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神田進里見元義片山博視 安河内 聰  門間 和夫

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(1)

日本小児循環器学会雑誌 7巻2号 284〜288頁(1991年)

断層エコー法によるPA index測定の問題点

      アンギオグラフィとの比較

(平成2年11月1日受付)

(平成3年2月12日受理)

    東京女子医科大学循環器小児科

神田進里見元義片山博視

安河内 聰  門間 和夫

key words:肺動脈分枝径の評価(PA index),断層エコー法,シネアンギオグラフィ,ファロー四徴症

      要  旨

 断層エコーにて肺動脈分枝の大きさを正確に評価することができれぽ,術前の侵襲的検査をかなりな 程度省略することが可能であろう.断層エコーにて肺動脈分枝の大きさを十分信頼できる精度で測れる のかどうかを知るために,実際に断層エコーとシネアンギオ(以下シネ)で測定を行い両者を比較した.

対象は肺動脈閉鎖,主大動脈肺動脈側副血行路合併の症例を除いた68例のファロー四徴症である.断層 エコーで右肺動脈分枝は,short axis view, long axis viewおよびsuprasternal arch viewにおいて観 察可能であったが,左肺動脈分枝はshort axis viewにおいてのみ観察可能であった.断層エコーで測 定された左右肺動脈分枝の平均径はシネでの測定値より小さかった.short axis viewで測定した右肺動 脈分枝の径は,シネでの測定値との間にr=0.45の相関を有した.arch viewで測定した右肺動脈分枝の 径は,シネでの測定値との間にr=0.69と最良の相関を示した.short axis viewでの左肺動脈分枝の測 定値はシネでの測定値との間に有意の相関を示さなかった(r=0.39).既往にシャント術を有する例や,

PDA合併例を除いた場合にはより良好な相関が得られ, arch viewで測定した右肺動脈分枝の径はシネ での測定値との間にr=0.85の相関を認めた.以上より以下の結論が得られた.1)左肺動脈分枝の径に ついては断層エコーでの計測は臨床上十分な正確度を有しないこと.2)右肺動脈分枝の径については arch viewでの計測が最も正確で,断層エコーでの計測値が臨床上十分な正確度を有していること.3)

断層エコーでの測定部位はシネでの測定部位より近位であるので,両法の測定値を直接比較するのは不 適当と考えられた.

         緒  言

 心エコー法の発達により,心臓カテーテル検査を行 わずに手術を行うことが可能となって以来,徐々にそ の適応疾患の範囲が拡大されつつある.私どもの施設 では一部のファロー四徴症の症例を心臓カテーテル検 査なしで手術を行って良好な成績を得た.今後心臓カ テーテル検査を行わずに手術を行う疾患が更に拡大さ れることが予想されるが,その際必要とされる肺動脈

別刷請求先:(〒910)福井市文京2−21−3

     リッツ文京207  神田進

の発育状態の評価は心エコーでどこまで可能なのであ ろうか.この点について検討した.

         目  的

 肺動脈分枝の太さを断層エコー法でどこまで正確に 測れるかを知ること.および断層エコー法による測定 とアンギナグラフィとによる測定との差異を明らかに すること.

        対象および方法

 対象は1987年1月から1990年1月までの間に当科で 心臓カテーテル検査を行ったファロー四徴症の68例 で,肺動脈閉鎖,主大動脈肺動脈側副血行路を合併す

(2)

る症例は除いた.年齢は3ヵ月から19歳(平均2歳10 ヵ月)であった.68例の内,心臓カテーテル検査前に 短絡手術を行ったか,動脈管開存を合併していたか,

あるいは肺動脈弁欠損を伴っていた症例が18例あり,

これらは肺動脈分枝の形態が通常と異なることが予想 されるため,この18例をshunt群として区別した.

shunt群の年齢は平均3歳10ヵ月とやや高かった.

 アンギオグラフィでは肺動脈の見える造影にて,左 右の肺動脈分枝の径を上葉枝の分枝の直前で計測し た.PA index1)2)はPA index=π(R2十L2)/(4・BSA)

(R:右肺動脈枝の径(mm), L:左肺動脈枝の径

(mm), BSA:体表面積(m2))の式で求めた.今回の 検討では計測値は主治医が計測した値をそのまま使用

した.

