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環境要因がリスク評価に及ぼす影響の検討 ―子供 に対する事案発生現場の動画刺激を用いて―

著者 蘇 雨青

著者別名 SU Yuqing

雑誌名 東洋大学大学院紀要

巻 56

ページ 57‑72

発行年 2020‑03

URL http://doi.org/10.34428/00011743

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要旨

本研究では子供に対する事案が発生する可能性がある環境に対し,大学生のリスク評価を 高める可能性とその要因を検討した。google earthを用いて,神奈川県の子供に対する事案 発生現場の動画刺激を作成し,実験を実施したところ,24名の参加者のリスク評価では,子 供に対する事案が発生する可能性がある環境に対し,リスク評価が高まる可能性が明らかに なった。また,判断理由に関する自由記述をまとめて対応分析を行った結果,街灯の不備,

駐車場,死角や見通し悪いさなどのネガティブな環境情報があれば,リスク評価が高まるこ とが推測できた。

キーワード:子供に対する犯罪,リスク評価,環境要因,対応分析

はじめに

社会問題化とした子供の被害現状

「子供たちが健やかに育ってほしい」それは家族や周囲の大人だけでなく,社会全体の願 いである。しかし,子供が被害者となる犯罪が後を絶たない。総務省(2016)によると,戦後,

人口20万人以上の都市に居住する人口の割合は大幅に増加し,総人口の過半数がこれらの都 市に居住している。このような都市部への人口集中に加え,市町村合併が進展したことによ り,人口20万人以上の都市に居住する人口の割合が大幅に増加するなど,現在では市町村の 構成は都市中心となっている。このような都市空間の中に,犯罪に対する不安を感じやすい 人たちや犯罪の被害に遭いやすい人たちと呼ぶことのできる高齢者,児童,学生,女性など が集中し,居住していることが明らかにされている。こうした都市化の進む時代の状況では,

児童や学生に対する犯罪被害を防止することと犯罪実態に基づく犯罪防止と防犯対策の必要 性が重大な課題になると予想される。

環境要因がリスク評価に及ぼす影響の検討

―子供に対する事案発生現場の動画刺激を用いて―

社会学研究科社会心理学専攻博士後期課程1年

蘇  雨青

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これまで起こった有名な事件として,2004年11月7日の奈良小1女児殺害事件が挙げられ る。当時誘拐犯は,歩道の植え込みが途切れた場所で帰宅途中の小学校1年生の女子児童に 声をかけ,連れ去って殺害した。他にも,広島市安芸区矢野西で2005年11月22日には,帰宅 途中の女子児童がペルー人によって強制わいせつのうえ殺害された(広島小1女児殺害事件)。

また,栃木小1女児殺害事件も類似した事件である。2005年12月に栃木県今市市(現:日光市 )に住む当時7歳の小学1年生の女児が行方不明となり,茨城県常陸大宮市の山林で刺殺体と なって発見された。

そして,近年では,2018年5月7日,新潟市西区のJR越後線の線路上で,小針小学校2年の 大桃珠生ちゃん(7歳)が死亡しているのが見つかったという事件が発生した(新潟市の小2女児 殺害事件)。その後,事件現場となった東小針自治会(同区)に,警備会社や警察署から防犯カ メラが贈呈され,当地の防犯カメラ設置台数を増やすに至った。この事件は社会的に大きな 注目を集め,子供が被害者となる凶悪犯罪は大きな問題となり,人々は身近な犯罪への不安 を高めたと同時に,子供を対象とする防犯対策の開発などの必要性を認識することとなった。

子供の被害の防犯対策と問題点

このような重篤な状況を受け,警察庁,文部科学省,地方自治体などは,学校や防犯ボラ ンティアと連携しつつ,通学路などのパトロール,交通安全教室などの防犯活動を実施し,

