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密教文化 Vol. 1964 No. 69-70 003三崎 良周「慈鎮和尚の仏眼信仰 P61-76」

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一 慈 鎮 和 尚 慈 円 が、 建 仁 三 年 六 月 二 十 二 日 暁 に 夢 み た と い う、 い わ ゆ る ﹁夢 想 記 ﹂ に つ い て は、 想 う に 二 つ の 意 義 を 見 出 せ る の で あ る。 そ の 第 一 は、 こ の 夢 に よ っ て 慈 円 は、 皇 室 に 伝 わ る 三 種 神 器 は 鏡 ・ 剣 ・ 璽 で あ る こ と を 知 り、 夢 に 出 て く る 鏡 は 天 照 大 神、 ま た 大 日 如 来 で あ り、 璽 は 勾 玉、 ま た 仏 眼 部 母 で あ り、 宝 剣 は 天 子 で あ り、 ま た 金 輪 仏 頂 で あ り、 或 る 場 合 は、 宝 剣 は 不 動 明 王 で あ っ て 帝 王 を 守 護 す る、 と い う 意 義 を 悟 る の で あ る。 そ し て さ ら に は 近 く 起 っ た 元 暦 元 年 ( 二 八 四 ) の 壇 浦 に お け る 平 家 滅 亡 の 際 の 神 器 紛 失 の 異 変 か ら、 進 ん で は 当 時 の 朝 廷 の 天 子 と 幕 府 将 軍 と の 間 の 政 権 の 推 移 に 関 連 し て 行 き、 遂 に 愚 管 抄 の 撰 述 に 発 展 す る、 と 見 ら れ る こ と で あ る。 第 二 の 意 義 は、 そ れ は 夢 で あ る と し て も、 慈 円 を し て、 こ の よ う な 夢 を 見 る に 至 ら し め た に は、 す で に 慈 円 の 心 裏 に お い て 台 密 の 蕊 奥 を き わ め て い た こ と、 特 に 一 字 金 輪、 仏 眼、 不 動 尊 へ の 帰 依 信 仰 が こ の 夢 を 齎 ら し た も の と 考 え る こ と が 妥 当 で あ ろ う し、 さ ら に そ の 夢 に つ い て の 慈 円 の 考 察 も、 す べ て こ の 台 密 の 素 養 と 蓄 積 と 信 仰 の 上 に 立 っ て 理 解 を ほ ど こ し て い る こ と が 注 意 さ れ る、 と い う こ と で あ る。 そ れ は す な わ ち 台 密 史 の 流 れ の 上 に お い て 捉 え ら れ る べ き 問 題 で あ り、 当 代 に お け る 信 仰 や 一 般 思 潮 の 特 色 も そ こ に 看 取 さ る べ き 問 題 で も あ る。 一 体 に、 台 密 史 の 上 に お い て、 慈 円 は、 従 来 は、 さ ほ ど 顕 要 の 地 位 に 扱 わ れ な か っ た よ う で あ る。 ま た そ の 業 績 に お い て も、 密 教 思 想 は さ し て 問 題 に は さ れ な か っ た こ と が 注 意 さ 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 れ る。 そ の 理 由 は し ば ら く 措 い て、 慈 円 の 密 教 に お け る 足 跡 (1) に つ い て は、 特 に そ の 教 理 思 想 の 一 部 を 別 稿 に 述 べ た。 本 稿 に お い て も、 ま た 別 の 角 度 か ら そ の 密 教 思 想 を 考 説 し ょ う と 意 図 す る も の で あ る。 二 こ こ に と り 上 げ る 慈 円 の 見 た 夢 と は、 次 の よ う で あ る。 ン ン 国 王 御 宝 物 神 璽 宝 剣。 神 璽 玉 女 也。 此 玉 女 妻 后 之 躰 也。 王 入 二 自 性 清 浄 玉 女 躰 一、 令 二 交 会 一 ハ 給、 能 所 共 ハ 無 レ 罪 歎。 此 故、 神 璽 者 清 浄 玉 也。 夢 ニ 想 之 中 覚 二 知 之 一誰。 国 王 の 宝 物 (す な わ ち 三 種 神 器 ) で あ る 神 璽 と 宝 剣 の 中、 神 璽 は 玉 女 で あ り、 こ の 玉 女 は 妻 后 の 姿 を し て い る。 そ し て 王 は、 自 性 清 浄 の 玉 女 の 躰 に 入 り 交 会 し 給 え ば、 働 き か け る 王 に も 受 け る 玉 女 に も 罪 は な い。 そ の 故 に、 こ の 神 璽 と は 清 浄 O 玉 で あ る、 と 夢 の 中 に あ っ て 覚 知 し た、 と い う の で あ る。 こ の 記 述 は 一 見 し て、 格 別 に 密 教 の 意 を 含 ま な い よ う で あ る が、 し か し 自 性 清 浄 の 語 は と も か く、 吉 水 蔵 ﹁ 毘 逝 ﹂ 上 冊 ハ セ ハ の 四 種 曼 茶 羅 の 解 釈 を は じ め と し て ﹁ 俗 諦 之 婬 欲 一 犯、 不 レ ハ セ ハ 出 二 生 死 之 境 二、 真 諦 之 愛 染 一 信、 無 レ 帰 二 流 転 之 家 一。 航 レ 婬 者 横 死、 堕 二悪 趣 一、 着 レ 愛 者 昏 迷、 隔 二 浄 土 一。 然 而 法 万 タ ラ 女 ス レ ハ ス レ ハ 形、 信 仰 被 二 三 十 七 尊 之 加 護 一。 仏 眼 金 輪 之 陰 陽、 念 調 得 二 切 諸 法 之 成 就 一。 依 レ 之、 受 二 部 母 印 於 大 日 尊 印 一、 加 二 金 輪 明 於 仏 眼 明 一。 悟 二 法 万 タ ラ 一、 弥 々 発 二 法 愛 之 智 一、 知 二 仏 界 陰 陽 一、 専 得 二 秘 教 之 本 意 一。 一 宗 之 至 極 也。 三 部 之 深 意 也。 ﹂ と い う 思 想 に つ な が っ て 行 く も の で あ ろ う。 す な わ ち 国 王 と 玉 女 と の 交 会 は、 俗 諦 の 婬 欲 で は な く、 真 諦 の 愛 染 で あ り、 仏 眼 と 金 輪 と の 関 係 と 同 一 で あ っ て、 諸 法 を 成 就 す る 所 以 で あ る、 と 理 解 せ ら れ る の で あ る。 さ て、 こ の 夢 の 後、 慈 円 は 以 下 の よ う に 記 し て い る。 ヲ ニ 其 後、 此 夢 覚 歎、 未 レ 覚 歎 之 間、 此 事 様 々 思 ハ ノ 連 也。 不 動 刀 鞘 印、 則 是 也。 刀 宝 剣 也、 王 躰 ハ ノ 也。 鞘 神 璽 也、 后 躰 也。 以 二 此 交 会 之 義 一、 成 二 就 此 印 一飲。 不 動 尊、 可 レ 為 二 王 之 本 尊 一歎。 す な わ ち 慈 円 は、 夢 覚 め る か 覚 め な い か の 境 に、 さ ま ざ ま に 思 い あ ぐ ら し た。 先 ず 宝 剣 に つ い て、 不 動 明 王 の 刀 鞘 印 を 思 い 浮 べ た。 こ の 印 は、 右 手 を 以 て 刀 印 を 作 り、 左 手 を 以 て 鞘 印 を 作 り、 両 方 を あ わ せ て 刀 鞘 印 と 呼 ぶ の で あ る が、 台 密

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(2) の 胎 蔵 界 念 講 法 の 遣 除 従 魔 の 作 法 に お い て、 こ の 刀 印 を 鞘 印 か ら 抜 き、 ま た 挿 入 す る こ と に よ り、 不 動 明 王 の 根 本 印 で あ る こ. の 刀 鞘 印 は 成 立 す る の で あ る。 元 来 そ れ は、 金 剛 智 訳 の 大 毘 盧 遮 那 仏 説 要 略 念 請 法 や 不 空 訳 と さ れ る 毘 盧 遮 那 五 字 真 言 修 習 儀 軌 等 に 示 さ れ て い る の で あ る が、 し か し そ れ を 刀 印 と 鞘 印 と に 分 け て、 王 の 躰 と 后 妃 の 躰 と に 宛 て て い る こ と は、 別 に 由 来 の あ る こ と が 考 え ら れ、 後 に 言 及 し た い。 そ し て 不 動 尊 が 王 の 本 尊 で あ る、 と い う の は、 や は り 後 に い う 安 鎮 家 国 法 に 根 拠 す る も の で あ る。 慈 円 は、 さ ら に こ の 夢 に つ い て、 次 の よ う に 思 い め ぐ ら し て い る。 又 思 惟 云、 神 璽 者 仏 眼 部 母、 乃 玉 女 也。 