 心エコー検査は心臓カテーテル検査の前後1週以内 に行い,機種としてAloka SSD−870を,プローベは5ま たは3.5MHzを用いた.左右肺動脈枝の描出に使用し

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図1 short axis viewにおける左右肺動脈分枝の観  察

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図2 10ng axis viewにおける右肺動脈分枝の観察

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た断面は,胸骨傍短軸面3}(short axis view),左室長 軸断面(long axis view),および胸骨上窩大動脈弓断 面4)〜7}(arch view)の3断面であるが,肺動脈の分枝 が胸骨傍四腔断面を上方に傾けたときに見えた場合 や,大動脈弓像が右側胸骨傍にて得られた場合には,

それぞれshort axis viewあるいはarch viewに含め

た.

      結  果

 断層エコーにて右肺動脈枝は,short axis view(図 1),long axis view(図2)およびarch view(図3)

にて観測できた.計測値の検出率は,それぞれのview にて100%,91%,68%であった.計測値の平均(±標 準偏差)はそれぞれのviewにて,8.3±1.7,8。6±1.5,

8.5±2.1(mm)であった, shunt群を除いた場合の平 均値はそれぞれのviewで,8.2±1.7,8.3±L6,8.2±

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図3 arch viewにおける右肺動脈分枝の観察

        表 計測結果 A.対象例全例について平均値±標準偏差 B.sh皿t群を除いた場合の平均値±標準偏差

A.

RPA

LPA PA index

CineangiOgram

short axis view lOng axiS view arch view

9、8±3.4 8.3±1.7 8、6±1.5 8.5±2.1

9.0±3.0 8.3±1.8

294±195 224±81 234±71 234±90

B.

RPA

LPA PA index

CineangiOgram

short axis view long axis view arch view

9.2±2.6 8.2±1.7 8.3±1.6 8.2±2.3

9.0±3、1 8 1±1.8

268±109 217±71 227±62 226±89

(mm) (mm)

(3)

286−(36)

2.3(mm)であった(表).

 左肺動脈枝はshort axis view(図1)のみにて観測 できた.検出率は100%で,計測値の平均は,8.3±

1.8(mm)であった. shunt群を除いた場合の平均値 は8.1±1.8(mm)であった.

 アンギオグラフィでの計測値の平均は右肺動脈枝が 9.8±3.4,左肺動脈枝が9.0±3.0(mm)であった.

4   0    4

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の一×<↑庄O工の山ON

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RIGHT PA

  ・評

   0       10       20        (mm》

         CINEANGIeGRAM

図4 右肺動脈分枝についてshort axis viewでの計  測値とシネでの計測値との比較

 図中の直線はidentity lineである(以下同)

日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第2号 shunt群を除いた場合の平均値はそれぞれ9.2±2.6,

9.0±3.1(mm)であった.

 PA indexについて.アソギオグラフィでの計測値 より計算したPA indexの平均値は,294±195で,

shunt群を除いた場合の平均値は268±109であった.

断層エコーの計測値より求めたPA indexは,1)

short axis viewにて得られた右肺動脈枝および左肺 動脈枝の計測値から求めたPA indexの平均値は,

224±81であった.2)long axis viewより得られた右 肺動脈枝の計測値から(左肺動脈枝も同じ径と仮定し て)求めたPA indexの平均値は234±71であった.3)

arch viewにて得られた右肺動脈枝の計測値から(左 肺動脈枝も同じ径と仮定して)求めたPA indexの平 均値は234±90であった.shunt群を除いた場合の平均 値は,それぞれのviewで,1)217±71,2)227±62,

3)226±89であった.

