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フロンティアプロジェクト

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平成

19 年度

修士論文

膜ろ過を用いた雨水調整池の水質浄化

-南国市石土調整池をモデルとして-

Application of Membrane Filtration for

Water Purification in Reservoirs and Lakes.

1095515 大 家 英 一

指導教員

村 上 雅 博

2008 年 3 月 21 日

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要 旨

膜ろ過を用いた雨水調整池の水質浄化

-南国市石土調整池をモデルとして-

家 英 一

現在,親水地や湖沼などの半閉鎖水域において,富栄養化による水質汚濁が問題となって いる.そうした水域では,溶存または流入するリンなどにより富栄養状態となり,植物プラ ンクトンの増加による様々な弊害が発生している.これを解消するため,様々な対策が取ら れているが,水質と用地確保等の運用面での問題を同時に解決した方法はまだ尐ない.本論 では特に汚濁が進行し,水質改善のニーズが高い都市域における池(調整池)を対象に,適正な 浄化システムの検討を行う.その設備として,近年様々な水処理に導入が進んでいる,精密 ろ過膜による膜分離モジュールの導入に着目した.本研究の目的は,その湖沼水の浄化効果 を明らかにし,湖沼水水質浄化への適用可能性について検討することとする. 今回は導入を検討する上で必要な,精密ろ過法の池水における浄化効果の測定を高知県内 の池水を用いて行った.実験データの分析より,藻類量(クロロフィル量)と懸濁性微粒子量(濁 度)との関係や,藻類量と池水の汚濁を示す水質指標である COD の関係を明らかにし,原水 水質によるフラックス変動の把握が池水浄化を検討する上で必要になることを示唆できた. 実験データを参照して,実際の池への導入を検討し,コスト試算をしたところ日造水量185 ㎥規模で 3.8 千円の初期費用がかかることがわかった.この結果より,精密ろ過法の導入は 汚濁の進んだ都市域の親水池が適していることが示唆できた. キーワード 富栄養化,水質汚濁,オンサイト施設,精密ろ過法,精密ろ過膜,濁度, クロロフィル,COD,フラックス

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Abstract

Application of Membrane Filtration for

Water Purification in Reservoirs and Lakes.

DAIKE, Eiichi

The water pollution problems in the lake system are not likely solved even after se-wage system has been completed in the river basin. The The eutrophication problem in-cluding occurrence of the harmful phytoplankton is to be solved not only to conserve the water quality environment but also to secure the source of safe water supply.

The water pollution problems which are coursed by eutrophication, are still serious. Specially in the lake systems, some harmful water problems coursed by increasing of several kinds of phytoplankton occur. Several kinds of counter measures are taken to solve the problems. But the methods still have some restrictions and limits.

The purpose of this study is analysis of innovation the MF(microfiltration) system to polluted reservoirs in the city area. The method to study is experiment that the measur-ing the micro filtrated water quality with the polluted water of the lakes in Kochi, Japan.

First, according to the analysis of the results of the experience, correlations between amount of SS(suspended solid) and chlorophylls, and COD were come to light. And it’s suggested that is important to grasp the changing flux with water quality to analyze to purify lake water. And then, based on the assuming that MF(microfiltration) was inno-vated to the Ishizuchi reservoir, it needs 38 million yen for first investment.

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Key words Eutrophication, Water pollution, Onsite water purify facility, Microfiltra-tion, Microfiltration membrane, Turbidity, Chlorophyll, COD, Flux

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目次

目次 ... 4 図目次 ... 6 表目次 ... 8 -第1 章 序論 ... 9 -1.1 研究の背景 ... 9 -1.2 都市域の親水池における水質悪化問題と対策についての問題分析 ... 11 -1.3 研究の目的 ... 14 -1.4 研究の手順 ... 14 -第2 章 膜分離による水処理 ... 15 -2.1 分離膜の種類と除去性能 ... 16 -2.2 精密ろ過膜と限外ろ過膜による膜分離 ... 17 -2.3 精密ろ過膜の用途と普及状況... 19 -2.4 精密ろ過膜を用いた浄水場 ... 20 -2.4.1 愛媛県東温市拝志浄水場 ... 20 -2.4.2 高知県いの町本川長沢浄水場 ... 22 -第3 章 精密ろ過(MF)膜を用いた膜ろ過による湖沼水浄化実験 ... 23 -3.1 実験概要 ... 23 -3.2 精密ろ過法(MF)による水質浄化効果の定義 ... 23 -3.3 対象水域の概要 ... 25 -3.3.1 南国市石土調整池 ... 25 -3.3.2 香美市鏡野公園親水池 ... 26 -3.4 実験用精密ろ過(MF)膜モジュール概要 ... 27 -3.5 使用した水質観測装置の測定特性... 28

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-- 5 -- 3.6 原水と精密ろ過法(MF)によるろ過水の水質比較 ... 30 -3.7 精密ろ過(MF)膜の通水能力試験と運転圧力の設定 ... 31 -3.8 水槽モデルによるろ過水循環実験... 34 -3.9 実験データの分析と考察 ... 36 -第4 章 湖沼水水質浄化への膜分離技術の適用可能性 ... 43 -4.1 南国市石土調整池を例としたコスト試算 ... 43 -4.1.1 Microsoft Excel ソルバーを用いた実験データ近似式の算出 ... 43 -4.1.2 南国市石土調整池を例としたコスト試算 ... 45 -4.2 考察 ... 46 -第5 章 おわりに ... 47 -5.1 まとめ ... 47 -5.2 今後の課題 ... 48 謝辞 ... 49 参考文献 ... 50 -付録A ... 52

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図目次

図 1.1.1 水質目標達成率推移 ... 10 図 1.4.1 研究の手順 ... 14 図 2.2.1 膜透過水中の微粒子濃度の経時変化 ... 18 図 2.2.2 砂ろ過水の濁度・微粒子濃度の経時変化 ... 18 図 2.2.3 精密ろ過の篩分け概念図 ... 18 図 2.3.1 膜種類別の普及状況(累積ベース) ... 19 図 2.4.1 拝志浄水場モノリス型膜モジュール ... 21 図 2.4.2 拝志浄水場膜分離設備 ... 21 図 2.4.3 長沢浄水場逆圧洗浄水固液分離槽 ... 22 図 3.3.1 南国市石土調整池 ... 25 図 3.3.2 鏡野公園親水地所在地 ... 26 図 3.4.1 MF 膜モジュール模式図 ... 27 図 3.5.1 水質ロガーYSI6600... 28 図 3.5.2 YSI6600 測定方式概念図 ... 29 図 3.7.1 MF 膜モジュール実験機通水能力測定結果累積値 ... 32 図 3.7.2 圧力とフラックスの比較 ... 33 図 3.8.1 水槽モデルイメージ図 ... 34 図 3.9.1 1 時間通水能力試験結果(累積値) ... 37 図 3.9.2 ろ過水循環による水質の経時変化(石土調整池) ... 38 図 3.9.3 ろ過水循環による水質の経時変化(鏡野公園池) ... 38 図 3.9.4 対象原水における濁度とクロロフィルの比較 ... 39 図 3.9.5 ろ過水循環による COD の経時変化 ... 40 図 3.9.6 クロロフィル濃度と COD の比較(上:石土調整池 下:鏡野公園池) ... 41

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図 3.9.7 1 サイクル当たりのろ過水量とクロロフィル量の比較 ... 41 -図 3.9.8 ろ過水放流による原水別 DO の経時変化(上:石土調整池,下:鏡野公園池)- 42