金 輪 聖 王 者 一 字 金 輪 也。 此 金 輪 仏 頂、 又 仏 ニ 眼 交 会 シ タ マ フ 義 歎、 此 宝 剣 則 金 輪 聖 王 ニ ハ ヲ 也。 依 レ 之、 仏 眼 法 壇 置 二 智 剣 一歎。 輪 八 輻 剣 入、 ス ハ ノ 八 出 也。 此 剣 璽 天 下 一 所 成 就 也。 仏 法 王 ヲ シ テ ノ 法 成 就 理 国 利 民、 王 者 宝 也。 内 侍 所、 又 神 ト ヨ リ 鏡 云。 此 両 種 ノ 中 令 レ 生 給、 天 子 也。 是 則 天 照 大 神、 御 体 也。 是 大, 日 如 来 也。 大 日 如 来、 為 二 利 生 一、 一 字 金 輪ノ 形、 令 レ 現 給。 此 金 輪 者 金 界。 王ハ 以 二 金 輪 王 一、 為 レ 本。 依 レ 之、 仏 界 借 二 此 義 一、 此 ヲ 身 現 給 也。 こ こ に い う と こ ろ は、 神 璽 ( 仏 眼 部 母 -玉 女、 ま た 金 輪 聖 王 -一 字 金 輪 -王、 の 関 連 で あ っ て、 こ の 一 字 金 輪 と 仏 眼 と 交 会 を な す、 と い う の で あ る 。 ま た、 宝 剣 -金 輪 聖 王 で あ る か ら、 仏 眼 法 の 壇 に 剣 を 置 く と い う。 そ し て こ の 剣 と 璽 と で 天 下 の こ と を 一 所 に お い て 成 就 せ し め る こ と に な り、 仏 法 と (3) 王 法 と を、 と も に 成 就 せ し め る こ と に な り、 国 を 治 め 民 を 利 す る 王 者 の 宝 で あ る 所 以 と な る。 さ ら に ま た 内 侍 所 は 神 鏡 で あ っ て、 こ の 神 鏡 か ら 剣 と 璽 の 二 つ が 生 れ る の で あ り、 そ れ が 天 子 で あ る。 ま た 神 鏡 は 天 照 大 神 の 御 本 体 で あ り 大 日 如 来 で あ る が、 衆 生 を 利 せ ん が た め に、 一 字 金 輪 の 形 を 現 わ れ し め 給 う の で あ る、 と 述 べ て い る。 こ こ に 金 輪 聖 王 が 金 輪 仏 頂 で あ り、 国 王 に 比 擬 さ れ る こ と に つ い て は、 前 に 管 見 を 述 べ た と こ ろ で あ る が、 概 要 を 記 せ (4) ば、 以 下 の よ う で あ る。 す な わ ち、 イ ン ド に お い て 古 く、 天 子 の 即 位 に 当 っ て 灌 頂 を 受 け る の で あ る が、 そ の 際、 七 宝 が 現 れ る と さ れ る。 そ し 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 て そ の 帝 王 は 転 輪 聖 王 と 呼 ば れ、 そ の 灌 頂 を 輪 王 灌 頂 と も 称 さ れ る。 こ の こ と が 後 に 密 教 に と り 入 れ ら れ、 仏 道 に 登 る 作 法 を 灌 頂 と い わ れ る こ と に な る の で あ る。 転 輪 聖 王 の 中 で も 最 高 を 金 輪 聖 王、 或 い は 金 輪 仏 頂 と 称 さ れ、 そ の 種 子﹁ 承 ﹂ ( ボ ロ ン ) の 一 字 に 法 報 化 の 三 身 を 寓 す る か ら、 一 字 金 輪 仏 頂 と も 呼 ば れ る。 こ の 輪 王 灌 頂 は 実 際 に 行 わ れ た ら し く、 そ れ は 宋 高 僧 伝 の 不 空 伝 に ﹁ ( 不 空 ) 為 レ 帝、 受 二 転 輪 王 七 宝 灌 頂 一。 ﹂ と あ る こ と に よ り 窺 わ れ る つ ま た 光 宗 の 渓 嵐 拾 葉 集 巻 十 七 ﹁ 金 輪 法 事 ﹂ の 巻 に ﹁ ( 金 輪 法 者 )、 ⋮ 是 世 王 即 位 儀 式、 以 二 大 日 灌 頂 一、 為 二 軌 則 一。 故 義 釈 云、 如 二 輪 王 即 位 一者、 取 二 四 海 水 一、 灌 二 頂 上 一、 以 二 刹 利 一為 二 証 誠 一、 以 二 国 位 一付 二 太 子 一。 今 灌 頂 軌 則、 亦 復 如 レ 是。 云 云。 ﹂ と あ る の は、 或 い は 理 念 の 上 で だ け 考 え ら れ て い た こ と の よ う に 想 わ れ る が、 慈 円 は そ ト ドア ニ ニ ハ れ を ﹁ 夢 想 記 ﹂ に ﹁ 叉 世 間 国 王 即 位 高 御 倉 令 レ 付 給 儀 式 即 此、 ヵ ノ ヲ マ ネ ヒ タ マ ヒ テ ヲ ナ ト ハ タ ル ナ リ 大 日 所 変 金 輪 王 義 智 拳 印 令 レ 結 給 云 伝。 是 則 金 剛 界 大 日。 ﹂ と 記 し て い る。 天 子 即 位 の 際 に 智 拳 印 を 結 ぶ、 と い ヶ の は、 一 字 金 輪 仏 頂 の 根 本 印 は 智 拳 印 で あ る か ら で あ る。 事 実 と し て の 輪 王 灌 頂 は、 通 常 の 即 位 式 の 後 に、 天 子 が 密 灌 を 受 け た 場 合、 或 い は そ れ を 輪 王 灌 頂 と 称 し た て と が あ っ た か も 知 れ な い が、 そ れ 以 上 の こ と は、 こ れ ま で の と こ ろ、 そ の 資 料 に 接 し 得 な い の で 判 然 と し な い。 し か し 実 際 の 灌 頂 で は な い が、 渓 嵐 集 巻 百 七 に は、 比 叡 山 上 の 総 持 院 の 中 央 の 三 重 塔 婆 に は 天 子 の 本 命 を 安 置 し、 一 字 金 輪 と 仏 眼 を 以 て 奉 祈 し て い る。 こ れ は 大 日 経 義 釈 巻 三、 入 漫 茶 羅 具 縁 真 言 品 に ﹁ 若 以 二 輪 王 灌 頂 一方 レ 之、 則 第 三 重 如 二 万 国 君 長 一、 第 二 重 ⋮、 第 一 重 ⋮、 中 胎 如 二 垂 換 之 君 一、 故 華 台 常 智 大 漫 茶 羅 王 也。 ﹂ と あ る こ と に 拠 っ て い る の で あ る。 さ ら に 推 し 進 め て 考 え れ ば、 最 澄 が 唐 か ら 帰 朝 し た 直 後、 桓 武 天 皇 め 為 に 修 し た の が 五 仏 頂 法 で あ り、 五 仏 頂 如 来 の 最 高 が 金 輪 仏 頂 で あ る。 ま た 最 澄 の 記 述 と さ れ る 内 証 血 脈 譜 の 中、 雑 曼 茶 羅 相 承 の 教 主 は 釈 迦 で あ り、 以 下 に 阿 地 盤 多 訳 の 陀 羅 尼 集 経、 阿 爾 真 那 訳 の 二 字 神 呪 経、 菩 提 流 志 訳 の 一 字 仏 頂 輪 王 経 と 次 第 し て い る こ と を 見 れ ば、 そ こ に 釈 迦-一 字 仏 頂 輪 王 -一 字 金 輪 仏 頂 の 関 係 を 推 知 し 得 る で あ ろ う。 最 澄 の こ の 仏 頂 尊 関 係 の 経 典 の 羅 列 に つ い て 考 え あ わ さ れ る こ と は、 表 制 集 巻 一 に、 不 空 が 宝 応 元 年 (七 六 二 ) 表 し て ﹁ 陛 下 百 王 為 レ 首、 真 言 有 二 仏 頂 之 号 二。 謹 按 二 大 仏 頂 経 一、 一 切 如 来 成 等 正 覚、 皆 受 二 此 真 言 一。 乃 至 金 輪 帝 位、 莫 レ 不 二 遵 而 行 プ 之。 ﹂

