全国大会
第2回
筆記競技
平成25年3月23日
注意事項
1.競技開始の合図があるまでは,問題冊子を開いてはいけません。
2.問題冊子はこの表紙以外に2ページから52ページまであります。競技開始の合図で全ページ印刷されている ことを確認してください。競技中に問題冊子の印刷不鮮明,ページの落丁・乱丁,解答用紙の汚れ等に気づ いた場合は,手を挙げて係員に知らせてください。
3.競技開始の合図があったら,解答用紙および追加用紙の所定の欄に,学校名,番号,氏名を記入してくださ い。
4.解答はすべて解答用紙に記入してください。解答用紙以外は採点しません。ただし,第9問については追加 用紙も採点に考慮することがあります。
5.問題冊子は競技終了後回収します。
6.問題は第1問〜第11問で構成されています。どの問題から取り組んでも結構です。
7.競技においては,チームのメンバーと話し合って解答して構いません。一人当たりの解答数などの決まりは ありませんので,チームで作戦を立てて問題に取り組んでください。
8.定規,分度器,コンパスの使用を認めます。電卓については机の上に用意されたものだけを使用してくださ い。個人で持参された電卓の使用は認めません。
9.図書や携帯電話等外部と接続可能な電子機器の持ち込みを禁止します。
10.終了の合図があるまで,係員の許可なしに,会場の外に出ることはできません。気分が悪くなったとき,ト イレに行きたくなったときは,手を挙げて係員に知らせてください。
11.「終了」の合図で,すぐに筆記用具を置いてください。その後,指示に従い解答用紙および追加用紙をクリ ップ留めしてください。
12.本競技の合計得点第1位の学校には協賛企業から表彰があります。最も得点の高いチームが複数ある場合は,
満点の問題の数の多いチームを上位とします。満点の問題の数も一致する場合は,満点に一番近い得点の問 題の数の多い学校を上位とします。以下同様の方法により,表彰される第1位のチームを決定します。
第1問
動物の循環系は,血液を送り出すポンプ作用をもった心臓(図1)と血液の流れる管である 血管とからできている。血管には,あらゆる組織にくまなく分布する毛細血管,心臓から流 れ出る血液を毛細血管へと運ぶ動脈と,毛細血管から心臓へと戻る血液を運ぶ静脈とがある
(図2)。ヒトの心臓には,右心房と左心房の2つの心房と,右心室と左心室の2つの心室と があり,これらのいずれかに大動脈,上大静脈,下大静脈,肺動脈,肺静脈が繋がっている。
図1 ヒトの心臓 図1 ヒトの心臓 図1 ヒ
上大静脈
下大静脈
肺静脈 肺静脈
肺動脈
右心房
左心房
右心室 弁 V4
弁 V2
弁 V3
左心室 乳頭筋 心室中隔 大動脈
弁 V1
腱索
各血管のサイズは,実寸に比例するよう には描かれていない。例えば,実際は毛 細血管は太い動脈の 1,000 分の 1,細動脈 や細静脈の 10 分の 1 ほどの太さをもつに 過ぎない。
外膜 中膜 内膜 内皮細胞
太い静脈
細静脈 中位の太さの静脈
太い動脈
細動脈 中位の太さの動脈 外膜
中膜 内膜 内皮細胞 外膜 内皮細胞
外膜 中膜 内膜 内皮細胞
外膜 中膜 内膜 内皮細胞 中膜 内皮細胞
内皮細胞
毛細血管
ある程度の太さをもった動脈と静脈のいずれにも弾力性の繊維を多く含む外膜と内膜,これ らに挟まれた平滑筋を多く含む中膜がある。細動脈では外膜と内膜に相当する層はないが,
中膜は残っている。細静脈には外膜だけが残っている。これらに比べて,毛細血管は厚さわ ずかに0.3 m の内皮細胞だけからできている。この薄さにもかかわらず,血圧によって裂 けてしまうということはない。中膜の平滑筋の機能は,自律神経系の支配を受けて血管の径 を能動的に変えることであり,これによって動脈では組織への
①
血流量分配の調節に関わり,静脈では
②
心臓へと戻る血液量の調節に関わる。表1に示すように,体の状態によって器官・組織への血液の分配が変化するときには,動脈の平滑筋が選択的に収縮あるいは弛緩する。
静脈の平滑筋が弛緩すると,静脈の容量は増大してより多くの血液が静脈系に留まるように なり,そのときに循環に加わる血液量が減少する。逆に静脈の平滑筋の収縮は静脈系に留ま る血液量を減少させて,そのときに循環に加わる血液量を増大させる。
心臓には,拍動のリズムをつくりだしているペースメーカーという特別な種類の細胞があ る。心臓の拍動の速さや力強さを調節する自律神経系の神経末端からの伝達物質は,このペ ースメーカーへと作用する。心臓の拍動によってどのようなしくみで血流がつくられるかを 研究する過程で,ヒトの心臓の拍動一周期内における
③
拍動の位相(様々な段階)での血圧,④
弁の状態,容積,血流などを測定した。この研究の結果の一部を図3に示す。表1 心拍出とその分配
体の状態
器官または組織
安静時 (a) 軽い運動時 (b) 増減比
(b/a)
血流量(mL/ 分) 割合(%) 血流量(mL/ 分) 割合(%)
消化管と肝臓 1,350 27.0 600 4.8 0.44 A 1,000 20.0 550 4.4 0.55 B 450 9.0 1,700 13.6 3.78