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表目次

表 1.1.1 H17 年度水質目標達成水域数 ... 10 表 1.2.1 東京都内の親水池の平均水質 ... 11 表 1.2.2 浄化対象項目別の浄化手法 ... 13 表 1.2.3 代表的な浄化手法別の特徴 ... 13 表 1.2.4 各水質浄化目的別の除去対象水質項目 ... 13 表 2.1.1 膜種類別除去対象物質概要 ... 16 表 2.4.1 拝志浄水場膜分離設備仕様 ... 20 表 2.4.2 拝志浄水場コスト概要 ... 21 表 2.4.3 長沢浄水場膜モジュール仕様 ... 22 表 3.3.1 石土池年間平均水質 ... 25 表 3.3.2 鏡野公園親水池の年間平均水質 ... 26 表 3.4.1 MF 膜モジュール仕様 ... 27 表 3.6.1 原水と MF によるろ過水の水質比較 ... 30 表 3.7.1 MF 膜モジュール実験機圧力別フラックス算出値 ... 32 表 3.8.1 実験器具概要 ... 35 表 3.9.1 対象池別原水水質 ... 36 表 3.9.2 原水別濾過水量とフラックス算出値 ... 37 表 3.9.3 ろ過水循環 6 サイクル後の水質比較... 38

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1章

序論

1.1 研究の背景

湖沼や貯水池などの半閉鎖水域では,流入する窒素・リンの増大や沿岸部のコンクリート 護岸化などにより,水中の有機物濃度が高くなる富栄養化による水質悪化が問題視されてい る.水質改善に向けた事業により,河川や湖沼における水質改善は年々成果を上げているも のの,表流水の滞留時間の遅さなどから,湖沼においては依然として環境省が掲げる水質目 標の達成率は低いのが現状である(図-1.1.1,表-1.1.1).[1] 富栄養化は,湖沼における生態系のバランスとその循環を変化させ,藍藻類の増殖によっ て水面が覆われる現象であるアオコやそれによるヘドロ発生の原因となり,湖沼内は水質汚 濁が進行する,結果,生物にとって不健全な水環境へと変化していくと考えられている.ま た,アオコの原因となる藍藻類には異臭味の原因物質や有害な毒物を持つものあり,上水の 取水地となるような湖沼・ダム湖においては甚大な問題として認識されている.こういった 水質悪化問題は,都市域における水辺空間である親水公園池や雤水調整機能を有した親水池 においても発生している問題であり,濁りやにおいの改善といった親水性の向上,そして流 入する河川における流域保全の観点からも改善が求められている.[2] このような水質悪化問題に対しては,一般的に濁りや有機物の除去が必要であり,それへ 向け様々な対策が講じられ,湖沼の直接浄化方法として様々な研究や実施が行われているが, 高額なコストが必要・広い用地が必要・生態系への影響が懸念される・処理水質が安定しな い・管理に多大な労力がかかるなどの課題を局所的に解決できているものの,総合的に解決 できた技術は依然として発表されていない.また,湖沼や貯水池では,その規模の違いから 水質の状態も大きく異なる(表 1.1.1).小規模の湖沼・貯水池,特に都市域における親水池にお

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- 10 - いては,自然湖沼よりも栄養塩負荷・水中の懸濁物質量が多く水質に関しては汚濁が顕著であ る場合が多い.そして,水質改善へのニーズが高いのもまた都市域の親水池や観光資源とな りえる池などである.そうした湖沼への水質浄化対策は,比較的高いコストが必要となって も容易に認められる傾向がある. 水質汚濁の進んだ小規模池では,窒素やリン濃度が高いことに加え,COD・濁度が高くな る.そういった水域では,濁りの原因である懸濁物質の固液分離による除去が有効である. し かし,固液分離の設備もまた,現在導入されているものでは,上記の課題を全て解決してい るとは言えないのが現状である.[3] [4] [5] 一方,水道分野では膜ろ過法による浄水処理の導入が進んでいる.その中でも,一般的な 浄水処理に用いられる精密ろ過(MF)膜による精密ろ過法は,懸濁性微粒子を安定してほぼ完 全に固液分離できる技術として注目されている.また,この方法では,従来法の急速ろ過法・ 緩速ろ過法と比較してかなり尐ない用地面積しか必要とせず,さらに,通常年一度程度のろ 過膜の薬品洗浄を除けば,ほぼ特別な管理を必要としないことも大きな特徴である.[6] 図 1.1.1 水質目標達成率推移 表 1.1.1 H17 年度水質目標達成水域数 53.4% 87.2% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004 湖沼COD達成率 河川BOD達成率 環境省H17 公共用水域水質測定結果より作成 環境省H17 公共用水域水質測定結果より作成

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1.2 都市域の親水池における水質悪化問題と対策についての

問題分析

都市域における親水池や貯水池では,小規模な半閉鎖水域における水質の特徴に加えて, 周辺の舗装路面面積が広いことによる初期汚濁を含んだ雤水の流入や,都市排水の流入など により自然湖沼と比較して水質悪化が進んでことが多い(表-1.2.1).特に,濁りの指標である 濁度,汚濁の指標であるCOD が高いことが挙げられる. 都市域に住む人々にとって身近な水辺として,親水池が挙げられるが,こういった池には レクリエーション機能・観光地といった機能がある.さらに,河川と連結していて流入があ る池には,その流域の環境保全の観点からも水質改善が必要である. 表 1.2.1 東京都内の親水池の平均水質 汚濁が進んだ池は,まず親水性の向上とそれによる水質改善が有効である.環境省の調べ では人々が水質を量る基準は,濁りやゴミが浮いているかどうか等,視覚的な要素が大きい という結果が出ている.濁りの成分は,池水を富栄養化させる有機物や汚濁物質,発生した 植物プランクトン類などであり,これらを除去することで大幅な水質改善が期待できると共 に,水の透明度が向上することで,日光が池底まで届くようになり好気性生物による分解が 支配的で良好な循環へと転換していくことが期待できる.[7] 富栄養湖沼へは,浄化対象とする水質項目別に様々な浄化手法が実用化されている(表 -1.2.2).一般的に富栄養化に対しては,懸濁物質除去と栄養塩除去を組み合わせた手法が施 されることが多い.近年注目されているのが,植物を用いた浮島等の生物ろ床による接触沈

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- 12 - 澱・栄養塩類の回収といった手法や,プラスチックや礫を用いた接触ろ材による接触沈澱・ 好気性微生物による栄養塩類の除去といったオンサイト型浄化設備等である.また,水辺へ 水生植物の植栽を施すことで徐々に富栄養化を改善していく湿地浄化法のような手法も,民 間団体で行われている事例もある.[8] 本論では,微生物や薬品を散布するといった,生態系への影響が懸念される手法について は考慮せず,実施されている浄化手法の中でも環境負荷の小さい手法の持つ特徴を以下にま とめた(表-1.2.3).まず,MF 以外の手法は,処理を植物や微生物に行わせていることに大き な特徴がある.そのため,処理水質が水温・水質・気象・季節などによって左右され安定し ているとは言えない,また,管理に労力がかかることが挙げられる.しかし,接触酸化法以 外は特別な施設が必要なくコストパフォーマンスは高いと考えられる.また,植物を利用す るものは湖沼内に設置するものがほとんどなので,用地確保が容易であることも魅力の一つ である.接触酸化法はオンサイト施設となるので,対象となる湖沼近辺へ施設建設が必要と なるが,広い用地を必要とはしない上,システム化されているものが多く,管理も容易になっ てきている.緩速ろ過法は,本来浄水処理に用いられている手法であるが,微生物膜による 処理とろ過を組み合わせたものであることから,湿地浄化法による土壌浸透処理に類似して いる手法である.緩速ろ過を行うと,飲用できるレベルの清浄な水を造ることが可能である が,広大な用地を必要とする上,それによる費用やろ過槽保全にかなりの負担がかかること から,都市部の親水池への導入は現実的ではない.[3] [9] [10] [11] このように,コストと効率・労力が一長一短であるのが湖沼水浄化手法の現状であると考 えられる.そこで,MF による固液分離の導入を検討する.MF による処理施設は他の手法と 比較して,ほぼ確実に初期投資が上回ることが予想される.しかし,浄化水質はほぼ完全な 固液分離が安定した水量で可能であるし,機械制御で運転され膜の洗浄も定期的に行われる ので,必要な管理は蓄積される汚泥の回収や年1 度程度(原水水質により頻度が変化)の薬品洗 浄等のみとなり効率的である.さらに広い用地が必要ないことから都市域における親水池の 浄化への導入に向いていることが考えられる.また,親水池や観光に利用される湖池では, 水質浄化にかかる費用が比較的高額であっても認められること,技術の進歩によってMF 膜

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- 13 - モジュールの価格が下がってきていること,耐用年数が長期化してきていることもあり,今 後検討されるべき手法であると考えられる. 表 1.2.2 浄化対象項目別の浄化手法 表 1.2.3 代表的な浄化手法別の特徴 表 1.2.4 各水質浄化目的別の除去対象水質項目

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- 14 -

1.3 研究の目的

以上より,本研究は,良質で健全な水辺創出を目標とし,精密ろ過法による富栄養化した湖 沼水の浄化効果を明らかにし,膜分離技術の湖沼水水質浄化への適用可能性について検討す ることとする.

