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1.現 在の 日本の食糧 自給率 と農林水産物 の輸入状況

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商 経 学 叢 第59巻 第2号2012年12月

食 糧 自給 率 と安全 性 は比 例 す る の か?

〜 日本 と 中 国 の 関 係 か ら考 え る〜

勝佃 英 紀 ・服 部 義 昭 ・荒 河 文 雄

要 旨 本 研 究 にお い て は,中 国 産 食 品,中 国農 業 の不 安 要 素 及 び 日本 農 業 の課 題 を検 証 す る こ とで,日 本 産 農 産 物 消 費 量 の 上 昇,日 本 の 食 糧 自給 率 上 昇,中 国 産 食 品 の 安 全性 の リス ク 軽 減,安 全 性 の 向 上 に繋 が る方 策 を 検 証 す る。 ま た,日 本 の 農 業 の 改 善及 び 食 糧 の 安 全 性 の 向 上 には,農 村 を 豊 か に す る こ と以 外 に 解 決 策 は な い。 そ の 方 法 は,高 価 で 多 大 な 利益 を 生 み 出 す,高 級 食 材 の 生 産 販 売 で あ る と考 え る。 優 良 な 日本 食 材 を 中 国 へ 輸 出 す る こ とで,農 村 の 所 得 を 向 上 させ,ひ いて は食 糧 自給 率 を 改 善 す る こ とが で き る と考 え る。

Abstract This study examines critical factors concerning Chinese food products and Chinese agriculture, and challenges facing Japanese agriculture. Strategies which lead to the safety improvement is evaluated in which the risks related to the safety of Chinese food products may be reduced through increases in the consumption of Japanese agricultural products and in Japanese food self-sufficiency. It is also clear that any solution to improving Japanese agriculture and food safety demands that the income of Japanese farming communities must be increased. The solution is for them to produce and export highly priced luxury food staff that can generate large profits. By exporting high quality Japanese food stuffs to China, it is possible to envision increases in the earnings of farming communities and by extension, an improvement in Japan's food self-sufficiency.

キ ー ワー ド 原 稿 提 出 日

食 糧 自給 率,食 品 汚 染, 2012年6月18日

食 品 安 全 性, 食 糧 安 全 保 障,

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は じ め に

日本 の 食 糧事 情 は,古 来 よ りあ ま り豊 か な もの で はな か った 。 江 戸 時 代 に は何 度 も飢 饅 が起 こ り,餓 死者 を 多 数 出 して い る。 明 治 時 代 に入 り北 海 道 の 開 拓 を 行 って きた が,そ れ で も安 定 した穀 物 自給 を行 う こ と は難 しい状 況 で あ った 。 そ こで,台 湾 を は じめ とす る ア ジア諸 国 か ら穀 物 で あ る米 や 小 麦 を輸 入 して きた 。 第 二 次 世 界 大 戦 後 に よ うや く米 の 生 産 が増 加 し,1960年 代 に入 り生 産 量 が1400万 トンを越 え る よ うに な って よ うや く安 定 した が, 小 麦,大 豆,ト ウモ ロ コ シ等 の 穀 物 や 牛,豚,鶏 や 水 産 物 は依 然 と して 海 外 か ら大 量 に輸 入 して い る。

しか しな が ら,第 二 次 大 戦 後 の 飛 躍 的 な 経 済 発 展 に よ り,豊 か にな った 日本 で は食 糧 自 給 や 食 糧安 全 保 障 に対 す る危 機 感 はな くな り,1980年 前 後 よ りは,前 述 の 一 次 農 産 物 の み な らず,開 発 輸 入 され る野 菜 あ るい は海 外 で 完 成 品 まで 加 工 した 食 品 を 大 量 に輸 入 し,ス ー パ ー や百 貨 店 を は じめ とす る小 売 店 で 販 売 して い る。 また,フ ァ ミ リー レス トラ ンや チ

ェー ン展 開 して い る居 酒屋 等 の 厨 房 で は,冷 蔵 庫 や 冷 凍 庫 に様 々な 輸 入 食 品 が,生 鮮 ・冷 凍 ・加工 食 品 な ど様 々な形 態 で 貯 蔵 され て お り,電 子 レン ジで 加 熱 し皿 に盛 りつ けれ ばす ぐに客 に 出せ る とい う状 態 とな って い る(1)。これ らの 飲 食 店 の厨 房 の 中 の 食 材 の 一 つ で も 大量 の農 薬 に汚 染 され て い た り,人 に害 の あ る薬 物 が 混 入 され て いた りす る と大 問 題 と な る。 これ らの ス ー パ ー や百 貨 店 で 販 売 され て い る外 国 産 の 野 菜,肉,魚,冷 凍 食 品,お 惣 菜 な どや レス トラ ンあ るい は外 食 チ ェー ン店 な どで 出 され る料 理 を 食 べ て いて も大 丈 夫 な の だ ろ うか とい う不安 心理 に基 づ き,輸 入 品 の 安 全 性 を 不 安 視 す る報 道 が 多 くな され て い る。 特 に,中 国産 輸 入 野 菜 の 問 題 が 多 数 報 告 され て 以 来,ス ー パ ー や 百 貨 店 等 の 店 頭 か ら は 中 国産 の生 鮮 野 菜 ほ とん どみ られ な くな って い るが,加 工 食 品 に は依 然 と して 大 量 の 輸 入 野 菜 が使 わ れ て お り,中 国 の 農 薬 問 題 は 日本 の 食 糧 問 題 に依 然 と して,直 結 して い る と 考 え られ る。

さ ら に,2011年3月11日 の 東 日本 大 震 以 来,東 北 地 方 の 水 田が 壊 滅 的 な 打 撃 を 受 け米 の 生 産 量 が激 減 し,他 の産 地 の 日本 米 の 在 庫 が 減 少 し国 内 米 価 が 高 騰 して い る。 そ こで,ス

(1)冷 凍 食 品 に 関 して は,日 本 よ り も米 国 の方 が圧 倒 的 に 進 ん で お り,ニ ュー ヨー クや サ ン フ ラ ン シス コ等 の 大都 市 の 大 型 ス ー パ ー で は,冷 凍 食 料 の スペ ー ス が半 分 近 くを 占 め て お り,生 鮮 野 菜 か ら ビー フ シチ ュー や 中 華料 理 の 完 成 品 ま で ほ とん どの 食 材 が 販 売 され て い る。家 庭 で 料 理 をす る の は,お 母 さ ん で は な く,電 子 レ ンジ と い う家 庭 が急 速 に増 え て い る。 ま た,共 働 きが 当 た り 前 の 中 国 で も,上 海 等 の大 都 市 で は,夜 店 の 屋 台 だ けで はな く,急 速 に電 子 レ ン ジ に頼 る生 活 が 普 及 して き て い る。

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食 糧 自給 率 と安 全 性 は比 例 す るの か?(勝 旧 ・服 部 ・荒 河)

一 パ ー の 西友 な どで は 中 国 米 の 販 売 を 始 め,ま ず まず の 販 売 結 果 とな って お り,日 本 米 信 仰 の機 運 は下 が って きて い る。 また,外 食 チ ェー ンの 松 屋 や す きや の よ うな 牛 丼 チ ェー ン で は,安 売 り合 戦 を繰 りか え して い るた め,米 の 価 格 上 昇 につ いて ゆ けず,オ ー ス トラ リ ア米 を混 ぜ て 使 い 始 め て い る。 さ ら に,牛 肉 に関 して も,牛 肉の 一 大 産 地 で あ る東 北 地 方 の牛 肉 に対 す る風 評 被 害 に よ り国 産 牛 の 販 売 は激 減 し,ア メ リカ ン ビー フや オ ー ジ ー ビー

フの輸 入 が,2011年 よ り加 速 し,日 本 の 食 糧 自給 率 は低 下 して い る。

東 日本 大 震 災 の影 響 以 外 に も,食 糧 自給 率 に 関す る難 題 が 山積 して い る。最 大 の 問 題 は, 日本 産 の農 産 物 を 中 心 に生 活 を 始 め た 場 合,日 本 人 全 員 を 賄 え るだ けの 食 糧 を 日本 で 生 産 で き るの か とい う もの で あ る。 日本 の 食 糧 自給 率 は,他 の 先 進 国 に比 して 極 めて 低 い。 生 産 額 べ 一 ス で み て も食 糧 自給 率 は70%で あ り,食 糧 自給 率 を ど の よ うに高 め るか が,今 後 の 日本 の課 題 とな る。