 断層エコーでの測定値とアンギナグラフィでの測定 値との相関について.1)右肺動脈枝の径については short axis view, long axis viewおよびarch viewに おける相関係数はそれぞれ0.45(図4),0.54(図5),

RIGHT PA RIGHT PA

4   0    4

司・     噌1

の一×<OZQ﹂山O創

   0   0       10       20        (mm)

        CINEANGIOGRAM

図5 右肺動脈分枝についてlong axis viewでの計  測値とシネでの計測値との比較

  14曇1。

1   品卍

§4

  0

   0    4      10    14        (mm)

         CINEANGIOGRAM

図7 shunt群を除いた場合,右肺動脈分枝について  arch viewでの計測値とシネでの計測値との比較

RIGHT PA LEFT PA

4   0    41    1

≧ノ山一﹀工O江く山OO

 。盟m。

辞よ

18

  0

   0       10       20        (mm)

         CINEANGIOGRAM

図6 右肺動脈分枝についてarch viewでの計測値  とシネでの計測値との比較

4   0     41      1

の一×<﹂°江O工ω山ON

0

晶品

   0    4      10    14

       (mm)

         CINEANGIOGRAM

図8 左肺動脈分枝についてshort axis viewでの計  測値とシネでの計測値との比較

(4)

)〉山一﹀工O江く山ON

PA INDEX

   0     200    400    600         CINEANGIOGRAM

図9 shunt群を除いた場合, PA indexについて  arch viewでの計算値とシネでの計算値との比較

0.69(図6)であった.shunt群を除いた場合の相関係 数はそれぞれのviewにて, O.58,0.57,0.85(図7)

であった.2)左肺動脈枝の径についてはshort axis viewにおいて相関係数は0.39(図8)であり,shunt群 を除いた場合の相関係数は0.56であった.3)PA indexについては,断層エコーのshort axis view,

long axis viewおよびarch viewの計測値より求めた PA indexと,アンギオグラフィより求めたPA index との相関係数はそれぞれのviewで0.25,0.38,0.45 で,shunt群を除いた場合の相関係数はそれぞれの viewで0.13,0.32,0.61(図9)であった.

      考  察

 断層エコーにおいて肺動脈の左右分枝は胸骨傍短軸 面あるいは四腔断面を上方に傾けた面(以上まとめて short axis view),左室長軸断面(long axis view),

および胸骨上窩ある惨は右胸骨傍よりの大動脈弓断面

(arch view)において観察できたが左肺動脈枝は short axis viewのみにて観察可能であった.

 各断面における肺動脈分枝の描出上の特徴により次 のような短所が考えられる.short axis viewにおいて は肺動脈分枝の計測方向がエコービームに対して比較 的垂直方向になってしまうため,断層エコーでは距離 分解能よりも方位分解能の方が劣っているという欠点 が直接的に表現される可能性がある.また肺動脈分枝 を垂直に(輪切りに)切る断面ではないため,肺動脈 分枝の最大径を捉えきれない可能性もある.long axis viewにおいては,右肺動脈枝の輪切り像が得られると いう長所があるが,探触子より最も遠方の部分に右肺 動脈枝が描出されるため深部での分解能は浅部での分 解能に劣るという欠点に懸かる可能性がある.arch viewではこれらの欠点が最も少なく,探触子に比較的 近い位置で右肺動脈枝の輪切り像が得られる.検討結

果において,arch viewでの測定値が最も良くアンギ オグラフィの測定値と相関していたのは,以上のよう な理由によると思われる.

 shunt群の症例では, shunt術の影響やPDAの存在 により肺動脈分枝の形態に変化をきたした症例が多 く,またshunt術の多くは左側に行われていたので,

結果においてshunt群を除いた場合に断層エコーとア ンギオグラフィとの相関が改善し,改善の割合が左肺 動脈枝において特に高かったのは以上の理由によると 思われた.

 計測の検者間誤差について.アンギオグラフィでは 上葉枝の出る直前の径を測っているが,肺動脈の形態 によっては検者によって相当の誤差が出る可能性があ る.今回の検討では症例の主治医による測定値を使う のが最も客観的と考えられたため,同値を用いた.断 層エコーの計測値は一人の検者の計測によるもので,

今回は検者間の検討は行っていない.しかし断層エ コーで得られる断面は限られているため,測定部位も おのずと決まってしまうから検者の違いによる誤差は 無視できる程度と考えた.

