンジ」、そして、そのチャレンジを実施した地域住民やカーボン オフセットモニターツアーに参加したツアー客に地元の商店街で「わくわくスタンプ会」の加 盟店で使える「わくわくエコポイント券」を付与する「いしがきエコポイント事業」がある。

このエコポイント券は500円分と小額であるが、地元商店街の店舗に出向くきっかけにして

もらう目的でモニターツアーにおいて配布された。また、わくわくスタンプ会の加盟店でエコ

ポイント券を使用する以外に、石垣市観光協会内に事務局があり、ビーチクリーンや自然保護

(9)

活動などに助成する団体である「美ら海・美ら山募金推進協議会」に寄付することができる。

なお、このポイント券の配布費用は割引券と異なりツアー費用に含まれているため、委員会や わくわくスタンプ会の加盟店などの持ち出しはない。しかし、この方法ではカーボンオフセッ トツアーの参加者がわくわくスタンプ会の加盟店でしかエコポイント券を使用できない問題点 があった。したがって、わくわくエコポイント券の配布はカーボンマイナスツアーの販売開始 後も使用されたが、再検討の余地があった。

そこで石垣市商工会では、いしがきブランディングプロジェクト事業の一環として地域通貨 の「アトム通貨」が導入された。アトム通貨を発行するには「環境」「地域」「国際」「教育」の 理念が一つでもないと配布することができない。この理念に則って石垣島では環境保全を進め

図6 「いしがきエコポイント事業」の概念図

資料:いしがきブランディングプロジェクト推進委員会の資料から一部改変し作成。

写真3 わくわくスタンプ会のイベント情報

(2011年9月22日、筆者撮影)

写真4 アトム通貨加盟店の目印

(2011年9月22日、筆者撮影)

いしがきブランディングプロジェクト推進委員会      

エコツーリズ ム 

部会  ・街中自然観察会 

ポイント  エコツーリズム     お金 

部会 

・カーボンオフ  セットツアー 

・自然観察会 

・トランジェットモール 

・街中自然観察会 

・私のエコチャレンジ 

・マイバック運動 

・ノーマイカーデー 

・エコスタンプラリー        観 

光  客 

市  民 

わくわくスタンプ

お金  サービス 

わくわくスタンプ会  美ら山美ら海 

推進協議会 

自然環境保護活動や  植樹事業等への助成 

市民   観光

客  

エコポイント部会 

(10)

つつ、域内経済循環を取り組むために導入された。この通貨は10馬力、50馬力、100馬力の3 種類があり、1円が1馬力となる。また、通貨にはフクギやオオゴマダラ、マンタの絵が描か れている。

アトム通貨は2011年8月6日に開催された『南の島の星まつり2011』の夕涼みライブ&カ ウントダウン星空観察会の参加者や星に関する特産品の購入者に配布され、流通が開始された。

また、アトム通貨に関するパンフレットも作成され、アトム通貨の説明と取扱店舗の地図など を載せられている。アトム通貨の加盟店は、当初の「やいま大通り」の38店舗から2011年9 月21日現在、53店舗ほどまで増加している。2011年11月5・6日の石垣島まつりまでに100 店舗を目指している。しかし、現段階では、10馬力が1000名弱ほどしか行き渡っておらず、

通貨発行量が少ない。

毎年11月に開催されている「石垣島まつり」では、ボランティアスタッフへ食券として500 円分配布していたが、2011年からはアトム通貨500馬力を発券する予定である。また、毎年1 月に開催されている「石垣島マラソン」でも、従来、マラソン参加者の懇親会用に1000円分 の食券を配布していたが、2012年からは1人当たりアトム通貨1000馬力ずつ配布する予定と なっている。この1000馬力の費用は、マラソン参加者の参加申込金から捻出されており、大 会実行委員会など、地元からの支出はない。参加者がお土産品を購入したり、その日のうちに 飲食店で利用したりして、食事以外で用途を広げることで、経済効果を高まることを期待して いる。