東 日本大 震災 は,津 波 に よ る農地 の 崩 壊 と塩 害 を もた ら し,米 を 中心 とす る農 業 生 産 の 回復 には か な りの年 月 が必 要 とな って い る。 さ ら に,東 京 電 力 福 島 第 一 原 発 か らの 放 射 性 ヨ ウ素 や セ シ ウム が 大量 に撒 き散 ら され る と い う事 故 に よ り,放 射 能 汚 染 は広 が り,東 北 地 方 や 関東 地 方 で収 穫 され た ホ ウ レ ン草 や 原 乳 を は じめ,さ ま ざ まな 農 作 物 か ら暫 定 規 制 値 を超 え る放 射線 が検 出 され た。当初,東 日本 の農 産 物 に対 して,風 評 被 害 を抑 制 す る よ う に,政 府 が 国 内 外 にア ピー ル して い た が,福 島,茨 城 産 の 野 菜 か ら基 準 値 以 上 の 放 射 能 が 検 出 され,実 際 に放 射線 が 漏 れ て い た こ とで 野 菜 の 出 荷 が 緊 急 停 止 され る事 態 とな り,い

くら農 産 物 を 作 って も売 れ な い事 態 に陥 り,今 後,国 産 野 菜 の 生 産 が 激 減 し,食 料 自給 率 が さ ら に低 下 す る こ とが考 え られ る。

この様 な 有事 を 抱 え る状 態 にな り,国 民 の 関 心 が 農 業 に多 く集 ま りつ つ あ り,国 を あ げ て農 業 を 活性 化 させ よ う とす る動 き もあ る。 また,農 地 法 改 正 に よ り耕 作 放 棄 地 な どの ま だ農 業 に使 え る土 地 の 有効 活 用 も可 能 とな りつ つ あ り,今 後 日本 の 農 業 が 大 き く変 わ るで あ ろ う と予想 され る。 そ して,日 本 の 食 糧 自給 率 の 向 上 は食 糧 の 安 定 供 給 につ な が り,今 後 予 想 され る地 球 規模 で の 食 糧 難 に も対 応 で き る と考 え る。 また,中 国 産 に代 表 され る輸 入 食 品 の安 全 問題 も 日本 の 食 糧 自給 率 の 上 昇 に よ って,汚 染 食 品 の リス クを 軽 減 す る こ と が で き,安 全 性 の 向上 につ な が るの で はな いか と思 わ れ る。

食料 自給 率 の 低 下 は 非 常事 態 で あ る と認 識 し,国 内 産 業 と して の 農 業 振 興 を 訴 え,自 国 の 食 糧 自給 率 を上 げ る こ とが 食 料 安 全 保 障 に繋 が る とす る先 行 研 究 は多 く,ワ ドキ ン ズ (1998),財 部(2008),西 川(2008),山 本 ら(2008),農 政 ジ ャー ナ リス トの 会(2009)と 枚 挙 に問 わ な い。 また 中 国 産 農 産 物 に関 す る残 留 農 薬 の 問 題,水 資 源 を 中心 とす る環 境 問

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題 の現 状 を伝 え る研 究 も近 年 非 常 に多 く,大 島(2003年a,b),井 村(2007),陳(2007) 等,多 数 の研 究 が あ る。

そ こで,本 研 究 にお い て は,日 本 国 内 で 騒 が れ て い る 中国 産 食 品,中 国 の 農 業 の 問 題 を 取 り上 げ,不 安 要 素 を 検 証 す る と と もに,日 本 の 農 業 の 課 題 につ いて も検 証 す る。そ して, 今 後 日本 人 が 中 国産 よ り 日本 産 を 選 ん で 食 べ る こ と に よ り,日 本 産 の 農 産 物 消 費 量 が 上 昇

し,日 本 の 食 糧 自給率 が上 昇 す るの か,さ ら に は,そ の 結 果,中 国 産 食 品 の 安 全 性 の リス クが軽 減 し,安 全性 の 向上 に繋 が るの か を 検 証 す る。

本 稿 の構 成 は 以 下 の 通 りで あ る。 第1章 現 在 の 日本 の 食 糧 自給 率 と農 林 水 産 物 の 輸 入 状 況 で は,日 本 の 食 糧 自給 率 が 極 め て 低 く,そ れ を 補 うた め に他 国 へ 依 存 して い る現 状 を 考 察 す る。 第2章 中 国 にお け る農 業 の 問 題 点 で は,中 国 農 業 にお け る現 状 とそ の 問 題 点 を考 察 し,第3章 日本 の 課題 で は,日 本 が現 状 抱 え て い る農 業 の 課 題 につ いて 述 べ,今 後 日本 の 食料 自給 率 が 向上 す る望 み はな い の か を 考 察 し,お わ りにお いて 総 括 す る。

1.現 在の 日本の食糧 自給率 と農林水産物 の輸入状況

日 本 の 農 業 総 算 出 額 は,1984年 の11.7兆 円 を ピ ー ク と し て,1990年 度 の11.5兆 円 を 例 外 と し て 年 々下 が り,2011年 度 は8.1兆 円 に 下 が っ て い る。 反 対 に,農 産 物 の 輸 入 は 年 々 増 加 し,2008年 度 に6兆 円 に達 した 。 そ の 後,2009年 度 は リー マ ン シ ョ ッ ク の 影 響 や 輸 入 食 材 の 農 薬 問 題 等 に よ り,4.6兆 円 に 減 少 した 。 しか し,前 述 の 東 日本 大 震 災 の 影 響 に よ り,東 北 地 方 の 農 産 物 の 生 産 が 激 減 した こ と,さ ら に は,東 北 地 方 の 放 射 能 汚 染 に よ る 風 評 被 害

に よ り,国 産 の 農 産 物 の 消 費 が 減 少 し,牛 肉 を 中 心 と す る 輸 入 食 材 が 増 加 し,2011年 度 は 約5.6兆 円 に 増 加 し て い る(2)。

農 林 水 産 省 の デ ー タ(3)によ る と 日 本 の 農 産 物 輸 入 額 に つ い て,輸 入 相 手 国 ・地 域 別 割 合 を み る と,米 国27%,ASEAN15%,EU15%,中 国11%,オ ー ス トラ リ ア8%,カ ナ ダ6%の 上 位6つ の 国 ・地 域 で80%を 占 あ て い る 。 輸 入 農 産 物 の 中 心 は,重 量 で は 大 豆,小 麦,大 豆 の 穀 物 と 牛 肉 が 目立 つ が,金 額 べ 一 ス で は 加 工 食 品 が 輸 入 の 約40%を 占 め て い る 。 加 工 品 に つ い て は,1980年 か ら2005年 に か け て,食 用 調 整 品 の 伸 び が 大 き くな っ て お り,そ 後 は,大 豆 や 菜 種 等 の 油 糧 種 子,油 脂 類 等 の 伸 び が 大 き く な って い る 。 ま た,今 ま で100%

(2)2011年 度 の 農 林 水 産 物 の 輸 入 は,農 産 物5兆5,842億 円,林 産 物1兆264億 円,水 産 物1兆4,547 億 円 の 合 計8兆652億 円 で あ っ た 。

(3)農 林 水 産 省 『食 糧 ・農 業 ・農 村 白 書 〜 新 た な る 農 政 へ の 大 転 換 〜 平 成23年 版 』,2011年, 85頁 。

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食 糧 自給 率 と安 全 性 は比 例 す るの か?(勝 旧 ・服 部 ・荒 河)

自給 し て い た 野 菜 類 は,2010年 度 に お い て は,20%が 輸 入 と な っ て い る 。果 実 に つ い て は, 日本 原 産 で な い 珍 し い 果 物 の 輸 入 が 一 貫 して 増 え て い る 。 そ の 結 果,日 本 の 食 糧 自 給 率 は カ ロ リー べ 一 ス で 欧 米 先 進 国 と は 比 較 に な ら な い,わ ず か39%(2010年 度)と 極 め て 低 く, 海 外 か ら大 量 の 農 産 物 を 輸 入 す る 飽 食 の 国 と な っ て い る(4)。

か つ て は,日 本 も80%以 上 の 高 い 食 糧 自 給 率 を 誇 っ て い た 。 しか し,欧 米 の 食 文 化 を 取 り入 れ る に つ れ 食 糧 自 給 率 は 下 が り始 め,カ ロ リー べ 一 ス で み る と1961年 の78%か ら半 減 し2006年 度 に は40%を 割 り込 み,約39%に 下 が っ た(5)。そ の 後,持 ち 直 し,2007年 度40%, 2008年 度 は41%と 持 ち 直 し た が,2010年 度 は39%で あ る 。 他 の 先 進 国 に お け る 状 況 は,表1 の 通 り で あ る。