C 650 13.0 650 5.2 1.00
心臓 150 3.0 550 4.4 3.67
骨格筋 750 15.0 8,000 64.0 10.67 骨とその他 650 13.0 450 3.6 0.69 合計 5,000 100.0 12,500 100.0 2.50 心臓の近辺の体表に耳を当てると,あるいはよりはっきりと捉えるには聴診器を当てると,
拍動の力学的な過程がつくり出す音である 鼓動 を聴くことができる。この音は,図3に示 されている5つの位相のうち,心室がその容積をほぼ一定に保ったまま,内圧を急激に上昇 させる位相と急激に下降させる位相の
⑤
2つの位相においてつくられている。血流は,図4に示すように,静脈から心房,心房から心室,心室から動脈へと一方向に流 れ,決して逆流することはない。これには弁の果たす役割が重要である。心臓の弁は,その 形の特徴から上流の血圧が弁を境界として下流より高いときに,上流と下流の圧力差を原動 力として受動的に開き,血流を妨げない。一方,圧力差が逆転したときには,上流に向かっ
とがない。このように弁の開閉は受動的に起こるが,心房と心室の境界の弁には,図1に示 すように弁から心室の内壁に向かって伸びる腱索とさらにこれに繋がる
⑥
乳頭筋があり,拍 動のある段階において乳頭筋が収縮することで,弁の働きを助けている。心臓のものと同様の方向性をもった弁が静脈にも見られ,ヒトの太めの静脈では 2 〜 4 cm 間隔で静脈に沿って配置されている。液体の入った管を押しつぶすと,つぶされた部 分の液体は管の両側へと押し流される(図5左)。静脈の血管壁は動脈のものほど丈夫ではな いので,静脈はこれを挟み込んでいる骨格筋の収縮によって容易に押しつぶされる。仮に静 脈に弁がないと,この部分での血液の一部は逆流してしまう。しかし,静脈には弁があるの で,静脈の弁は血液を逆流させずに,骨格筋の収縮と弛緩の繰り返しと協働して,血液を心 臓へと戻すのに有効に働く(図5右)。
ヒトの健康状態の指標として上腕部で 血圧 を測ることがある。このときの 血圧 は図3 の大動脈の血圧にほぼ該当する。動脈の血圧は,姿勢によっては静水圧注 の影響を受ける。
例えば,起立した姿勢での頭部動脈の血圧は大動脈のものに比べて静水圧分だけ低く,足部 動脈のものは静水圧分だけ高い。この静水圧が循環系にどんな効果を与えるかを,具体的に 考えてみよう。
ヒトとキリンについて,起立姿勢での体の各部分での動脈の血圧を測定した(図6)。キリ ンでは心臓を出たときの大動脈の血圧が仮にヒトの場合と同じ程度だとすると,頭部動脈の 血圧は,大動脈の血圧より静水圧分だけ低くなり,マイナスの値をとるはずである。つまり 陰圧になるだろう。ところが実際には,キリンは強力な心臓をもっており,心臓の出力を上 げて,頭部動脈の血圧を適切な値に保っている。さらに驚くことに,キリンは姿勢を変えた 場合に
⑦
頭部への静水圧の影響を軽減するように心臓の出力を調節することもできる。また,頭部を下げて水を飲むときに前肢を大きく拡げて心臓の位置を下げ頭部への静水圧の影響を 軽減したり,脚部静脈や頸部静脈の弁の働きで静脈系に留まる血液が過剰にならないように したりするのは,大型の動物の静水圧との 戦い として興味深い。
注 静水圧は,液体に対して重力に基づいてはたらく圧力で,2点での静水圧の差は2点間の高さの差
図3 ヒトの心臓の拍動一周期内の出来事 大動脈の血圧
左心房の血圧
時間(s)
拍動の位相 A 〜 E 120 A
120 100 80
80 60 40
40 20
200 400 0
0 0
0 0.2 0.4 0.6
B C D E
血圧(mmHg)容積(mL)流速(mL/s)
開 閉 開
弁 A
閉 開 閉
弁 B
左心室の血圧
左心室の容積
左心室から出 る血液の流速
(ア) (イ) (ウ)
液体の入った管
押しつぶす
弁が開き血液が心臓に向かう
静脈
骨格筋(収縮時)
弁が閉じて逆流が妨げられる
図5 静脈弁の働き
図6 起立姿勢での動脈の平均血圧 4
3
2
1
0
高さ(m)
頭部動脈 75 mmHg
頭部動脈 60 mmHg
大動脈 250 mmHg
足部動脈 200 mmHg
足部動脈 400 mmHg 大動脈
100 mmHg
1.5 m おじぎ
図7 キリンの おじぎ
問1 下線部①の血流量分配について,ヒトの軽い運動時にどのような変化が起こるかを研 究して,その典型的な例として表1に示す結果を得た。表1の空欄 A 〜 C に入る語句 として最も適当なものを,次の 〜 のうちから1つずつ選べ。
腎臓 副腎 膵臓 皮膚 脳
問2 下線部②に関して,心臓に戻る血液量を大きく増加させる要因を,次の 〜 のうち から2つ選べ。
動脈の平滑筋の収縮 動脈の平滑筋の弛緩 細動脈の平滑筋の収縮 細動脈の平滑筋の弛緩 静脈の平滑筋の収縮 静脈の平滑筋の弛緩 骨格筋の活動増加 骨格筋の活動減少
問3 下線部③の拍動位相について,図4は図3の拍動の位相 A 〜 E 内での心臓の代表的 状態を示したものである。位相 A 〜 E のそれぞれに対応する状態を図4の 〜 のう ちから1つずつ選べ。