カーボンマイナスツアーやスパイスマーケットは、徐々にではあるが関連性を持つようにな ってきている。例えば、スパイスマーケット目的に石垣島に来た人がフクギを植樹する場合も ある。一方、アトム通貨は加盟店や通貨発行量が少ないこともあり、必ずしもカーボンマイナ スツアーなどとは関連性が構築されていない。しかし、2011年11月に開催予定の「石垣牛大 バーベキュー大会」の頃に、沖縄島南部の商工会支部の女性部会の方々30名ほどが、視察に石 垣島に来る予定で、この女性部会のメンバーがカーボンマイナスツアーに参加し、アトム通貨 を配布する予定である。このようにアトム通貨もカーボンマイナスツアーと連携が深まること が期待されている。

3 美ら海・美ら山募金推進協議会の環境助成金

(1)設立背景と取り組み内容

美ら海・美ら山募金推進協議会は、現在この協議会の副会長であるエリーニ・ユネスコ協会 の堀川一晃会長の提案があり2004年3月30日に設立された。同協議会では、「石垣島の自然・

環境の保護と美化活動のための財源確保と共に市民及び来島への自然・環境などの保護の啓蒙

活動を推進し、また事業推進を通して地域社会として自然・環境の保護と美化活動に対する市

民の意識高揚を図ること」を目的に、同年4月1日より石垣島内外に募金箱を設置し

4)

、石垣

島の環境保全を推進することになった。なお、協議会の事務局は石垣市観光協会内に設置され、

(11)

観光協会の職員が兼任している。

石垣島では自然保護活動やビーチクリーン活動などの美化活動が盛んであるが、自然環境や 美化活動を行うための活動資金が必要であった。そのような背景もあり、これらの活動団体へ の助成を主とした活動となっている。募金や寄付などを財源とする助成は、小学校などの学校 関係者やレジャーや環境保護活動行う各種団体などへ行っている。助成対象は、「①川平湾や 河川の保護及び浄化対策、②米原海岸や周辺海域のサンゴ礁の保護、対策、③観光地、海浜、

主要道路の美化対策、④その他自然保護及び環境美化に関すること、など石垣島の環境保護や 美化のために活動している団体」

5)

となっている。また、助成の用途条件として、「環境美化 や自然保護の為の活動や告知看板などの製作で、清掃活動の場合は廃棄物処理にかかわる金額 や清掃活動備品購入などへの使用」

6)

となっている。

募金箱は、ホテルやレンタカー店、離島を結ぶ船舶会社、給油所、レストランや郷土料理店 などの飲食店、タクシー会社、土産品店、小売店、体育館など、島内100ヵ所ほどに設置され ている(写真5)。なお、同様の募金活動は宮古島市でも実施されている(写真6)。また、寄 付は石垣島内外から寄せられている。那覇市で土産物の卸業を営んでいる企業やフリーペーパ ーを発行する企業が「SOO」(SAVE OUR OCEAN)プロジェクトとして、SOOバンドなどの販 売で得た収益の一部を定期的に寄付している。また、あるマッサージ店では年間3〜4回寄付 をしている。その他、イベントの売上金の一部を寄付する場合もある。しかし、2011年は 2011年3月の東日本大震災の被害者への義捐金に、協議会に寄付していた額の半分を寄付する 団体もあり、協議会への寄付が減ることもあった。これら企業以外にも、高校生が文化祭で募 金活動を行ったり、石垣島を頻繁に訪れる観光客が来島するたびに寄付することもある。

美ら海・美ら山募金推進協議会の活動は、ボランティア団体などに助成する支援事業以外に、

「美ら海・美ら山作文コンクール」による啓発事業、「石垣島留学」の受入協力、会報ニュース

写真5 「美ら海・美ら山募金」の募金箱

(2011年9月21日、筆者撮影)

写真6 「美ぎ島募金」の募金箱

(2011年9月21日、筆者撮影)

(12)