子供の安全と被害防止のガイドラインを築き,子供の犯罪被害の防止と対策への取組を進め ている。子供を守るために,子供自身による危機回避能力の向上,被害防止能力の向上や防 犯活動も必要と考えられる。子供に犯罪被害を回避する能力等を身に付けさせるため,小学 校等において,危険な事案への対応要領等について子供が考えながら参加・体験できる防犯 教室を開催し,地域安全マップを作成する会等関係機関・団体と連携して開催している。

2005年に警察庁から,各都道府県警察に対し,「子供を犯罪から守るための対策の推進要 領」が通達され,また同年で文部科学省から,「登下校時における幼児児童の安全確保につ いて」が通達され,これをきっかけに,警察庁,文部科学省,地方自治体などにおいて防犯 対策が講じられているようになった。

例えば,神奈川県では2005年に犯罪のない安全で安心なまちづくりを実現させるため,県,

警察などが行うべき責務を明確にし,県,県民,事業者が一体となって,防犯に対する意識 を高めるとともに,自らができる防犯対策を推進し,犯罪を起こさせない生活環境を作って いくことなどを目的に「神奈川県犯罪のない安全・安心まちづくり推進条例」を制定した。

「神奈川県犯罪のない安全・安心まちづくり推進条例」に基づいて,警察庁,地域住民,学 校や防犯ボランティアと連携し,自主防犯パトロールなどの地域住民の方々が各地域におい て防犯活動を実施している。警察からの「ピーガルくん子供安全メール」という情報提供サ ービスも実施しており,子供を犯罪から守るために積極的に防犯対策を講じている。上記の

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ように,警察は子供の犯罪被害を阻止するための対策や情報提供サービスを実行することで,

より安全なまちづくりという目標を進め,地域住民や小学校等は地域犯罪状況の把握するこ ともできるようになった。

防犯活動の一貫として,小宮は(2007)は地域安全マップ作製活動を提唱した。この防犯活 動は領域性と監視性の2要素を用いて,犯罪の起こりやすそうな場所を判断する。領域性と は,犯罪の力が及ばない範囲を明確し,地域空間の管理を強めることによって,犯罪を企て る者が対象者・対象物へ接近することを妨げることである。監視性とは,犯罪者の行動が把 握できる,多くの人の目また監視カメラ等を確保し,自然な形で人の目に触れやすい場所で は犯罪は起こりにくいというものである。

地域安全マップ作製活動は,領域性と監視性の視点から,子供に危険そうな場所の概念に ついて教え,次に子供たち自身の手で地域社会を点検・診断し,地域の危険そうな場所を洗 い出して地図上にマッピングする。そこで,子供たちに理解できるよう,「領域性」は「入 りやすい場所」、「監視性」は「見えにくい場所」に入れ替わる。2つのキーワードを用いて 犯罪が起こりやすそうな場所を発見し,それを元に防犯の地図を作製していく。

しかしながら,桐生(2009)は,「地域安全マップ」などは未発生の犯罪形態や犯人像を想定 し,「犯罪に遭うかもしれない」という可能性を予測する防犯活動であるが,この予測,す なわち未発生の事件や未知なる犯人の行動を想定すること自体が困難であると指摘している。

そして,防犯に関する環境要因は元々具体的に検討しなければならないことを,子供が理解 できるようにするために,「入りやすい場所」と「見えにくい場所」だけでまとめたが,2つ のキーワードのみで多様な環境要因を解釈できるかどうかも問題点となることを指摘してい る。

言い換えれば,地域住民が犯罪発生をリスク評価した箇所と組み合わせたものを「地域安 全マップ」とし,地域の防犯活動を行う際には,まず地域の実態を客観的に知ることが必要 であり,それを踏まえ具体的な対策を考えることが必要とされている。また,地域の実際の 犯罪現場を地図に落とした「犯罪発生マップ」を元に,それぞれの現場を観察することは,

犯罪発生の可能性が高い場所を検討するには有効であると指摘されている(桐生,2011)。

環境犯罪学視点からの知見

前述のように,防犯まちづくりや防犯活動によってリスク評価と犯罪不安などの問題に対 処する際には,地域特性からの配慮が重要と思われる。そこで,1970年初頭に防犯環境設計 (CPTED:Crime Prevention Through Environmental Design)が提案された。Cozens(2008)