問4 下線部④の弁について,図3の弁 A,B のそれぞれがどの弁かを図1の弁 V1〜 V4と の対応で示す組合せとして最も適当なものを,次の 〜 のうちから1つ選べ。
弁 A 弁 B 弁 A 弁 B 弁 A 弁 B 弁 V1 弁 V2 弁 V2 弁 V3 弁 V3 弁 V4
弁 V1 弁 V3 弁 V2 弁 V4 弁 V3 弁 V1
問5 下線部⑤の2つの位相のそれぞれに対応する状態を,図4の 〜 のうちから1つず つ選べ。
問6 図3の位相 A 〜 E のうち,下線部⑥の乳頭筋がそれぞれの位相の大部分の期間に渡 って収縮しているものに○を付けよ。
問7 乳頭筋が断裂した場合に起こると予想されることとして最も適当なものを,次の 〜 のうちから1つ選べ。
心房の収縮期に心房から静脈へ血液が逆流する。
心房の拡張期に静脈から心房へ流入する血液が増加する。
心室の収縮期に心室から心房へと血液が逆流する。
心室の拡張期に心房から心室へと流入する血液が増加する。
問8 下線部⑦について,図6のキリンの大動脈に微小な血圧計を付けてこの部分の血圧を モニターしながら,キリンに首の付け根以降の後半体の姿勢を保たせたまま,図7のよ うに,高さにして1.5 m ほど おじぎ をさせたところ,大動脈の平均血圧が50 mmHg だけ下降した。図6のキリンの頭部動脈と足部動脈の平均血圧はどのようになると予測 されるか。それぞれについて予測される平均血圧の値として最も適当なものを,次の
〜 のうちから1つずつ選べ。ただし,キリンの平均血圧の静水圧分は,高度差1.5 m に対しては110 mmHg であり,また,動脈の平均血圧の静水圧以外の要因による変化は,
頭部や足部に達するまでは,無視できるほどに小さいものとする。
25 mmHg 75 mmHg 125 mmHg 135 mmHg 235 mmHg 240 mmHg 290 mmHg 350 mmHg 400 mmHg 450 mmHg 510 mmHg 560 mmHg
問9 血管壁の厚さは,図2に示すように動脈と静脈で大きく異なる。毛細血管の壁はきわ めて薄く,組織との物質の交換を容易にするように適応している。一方で,高血圧症に なると脳の血管が裂け,脳内出血の危険が増すと言われており,血管壁が薄いと裂けた りしないか心配になる。そこで,このことについて,物理的に考える。
まず,薄膜が引っ張る力に対して,どれくらいまで耐えられるかを考えるために,膜 の張力を定義する。薄膜の張力とは,図8のように,膜に長さ の切れ目を入れたとき,
その切れ目に垂直に切り口を開く方向に作用する力 の単位長さ当たりの大きさ
=
として定義される。
図8 薄膜の張力 切れ目 薄膜
張力は膜が曲がっているとか,波打っているなど,膜の状態により変化し得るが,以 下では膜の張力 は一定であるとする。
力がΔ だけ高いとする(内側が高くなければ血管は潰れてしまう)。このΔ が血圧に 相当する。この血圧が血管を押し広げようとする力と血管が張力により元に戻ろうとす る力がつり合っている(つり合っていなければ血管は変形する)として,以下の問いに答 えよ。
なお,図9のように,長さ の血管を円筒の軸を通る平面で仮想的に切った場合を考 えることにする。
2
図9 仮想的切れ目の入った無限に長い血管(左) 仮想的切断と張力(拡大)(右)
⑴ 血管の断面(厚みを無視しているので線となる)は2本あることに注意して,図9の上 半分の部分が下半分の部分から引っ張られる力を求めよ。
⑵ 血圧は上半分の部分を上に押し上げる方向に力を及ぼす。この力を求めよ。必要なら 図10を参考にせよ。
図 10 血管の上半分を押し上げる力の仮想的作用面
⑶ ⑴ , ⑵の力がつり合うことから,血圧Δ と血管の張力 の関係を求めよ(これをラ プラスの法則という)。
⑷ ラプラスの法則において張力 が一定であるとして,また血管の半径と血圧の関係 に注意して,「血管壁が薄いと裂けたりしないか」という心配について,チームの考えを
タの栄光」(宝島社)では拡張型心筋症の治療法の一つ,バチスタ手術(正式名称:左室 縮小形成術)を題材にしている。ここで,拡張型心筋症とは,心筋の細胞の性質が変化し,
通常より心筋が薄く延びてしまい,心臓のポンプ機能が著しく低下する心疾患である。
また,バチスタ手術とは,肥大した心臓の左心室の3分の1程度を切除し心臓の形を整 える心臓外科手術で,ブラジルの心臓外科医のランダス・バチスタ博士によって,ラプ ラスの法則を発想の根幹として,考案されたものである。
変性した心筋を切除したところで正常な心筋の量が増えるわけではない。変性した心 筋による負荷がなくなり,胸腔内で肥大化した心臓が圧迫されていたものから解放され るという利点はあるように思われるが,心臓の機能が回復するようには思われない。
バチスタ手術により心臓のポンプ機能が回復するとされる理由をラプラスの法則を用 いて説明せよ。ただし,ラプラスの法則は膜の形状により変更を要するが,係数程度の 差であり本質的な違いはない。
問10 大動脈のように太い(内径1.6−3.2 cm)場合は,ほぼエネルギー保存則(流体の場合は ベルヌーイの定理という)が成り立つ。しかし,内径が 1 mm 程度の細い動脈(細動脈)
