飲料販売機用照明の LED 化に関する研究 -バックライト方式の場合-
日大生産工
(院
)○須田 雅浩 日大生産工 内田 暁・大谷 義彦
土屋工業
(株
)増田 昌生
間隔になるように下部から①~④の番号をつけ たものとなっている。
1. はじめに
LED
は長寿命、低消費電力、有害物質を含ま ないなどから一般照明用に使われ始めている。
その中で現在、蛍光ランプが使用されている全 国約 264 万台(2007 年末,日本自動販売機工業会) の飲料販売機の
LED照明化が各社で進められて いる。
LED照明を飲料販売機に適応したならば、
照明部の交換が不要、省エネルギー、それに伴 う
CO2の削減、水銀レスなどのメリットがある。
しかし、各社ともコスト面や
LEDの特性により 十分な明るさが得られていないのが現状である。
使用した
LEDは低電力、低コスト、指向性が 広く、熱をあまり発生しない
Flux型のものを選 んだ。これによって、数を増やしても低電力で、
熱対策も現時点では不要と考えている。
拡散板は、製品化されている光源が映り込み にくいアクリワーロン
(以後
AWと表記
)とアク リライト
3種類(以後
432,NE14,422と表記)を用 いた。それぞれの光学特性を表 1 に示す。
反射板は、約
95[%]の反射率を有する超微細
PET発泡シートを使用した。
本研究の目的は、飲料販売機用照明の
LED化 を目指し、現行の蛍光ランプ方式との比較、検 討を行うことである。LED を用いた照射方式に は、主に導光板方式とバックライト方式の
2つ が挙げられる。今回はバックライト方式を用い て、現行の蛍光ランプ方式の輝度値の半分程度 を保ちつつ、かつ約
70[%]の節電を目標とした実験を行い、導光板方式、蛍光ランプ方式との比 較、検討結果を報告する。
2. 実験概要
バックライト方式は、拡散板の後方に
LED光 源を配置し、拡散させることにより面光源に近 似する仕組みである。
図 1 に示すサンプル缶
1本分のバックライト 装置を作製し、これを用いて
LEDの数、拡散板 の種類、図 2 に示す光源と拡散板の距離
d、図 3 に示す反射板の設置個所などをそれぞれ変化さ せたときの輝度値の測定を、暗室内で
CCDカメ ラにより行い、分布等の検討や比較を行った。
測定点は図
1に示すように、サンプル缶の上 部・中部・下部、サンプル缶より上が
50[mm]等
3.実験結果
3.1 反射板の設置効果の検討
できるだけ明るさを確保するため、
LEDを
18個使用し、図
3で示した反射板の設置個所によ っての効果を確かめる実験を行った。
表 2 に実験の詳細を示す。名称は
LEDの数や 状態、反射板の設置個所や状態、拡散板の種類 の順で表記する。例えば、
LEDを
18個使用し、
反射板は側面のみに設置。そして、拡散板はア クリワーロンを使用した場合では「
18-側
-AW」 のようになる。
表 1 拡散板の光学特性[%]
表 2 実験の詳細
拡散板 反射率 透過率 吸収率 AW 36.2 41.6 22.2 432 38.1 45.0 16.9 NE14 30.6 52.6 16.8 422 23.0 59.0 18.0
名称 LEDの数 反射板 拡散板 d [mm]
18-無-AW 18個(1.84[W]) なし AW 20 18-背-AW 18個(1.84[W]) 背面 AW 20 18-側-AW 18個(1.84[W]) 側面 AW 20 18-側背-AW 18個(1.84[W]) 側面・背面 AW 20
d
光 源 拡 散 板
d
は光源によるムラが目視によりなくなった ときの距離である。
図 4 に反射板設置個所による輝度値を示す。
反射板無しに比べ、反射板を背面のみに設置 した場合では、平均で
14[%]、反射板を側面のみ 設置した場合では
18[%]、反射板を側面背面に設置した場合では
59[%]それぞれ輝度値が増加し、
かなりの効果が得られた。このことより、LED から横や後ろ方向に放射された光の多くは、無 駄になっているということが言える。さらに、
図 1 装置 図 2 距離 図 3 反射板設置個所
側面 背面
側面
側面(横) 側面(横)
①
②
③
④
サ ンプ ル缶 拡散板
50[mm]
50[mm]
50[mm]