レターの発行・ウェブサイト(ブログ)による活動報告・「わくわくナビ・八重山」サイトの 管理運営などの情報発信事業などがある。

2005年度からの事業として、「美ら海・美ら山作文コンクール」が行われ、第1回目の表彰 式が2005年7月20日に行われた。このコンクールは石垣島の子供たちがこの作文コンクール の応募を通して島の自然環境の美しさを認識することにより、自然の大切さを考え育み、また、

入賞作品の発表を通じて、多くの市民に自然保護や環境保全に対する意識付けを図ることを目 的としている

7)

美ら海・美ら山作文コンクールの入賞者は、東京や東北などへ行く副賞ツアーがあったが、

2011年の副賞には小学校低学年が親子で参加する石垣島内のエコツアー、小学校高学年・中 学校・高校の最優秀賞者が島外へのツアーとなっている。作文コンクールの対象学校は、石垣 島内の小中高校に限られ、2011年9月に竹富町内の離島の小学校から問い合わせがあったが、

応募対象外であるため断るしかなかった。竹富町内の離島の学校も対象にするかは今後の検討 課題となっている。

「わくわくナビ八重山」

8)

は、2011年1月に開設され、石垣島出身の居住者や島外移住者、

来島者、沖縄県外に居住する人々などに対して、八重山でのボランティア活動やイベントなど に関する情報を提供し、自然保護や文化の相互理解を促進することを目的とした情報共有化サ イトとなっている。石垣島ではビーチクリーンが盛んであり、環境保全活動に参加したい人々 が多い。しかしながら、環境保全活動に参加したいが情報がなく参加できない一般住民なども おり、このような住民などにこのウェブサイトでは情報を発信している。また、実際にビーチ クリーン活動やイベントに参加しての意見や今後の展開などの提言を書き込みできるウェブサ イトとなっている。同年2月には(社)八重山青年会議所の創立50周年記念事業である「ばが ー島クリーンアップ運動」を最初にこのウェブサイトで大きく取り上げた。

また、関西地区で行われるウィザスグループ(第一ゼミナール)主催の作文コンクルールの 入賞者に対して副賞として、NPO法人日本青少年キャリア教育会主催の「石垣島留学」が 2005年から毎年実施され、美ら海・美ら山募金推進協議会が受入協力を行っている。

(2)助成実績と課題

助成対象団体は、保育所や小学校などの学校関係、婦人会、ダイビング事業者団体、環境保 護団体など、多岐にわたっている。第1回目の助成金は、2004年12月20日の助成金贈呈式に おいて、 「八重山環境ネットワーク」や「磯辺公民館」、 「八重山ダイビング協会」の石垣支部・

川平支部・北部支部、市立大浜小学校、市立宮良小学校、市立白保小学校へ、3万から10万程 度が交付された

9)

。その多くが海岸や港周辺などの清掃で、助成金は清掃用具にあてられた。

また、2005年1月には2002年12月に設立された「かびら湾をきれいにする推進協議会」に50

万円が助成された。川平湾では生活排水や赤土などが流入し、海底にヘドロが堆積するなどの

問題があったため、この協議会が助成を受けて排水枡の新設や集落から流れ出る生活排水の水

(13)

質を改善するセラミックを設置した。

2007年度以降の助成団体やその活動内容は、表2で示した。活動内容は集落内の清掃や花 壇や通学路などでの植栽活動、海岸清掃、オニヒトデの駆除、フクギやヒルギの植樹、環境保 全の啓発に関するポスター・チラシの作製、環境活動の情報提供・交流などとなっている。

助成された取り組みをみると、「海LOVEネットワーク」の団体では、女性が主体となってビ ーチクリーン活動を行っている。この団体にはメーリングリストがあり、イベントや活動の日 程などの情報が流されている。イベントの「海・LOVELOVEフェスタ in 石垣島」は2009年か ら年1回行われ、一日に500名以上が無料で参加し、回収したごみでアート作品などを作って いる。第1回目は2009年11月22日に吉原海岸(ヒュッタビーチ)で石垣島北部の地域おこし の意味合いもあって開催された。回収したごみは石垣市役所の予算で処理されるが、その予算 も少ないことから年1回の開催となっている。このフェスタは2011年11月13日に第3回目が 実施予定で、音楽ライブも予定されている。