によると,Jeffery(1971)が提唱された防犯環境設計とは,人間によって作られる環境の適 切なデザインと効果的な使用によって,犯罪に対する不安感と犯罪発生の減少,そして生活 の質の向上を導くことができる,という考えである(Jeffery,1971)。

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防犯環境設計の理論を基礎に,事件現場の地理的な分布などから,犯人の活動拠点(住所,

職場など)がある可能性の高い地域・場所を推定する「拠点推定」や,これから犯人が事件 を起こす可能性の高い地域・場所・時期を推定する「犯行予測」が行われ,環境犯罪学 (environmental criminology)の 必 要 性 が 主 張 さ れ る よ う に な っ て き た(Brantingham&

Brantingham,1981;Brantingham&Brantingham,2017)。環境犯罪学の基本的な理論は

「合理的選択理論(rational choice theory)」「日常活動理論(routine activity theory)」「犯罪パ ターン理論(crime pattern theory)」の3つである。

合理的選択理論(Cornish & Clarke,1986)とは,犯罪者は犯行を実施する前に,犯行によ って得られた利益(金銭など)と同時に,行為にかかるコスト(犯行の準備や実行に費やす労力,

時間など),さらに逮捕されるリスク,法律を破る結果(受ける刑罰など)が関連し,利益がリ スクより大きい場合に,犯行を及ぼすと考える理論である。

日常活動理論(Cohen & Felson,1979)とは,「潜在的な犯罪者(犯罪行為への欲求)」,「潜在 的なターゲット(魅力的な被害者)」,「有能な監視者(犯罪を抑止する能力がある者)の不在」の 3要素が,同じ時間と場所に集まった時に,犯罪が発生するという理論である。

犯 罪 パ タ ー ン 理 論(Brantingham&Brantingham,1984;Brantingham&Brantingham,

2017)では,犯罪者は「意識空間」と「活動空間」に注目し,「利益」と「リスク」の2つの 観点から合理的な選択をし,一部の対象が被害者として選択されることと仮定している。つ まり,動機を持つ犯罪者が潜在的被害者から獲得可能な「利益」と犯行地点で犯行失敗の

「リスク」を考え,事案は発生すると思われる。犯罪者が存在したとしても,あるいは潜在 的被害者が存在していたとしても環境が犯罪を抑制する作用を有していれば犯罪は発生しな いと考えられる。

これら人間の環境認知や空間行動を重視した犯罪現象の説明モデルや理論と,犯罪機会論 に基づく実践的な犯罪統制手法は,環境犯罪学と総称され,現在の研究・実務で大きな地位 を占めるに至っている(Brantingham&Brantingham,1993;Wortley & Mazerolle,2008)。

欧米において環境犯罪学に関する研究として,アメリカの50大都市を対象とした Anderson(1997)の研究は,夏季の犯罪発生率から他の3期間の平均犯罪発生率を引いた数値 を夏の効果の指標としたところ,暴力犯罪と財産犯罪に夏の効果が認められたが,暴力犯罪 に関する効果が顕著であったというマクロな視点からの研究があった。また,Page(1977)は,

都会における高いレベルの騒音が都会人の他人に対する援助の提供を抑制する要因であるこ とを指摘していた。他にも,犯罪と移動手段と地域に関する研究としてVan DaeleとVander Beken(2011)は,地域における外向的な侵害が大部分は裕福な標的地域や高速道路の近くで 起こることを見出され,アウトバウンド犯罪者は裕福な地域を狙って高速輸送手段を使用す ることだけでなく,連続犯罪を実行するときの移動距離を含めて輸送コストを考える傾向が あると報告された。Ceccato(2014)やHewittとBeauregrad(2014)は,性犯罪発生場所のほとん

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どが視界不良によって特徴付けられると述べていた。特に,犯罪者は見知らぬ人の場合には,