Research on making to LED for lighting of beverage vending machine
-
In the case of backlight method-
Masahiro SUDA , Akira UCHIDA , Yoshihiko OHTANI and Masao MASUDA
3.3 拡散板の検討 照射面四隅まで均一に明るくするという効果
も得られた。 目標輝度値に少し及ばない
LED10個を使用し て、拡散板の種類を変える実験を行った。実験 の詳細を表 4 に示し、結果を図 6 に示す。
0 500 1000 1500 2000 2500
① ② ③ ④ 測定点
輝度値
[cd/m2 ]・・・18-側背-AW
・・・18-背-AW
・・・18-側-AW
・・・18-無-AW
表 4 実験の詳細
名称 LEDの数 反射板 拡散板 d [mm]
10-側背-AW 10個(1.02[W]) 側面・背面 AW 20 10-側背-432 10個(1.02[W]) 側面・背面 432 30 10-側背-NE14 10個(1.02[W]) 側面・背面 NE14 30 10-側背-422 10個(1.02[W]) 側面・背面 422 35
3.2 LED の数の検討
LED
を
18個使用の場合では、蛍光ランプ方式
に対して
39[%]の節電となっているが、節電目標
の
70[%]に達していない。さらに消費電力を減らすために
LEDの数を減らす実験を行った。実験 の詳細を表 3 に示し、結果を図 5 に示す。
反射板は
3.1の結果より、側面背面に設置した 場合である。
図より、LED の数を減らすと当然輝度値も低 くなる。目標である現行の蛍光ランプ方式での 輝度値の半分は、サンプル缶部分に当たる測定 点①~③で約
400[cd/m2]、④で約
1500[cd/m2]と なっているので、
LEDを
12個使用すれば、輝度 値では目標を上回ることができる。しかし、消 費電力では
59[%]節電であり、目標値を上回れな いため、更に
LEDの数を減らす必要がある。ま た、
LEDの数が
8個、
7個となるとサンプル缶部 分がかなり暗くなる。
432
の拡散板を用いると、アクリワーロンを用 いた場合より測定点①~③では約
60[cd/m2]、④ で は
270[cd/m2]の 差 が 生 じ 、 ① ~ ③ 行 で は
465[cd/m2]、④行では
1420[cd/m2]の輝度値を得る ことができた。ただし
dを大きくしないとムラ がなくならない。バックライト方式では、スペ ースの問題から
dはなるべく小さい方が良い。
本研究で比較対象として用いた飲料販売機の奥 行から
d=30[mm]以内であれば同じ奥行となるの で、新たにスペースを確保する必要はない。よ って拡散板は
432を使用することとした。また、
輝度値は多少下がるが、アクリワーロンで
dを 小さくすることによって、より薄型にすること が可能となっている。
また
NE14の結果より、単に透過率が高い拡散 板を用いれば良いというわけではないことが確 認された。
3.4 反射板の形状の検討
3.1
で用いた反射板の側面に傾斜をもたせるこ とで、LED から横方向に出る光を正面に反射さ せ、輝度値の向上を図った。また、
LEDは
2列 に配置しているので、図 7 に示すように、列と 列の中心に山ができるように反射板を配置した 実験も行った。
LEDと反射板の高さの関係を図 8 に示す。山の頂点を
Pと置くと、
Pは
LEDの発 光点と拡散板の二等分点
(中
)が理想である
1)ので、
二等分未満
(低
)と二等分を超えたもの
(高
)も作製 し、分布等にどのような影響が出るかを確かめ る実験を行った。結果を図 9 に示す。
図 4 反射板設置個所による輝度値
図 6 拡散板による輝度値
8001200 1600
0 400
・・・10-側背-422
・・・10-側背-432
・・・10-側背-NE14
・・・10-側背-AW
]
① ② ③ ④
測定点 [cd/m2
輝度値
表 3 実験の詳細
名称 LEDの数 反射板 拡散板
d