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と、 帝 王 を 金 輪 に 擬 し、 そ の 由 来 を 大 仏 頂 経 と し て い る こ と で あ る。 唐 末 に お け る 仏 頂 尊 関 係 の 経 軌 の 醗 訳、 或 い は 撰 述 は 極 め て 彩 し い も の が あ り、 そ の 教 説 の 会 座 の 教 主 は 釈 迦 な の で あ っ て、 い わ ば そ れ は 雑 密 の 形 式 に 類 す る の で あ る か ら、 特 に 不 空 以 後 の 純 密 時 代 に こ れ ら の 経 軌 が 流 行 し た こ と は、 従 来 の 純 密 の 概 念 に 疑 問 を 抱 か せ る も の で あ る。 そ れ は と も 角、 こ れ ら の 仏 頂 尊 の 経 軌 の 中 で も、 上 下 に 亘 っ て 最 も 伝 播 流 布 し た の は 仏 頂 尊 勝 陀 羅 尼 経 の 各 種 で あ る。 最 澄 の 血 脈 譜 に 尊 勝 陀 羅 尼 経 の 相 承 が 記 さ れ て い な い こ と は、 梢 々 不 審 の 感 は あ る が、 不 空 に よ っ て 極 度 ま で 推 し 進 め ら れ た 護 国 思 想 は、 実 に こ の 仏 頂 尊、 乃 至 は 金 輪 仏 頂 を 中 心 と し て い る の で あ る。 上 記 の 最 澄 の 記 述 は こ の 状 況 を 反 映 し て い る か と 想 わ れ、 桓 武 帝 の 為 に 五 仏 頂 法 を 修 し た の も そ の あ ら わ れ で は 無 か ろ う か。 そ し て 台 宗 の 護 国 思 想 の 密 教 的 基 盤 は こ こ に 見 ら れ る よ う で あ る。 そ の 後 に 円 仁 は、 蘇 ⋮悉 地 経 に 注 釈 を 施 し た が、 そ れ は 台 密 の 蘇 悉 地 の 基 礎 を 据 え た と と も に、 こ の 経 の 主 尊 が 仏 頂 尊、 或 い は 輪 宝 で あ る こ と に 注 意 さ れ る の で あ り、 ま た 円 珍 の 注 釈 し た 不 空 訳 の 菩 提 場 経 は、 さ き の 流 志 訳 の 異 訳 で あ り、 そ の 本 尊 は い う ま で も な く 一 字 仏 頂 輪 王 で あ る。 さ ら に 円 珍 は、 一 字 仏 頂 輪 王 業 の 年 分 度 者 を 賜 っ て い る の で あ っ て、 す な わ ち 台 密 の 蘇 悉 地 の 形 成 に は、 そ の 護 国 的 性 格 を、 一 字 金 輪 仏 頂 へ の 尊 崇 と い う こ と で 表 わ し て い る こ (5) と が 重 要 な 要 素 と し て 注 意 さ れ る の で あ る。 慈 円 も ﹁ 毘 逝 ﹂ や ﹁ 別 行 経 紗 ﹂ に 見 え る よ う に、 蘇 悉 地 の 形 成 に つ と め て い る の で あ る か ら、 こ れ ら の 教 説 の 上 に 立 っ て 右 の 記 述 を な し て い る わ け で あ る。 次 に、 神 璽 が 仏 眼 部 母 で あ り 玉 女 で あ る。 と い う こ と に つ い て は、 一 つ に は、 金 輪 仏 頂 が 国 王 で あ り 剣 で あ る こ と と 対 称 的 に 類 推 さ れ る こ と ( 或 い は そ の 逆 ) か も 知 れ な い が、 一 面 に は、 流 志 訳 の 菩 提 場 経 巻 二、 画 像 儀 軌 品 に ﹁ 仏 眼 明 妃、 形 如 二 天 女 一、 坐 二 宝 蓮 華 一。 ⋮ 右 手 施 願、 円 光 周 遍、 熾 盛 光 明、 身 儀 寂 静。 ﹂ と あ る こ と に 根 拠 を も つ の で は あ る ま い か。 ま た 慈 円 よ り 少 し 降 る が、 光 宗 の 渓 嵐 集 巻 十 六 ﹁ 仏 眼 法 事 ﹂ に よ れ ば、 仏 眼 部 母 の 種 子 ﹁ 受 ﹂ ( ラ ) 字 に は、 如 意 宝 珠 の 意 が あ る、 と 記 さ れ て い る。 密 流 の 系 統 は 異 る が、 慈 円 に も こ の よ う な 説 は 伝 え ら れ て い た で あ ろ う か ら、 右 の よ う な 記 述 が な さ れ た も の と 考 え ら れ る。 こ の 問 題 は、 さ ら に 後 に も 論 及 す る つ も り で あ る。 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 さ て、 こ の 仏 眼 と 金 輪 と 交 会 す る と い う 意 味 は、 台 密 の 大 法 の 一 で あ る 熾 盛 光 法 の 所 依 経 で あ る 大 聖 妙 吉 祥 菩 薩 説 除 災 教 令 法 輪 を 始 め と し て、 仏 眼 金 輪 一 隻 と か、 仏 眼 摂 受、 金 輪 破 斥 と か い う の で あ っ て、 そ の 威 験 は 一 仏 体 の 表 裏 と さ れ る の で あ る。 そ し て 喩 祇 経 金 剛 吉 祥 大 成 就 品 に は、 ﹁ 一 切 仏 母 身、 住 二 大 白 蓮 一、 ⋮ 従 二 一 切 支 分 一、 出 二 生 十 擬 識 沙 倶 砥 仏 一、 一 一 仏 皆 作 礼、 敬 二 本 所 出 生 一。 於 二 刹 那 間 一、 一 時 化 二 作 一 字 頂 輪 王 一。 ﹂ と あ っ て、 仏 母 よ り 頂 輪 王 を 出 生 す る こ と に な っ て い る か ら、 仏 母 と 頂 輪 王 と は 必 し も 同 格 で は な い。 し か し 慈 円 は、 こ の 夢 想 記 の 後 の 方 の 文 に ﹁ 胎 蔵 界 大 日、 是 仏 眼 鰍。 金 界 大 日、 是 金 輪 也。 ﹂ と 記 し て い て、 仏 眼 ・ 金 輪 を 胎 金 に 分 け て い る。 こ の こ と は、 東 密 で は あ る が、 建 久 七 年、 成 賢 ( 一 一 九 六 ) の 遍 口 紗 巻 二 ﹁ 仏 眼 法 事 ﹂ に も ﹁ 仏 眼 胎 蔵 界 大 日、 一 字 金 輪 金 剛 界 大 日。 ﹂ と あ る よ う に、 一 部 に は い わ れ て い た よ う で あ る。 そ し て 金 輪 を 金 剛 界 と す る こ と は、 破 斥 を 主 と す る そ の 性 能 か ら で あ ろ う し、 ま た 仏 眼 を 胎 蔵 界 大 日 と す る こ と に は 慈 円 は 教 証 を 挙 げ て、 ﹁ 夢 想 記 ﹂ に 続 い て の 建 仁 四 年 正 月 一 日 の 記 に ﹁ 此 覚 知 之 後、 披 二 見 教 時 義 一之 処、 台 蔵 大 日、 亦 名 二 仏 眼 一。 ﹂ と 述 べ、 こ れ を 証 明 し て い る。 し か し 教 時 問 答 巻 四 の そ の 箇 所 は、 大 日 経 具 縁 品 の 諸 尊 中 の 仏 母 を 示 し て い る だ け で あ っ て、 こ れ を 以 て、 仏 眼 部 母 が 胎 蔵 界 の 仏 で あ る、 と い う こ と は で き な い。 仏 眼 に つ い て は、 金 剛 界 系 統 の 喩 祇 経 に も と つ く の が 台 密 と し て は 本 来 的 で あ り、 そ こ に お い て は 仏 眼 は、 胎 金 不 二 の 性 格 を も つ の で あ り、 慈 円 自 身 で も、 こ の 説 の 上 に さ ら に 説 を 展 開 す る の で あ る が、 前 引 の ﹁ 夢 想 記 ﹂ で は、 敢 て 仏 眼 を 胎 蔵 界 に 限 定 し て い る。 し か し 別 に は 仏 眼 は、 大 日 経 旦 ハ縁 品 に ﹁能 寂 母 ﹂ と し、 先 に も 示 し た 菩 提 場 経 に ﹁ 仏 眼 明 妃、 形 如 天 女。 ﹂ と も あ る よ う に、 女 性 形 の 仏 で ︾ 摂 受 を 性 能 と す る の で あ っ て、 破 斥 を 主 と す る 金 輪 と、 正 に 男 形 ・ 女 形 を 以 て 対 称 さ せ ら れ る こ と に な る。 そ れ を さ ら に 胎 蔵 界、 金 剛 界 に 配 し、 そ の 交 会 を 記 す こ と に な れ ば、 そ れ は す で に、 平 安 末 の 仁 寛 の 立 川 流 以 来 の 左 道 的 密 教 に も 類 す る こ と に な る で あ ろ う。 慈 円 は も ち ろ ん、 そ れ と は 一 線 を 劃 し て い る わ け で あ ろ う が、 元 来、 密 教 の 本 質 の 一 と し て、 こ の 問 題 は 考 慮 の 外 に お く わ け に は い か な い。 な お 内 侍 所 の 神 鏡 に つ い て、 剣 と 璽 と は そ の 中 か ら 生 ぜ し め ら れ る と い う の で あ り、 そ の 鏡 を 天 照 大 神 と し、 ま た 大 日