日 本 は 島 国 で あ り農 業 に 適 した 平 野 部 が 少 な い と い う 国 土 的 な 問 題 も あ る が,そ れ を 考 慮 し て も低 い 数 字 で あ る。 そ して,そ の 低 い 自 給 率 を 補 う た め に 日 本 は 多 くの 農 産 物 を 輸 入 し て お り,特 に ア メ リカ と 中 国 に 対 す る 依 存 度 が 高 い 。 表2,図1か ら 見 て と れ る よ う に,2008年 度 の 農 林 水 産 物 輸 入 相 手 国 で 金 額 べ 一 ス で は ア メ リ カ が 第1位 で あ り,第2位 中 国 で あ る。 そ し て 両 国 と も に 林 ・水 産 物 に 比 べ て 農 産 物 の 割 合 が 非 常 に 大 き い 。 ア メ リ カ か ら の 輸 入 は,ト ウ モ ロ コ シ(6)や小 麦 な ど の 穀 物 お よ び タ バ コ な ど が 上 位 を 占 め て い る が,中 国 か ら の 輸 入 で は,1位 こ そ 鶏 肉 調 製 品 で あ る が,野 菜 と い う 括 りで み る と,野

(4)食 糧 自給 率 の計 算 方 法 は,重 量 ベ ー ス,カ ロ リー ベ ー ス と生 産額 ベ ー ス の3種 類 あ る。

重 量 ベ ー ス 自給率 」 とは,国 内生 産 量,輸 入 量 な ど,そ の 食 料 の 重 さそ の もの を 用 いて 計 算 し た 自給率 の 値 で あ る。(食 料 の重 さ は,米,野 菜,魚 と種 類 に よ り異 な る た め,単 純 比 較 しか で き な い。)

「カ ロ リー ベ ー ス 自給率(カ ロ リー ベ ー ス総 合 食料 自給 率)」 は,そ の 食 料 に含 まれ る カ ロ リー を用 い て 計 算 した 値 を い う。 こ こで,カ ロ リーベ ー ス 自給 率 の場 合,畜 産 物 に は,そ れ ぞ れ の 飼 料 自給率 が か け られ て 計 算 され る こ と に注 意 が 必 要 で あ る。 日本 の カ ロ リーベ ー ス 自給 率 は, 2008年 度 概 算 値 で41%で あ る。 しか し,分 母 の実 際 の意 味 合 い を考 え る と,厚 生 労 働 省 の 摂 取 熱 量 を 使 う方 が正 確 で あ り,こ の 場 合 の 自給 率 は,54.3%に な る。 な お2010年 の カ ロ リー ベ ー ス 自

給率 は39%で あ る。

生 産額 ベ ー ス 自給 率(生 産 額 べ 一 ス総 合 食 料 自給 率)」 は,カ ロ リー の代 わ りに,価 格 を 用 い て 計 算 した 値 を い う。比 較 的低 カ ロ リー で あ る もの の,健 康 を維 持,増 進 す る上 で 重 要 な 役 割 を 果 た す野 菜 や くだ もの な どの 生 産 等 が よ り的 確 に反 映 され る と い う特 徴 を もつ 。 日本 の 生 産 額 べ 一 ス 総合 食 料 自給 率 は2008年 度 概 算 値 で70%で あ る。

自給 率 の 計 算式 は以 下 の 通 り。

重量 べ 一 ス の 自給率=国 内 の 生 産量(重 量 べ 一 ス)÷ 国 内 の 消 費 量(重 量 べ 一 ス) 1人旧 あたり国産供給カロリー 個 内+輸 出)供給カロ リー/人ロ カロリーベース自給率==

1人1日あたり供給カロリー(国 内+輸入二輸出)供給カロリー/人口

生 産 額 ベ ー ス の 自給 率=国 内 の 食 料 総 生 産 額 ÷国 内 で 消 費 す る食 料 の 総 生 産 額

(生産 額=価 格 ×生産 量 で 個 別 の 品 目の 生 産 額 を 算 出 し,合 計 して 一 国 の 食 料 生 産 額 を求 め る。) (5)厚 生 労 働 省 の摂 取 熱 量 を使 え ば,54%で あ る。

(6)ト ウ モ ロ コ シ お よ び大 豆 は そ の輸 入 量 の80%以 上 が,牛,豚,鶏 の 飼 料 と して 輸 入 され て い る こ とか ら,こ の輸 入 飼 料 を与 え て育 て た家 畜 は,国 産 で は な く,輸 入 品 に カ ウ ン トされ る こ とか ら,食 糧 自給率 を下 げ る原 因 と もな って い る。

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の 輸 入 量 が 鶏 肉 調 製 品 の 約2倍 あ る 。 つ ま り,野 菜 の 多 く を 中 国 の 冷 凍 ・乾 燥 ・生 鮮 野 菜 を 輸 入 す る こ と に よ り 賄 っ て い る こ と が う か が え る 。

表1主 要 先 進 国 の 食 糧 自 給 率(カ ロ リー ベ ー ス)の 推 移(試 算) (単位:%)

国名/年 1961 1971 1981 1985 1990 1995 2003 2007

オ ー ス ト ラ リ ア 204 211 256 242 233 261 237 173

カ ナ ダ 102 134 171 176 187 163 145 168

フ ラ ン ス 99 114 137 135 142 131 122 111

ドイ ツ 67 73 80 85 93 88 84 80

イ タ リ ア 90 82 83 77 72 77 62 63

オ ラ ンダ 67 70 83 73 78 72 58 75

ス ペ イ ン 93 100 86 95 96 73 89 82

ス ウ ェ ー デ ン 90 88 95 98 113 79 84 78

ス イ ス 51 49 56 60 62 59 49 54

英 国 42 50 66 72 75 76 70 65

ア メ リ カ 119 118 162 142 129 129 128 124

78 58 52 53 48 43 40 40

韓 国 63 51 46 44

出 典:農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジhttp://wwwmaffgo.jp/j/zyukyu/fbs/index.html

日 本 の 野 菜 類 の 自給 率 は,1980年 以 前 は100%で あ っ た も の が,1985年 に カ ロ リ ー べ 一 ス で96%,2008年 に は82%に 減 少 し て い る 。 野 菜 の 国 内 生 産 額 は2010年 度,金 額 べ 一 ス で2兆 2,485億 円 で あ り,輸 入 野 菜 は,3,451億 円(7)であ る 。 現 在 も依 然 と し て,輸 入 野 菜 の 約 半 分 を 中 国 一 国 に頼 っ て お り,2位 の ア メ リ カ の 約3倍 の 量 を 輸 入 して い る(8)。

中 国 産 輸 入 野 菜 の 問 題 が 多 数 報 告 さ れ て 以 来,ス ー パ ー や 百 貨 店 等 の 小 売 店 で は ほ と ん ど 見 ら れ な くな っ て い る が,こ れ ら の 輸 入 野 菜 は,主 に 外 食 産 業 で 料 理 の メ ニ ュ ー と して 使 わ れ る か,あ る い は 加 工 食 品 の 原 材 料 と して 依 然 と して 使 用 さ れ て お り,中 国 の 農 薬 問

(7)リ ー マ ン シ ョ ッ ク の 発 生 し た2008年 の 通 貨 レ ー トは,年 平 均 で1ド ル112円 で あ っ た も の が, 2011年 に は1ド ル80円 に 上 昇 し た た め,穀 物 を 中 心 と して 農 産 物 の 価 格 が 海 外 で 上 昇 した に も か か わ ら ず,輸 入 金 額 ベ ー ス で み る と2008年 の 約5000億 円 か ら2010年 度 は 約3,500億 円 弱 と な っ て い る 。

(8)輸 入 野 菜 は,ス ー パ ー や 小 売 店 の 店 先 で 多 く販 売 さ れ て い る の で は な く,主 に 加 工 食 品 の 材 料 と し て,あ る い は フ ァ ミ リ ー レ ス トラ ン等 の 業 務 用 と し て 輸 入 さ れ て い る 。 そ こ で,一 般 に は 輸 入 野 菜 が 多 く輸 入 さ れ て い る こ と に 気 づ か な い 状 態 と な っ て い る 。

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食 糧 自給 率 と安 全 性 は比 例 す るの か?(勝 旧 ・服 部 ・荒 河)

題 は 日本 の 食 糧 問題 に依 然 と して,直 結 して い る と考 え られ る。 消 費 者 が 直 接 購 入 す る, 百 貨 店,ス ー パ ー あ るい は 八百 屋 等 の 小 売 店 で は,ほ とん ど 出回 って いな いた め,見 た 目