[mm]18-側背-AW 18個(1.84[W]) 側面・背面 AW 20 14-側背-AW 14個(1.43[W]) 側面・背面 AW 20 12-側背-AW 12個(1.22[W]) 側面・背面 AW 20 10-側背-AW 10個(1.02[W]) 側面・背面 AW 20 8-側背-AW 8個(0.82[W]) 側面・背面 AW 20 7-側背-AW 7個(0.71[W]) 側面・背面 AW 20
2500
図 5 LED の数による輝度値
0500 1000 1500 2000
・・・18-側背-AW
・・・14-側背-AW
・・・12-側背-AW
・・・10-側背-AW
① ② ③ ④
測定点
2 ・・・ 8-側背-AW]
・・・ 7-側背-AW
m[cd/
輝度 値
サンプル缶部分に当たる測定点①~③では、
大きな変化が表れなかった。これはサンプル缶 部分の光は、拡散板から出た後に球面の缶によ り反射し、分散してしまうためであると考えら れる。④に関しては、側面を斜めにすることで
84[cd/m2]の輝度値の上昇がみられた。また、反
射板の山の頂点
Pが二等分未満
(低
)の場合、
LEDから横方向に放射された光は、山での反射が少 なく、正面輝度値の上昇がほとんどみられなか った。これでは、反射板の山を設置する意味は ない。
Pが二等分を超えた場合
(高
)では、山の上 に反射光が集中しすぎるため、輝度値がかなり 上昇した。しかし、その分ムラとなり、目指す 飲料販売機用照明としては不適である。
Pが二等 分点では理想であると述べたが、今回の実験で は明るくなりすぎてムラとなってしまった。よ って、中央に反射板の山は設置した方が正面の 輝度値は上がり、
Pは二等分点以下の範囲で、高 いほど有効であることが確認できた。
3.5 拡散板の材料の検討
LED
化の問題点の一つに高コストが挙げられ る。導光板方式では、
LEDの数は少なくて済む が、導光板の性能を上げるほどコストが非常に 高くなる。バックライト方式では、
LEDの数が 多く必要とされるので、それ以外にかかる拡散 板等のコストを抑えることは重要である。よっ て、製品化されているものよりも安価である材 料を用いて、
A~
Cの
3種類の拡散板を作製し実
験を行った。これらの拡散板を使用した場合の
dは全て
25[mm]であった。
作製した拡散板の光学特性を表 5 に示し、結 果を
432と、
dを小さくできるアクリワーロンを 併せて図 10 に示す。
P
LED LED
拡散板
反射板 の山
表 5 A~C の光学特性[%]
拡散板 反射率 透過率 吸収率 A 56.1 36.4 7.5 B 63.4 29.0 7.6 C 59.9 32.7 7.4
0 400 800 1200 1600
① ② ③ ④ 測定点
輝度 値
[cd/m2 ]・・・432
・・・AW
・・・A
・・・B
・・・C
図 7 反射板形状 図 8 LED と反射板の高さの関係
1800拡散板は、
LEDから直接向かう光の輝度が強 くなりすぎないように全光線透過率を抑え、ム ラをなくすために、拡散透過率を高くしたもの が一般的には好ましい
2)。
図より、製品化されている
432を使用した方 が高い輝度値となった。しかし、
Aでは
432と比 べ、測定点①~③では
44[cd/m2]、④では70[cd/m2]の差と、近い輝度値が得られた。アクリワーロ ンと比べると、①~③では
22[cd/m2]、④では 108[cd/m2]高い輝度値を得ることができた。
また、作製した拡散板全てにおいてアクリワ ーロンよりも高い輝度値が得られたことから、
これらを使用することによって、低コストで
432を使用した場合より
dを小さくすることができ、
アクリワーロンを使用した場合より明るくする ことが可能であることがわかった。
3.6 LED の配置の検討
図 11 に示すように、
LED10個を縦に中央一列 に配置することで、中央の輝度値の上昇が考え られる。また、横方向の光が少なくなると予想 されるので、側面横の反射板に傾斜をもたせた ものも併せて実験を行った。
次に、図 12 に示すように、サンプル缶部分後
方の
LEDのみを
15[mm]前面に配置した。この部分の
LEDからの光は、拡散板とサンプル缶の両 方によって遮られるので暗くなっている。よっ てこの部分の
