• 検索結果がありません。

ALMAデータアーカイブを用いたPolar Ring Galaxy Arp230の回転曲線と質量分布の導出

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ALMAデータアーカイブを用いたPolar Ring Galaxy Arp230の回転曲線と質量分布の導出"

Copied!
35
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学位論文

ALMA

データアーカイブを用いた

Polar Ring Galaxy Arp230

の回転曲線と質量分布

古市 拓真

明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系

天文学研究室

(2)

概要

宇宙には,様々な種類の銀河が存在する.我々が住んでいる天の川銀河のような渦巻き銀河,楕円銀河,

それに含まれない不規則銀河などである.その中で非常に特殊な構造を持った銀河が,Polar Ring Galaxies

(PRGs)である.PRGsは,主銀河の長軸に対して垂直なリング構造を持った銀河で,2つの構造はそれぞ

れ異なる速度を持つマルチスピンであり,それらのコアはほぼ一緒であると定義されている(Whitmore et

al.1990).リングは星,ガス,ダストで構成され,中性水素(HI)ガスなどの電波観測によってガスが豊

富にあることが明らかになっている.このようなPRGsの力学構造を詳細に調べることにより,その特殊な

形態がどのように進化してきたのかを観測的に研究することが可能である.

 本研究では,ALMA望遠鏡のCycle0で得られたPRGsであるArp230(観測輝線:一酸化炭素CO(J=1-0))

について解析を行った.データは,ALMAデータアーカイブから取得した.サンプルの決定は,過去に異

なる電波望遠鏡にて行ったCO輝線観測においてnoisyであった(Galletta et al.1997)こと,HIガスによる

観測によって銀河の回転曲線が得られている(Schiminovich et al.2013)ことを考慮して行った.

 ALMA望遠鏡のデータ解析は,CASA(Common Astronomy Software Applications)を用いた.ALMA

データアーカイブから取得したデータは品質保証といって1次解析済みのものであるので,CASAを用い て2次解析を行い,積分強度図,平均視線速度図,速度分散図を得た.これらの解析からPosition-Velocity DiagramよりArp230の回転曲線を導出した結果,銀河中心コアより1.3kpcの場所でCOガスの回転速度が 100km s−1を超えることがわかった.更に銀河を球対称と仮定したとき力学平衡より次のような式が得ら れる. MdynV2 rotR G M⊙ この式を求めた回転曲線に適用すると,銀河中心コアからの距離に対しての質量分布が得られる.これ により銀河中心コアより1.3kpcの半径の中に3.02 × 109M ⊙の質量が存在することがわかった.また,積分 強度図よりCO分子ガスの輝度を求め, LCO= 3.25 × 107SCO∆v ν−2obs(1+ z)−3D 2 L MH2= αCOLCO の式(Solomon et al.1992)を用いて分子ガス質量を見積もったところ7.49 × 107Mとわかった.

(3)

目次

概要 i 第1章 序章 1 1.1 銀河の形態と種類 . . . 1 1.1.1 ハッブルの音叉図. . . 1 1.1.2 楕円銀河とレンズ状銀河 . . . 2 1.1.3 渦巻銀河 . . . 2 1.1.4 相互作用銀河 . . . 2 1.2 銀河の回転曲線 . . . 3 1.2.1 銀河系 . . . 3 1.2.2 系外銀河への応用. . . 4 1.3 銀河の質量. . . 4 1.3.1 力学的質量と質量分布 . . . 4 1.3.2 分子ガス質量 . . . 5

1.4 Polar Ring Galaxies . . . 7

1.4.1 Polar Ring Galaxiesとは . . . 7

1.4.2 進化シナリオ . . . 9 1.5 本研究の動機と目的 . . . 10 第2章 電波望遠鏡 11 2.1 電波望遠鏡とは . . . 11 2.2 ALMAとは . . . 11 第3章 データ解析 12 3.1 Polar Ring Galaxy Arp230 . . . 12

3.2 データの入手 . . . 14

(4)