には輸 入 野 菜 が 大 幅 に減 少 して い る よ う に写 るた め,輸 入 野 菜 の 実 態 が わ か りづ ら くな っ て い る。 見方 を変 え れ ば,野 菜 は,ス ー パ ー 等 の 小 売 業 にお いて,消 費 者 の 最 も よ く見 え る と こ ろ にあ った 食 材 で あ るだ け に,輸 入 後 の 行 方 は も っ と も気 にな る と こ ろで も あ る。

日本 国 内 で は 中 国 産毒 入 り冷 凍 鮫 子事 件 や 乳 幼 児 用 の 粉 ミル クへ の メ ラ ミン混 入 事 件 な ど,中 国産 食 品 に よ る人 的 被 害 の 報 道 が 多 くな され た 。 い まの と こ ろ,こ れ らの 問 題 の あ る食 品 が 日本 に入 って くる例 は ご くわ ず か で あ るが,中 国 国 内 にお け る 同様 の 食 材 汚 染 に よ る被害 状 況 は か な りの 数 に及 ん で い る と報 道 され て い る。 中国 で 汚 染 され た 農 産 物 の 量 が増 え るの に比 例 して,汚 染 され た 農 産 物 が 日本 に入 って くる確 率 が 高 くな るの は必 定 で あ る。

これ らの 汚染 され た 食 材 を 水 際 で止 め るた め,日 本 で は 中国 か ら入 って くる農 産 物 の 残 留農 薬 検 査 を行 って い る。 しか し,日 本 の 検 査 方 法 は 「サ ン プル 調 査 」 で あ り,輸 入 農 産 物 の 中 か ら一 部 を サ ン プル と して 抽 出 検 査 して い る に過 ぎな い。そ こで,検 査 を 受 けず に, 汚染 され た 野 菜 が そ の ま ま 日本 国 内 に入 って くる可 能 性 は十 分 に あ る。 これ を 防 ぐた め に は 「全 量 調 査 」 が最 も望 ま しい が,そ れ を 日本 国 内 で 行 うの は数 量,時 間,人 員 的 に非 常 に難 しい。 つ ま り,日 本 の 食 生 活 を よ り安 全 にす るた め に は,輸 入 元 で あ る 中国 に お いて 早 期 に国 内 の農 業 問題 を解 決 して も らい,日 本 も食 糧 自給 率 を 上 げ る必 要 が あ るの で は な い だ ろ うか(9)。

表2農 林水産物の主な輸入相手国 ・地域(2008年 度)

区 分 1位 2位 3位 4位 5位

農 林 水産 物

21,940(25.2)

9,771(11.2)

6,479(7.4)

6,177(7.1)

5,049(5.8)

農 産 物

19,435(32.5)

5,577(9.3)

4,787(8.0)

4,435(7.4)

3,741(6.3)

林 産 物

1,561(13.5)

マ レ ー シ ァ 1,493(12.9)

1,267(11.0)

1,216(10.5)

921(8.0)

水 産 物

2,633(16.8)

1,584(10.1)

1,324(8.4)

1,158(7.4)

1,087(6.9) 注:()は,金 額 ベ ー ス の 構 成 比(%)で あ る 。 単 位 は 億 円 で あ る 。

出 典:農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジ

http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/yusyutugai2008/yusyutugai2008.pdf

(9)2008年 度 よ り,中 国 に お い て は,日 本 との 間 で 農 産 物 に使 用 され る農 薬 の 種 類 お よ び残 存 農 薬 量 に つ い て 協議 が な され,徐 々 に残 留 農 薬 は減 少 す る傾 向 に あ る。 ま た,粉 ミル クへ の メ ラ ミ ン

の残 留 問題 の発 生 に よ り,中 国 か らの 加 工 食 品 に対 す る検 査 が 新 た に定 め られ た。

(8)

出 典:農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジ

http://www.maff。go.jp/toukei/sokuhou/data/yusyutugai2008/yusyutugai2008。pdf 図1農 林 水 産 物 の 主 な 輸 入 相 手 国 ・地 域 と 輸 入 金 額(2008年 度)

2.中 国 に お け る 農 業 の 問 題 点

(1)中 国 の戸 籍 制 度

中 国 の農 民 は,戸 籍 制度 に よ り他 の 職 業 へ の 就 業 や 都 会 へ の 転 出お よ び都 会 で の 就 業 等 の 多 くの 点 で 制 限 を 受 け,差 別 され て き た。 山 田(2009)に よ る と,中 国 に は 「農 村 戸 籍 」

と 「都 市 戸 籍 」 の2種 類 が 存 在 し,「 農 村 戸 籍 」 の 農 民 は,転 職 教 育,医 療,年 金,結 婚 な どあ らゆ る面 で 「都 市 戸 籍」 の 住 民 と差 別 され,農 業 に対 す る意 欲 を 失 いつ つ あ る。 都 市 住 民 にな れ ば 収 入 も大 幅 に増 加 し,差 別 もな くな るた あ,自 分 の 子 供 に農 業 を 継 が せ た

くな い と考 え る農 民 が 増 え 始 め て お り,後 継 者 不 足 問 題 に直 面 しつ つ あ る。

この よ うな 戸 籍 制度 の 背景 に は中 華 人 民 共 和 国 建 国 当 初,沿 岸 の 大 都 市 で 工 業 化 を 推 進 した こ とで,多 くの農 村 出 身者 が 都 市 に移 動 した こ と に あ る。 北 京 で は,1945年 の203万 人 か ら,1955年 には320万 人 へ と急 激 に増 大 し,交 通 渋 滞,住 宅 不 足,さ ら に食 糧 不 足 が 深 刻 で あ った。 そ の た め,戸 籍 管理 を 徹 底 した 上 で,農 村 か ら都 市 へ の 人 口の 流 入 を 抑 制 して きた。 現 在 は 戸 籍 制度 の 見 直 しが 進 め られ つ つ あ り,山 東 省 な ど一 部 で は農 村 戸 籍 を 事 実 上 廃 止 し,「都 市 戸 籍 」 と共 通 の 「居 民 戸 籍 制度 」 を 検 討 す る地 域 も現 れ て い る。 しか

一284(682)一

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食糧 自給率 と安全性 は比例す るのか?(勝 旧 ・服部 ・荒河)

し,農 民 の移 住 を 制 限 す る戸 籍 制 度 が な くな る と,多 くの 農 民 が す で に人 で 溢 れ か え って い る都 会 に さ ら に押 し寄 せ るの で はな い か,と い う懸 念 か ら戸 籍 制 度 の 見 直 しは あ ま り進 ん で い な か った。 そ して,北 京 や 上 海 な どの 大 都 会 へ の 流 入 を 防 ぐた め,近 年 は北 京 や 上 海 の手 前 の 中 間 都 市 まで は 農 民 を 進 入 させ,定 住 を 許 し,大 都 会 に は入 れ な い方 針 を 採 り 始 あ て い る。

(2)農 業 竜 頭 企 業 につ い て

農 業 竜 頭企 業 とは,ま ず企 業 が 農 民 か ら農 地 の 使 用 権 を 買 い あ さ り,農 地 を 囲 い込 み, 農 地 の使 用 権 を 持 た な い 農 民 を 末 端 の 労 働 者 と して 雇 用 す る仕 組 み で あ る。 山 田(2009)

に よ る と,農 地 の使 用 権 を 譲 渡 し,農 地 の 使 用 権 を 失 った 農 民 は肥 料,農 薬,苗 栽 培 方 法 な どす べ て を企 業 が派 遣 す る指 導 員 の 指 示 に従 い,本 人 は以 前 の 自分 の 農 地 で 農 作 業 を す る こ と とな る。 そ の 結 果,農 民 は企 業 の 「雇 わ れ 農 民 」 とな り,農 民 は 中国 語 で 労 働 者 を 意 味 す る 「工 人 」 と呼 ば れ る存 在 とな る。 そ して 雇 わ れ 農 民 の 収 入 は,農 業 竜 頭 企 業 か ら 支 払 わ れ る一 定 の安 い賃 金 だ けで あ る。 そ して 多 くの 竜 頭 企 業 は外 資 と組 み,食 品 加 工, 輸 出 な ど多 角 的 に経 営 を広 げ な が ら,膨 大 な 利 益 を 得 て い る。