LEDを前面に配置することで、よ り明るくできると考えられる。これらの結果を 図 13 に示す。
図 10 拡散板の材料による輝度値 図 9 反射板の形状による輝度値
0 600 1200
・・・側背
・・・側斜背
・・・側斜背+山高
① ② ③ ④
測定点 [cd/m2 ] ・・・側斜背+山中・・・側斜背+山低
輝度値
LED
を縦に配置することによって、測定点①
~③では
123 [cd/m2]、④では
278[cd/m2]とかなり 輝度値が上昇したが、側面横の反射板を斜めに しても端に行くに従って僅かに暗くなる。しか し、光源がはっきり見えるムラとは異なり、見 た目の影響が少なくなっている。サンプル缶部 分であれば問題なく使用可能であると考えられ る。また、サンプル缶部分の
LEDを前面に配置 することによって、①~③が
50[cd/m2]上昇し、
階段部分に反射板があることから、④の輝度値
も
85[cd/m2]上昇した。よって前面に配置するこ
とは有効であると考えられる。
3.7 まとめ
3.6
までで述べたように、様々な 工夫を行うと、僅かずつであるが輝 度値の上昇がみられた。これらの結 果と目標の節電を考慮し図 14 に示 す
LEDを
1個減らした
9個の基板 を作製した。 サンプル缶部分の
LEDは前面に配置し、反射板の側面に傾 斜をもたせ、後方にある
LED2列の 中央に反射板の山を
Pが二等分点 以下になるように設置し、拡散板を
432としたものとなっている。
4. 各方式の比較
各照射方式の比較結果を図 15 に示す。バック
ライト方式では、
3.7節で述べた
9前-側斜背中央
-432の結果を示した。導光板方式では、新たに 改善を加えた、缶部分
(測定点①~③
)の輝度値が 安定し、缶のない測定点④部が①~③よりも明 るくなるように作製した導光板の結果を示した。
蛍光ランプ方式は、列のうち最大輝度値である 列の値と、列の平均の輝度値の結果を示した。
波線は目標輝度値である。バックライト方式で は 測 定 点 ① ~ ③ に お い て 、 目 標 輝 度 値 を
70[cd/m2]越えた470[cd/m2]、④では同じぐらいの1470[cd/m2]
を得ることができた。また、導光板
方式では①~③においては、目標輝度値を越え ることができたが、④では及ばなかった。
図 12 前面配置 図 11 縦型配置
0 400 800 1200 1600 2000
① ② ③ ④ 測定点
輝度値
[cd/m2 ]・・・10-側背-432
・・・10縦-側背-432
・・・10縦-側斜背-432
・・・10前-側背-432
電力では、蛍光ランプ方式と比べ、バックラ イト方式では
69[%]の節電である
9.2[W]、導光 板方式では
75[%]の節電である
7.5[W]となって いる。従って両方式とも約
70[%]の節電目標を達成することができた。
さらに、バックライト方式では、実際の飲料 販売機のように
3段分で、段ごとに高さが違う ことを考慮すると、最大で
75[%]の節電である18[W]
にまですることが可能である。
0 1000 2000 3000
① ② ③ ④ 測定点
輝度値
[cd/m2 ]・・蛍光ランプ方式(最大値)
・・蛍光ランプ方式(平均値)
・・バックライト方式(9前-側斜背中央-432)
・・導光板方式
図 13 LED の配置による輝度値
図 15 各方式による輝度値
5. おわりに
今回はバックライト方式を用いて、現行の蛍 光ランプ方式の輝度値の半分程度を保ちつつ、
かつ約
70[%]の節電を目標とし、実験を行ったが、
4
節で述べたように目標を達成できた。蛍光ラン プ方式とは約
2倍の輝度値の差があるが、必要 以上に明るい、列によって明るさにばらつきが あるという欠点がある。それに対しバックライ ト方式は、列によってバラつきも少なく、見栄 えがかなり良くなっている。また、最大で
75[%]の節電であることも考慮すれば、今回得られた 輝度値で十分飲料販売機用照明として利用可能 であると考えられる。
参考文献
1) 平田幸久:「最先端照明・光源技術全集」,技術情報協会 発行,pp.163~165(2008)
図 14 9 前-側斜背中央-432
2) 平田幸久:「最先端照明・光源技術全集」,技術情報協会 発行,p161