1.4 研究の手順

図 1.4.1 研究の手順

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2章

膜分離による水処理

都市用水における水の利用形態は,浄水場での処理に始まり,水道によって家庭・店舗・ 学校・病院・事業所などに供給される.さらに,病院や事業所では使用目的によってさらに 処理し、無菌水・生成水として使用される.規模の大きい工場等のでは,河川水・地下水・ 使用した工業用水などを処理して使用する.また海岸に近い河川や井戸水などには塩分が含 まれており,工業用水としての使用に際しては脱塩処理が必要となる.離島や淡水取水が困 難な土地でも同様に,脱塩処理を行って上水利用される.そうして使用された水は下水や廃 水として処理され,河川等に放流される. このような水利用において,浄水場では緩速ろ過法や凝集沈殿・急速ろ過法など様々な浄 水処理を組み合わせた浄水プロセスで処理してきた. 膜分離は,近年このような浄水プロセスのほとんどに適用が進んでいる新しい技術である. 浄水場では精密ろ過(MF)膜,限外ろ過(UF)膜によるろ過.精密機械製造,医療,実験等に用 いられる純水はナノろ過(NF)法,逆浸透(RO)膜による逆浸透法,かん水や海水の脱塩も RO 膜 が用いられている.また,プールの水の循環や家庭用浄水器には MF 中空子膜が使用されてお り,下水・廃水処理分野でも膜分離を適用した処理技術が開発されている.[6]

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- 16 -

2.1 分離膜の種類と除去性能

水の浄化用分離膜は,その種類により除去できる物質の大きさ・分子量が異なり,一般の 分類では除去できる物質が大きいものから,精密ろ過膜(MF),限外ろ過膜(UF),ナノろ過膜(以 下 NF),逆浸透膜(以下 RO)と分類されている.また,膜素材からはポリエチレン・ポリフッ 化ビニリデン・酢酸セルロースなどからなる有機系高分子素材,アルミナなどの無機系のセ ラミック系素材に大別でき,膜構造からは膜の厚み方向に構造が一様な対称構造と,そうで ない非対称構造に大別できる.本論では処理できる物質の違いを重視し,本章では特に,膜 の種類による分類についての紹介として,特に精密ろ過膜と限外ろ過膜について記すことと する. 前述したように,水処理の目的によって分離膜の種類を換えることにより,水道水質に関 する項目のほとんどが除去可能(表 2.1.1)である. 表 2.1.1 膜種類別除去対象物質概要 微粒子 バクテリア 高分子 低分子 イオン 精密ろ過膜(MF) ○ ○ × × × × 限外ろ過膜(UF) ○ ○ ○ × × × ナノろ過膜(NF) ○ ○ ○ ○ △ × 逆浸透膜(RO) ○ ○ ○ ○ ○ × 懸濁成分 溶解成分 水

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2.2 精密ろ過膜と限外ろ過膜による膜分離

精密ろ過(以下 MF)膜は,精密ろ過法(Microfiltration)に用いられ,膜表面にある細孔径 は 0.01μm-10μm 程度で,細孔径よりも大きい物質を篩分けによって分離し,それ以下の微 粒子や溶解物質を溶媒と共に透過する.精密ろ過法の目的は,液体中の微生物や微粒子を除 去する,固液分離である. 限外ろ過(以下 UF)膜は,限外ろ過法(Ultrafiltration)に用いられ,細孔径は MF よりも小 さい 0.01μm 以下で,分子量 1000-300000 程度の物質を除去できる.限外ろ過法では,微生 物や微粒子などの粒子性物質と,ウィルスや溶解性有機物の一部も除去可能である. 細孔径の比較的小さい UF 膜での膜ろ過の場合にも,RO 膜を用いた逆浸透法と同様,膜素 材に親和性のある溶質が選択的に濃縮され,透過することもあるが,基本的に MF 膜・UF 膜 を用いた膜分離は細孔による篩分けであると考えられている(図 2.2.3). 従来の砂ろ過法では,粒径の小さい微粒子になるほど,篩分けできずに透過してしまう微 粒子数がろ過時間と共に増加していく(図 2.2.2)のに対し,膜ろ過法ではその約 20 倍のろ過 時間を経過しても透過する微粒子数は尐なく,濁度にも変化がない(図 2.2.1).このことか ら,膜ろ過法のろ過精度は砂ろ過法と比較して微粒子の除去性能が安定して高く,長期に亘 って濁りを除去していることがわかる.[6]

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- 18 - 図 2.2.1 膜透過水中の微粒子濃度の経時変化 図 2.2.2 砂ろ過水の濁度・微粒子濃度の経時変化 図 2.2.3 精密ろ過の篩分け概念図 引用:浄水膜p.22 引用:浄水膜p.20 引用:浄水膜p.21

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2.3 精密ろ過膜の用途と普及状況

浄水処理における各種類別の分離膜導入状況は 1996 年ごろまで NF・RO・海水淡水化 RO 膜に よる施設が主だったが,1997 年以降,MF・UF 膜の施設が急速に増加してきている.2001 年 には NF・RO・海水淡水化 RO 膜の施設からの処理水量を,MF・UF 膜による施設からの処理水 量が超えている.(図 2.3.1) MF・UF 膜は米英などで病原性原虫による集団感染の発生が問題となり,この対策として膜 ろ過施設の導入が進んだものと考えられている.MF・UF 膜は優れたこれらをほぼ完全にろ過 するろ過性能と安定性を持ったろ過法であると注目されている. MF・UF の目的は水と大腸菌や原虫を含む微粒子との固液分離であり,海外特に米国では導 入が進んでいるが,日本における導入はあまり進んでいないのが現状である. 以下に日本での MF 膜を導入した浄水場の例を挙げる.[6] 図 2.3.1 膜種類別の普及状況(累積ベース) 引用:浄水膜p.17

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2.4 精密ろ過膜を用いた浄水場

2.4.1 愛媛県東温市拝志浄水場

東温市水道局は,拝志地区(下林・上村)へ拝志水源地の井水を水源とした急速濾過方式で 浄化した水道水を排水していたが,地下水変動や周辺環境の悪化による水質への悪影響や, クリプトスポリジウム除去や濁度低減を確保するための新たな対応として MF を用いた浄水 場建設を行った. 処理原水は重信川伏流水を利用しており,PAC による凝集を経た後,セラミック製の MF に よるろ過を行う.膜ろ過水には,さらに活性炭ろ過を行い,塩素消毒の後に上水として送水 される. 膜洗浄に関しては,物理洗浄として 10min/6h の逆圧洗浄を行い,薬品洗浄は稼働開始 3 年 後に 1 度行った実績があるだけである.原水が伏流水で,懸濁物質・汚濁物質の含有量が尐 ないことが,さらに,凝集を行うことで微粒子径が大きくなり,逆圧洗浄効率を向上させて いることも理由として理由として考えられる. また,逆圧洗浄に使用された膜ろ過水は,屋 外の固液分離槽へ送られ,自然乾燥により濃縮汚泥と分離される機構となっている. 表 2.4.1 拝志浄水場膜分離設備仕様

