[様式-学 5]
博士論文要旨
論文題名:細菌由来 α-1,3-グルカナーゼの構造と 機能解析
立命館大学大学院生命科学研究科 生命科学専攻博士課程後期課程
わさな すよーたー
WASANA SUYOTHA
Bacillus circulans KA-304由来 α-1,3-グルカナーゼ (Agl-KA)は糸状菌の生育の阻害 及び担子菌のプロトプラストの生成に寄与する有用な酵素で、Glycoside hydrolase family 87
(GH87)に分類される。一次構造解析の結果、Agl-KAは N-末端から順に、触媒機能を持っ
ていない複数の補助ドメイン(ディスコイジンドメイン I (DS1)、 多糖結合ドメイン ファ ミリー 6(CBM6)、ディスコイジンドメイン II(DS2)、 機能不明なドメイン(UCD)) 及び触 媒ドメインと推定される各ドメインから構成されていることが分かった。Agl-KAの N-末端 領域のドメインの機能を調べた。作製した各ドメイン欠失酵素の性質を検討した結果、各 N-末端ドメインは細胞壁の加水分解反応を効率よく触媒するためには、必要不可欠である ことを明らかした。また各ドメインとGFPの融合タンパクを構築し、不溶性基質及び S.
commune菌糸に対する結合能を検討した。その結果、Agl-KAはDS1、CBM6及びDS2複
合効果により、糸状菌の細胞壁への結合性が強くなり、細胞壁を効率的に分解できるもの と考えられた。基質結合メカニズムを理解するため、最も基質結合能の高いCBM6に着目 し、CBM6の基質結合に関るアミノ酸残基を探索した。その結果、4残基の芳香族アミノ 酸 (W213, W218, W272, W275) とアスパラギン (N304) が α-1,3-グルカンの結合に関与 していることが明らかとなった。次にAgl-KAの触媒ドメインの機能解析を行った。Agl-KA による α-1,3-グルカンの加水分解物を解析した結果、本酵素はエンド型酵素であり、主な 生成物は二糖、三糖及び四糖であった。さらに化学修飾法及び部位特異的変異導入法を用 いて触媒残基を調べた結果、D1067、D1090及びD1091がAgl-KAの活性に必須なアミノ酸 残基であることが明らかとなった。これらをアスパラギンとグルタミン酸へ置換した各変 異酵素の反応速度論パラーメータを調べた結果、D1091が活性部位内の基質結合に関わる 残基であり、D1067及びD1090が触媒残基である可能性が示唆された。次に、Agl-KAとは 異なる触媒特性を有する α-1,3-グルカナーゼとして、Paenibacillus glycanilyticus FH11由 来 α-1,3-グルカナーゼの研究を行った。P. glycanilyticus 培養ろ液から 2 種の α-1,3-グル カナーゼ(Agl-FH1とAgl-FH2)を単離した。両酵素のアミノ酸配列及び反応特性を解析した 結果、Agl-FH1とAgl-FH2はイソ酵素であることを明らかにした。両酵素遺伝子をクロー ニングし、一次構造ならびに系統樹解析を行った結果、Agl-FH1はAgl-KAおよび既知 α-1,3-グルカナーゼと異なる新規なサブファミリーに属する酵素であることが明らかと
なった。