3.4 CASAを用いた解析方法 . . . 15 3.4.1 観測情報の入手 . . . 15 3.4.2 CLEAN . . . 15 3.5 観測結果から得られるマップ . . . 16 3.5.1 チャネルマップと積分強度図 . . . 16 3.5.2 速度場図と速度分散図 . . . 16 3.5.3 Position-Velocity Diagram . . . 17 3.6 回転曲線の導出 . . . 17 3.6.1 はじめに . . . 17 3.6.2 導出手順 . . . 17 第4章 結果 18 4.1 解析結果 . . . 18 4.2 分子ガス質量の計算 . . . 22 第5章 議論 23 5.1 他波長との比較 . . . 23 5.2 HIガスとの回転曲線の比較 . . . 26 5.3 分子ガス質量の赤方偏移補正問題 . . . 27 第6章 まとめ 28 付録A 研究結果におけるデータ表 29 A.1 回転曲線と質量分布の導出 . . . 29 謝辞 30 参考文献 31

(5)

1

序章

1.1

銀河の形態と種類

1.1.1

ハッブルの音叉図

ハッブル(1936)は,可視光線を用いて数100個の銀河を観測し銀河の形態分類(ハッブル分類)を 行った最初の人物である.今日では,ハッブルの音叉図として知られ,音叉の持ち手の部分は楕円銀河 (Ellipticals),叉の部分は渦巻銀河(Normal and Barred spirals)で構成されている(図1.1).楕円銀河は,

E0からE7までクラス分けされており,その数字は見かけ上の扁平率を表し,銀河の表面輝度分布を楕円で

近似し,長軸の長さをa,単軸の長さをbとしたとき,10(1-b/a)を計算した整数値である.渦巻銀河は,銀河

中心に棒構造がある銀河(Sa),棒構造がない銀河(Sb),更に渦状腕の巻き込み具合によって細分化され

る.また,バルジとディスクを持つが渦状腕が見られない銀河をレンズ状銀河(S0)として分類している.

これらに分類できなかった銀河は2-3%あり,それらを不規則銀河(Irr)とした.

一般的に楕円銀河とレンズ状銀河のことを早期型銀河(Early Type Galaxies : ETG),渦巻銀河のことを

晩期型銀河(Late Type Galaxies : LTG)と呼ぶが,これはハッブルがこれらの銀河が早期型から晩期型に

進化するだろうと推測したことからきている.だがこのハッブルの推測は間違いであると理解されており, 近年の研究ではその進化方向は反対であると考えられている.

(6)

図1.2:楕円銀河NGC3377(HST画像) 図1.3:渦巻銀河NGC1232(Hale画像)

1.1.2

楕円銀河とレンズ状銀河

楕円銀河の特徴は,表面輝度が銀河の中心から周辺に向かって減少することであり,また低温のガスや 塵が見られないことにより最近の星形成活動がないことがわかる.大部分の楕円銀河の回転速度は,その 扁平率を生じさせるために必要な速度には達しておらず(Halliday et al.2001),その形状は星の非等方的 な速度分散σ(ランダム運動)によって支えられている. レンズ状銀河は,渦巻銀河のような薄いディスクを持ちながら,楕円銀河と同じくガスやダストをほと んど含まないものが多く,星形成も活発的でない.

1.1.3

渦巻銀河

我々太陽系が属している銀河を天の川銀河というが,これも渦巻銀河である.その特徴は,バルジや回 転している円盤,銀河全体を囲むように球状に分布するハローの構造を持っている,早期型銀河とは異な り星だけでなく大量のガスとダスト(星間物質)を含んでいることである.星間物質(Interstellar medium; ISM)は,渦巻銀河のディスク赤道面の薄い層,渦状腕に沿って多く分布しており,星形成が活発である. バルジは,楕円銀河と同様にランダム運動をしている.

1.1.4

相互作用銀河

ハッブル分類において,不規則銀河には様々な形状をした銀河が含まれている.それらは広義的に,マ ゼラン雲に代表されるような星形成をしているが渦状腕を持たない銀河,M82に代表されるような特異な 銀河の2つに分類できる.後者の特異な銀河の大部分は,銀河同士の相互作用(衝突)によってできたこ

とがシミュレーションによって明らかになっている(Toomre & Toomre.1972).それらを相互作用銀河

(Interacting galaxy)と呼ぶ.相互作用する銀河は互いが及ぼす潮汐力により形を変え(tidal tail/ bridge),

(7)

図1.4:不規則銀河M82(明星大学天文台)

1.2

銀河の回転曲線

1.2.1

銀河系

前述の通り,天の川銀河(銀河系)は円盤を持った渦巻銀河であり,その後の星の視線運動や固有運動 の解析、中性水素ガス(HI)の21cm輝線のドップラー効果の観測から回転の様子が明らかになっている. HIによる観測では,光学的厚みが比較的小さいためほとんどの領域で銀河を奥行き方向に見通すことが可 能である.観測によると,銀河系の回転速度の最大値は,銀河中心から300 pcのところで250 km s−1,最 小値は3 kpcのところで200 km s−1,そして6kpcまで穏やかに減少すると太陽円までフラットな曲線となる (Sofue & Rubin.2001).このように銀河中心距離Rの関数として銀河回転速度V(R)を表したものを回転

曲線(Rotation Curve)という.