潜在的な保護者によって妨害される可能性が低い場所を選択する傾向があり,環境要因は犯 罪者の行動意志により大きな影響を与えることが報告された。

日本において環境犯罪学に関する研究として,島田・原田(1999)は現地調査を用いた研究 報告例である防犯まちづくり研究会(1999)によるものを挙げている。この報告では,犯罪の 不安感が高い地区や,実際にひったくりや犯罪などが認知されている地区で現地調査を行い,

曲がりくねった路地や樹木が生い茂った公園では自然監視性が確保されないこと,領域性が 低い地域では環境悪化を招きやすいことを指摘している。また,小野寺・桐生(2003)は地下 道の画像を用いて実験法を行った。その結果,空間印象評価がネガティブであると,不安感 が喚起され,犯罪遭遇の予測が高まるというプロセスの一部が示唆された。同じく,小野 寺・桐生・羽生(2003)は人が多い空間よりも人が少ない空間,昼間よりも夜間,特に暗い空 間,男性よりも女性の方が,不安感が喚起されやすいと報告した。そして,佐々木・岡安・

藤井・岸本(2014)は環境要因に注目し,土地利用の違いによる犯罪不安の程度が異なること を報告した。

以上を研究背景とし,犯罪被害を防止することと環境設計に基づく犯罪不安の抑止と防犯 対策を検討することはこれからの研究課題と思われる。今までの研究方法では,質問紙を用 いた検討が多かったが,画像刺激を用いた実験によって検討された研究もあるが,犯罪が認 知された地点の動画刺激を用いて,不安感やリスク評価を測定したものは未だ少ないと思わ れる。質問紙調査では,シナリオと尺度を用いて犯罪に対する不安感やリスク評価を測定す ることができるとしても,文字で地点に関するすべての環境情報を述べることが困難である。

一方,画像刺激だけで測定地点環境の全体的な特徴を捉えるのは難しいが,動画刺激を使用 する場合はより多くの環境情報に基づいてリスク評価を行う可能性がある。犯罪が認知され た地点の情報を刺激にした実験は,画像ではなく動画を用いてより詳細な情報を与えること で,不安感やリスク評価の測定が必要と考えられる。

目的

蘇(2018)の研究結果によると,地区別に子供に対する犯罪事案には類似した構造があるこ とが見出されたため,本研究では,神奈川県警察署から配信されている「ピーガルくん子供 安全メール」を用いて,子供に対する犯罪が発生した地点情報のある事案に基づき,事案発 生が認知された2か所(地点B:公然わいせつ,地点C:強制わいせつ)と事案発生が認知され ていない2か所(地点Aと地点D)の計4か所の映像を視覚刺激として呈示し,子供に対する事 案が発生する可能性のある場所に対し,大学生のリスク評価を高める可能性とその要因に関 する探索的な研究を行うことを目的とする。

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仮説として,以下の通りである。①事案発生が認知された地点と事案発生が認知されてい ない地点に対して大学生のリスク評価に影響を及ぼす環境要因が異なる。②事案発生が認知 された地点に関連するネガティブな環境情報は大学生のリスク評価を高める。

方法

実 験 参 加 者  東 洋 大 学 に 通 う 大 学 生, 男 性8名 (M=20.16歳,SD=0.61) , 女 性16名 (M=19.44,SD=0.61) の計24名であった。

視覚刺激の選定と呈示方法 「ピーガルくん子供安全メール」から発生地点情報のある事 案に基づき,子供に対する事案が認知された現場,および認知されていない現場それぞれ4 か所ずつ選出した。そして,google earthを利用し,30秒間に編集した日中の動画を刺激と して呈示し,事前調査で犯罪に関する住環境評価尺度(羽生,2011)と環境評定尺度(池間,

2015)を参考にして作成した環境評価尺度を用いて計8か所の環境について評定した。その後,

8か所のうち事案の発生が認知された2か所および事案の発生が認知されていない2か所の計4 か所の映像を視覚刺激として選出した(Figure 1)。

実験計画 動画化した4か所の刺激は,事案の発生が認知されていない2か所(地点Aと地 点D)と事案の発生が認知された2か所(地点Bと地点C)に分け,参加者は計4か所についての動 画刺激を見るため,参加者内計画であった。

手続き 2018年12月18日に東洋大学の6号館6319教室にて実験を実施した。初めに,実験 地点A 地点B

地点C 地点D Figure 1 地点別の動画刺激の一部

藍 置 重

l

. . . .  