協議会の年間予算は、150万円程度で、募金・寄付金は70〜80万円程度なっている。助成金 の残金は繰り越されている。1回1団体で3〜12万程度が助成され、石垣周辺の海域ではオニ

容  内  動  活  名 

体  団  成  助  期 

時  成  助 

平成19年度上期  平成19年度上期  平成19年度上期   平成19年度上期

  平成19年度下期  平成19年度下期  平成19年度下期  平成19年度下期  平成19年度下期  平成19年度下期  平成20年度上期  平成20年度上期  平成20年度上期  平成20年度上期  平成20年度上期  平成20年度下期  平成20年度下期  平成20年度下期  平成21年度上期  平成21年度上期  平成21年度上期  平成21年度上期  平成21年度下期  平成21年度下期  平成22年度上期  平成22年度上期  平成22年度上期  平成22年度上期 

大川婦人会  大浜の海を守る会  石垣ビーチクリーンクラブ 

石垣島沿岸レジャー安全協議会・カンムリ  ワシリサーチ(共同申請) 

大川婦人会  おおかわ幼稚園  大川保育所  海星小学校  海星幼稚園 

石垣島沿岸レジャー安全協議会  石垣市観光協会青年部  海星幼稚園 

大川保育所  平得婦人会 

八重山ダイビング協会  石垣島沿岸レジャー安全協議会  NPO法人花と緑の石垣島  平得婦人会 

海星幼稚園  大川保育所 

ちゅらしまecoフェスタ実行委員会  八重山コーラルリーフセイバーズ 

沖縄県立八重山商工高等学校商業観光コース  海・LOVELOVEフェスタin石垣島実行委員会  川平小中学校・川平小中学校PTA 

石垣市大川保育所 

八重山コーラルリーフセイバーズ 

海・LOVELOVEフェスタin石垣島実行委員会 

大川婦人会フラワーロード  大浜周辺海浜の清掃 

石垣ビーチクリーンクラブ ビーチクリーンアップ   海と陸の自然環境保全啓発事業

  大川婦人会フラワーロード  おおかわ幼稚園 一人一鉢運動  美らいっぱい花いっぱい  海星小学校 児童会美化活動  通園通学路、園庭美化植栽 

サンゴ礁保全啓発リーフレット作成&配布  観光地テッポウユリ植栽事業 

美ら花フラワーロード  美らいっぱい花いっぱい  平得婦人会フラワーロード  オニヒトデ駆除 

陸と海の自然環境保全啓発事業 

フクギ植栽事業(新川川に木かげを創ろう) 

平得婦人会フラワーロード  やさしさいっぱい花いっぱい  美らいっぱい花いっぱい  第二回ちゅらしまecoフェスタ 

サンゴ礁保全活動・オニヒトデ駆除活動  第3回島人向け観光ツアー 

海・LOVELOVEフェスタin石垣島2009  シャコ貝放流、川平湾海岸清掃  美らいっぱい花いっぱい植栽活動  オニヒトデ駆除活動 

ビーチクリーン活動広報用チラシ作成 

資料:「美ら海・美ら山ニュースレター」などにより作成 

表2 美ら海・美ら山募金推進協議会による2007年度以降の助成団体とその活動内容

(14)

ヒトデが多いこともあり、その駆除に計3回の助成で計32万を助成している。

助成金の申請は上期・下期あり、その件数は半期で10〜15件程度ある。しかし、近年では 減少傾向にあり、2011年の上期は申請件数が9月21日現在で1件であった。この背景には、