図1.5:様々な観測により示された銀河系の回転曲線(Sofue 2009).銀河のバルジ,円盤,ダークハローによるフラッ トな回転構造がはっきりと示されていることがわかる.

(8)

1.2.2

系外銀河への応用

系外の渦巻き(円盤)銀河でも,銀河系と同様な観測によって回転曲線を得ることができる.しかしHα 線のドップラー効果を用いた光学観測では,銀河中心部のバルジや中心核の明るい光に邪魔される,HIガ スは,銀河の外側には多量に分布しているが中心付近では希薄なためどちらの観測を用いても精度が悪い. そこで,銀河中心部に多量に存在する一酸化炭素(CO)のミリ波観測を用いることによって,銀河中心部 の詳細な回転曲線を得ることができる.その導出方法は3.6で述べることにする. 図1.6:完璧にサンプリングされた渦巻銀河の回転曲線(Sofue 1999).観測輝線はCO,Hα、HIのデータを使用.

1.3

銀河の質量

1.3.1

力学的質量と質量分布

銀河の中の星やガスの運動から評価した質量を力学的質量(Dynamical mass)という.一般に, Dynamical

massはある系を考えたときに,その系が力学的平衡状態であるときに成り立つビリアル定理を利用して評 価する.その系の運動エネルギーをK,ポテンシャルエネルギーをWとすると 2K+ W = 0 (1.1) である.系の全エネルギーEE= K + W (1.2) なので, E= −K = W 2 (1.3) の関係を得る.系の質量をM,サイズをrとすればポテンシャルエネルギーは W= −GM 2 r (1.4)

(9)

である.系を構成する粒子の速度分散の平均をvとすれば,運動エネルギーKK= 1 2Mv 2 (1.5) となる.これらより M= rv 2 G (1.6) を得る.渦巻銀河の場合,半径rでの回転速度をv(r),また質量分布を球対称と仮定して半径rの内側の質量 をM(r)とする.重力と遠心力の関係より v2(r)=GM(r) r (1.7) である.これより半径rの内側の全質量M(r)として M(r)= rv 2(r) G   (1.8) を得る. これを回転曲線に適用すると,銀河中心距離Rの関数として質量分布M(r)を表すことができる.

1.3.2

分子ガス質量

星間空間中に存在する分子ガスの主成分は水素分子(H2)であり,その量より分子ガス質量(Molecular gas mass)を求めることができる.しかしH2分子は永久双極子モーメントを持たないので,通常は回転遷 移の輝線を放出しない.H2分子の次に豊富に存在する一酸化炭素分子(CO)は,双極子モーメントを持つ ので,回転遷移の輝線を放射する.また,波長2.6mmのCO(J= 1 − 0)輝線は大気の窓を通り抜けるので地 上からの観測が可能である. 分子ガス質量を求める標準的な方法は,このCOの輝線光度(Luminosity)からH2分子の量を算出するこ

とである.この変換係数をCO luminosity-to- H2mass conversion factorといい,XCOやαCOと記述する.

観測によって得たCOの強度(Intensity)と分子ガスの柱密度(Column density)には,

N(H2)= XCOW(CO) (1.9) の関係がある.N(H2)は柱密度でcm−2,W(CO)=W(12C16O J= 1 − 0)は積分輝線強度でK km s−1と表す.全 分子ガス質量をMH2(M⊙)としたとき,CO輝線光度LcoLcoとの関係は以下のようになる. MH2= αCOLCO (1.10) または, MH2= αCOLCO (1.11) ど ち ら のConversion factorを ど の よ う な 値 に 決 定 す る か は ,対 象 天 体 の 赤 方 偏 移 や 金 属 量 な ど で 変 わ っ て く る .Solomon & Barrett.(1991)は ,天 の 川 銀 河 と 近 傍 の 渦 巻 銀 河 のConversion factorを XCO= 2.2 × 1022cm−2(K km s−1)−1,さらにαCO= 4.8 M⊙pc−2(K km s−1)−1と求めた.