2001年 に中 国 で は,農 業 産 業 化 政 策 が 始 動 し,「農 業 企 業 の育 成 」 「農 民 の 市 民 化 」 な ど の農 業 の大 転 換 が あ った。 中 国 政 府 が 目指 した の は農 業 の 効 率 化 で あ り,そ の た め に農 民 を農 業 労 働者 化 して小 規模 農 家 の 数 を 減 らそ う と した 。 農 民 の 市 民 化 で,農 民 に農 業 労 働 者 化 を促 す一 方 で,農 民 を 農 村 戸 籍 の ま ま都 市 に移 住 させ る こ と も行 った 。 都 市 に移 住 さ せ る際 に,農 民 は農 地 の使 用 権 を 失 う こ と にな り,一 方,都 市 に移 住 した と して も農 村 戸 籍 で あ る彼 らは 都 市 で は差 別 を う け る こ と とな り,市 民 化 と い うイ メー ジ と はか け離 れ た 生 活 を送 る こ と とな る。 つ ま り政 府 は農 業 産 業 化 政 策 に よ り,農 村 にす む 農 民 の 一 部 を 半 強 制 的 に農 村 か ら都 市 に移 住 させ,農 業 竜 頭 企 業 で 働 く労 働 力 に転 化 しよ う と したの で あ

る。 現 在,中 国 には 約4万 社 もの農 業 竜 頭 企 業 が存 在 す る とい わ れ て い る。

農 業 竜 頭 企業 の ほ とん ど は,体 質 的 な 欠 陥 が あ る と い わ れ て い る(10)。中国 人 は徹 底 した 個 人主 義 で あ り,あ ま り に も愛 社 精 神 が 希 薄 な た め,会 社 の 社 会 的 な 信 用 を 得 る こ との 重 要性 を鑑 み る こ とが な く,そ れ が 企 業 社 会 に蔓 延 す る無 責 任 体 質 へ とつ な が り,会 社 が 不 正 を行 った と して も ほ とん どが 見 過 ご され て しま う体 質 が あ る と いわ れ て い る。 ま た,農 地 と人 との つ な が り に も問 題 点 が あ る と いえ る。 農 業 竜 頭 企 業 に雇 わ れ て い る農 民 は,農

(10)山 田(2009)に よ る と,メ ラ ミン混 入 事 件 を 起 こ した 三 鹿 集 団 は,中 国 で は 有 名 な 農 業 竜 頭 企 業 の一 つ で あ る。

(10)

地 に もそ こで作 られ た農 産 物 に も愛 着 を 持 つ こ とが で きず,目 先 の 利 益 を 追 い求 め不 正 行 為 を 働 い て し ま う とい わ れ て い る。 これ ら農 業 竜 頭 企 業 が もた ら した もの は,農 業 の 効 率 化 と と も に食 品 の安 全性 に対 す る不 安 で あ る。 実 際 中国 国 内 で 多 くの 人 々が,こ れ らの 企 業 が製 造 した 食 品 に よ り,多 大 な 健 康 被 害 を 被 って い る と いわ れ て い る。

(3)農 薬 問 題 につ い て

中 国 か らの輸 入 食 品 か ら 日本 の 基 準 を は るか に上 回 る残 留 農 薬 な どが 検 出 され た と い う 報 道 が,多 数 され て きた。2002年 に は冷 凍 ホ ウ レ ン草 か ら ク ロル ピ リホ ス,2008年 に は冷 凍 鮫 子 か ら メ タ ミ ドホス,冷 凍 野 菜 か ら ジ ク ロル ボ スな どが 検 出 され た 。 厚 生 労 働 省 は, 事 前 通 告 を行 った 後,2002年1月 に 「中国 産 野 菜 検 査 強 化 月 間 」 を 設 けて,100%モ ニ タ リ

ン グ検 査 を 行 った が,生 鮮 大 葉 や 冷 凍 ・生 鮮 ニ ラ,生 鮮 ブ ロ ッコ リー な ど に9件 に基 準 値 を超 え る フ ェ ンバ レ レー トや ク ロル ピ リホ ス,メ タ ミ ドホ スが 検 出 され た 。 また,農 村 地 域 の農 民 た ち 自身 が 食 べ る野 菜 に は農 薬 を 全 く使 わ ず,都 市 に 出荷 す る野 菜 だ け劇 毒 農 薬 を大 量 に使 用 して い た事 件 もあ る。

厚生 労 働 省 の 公 表 に よれ ば,2006年 か ら2007年 まで に 日本 が 中国 か ら輸 入 した 野 菜 の う ち,未 成 熟 サ ヤ エ ン ドウ,冷 凍 混 合 野 菜,キ ャベ ツ,ブ ナ シ メ ジ,乾 燥 キ ク ラゲ,乾 燥 ヨ モ ギ な どか ら農 薬 ク ロル ピ リホ スが 検 出 され,新 鮮 な 生 姜,チ ンゲ ンサ イ,大 粒 落 花 生 な どか らは殺 虫 剤BHCが 検 出 され た こ とが あ った 。 中国 か らの 農 作 物 の 輸 入 は毎 年 膨 大 な 量 にな るが,す べ て の 食 品 を 検 査 す る こ と は難 し く,問 題 の あ る農 産 物 の 発 見 に は限 界 が あ る。 また,山 田(2003)あ るい は陳(2008)の 調 査 にお いて は,中 国 政 府 も 日本 政 府 も 農 作 物 の安 全 に対 して 力 を 入 れ て お り,輸 入 す る農 作 物 は両 国 で 検 査 を 行 って い る。 それ

に もか か わ らず,問 題 の 農 作 物 はた びた び発 見 され る こ とか ら も,中 国 農 産 物 の トレー サ ビ リテ ィー を 含 む,生 産 管理 の 難 しさの 一 端 が うか が え る と いえ る。

(4)中 国 の環 境 汚 染 につ い て a.土 壌 環 境

中 国 の 国土 を 断 面 的 に見 て み る と,そ の ほ とん どが 急 斜 面 で あ り,植 物 を 生 産 で き る農 地 は沿 岸 部 の一 部 だ けで あ る。 また,現 在 中国 で は急 速 に砂 漠 化 が す す ん で お り,作 付 け 可能 面 積 の 減 少 が 懸念 され て い る。農 家 一 戸 当 た りの 耕 地 面 積 は,日 本 の 約1.9haに 対 し, 中 国 は0.67haし か な い。 中 国 の 農 家 は 日本 の 約1/3程 度 の 農 地 しか 耕 して い な い こ と に な

り,こ の こ とは耕 作 面 積 の 割 に農 民 の 数 が 多 す ぎ る こ とを 表 して い る。

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食糧 自給率 と安全性 は比例す るのか?(勝 旧 ・服部 ・荒河)

膨 大 な人 口を 抱 え る中 国 で は,国 民 の 食 を 支 え るた あ,さ ら に は急 激 な 経 済 成 長 に よ る 国 内 外 の市 場 の 要 求 に こた え るた め,大 量 の化 学 肥 料 を使 用 し,農 業 生 産 を 急 拡 大 させ た。

しか し,化 学肥 料 の 大量 使 用 は土 を 痩 せ させ,地 下 水 を 汚 染 させ る こ と にな る。 加 え て, 前 記 の ご と く農 薬 の大 量 使 用 も行 わ れ て い る こ とか ら,中 国 の 土 壌 汚 染 は急 速 に進 ん で い

る と考 え られ る。 土 壌 汚 染 の 結 果,発 育 が 悪 い農 作 物 が 育 って しま う。 そ れ を 見 て 中国 の 農 民 は余 計 に多 くの 化 学 肥 料 と農 薬 を 使 用 し,そ れ が さ らな る土 壌 汚 染 につ な が る と い う 負 の連 鎖 が現 在 の 中 国 で は お こ って い る。

b.水 環 境

中 国 の 北部 で は 雨 が 少 な く,「溜 池 」が よ くみ られ る。 この 溜 池 は家 庭 の 生 活 雑 排 水 が 無 処理 で 溜 め られ て い くた め,悪 臭 を 漂 わ せ て お り,さ ら に,こ の 溜 池 に は ポ ン プが 備 え 付 け られ て お り,そ の水 を 汲 み 上 げ,そ こか ら ホー スを 利 用 して 田畑 に行 きつ くの で あ る。

汚染 され た水 で も植物 は育 つ が,そ の 汚 染 され た 水 で 育 った 農 作 物 が 人 間 の 体 内 に悪 影 響 を与 え るの は 明 白で あ る。