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表 2.4.2 拝志浄水場コスト概要

図 2.4.1 拝志浄水場モノリス型膜モジュール

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2.4.2 高知県いの町本川長沢浄水場

長沢浄水場は渓流水を原水とした,計画給水人口 280 人,計画最大給水量 127 ㎥/日の小規 模な浄水場施設である. 長沢地区は吉野川上流部に位置し,川を挟んで山が迫った地形である.浄水場は集落北側 の山に建設され稼働している. 原水が渓流水なので,透明度が高く,有機物含有量も低いことから,膜ろ過の主な目的は, 微細な土粒子・クリプトスポリジウム等の病原性原虫・大腸菌類等の除去である.そのため, 同様の設備で処理を行っている拝志浄水場のように活性炭処理を行わず,PAC による凝集の 後の膜ろ過水を塩素殺菌を施し,配水される形となっている. 表 2.4.3 長沢浄水場膜モジュール仕様 図 2.4.3 長沢浄水場逆圧洗浄水固液分離槽

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3章

精密ろ過(MF)膜を用いた膜ろ過による湖沼水

浄化実験

3.1 実験概要

本論では,MF 膜を用いた湖沼水の水質浄化効果を検証するために行った水質試験・水槽 モデルによる室内実験について記す.実験は2007 年 12 月から翌 1 月の期間で,高知県南国 市石土調整池・高知県香美市鏡野公園親水池の池水を実験当日に取水し,サンプルとした. 実験には,MF 膜モジュールは旭化成ケミカルズ株式会社より提供を受けた外圧式中空子膜 モジュールを使用した.

3.2 精密ろ過法(MF)による水質浄化効果の定義

湖沼の水質浄化を図るには,他のオンサイト型設備を用いた浄化方法と同様に,浄化設備 で処理したろ過水を原水,つまり元の湖沼へ放流し循環させることが必要となる.また,前 述したように,MF のろ過特性は,懸濁性の微粒子(植物性プランクトンを含む)のみでほぼ完 全に除去することが可能であること,ろ過水質が安定していることが重要な点として挙げら れる.このことから,MF では,原水水質によって溶存成分は左右されるものの,微粒子等 の固形物がほぼ完全に除去され,透明で水質が一様なろ過水を継続して造れると考えられる. 湖沼水の汚濁を示す指標である COD(化学的酸素要求量)は,懸濁性の汚濁物質の含有によっ ても数値が上昇するため,MF による固液分離での COD 低下は十分期待できる.また,MF は単位時間当たりのろ過水量が安定したろ過法であることに加え,上記のように膜を通過す る水に含まれていた懸濁物質を等しくほぼ完全に除去し続けることが可能であることから,

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- 24 - 懸濁がひどくCOD の高い原水ほど,懸濁物質除去量と COD の単位ろ過水量当たりの低下率 が高くなることも予測できる.しかし,MF による固液分離後の COD は,原水中の懸濁物質 量によって変化するため定量化が難しい.そのため,ろ過水 COD 濃度のケーススタディと して計測することは,非常に有意である. また,ろ過水の原水への放流を考慮したとき,原水の水質は時系列的に改善へと向かうこ とが予想される.つまり,MF によるろ過水を原水へ放流して水質改善を図る(COD を低下さ せる)際に重視するべきなのは,単位時間当たりのろ過水量であるといえる.この単位時間当 たりのろ過水量(フラックス;flux:㎥/㎡/日)は,原水を MF 膜に通過させる圧力に比例し,そ れを阻止しようと働く抵抗に反比例する.膜ろ過抵抗には,膜自体が持つ抵抗,原水が持つ 抵抗,微粒子が起こす膜の目詰まりによる抵抗,微粒子が膜面に堆積して起こる抵抗がある. つまり,原水中の懸濁性物質や溶存成分はフラックスを低下させる要因となっており,含有 する懸濁物質量とフラックスの関係も原水水質によって様々である.一般に河川水よりも汚 濁が進んでおり植物プランクトン等の微生物も多数存在している,池水をMF により処理し ている例は尐なく,池水における懸濁物質量とフラックスの関係を明らかにすることもまた, 有意であると考えられる. t V

R

P

J

Δ

Jv :フラックス(㎥/㎡/日),ΔP:膜間差圧(N/㎡),Rt:膜ろ過抵抗[22] 本論では,あきらかにしたい以下の項目をもって,水質浄化効果とする.  池水原水とろ過水の水質比較より,懸濁物質量と COD の関係  懸濁物質量(植物プランクトンを含む)とフラックスの関係 また,これらを考慮した上で時系列データ測定を目的とし,水槽モデルを用いてろ過水を 原水に放流・循環ろ過させ水質の変化を測定する実験を行った.

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- 25 -

3.3 対象水域の概要

3.3.1 南国市石土調整池

昭和 50 年代から南国市十市川の上流域において高知県住宅供給公社によるニュータウン 計画の宅地開発が進められ,流域の総合的な治水対策を立てる必要性が生じ,高知県は十市 川における総合的な河川改修計画の検討を行った.石土調整池はニュータウン予定地に隣接 した自然池で,計画に伴い浚渫・拡大され雤水調整機能を持った半人造湖沼である. 1997 年に河川法が改正されるまでは,雤水調整池建設に当たって環境への配慮が義務づけ られていなかったが,当時の石土池は人工調整池と自然の池とが融合し,良好な水辺環境が 形作られていた.東岸にある湧水地帯では沈水性水生植物(シャジクモ類)が繁茂しており, 多種多様な魚類が生息し、渡り鳥も飛来する豊かな生態環境が育っていた.しかし、ニュー タウン整備後,富栄養化による水質悪化や,ホテイアオイの枯死後沈降によるヘドロ問題が 発生し,下流部の流域保全・治水機能の保持の観点からも環境改善が求められている池であ る.[25] [26] 図 3.3.1 南国市石土調整池 表 3.3.1 石土池年間平均水質 十市川 石土池 従来の池 農業配水施設 流入口 十市川 農業用水地 石 土 池 (雨水調整池) A点 ( 流入地点) 従来の池

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- 26 -

3.3.2 香美市鏡野公園親水池

鏡野公園親水地は,香美市土佐山田町東部にある鏡野公園に併設された親水池である. 池底はコンクリート張りの構造となっており,湧水の湧き出しはなく,また,人工池であ ることから河川等からの流入・流出もない.唯一の流入は公園内に降った雤水のみであり, 富栄養状態で汚濁がかなり進行した池である.実験を行った冬季においても,高いクロロフ ィル濃度を指しており,池底には藍藻類の沈殿,ヘドロの堆積が見られる.池内には放流さ れたコイが多数生息しており,沈澱した底質土の巻き上げを絶えず行っていることもあり, 池水の濁度は高い値を指している. 植物プランクトン量を示すクロロフィル a,濁度の値は年間を通じて非常に高い(表 -4.3.2.1).一方で,植物プランクトンが活発は夏季には池水の溶存酸素量が非常に高くなるが, 冬期は嫌気性分解が起こるレベルの,非常に低い値となることがわかった. 図 3.3.2 鏡野公園親水地所在地 表 3.3.2 鏡野公園親水池の年間平均水質

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- 27 -

3.4 実験用精密ろ過(MF)膜モジュール概要

使用したMF 膜モジュールは,旭化成クリーン化学株式会社から提供を受けたものである. MF 膜のろ過はポンプでの吸引圧力によるもので,ろ過水槽に導水された原水は MF 膜を 通して吸引ろ過される.原水タンクからろ過水槽への導水,並びに MF 膜によるろ過吸引に は同一のポンプを使用する.その際,原水供給量がろ過水量を上回り供給過剰となるが,ろ 過水槽で一定水量を超えた分はOver Flow として原水へ排出される仕様となっている.膜の 物理洗浄方法は,ろ過時間1 時間に対して 1 分のろ過水による逆圧洗浄と,ブロワからの曝 気によるエアスクラビングを常時行う,また,ろ過水槽内の攪拌が必要な場合は予備の系統 からの曝気で行う. 実際に使用する際のポンプによる吸引圧力は 30kPa 以下,フラックス(一日当たり,有効 膜面積1 ㎡当たりの濾過水量(㎥))は 2.0(㎥/㎡/日)以下で運転する仕様となっている. 図 3.4.1 MF 膜モジュール模式図 表 3.4.1 MF 膜モジュール仕様