(10)

分子ガス質量を計算するためは,まずCO輝線光度LCOを求める必要がある.単位周波数あたり毎秒Pの放 射エネルギーを出している天体Aを考えると,時刻tQで放射された光子は時刻t0で固有面4πD2上にある.赤 方偏移を無視すると,固有面場にある観測点Oで受ける電波強度(フラックス密度)は, S = P 4πD2 (1.12) である.天体Aが発信したときとO点で受信したときでは,単位時間あたりの光子数は保存されなければな らないので P∆tQ νobs = 4πD2S∆t0 νrest (1.13) となる.赤方偏移を考慮すると

νrestL(νrest)= 4πDobsS (νobs) (1.14)

ここでCO輝線光度をLCO(L⊙)とすると

LCO= 1.04 × 10−3SCO∆vνrest(1+ z)−1D2L (1.15)

となる(Solomon et al.1992).ここでSCO∆vは,天体の電波強度(velocity integrated flux)でJy km s−1,

νrest(1+ z)−1は静止周波数でGHz,D2Lは光度距離(luminosity distance)でMpcで表す.

 また全輝線フラックスの観点から,天体の任意の大きさより求める場合,修正を加えた輝線光度LCO (Jy km s−1pc2)を以下の式で表せる. LCO= 3.25 × 107SCO∆v ν−2obs(1+ z)−3D 2 L  (1.16) 求めたLCO′ と適切なconversion factorを式(1.11)に代入させることにより,分子ガス全体の質量を見積もる ことができる.

(11)

1.4

Polar Ring Galaxies

1.4.1

Polar Ring Galaxies

とは

Polar Ring Galaxies(PRGs)とは,星やダストによって構成されているリング若しくはガスの円盤が、 主銀河(central galaxy)の長軸に対して垂直に近い構造を持つ銀河のことである(Whitmore et al 1990).

双方の速度成分は全く別物なマルチスピン構造を持っており,多くの主銀河はガスが乏しいETGであり,

それに比べてPolar-Ringは,広がったHIガスと若い星を伴ったLTGに近い,レンズ状銀河の∼0.5%ほどに

Polar-Ringが存在することがわかっている(Whitmore et al.1990; Reshetnikov et al.2011).

PRGsの形状は,主銀河とPolar-Ringの傾きによって異なる(図1.7).この図には,平らな円盤と直角なリ

ングの2つの構造(内側の円盤と外側のリングの半径はほぼ同じサイズ)が描かれている.角度αをリング

の回転量とし,続いて角度βを円盤を回転させた回転量として表している.Whitmoreはこの論文でパロマー

天文台などの観測によって157個のPolar Ring Catalog(e.g., A0136-0801 [=PRC A-1])を作成し,それぞ れ四つの種類に分類した.以下にその分類方法を記述する.

図1.7:PRGsの角度による見え方の違い(Whitmore et al.1990).ある特定の方向からしか観測できないので, Polar-Ringの同定は難しいことがわかる.

(12)

カテゴリーA :力学的にPRGsと同定された天体 1. 分光観測の結果より二つの直行した角 運動量ベクトルが存在する. 2. 二つの構造とも同程度の速度を持ち,中 心部がほぼ同じである.Polar-Ringは内 部の構造のサイズに比べて明るく平ら である. 図1.9:PRC A-5(NGC4650A) カテゴリーB : PRGsの良い候補天体 1. 観 測 に よ る 力 学 的 な 同 定 は さ れ て い ない. 2. カテゴリーAの要素2.3.が含まれて いる. 図1.10:PRC B-1(Arp230) カテゴリーC : PRGsだと思われる天体 カテゴリーCに分類された銀河が相互作用 銀河やMerger Galaxyの場合,銀河の短軸方 向に異なった構造が存在する場合がある. Polar-Ringは図1.7のように様々な見方ので きる構造なので,短軸方向の構造が結果と してPolar-Ringであるかどうかの判断は難 しい. 図1.11:PRC C-13(NGC660) カテゴリーD :構造的にPRGsと関連がある天体 カテゴリーAで示したPRGsの特徴を若干共 有する天体.これに分類された銀河はPRGs でない可能性もある.以下に示す天体が含 まれている.  図1.12:PRC D-13(NGC3718)

(13)

• ダストレーンを持つ楕円銀河

• メイオール天体

• Smoke ring galaxies • Superpositions of galaxies • Theta galaxies

• Hoag-type galaxies

更にMoiseevは,Soan Digital Sky Survey(SDSS)を用いた観測によって新たにPRGsを238個カタログ化 し,Polar-Ringの構造がはっきりと観測された天体の総数を増やした(Moiseev et al.2011).これにより, PRGsのより良い統計的性質が理解できることになった.