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如 来 と し て い る。 こ の こ と は、 真 言 宗 の 両 部 神 道 の 形 成 と 年 代 的 に 拮 抗 す る も の で あ ろ う し、 神 器 に つ い て、 い ろ い ろ に 理 論 を 構 成 す る こ と も、 こ の 頃 か ら 始 っ た よ う に 想 わ れ る の で あ っ て、 南 北 朝 頃 の 伊 勢 神 道 や、 神 皇 正 統 記 の 三 種 神 器 説 の 先 駆 を な す と 見 ら れ、 愚 管 抄 と と も に、 当 時 の 思 潮 の 牽 引 と な っ て い る と い え よ う。 こ の ﹁ 夢 想 記 ﹂ の 検 討 の 終 り に、 も う 一 つ 述 べ て お き た い こ ど は、 ・ 上 記 に 仏 眼 ・ 金 輪 ・ 不 動 の 三 尊 を 出 し て い る こ と で あ る。 そ れ は 右 の 考 説 以 外 の 理 由 と し て は、 三 部 三 昧 耶 の 意 を 寓 し た も の と 解 さ れ る。 す な わ ち 空 海 の 宗 秘 論 に ﹁ 仏 眼 為 二 仏 母 一、 金 輪 為 二 明 王 一、 不 動 大 忽 怒。 ﹂ と い う よ う に、 密 教 の 諸 尊 を 総 括 し て い る こ と も 考 え ち れ る。 し か し 慈 円 に し て、 そ の 若 年 の 際、 叡 山 の 無 動 寺 に 千 日 入 堂、 八 千 枚 の 護 摩 を 修 (6) し て い る の で あ り、 ま た 台 密 と し て は 大 法 の 一 と し て の 安 鎮 家 国 法 の 存 在 は 重 要 で あ る。 こ の 修 法 は そ の 初 め、 安 禄 山 の 変 に お い て、 不 空 が 不 動 尊 に 祈 請 し た 安 鎮 家 国 法 に よ っ て 帝 (7) 王 を 守 護 し た こ と に 由 来 し て い る の で あ っ て、 随 っ て、 そ の 不 動 尊 の も つ 剣 は、 天 子 を 守 護 す る も の と し て、 さ ら に 進 ん で は 天 子 の 御 躰 そ の も の と し て、 当 然 に 想 起 さ れ る と こ ろ で あ ろ う。 三 右 に 述 べ て 来 た と こ ろ に よ り、 一 応 密 教 的 な 理 解 に 到 達 し た よ う で あ る。 し か し さ ら に こ の 問 題 を 掘 り 下 げ て 見 る と、 そ こ に 慈 円 の 修 法 へ の 並 々 な ら ぬ 熱 意 が 窺 わ れ る の で あ り、 そ の 一 中 心 を な す も の は、 仏 眼 部 母 へ の 尊 信 で あ る。 そ れ に つ い て ﹁ 此 宝 剣 則 金 輪 聖 王 也。 依 レ 之、 仏 眼 法 壇、 置 二 智 剣 一 ハ ノ 歎。 輪 八 輻、 剣 入、 八 出 也。 此 剣 璽、 天 下 一 所 成 就 也。 仏 法 王 法 成 就、 理 国 利 民、 王 者 宝 物 也。 ﹂ と あ る と こ ろ に、 特 に 注 意 し た い。 慈 円 は、 こ の 八 年 前 の 建 久 六 年、 初 め て 如 法 仏 眼 法 を 修 し て い る。 そ れ は ﹁如 法 ﹂ の 語 義 と と も に 後 に 論 及 す る で あ ろ う が、 実 に 注 目 に 価 す る 創 意 の 加 え ら れ た 修 法 で あ り、 特 に 問 題 は、 そ の 時 の 修 法 壇 に は 剣 が 置 か れ て い な い こ と で あ る。 そ し て 夢 想 の こ と の あ っ た 建 仁 三 年 六 月 か ら 四 ケ 月 経 っ た 十 月 十 九 日 の 修 法 に は、 初 め て 剣 が 置 か れ た の で あ る。 (8) 門 葉 記 巻 四 十 に 次 の よ う に 示 さ れ て い る。 建 仁 三 年 十 月 十 九 日、 於 二 宇 県 小 川 御 所 一、 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 為 二 院 御 祈 一初 二 修 之 一。 大 阿 闇 梨 前 大 僧 正 助 修 六 人 今 度 被 レ 置 レ 剣、 鏡 之 外、 火 舎 内、 横 以 二 剣 首 二、 向 二 行 人 左 方 一置 レ 之。 三 昧 阿 闇 梨 流、 不 レ 置 レ 剣 鰍。 但 今 度、 依 二 御 夢 想 事 一、 被 レ 置 レ 之。 云 云。 す な わ ち、 慈 円 の 密 流 の 最 も 中 心 を な す 三 昧 流 の 仏 眼 法 で は、 本 来、 壇 上 に 剣 を 置 か な か っ た の で あ る が、 そ の 年 の 六 月 の 夢 想 に よ っ て 剣 を 置 く よ う に な っ た、 と い う の で あ る。 そ れ で は 慈 円 は、 そ れ ま で は、 壇 上 に 剣 を 置 く こ と を 全 く 知 ら な か っ た か と い う と、 必 し も そ う で は な い よ う で あ る。 こ の こ と を 考 説 す る た め に は、 少 し く 問 題 が 岐 路 に 亘 る よ う で あ る が、 慈 円 の 如 法 仏 眼 法 に つ い て 述 べ な け れ ば な ら な い。 四 仏 眼 部 母 の 本 経 は 喩 砥 経 に あ る。 そ し て 慈 円 の 仏 眼 尊 崇 の こ と は ﹁ 毘 逝 ﹂ 上 冊 に、 ﹁ 又 今 経、 以 三 喩 紙 経 与 二 別 行 経 一、 為 二 至 極 一 也。 喩 祓 経 両 部 肝 心 也。 毘 盧 サ ナ 別 行 経 蘇 悉 地 肝 心 也。 両 部 肝 心、 喩 祇 経 仏 眼 大 成 就 品 説 二 成 身 行 法 一、 用 二 行 位 薩 垣 仏 眼 八 字 一。 ﹂ と あ る が、 こ の 説 の 由 来 す る と こ ろ は、 次 の 安 然 の 教 時 問 答 巻 四 に あ る。 今 金 剛 頂 喩 祇 経、 是 可 レ 言 二 両 部 大 法 之 肝 心 一 也。 以 レ 説 二 両 界 阿 闇 梨 位 行 法 一故 也。 其 中、 大 悲 胎 蔵 頓 証 八 字 印 明、 即 是 大 日 経 中 阿 闇 利 真 実 智 品 印 明、 而 明 二 五 部 三 十 七 尊 法 一。 実 是 金 剛 界 中 之 悉 地 成 就 性 也。 す な わ ち、 安 然 の こ の 説 に お い て 試 み ら れ て い る こ と は、 本 来 は 別 部 の も の で あ っ た 胎 金 両 部 を、 密 教 と い う 名 の も と に 統 一 せ ん と し て、 そ の 教 証 を 求 め て い る 例 証 で あ る。 元 来 こ の こ と は、 円 仁 の 蘇 悉 地 経 疏 に お い て、 胎 金 の 総 て に 亘 っ て の 妙 成 就 が、 台 密 の 蘇 悉 地 を 以 て 完 成 さ れ る と し た の で あ る。 し か る に 円 仁 が そ の 疏 に お い て、 蘇 悉 地 の 根 本 印 信 を 明 示 し な か っ た た め、 円 珍 や 安 然 に よ っ て、 三 種 悉 地 破 地 獄 儀 軌 や 毘 盧 遮 那 別 行 経 が 根 本 印 信 の 出 典 と し て 提 示 さ れ る よ う に な っ た の で あ る。 そ れ と と も に、 蘇 悉 地 経 は、 元 来 は や は り 胎 蔵 界 に 属 す る 経 典 で あ る こ と は 明 ら か な の で、 安 然 は 胎 蔵 界 の 蘇 悉 地 経 に 対 称 さ れ る 金 剛 界 の 妙 成 就 法 と し て 喩 祇 経

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(9) を 挙 げ た の で あ る。 こ の こ と は 楡 祇 経 金 剛 吉 祥 大 成 就 品 に ﹁ 爾 時、 仏 母 金 剛 吉 祥、 復 説 二 成 就 大 悲 胎 蔵 八 字 真 言 一 日、 ア ビ ラ ウ ン ケ ン ウ ン キ リ ク ア ク。 若 調 満 二 一 千 万 遍 一、 獲 二 得 大 悲 胎 蔵 中、 一 切 法 一 時 頓 証 二。 其 印 如 二 釈 迦 牟 尼 鉢 印 一。 ⋮ 爾 時、 復 説 二 成 就 富 貴 金 剛 虚 空 蔵 鈎 召 五 字 明 王 一 日、 バ ン ウ ン タ ラ ク キ リ ク ア ク。 ﹂ と あ り、 金 剛 界 系 の 喩 祇 経 に し て、 大 悲 胎 蔵 中 の 一 切 法 を 一 時 に 頓 証 せ し め る の が こ の 八 字 真 言 で あ る。 こ こ に こ の 楡 祇 経 に、 胎 金 合 揉 の 傾 向 の 濃 い こ と を 窺 え る の で あ る が、 こ の 八 字 真 言 に 並 べ て、 概 ね 純 粋 に 金 剛 界 系 で あ る 金 剛 虚 空 蔵 五 字 明 を 挙 げ て い る こ と が 注 意 さ れ る の で あ る。 