になると枝分かれにより総断面積は増えるが,逆に流動抵抗が大きくなる。
そこで,ここでは管を流れる粘性流体について考えてみよう。以下では管の高低差は 考えないものとする(すべて水平面上で考えることにする)。
単位時間に流れる流体の体積(流量) は管の両端の圧力差Δ に比例し,
=Δ
という関係(これをハーゲン - ポアズイユの法則という)を満たす。ここで, は流動抵 抗と呼ばれ,管の内径 の4乗 4に反比例し,管の長さ に比例する。
図11のように,毛細血管は,細動脈から出て枝分かれしたり合流したりしながら細静 脈へと繋がる。いま,毛細血管と組織の間での液体の交換速度は血流速度に比べて小さ く無視できるものとし,毛細血管の内径は一定で,血流速度と毛細血管に沿っての圧力 差にはハーゲン - ポアズイユの法則が成り立つものとする。
以下,100 m 当たりの流動抵抗が 0である毛細血管からなる毛細血管網(図12)につ いて,次の問いに答えよ。
⑴ 毛細血管網全体の流動抵抗を 0を用いて表せ。
⑵ 毛細血管の枝5に血栓ができ,この枝の血流が阻害され,枝5の実効的な半径が元の 半径の1/3となったときの毛細血管網全体の流動抵抗を 0を用いて表せ。
細動脈
毛細血管
細静脈 図 11 毛細血管網
図 12 モデル毛細血管網 細動脈
細静脈 毛細血管網
枝1 200 μm
枝 2 100 μm
枝5 200 μm
枝4 200 μm 枝3
100 μm
身の回りにいわゆるネットワークと呼ばれるものは,インターネット,大動脈から毛細血 管に至る血管網,植物の道管(葉脈),電力を供給する電線,電話線など多々ある。この中で はインターネットとその他のネットワークは性質が異なる。後者はネットワークの1カ所が 途切れた場合,その下流に位置するネットワークには血液,水(養分),電力,通話が完全に 途絶する。断線する部分が上流であればあるほど影響は甚大になる。
他方,インターネットはもともと軍事用に部分的な障害があったとしても通信の途絶が起 こらないように設計され,1つのノード(中継器,ルーター,サーバー,パソコン)は複数の ネットワークとつながり,そのクモの巣に似たネットワーク構造から WWW(World Wide Web)と呼ばれる。数学的にはこのような構造はランダム・ネットワークと呼ばれ,その性 質が詳しく調べられている。
このような現象は物理的にはパーコレーションと呼ばれ,例えば,火事の延焼,害虫の広 がり,病気の蔓延などの基礎モデルとなり,様々な分野と関連性がある。
さて,インターネットは世界中くまなく接続されており,その接続機器の数は膨大である。
ネットワーク関連機器の故障率が低いとしても,数が多ければ世界中で故障する機器の数は 無視できない。どこの機械がいつ壊れるかは交通事故同様,確率的に起こるものと考えられ るが,複数の機械が壊れた場合,ネットワークにはどのような影響があるだろうか? 通信 に影響が出ないためには機械が何台まで故障してよいか,もしくは機械が壊れても確率がど のくらい以下でなければならないか?
ここでは,以下の道筋にしたがって,単純な場合について考える。
問1 図1に示すように2つの電極の間に 本の導線が張られているとする。
1
・
・
・
・
・
・
・
第2問
もし,各導線がどれも確率 で断線しているとするとき,平均的に見て何本の導線が つながっていると考えられるか。これをもとに,少なくとも1本の導線を通じて電極間 に電流が流れるために が満たすべき条件を求めなさい。
問2 図1の 本の導線が図2のようにそれぞれ2本のつながった導線に置き換えられる と,導線の数は全部で 2 になる。この 2 本の導線がそれぞれ確率 で断線している とするとき,電極間に電流が流れると期待できるための の条件を求めなさい。
1
図2
・
・
・
・
・
・
・
問3 図3に示す分岐がある場合に,電極間に電流が流れると期待できるための の条件を 求めなさい。
図 3
問4 これまでの例をふまえて,電極間に電流が流れるための に対する条件を求める方法 の一般化した表現を考察しなさい。
問5 図4に示す分岐がある場合に,電極間に電流が流れると期待できるための が満たす べき式を求めなさい。
図4
問6 複雑な問題に取り組む前に以下の問題を考える。
⑴ 図5のような道路があるとき,×が通れないときに,A から B へ最短の経路は全部 で何通りあるか。
図5 A
B
⑵ 図6において,A から B への最短経路は何通りあるか。
図6 A
B
問7 問6の場合には最短経路を考えたが,今考えている導線のネットワークでは最短経路 である必要はないことを踏まえて,図7に示すように導線が碁盤の目のようにつながっ ている場合,それぞれの導線が断線している確率が のとき,少なくとも1つの経路を 通って電流が流れるためには確率 がどのような条件を満たせばよいのか考察しなさい。
碁盤の目の縦横の数によりどのように変わるのか,小さなものから次第に大きなものを 考える方法で考えなさい。特に,系が無限に大きくなったときにはどのようになるか?