1.4.2

進化シナリオ

PRGsの構造を理解する上でその銀河の進化過程を研究することは非常に重要である.ここでは現在議論 されているPRGsの2つの進化シナリオを簡単に紹介する. 銀河衝突シナリオ  これは,2つの渦巻き銀河同士が直角衝突し,その結果Polar-Ringが形成されたというシナリオで

ある(Bekki 1997,1998).その2つの銀河をintruder(衝突してくる)銀河とvictim(衝突される)銀

河で表している.双方の銀河の相対速度が大きい場合,それは車輪銀河ESO 350-40で知られるよう

な衝突となり(Horellou & Combes.2001),Polar-Ringではなく主銀河を囲まないリングを一時的

に作る.双方の銀河の相対速度が小さい場合,その重力相互作用のためにガスを含んだvictim銀河は

Polar-Ringに変化し,intruder銀河は主銀河と成る.シミュレーションの結果では,相互作用を起こ してから2.4Gyrsほど経つとPolar-Ringに変化する(Bournaud & Comves.2003).

ガスの降着シナリオ

 主銀河によって他の銀河からガスの降着が起こり,Polar-Ringを形成したというシナリオである

(Schweizer et al.1983; Reshetnikov & Sotnikova.1997).我々銀河系も,マゼラニックストーム (Haud 1988)という巨大なガスの降着によってかすかにPolar-Ringを持っている.系外銀河のまわ りのリングは質量がより大きく,ガスが豊富にある銀河からの降着によって成り立っている.この

シナリオは,2つの銀河が相互作用を起こしていると仮定しており,更に潮汐相互作用は衝突が起こ

(14)

図1.13:2つ の 渦 巻 銀 河 の 衝 突 の 模 式 図(Bournaud & Comves.2003).Θ : Intruder銀河の傾き,Φ :

Vic-tim銀河の傾き,R : Intruder銀河の衝突点,V :

In-truder銀河の衝突時の相対速度

図1.14:Polar-Ringの時間変化による形成過程(Bournaud & Comves.2003).Θ = Φ = R = 0.青: Intruder銀 河(星),赤: Victim銀河(星)緑: Victim銀河(ガ スとガスから生まれた星)

1.5

本研究の動機と目的

上記の通り,PRGsの進化の過程について積極的な観測やシミュレーションを用いた研究がなされている が,まだ解明できていない部分が多々存在する.その力学構造を理解することは銀河進化の解明において 重要な要素であると考えており,またPolar-Ringにはガスが豊富に存在するので電波を用いた観測によって それを紐解いていくことが本研究の目指すところである.まずはPRGのPolar-Ringの分子ガスを捉えたデー タを解析し,回転曲線と質量分布を導出することによって,その構造を理解することが目的である.

(15)

2

電波望遠鏡

2.1

電波望遠鏡とは

電波とは,電磁波の一種である.その波長は可視光よりも長く(0.1mm − 0.1Gm),短い方からサブミリ 波,ミリ波,マイクロ波,極超短波,極短波,中波,長波,超波長,極超長波長と細分化される. 電波望遠鏡とは,天体からくる電波を観測する望遠鏡である.1931年にK.Janskyがアンテナを用いて銀 河系中心より発信されていた電波を偶然発見して以降,様々な電波望遠鏡が建設された.電波天文学が得 意とする分野は,星間物質や恒星形成、銀河系の高エネルギー粒子と磁場,更には,活動銀河核やマイクロ クエーサーなど多岐にわたる. 図2.1:ALMA望遠鏡 図2.2:電磁波の波長とその名前

2.2

ALMA

とは

ALMA(望遠鏡)は,正式には「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」という.ALMAは,南米チリ 共和国北部,アタカマ砂漠の標高5000mの高原に建設された.アタカマ砂漠は,降水量が少なく標高が高 いため,水蒸気による電波吸収の影響を受けにくい.そのため,ALMAの観測波長域である,電波のなか でも波長が短い「ミリ波」や「サブミリ波」を捉えることができる.ALMAは,パラボラアンテナを66台 組み合わせる干渉系方式で,1つのアンテナは直径12mで,アンテナを50台組み合わせるアンテナ群と,直

(16)

3

データ解析

3.1

Polar Ring Galaxy Arp230

本研究の目的は,Polar-Ringに豊富に存在するガスの運動を探ることにあるので,以下の項目を満たすこ

とを条件としてサンプルを決定した.この条件を満たした天体はアープの特異銀河であるArp230である.