ダイビング業界や漁協、環境美化団体などが行う漂着ごみやオニヒトデ駆除などの環境保全活 動に対する国や県などの助成が増加してきており、美ら海・美ら山募金推進協議会の見積書な どの作成に手間がかかることや助成金自体の金額が小額であることなどが挙げられる。小学校 などに助成内容を説明し、助成申請を促しても担当の教員が申請書類の作成および提出が進ん でいない。このこともあり、この協議会の知名度を上げるのが課題となっている。

この協議会では、募金・寄付金の額が多くないため、2010年2月から協賛企業を募ってい る。また、石垣市観光協会内に協議会事務局が設置されているため、協会の職員4名では対応 が困難となっているなどの課題がある。

美ら海・美ら山募金推進協議会以外で、石垣市観光協会が関わる環境に関する他の取り組み として、2011年3月5〜11日に開催された「石垣島サンゴウィーク」がある。これは石垣市 観光協会の青年部が主体となって行っている環境教育の一環として、八重山ダイビング協会な どと初めて主催して開催した。このイベントは、「3月5日(サン・ゴ)からの一週間をサン ゴウィークと設定し、サンゴ礁の保全・エコ/グリーンツーリズムの普及や次世代への人材育 成などを含む、石垣島が世界に誇る大自然と観光産業の調和した新たな観光メニュー創出と、

県内外からの観光誘客を目的に開催」

10)

された。1週間を通して様々なエコイベントやチャリ ティー音楽イベント、ビーチクリーニングなどの活動が行われ、各イベントは、「環境省石垣 自然保護官事務所」や「WWFサンゴ礁保護研究センターしらほさんご村」、石垣市商工会など の協力団体が主体となって実施している。このため助成金はチャリティーライブ「SONGO SONGs」のタレントに支払う出演料に主に使われている。タレントのうじきつよし氏は、業界 の中でもダイビングが趣味で有名であることから、出演が依頼された。今回のイベントは宝く じの助成で行ったが、2012年からは助成がないという。サンゴウィーク協力会員の企業には、

宿泊業や飲食業、マリンレジャー、土産品店、運輸業、観光施設などがあり、商品やサービス の割引や商品などプレゼントが行われた。

4 おわりに

本稿では石垣市を事例に、石垣市商工会のカーボンマイナスツアーと石垣市内の観光関連産 業が中心となって設立された「美ら海・美ら山募金推進協議会」の取り組みを中心に、離島観 光地における観光関連産業の環境保全への取り組みを明らかにした。

石垣市では観光資源の中心が自然環境であることや環境保全に関心が高い沖縄県外からの移

住者が多いこと、また、外因的には社会全体が環境保全に対する意識が向上していることなど

から、観光関連産業による環境保全の取り組みや助成体制が強くなっている。また、環境保全

活動をツアーなどに取り組むことにより、カーボンマイナスツアーなどの新たな観光資源の創

(15)

出にも繋がるとともに、地域経済への波及体制を構築がみられた。

いしがきブランディングプロジェクトは事業開始から100名以上の人がかかわっており、事 務局体制の再編も計画されている。現状では商工会が事務局で補助事業として採択されたとき にしかこのようなプロジェクトを推進できない。以上のことを踏まえ、カーボンマイナスツア ーやスパイスマーケットでは営利部門として株式化かLLP

11)

化などに組織化し、アトム通貨の 実行部隊としてNPO法人化も検討されている。石垣市商工会からプロジェクトの事務局が離れ ることにより、雇用創出効果も期待ができる。また、石垣市商工会が事務局では、プロジェク トのこれ以上の取り組みにおいて限度があり、質や量を向上させる意味合いでも事務局の法人 化は必要である。今後はその法人化された組織が最終的にコミュニティ・ビジネスの中心機能 を持つことが望ましい。

美ら海美ら山募金推進協議会の取り組みは、多くの観光地で参考になると思われる。観光関 連事業者が環境保全活動に協力および寄付することは、企業の社会的貢献として求められてい ると共に、石垣島の事業者のイメージアップにも繋がる。このような活動を行う事業者には、