……
……
図7
・
・
・
分子の構造を正確に表すには,どの原子がどの位置にあるか指定することが必要である。
最も一般的な方法は,原子の位置(中心の位置)を , , 座標の値で表すことであろう。こ れを直交座標表示という。
問1 正四面体形のメタン分子(CH
4
,図1)を構成する4つの水素 原子の位置を,C‑H結合長(両原子の中心間の距離) を用い てそれぞれ直交座標表示せよ。ただし,炭素原子は原点に置く こと。また,炭素の結合角(ここではH‑C‑H
結合角)は正四面 体角(109.5°)である。アンモニア(NH
3
)は正三角錐形の分子(図2)であり,N‑H
結合 長は1.01 Å(オングストローム,1Å=10−10 m),H‑N‑H結合角 は106.7°である。各原子の位置をすぐに直交座標表示できるだ ろうか。このように,簡単な分子でも,直交座標表示が意外に難しい ことがある。
ところが,分子の立体構造は,原子間の結合長と結合角に注目すると,見通しよく表せる ことが多い。このような考え方により考案された Z-matrix 法について学んでみよう。
Z-matrix 法は,起点となる原子を決め,その原子からの距離と方位を指定して次の原子 を置いていく方法である。NH
3
において,Hの1つを起点とした場合の Z-matrix の例を表 1に示す。表1 アンモニアの Z-matrix
a 原子の種類 b 結合長(Å) c 結合角(°) d 二面角(°)
1
H
2
N
1 1.013
H
2 1.01 1 106.74
H
2 1.01 1 106.7 3 113.8図1 メタンの分子模型
図2 アンモニアの分子模型
第3問
【表1の説明】
① 先頭行 a の数字は原子の通し番号である。この原子が何であるかは「原子の種類」に元 素記号で示されている。
② b,c,d に示された数字は,①の通し番号に対応した原子を表す。
③ 「結合長」は,原子 a と原子 b との結合長(両原子の中心間の距離)を表す。
④ 「結合角」は,原子 a ‑原子 b ‑原子 c の結合角を表す。
⑤ 「二面角」は,原子 a,b,c が形成する面と,原子 b,c,d が形成する面(基準面)と のなす角を表す。符号は,回転軸(原子 b と c とを結ぶ直線)を原子 c の方から眺めて,
基準面から時計回りに回転する方向を正とする。
以下,NH
3
の Z-matrix(表1)をより具体的に説明する ので,図3と対応させながら理解してほしい。1行目:起点は
H
である。2行目:原子 2(N)‑原子 1(起点の
H)の結合長は1.01 Å
である。3行目:原子 3(H)‑原子 2(N)の結合長は1.01 Å,原子 3
(H)‑ 原子 2(N)‑原子 1(H)の結合角は106.7°である。
4行目:原子 4(H)‑原子 2(N)の結合長は1.01 Å,原子 4
(H)‑ 原子 2(N)‑原子 1(H)の結合角は106.7°である。
また,原子 2(N),1(H),3(H)が形成する平面(基
準面)を回転軸(原子 2(N)と原子 1(H)を結ぶ直線)の原子 1(H)の方から眺めて,時計回 りに113.8°回転させると,原子 4(H),2(N),1(H)が形成する平面と一致する。
なお,起点の原子の選び方や,原子のたどり方によって,同じ分子に対しても異なった Z-matrix を書くことができる。
問2 メタン(CH
4
)の Z-matrix を3通りあげよ。ただし,結合長にはC‑H
結合長(1.09 Å)を用いること。また,結合角は0°以上180°以下,二面角は−180°より大きく180°以下で あるとし,解答用紙の各表の4行目と5行目の二面角の符号を同時に変えて得られる解 は1通りと数えることとする。
単結合は自由に回転することができるが,結合の回転によって互いに変換できる異性体は 配座異性体とよばれる。1,2 ‑ジクロロエタン(C
2 H 4 Cl 2
)が最も不安定な立体構造をとった場 合の Z-matrix を表2に示す。なお,簡単のため,炭素の結合角は正四面体角に近似した。図3 アンモニアの分子模型と 表1の Z-matrixとの対応関係
4
H N
1 2
3 106.7°
113.8°
H
H
表2 1,2 ‑ジクロロエタンの Z-matrix
a 原子の種類 b 結合長(Å) c 結合角(°) d 二面角(°)
1
C
2
Cl
1 1.793
H
1 1.11 2 109.54
H
1 1.11 2 109.5 3 120.05
C
1 1.53 2 109.5 3 −120.06
Cl
5 1.79 1 109.5 2 0.07
H
5 1.11 1 109.5 6 120.08
H
5 1.11 1 109.5 6 −120.0問3 最も安定であると予想される 1,2 ‑ジクロロエタンの配座異性体の Z-matrix を得るに は,表2の Z-matrix をどのように修正すればよいか答えよ。また,最も安定となる理 由を答えよ。
問4 表3の Z-matrix で与えられる分子 X について次の問いに答えよ。ただし,Z-matrix 中の数値は分子の特徴を失わない範囲で単純化してある。
⑴ 分子 X の構造式を示せ。なお,構造式では,結合長や角度,末端基の回転方位は正 確に再現しなくてもよい。また,原子の番号,結合長や角度などを書き添える必要もな い。
⑵ 分子 X 中には,結合を形成している原子対が同じであるにもかかわらず,結合長が 0.05 Å 以上異なるものがいくつかある。そのような例をすべて挙げ,それぞれについて 結合長が異なる理由を述べよ。
表3 分子 X の Z-matrix
a 原子の種類 b 結合長(Å) c 結合角(°) d 二面角(°)
1
C
2
O
1 1.253
C
1 1.40 2 120.04
C
1 1.40 2 120.0 3 180.05
