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精密ろ過(MF)膜の通水能力試験と運転圧力の設定

ドキュメント内 フロンティアプロジェクト (ページ 32-35)

第 3 章 精密ろ過(MF)膜を用いた膜ろ過による湖沼水浄化実験

3.7 精密ろ過(MF)膜の通水能力試験と運転圧力の設定

水槽モデルを用いたろ過水の循環実験を行うに当たって,運転する際のポンプ圧力を設定 する必要がある.実験機では,ポンプ圧力は原水や膜モジュール自体の持つろ過抵抗を加味 した,膜間差圧で表示される機構となっている.フラックスは運転圧力が一定であっても,

原水の水質状態によって変化する.また,ろ過を阻害する方向に働くろ過抵抗は,ろ過継続 に伴う膜面への堆積物や細孔の閉塞によって増加していく.そのため,フラックスが一定の 場合,差圧計の値は同等の加圧を行うと,ろ過抵抗の大きい原水において大きくなる傾向が ある.そして,原水の持つ膜ろ過抵抗は,原水中の懸濁微粒子量・溶存物質量・水温などに 左右され,特に水温は低いほど粘性が増し,ろ過抵抗が大きくなることが知られている.従 って,実験に際して設定が必要なポンプ圧力とは,原水毎の膜ろ過差圧であり,1 サイクル を通じて安定してろ過を継続することができるレベルの圧力がどの程度であるかを把握して おくことが必要である.MF 膜の物理洗浄として,定期的に繰り返しろ過水を逆流させる逆 圧洗浄を行うが,この場合の1 サイクルとは,1回のろ過の継続時間と1 度の逆圧洗浄にか かる時間を併せたものとする.本実験で使用する実験機は,原水の水質毎でのフラックスを 考慮した最適な逆圧洗浄タイミングと圧力を検証できる仕様ではないため,同様のMF 膜を 使用したモジュールで一般的に行われている洗浄タイミングとして,ろ過時間 1時間に対し て1分間の逆圧洗浄を行うものとした.

上記した通り,膜ろ過抵抗は原水水質によって変動する.抵抗として作用するのは懸濁性 微粒子量や溶存態有機物等であることを考慮し,対象池水質より鏡野公園池の水で試験を行 うこととした.

通水能力試験は,常時エアスクラビング洗浄(5L/m)をかけた状態で行い,5kPa 毎で,加圧 上限である30kPaまで,各1時間で1分毎に計測した(図4.7.1).

25,30kPaの値に関しては,計測中に急速な膜間差圧の上昇がみられたので中断した.これ

は原水水質に対して吸引圧力が過大で,エアスクラビングによる物理洗浄効果を上回るスピ ードで懸濁性微粒子の膜閉塞を引き起こしたためと考えられる.一方,20kPa以下での場合

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は,どの値も直線的に増加していることが分かる.これは,膜ろ過抵抗が1時間を通じてほ ぼ一様であったことを示しており,エアスクラビングにより微粒子の膜面への堆積が抑えら れていたと推測できる.つまり,可能であった中の最大圧力にあたる20kPA以下の圧力での 運転においては,エアスクラビングによる物理洗浄効果が膜面への微粒子堆積を抑えること が可能であると考えられる.よって,本研究では対象とする原水におけるクリティカルフラ

ックスを20kPaとし,それ以下の運転圧力で運転することとした.

20kPa以下での各圧力における1時間当たりのろ過水量からフラックスを算出した(表

4.7.1).加えた圧力とフラックスの値は全量ろ過の概念の様に,懸濁物質の多い湖沼水を原水 とした場合でも安定したろ過条件のもとでは正の単相関をもつことが数値上でも確認ができ た(図4.7.2).

図 3.7.1 MF膜モジュール実験機通水能力測定結果累積値

表 3.7.1 MF膜モジュール実験機圧力別フラックス算出値 0

200 400 600 800 1000 1200

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60

5kPa 10kPa 15kPa 20kPa 25kPa 30kPa (ml)

(min)

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図 3.7.2 圧力とフラックスの比較 y = 0.0746x

R² = 0.9564

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80

0 5 10 15 20 25

圧力別フラックス(㎥/㎡・d)

(min) (㎥/㎡/日)

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