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者が参加者に実験の概要について説明し,実験参加への同意を書面で確認した。その後,教 室のスクリーンに刺激動画を1つずつ呈示した。呈示動画の場所に関する情報提供は一切し なかった。1つの刺激動画が終了した後,参加者に事案が発生したかどうかの有無を記入し,

事案発生の判断理由に対して自由記述の形で回答を求めた。刺激動画のカウンターバランス をとるために,①犯罪なし,②犯罪あり,③犯罪あり,④犯罪なし,の順番で呈示し,4セ ットを繰り返した。実験が完了した後,デブリーフィングを行い,本当の実験目的を説明 し,もう一度実験参加への同意を書面で確認した。

教示 動画刺激を流す前に,「あなたが一人でその場にいるように想像して下さい」と教 示を行い,呈示動画の場所に関する情報は一切提供しなかった。

分析方法 まず,参加者のリスク評価の全体的傾向を把握するために地点ごとに関する事 案発生状況の推測の結果を収集し,χ2検定を行った。また,参加者により,地点別の事案 発生の判断理由に対して自由記述の形で収集した環境要因に基づいて類型化可能であること を検証した。なお,上記の類型化した環境要因を用いて対応分析を行い,地点と環境要因の 関係性を集約的に可視化した。具体的には,地点別(地点A・B・C・D)と環境要因に関する8 つの下位カテゴリー項目(Table 1)をマップ上にプロットし,各地点に応じた分布パターンを 確認した。最後に,対応分析の分布パターンとクロス集計分析の結果から地点別の環境要因 特徴抽出を試みた。

分析ソフト χ2検定の実施にはIBM株式会社が提供するSPSS 23を使用した。また,χ2 検定の効果量はファイ係数(φ)により示した。清水(2016)が提供するHAD 16を使用して対応 分析を行った。

倫理的配慮 本研究で使用した質問紙は2018年度東洋大学社会学研究科研究倫理委員会の 自由記述例

人通りもそれほど多くない 大通りではなく

雑木林など見通し悪いところが多い 街灯が少ない

学校みたいな建物があるから 学校や民家があるから

一本道であるため駐車場やどこかには不審者が隠れているかも 24時間営業するコンビニがあるから

コンビニエンスストア

Table1 変数環境要因の下位カテゴリー名と自由記述例

カテゴリー名 人通り・交通量

道の広さ 死角や見通し悪いところ

街灯 学校 住宅 駐車場

カテゴー名 自由記述例

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倫理承認を通し,使用したデータには研究用のIDで暗号化し,個人を特定できない形で解 析を行った。

結果

リスク評価地点における事案発生状況の推測

地点A・B・C・Dに関する事案発生状況の推測の結果を収集し,χ2検定を行った。なお,

地点Aと地点Dは犯罪の発生が認知されていない2か所であり,地点Bと地点Cは犯罪の発生 が認知された2か所であった。

地点Aに対して事案が発生したと思う人6名,地点Aに対して事案が発生しなかったと思 う人18名という結果が得られた。χ2検定により,地点Aにて事案が発生しなかったと思う 人は事案が発生したと思う人より多かったことが明らかにした(χ2=6.00,df=1,p<.05,φ

=0.50)。

地点Dに対して事案が発生したと思う人2名,地点Dに対して事案が発生しなかったと思う 人22名という結果が得られた。χ2検定により,地点Dにて事案が発生しなかったと思う人 は事案が発生したと思う人より多かったことが明らかにした(χ2=16.67,df=1,p<.01,φ

=0.83)。

また,χ2検定により,リスク評価低地点(地点A・D) にて事案が発生したと思う人は事案 が発生しなかったと思う人より多かったことが明らかにした(χ2=21.33,df=1,p<.01,φ

