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Academic year: 2022

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要旨

近年、バイリンガリズム教育の分野において「トランスランゲージング」が注目されている。言語教育分野 において、トランスランゲージングとは、学習者が自分のアクセスできる言語・記号リソースを活用すること で学習を進める、プロセス及び言語活動である。社会文化理論の観点では、トランスランゲージング はバイリンガルの学習過程で促進的な役割を果たすと考えられている。

トランスランゲージングに関するこれまでの研究の多くは、個人-他者間(学習者と学習者、学習者 と教師)のコミュニケーションについて、とくに発達途上にあるバイリンガルを対象としている。一 方、学習者が個人で取り組む言語活動について、とくに両言語の言語能力が高い成人バイリンガルが 個人で取り組むリーディング活動を対象とした研究は少ない。他方で、リーディング活動の研究は、

バイリンガル学習者が用いるリーディングストラテジーの L1・L2 テキスト間における転移を調査 したものが多く、学習者の思考を媒介する言語と言語活動の役割自体に着目した研究は少数である。

こうした研究の中でも、学習者が L2 テキストに取り組む際の L1 思考言語の役割について言及した 研究はあるが、L1・L2 両テキストの読解における思考言語と言語活動の役割に着目した研究は少な い。そこで、本研究は、成人バイリンガルの L1・L2 リーディングの読解過程に着目し、成人バイ リンガルがどのようにリーディングストラテジーと言語リソースを活用し、トランスランゲージングに取 り組むのかについて調査した。調査の対象者は、CEFR- J において L1 日本語・L2 英語の言語能力が

B2.2 以上とされる成人バイリンガル5人である。 本研究の先行研究セクションでは、本論文に関

連するトランスランゲージング理論及びトラ ンスランゲージング活動がどのようなものであるかを説明し、リーディングストラテジーとリー ディングストラテジーを媒介する言語を対象とした研究についてその知見をまとめた。リサーチクエ スチョンについては、上記に挙げた調査目標について、次の4つのサブ・リサーチクエスチョンを立 てた。1)日英成人バイリンガルは L1 テキストに取り組む際、どのようなリーディングストラテジー や言語を使用するのか。2)日英成人バイリンガルは L2 テキストに取り組む際、どのようなリーデ ィングストラテジーや言語を使用するのか。3)日英成人バイリンガルが使用するリーディングスト ラテジーは、L1・L2 テキスト間でどのように異なるのか。4)日英成人バイリンガルが思考を媒介す るために使用する言語と言語活動は、L1・L2 テキスト間でどのように異なるのか。

方法論に関して、本研究では読解プロセスにおける読み手の思考を抽出するための手法とし

て「思考発話法 (think-aloud method)」を利用した。これは、被験者に考えていることを声に出し ながらタスク(リーディングタスク)に取り組んでもらうという手法である。リーディングタスクに は電子新聞の記事を使用し、L1・L2 で別々の記事を用意した。この2本の記事をそれぞれ読解しても らい、研究者は、被験者が読解中に発話した思考をもとに、コーディングを行い、リーディングストラ テジーと使用言語を特定・数値化し、その役割と現れ方について、読者間・読者内(L1・L2 テキス ト間)で比較し、数的・質的分析を行った。

調査の結果としては、次のことが分かった。まず、リーディングストラテジーとそれを媒介

する思考言語については個人差が見られた。ただし、L1・L2 テキスト間で現れたリーディングス

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トラテジーの差は、被験者間の言語能力の差(上級者間での差)によるものであると解釈された。被験者 の中で最も CEFR-J の評価が低い読者(B2.2)は、その言語で書かれたテキストについては、語 彙と文構造の理解に難点を示した。被験者の中で CEFR-J の評価が高い読者(C1 以上)については、

その言語で書かれたテキストの読解過程で、テキスト内の論理構造に着目する傾向が見られた。思考 言語に現れた差はつまり、トランスランゲージングに取り組む頻度の差を示す。この差は、読者個人 の言語使用経験と関係しているようであった。また、トランスランゲージング活動は、読解プロセス で生じたニーズに応じて行われているようでもあった。結論として、日英バイリンガルが学習を進め るにあたり、言語リソースを活用し、ランゲージング活動に取り組むことの有用性があげられた。

参照

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