 計測部位の,アンギオグラフィと断層エコーとの差 異について.アンギオグラフィで計測している部位は 通常断層エコーでは肺含気のため観察不能な部位であ り,断層エコーで観察した部位はより近位であると考 えられた.即ちarch viewでの測定部位がアンギオグ ラフィでの測定部位よりやや近位,long axis viewが さらに近位,short axis viewが最も近位の測定部位と 考えられた.この測定部位の違いも観察結果に影響し たと考えられた.従って断層エコーでの測定値とアン ギオグラフィでの測定値を直接比較することは不適当 と考えられた.

 断層エコーでの測定の臨床応用の可能性について.

上述の結果より,左肺動脈枝については,観察可能部 位が極めて制限されている上に,信頼性の低い断面の みの観察となるため,測定値を臨床的に信頼すること は不可能と考えられた.しかし右肺動脈枝については,

複数の断面で観察可能で,特にarch viewにおいては アンギオグラフィと良い相関が得られたのでarch viewでの測定値をもって臨床的に応用することが可 能と思われた.従ってもし左肺動脈枝が右肺動脈枝と 同程度の径を持つと確信できるならぽ,arch viewで の右肺動脈枝の径よりPA indexを求めることは臨床 的に有意義であると思われた.

(5)

288−(38) 日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第2号       結  論

 1)断層エコーでは右肺動脈枝は複数の断面で観察 可能であったのに対して左肺動脈枝は唯一short axis viewでのみ観察可能であった.

 2)short axis viewでの測定値はアンギオグラフィ との相関が低く,信頼性に乏しいと考えられた.従っ て左肺動脈枝については断層エコーでは正確な評価が 極めて困難であると考えられた.

 3)右肺動脈枝についてはarch viewでの測定値が アンギオグラフィとの相関が最も高く臨床的に十分信 頼できると考えられた.

 4)断層エコーでの肺動脈分枝の測定部位はアンギ オグラフィでの測定部位より近位であるので,両測定 値を直接比較するのは不適当であると考えられた.

      文  献

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Measurement of Pulmonary Arterial Branch Size by 2 Dimensional Echocardiogram:

      Comparison with Measurement by Cineangiogram

Susumu Kanda, Gengi Satomi, Hiroshi Katayama, Satoshi Yasukochi and Kazuo Momma     Pediatric Cardiology, Heart Institute of Japan, Tokyo Women s Medical College, Tokyo

   Precise evaluation of pulmonary arterial branch by echocardiogram can lead us to perform kinds of surgical operation without invasive preoperative examination. In order to decide if 2 dimensional echocardiogram(2DE)is reliable in measuring pulmonary arterial branch size, comparative meas−

urement was done by both 2DE and cine・pulmonary arteriogram(CINE). Sixty−eight cases with tetralogy of Fallot excluding cases coexisting pulmonary atresia and major aortopulmonary collareral arteries were studied. By 2DE, right pulmonary arterial(RPA)diameter was measurable in SHORT axis view, LONG axis view and suprasternal ARCH view, and left pulmonary arteria1(LPA)diameter was measurable only in short axis view. Both RPA and LPA mean size obtained by 2DE were smaller than those by CINE. RPA size measured in short axis view(RPA−SHORT)had correlation value of O.45 comparing with RPA・CINE. And RPA−ARCH had the best correlation value of O.69 comparing with RPA−CINE. While LPA・SHORT had the worst correlation value of O.39 comparing with LPA・CINE.

Better correlation values were obtained when cases which underwent shunt operation or having coexisting PDA were excluded(r=0,85 between RPA・ARCH and RPA・CINE). Thus we conclude that 1)

left pulmonary artery diameter is not measurable precisely enough for clinical use by 2DE,2)ARCH view is the best view to measure right pulmonary artery diameter by 2DE, and its data is reliable enough for clinical use, and 3)it is not reasonable to compare 2DE data and CINE data directly,

because the measuring site by 2DE is more proximal than CINE.

参照

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