=0.22)。

あり なし

6 18 24 33.3 66.7

2 22 24 8.3 91.7

合計 8 40 48

16.7 83.3 地点A

地点D

Table 2 リスク評価低地点の事案発生集計表 度数

事案発生

合計 全体%

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地点Bに対して事案が発生したと思う人17名,地点Bに対して事案が発生しなかったと思 う人7名という結果が得られた。χ2検定により,地点Bにて事案が発生したと思う人は事案 が発生しなかったと思う人より多かったことが明らかにした(χ2=4.17,df=1,p<.05,φ

=0.42)。

地点Cに対して事案が発生したと思う人22名,地点Cに対して事案が発生しなかったと思 う人2名という結果が得られた。χ2検定により,地点Cにて事案が発生したと思う人は事案 が発生しなかったと思う人より多かったことが明らかにした(χ2=16.67,df=1,p<.01,φ

=0.83)。

また,χ2検定により,リスク評価低地点(地点B・C) にて事案が発生したと思う人は事案 が発生しなかったたと思う人より多かったことが明らかにした(χ2=18.75,df=1,p<.01,

φ=0.27)。

各地点に対して,実際に事案が発生したかどうかについての推測の正答率は,地点A (犯 罪の発生が認知されていない) は75.0%,地点B (犯罪の発生が認知された) は70.8%,地点C ( 犯罪の発生が認知された) は91.7%,地点D (犯罪の発生が認知されていない) 91.7%であった。

正答率は全体的に70%を超えた。

リスク評価の原因となる環境要因

実際に事案発生有無の結果の推測を記入し,事案発生の判断理由に関する自由記述115件 の回答を対象として地点別に分けた。集計した要因は人通り・交通量,道の広さ,死角や見 通し悪い所,街灯の不備,学校,住宅,駐車場,コンビニエンスストアである(Table 4)。

あり なし

17 7 24 70.8 29.2

22 2 24 91.7 8.3

合計 39 9 48

81.3 18.7 Table 3 リスク評価高地点の事案発生推測表 度数

事案発生

合計 全体%

地点B 地点C

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Table 4により,地点Aの各要因の出現頻度について,一番高かったのは学校が18回,次 いで住宅が9回,人通り・交通量が2回であった。地点Bの各要因の出現頻度について,一番 高かったのは死角や見通し悪い所が12回,次いで駐車場が8回,人通り・交通量が5回であっ た。地点Cの各要因の出現頻度について,一番高かったのは死角や見通し悪い所が22回,次 いで人通り・交通量が4回,街灯の不備が2回であった。地点Dの各要因の出現頻度につい て,一番高かったのはコンビニエンスストアが16回,次いで人通り・交通量が8回,道の広 さが4回であった。

また,全体的に見ると,地点Aのみ出現した要因は学校,地点Bのみ出現した要因は駐車 場,地点Dのみ出現した要因はコンビニエンスストアであった。

環境要因の出現頻度のデータをクロス集計表にまとめて対応分析を行った結果から2次元 マッピングをした。

人通り・

交通量 道の広さ 死角や見通 し悪い所

街灯の不

備 学校 住宅 駐車場 コンビニ ストア 合計

地点A 2 0 0 0 18 9 0 0 29

地点B 5 2 12 2 0 1 8 0 30

地点C 4 0 22 2 0 0 0 0 28

地点D 8 4 0 0 0 0 0 16 28

合計 19 6 34 4 18 10 8 16 115

Table 4 地点別の要因の出現頻度

Figure 2 地点別環境要因散布図

人通り・交通量 道の広さ

死角や見通し悪い所 街灯の不備

住宅 学校

駐車場 コンビニストア

A

B C

D

2

次元1

環境要因

地点

◆ 

. 