また,中 国 国 内 で は工 業 廃 水 が 原 因 と して,水 が 変 色 して い る川 が 多 発 して い る。 しか し,そ の 原 因 と され る工 場 を 汚 染 源 と して 取 り締 ま った り,法 的 な 責 任 を 追 及 した りす る の は難 しい。 これ らの工 場 は,省 や 市 な ど地 方 行 政 の 有 力 な 財 源 で あ るた め,経 済 力 が 弱 い地 方 の行 政 で は,汚 染 源 とな って い る工 場 が 事 実 上 野 放 しにな りや す い。 これ らの 工 場 で は,検 査 や 取 材 が あ る と きだ け汚 染 を 止 め た り薄 め た り して い る。 検 査 の 時 に問 題 が な けれ ば,汚 染 対策 を し っか り して い る模 範 的 工 場 にな って い る。 工 場 が 汚 染 対 策 を しよ う とは思 わ な い 限 り,汚 染 は 解 決 しな い で あ ろ う。 この よ う に家 庭 か ら も企 業 か ら も垂 れ 流 し に され て い る排 水 に よ って,中 国 の 水 資 源 は ひ ど く汚 染 され て い る。 この よ うな 水 で 栽 培 され た農 作 物 が 日本 に輸 入 され,日 本 国 内 に出 回 って い るの は非 常 に脅 威 で あ る。

3.日 本 の 課 題

(1)日 本 の 食 糧 自 給 率

な ぜ,日 本 の 自給 率 は こ ん な に 低 下 して し ま っ た の で あ ろ う か 。 前 掲 の 農 林 水 産 省 の デ ー タ に よ る と,1965年 か ら1998年 の 間 に カ ロ リ ー 自給 率 が33%下 が っ た が,そ の う ち の21%

は,主 に 食 生 活 面 の 変 化 に よ る 要 因 で あ り,残 り の12%が 生 産 面 の 要 因 と し て い る 。 確 か に 日本 人 の 食 生 活 は 大 き く変 化 して い る 。 第 二 次 世 界 大 戦 後,日 本 人 が 最 も 多 く米 を 消 費

(12)

し て い た1962年 に は,1人 当 た り1年 間 に118.3kgを 消 費 して い た 。 しか し,1970年 に は 95.1kgに ま で 落 ち 込 こ み,さ ら に2008年 に は61kgに 減 少 し,2010年 に は,60kgを 割 り 59.5kgに 減 少 し た(11)。

つ ま り 高 度 経 済 成 長 に よ り 国 民 の 生 活 水 準 が 上 が る と と も に 日 本 人 の 食 生 活 は,従 来 の 米 飯 を 中 心 と す る 食 生 活 か ら 畜 産 物 や 油 脂 類 を 多 く摂 取 す る 欧 米 型 の 食 生 活 へ と 変 化 して き た の で あ る。 し か し,国 内 で は 廉 価 で 十 分 な 量 の 畜 産 物 ・油 脂 類 を 供 給 す る こ と が で き ず,そ れ ら の 多 くを 輸 入 に 依 存 す る こ と と な り食 糧 自 給 率 を 低 下 さ せ る 原 因 と な っ た 。 加 え て,生 産 物 そ の も の の 輸 入 だ け で な く,畜 産 物 の た め に 大 量 の 飼 料 作 物 も 輸 入 に 依 存 し て い る こ と も,自 給 率 の 低 下 に つ な が っ て い る 。 さ ら に,少 子 高 齢 化 に よ り国 民1人 あ た り の 摂 取 熱 量 も1970年 の2210kcalか ら2008年 に は1867kcalに 減 少 し て お り,市 場 そ の も の も縮 小 傾 向 に あ る(12)。

日 本 人 が も っ と た く さ ん の 米 を 消 費 す れ ば,自 給 率 を 上 げ る こ と は 可 能 と考 え ら れ る が, し か し,80パ ー セ ン ト近 い 自 給 率 に 急 速 に 戻 る こ と は 不 可 能 で あ る と 考 え る 。 な ぜ な ら, 自給 率 低 下 の 主 要 因 は,食 生 活 が 畜 産 物 ・油 脂 類 を 多 く摂 取 す る 生 活 へ と 食 生 活 事 態 が 変 化 し た こ と に 基 づ く も の で あ る か ら で あ る 。 米 中 心 の 食 生 活 か ら 欧 米 の よ う な 小 麦 中 心 の 食 生 活 へ と変 化 し た の で あ れ ば,単 純 に 米 を 多 く消 費 す れ ば 大 幅 に 自 給 率 が 増 加 す る こ と

も考 え ら れ る。

し か し,自 給 率 低 下 の 原 因 は,こ れ ま で 米 か ら 多 く摂 取 して い た カ ロ リー(栄 養 分)を 畜 産 物 な ど か ら も 摂 取 す る よ う に な っ た こ と で あ り,食 生 活 の 多 様 化 が 原 因 と な っ て い る か ら で あ る。 過 去 に イ ギ リ ス が40%を 切 る ほ ど の 自給 率 で あ っ た が,現 在 は70%に ま で 上 昇 さ せ た と い う 例 が あ る が,こ の 要 因 はEUに 加 盟 して 農 業 へ の 支 援 策 が 充 実 し た こ と に あ る が,も う一 つ の 要 因 と し て,日 本 と違 い,ほ と ん ど 食 生 活 の 変 化 が な か っ た こ と も 挙 げ ら れ る の で あ る。

池 戸(2007),藤 岡 ら(2007)や 相 川(2008)の 考 え に よ れ ば,日 本 人 が お 米 を も っ と 多 く消 費 す る こ と は,農 業 の 活 性 化 や 水 田 の 保 全,も っ と 大 き く考 え れ ば,二 酸 化 炭 素 排 出 量 の 削 減 や,水 田 の 洪 水 防 止 効 果 な ど の 保 水 効 果 よ り国 土 の 保 全 に も つ な が る 。 ま た,環 境 問 題 と し て 考 え る な ら ば,生 物 多 様 性 の 確 保 に も な り,日 本 国 民 の 子 孫 に よ り よ い 環 境 を 残 す こ と に な り,日 本 の 為 に も 大 切 で あ る と 考 え ら れ る 。

(11)食 糧 管 理 制 度 の 廃 止 に と も な い,コ メ は 全 量 を 政 府 の 買 い 上 げ か ら,農 民 が 自 主 的 に 販 売 で き る よ う に な り,農 家 が 自主 的 に 販 売 し た コ メ は 統 計 上 の 対 象 と な っ て い な い 場 合 が 相 当 数 量 存 在 す る た め,見 か け 上 の 消 費 量 の 数 字 と 現 実 の 数 字 に は か な り の 差 が 存 在 す る と 考 え ら れ る 。 (12)厚 生 労 働 省 「国 民 健 康 ・栄 養 調 査 」

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou̲eiyou̲chousa.html 288(686)

(13)

食糧 自給率 と安全性 は比例す るのか?(勝 旧 ・服部 ・荒河)

しか し,米 の 消 費量 を 増 や し,少 しば か り自給 率 を 上 げた だ けで は,食 糧 自給 率 の 改 善 の本 質 的 な解 決策 には な らな い の で はな いだ ろ うか 。 問 題 は,お 米 よ りもむ しろ副 菜 つ ま りお か ず とな る野 菜類 で あ る。 現 在,輸 入 野 菜 の 半 数 以 上 を 中国 か らの 輸 入 に頼 って い る が,前 述 の ご と く,中 国 の 農 業 に は問 題 や 不 安 が 山積 み な の で あ る。 これ らの 輸 入 量 を 減 ら し 自給 率 を上 げ る こ とが理 想 で あ り,ひ い て は,日 本 の 食 の 安 全 に もつ な が るの で あ る。

単 純 にお米 の 消 費量 を 増 や す だ けで は,「食 糧 自給 率 の 向上=安 全 性 の 向上 」と はな らな い か も しれ な い。

(2)耕 地 面 積 の 減 少

日 本 の 耕 地 面 積 が,表3の ご と く,年 々 じわ じわ と 減 少 して い る こ と に 近 年 注 目 が 集 ま っ て い る。

表3耕 地面積 及び作 付延 べ面 積 単 位:万ha

平成17年 18年 19年 20年 21年 22年

耕地 面積 469.2 467.1 465.0 462.8 460.9 459.3

うち 田 255.6 254.3 253.0 251.6 250.3 249.6

213.6 212.8 212.0 211.2 210.3 209.7

作付 延べ面積 438.4 434.6 430.6 426.5 424.4

耕地 利 用 率(%) 93.4 93.0 92.6 92.2 92.1

資 料:耕 地 及 び 作 付 面 積 統 計(農 林 水 産 省 統 計 局)