さ て、 こ の 部 分 に 対 す る 安 然 の 注 釈 は、 次 の よ う で あ る。 此 経 金 剛 冒 地 心 品 云、 若 有 三 側 近 置 二 金 剛 界 道 場 及 大 悲 胎 蔵 諸 部 道 場 一者、 若 請 二 此 真 言 一、 彼 諸 曼 茶 羅、 悉 皆 親 二 近 尊 三 敬 持 明 行 者 一。 何 以 故、 以 三 能 修 二 諸 如 来 行 願 力 一故。 今 仏 母 尊、 亦 説 二 成 就 大 悲 胎 蔵 八 字 真 言 印 契 一。 故 知、 此 金 剛 頂、 正 説 二 成 就 大 悲 胎 蔵 一 切 阿 闇 梨 位 行 法 二。 無 畏 三 蔵 大 日 経 義 釈、 釈 二 諸 執 金 剛 一 中 云、 心 王 毘 盧 遮 那、 成 等 正 覚。 爾 時、 一 切 心 教、 即 無 レ 不 下 入 二 彼 金 剛 界 中 一、 而 成 出 如 来 内 証 功 徳 智 印、 乃 至 法 門 春 属 上。... 故 知、 若 非 二 金 剛 頂 深 秘 旨 一、 大 悲 胎 蔵 不 レ 可 二 究 寛 一。 云 云。 こ こ に 安 然 は、 喩 祇 経 の 胎 金 合 揉 の 性 格 を 明 確 に 指 摘 し て い る の で あ り 台 密 の 喩 祇 経 を 敬 重 す る 所 以 は、 実 に こ こ に 存 す る の で あ っ て、 仏 眼 へ の 尊 崇 が そ こ に 胚 胎 す る の で あ る。 こ の こ と は 東 密 に お い て、 同 じ 喩 祇 経 か ら 愛 染 明 王 を と り 出 し て 尊 崇 す る の と 正 に 対 称 的 で あ る が、 台 密 に お い て は、 そ こ か ら 仏 眼 の、 一 切 成 就 の 悲 母 的 な 性 格 が 牽 き 出 さ れ、 息 災 (10) や 増 益 の 祈 請 が 行 わ れ る の で あ る。 し か る に 慈 円 は、 こ の 大 悲 胎 蔵 頓 証 八 字 真 言 を 変 改 す る こ と に よつ て、 さ ら に 胎 金 合 揉 の 色 彩 を よ り 一 層 濃 く し た。 す な わ ち ﹁ 毘 逝 ﹂ 上 冊 の 先 に 引 用 し た 記 述 に 引 続 き、 ﹁ 以 二 此 四 ケ 印 明 一、 存 二 七 分 行 法 一。 其 功 能 広 可 レ 勘 二 見 之 一。 台 蔵 八 字 明 タ ラ ク 字、 師 資 口 伝、 何 事 如 レ 之 哉。 ﹂ と あ っ て、 さ き の 八 字 真 言 に タ ラ ク 字 を 加 え て 九 字 に す る、 と い う の で あ る。 こ の 記 述 は、 吉 水 蔵 本 の 胎 蔵 頓 証 口 伝 法 門 に、 次 の よ う に あ る こ と に 由 来 し て い る の で あ る。 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 和 尚 御 記 云、 文 治 六 年 正 月 二 十 四 日 払、 暁、 参 二 入 西 山 一間、 二 月 於 二 静 処 一、 受 法 事。 仏 眼 行 法 最 極、 秘 密 八 字 五 字 等、 口 伝 奉 レ 受 レ 之。 作 外 縛 五 古 也。 加 ニ タ ラ ク 一、 循 九 字 也。 法 ⋮。 抑 々 基 好 云、 結 二 金 剛 慧 印 一、 請 二 八 字 真 二量 之 時、 五 大 虚 空 蔵 印、 結 二 加 之 一。 金 剛 界 五 ト ニ テ 部 五 阿 閣 梨 伝 法 印 可 レ 思 也。 五 古 印 ア ビ ラ マ テ ウ ン ケ ン 講 之。 五 大 虚 空 蔵 印 之 時、 次 第 ウ ン タ ラ ク キ リ ク ア ク 可 レ 請 レ 之。 大 剣 印 之 時 バ ン ハ ニ テ 字 五 字 之 中 在 レ 之。 侃 五 古 井 大 剣 印 両 印 ア ビ ラ ウ ン ケ ン 一 明 ノ 請 業 也。 云 云。 此 事 密 々 中 ニ モ 深 秘 也。 云 云。 循 印 信 八 在 口 五 在 ロ 如 レ 此 事 也。 云 云。 已 上 和 尚 御 記 如 レ 此。 こ こ に い う 基 好 と は、 慈 円 が 師 の 覚 快 に 早 逝 さ れ、 そ の 師 授 を 失 っ た た め、 伯 誉 の 大 山 か ら 請 ぜ ら れ た 人 で、 渓 嵐 集 や 元 亨 釈 書 に そ の 事 蹟 が 見 え、 観 性 と と も に 慈 円 へ の 伝 法 の 関 1 1 係 で 重 要 で あ る。 さ て 喩 砥 経 金 剛 吉 祥 大 成 就 品 に ﹁ 仏 母 金 剛 吉 祥 説 ﹂ と し て、 胎 蔵 八 字 明 に 続 い て 金 剛 虚 空 蔵 五 字 明 を 掲 げ て い る。 と こ ろ が 右 の 基 好 か ら 慈 円 へ の 伝 法 で は、 こ の 二 明 を 一 つ に 併 せ、 八 字 明 に タ ラ ク 字 を 加 え て 九 字 明 と し て い る 。 こ の こ と は 三 昧 流 口 伝 集 や 阿 娑 縛 抄 等 に も 見 え な い こ と で あ る が、 想 う に、 バ ン ウ ン タ ラ ク キ リ ク ア ク の 五 字 は、 金 剛 界 五 部 の 諸 尊 を 表 わ す の で あ っ て、 そ こ に 五 相 成 身 の 意 を 寓 す る の で あ る。 ま た ア ビ ラ ウ ン ケ ン の 五 字 は、 大 旧 経 悉 地 出 現 品 に 見 え て い て、 五 輪 成 身 の 意 を 寓 し、 そ こ に 胎 蔵 界 の 三 部 ( ウ ン キ リ ク ア ク ) を 加 え た の が 八 字 明 で あ る。 そ し て 八 字 明 の 中 に な い 文 字 は ﹁ バ ン ﹂ と ﹁ タ ラ ク ﹂ と で あ る が、 ﹁ タ ラ ク ﹂ は 虚 空 蔵 の 種 子 で あ る か ら、 こ れ を 加 え る こ と に よ り、 八 字 明 を 併 せ た 意 を 表 す る こ と に な る。 ﹁ バ ン ﹂ に つ い て は、 ﹁ 大 剣 印 の 時、 バ ン 字 は 五 字 の 中 に あ り。 ﹂ と い う が、 ﹁ バ ン ﹂ は 金 剛 界 大 日 の 種 子 で あ る か ら、 こ こ で は 合 揉 の 意 を 示 し て、 胎 蔵 界 大 日 の ア 字 に 摂 入 し た の で は あ る ま い か。 な お こ こ で、 こ の 五 字 明 と 次 の 四 字 明 と を 請 す る と き、 外 五 古 印 と 大 剣 印 を 用 い る、 と あ る が、 外 五 古 印 は 胎 蔵 界 の 根 本 印 で あ り、 大 剣 印 は 金 剛 界 の 根 本 印 で あ り、 こ こ で も 胎 金 合 揉 の 意 を 表 わ し て い る こ と に な る。 バ ン 字 を 省 略 し た こ と も、 一 つ は こ の 大 剣 印 で 金 剛 界 大 日 を 代 表 さ せ た の で あ る か も 知 れ な い。 慈 円 は 基 好 か ら こ の よ う に 伝 法 さ れ、 そ れ に 基

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い て、 九 字 の 真 言 を 中 心 に 置 く こ と に よ り、 建 久 六 年 に 初 め て 如 法 仏 眼 法 を 修 し た の で あ る。 さ て、 如 法 仏 眼 法 は、 前 引 の 門 葉 記 の 文 の 前 に ﹁ 抑 々 此 法、 被 レ 修 二 大 法 一事、 先 例 未 レ 聞 レ 之 鰍。 但 康 治 元 年 ( 一 一 四 二 ) 相 実 法 師、 於 二 白 川 殿 一、 為 二 院 御 祈 一修。 云 云。 然 而 伴 僧 只 六 口、 不 レ 立 二 七 曜 壇 一、 ロ ハ 大 壇 護 摩 壇 許 鰍。 又 道 具 不 レ 置 レ 之。 仁 王 経 新 訳 大 壇 安 レ 之。 云 云。 ﹂ と あ り、 先 躍 と し て は 法 曼 流 の 祖 と さ れ る 相 実 に 始 る よ う で あ る が、 そ れ は 大 法 と い う に は 極 め て 簡 略 だ っ た よ う で あ る。 そ し て 相 実 の 仏 眼 修 法 は 阿 娑 縛 抄 に 断 片 的 に 記 さ れ る 程 度 で、 そ の 内 容 は 詳 ら か で な い の で あ る。 し か る に、 阿 娑 縛 抄 に は ﹁ 長 暦 四 年 ( 一 〇 三 七 ) 九 月、 於 二 丹 州 一見 レ 之。 