◆ 

次元

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各次元の説明度については,次元1は49.3%,次元2は39.6%であり,2次元を組み合わせて データ全体の88.9%が説明できる。また,次元1の相関係数r= 0.94,次元2の相関係数r=

0.84であった。

Figure 2により,各項目の分布バターンを見ると,右側,左側下方,左側上方に分布して いた。具体的には,右側には地点Aの近くには学校,住宅が布置された。左側下方には地点 Bと地点Cの近くには駐車場,街灯の不備,死角や見通し悪い所が布置された。左側上方に は地点Dの近くにはコンビニエンスストア,道の広さ,人通り・交通量が布置された。これ らのまとまりは,いずれも関連性を示した。

以上のように,χ2検定と対応分析の結果から,事案の発生が認知された地点と事案の発 生が認知されていない地点の環境要因が異なることを明らかになった。そして,事案の発生 が認知された地点には,街灯の不備,死角や見通し悪い所,駐車場など,ネガティブな環境 情報があれば,リスク評価が高まることが示唆された。

考察

本研究では,google earthを用いて,子供に対する犯罪が発生した地点情報のある事案に 基づき,事案発生が認知された2か所(地点B:公然わいせつ,地点C:強制わいせつ)と事案 発生が認知されていない2か所(地点Aと地点D)の計4か所の映像を視覚刺激として呈示し,

子供に対する事案が発生する可能性のある場所に対し,大学生のリスク評価を高める可能性 とその要因に関する探索的な研究を行うことを目的とした。

まず,リスク評価地点における事案発生状況の推測から見ると,子供に対する事案が発生 する可能性のある場所に対し,大学生がリスク評価を高める傾向があることを示した。

そして,リスク評価の原因となる環境要因として,人通り・交通量,道の広さ,死角や見 通し悪い所,街灯の不備,学校,住宅,駐車場,コンビニエンスストアがあることが確認さ れた。Figure 2によると,各項目の分布バターンの相違が見られた。地点Aは学校,住宅と 関連している。地点Bと地点Cは街灯の不備,死角や見通し悪い所,駐車場と関連している。

地点Dはコンビニエンスストア,人通り・交通量,道の広さと関連している。

特に,事案の発生が認知された地点には共通点があったが,事案の発生が認知されていな い地点にそれぞれ違い環境特徴を持つことを明らかになった。

事案の発生が認知された地点と事案の発生が認知されていない地点に対するリスク評価は それぞれ有意な違いがあり,事案発生した地点に対して高いリスク評価がされる傾向がある ことが示唆された。大学生が子供に対する事案発生現場の物理的環境要因の特徴として注目 したのは街灯の不備,死角や見通し悪い所,駐車場の有無であった。自由記述の内容を見る と,地点Bに対してリスク評価が高いと判断する理由は「街灯が少ない,坂の上見通し悪い」

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「駐車場がある,死角や見通し悪い所がある」「人が隠れそうな場所がある」などであって,

街灯の不備,駐車場,死角や見通しの悪さのような要因が注目された。地点Cに対してリス ク評価が高いと判断した理由は,「見通し悪い所が多く,街灯も少ない」「道幅が狭い,なお 一本道で逃げ場が少ない,視界が開けていない」「人通りが少なく,一本道であるため駐車 場やどこかには不審者が隠れているかもしれない」などであって,地点Cにおいてリスク評 価を高める要因は地点Bとほとんど同様であると考えられる。

なお,地点Bと地点Cに発生した事案種類によると,街灯の不備,死角や見通し悪い所,

駐車場など,犯行を実行しても発見しにくいところでわいせつ行為などの性的犯罪が発生し やすい傾向がある。これは性犯罪の発生場所の環境要因に関する先行研究の結果と一致して いる(Ceccato,2014;Hewitt & Beauregrad,2014)。

一方,自由記述の内容を見ると,「学校の周辺で監視性が高いと思う」「学校や住宅がある から,安全だと思う」「住宅があるので人通りが多そう」など,子供を対象としてのリスク 評価は高まるという傾向があったが,地点Aに対するリスク評価を低める理由は監視力が高 い住宅と学校の周辺で犯罪が発生難いと考えられる。また,リスク評価地点Dの自由記述の 内容はほとんどコンビニエンスストアと交通量に注目し,コンビニエンスストアがあると同 時に一定の交通量を維持している故に監視力が高いと思われてリスク評価が低くなってい た。