• Polar Ring Galaxy(Whitmore et al.1990; Moiseev et al.2011)として分類されている銀河 • Polar-Ringがはっきり見えていること • 回転曲線導出のためPolar-Ringのinclinationがなるべく小さいこと • 先行研究でHIガス,またはCO輝線観測が行なわれていること 図3.1:Arp230のHST合成画像. Arp230(IC51)は,シェル構造を持った楕円銀河として知られ (Whilkinson et al.1987),そのシェル構造は可視光ではっきりと 見ることができる(Hernquist & Quinn.1988).その後Whitmore et

al.(1990)が楕円銀河の中心に存在する円盤に見える構造を

Polar-RingとしPRGsに分類(PRC B-1)した.Polar-Ringに存在するダス

トレーンはHST/WFPC2のVバンドで見ることができる.

さらにArp230は過去に様々な波長で観測がなされており,1993 年にVery Large Array; VLAのD,C,B configurationsで観測され (Schiminovich et al.2013),同年にキットピーク天文台の12m電波 望遠鏡にてCO(J=1-0)輝線観測(Galletta et al.1997),1995年に 近赤外線のJ,H,Knバンド観測(Iodice et al.2002),2011年にALMA望遠鏡にてCO(J=1-0)輝線観測 (Ueda et al.2014)などが行なわれている. Schiminovich et al.(2013)では,シェル構造を含んだArp230全体のHIガスの観測に成功しており,銀河 中心コアを中心とした回転曲線を導出している.またGalletta et al.(1997)では,データがnoisyであった

ため物理量を出すまでにとどまっている.Ueda et al.(2014)では,Arp230のPolar-Ringが円盤(リング)

の構造であることを分子ガスの運動から結論づけている.本研究では,ALMA望遠鏡で得られたデータを

再解析して回転曲線を導出し,さらにHIガスでの回転曲線との比較することにより,Polar Ringとその外側

(17)

表3.1:天体データ パラメーター Arp230(IC51) Right Ascention(J2000) 00h46m24.2s Declination(J2000) -13d26m32 ハッブル分類 レンズ状銀河 光度距離 23.9Mpc スケール[/1′′] 116.3pc 後退速度 1742km/s 大きさ(長軸) 8.66kpc 大きさ(単軸) 6.41kpc MHIM⊙) 1.2 × 109 SFR(Myr−1) 41 【主銀河】 Position Angle 30◦1 Inclination −44◦1 【Polar-Ring】 Polar-ring半径 hoge Position Angle 113◦2 Inclination 65◦2 回転速度 hoge 【シェル構造】1 Position Angle 40◦ シェルの数 8個 1 Schiminovich et al.2013 2 Ueda et al.2014 図3.2:Arp230のHST(WFPC2/V-band)画像.銀河を包み込むシェル構造が2つ,右肩あがりの円盤(リング)構造, 画像では白い雲のように見えるのがダストレーンである.シェル構造は,さらに大きいスケールで見ると8つあ ると推定されている(Schiminovich et al.2013).HST-Archiveのデータは,座標がうまくCASAで読み込まれ ないことが多いので,DS9を使用して座標変換を行いその後CASAにて表示した.そのため画像の端が切れてし まっている.Data range[0,0.5]; Scaling Power Cycles[-2]

(18)

3.2

データの入手

ALMA望遠鏡のデータを取得するには2種類の方法がある.

ALMA Archive

ALMA望遠鏡のホームページのアーカイブ(almascience.nrao.edu/alma-data/archive)より直接ダウ

ンロードすると天体のRawデータを入手することができる.ALMA望遠鏡で得られたデータはすべ

てQuality Assurance; QAといって,ユーザーにデータが渡る前に較正を行いデータが正常であるか

どうかを判断する作業が入る.アーカイブのデータも同様にRawデータとともに較正済みのデータ

も存在するので,どちらを使うかをサイエンスに応じてユーザー自身で判断できる. Japanese Virtual Observatory; JVO

JVOとは,世界中の天文データを集約したバーチャル天文台のひとつである.こちらではALMAの

データのみならず,すばる望遠鏡のデータも入手可能である(jvo.nao.ac.jp/portal).ALMAのデー

タに関しては,目標の天体を探しやすくバンドごとに並び替えができたりとユーザーには優しい設

計であるが,Rawデータを入手できない,積分強度図しかダウンロードできない天体があったりなど

注意が必要である.