大 原。 ﹂ と し て、 一 剣、 或 い は 二 剣 を 壇 上 に 置 い た 図 が 載 せ ら れ て い る。 ﹁ 大 原 ﹂ と は 長 宴 で あ る に 相 違 な く、 ﹁ 丹 州 ﹂ と は 師 の 皇 慶 の 修 法 道 場 で あ ろ う。 す な わ ち 谷 流 の 祖 と さ れ る 皇 慶 に お い て は、 仏 眼 修 法 に 剣 を 置 い た の で あ る。 と こ ろ が 阿 娑 縛 抄 の そ の 箇 所 に は ﹁ 或 一 師、 剣 是 所 成 就 物 也。 云 云。 是 不 レ 可 レ 然 。 作 二 成 就 法 一、 先 修 先 承 事 法、 可 レ 成 二 就 何 物 一。 祈 二 請 本 尊 一、 蒙 二 其 指 授 一、 造 二 其 物 一置 二 壇 中 一、 修 二 作 成 就 一。 悉 地 成 就 之 時、 随 二 現 三 種 相 二、 得 二 上 中 下 悉 地 一 也。 何 自 レ 始 置 レ 剣 哉。 循 一 剣 説 尚 不 レ 然。 況 二 剣 哉。 難 多 無 二 会 加 ブ 之 。 仏 眼 法、 以 レ 剣 為 二 成 就 物 一、 文 未 レ 見 レ 之、 更 問。 ﹂ と あ る。 こ の 文 意 は あ ま り 明 瞭 で な い が、 少 く も 剣 は 所 成 就 物 で は な く、 本 尊 に 祈 請 し て、 本 尊 の 指 授 に よ っ て そ の も の を 作 り、 壇 中 に 置 い て 成 就 を 願 う た め の も の が 剣 で あ る 。 そ 12 し て す べ て 成 就 す る と き は、 三 種 の 相 を 現 わ し、 上 中 下 の 三 種 悉 地 を 得 る こ と が で き る。 本 尊 に 祈 請 し て か ら 造 る も の で あ る か ら、 ど う し て 初 め か ら 壇 上 に 剣 を 置 く こ と が あ ろ う か。 一 剣 を 置 く こ と で さ え も な お そ う で な い の だ か ら、 二 剣 を 置 く こ と は 尚 更 の こ と で あ る。 仏 眼 法 に お い て 剣 を 成 就 物 と す る こ と に つ い て は、 特 に 文 証 を 見 な い の で、 さ ら に 調 べ た い、 と い う の で あ る。 つ ま り 承 澄 の 頃 に も、 壇 上 に 置 か れ る 剣 の 趣 意 は、 や や 了 解 せ ら れ て い た と し て も、 そ の 根 拠 は 判 然 と し て い な い の で あ る。 想 う に 慈 円 に お い て も、 こ の 程 度 の 伝 承 は 知 っ て い た に 相 違 な い。 し か し そ の 明 確 な 理 由 が 不 明 で あ っ た た め に、 建 久 六 年 の 修 法 で は 壇 に 剣 を 置 か な か っ た の で は あ る ま い か。 し か る に 建 仁 三 年 の 修 法 で は、 こ の 度 の 御 夢 想 の こ と に よ っ て、 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 皇 慶 以 来、 と だ え て い た 壇 上 の 形 式 が 復 興 さ れ る こ と に な り、 そ こ に 如 法 仏 眼 法 の 権 威 が 加 わ る こ と に な っ た と 想 わ れ る。 し か し こ れ は 秘 儀 で あ る か ら 承 澄 へ は 伝 わ ら ず、 阿 娑 縛 抄 に は 記 さ れ な か っ た の で あ ろ う。 し か し 一 面、 ﹁ 祈 二 請 本 尊 一、 蒙 二 其 指 授 二、 造 二 其 物 一、 置 二 壇 中 一。 ﹂ と い う 記 は、 慈 円 の 夢 相 を 推 想 せ し め る よ う で も あ る。 五 如 法 仏 眼 法 に つ い て、 さ ら に そ の 内 容 を 検 討 す れ ば、 一 体 に ﹁ 如 法 ﹂ の 文 字 を 冠 し た 修 法 は、 現 存 の 資 料 を 以 て す れ ば、 台 密、 東 密 と も に、 平 安 末 の 堀 河 ・ 鳥 羽 天 皇 頃 ( す な わ ち 院 政 時 代 ) か ら 行 わ れ る よ う に な っ た ら し く、 そ の 内 容 は 詳 細 に は 分 ら な い が、 従 来 の 修 法 を さ ら に 荘 厳 し て 行 う の が 初 め で は 無 か っ た で あ ろ う か。 そ れ は 台 密 に お け る 熾 盛 光 法 に ﹁ 大 ﹂ を 附 し た こ と と、 向 列 に 考 え て よ い か も 知 れ な い。 し か し 東 密 の 成 賢 ( 二 六 二-二 一三 二 ) 口、 道 教 (-二 一〇 〇-一 二 三 六 ) 記 の 遍 口 紗 巻 二 如 法 尊 勝 事 に ﹁ 行 法 等、 全 無 二 相 違 一、 只 普 通 尊 勝 法 也。 而 如 法 尊 勝 時、 香 薬 為 二 本 体 一也。 委 細 注 書 在 レ 之、 可 ゼ 賜 之 由 被 レ 仰。 但 如 法 之 由、 柳 有 二 本 説 一歎。 二 巻 儀 軌 奥 在 二 此 意 一。 此 法 又 秘 二 本 尊 二也。 無 二 別 本 尊 一、 宝 珠 為 二 本 尊 一也 ﹂ と あ る よ う に、 如 法 尊 勝 法 の と き、 香 薬、 或 い は 宝 珠 を 本 尊 と す る、 と い う の で あ る 。 同 様 の こ と は 先 に も 挙 げ た 渓 嵐 集 に ﹁ 所 謂 如 意 宝 珠 者、 舎 利 法 大 事 也。 普 賢 延 命 入 三 摩 地 菩 薩、 捻 香 秘 事、 又 如 法 仏 眼 習 事、 又 戒 法 相 承 大 事 等、 宝 珠 建 立 之 事 相 也。 ﹂ と い う よ う に、 如 意 宝 珠 は 舎 利 法 の 中 心 で あ り、 如 法 仏 眼 法 や 戒 法 相 承 な ど に 宝 珠 を 安 置 す る、 と あ る。 こ れ ら の 説 の 根 拠 は、 こ れ ま た 先 に 示 し た 菩 提 場 経 巻 二 に ﹁ 仏 眼 明 妃、 形 如 二 天 女 一、 坐 二 宝 蓮 華 一。 ⋮ ⋮ 右 手 持 二 如 意 宝 二、 左 手 施 願。 ﹂ と あ る こ と に 由 来 す る も の で あ ろ う が、 弘 安 二 年 ( 二 一七 九 ) 頃 の 澄 円 の 白 宝 抄 仏 眼 法 雑 集 上 に は、 仏 眼 の 種 子 で あ る 姻 字 は、 祠 誕 簡 三 字 の 合 成 で あ り、 そ れ ぞ れ の 文 字 に 功 能 が あ る が、 特 に モ 字 は 宝 珠 の 種 子 で あ る と し、 そ こ に 喩 砥 ハ 経 金 剛 吉 祥 大 成 就 品 を も 引 い て い る。 そ し て ﹁ 然 則、 此 尊 宝 珠 ノ ニ 能 生 母 故、 今 品 五 大 虚 空 蔵 説 レ 之。 如 レ 此 得 レ 意、 駄 都 法 為 二 部 主 -。 是 故、 如 法 仏 眼 法 云 也。 ﹂ と、 仏 眼 は 宝 珠 を 生 ず る 母 で あ り、 駄 都 法 の 部 主 で あ る か ら、 如 法 仏 眼 法 と い う、 と 記 し て い る。 慈 円 の 三 種 神 器 に つ い て の 夢、 及 び そ の 夢 へ の 理 解 に つ い て、 以 上 の 推 考 が な さ れ る の で あ り、 そ れ は 台 密 の 諸 流 を 併