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- 28 -

3.5 使用した水質観測装置の測定特性

本実験では濁度(NTU)とクロロフィル a 濃度を測定に水質ロガーYSI6600 を用いた. 水質ロガーのクロロフィルの測定原理は、ある波長の光を当てると蛍光を発するという特 性を利用する,90 度後方散乱方式を採用している.約 470nm(青)の光を照射する光源として LED を使用し,光波と水中の微粒子との衝突の結果生じる 650-700nm の光を検出する為,高 感度のフォト・ダイオードを使用している,これはオプティカル・フィルターで仕切られた 水中の微分子により,乱反射した 470nm の光を検出しない仕様である. 図 3.5.1 水質ロガーYSI6600

(30)

- 29 -

(31)

- 30 -

3.6 原水と精密ろ過法(MF)によるろ過水の水質比較

原水とろ過水の水質比較を,それぞれの池のサンプルで行った.石土調整池の水は,濁度 が低く,クロロフィル a 濃度も低いのに比べ,鏡野公園池の水は,緑濁色で浮遊する物質も 無数に見られた,T-N や PO4-P は同程度の濃度であった.実測値は下表(表-4.4.1)の通り. まず,MF の除去方式は,基本的に微粒子の固液分離なので,濁度とクロロフィル a の項 目はいずれのサンプルでも,ろ過水中の濃度は同程度まで除去できていることが分かる.ま た,MF では T-N や PO4-P の栄養塩類の溶存態は除去できない.石土調整池の水は,懸濁物 質がほとんどないにも拘らずT-N や PO4-P の値が大きいことから,水中の栄養塩はほとんど 溶存態で存在していることがわかる.ろ過の結果,T-N・PO4-P はほとんど低下しておらず, 汚濁の指標である COD もほとんど低下が見られなかった.一方,鏡野公園池のサンプルは PO4-P で約 70%,COD も約 70%も低下が確認できた.これは COD で検出していた汚濁物質 が懸濁態で存在しており,これをほぼ全て除去できていること,また,PO4-P を分解して利 用する植物プランクトンが体内に取り込んだリン分がプランクトンごと回収できたことが, 高い水質浄化能力を示した要因として考えられる. この結果から,MF による固液分離では,濁度・クロロフィル a 濃度が高い水ほど,MF による汚濁物質除去量が多くなることがわかった. 表 3.6.1 原水と MF によるろ過水の水質比較 ※石土:20 年 1 月 7 日 鏡野:19 年 12 月 27 日測定 -表記は計測不能

T-N (mg/l) PO4-P (mg/l) COD(mg/L) 大腸菌 一般細菌 pH Turbidity(NTU) Chlorophyll(ug/L)

石土 原水 3.92 0.63 4.6 82/100ml 17/100ml 8.5 5.36 16.54

濾過水 2.99 0.61 3.4 0 0 7.8 0.65 3.60

鏡野 原水 3.85 0.92 17.2 13/10ml - 8.3 27.04 117.84

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- 31 -

3.7 精密ろ過(MF)膜の通水能力試験と運転圧力の設定

水槽モデルを用いたろ過水の循環実験を行うに当たって,運転する際のポンプ圧力を設定 する必要がある.実験機では,ポンプ圧力は原水や膜モジュール自体の持つろ過抵抗を加味 した,膜間差圧で表示される機構となっている.フラックスは運転圧力が一定であっても, 原水の水質状態によって変化する.また,ろ過を阻害する方向に働くろ過抵抗は,ろ過継続 に伴う膜面への堆積物や細孔の閉塞によって増加していく.そのため,フラックスが一定の 場合,差圧計の値は同等の加圧を行うと,ろ過抵抗の大きい原水において大きくなる傾向が ある.そして,原水の持つ膜ろ過抵抗は,原水中の懸濁微粒子量・溶存物質量・水温などに 左右され,特に水温は低いほど粘性が増し,ろ過抵抗が大きくなることが知られている.従 って,実験に際して設定が必要なポンプ圧力とは,原水毎の膜ろ過差圧であり,1 サイクル を通じて安定してろ過を継続することができるレベルの圧力がどの程度であるかを把握して おくことが必要である.MF 膜の物理洗浄として,定期的に繰り返しろ過水を逆流させる逆 圧洗浄を行うが,この場合の1 サイクルとは,1 回のろ過の継続時間と 1 度の逆圧洗浄にか かる時間を併せたものとする.本実験で使用する実験機は,原水の水質毎でのフラックスを 考慮した最適な逆圧洗浄タイミングと圧力を検証できる仕様ではないため,同様のMF 膜を 使用したモジュールで一般的に行われている洗浄タイミングとして,ろ過時間 1 時間に対し て1 分間の逆圧洗浄を行うものとした. 上記した通り,膜ろ過抵抗は原水水質によって変動する.抵抗として作用するのは懸濁性 微粒子量や溶存態有機物等であることを考慮し,対象池水質より鏡野公園池の水で試験を行 うこととした. 通水能力試験は,常時エアスクラビング洗浄(5L/m)をかけた状態で行い,5kPa 毎で,加圧 上限である30kPa まで,各 1 時間で 1 分毎に計測した(図 4.7.1). 25,30kPa の値に関しては,計測中に急速な膜間差圧の上昇がみられたので中断した.これ は原水水質に対して吸引圧力が過大で,エアスクラビングによる物理洗浄効果を上回るスピ ードで懸濁性微粒子の膜閉塞を引き起こしたためと考えられる.一方,20kPa 以下での場合

(33)

- 32 - は,どの値も直線的に増加していることが分かる.これは,膜ろ過抵抗が1 時間を通じてほ ぼ一様であったことを示しており,エアスクラビングにより微粒子の膜面への堆積が抑えら れていたと推測できる.つまり,可能であった中の最大圧力にあたる20kPA 以下の圧力での 運転においては,エアスクラビングによる物理洗浄効果が膜面への微粒子堆積を抑えること が可能であると考えられる.よって,本研究では対象とする原水におけるクリティカルフラ ックスを20kPa とし,それ以下の運転圧力で運転することとした. 20kPa 以下での各圧力における 1 時間当たりのろ過水量からフラックスを算出した(表 4.7.1).加えた圧力とフラックスの値は全量ろ過の概念の様に,懸濁物質の多い湖沼水を原水 とした場合でも安定したろ過条件のもとでは正の単相関をもつことが数値上でも確認ができ た(図 4.7.2). 図 3.7.1 MF 膜モジュール実験機通水能力測定結果累積値 表 3.7.1 MF 膜モジュール実験機圧力別フラックス算出値 0 200 400 600 800 1000 1200 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

5kPa 10kPa 15kPa 20kPa 25kPa 30kPa

(ml)

(34)

- 33 - 図 3.7.2 圧力とフラックスの比較 y = 0.0746x R² = 0.9564 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 0 5 10 15 20 25 圧力別フラックス(㎥/㎡・d) (min) (㎥/㎡/日)

(35)