3.3

解析ソフトウェア

解析ソフトウェアはCASA(Common Astronomy Software Applications),MIRIAD(Multichannel Image Reconstruction, Image Analysis and Display),SAOImage DS9を使用した. CASAはc++ベースのソフト

ウェアで,データ解析を行う際には対話型のiPythonインターフェイスを用いて操作する.電波干渉計で

あるALMAとVLAのデータ解析推奨ソフトウェアであるが,他にもNRO45(野辺山45m電波望遠鏡)や

ASTE(Atacama Submillimeter Telescope Experiment)など単一鏡の電波望遠鏡のデータ解析も行うことが できる.

(19)

3.4

CASA

を用いた解析方法

3.4.1

観測情報の入手

CASAのタスク

listobs

imhead

を使用するとどのような観測を行ったのかを知ることができる.

表3.2:観測諸元 諸元 ALMA Cycle 0 観測日付 2011/11/6 天体名 Arp230 RA 00:46:24.215000 Dec -13.26.32.62900 アンテナ台数 18台 観測周波数 115.271GHz

Beam Size 4.69× 3.97 arcsec

Rms 5.72mJy/beam

3.4.2

CLEAN

較正済みのデータに2次解析を行うことで電波画像を得ることができる.電波望遠鏡で得たデータの2次

解析は,CLEAN法を用いて解析を行うことが多い(Hogbom 1974).今回もCASAのタスク

clean

を用いて

電波干渉計特有のサイドローブを取り除いていく.本研究ではArp230較正済みデータに以下のパラメータ を使用してCLEANを行った. 1 casapy 2 inp clean #. C L E A Nタ ス ク の 呼 び 出 し 3 field =’1 ’  4 nchan =’80 ’ 5 start =’ 1550 km /s ’ 6 width =’5 km /s ’ 7 mode =’ velocity ’ 8 niter =’ 2000 ’ 9 threshold =’ 5.27 mJy ’ 10 psfmode =’ hogbom ’ 11 interactive =’ True ’ 12 imsize =’ [140 ,140] ’ 13 cell =’1.0 arcsec ’ 14 phasecenter =’1 ’ 15 restfreq =’ 115.271 GHz ’ 16 weighing =’ briggs ’ 17 robust =’0.5 ’

(20)

(a)dirty image (b)中心部の強いEmission (c)Emissionを拡大 (d)Emissionだけを囲み取り出す 図3.4:CLEAN法を用いた解析方法.

3.5

観測結果から得られるマップ

3.5.1

チャネルマップと積分強度図

空間2次元(l, m)と周波数νあるいは速度vの関数として,輝度分布がある.これを視線速度毎ごとに(l, m) 面でスライスしたものがチャネルマップ,全視線速度を積分して(l, m)面へ投影したものが積分強度図であ る.視線速度毎の輝度分布を見ることで,おおまかにガスの運動を把握することができる.

3.5.2

速度場図と速度分散図

空間2次元の各ピクセル毎に平均的な速度を求めたものを,速度場図という. < ν > (l, m) = ∫ ννI(l, m, ν)dν ∫ νI(l, m, ν)dν (3.1)

(21)

つまり,速度の1次モーメントを求める演算に相当する.速度場図では空間と速度の対応がつけやすく,ガ スの運動を把握するのに都合が良い.空間2次元の各ピクセル毎に速度分散を求める操作 < ν2> (l, m) = ∫ νν2I(l, m, ν)dν ∫ νI(l, m, ν)dν (3.2) は,速度の2次モーメントである.

3.5.3

Position-Velocity Diagram

ある空間方向の1軸と速度軸とで作る面に,データキューブを投影したものを,Position-Velocity Diagram (PV図)という.1.2で述べた回転曲線も,銀河の長軸と速度軸とでPV図を作成すると回転速度,enclosed

massや,回転から外れたnon-radial motionなどを知ることができる.