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せ 兼 ね、 且 つ 修 法 に 対 し て 明 確 な 信 頼 を も つ 慈 円 に し て、 初 め て 叙 述 し 得 ら れ る 記 と い う べ き で あ ろ う。 そ れ に し て も、 ハ ﹁神 璽 玉 女 也。 ﹂ と あ る こ と か ら、 ﹁ 此 故、 神 璽 者、 清 浄 玉 也。 ﹂ と 判 断 す る こ と も ハ 少 し く 飛 躍 し て い る よ う で あ る。 そ し て ﹁ 此 故、 ⋮。 ﹂ 以 下 は、 夢 想 の 中 の 覚 知 で あ る か ら、 夢 そ の も の で な く、 ま た 磨 あ て 後 の 思 索 で も な い 曖 昧 な 表 現 で あ る。 本 当 に 慈 円 は、 三 種 神 器 が 何 と 何 で あ っ た か 知 ら な か っ た の で あ ろ う か。 し か し 後 文 に 依 れ ば、 知 ら な か っ た と 判 ぜ ざ る を 得 な い。 果 し て そ う で あ る と す れ ば、 実 に 慈 円 の 言 葉 の 通 り ﹁ 甚 以 為 二 奇 異 一。 ﹂ で あ り、 ﹁ 冥 顕 共 符 合 了。 ﹂ と い う べ き で あ る。 こ れ を 如 何 に 解 す べ き で あ ろ う か。 な お 終 り に、 こ の 如 法 仏 眼 法 に 関 連 し た 問 題 を 述 べ て お き た い。 そ れ は 華 頂 要 略 門 主 伝 第 十 七、 尊 円 法 親 王 の 項 に 次 の よ う に 記 録 さ れ て い る こ と で あ る。 元 弘 元 年 ( 一 三 三 一 ) 辛 未。 八 月 廿 五 日、 依 二 天 下 騒 動 一、 参 二 住 干 仙 洞 持 明 院 殿 一。 九 月 廿 八 日、 於 二 仙 洞 常 葉 井 殿 一 為 二 剣 璽 御 祈 一、 修 二 秘 法 一。 供 也。 委 旨 具 経 奏 聞。 同 月 廿 九 日、 先 帝 令 レ 降 給。 同 十 月 六 日、 剣 璽 渡 御。 循 預 二 叡 感 院 宣 一。 為 二 法 流 一、 可 レ 謂 二 眉 目 一鰍。 十 月 六 日、 於 二 内 裡 富 小 一路 殿 修 二如 法 尊 勝 法 日 来 調 伏 法 等 勤 行 之 間、 新 帝 還 幸。 以 前、 為 二 宮 中 鎮 譲 一、 所 レ 被 レ 修 レ 之 也。 同 十 三 日 結 願。 今 日 即 遷 幸 詑。 こ の 記 録 ば、 両 統 迭 立 の 果 て、 遂 に 元 弘 の 乱 に 至 っ た が、 そ の 北 朝 方 の 御 祈 修 法 で あ る。 先 帝 と は 後 醍 醐 天 皇 で あ り、 北 条 高 時 に よ り 降 位 せ し め ら れ た の が、 元 弘 元 年 九 月 二 十 九 日 で あ る。 そ れ 以 前、 す で に 九 月 二 十 日、 光 厳 院 が 擁 立 (13) さ れ て い た が、 同 二 十 八 日 に は、 新 帝 の 即 位 の た め に 三 種 神 器 の 中、 剣 と 璽 と が 返 還 に な ら ん た め に、 持 明 院 方 で は 秘 法 が 修 せ ら れ て い た。 そ し て 十 月 六 日、 秘 法 の 効 験 が あ っ て 剣 璽 の 戻 っ た の を 機 に、 一 七 日 の 間、 如 法 尊 勝 法 が 修 せ ら れ た が、 こ の 修 法 は 日 ご ろ か ら 調 伏 の た め に 勤 修 さ れ て い た も の で、 そ の 故 に 新 帝 の 光 厳 院 が 還 幸 に な ら れ た と い う 威 験 を も つ の で あ る。 ま た こ の 修 法 は、 以 前 に は 宮 中 鎮 護 の た め に 修 せ ら れ て い た と こ ろ の も の で あ る、 と い う。 こ の 十 月 六 日 の 御 祈 の 阿 闇 梨 は、 い う ま で も な く 青 蓮 院 の 尊 円 法 親 王 で あ る が、 こ の 記 事 は、 阿 娑 縛 抄 如 法 尊 勝 法 日 記 に 比 照 す れ ば、 さ 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 ら に 明 瞭 で あ る。 す な わ ち 十 月 十 二 日 の 内 蔵 頭 隆 蔭 の 記 に ﹁ 剣 璽 事、 偏 依 二 御 懇 志 一、 早 速 令 二 出 現 一。 誠 是 秘 法 之 所 レ 令 レ 然。 ﹂ と 記 さ れ、 こ の 修 法 の 結 願 の 日 に は、 阿 闇 梨 尊 円 法 王 は ﹁ 七 箇 日 夜 間、 十 三 口ノ 僧 綱 等、 特 致 二 精 誠 一、 勤 修 上ノ 件ノ 教 法、 奉 レ 祈 二 金 輪 聖 王 天 長 地 久 御 願 円 満 之 由 一、 如 レ 件。 ﹂ と 奏 上 し て い る。 尊 円 は 伏 見 院 の 第 五 子 で、 光 厳 院 の 叔 父 に 当 る か ら、 精 誠 に 勤 修 し た こ と は、 当 然 で あ ろ う。 そ こ に い う ﹁ 秘 法 ﹂ と は 何 の 修 法 で あ る か、 恐 ら く 如 法 尊 勝 法 で あ ろ う。 問 題 は、 慈 円 に お い て、 剣 璽 に 密 接 な 関 係 を も つ の は 如 法 仏 眼 法 で あ っ た の に、 こ の 元 弘 元 年 に お い て は 如 法 尊 勝 法 で あ る こ と で あ る。 し か し こ の こ と は 推 測 す れ ば、 慈 円 の 建 久 六 年 の 修 法 は、 中 宮 の 御 産 の た め の 敬 愛 法 で あ り、 建 仁 三 年 に お い て は、 後 鳥 羽 院 の た め の 息 災 法 で あ っ た の に 対 し て、 元 弘 元 年 に お い て は、 両 統 迭 立 の 争 の 間、 相 手 方 を 調 伏 す る 趣 意 が こ あ ら れ て い た こ と が 大 き な 相 違 で あ る。 そ こ に 摂 受 を 効 験 と す る 仏 眼 部 母 で は 適 当 し な い 理 由 が 考 え ら れ る よ う で あ る。 し か も な お、 他 の 降 伏 法 を 用 い な か っ た わ け は、 や は り 仏 眼 が 仏 頂 尊 に 表 裏 す る 関 係 に あ り、 ま た 尊 勝 仏 頂 も 同 じ 仏 頂 部 に 属 す る 仏 で あ り、 そ の 修 法 は 同 じ く 天 子、 或 い は 国 家 鎮 護 の た め の 修 法 で あ る か ら で は 無 か ろ う か。 し か も こ こ で 併 せ て 注 目 す べ き こ と は、 神 器 を 中 心 と し た 修 法 に、 慈 円 以 来 の 秘 儀 が 伝 承 さ れ て い た と 考 え ら れ る (14) こ と で あ る。 (註 ) (1) 拙 稿 ﹁ 慈 鎮 和 尚 の 密 教 思 想 に つ い て-吉 水 蔵 ﹁ 毘 逝 ﹂ を 中 心 と し て ﹂ ( 近 刊 の ﹁ 仏 教 史 学 ﹂ 収 載 予 定 ) 参 照。 な お こ の ﹁ 夢 想 記 ﹂ は 青 蓮 院 吉 水 蔵 ﹁ 毘 逝 ﹂ 上 下 二 冊 の 中、 上 冊 の 末 尾 に 附 載 さ れ て い る も の で あ る。 別 に 吉 水 蔵 に は ﹁ 夢 想 記 ﹂ の み の 冊 子 も あ る。 そ し て こ の ﹁ 夢 想 記 ﹂ を 初 め て 学 界 に 紹 介 し、 そ の 思 想 史 的 意 義 を 明 ら か に し た の は 赤 松 俊 秀 博 士 ﹁ 慈 円 と 未 来 記 ﹂ ﹁ 慈 鎮 和 尚 夢 想 記 に つ い て ﹂ ( 以 上 ﹁ 鎌 倉 仏 教 の 研 究 ﹂ 収 載 ) で あ り、 小 稿 も こ の 論 文 に 負 う と こ ろ が 多 い。 な お 小 稿 に 引 用 す る ﹁ 毘 逝 ﹂ そ の 他 の 本 文 に 梵 書 が 多 い の で あ る が、 印 刷 の 都 合 で、 で き る だ け 片 カ ナ を 使 用 す る こ と に し た。 (2) ﹁ 遣 除 従 魔 ﹂ と は、 応 永 頃 の 厳 豪 の 編 と さ れ る 四 度 見 聞 に ﹁ 諸 仏 来 迎 時、 除下却所二従来一魔上也。﹂とある。 (3) 王 法 仏 法 一 如 と い う こ と は 奈 良 朝 末、 平 安 初 期 か ら 極 め て 喧 伝 さ れ、 台 宗 に お い て 強 く 唱 え ら れ た。 手 近 く は 最 澄 の 作 と 称 す る 末 法 燈 明 記 の 冒 頭 は、 こ の 語 を 以 て 始 ま る。 (4) 拙 稿 ﹁ 山 王 神 道 と 一 字 金 輪 仏 頂 ﹂ ( 印 度 学 仏 教 学 研 究、 八 の