- 34 -

3.8 水槽モデルによるろ過水循環実験

前記した予備実験を踏まえ,水槽モデルによるろ過水循環による原水の水質浄化実験を行 った. 水槽モデルは対象とした池(南国市石土調整池・香美市鏡野公園池)から取水した原水を満た した水槽からろ過原水をポンプアップさせて MF 膜モジュール内に導水し,MF により固液 分離したろ過水を再び水槽へ戻すものとした(図 4.8.1).運転圧力はろ過水量を考慮して 20kPa とし,MF 膜の物理洗浄は曝気によって膜を微振動させるエアスクラビングを常時行 い,定期的な洗浄としてろ過水を使った逆圧洗浄をろ過継続時間60 分に対して 1 分間行うこ ととした. 実験前に,実験で使用する原水による通水能力試験を行い,単位時間当たりのろ過水量を 測定し,20kPa での運転で膜間差圧の上昇が起こらないかをそれぞれ確認した.ろ過水量の 把握はMF のろ過性が懸濁性微粒子の一様な除去であることからろ過水循環による効果を分 析する際に必要となるためである.膜間差圧の確認は,ろ過抵抗の上昇によるろ過効率の低 下を把握できないため,値の上昇をろ過効率の低下を示すものとして考慮するためである. 計測する水質項目と計測機器は濁度・クロロフィルを水質ロガーYSI6600,COD を過マン ガン酸カリウム法で計測した.ろ過時間60 分と逆圧洗浄 1 分とろ過復帰までにかかる 1 分を 加えて計62 分間をろ過の 1 サイクルとし,それぞれ 6 サイクルまで計測した.計測日時はそ れぞれ,石土調整池2008 年 1 月 17 日,鏡野公園池同 18 日である. 図 3.8.1 水槽モデルイメージ図

水槽

膜ろ過装置

濾過水放流

(36)

- 35 -

(37)

- 36 -

3.9 実験データの分析と考察

実験結果を以下に記す. まず,対象とした池から取水した原水の水質を測定した(表 4.9.1).石土調整池の水は濁度・ クロロフィル量ともに低く透明度が比較的高く,水の汚濁を示す COD の値も低かったが, 鏡野公園池の原水は濁度が高く,低水温期にも関わらず夏季と同等のクロロフィル量が検出 された,COD に関しても湖沼としては非常に高い値が検出された.このことから,湖沼水汚 濁の原因として,濁りの元となる懸濁性微粒子量がかなり高いウエイトを占めていることが 分かる. 表 3.9.1 対象池別原水水質 次に,運転圧力20kPa,常時エアスクラビング洗浄の条件にて 1 サイクルの通水能力試験 を行った(表 4.9.2).石土調整池の原水を使用した場合が鏡野公園池の場合よりも大きい値を とるという結果が得られた.MF 膜によるろ過を阻害するろ過抵抗は,水温・含有物質によ って左右されるが,水温にほとんど差がない状態での計測結果であることから,水質項目の 中でも差が大きかった濁度・クロロフィル量がろ過抵抗として働くウエイトの大きさが確認 できた.また,この試験では膜面への微粒子堆積によるろ過効率の著しい低下が起こらない と考えられる(膜間差圧上昇が起こらないことで判断した)範囲内での計測であることから,含 有物質がろ過効率へ与える影響がよりよく計測できていると考えられる.累計データにおい てもほぼ直線的に値が増加していることからも(図 4.9.1),ろ過効率の低下は認められなかっ た.

(38)

- 37 - 表 3.9.2 原水別濾過水量とフラックス算出値 図 3.9.1 1 時間通水能力試験結果(累積値) 以上の結果を踏まえ,水槽モデルを用いたろ過水循環実験を行った.濁度とクロロフィ ルに関して,1 分間隔での観測を行ったが,継続してろ過水を循環させた場合,濁度・クロ ロフィルで数値低下の仕方が違っていることがわかった(図 4.9.2,図 4.9.3).これはクロロフ ィルが濁りの原因となる微粒子の一部として関与しているものの,他の粒径の大きい粒子も 混在しているため,懸濁性微粒子が原水中に均一に分布していないことによると考えられる. つまり,クロロフィルは他の懸濁性微粒子よりも分散して原水中にあって,ポンプによるろ 過水槽への導水が一様に行えていたと推察することができる.特に,鏡野公園池の値は顕著 に表れていて,ろ過開始後クロロフィルの値が徐々に低下している一方で,濁度の値は30 分 までの間に1/3 近くが減尐している.これは,懸濁性微粒子のなかでも粒径の大きいものが 自然沈澱したものと考えられる. さらに,原水と6 サイクル後の値を比較した(表 4.9.3).原水水質によるフラックスの違い はあるものの,同じ運転圧力で同じ時間運転した値であっても,鏡野公園池サンプルからの 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 鏡野公園池 石土調整池 (min) (ml)

(39)

- 38 - クロロフィル分離量は石土調整池の約6.5 倍,濁度は(懸濁微粒子量 mg/L 換算)約 8.1 倍の除 去量を観測した.このことから濁りのひどい原水ほど除去効率が高くなることが確認できた. 図 3.9.2 ろ過水循環による水質の経時変化(石土調整池) 図 3.9.3 ろ過水循環による水質の経時変化(鏡野公園池) 表 3.9.3 ろ過水循環 6 サイクル後の水質比較 2 3 4 5 6 7 8 14 16 18 20 22 24 26 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360 Chlorophyll ug/L Turbidity NTU 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 20 40 60 80 100 120 0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 Chlorophyll ug/L Turbidity NTU 石土調整池 鏡野公園池

クロロフィル(ug/L) 濁度(NTU) クロロフィル(ug/L) 濁度(NTU)

原水 23.74 5.88 100.08 31.94

6cycle後 17.2 3.38 57.54 11.62

差 6.54 2.5 42.54 20.32

除去量 65.4(ug) 13.8(mg) 425.4(ug) 111.6(mg)

(min) Chlorophyll(ug/l) Turbidity (NTU)

Turbidity (NTU) Chlorophyll(ug/l)

(40)

- 39 - 次に,測定した水質項目から,他の項目への影響度がどの程度であるかを分析した. まず,今回対象とした池水中の濁度とクロロフィル濃度を比較した(図 4.9.4).結果,両項目 は高い正の相関関係にあることがわかった.低水温期とはいえ,今回行ったいずれの計測も 降雤後に数日の期間を置いて取水し測定したことで,懸濁性微粒子量への外部からの流入・ 希釈等の影響を抑えられたことが要因として考えられる.特に降雤時に濁水として流出する シルト等の無機物粒子による濁りは藻類のように有機物を吸着することが尐なく,汚濁自体 への影響は比較的小さいと言われている.一方で,池のロケーションによっては流入する物 質のバランスが異なり,ここまで高い相関を持たないことも十分あり得る.今回の対象池は, 周辺を舗装路面で囲まれた雤水調整池や芝生で覆われた公園池であったことから,降雤によ る土粒子の流入が抑えられていることも大きい要因である. このことから,対象池においては溶融性有機物の除去に効果が示唆できた藻類・植物プラ ンクトンの除去が,濁りの除去にも大きい効果があることがわかった. 図 3.9.4 対象原水における濁度とクロロフィルの比較 y = 0.1969x + 1.2879 R² = 0.912 0 5 10 15 20 25 0 20 40 60 80 100 120 Chlorophyll(ug/l) Turbidity (NTU)

(41)

- 40 - 次にCOD について記す. ろ過原水とろ過水の水質比較より,懸濁性微粒子の除去は COD 低減にも大きい効果を持 つことが示せたが,今回の実験では顕著な低下は確認できなかった(図 4.9.5).実験継続時間 の長さ,ろ過水量の尐なさなどが原因として考えられるが,いずれの原水についても懸濁性 成分,特にクロロフィル量とCOD の相関関係が確認できることとから,COD の低減効果は あっても効率が悪かったと考えられる.基本的にMF はろ過水槽へ導水された原水中の懸濁 性微粒子を全量ろ過するろ過法であるので,原水中でも懸濁成分を多く含んだ水塊を導水で きれば単位時間当たりの除去効率は上がると考えられる.通常状態にある実際の湖沼では沈 澱などの作用により固形物は沈んでいく,水槽内でも同様の水塊移動が起こったものとかん がえられる.つまり,原水からろ過水槽へ導水する際の取水深さによって単位時間当たりの 懸濁成分除去効率が大きく変動することが考えられる. また,実験を通じてろ過水中の懸濁成分量が一様に低い値を示していたことから,ろ過水 放流による循環での単位時間当たりの水質浄化効果を見る上では,原水水質によるフラック スの変動が重要であることが確認できた.そして,対象池の原水を用いた場合のフラックス とクロロフィルの関係を示した(図 4.9.7).クロロフィル濃度が高くなるにつれてフラックス が低下していくことが確認できたが,サンプル数が尐ないため精度は低い.この検証に関し ては今後の課題とする. 図 3.9.5 ろ過水循環による COD の経時変化 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