観光客や利用客などが評価すべきであるが、必ずしも十分に評価されていない。宿泊施設やレ ンタカーなどの観光関連施設の検索サイトにおいても環境保全活動の取り組みを行っているか 否かがわかる項目を作り、環境保全活動に興味を持つ利用者や評価する利用者がそれらの活動 を行っている観光関連企業を選択できるシステムにする必要がある。

2009年に宿泊施設を対象に行った調査票調査では、小規模施設ほど環境に配慮した設備の 導入が遅れていた(上江洲、2011b)。この協議会への助成申請が減少しているなか、今後は、

ビーチクリーンなどの美化活動による自然環境の保全を推進する団体への助成以外にも、省エ ネ設備や環境に配慮した製品の購入などに対する助成も検討する必要があると思われる。

石垣市商工会や石垣市観光協会が中心となっている取り組み内容を発展させるためにもNPO などの組織への移行する新たな段階に来ている。これは活性化を目的とした積極的な活動を行 っている多くの商工会や観光協会など公的機関が避けてと通れない道となっている。両団体の 取り組みの発展を今後もと期待したい。

謝辞

現地調査にあたっては、石垣市商工会事務局長の平田 睦氏、美ら海美ら山募金推進協議会

会長(石垣市観光協会副会長)の並里敏一氏、石垣市観光協会の前津秀一郎氏、濱田智佳子氏

に多大なご協力を賜りました。ここに記して、厚くお礼申し上げます。

(16)

【参考文献】

上江洲 薫(2011a)「離島観光地における一般廃棄物の対策 −石垣市・竹富町のごみ処理とし尿処理 を事例として−」、経済環境研究調査報告書1、p111-128.

上江洲薫(2011b)「石垣市・竹富町における宿泊施設の環境保全対策」、経済環境研究1、p1-18.

【注】

1)カーボンオフセットに観光業界の取り組みとして、㈱JTB関東が旅行の移動時に排出される二酸化 炭素をグリーン電力証書や排出権を購入することでオフセットするカーボンオフセット旅行を実施。

また、JALグループは乗客が航空機の利用を通して排出する二酸化炭素の相当量を乗客自身の意思で 埋め合わせをすることができる「JALカーボンオフセット」を2009年より提供している。

2)南山舎が発行する月刊誌の「やいま」通号187号の「特集 島の原風景を取り戻したい いしがきブ ランディング・プロジェクトの試み」による。

3)アトム通貨実行委員会

http://atom-community.jp/(2011年10月11日閲覧)によると、

「アトム通貨は早 稲田・高田馬場の街で、地域コミュニティーを育み、街を活性化させるために生まれた地域通貨」で、

2004年4月7日に、地域の人たちの手によってアトム通貨が誕生した。2009年度より全国展開がな され、川口支部や札幌支部など、11の支部がある。それぞれの加盟店では、「環境保全」「国際協力」

「地域活性化」「教育への取組」などに貢献する様々なプロジェクトを行っている。

4)美ら海・美ら山募金推進協議会(2005)「美ら海・美ら山ニュースレター」第1号。

5)美ら海・美ら山募金推進協議会(2009)「美ら海・美ら山ニュースレター」第7号。

6)前掲5)

7)美ら海・美ら山募金推進協議会(2005)「美ら海・美ら山ニュースレター」第2号。

8)「わくわくナビ・八重山」http://www.wakuwaku-navi.jp/

9)前掲4)

10)石垣島サンゴウィーク実行委員会

http://sango-ishigaki.jp/(2011年10月11日閲覧)による。

11)共同で営利を目的とする事業を営むための組合契約を基礎とした企業の組織体であるリミテッド・ラ イアビリティ・パートナーシップ

(Limited Liability Partnership; LLP)。

参照

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(単位:千円) 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 1,772 決算 2,509 2,286 1,891 1,755 事業費 予算 2,722 2,350 2,000. 1,772 決算