C
4 1.34 1 120.0 3 0.0 6C
3 1.34 1 120.0 4 0.0 7O
5 1.40 4 120.0 1 0.08
O
4 1.36 1 120.0 3 180.09
C
5 1.49 4 120.0 1 180.010
H
3 1.00 1 120.0 2 0.0 11H
6 1.00 3 120.0 1 180.0 12H
8 0.85 4 101.7 1 30.0 13H
9 1.00 5 109.5 4 −60.0 14H
9 1.00 5 109.5 13 120.0 15H
9 1.00 5 109.5 13 −120.0問5 表4,5は水酸化ナトリウム水溶液を作用させた分子 Y およびその反応生成物の Z-matrix を示したものである。ただし,Z-matrix 中の数値は単純化してある。
⑴ この反応を化学反応式で示せ。ただし,分子 Y およびその反応生成物は示性式で表 すこと。
⑵ 分子 Y の立体構造の変化の観点からみたこの反応の特徴を説明せよ。説明は文章の みでもよいし,図を併用してもよい。
表4 分子 Y の Z-matrix 表5 分子 Y の反応生成物の Z-matrix
a 原 子 の 種 類
b 結 合 長
(Å)
c 結 合 角
(°)
d
二 面 角
(°)
1
C
2
H
1 1.093
C
1 1.54 2 109.54
H
3 1.09 1 109.5 2 0.0 5H
3 1.09 1 109.5 2 120.0 6H
3 1.09 1 109.5 2 −120.0 7C
1 1.54 2 109.5 3 −120.0 8C
7 1.54 1 109.5 2 0.0 9H
7 1.09 1 109.5 8 120.0 10H
7 1.09 1 109.5 8 −120.0 11H
8 1.09 7 109.5 1 0.0 12H
8 1.09 7 109.5 11 120.0 13H
8 1.09 7 109.5 11 −120.0 14O
1 1.46 2 109.5 3 120.0 15H
14 0.96 1 101.7 2 30.0 a原 子 の 種 類
b 結 合 長
(Å)
c 結 合 角
(°)
d
二 面 角
(°)
1
C
2
H
1 1.093
C
1 1.54 2 109.54
H
3 1.09 1 109.5 2 0.0 5H
3 1.09 1 109.5 2 120.0 6H
3 1.09 1 109.5 2 −120.0 7C
1 1.54 2 109.5 3 120.0 8C
7 1.54 1 109.5 2 0.0 9H
7 1.09 1 109.5 8 120.0 10H
7 1.09 1 109.5 8 −120.0 11H
8 1.09 7 109.5 1 0.0 12H
8 1.09 7 109.5 11 120.0 13H
8 1.09 7 109.5 11 −120.0 14Br
1 1.90 2 109.5 3 −120.0河川や湖沼には,落ち葉などの自然からの有機物に加え,人間の活動に伴う家庭雑排水や 工場排水に含まれる有機物も流入し,水質汚濁の原因となっている。これらの有機物の種類 はさまざまで,個々の物質の濃度を測るのは困難である。
そこで,有機物による水質汚濁の指標として COD(Chemical Oxygen Demand,化学的 酸素要求量)が用いられることが多い。COD を求めるには,河川などから採取した試料水に 過マンガン酸カリウム(KMnO
4
)や二クロム酸カリウム(K2 Cr 2 O 7
)などの強酸化剤を加え,一 定条件下で試料水中の有機物などを酸化する。そのときに消費された,試料水 1 L あたりの 酸化剤の量を,酸化剤としての酸素(O2
)の量(mg)に換算して表す。過マンガン酸カリウム及び二クロム酸カリウムによる有機物の酸化率の例を表1に示す。
表1が示すように二クロム酸カリウムによる酸化率の方が高く,他国の COD 測定の多くは 二クロム酸カリウムを用いる方法(COD
Cr
)がとられているが,クロム(Ⅵ)化合物は強い毒性 を持つことから,わが国では過マンガン酸カリウムを用いる方法(CODMn
)が公定法(公的に 定められた測定方法)として採用されている。過マンガン酸カリウムによる有機物の酸化が完全でないことから,加熱温度や反応時間な どの条件の相違が COD
Mn
値に大きく影響する。図1に加熱温度による影響を示す。表1 KMnO4と
K
2Cr
2O
7の 有機物の酸化率(100℃)有機物の例 酸化率(%)
KMnO 4 K 2 Cr 2 O 7
フルクトース(果糖) 84 97 ラクトース(乳糖) 76 99
酒石酸 61 99
安息香酸 2 99
2 ‑ プロパノール 53 100 シュウ酸ナトリウム 100 100
これから,過マンガン酸カリウムを用いる方法によって試料水の COD(COD
Mn
)を求めて みよう。そのためには,まず濃度が正確にわかっている有機物の水溶液を作る必要がある。これを標準溶液という。
COD
Mn
の測定では,A
シュウ酸ナトリウムの標準溶液を作り,それを過マンガン酸カリウ14 12 10
8
6
450 60 70
温度(℃)
80 90 100 CODMn
(mg/L)
図1 加熱温度の影響(河川試料)
第4問
できる。
正確な濃度を知ることができたら,次にその正確な濃度を表すことになる。例えば,過マ ンガン酸カリウム水溶液の表示ラベルに「0.10 mol/L KMnO
4
, =1.020」と記されていたら,その過マンガン酸カリウム水溶液の正確な濃度は0.10に =1.020を掛けて0.102 mol/L となる。
B
この をファクターと呼ぶ。問1 下線部Aのような方法をとらないと,過マンガン酸カリウム水溶液の濃度が決められ ない理由を,シュウ酸ナトリウム標準溶液を作る場合と比較して記せ。