原水 2cycle後 4cycle後 6cycle後

石土調整池 鏡野公園池

(42)

- 41 - 図 3.9.6 クロロフィル濃度と COD の比較(上:石土調整池 下:鏡野公園池) 」 図 3.9.7 1 サイクル当たりのろ過水量とクロロフィル量の比較

y = 0.0672x + 2.93

R² = 0.6403

0

1

2

3

4

5

6

0

5

10

15

20

25

y = 0.1031x + 8.0092 R² = 0.698 0 5 10 15 20 25 0 20 40 60 80 100 120 140 y = -2.7911x + 927.37 R² = 0.6551 0 200 400 600 800 1000 1200 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 ろ過水量(mg/h) Chlorophyll(ug/l) Chlorophyll(ug/l) Chlorophyll(ug/l) COD(mg/l) COD(mg/l)

(43)

- 42 - また,水質ロガーによる測定値の分析により,水槽内の原水中の溶存酸素量が増加してい たことがわかった.この要因としては,水槽内への空気中からの直接溶存も考えられるが, ろ過水放流によって導入されているものとすれば,MF 膜の物理洗浄として行っていた,曝 気によるろ過水槽内での酸素の導入が考えられる.溶存態の物質に関しては MF は透過する 性質を持っていることや,膜面への堆積を抑えるため運転圧力を低く設定していたことも酸 素導入に働いたものと推察できる. 今回使用した膜モジュールの特徴は,ろ過水槽内に漬け込んで吸引圧力によってろ過を行 う浸漬型モジュールに近いため濁度の高い原水に向いていることと,曝気による洗浄が可能 になっていることが挙げられる.この効果が実証されれば池水浄化への可能性も高くなると 期待される. 図 3.9.8 ろ過水放流による原水別 DO の経時変化(上:石土調整池,下:鏡野公園池) 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

原水 1cycle 2cycle 3cycle 4cycle 5cycle 6cycle 石土調整池 0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80

原水 1cycle 2cycle 3cycle 4cycle 5cycle 6cycle 鏡野公園池

(44)

- 43 -

4章

湖沼水水質浄化への膜分離技術の適用可能性

4.1 南国市石土調整池を例としたコスト試算

4.1.1 Microsoft Excel ソルバーを用いた実験データ近似式の算出

実験によって得られたろ過水放流による懸濁物質除去効果より,南国市石土調整池を例と して,コスト試算を行った. コスト試算を行うに当たり,実験データの近似式算出を行い,そこから浄化に必要なろ過 水の放流量の算出を試みた.定式化に用いる水質項目は,データ上でもばらつきが尐なく, 水槽内で均一に近い状態で分散していたと考えられるクロロフィルの数値を用いることとし た. まず,原水のクロロフィル濃度が均一で流入流出のない理想状態でのろ過水放流によるク ロロフィルの除去効果を定義する.ろ過水放流が常に等量で行われると仮定したときの,ろ 過開始後の時間をt とおくと,t 後の水槽内におけるクロロフィル濃度は以下の数式で表すこ とができる.

 

t

C

e

C

'

f

A t V

 ・

(45)

- 44 - 水槽内での微粒子の挙動を計測することが困難であったことから,今回は循環用ポンプを 動作させることで理想状態に近似できると仮定して計算を行った.また,ろ過水中のクロロ フィル濃度は0 として扱った. 計算はMicrosoft Excel のソルバーを用いて行った.説明変数を時間 t とし,前記した指数 曲線に近似させた.元のデータとの重相関係数R2は非常に高い値となった.  石土調整池  鏡野公園池 4.1.1 クロロフィル実験値と計算値の比較(上:石土調整池,下:鏡野公園池) 0 5 10 15 20 25 30 1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101 111 121 131 141 151 161 171 Chlorophyll移動平均5 ug/L 計算値ug/L 0 20 40 60 80 100 120 1 17 33 49 65 81 97 113 129 145 161 177 193 209 225 241 257 273 289 305 321 337 353 Chlorophyll実測値 計算値 t

e

t

f

(

)

23

.

74

0.0011 t

e

t

f

0.0018

08

.

100

)

(

 2

0

.

94

R

96

.

0

2

R

Chlorophyll(ug/l) Chlorophyll(ug/l)

(46)

- 45 - 水質浄化による環境影響を評価することは困難であるので,今回の試算では,一年間で年 間平均クロロフィル濃度を半減させることを目標と設定し,試算を行うこととした.この近 似式に,石土調整池の平常時貯水量 175,000 ㎥を代入し,クロロフィル量の年平均値(2004 年測定)を用いて算出した.外部からの流入は隣接する十市パークタウンからの雤水流入のみ とすると,初期雤水流入による水質汚濁は起こらず雤水による希釈効果が見られることが亀 田らによって検証されていることから,計算上で外的な汚濁負荷は考慮しないこととした. 計算の結果,必要なろ過水放流量は一日当たり約185 ㎥と算出された.

4.1.2 南国市石土調整池を例としたコスト試算

以上の計算結果を踏まえ,同規模の造水量で稼働する浄水場のケーススタディを元にコス ト試算を行った.浄化設備の耐用年数は一般的な浄水上の耐用年数として設定される25 年間 とし,計算に加味する運転等の条件は以下のものとする.条件の設定に関しては,一般的な 浄水上が行っている内容よりも汚濁が進んだ池水を処理するということを考慮し,洗浄頻度 を増やす等の変更を加えている.  MF 膜の薬品洗浄を 1 回/年とする  PAC による凝集を行わない  常に運転し続ける  MF 膜の交換は 5 年に一度 これらを踏まえ,守山浄水場の資料をもとに計算を行った結果,初期投資は38,475,000 円 となり,維持管理費は年間 775,000 円,膜の交換費は 5 年に一度 700,000 円となった.25 年間換算した造水費用は45 円/㎥となった.

(47)

- 46 -

4.2 考察

以上の結果より,MF による池水浄化設備には高額な初期投資費用が必要となることがわ かった.MF による浄化設備の特徴は,原水汚濁の度合いからではなく,ろ過性能が一様な ため必要な造水量から規模が決定される点にある.また,膜分離設備がモジュール単位で取 り扱われることから規模の大小と共に価格が段階的に上昇していく,そして,小規模になる ほど建物やろ過水槽規模も同時に小規模になることからコストは抑えられると考えられる. このことから,汚濁の進んだ小規模な公園池等への導入が適切であると考えられる.そう した池は都市域にあることが多く,設備が省スペースで済むことにも優位性がある.また, 公園池や観光資源となり得る池の水質浄化には,費用が高くなっても認められる傾向があり, MF による浄化設備導入は今後検討されうる可能性を有していると考えられる. また,MF によるろ過では,大腸菌類等の細菌類がほぼ完全に除去でき,飲用可能なレベ ルでの浄化が可能となるため,有事の際には浄化した水を利用するという,危機管理の観点 からも導入は有意であると考えられる.