桐生(2011)は,小宮(2005)が述べる地域安全マップ効果について,次のように指摘してい る。防犯に関する環境要因は元々具体的に検討しなければならないことを,子供を理解しや すいために,「入りやすい場所」と「見えにくい場所」だけでまとめたが,2つのキーワード は多様な環境要因を解釈できるかどうかも問題点となる。具体的には,「入りやすい場所」

と「見えにくい場所」の条件から見ると,犯罪が起こりそうな場所という条件と符合する地 点が町中にかなりあると考えられる。今回は子供に対する事案が発生する可能性のある場所 をしぼり,大学生によるリスク評価を検討した。あわせて,事案の発生が認知されていない 地点に対しても,リスク認知が生じる可能性があることも見出すことができた。

本研究のリスク評価結果から見ると,現在ボランティアや志願者として子供を対象とした 防犯活動や防犯教育に活躍している大学生は,子供に対する事案が発生する可能性のある場 所に対し,事案発生の可能性をおおよそ正しく評定することができることが見出された。た だし,その正答率はおよそ70%であった。もし地域安全マップの作製を指導する際に,作製 指導者の主観的な判断(リスク認知)のみによって,子供たちへの教育がなされているなら,

地域安全マップ作製活動が子供に防犯意識を向上させるどうかは定かではない可能性がある と示唆される。しかし,地域における犯罪発生及び不審者情報とともに,物理的環境要因を 変数として分析し,詳細的な評定基準を用いなれば,リスク評価はより適切なものとなり得 る。それらを用いて子供に対する防犯活動や防犯教育を行うならば,よりポジティブな効果

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をもたらすのではないかと思われる。

そこで,リスク評価にとって重要な環境要因を明らかにし,マップ作製指導者が環境リス クを客観的に評価できる,子供向けの防犯効果のある分かりやすい,地域活動や防犯教育に も使われる環境リスク評価尺度の作製は今後の課題であろう。

展望

今回の研究では,大学生の視点から子供被害が発生した場所に対するリスク評価を高める 環境要因に関して探索的な研究を行った。その結果,リスク評価地点における事案発生状況 の推測から見ると,子供に対する事案が発生する可能性のある場所に対し,大学生がリスク 評価を高める傾向があることが明らかになった。一方,事案の発生が認知されていない地点 にそれぞれ違い環境特徴を持つことがあったが,事案の発生が認知された地点には,死角や 見通し悪いところ,駐車場,街灯の不備など,ネガティブな環境情報があれば,子供に対す るリスク評価を高める傾向があることが示唆された。

現在までの犯罪不安やリスク評価に関する研究は,主に被害者側の視点を中心に行われて きた。しかし,実際に犯罪が発生したところは危険な環境要因を揃える場所とは限らない。

そこで,加害者側の視点から犯行を実行する理由を検討する必要もあると思われる。事案発 生現場の要因を統制し,多種な動画刺激を作成し,加害者,被害者と監視者,そして時間と 場所の5要因からリスク評価となる要因の検討が今後の課題となろう。

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Abstract:

The purpose of this study is to find the effects of occurrence of crimes against children and the factors of risk assessment about crime among undergraduate students (N=24). In this study, we used the google earth to create video stimuli of crime occurrence sites in Kanagawa Prefecture. By using the video stimuli, we examined the possibility of raising the risk assessment of undergraduate students where crime against children might occur and the environmental factors they thought might be dangerous. According to the results of the 24 participants, it became clear that the risk assessment of undergraduate students could be enhanced for where crime may occur. In addition, as a result of conducting the correspondence analysis by collecting reasons for free description of risk assessment, it was speculated that if there was negative information such as useless streetlights, parking places, blind spots and poor prospects, the risk assessment would be raised.

Keywords:crime against children, risk assessment, environmental factors, correspondence analysis

Examining the impact of environmental factors on risk assessment

―Using video stimuli at the occurrence of crimes against children―

SU, Yuqing

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