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二 ) ﹁ 再 び 山 王 神 道 と 一 字 金 輪 仏 頂 に つ い て ﹂ ( 天 台 学 報 創 刊 号 )、 ﹁ 台 密 の 蘇 悉 地 に つ い て ﹂ ( 印 度 学 仏 教 学 研 究 一 〇 の 一 )、 ﹁ 慈 覚 大 師 の 密 教 に お け る 一 二 の 問 題 ﹂ ( ﹁ 慈 覚 大 師 研 究 ﹂ 収 載 ) 参 照。 (5) 台 密 の 蘇 悉 地 が ど の よ う に し て 形 成 さ れ た か に つ い て、 旧 稿 に 考 説 を 試 み た が、 不 明 の 点 が 少 く な い。 特 に 入 唐 し た 円 仁 ・ 円 珍 が 蘇 悉 地 に つ い て ど の よ う に 受 法 し た か 判 然 と し な い の で あ る。 最 近、 長 部 和 雄 教 授 ﹁ 唐 代 後 期 の 純 密 と 日 本 仏 教 ﹂ ( 密 教 文 化 六 七 号 ) は、 こ の 点、 極, め て 示 唆 に 富 み 禅 益 せ ら れ る も の で あ り、 さ ら に 別 稿 の 準 備 が あ る 由 に て そ れ を 期 待 し た い。 し か し、 ﹁ 蘇 悉 地 ﹂ に お い て 蘇 悉 地 経 及 び 円 仁 の 同 疏 が 中 心 に な る こ と は い う ま で も な く、 そ れ に 関 連 し て 三 種 悉 地 法 が 重 要 な 鍵 を も つ こ と は、 私 も 旧 稿 に お い て 指 摘 し て き た と こ ろ で あ る が、 実 は 三 種 悉 地 の ﹁ 三 真 言 ﹂ の 記 さ れ て い る 破 地 獄 儀 軌 は 入 唐 八 家 に よ っ て も 将 来 さ れ て い な い の で あ る。 そ の た め か 円 仁 は そ の 疏 に お い て 根 本 真 言 を 明 示 せ ず、 円 珍 は 決 示 三 種 悉 地 法 に お い て、 祖 師 の 最 澄 が 順 暁 か ら 受 け た 三 真 言 が そ れ で あ る と し た り、 ま た 三 真 言 の 一 一 を 大 日 経 や 金 剛 頂 経 に 出 拠 を 索 め て い る の で あ る。 更 に 安 然 の 胎 蔵 界 対 受 記 に お い て は、 ﹁ 安 然、 近 得 室 尊 勝 破 地 獄 法、 有 二 此 等 三 種 悉 地 真 言 一。 ﹂ と、 安 然 に よ り 初 め て こ の 儀 軌 が 依 用 さ れ る の で あ る。 し か も な お 安 然 は 摸 索 し て 別 行 経 の 心 地 根 本 神 呪 を 蘇 悉 地 の 根 本 真 言 だ と し て も い る。 三 本 の 破 地 獄 儀 軌 は、 そ の 中 に 五 行 思 想、 乃 至 は 道 教 思 想 を 含 み 極 め て 興 味 深 い も の で あ る が、 そ の 伝 播 流 行 に つ い て は 不 明 で あ っ て、 む し ろ 上 下 に 流 布 ・ 信 仰 さ れ た の は 尊 勝 ダ ラ ニ 経 及 び そ の 真 言 で、 早 く は 不 空 以 前 よ り 宋 明 に ま で 至 っ て い る。 凡 そ、 密 教 で 重 要 な も の は、 先 ず 本 尊 乃 至 は 曼 茶 羅 と 契 印 と 真 言 で あ っ て、 こ れ ら を 顧 慮 し な い 教 理 ・ 儀 相 は 求 法 の 阿 闊 梨 に は さ し て 必 要 で な か っ た と 思 わ れ る。 上 中 下 品 の 悉 地 を 求 め る 教 説 が 諸 経 軌 に 示 さ れ て い た と し て も、 や は り そ れ よ り は ア ビ ラ ウ ン ケ ン 等 の 真 言 に 示 さ れ る 如 来 の 支 分 生 の 五 輪 観 が 成 立 し な け れ ば 妙 成 就 と な り 得 な い の で は 無 か ろ う か。 唐 末 に お け る 胎 金 の い わ ゆ る 両 部 を 融 合 し ょ う と す る 気 運 は 一 般 の 想 像 外 に 熾 烈 で あ っ た よ う で あ る。 そ の 結 果、 胎 金 融 合 の 桀儀 軌 が 偽 作 さ れ る と と も に、 胎 金 に 分 れ た 善 無 畏 ・ 金 剛 智 以 前 に 遡 っ て 胎 金 未 分 の 経 典 を 求 め る 趨 勢 が、 法 華 経 と の 合 揉 と 併 行 し た と 考 え ら れ な い で あ ろ う か。 ま た 人 の 身 体 を 上 中 下 に 分 け て、 そ の 三 品 の 悉 地 を 願 う こ と の 因 由 に 如 何 な る 意 味 が あ る か。 こ の 問 題 に つ い て は 改 め て 想 を 練 り た い と 思 う が、 そ の 中 に あ っ て 善 無 畏 訳 と さ れ る 尊 勝 仏 頂 真 言 修 喩 伽 軌 儀 二 巻 ( 正 蔵 一 八、 九 七 三 ) は、 貴 重 な 資 料 を 提 供 す る も の と 考 え て い る。 (6) 門 葉 記 門 主 行 状 一、 慈 鎮 和 尚 伝 ( と も に 大 日 本 史 料 第 五 編 之 二 ) (7) 拙 稿 ﹁ 安 鎮 法 に つ い て ﹂ (﹁ 宗 教 学 研 究 ﹂ 収 載 ) 参 照。 (8) 大 正 大 蔵 経 図 像 巻 十 一PP.364c-365a (9) こ の こ と に つ い て は、 上 述 の 拙 稿 ﹁ 台 密 の 蘇 悉 地 に つ い て ﹂ 参 照。 (10) こ の 仏 眼 部 母 信 仰 は、 奈 良 時 代 か ら 広 く 信 奉 さ れ た 吉 祥 天 女 慈 鎮 和 尚 の 仏 眼 信 仰

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密 教 文 化 へ の 祈 請 と 関 連 が あ る か ど う か、 問 題 と な る で あ ろ う。 ま た 喩 祇 経 は 金 剛 智 訳 と い わ れ る が、 勿 論 後 の 偽 撰 で あ る。 し か し 唐 末 の 密 教 に い か に 流 布 信 奉 さ れ た か 不 明。 恐 ら く 安 然 の 注 釈 が 最 初 で あ ろ う か。 と に 角 胎 金 合 繰 思 想 を 考 え る 上 に 重 要 な 経 典 で あ る。 (11) 基 好 は 穴 太 流 の 聖 昭 の 弟 子 と い う か ら、 穴 太 流 の 傾 向 が 多 い で あ ろ う が、 必 し も そ れ に 限 ら ず 諸 流 に 亘 っ て 造 詣 が あ っ た よ う で あ る。 (12) 本 文 に ﹁ 悉 地 成 就 之 時 ﹂ と あ る が、 ﹁ 悉 地 ﹂ と は 本 来 巴 & 巨 の 音 訳 で あ る の に、 こ こ で は 漢 字 の 意 か ら ﹁ 悉 く ﹂ と し て い る。 こ の 例 は 多 い。 (13) こ れ ら の 経 緯 に つ い て は、 増 鏡 巻 十 五、 大 日 本 史 巻 六 十 八 を 参 照 し た。 ま た こ の 之 き 返 還 さ れ た 神 器 に つ い て は、 新 旧 さ ま ざ ま の 論 が あ る。 (14) 福 井 康 順 先 生 ﹁ 神 皇 正 統 記 の 形 成 と 儒 仏 二 教 ﹂ ( 東 洋 思 想 史 論 孜P.304 ) に、 東 寺 文 書 に あ る 後 醍 醐 天 皇 の 仏 舎 利 へ の 震 翰 ﹁ 国 家 鎮 護 之 本 尊、 朝 廷 安 全 之 秘 術、 無 レ 如 二 此 霊 宝 一。 ﹂ と あ る の を 引 用 さ れ、 ﹁ こ の 仏 舎 利 へ の 信 仰 は、 上 来 見 て い る 神 器 へ の 信 仰 と 即 ち 観 念 的 に は 繋 が り の あ る こ ど は 否 定 す べ く も 無 い よ う で ⋮。 ﹂ と、 極 め て 示 唆 に 富 ん だ 叙 述 を し て お ら れ る。 す な わ ち 後 醍 醐 天 皇 は 東 寺 の 禅 助 か ら 灌 頂 許 可 を 受 け、 東 寺 や 高 野 山 へ の 崇 信 が 篤 か っ た の で あ り、 随 っ て 台 密 と 同 じ く 東 密 に も、 神 器 の 中 の 玉 と 舎 利 ( 宝 珠 ) と は 同 一、 と の 考 え が あ っ た の か と 想 わ れ る。 い わ ば 北 朝、 南 朝 と も に 神 器 を 中 心 と し た 密 教 信 仰 が 行 わ れ て い た こ と を 窺 う の で あ る。 附 記 吉 水 蔵 ﹁ 毘 逝 ﹂ に つ い て は、 註(1) に 記 し た ﹁ 慈 鎮 和 尚 の 密 教 思 想 ﹂ に 述 べ た よ う に、 文 治 六 年 ( 一 一 九。 ) 以 後 と 推 定 さ れ る か ら、 慈 円 ( 一 一 四 七-一 二 二 五 ) に お い て は、 い わ ば 円 熟 期 に 入 っ て の 記 述 と 見 な し て よ い で あ ろ う。

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