(48)

- 47 -

5章

おわりに

5.1 まとめ

本論で明らかになった項目を以下に記す.  原水とろ過水の水質比較によると,懸濁の程度が高い原水ほど水質浄化が認められた.  鏡野公園池水を使ったろ過におけるクロロフィル分離量は石土調整池の約 6.5 倍,濁 度は(懸濁微粒子量 mg/L 換算)約 8.1 倍の除去量を観測した.  汚濁の進んだ池(鏡野公園池)の精密ろ過では運転圧力 20kPa 以下が適切である.  水槽内でろ過水を放流し循環させた場合,クロロフィルは水槽内で均一に近い分布と なり,数値の低下を近似すると指数曲線的に低下していくことがわかった.  対象とした原水中(都市型調整池・公園池)の濁度とクロロフィル量の間には高い正の相 関関係が確認できた.  ろ過水放流による COD の低下はほぼ観測できなかったが,クロロフィル量と COD の 間に相関関係がみられることからろ過水放流によるCOD 低下効果が示唆できた.  原水中のクロロフィル濃度とその原水を MF でろ過した場合のフラックスは負の相関 を持つと考えられる.  原水へのろ過水放流を行うと原水中の溶存酸素量が増加する可能性を観測した.  実験データをもとに石土調整池への導入を検討すると日造水量 185 ㎥,初期投資が 38,475,000 円と算出できた.

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5.2 今後の課題

今回の研究で得られた今後の課題を以下に記す.  濁度別の懸濁物質除去量を近似すること.  水質別の通水能力測定を引き続き行い、データを蓄積.  通水能力測定と並行してのろ過水の水質測定とデータの蓄積.  以上を踏まえての近似式の統計的精度の向上.  ろ過水の特性を考慮した適用方法の検討. 特に通水能力は,対象原水によって大きく異なり,原水水質は季節によってその組成が 大きく異なることから,継続して測定することが必要である. 近似式の統計的精度の向上については,水槽内での微粒子沈降と実際の池では異なること から,池水のダイナミズムを考慮した数式化が必要である.また,水質推移等の時系列デー タの近似には系列相関が発生しやすい,統計的にこれを解決するため,実験の精度の向上も 必要であると考えられる.

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謝辞

実験で使用した MF 膜モジュールを提供してくださった,旭化成ケミカルズ株式会社様,安 藤雅彦様には実験の方法に関して常に的確なご指摘と,検討を行う上で欠くことのできない ものとなった資料を提供して頂きましたことを感謝し,記して謝意を表します. 愛媛県東温市水道課,大野茂様,池田覚志様,いの町本川村役場様には浄水場データ提供 と現場の見学を快くお受け頂きましたことを記して謝意を表します. 研究に際して暖かく見守って下さり,自由に研究できる環境を与えて下さった村上雅博教 授には誠に感謝しております.本論が完成をみたのは教授のご助力の賜物であります. 研究について親身に考え,御助言頂いた渡邊法美教授には大学入学当初から暖かくご指導 頂きました.修了を前にここに記して感謝の意を表します.また,古沢浩准教授からは鋭い ご指摘を頂き,その後の研究に活かすことができました,合わせて謝意を表します. 常に研究室をリードし支えて下さり,研究の指針を示して下さった馬渕泰助教には誠に感 謝しております. 最後に,常にともにあり,支え合い,苦楽を共にしてきた村上・渡邊研究室の皆様,皆様 と共に研究する時間を共有できたことを喜びとし,心からの感謝の意を表します.

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参考文献

[1] 平成17年度公共用水域水質測定結果_環境省 水・大気環境局水環境課 [2] 松井三郎監訳,都市水管理の先端分野 行きづまりか希望か,技法堂出版,東京都,2003 [3] 湖沼等水質浄化技術について,環境省,2005 [4] 石崎勝義ら,自然システムを利用した水質浄化-土壌・植生・池などの活用-,技報堂出 版株式会社,東京都,2001 [5] 島谷幸宏ら,エコテクノロジーによる河川・湖沼の水質浄化,株式会社ソフトサイエン ス社,東京都,2003 [6] 膜分離技術振興協会・膜浄水委員会監修,浄水膜,浄水膜編集委員会編,技法堂出版, 東京都,2003 [7] 村上雅弘,バイオマニピュレーション:生物多様性に配慮したアクティブな水界生態系 管理の応用技術,水文・水資源学会誌,第9 巻 4 号,pp367-375 [8] 高村典子,水辺移行帯修復・再生技術の開発-霞ヶ浦での植生帯復元の取り組みから, 生活と環境,第50 巻 5 号,pp24-30 [9] 村上光正,環境用水浄化実例集(1),壮光舎印刷,東京都,1996 [10] 村上光正,環境用水浄化実例集(2),壮光舎印刷,東京都,1996 [11] 中村圭吾,河川・湖沼の自然再生,環境浄化技術,vol.4, no.4,pp1-5 [12] 「水辺環境について」の調査結果,環境省 水・大気環境局 水環境課,2007 [13] 天野邦彦,エコロジカルポンドの生態系への役割,水循環 貯留と浸透,vol. 49,pp5-7. [14] 中村圭吾,コンパクトウェットランドで都市の「水と緑」をよみがえらせる,水循環 貯 留と浸透,vol.47,pp23-29 [15] グエン・ソン・フン,流域の生態系から見た調節(整)池への期待について,水循環 貯 留と浸透,vol.49,pp8-14 [16] 天野邦彦,エコロジカルポンドの生態系への役割,水循環 貯留と浸透,vol.49,pp5-7

(52)

- 51 - [17] 中村圭吾,河川・湖沼の自然再生,環境浄化技術, vol.4,no.4,pp1-5 [18] 小林亨,雤とアメニティ,雤水技術資料,vol.6,pp49-65 [19] 兼子和彦ら,日本の池のデザインから調節池の景観設計を考える,雤水技術資料 vol.6, pp73-86 [20] イノベーション 25,内閣府 [21] 21 世紀環境立国戦略,環境省 [22] 財団法人 水道技術研究センター,高効率浄水技術開発研究(ACT21)水道用膜ろ過技術 の新しい展開,水道技術研究センター,東京都,2002 [23] 財団法人水道技術研究センター,水道用膜ろ過技術の新しい展開,財団法人水道技術研 究センター,東京都,2002. [24] 新しい水処理シリーズ(2)膜を利用した新しい水処理,日経印刷株式会社,(株)エヌ・テ ィー・エス 東京都,2000 [25] 平成 16 年度石土池環境再生環境調査研究委託業務,高知工科大学 [26] 亀田千明,半閉鎖水域の雤水調整池における水質特性-雤水調整池(石土池)における 都市雤水流出について-,2005 [27] 半谷高久ら,水質調査ガイドブック,丸善株式会社,東京都,1999 [28] 成田美穂ら,現場用濁度計の比較実験,2004

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付録

A

水質や水辺の環境の改善 東京都区部身近な水辺 * * * 水質への意識(環境省) 水辺環境に関する意識調査 29% 47% 12% 5% 1% 6% 現状より負担が増えて も、早急に進める 現状の負担で、現状どお り進める 改善が遅れても、現状の 負担を尐なくする 改善の必要はない その他 わからない 回答数:2111

22.9

40.7

2.5

3.4

2.5

2.5

42.4

5.1

河川 公園 湖沼、池 海 渓流、滝 水路、運河、お 堀 回答数:118 環境省H17 公共用水域水質測定結果より作成 環境省H17 公共用水域水質測定結果より作成

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- 53 - 2 43 3 30 17 21 30 5 16 2 9 12 0 10 20 30 40 50 満足している 水質 水量 ゴミ 生物の状況 水辺に親しむための周辺施設 周辺の自然環境 迷惑害虫 安全性 わからない その他 無回答 回答:376名 2 7 37 15 6 60 13 34 24 0 10 20 30 40 50 60 70 無回答 その他 生物への影響 飲んだ場合の安全性 泡 浮遊物(ゴミ、油等) 水の色 濁り におい 回 答 :376 名 環境省H17 公共用水域水質測定結果より作成 環境省H17 公共用水域水質測定結果より作成

(55)
(56)

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(57)

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表  2.4.2  拝志浄水場コスト概要
図  3.5.2    YSI6600 測定方式概念図
表  3.8.1  実験器具概要

参照

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