問2 下線部Aについて,次の操作①〜③を行った。⑴〜⑶に答えよ。
操作① 電子天秤で正確に秤量した過マンガン酸カリウム(式量158)の結晶790 mg を蒸 留水に溶かし,全量を 1.00 L とした。
操作② 300 mL の三角フラスコに蒸留水100 mL をとり,そこに硫酸 5 mL と1.25×10−2 mol/L のシュウ酸ナトリウム標準溶液10.0 mL を加え,60〜80℃に加熱した。
操作③ これを,操作①で作った過マンガン酸カリウム水溶液で滴定したところ,
10.2 mL を要した。
⑴ 操作③で起こった反応を化学反応式で記せ。
⑵ 操作③で滴定の終点(当量点)における水溶液の色を記せ。
⑶ 操作③で,滴定を始めた頃は,過マンガン酸カリウム水溶液を滴下した際の色の消失 が遅かったが,滴定が進むにつれて色の消失が速くなった。その理由を記せ。
問3 問2の操作③で用いた過マンガン酸カリウム水溶液について,下線部Bの (ファク ター)を求め,有効数字2桁で答えよ。計算の過程も示せ。
次に,試料水をある湖から採取し,COD
Mn
を求めるために次の操作1〜6を行った。なお,操作は公定法(酸化条件:硫酸酸性,100℃で30分間加熱)にしたがった。
操作1 試料水100.0 mL を三角フラスコにとり,十分な量の硫酸を加えて酸性にした後,
硝酸銀水溶液(200 g/L)5.0 mL を加えた。
操作2 これを激しく混合し,しばらく放置した。
操作3 これに過マンガン酸カリウム水溶液(5.00×10−3 mol/L, =0.960)10.0 mL を加え て振り混ぜ,沸騰水浴中で30分間加熱した。加熱後,溶液は薄く過マンガン酸イオン の色を示していたことから,試料水中の有機物などを酸化するのに十分な量の過マン
操作4 これを沸騰水浴から取り出し,直ちにシュウ酸ナトリウム水溶液(1.25×10−2 mol/L)
10.0 mL を加えて振り混ぜ,よく反応させた。このとき,溶液の色が消えて無色にな った。
操作5 溶液を50 〜 60℃に保ち,これを過マンガン酸カリウム水溶液(5.00×10−3 mol/L,
=0.960)で滴定したところ,溶液がわずかに着色するまでに4.20 mL を要した。
操作6 試料水の代わりに蒸留水100.0 mL を用いて操作1〜5を行ったところ,操作5の 滴定において要した過マンガン酸カリウム水溶液(5.00×10−3 mol/L, =0.960)は 0.50 mL だった。
問4 操作1を行ったところ,白色の沈殿が生じた。
⑴ 沈殿の名称と化学式を記せ。
⑵ この操作を行わないと正確な COD
Mn
の値が求められない。この操作を省略したとき に求めた CODMn
の値はどのようになると考えられるか。理由とともに記せ。問5 操作3で,30分間加熱後の三角フラスコ中の溶液に,うすい茶褐色の濁りが生じる理 由を記せ。
問6 操作4で,沸騰水浴から取り出した三角フラスコに,少し時間を置いてからシュウ酸 ナトリウム水溶液を加えた場合,COD
Mn
の値はどのようになると考えられるか。理由 とともに記せ。問7 操作6は空試験(ブランクテスト)と呼ばれ,COD
Mn
を測定する際には必ず行わねば ならない操作である。⑴ この操作を行う理由を記せ。
⑵ 蒸留水の代わりに,水道水をイオン交換した水を空試験に用いた場合,COD
Mn
の値 はどのようになると考えられるか。理由とともに記せ。問8 酸化剤としての酸素(O
2
)の半反応式(電子を含むイオン反応式)を書き,5.00×10−3 mol/L, =0.960の過マンガン酸カリウム水溶液1.00 mL が何 mg の酸素(O2
)に相当する か求め,有効数字2桁で答えよ。ただし,酸素(O2
)の分子量は32.0とし,計算の過程も 示せ。問9 操作1〜6の結果を用いて,この試料水の COD
Mn
(mg/L)を求め,有効数字2桁で問10 次の図2は,ある年にある湖の特定の地点において,湖の上層水を毎月一定時刻に 採取して COD
Mn
を測定し,その変化を表したグラフである。また,図3は上層水の毎 月の平均水温の変化を表している。図2の CODMn
の変化について,考えられる理由を 記せ。ただし,人間の諸活動による影響は考慮しないものとする。10 8 6 4 2
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月
図2 CODMnの経月変化 CODMn(mg/L)
図3 水温の経月変化 30
20 10
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月
温度(℃)
生物の系統を正しく突きとめるのは難しい。系統を突きとめるために系統樹を作成する方 法がいくつか存在するが,その系統樹が,統一性を欠くことも得てして存在する。
一般に,近縁の生物は DNA の塩基配列(以下,塩基配列と呼ぶ)が類似しており,逆に遠 縁の生物は塩基配列にも違いが多く見られる。ここでの近縁というのは 系統的に,分岐し た年代が新しい という意味である。
種が分かれることを種分化といい,その様子を表 した図を系統樹という。例えば,図1の有根系統樹 は,次のように読む。
系統樹は, 祖先 の位置が最も古く,上に進むに したがって新しい時代となる。
種A〜Dは,共通の祖先から分かれた。
種Cは, 種A及び種Bの共通の祖先 と,分岐点
②で分かれた。同様に,種Dも 種A〜Cの共通 の祖先 と分岐点③で分かれた。
種Aと種Bは,分岐点①で分かれており,種Aと 種Cより分岐が新しい。したがって,より近縁と いえる。
ただし,この形の系統樹は祖先形質がわかってい
る場合のものであり,祖先形質がわからない場合には図2の無根系統樹を用いる。
この図では,種Aと種B,種Cと種Dがそれぞれ他種より近縁関係にあることを示す。