出 所:農 林 水 産 省 ホ ー ム ペ ー ジhttp://www.maff。go.jp/j/tokei/sihyo/index.htm1

そ の一 方 で,表4の ご と く,耕 作 放棄 地 と呼 ば れ る不 活 用 地 の 増 加 に よ り,日 本 の 食 糧 自給 率 の低 下 は さ ら に加 速 して い る。農 業 統 計 上 の耕 作 放 棄 地 とは,「調 査 日以 前 の 一 年 以 上 作 付 され て お らず,今 後 数 年 の 間 に再 び耕 作 す る意 志 の な い土 地 」 の こ とで あ る。 こ の 耕 作 放 棄 地 が 増 加 す る こ と は,食 糧 自給 率 の 低 下 を 招 くだ けで な く,周 囲 の 農 地 に も悪 影 響 を及 ぼ す。 農 地 が 放棄 され る こ とで 病 害 虫 が 大 量 発 生 し,雑 草 が 生 い茂 り周 囲 に それ ら が広 が り迷 惑 を か け る。 また,集 落 にお け る水 田 は,水 路 の 上 流 か ら下 流 の 流 れ を上 手 く 使 って水 を配 分 す る仕 組 み で あ るが,長 い年 月 を か けて 作 られ た この 用 排 水 シ ス テ ム も, 農 地 が放 棄 され る こ とで 管理 に支 障 を 来 し,洪水 や地 滑 りや 山崩 れ な どを 引 き起 す 。ま た, 山 に住 ん で い た イ ノ シ シな どが 放棄 され た 農 地 を 住 処 と して,耕 作 放 棄 地 だ けで な く回 り の農 地 を荒 らす 原 因 に もな る。

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(14)

そ の他 に も景 観 の 悪 化,農 地 の もつ 災 害 防 止 機 能 の 低 下 が 懸 念 され て い る。 以 上 の よ う に耕 作 放 棄 地 が 増 加 す る こ と は,単 純 に 日本 産 の 農 作 物 の 生 産 が 減 るだ けで な く,周 囲 の 農 地 に悪影 響 を与 え る こ と とな り,そ の こ とが さ らな る食 糧 自給 率 の 低 下 に拍 車 をか けて い る とい う悪 循 環 を もた らす。そ もそ も耕 作 放 棄 地 が増 加 して い る原 因 は,「高 齢 化 等 に よ る労 働力 不 足」 が最 も多 く,つ い で 「生 産 性 が 低 い」,「農 地 の 受 け手 が いな い」,「土 地 条 件 が 悪 い」,「相 続 に よ る農 地 の 分 散 化」 等 が あ げ られ る。 農 業 従 事 者 の 主 力 を 担 って き た 世 代 が 高齢 化 し,規 模 縮小 や 離 農 が 進 み,農 地 を 受 け る担 い手 が いな くな って い る状 況 下 で,土 地 条 件 が 悪 い農 地 を 中 心 に,耕 作 放 棄 地 が 増 大 して い る と推 測 され る。

表4耕 地放棄地面積 単 位:万ha

平成7年 12年 17年 22年

耕作放棄地 24 34 39 40

農家 16 21 22 21

土地持 ち非農家 8 13 16 18

資料:農 林 業 セ ンサ ス(農 林 水 産 省 統 計 部)

注1:「 農 家 」 と は,経 営耕 地 面 積 が10ア ー ル 以 上 又 は 農 産 物 販 売 金 額 が15万 円 以 上 の 世 帯 を い う。

2:「 土 地 持 ち非 農 家」 とは,農 家 以 外 で 耕 地 及 び 耕 作 放 棄 地 を5ア ー ル 以 上 所 有 して い る世 帯 を い う。

3:「 耕 作放 棄 地 」 とは,以 前耕 地 で あ った もの で,過 去1年 間 以 上 作 物 を 栽 培 せ ず,こ の 数 年 の 間 に 再 び 耕作 す るは っき り と した 考 え の な い 土 地 を い う。

出所:農 林 水産 省 ホ ー ム ペ ー ジhttp://www.maff。go.jp/j/tokei/sihyo/index.htm1

減反 面 積 は,大 凶 作 とな った1993年 の 翌 年1994年 に一 時 的 に緩 和 きれ た が,1994年 以 外 は基 本 的 に年 々強 化 され て い った。 また,2004年 か らは,「 米 政策 改革 」 に よ って,目 標 数 値 が 減反 す る水 田面 積 で は な く,米 の 生 産 目標 数 量 で 示 され る よ う にな った 。 全 国 の 需 要 量 を 基礎 に して,政 府 の言 う 「売 れ る米 」 だ けの 数 量 を つ くる方 式 に変 え られ て い っ た。

しか し,2009年 の 農地 法 の 改 正(13)で,都 市 住 民 の 農 地 利 用 ニ ー ズが 高 ま っ た こ とか ら, 特 定 農 地 貸 付 法 が 改正 され た。 これ は市 民 農 園 の 開 設 につ き,市 町 村 との 協 定 を 要 件 に, 市 町村 及 び農 協 以 外 の者 で も開 設 可 能 にな る もの で あ る。 つ ま り,誰 で も農 地 を 開 設 す る

こ とが 可能 にな り,耕 作 放棄 地 とな って い る農 地 を 私 た ちが 利 用 す る こ とで 耕 作 放 棄 地 の 増 加 を 抑 制 し,減 ら して い くこ とが 可 能 にな る と い う こ とで あ る。 そ の 結 果,今 後 の 日本

(13)農 政 ジ ャ ー ナ リ ス トの 会 編 『動 き 出 し た 農 政 改 革 」』,農 林 統 計 協 会,2007年 農 政 ジ ャ ー ナ リス トの 会 編 『農 地 制 度 改 革 」,農 林 統 計 協 会,2008年

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(15)

食糧 自給率 と安全性 は比例す るのか?(勝 旧 ・服部 ・荒河) の農 産 物 生 産 量 が 増 加 し,自 給 率 が 上 昇 す る可 能 性 が 期 待 され る。

(3)農 業 所 得 と労 働 力 の問 題

輸 入 食 材 の輸 入 量 に反 比 例 す る よ う に農 業 人 口 は年 々減 少 し,今 や 国民 の3%に 満 た な い 人 口で 日本 の 食 糧 の 大半 を 支 え る状 況 とな って い る。 また,農 業 に従 事 す る人 の 平 均 年 齢 は65歳 超 とな って お り,一 般 企 業 で 考 え る と定 年 退 職 した 人 々の 年 齢 で あ る。 農 村 あ る い は農 業 を支 え て い る人 が 高齢 化 して きて い る こ と に対 して,日 本 の農 業 ひい て は,「 日本 人 の健 康 」 を不 安 視 す る メデ ィ アの 報 道 が 多 くな って きて い る。

前 掲 の農 林 水 産 省 の デ ー タ に よ る と,日 本 の農 業 総 産 出額 は,2010年 度 で は8兆1,214 億 円 で あ り,ピ ー ク時 の1984年 度 の11兆7,171億 円 か ら約3兆6,000億 円減 少 して い る。 農 業 生 産 の 減少 の理 由 は,安 価 な輸 入 農 産 物 の 価 格 に先 導 され 農 産 物 価 格 が 低 下 した こ と,お

よび少 子 高 齢 化 に よ り必 要 エ ネ ル ギ ーで あ る摂 取 熱 量 が減 少 した こ とが大 き な要 因 で あ る。

そ の結 果,農 業 経 営 の総 所 得 は,平 均 で466万 円 で あ り,農 業 所 得 は122万 円で あ る。 農 業 を専 業 と して い る主 業農 家 で は,総 収 入 が2010年 度606万 円 で あ り,う ち農 業 所 得 は475万 円 で あ る。 一 見,都 市部 にお け るサ ラ リー マ ンの 平 均 値 と 同等 と考 え られ るが,農 業 経 営 は,一 家総 出 に よ る もの で あ るた め,サ ラ リー マ ンー 人 の 所 得 と は異 な る。2010年 以 前 の 農 業 経 営 の総 所 得 の 数字 につ い て は,表5を 参 照 の こ と。

表5農 家 の 所 得 の 動 向 単 位:万

平 成17年 18年 19年 20年 21年

販売農家総所得 503 499 484 466 457

うち 農業所得 124 123 120 108 104

農業依存度(%) 36.0 37.2 38.1 36.7 38.1

主要農家総所得 539 548 548 546 555

うち 農業所得 414 429 425 420 438

農業依存度(%) 91.3 91.6 91.6 91.3 92.7

資料:農 業 経 営 統 計 調査(農 林 水 産 省 統 計 部)