さて,ある遺伝子において表1のような塩基配列をもつ5種類の生物(種V,W,X,Y,Z)
がいたとして以下の問題に答えよ。
表1 ある遺伝子の塩基配列の比較 種V C T G C A T G C A A G C 種W C T G C A T C C C T G C 種X A T G G A T G C A T G T 種Y A C A C A T G C A T G T 種Z A T A C G A G C A T G T
A B C D
①
②
③ 祖先
図2 無根系統樹 図1 有根系統樹 A
B
C
D
第5問
問1 表1の種V〜Zについては,祖先形質がわかっていない。そのような時,研究者はま ず生物種どうしの塩基配列の違いに着目する。このことを踏まえて,種V〜Zに関する 系統樹をつくってみよう。
生物種どうしの塩基配列の違いを確認するために,種V〜Zのうち2種類を選ぶすべ ての組合せにおいて,塩基の置換(ある塩基が他の塩基に変わること)の個数(塩基の置 換数)を表す表2をつくり,それをもとに,図3の例にならって無根系統樹を完成せよ。
なお,解答用紙の系統樹の の部分には種の記号(W〜Z)を,( )には塩基配列の 置換の数を記せ。
表2 生物種間での表1の遺伝子の塩基の置換数(作業用)
1種目/2種目 W X Y
Z
VW X Y
問2 その後の研究で,種V〜Zの祖先種の塩基配列が,表3のようなものだとわかった。
表3 種V〜Zの祖先種の塩基配列
祖先種 A T G C A T G C A T G C
この配列をもとに,祖先を加えた有根系統樹をつくれ。ただし,次のルールに必ず従うこ と。
1つの分岐点から3本以上の枝を出してはならない。
塩基の置換数がいちばん少なくなるようにつくらねばならない(この状態を 最節約であ る といい,この方法を最節約法という)。
枝には,図4にならって,塩基の置換数だけ矢印を書きこめ。
図4 有根系統樹と塩基置換数
A B C
祖先
図3 無根系統樹の作成例
(1)
(2)
(3)
A
B C
問3 実は,最尤法という手法を用いると,先ほどの最節約法とは異なる結果が出ることが ある。これからは,最尤法について考える。
⑴ 表4は,DNA を構成する4種類の塩基の構造式である。環の数に着目して,2つの グループに分類せよ。
表4 DNA を構成する塩基
塩基名 構造式 塩基名
構造式
A(アデニン)
H
2N
N N
N N H
G(グアニン)
NH NH
2N N
O
N H
C(シトシン)
O NH
2N N H
T(チミン)
NH
O
N O H
⑵ ⑴の組合せどうしの塩基置換(以下,置換1と呼ぶ)では,他の組合せにおいての塩基 置換(以下,置換2と呼ぶ)よりも起こる確率が著しく高い。よって,置換2の数をでき る限り少なくした系統樹の方が,信頼性が高いのである。置換2の数が最少になるよう に系統樹を作成する方法を 最尤法 という。
表1の種X,Y,Zにおいて,別の遺伝子の塩基配列は表5のようであった。(実際 の系統推定でも,このようにいくつもの遺伝子を用いることが多い。)
この配列をもとに,最尤による系統樹をつくれ。ただし,系統樹の枝において,図5 にならって,置換1を○,置換2を●で書きこめ。
表5 表1とは別の遺伝子の塩基配列の比較
種 塩基配列
X A A G G A A G G A A Y A A A G A G G G A A Z A A A G A G A A A C 祖先種 A A G G A A G G A C 塩基配列番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
A B
祖先
図5 最尤法による系統樹の作成例
⑶ 表5の遺伝子の比較を最節約法で行った場合の系統 樹を示せ。ただし,系統樹の枝において,図6になら って,置換された場所に, 1 A→C のように, 塩基 配列番号 置換前の塩基→置換後の塩基 の順に,枠で 囲って記入せよ。
図6 最節約法の系統樹の作成例 A
1 A→C 3 T→G
B C
祖先
土地の起伏・形・河川の状態など,地球の表面の様子を詳しく描いた地図を地形図という。下の地形図には,日の入山や日の出山の山頂 を含み,図中の● は標高点を表している。地形図に関する各問に答えよ。
問1 地形図の着色部は地質図となっている。着色していないところは,どのような地層が分布していると考えられるか。凡例の色にした がって地層の分布を着色し完成せよ。なお,地形図の範囲内には断層や褶曲,不整合は生じていないものとする。
0 250(m)
日の入山(455 m)
日の出山(405 m)
450 400 350 300
170
凡例 茶色 桃色 黄色
水色 黄緑色
粘土岩 シルト岩 砂岩 礫岩 250 石灰岩
200 150
第6問
問2 地形図中の a−b,c−d の地形断面図を描け。
0 250(m)
450 400 350 300
200 150
450 400 350 300 250 200 150
(m)
170
250
c
b
c d
d a
450500 400 350 300 250 200 150 100
(m)
b a
日の入山(455 m)日の出山(405 m)
問3 日の出山の山頂(標高405 m)から真下に300 mさがったところを南北に鉄道トンネルが通過している。ただし,5.0%の勾配で北に向か って下降している。今,日の入山の山頂(標高455 m)からこの鉄道トンネルに向かって,排気のためにトンネルを掘り,まっすぐな管を 最短の距離で設置することになった。何mの管が必要になるか。その長さを有効数字2ケタで答えよ。なお解答にあたっては,途中の 計算式や図なども示せ。
450 400
350
300
200
150
170
250
日の出山(405 m)
日の入山(455 m)