注:農 業依 存 度=農 業 所 得 ÷(農業 所 得+農 業 生 産 関 連 所 得+農 外 所 得)×100

農 産 物 価 格 が低 下 し,生 産 量 が 減 少 した こ と に加 え,肥 料,農 薬 等 の 農 業 生 産 資 材 や 石 油製 品価 格 が上 昇 した こ と に よ り,農 家 の所 得 は大 幅 に減 少 して い る。 この 結 果,300万 円 以 上 の 農 業 所 得 を得 て い る農 家 は,25万 戸(全 体 の 約14%)に す ぎず,勤 労 者 よ りも農 家

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の収 入 が低 い 状 態 とな って い る。 前 述 の 耕 作 放 棄 地 の 増 加 や 後 継 者 の 問 題 は,農 業 所 得 の 低 迷 に よ る もの で あ る。 農 業 所 得 の 改 善 が,日 本 の 農 業 問 題 の 根 幹 で あ る。 中国 の 農 村 の 抱 え る問題 と本 質 的 に同 じで あ る。

そ こで,日 本 の農 業 問 題 の 解 決 に は,日 本 の 農 村 を 豊 か にす る こ と意 外 に策 はな い と考 え られ る。 そ の 方 法 は,高 価 で 十 分 利 益 を 生 み 出 す,高 級 食 材 の 生 産 で あ る。 農 家 か らの 買 い上 げ価 格 が,10,000円/kgの コ メ,50,000円/kgの 牛 肉な どの 高 級 食 材 を生 産 し,販 売 す れ ば,農 家 の所 得 は 向 上 す る。 これ ら は,現 在,日 本 の 百 貨 店 で 売 られ て い る最 高 価 格 の米 と牛 肉 で あ るが,バ ブル 期 の1990年 頃 は,最 高 価 格 の 米 は,30,000円/kgで あ り, 牛 肉 は200,000円/kgで あ った こ とを考 え る と,夢 物語 で は な い 。

また,実 際,中 国 か らや って くる年 間100万 人 以 上 の観 光 客 は,日 本 の 高 級 牛 肉や 高 級 で 安 全 な コ メを熱 望 して い るの で あ る。GDPが 世 界 第2位 で あ り,年 収1000万 円以 上 の 収 入 を得 て い る人 が 今 や最 低 で も1000万 人 以 上 い る と言 わ れ る 中国 は,自 国 の 農 産 物 に強 い不 安 感 を 抱 い て お り,安 心 ・安 全 な 日本 の 食 材 を 欲 して い るた め,優 良 な 日本 の 高 級 食 材 を 中 国 に輸 出 す る こ とで,農 村 の 所 得 を 向 上 させ,ひ いて は食 糧 自給 率 を 改 善 す る こ とが で

き る と考 え る。

お わ り に

日本 の農 業 は,近 年 大 きな 転 換 期 に入 って い る と いえ る。 国 民 の 関 心 が 農 業 に向 いて お り,メ デ ィア も農 業 に 関 す る もの が 多 く報 道 され,「 農 業 ブ ー ム」 な ど と呼 ばれ て い る。 ま た,農 地 法 の 改正 や 各農 業 に関 す る政 策 に よ り,耕 作 放 棄 地 で 再 び農 業 が お こな わ れ る よ う にな り,近 年 の 「農業 ブー ム」 に よ り農 業 の 担 い手 が 増 加 して ゆ け ば,必 然 的 に農 産 物 の生 産 量 も増 え,そ れ に伴 い 自給 率 も増 加 す る と考 え られ る。 今 まで 以 上 に一 人 一 人 が 日 本 の農 業 を意 識 す る こ と に よ り,日 本 の 農 業 全 体 が 活 性 化 され れ ば,若 者 不 足 に よ る後 継

ぎ問題 や,農 家 の所 得 減 少,耕 作 放棄 地 の 増 加 と い った 様 々な 問 題 が 解 消 され る こ とが 期 待 され る。

そ して,食 糧 自給 率 の 向上 と と もに,日 本 の 野 菜 は 中国 野 菜 ほ どの 危 険 性 が 少 な い た め, 安 全 か つ安 心 して 食生 活 を 送 る こ とが で き る よ う にな るの で はな いだ ろ うか 。 しか し,日 本 人 が 日本 の農 作 物 中心 の 食 生 活 を 送 った と こ ろで,100%中 国 産 の 野 菜 を 日本 人 の 口か ら 遠 ざ け る こ とは 不 可 能 で あ る と考 え る。 前 述 の よ う に,外 食 産 業 や 加 工 食 品 産 業 で は,プ

ライ ス ・ダ ウ ンあ るい は コ ス トの 面 か ら考 え て,中 国 産 を は じめ とす る多 くの 輸 入 農 産 物 292(690)

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食 糧 自給 率 と安 全 性 は比 例 す るの か?(勝 旧 ・服 部 ・荒 河)

に よ って成 り立 って い る。 一 方,一 般 家 庭 で は,100%に 近 い割 合 で 国 産 農 産 物 を選 び,生 活 して い る。 必 ず し も中 国 産 の 農 作 物 が 身 体 に影 響 を 及 ぼ す わ けで はな いが,現 在 日本 が 中 国 に頼 りす ぎて い るの は事 実 で あ る。 食 糧 自給 率 を 向 上 させ,な るべ く日本 産 の 農 産 物 を 口 にで き る状 況 を 作 る こ とが 大 切 で はな いだ ろ うか 。 日本 産 の もの を 選 ん で 食 べ る こ と

に よ って,食 糧 自給 率 の 向 上 と,日 本 人 の 食 の 安 全 性 は向 上 す る。

しか し,日 本 の 自給率 が上 昇 す れ ば輸 入 食 品 の 割 合 は減 り,汚 染 食 品 が 日本 に入 って く る確 率 は下 が るが,そ の確 率 はゼ ロ に は絶 対 にな らな い と考 え る。 現 状,ほ とん どを 輸 入 に頼 って い る農 産物 は 多 数 存 在 し,そ れ らの 輸 入 を 止 め る こ と は不 可 能 で あ る。 ま た,中 国 で は 日本 企 業 に よ る 日本 向 けの 加工 食 品 工 場 が 多 く存 在 し,近 代 化 に よ る 日本 の 食 の 利 便 性 向上 を 支 え て い る。 冷 凍 食 品 な どの 加 工 食 品 の 多 くは 中国 にお いて 生 産 され て い る も の で あ り,そ れ らの 食 品 を現 在 の 日本 で 消 費 しな くな る と い う こ と は到 底 考 え られ な い。

また,農 村 人 口 が わず か3%で あ り,低 価 格 農 産 物 ば か りの状 態 で あ れ ば,農 村 所 得 も低 い た め,後 継 者 問 題 の解 決 に も時 間 が か か り,そ れ らの 食 品 を す べ て 日本 で 生 産 す る こ と も不 可 能 で あ ろ う。 この よ う に,も はや 日本 と 中国 の 食 に関 す る関 係 性 は切 り離 せ な い も の とな って い るの で あ る。 そ の た め,日 本 国 内 で の 食 品 検 査 の 方 法 の 見 直 しな ど 日本 国 内 で の対 応 に加 え て,日 本 人 が 直 接現 地 に出 向 いて の 安 全 に関 して の 指 導,も し くは外 国 の 港 にお け る輸 出前 の 全量 検 査 の 実 施 な ど,直 接 に輸 入 相 手 国 に対 して の 働 きか けが 非 常 に 大 切 とな って くるだ ろ う。 この よ う に 日本 は今 後,食 糧 自給 率 の 向 上 だ けで な く,様 々 な 方 法 で安 全 性 を確 保 す る必 要 が あ るだ ろ う。

最 後 に,日 本 の農 業 の 改善 及 び食 糧 の 安 全 性 の 向 上 に関 して,日 本 の 農 村 を 豊 か にす る こ と以 外 に,日 本 の 農 業 問 題 の 解 決 策 は な い 。そ の 方 法 は,高 価 で 多 大 な 利 益 を 生 み 出す, 高級 食材 の生 産 で あ る。 農 家 か らの 買 い 上 げ 価 格 が,10000円/kgの コメ,50000円/kgの 牛 肉 な どの 高 級 食 材 を生 産 し,販 売 す れ ば,農 家 の 所 得 は向 上 す る。GDPが 世 界 第2位 で あ り,年 収1000万 円以 上 の収 入 を得 て い る人 が今 や1億 人 以 上 い る と言 わ れ る 中国 に優 良 な 日本 の 食材 を輸 出 す る こ とで,農 村 の 所 得 を 向 上 させ,ひ いて は食 糧 自給 率 を 改 善 す る こ とが で き る と考 え る。

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