3.6

回転曲線の導出

3.6.1

はじめに

回転曲線の導出方法は幾らか存在する.速度場から求める方法(AIPSのタスク

GAL

を使用),Envelope

Tracing Method(Sofue 1995),Iterative Method(Sofue et al.2002)である.本研究ではEnvelope Tracing Methodを採用した.通常この方法ではHIガスとCO輝線で得られたPV図を重ね合わせて回転曲線を作成す るのだが,本研究ではHIガスのデータ解析を行わなかったためCO輝線でのPV図のみを使用して回転曲線 を導出した.さらにShimiovich et al.(2013)の論文より回転曲線をアナログ的にトレースし,双方を比較 することにする.

3.6.2

導出手順

図4.4のPV図のOffset 0′′を銀河中心コアとし+側と-側で半分にわける.そして1′′ごとに最大ピークレベル 20%の位置をプロットし,その時の視線速度を速度分解能を考慮して5km/s単位で読み取った.次に銀河の 後退速度をその値から引き算をし,Offsetの絶対値ごとに速度を平均(¯v)させた. 最後に銀河のinclinationを考慮して下記の補正を行うと,正確な銀河の回転速度vを求めることができる. v= ¯v cos(90− i) (3.3)

(22)

4

結果

4.1

解析結果

CLEANを行った後のArp230のチャネルマップが図4.2,図4.3である.周波数分解能を5km/sで解析を行っ

たので5km/sごとのマップとなっている.Arp230からの放射が確認されたチャネルを指定して図に記した.

図4.1aの積分強度図では,最大ピークレベル3.5Jy/beam.km/sの80%の場所が2つ確認できる(画像中央,画

像左).速度場図と速度分散図は,thresholdの3σでクリッピングを行った.PA=110◦として得た図4.4のPV

図では,銀河中心コア(Offset 0′′)を中心として回転運動をしていることがわかる.

(a)積分強度図.1620km/s∼1815km/sを積分.Contour: 0.2,0.4,0.6,0.8,3.5Jy/beam.km/s

(b)速度場図

(c)速度分散図

(23)

図4.2:Arp230に存在するCO(J=1-0)輝線のChannel map.右上にチャネルごとの視線速度(1620∼1715km/s),左下 にビームサイズを記してある.横軸: J2000 Right Ascension,縦軸: J2000 Declination.Contour: 0.2,0.4,0.6,

(24)

図4.3:Arp230に存在するCO(J=1-0)輝線のChannel map(1720∼1815km/s).横軸: J2000 Right Ascension,縦軸: J2000 Declination.Contour: 0.2,0.4,0.6,0.8,0.06Jy/beam

(25)

図4.4:Arp230のPV図(CASAのタスクimpvで作成).Contour: 0.2,0.4,0.6,0.8,0.06Jy/beam.Position Angle=110◦,

(26)

(a)回転曲線 (b)質量分布図 図4.5:Arp230の回転曲線と質量分布. 図4.4より3.6の手法でArp230の回転曲線(図4.5a)を導出した.銀河中心コアから0.25kpcまでは急激な 速度の上昇が見られその後緩やかなカーブとなる.更に銀河中心コアから1.3kpcの地点よりまた速度の上 昇が見られ(回転速度: 100km s−1),その後フラットな回転を見せていることがわかる.さらに図4.5aの結 果と式1.8を用いて銀河中心からの質量分布(図4.5b)を導出した.銀河中心コアからの距離に比例するよ うに質量が増加する様子がわかる.銀河中心コアから1.3kpcの地点での質量は3.02 × 108M ⊙である.

4.2

分子ガス質量の計算

式1.16に各パラメーターを代入する.ここでSco∆uは図4.1aの積分強度図で最大ピークから20%の範 囲の強度の値17.36Jy km/s,赤方偏移zを0.005736とした(他パラメーターは表3.1を参照)これにより Lco= 1.56 × 107M

⊙と求まった.さらにこの値にConversion factorをかけるのだが,本研究ではSolomon &

Barrett(1991)のαco= 4.8M⊙pc−2(K km s−1)−1を使用し計算するとMH2= 7.49 × 10

7M

(27)

5

議論

5.1

他波長との比較

図5.1は,本研究で解析を行ったArp230のCO(J=1-0)輝線の積分強度図をコン トアとしてHST-Vバンド とスピッツァー宇宙望遠鏡(SST)の赤外線カメラIRAC 4.5µmのデータとの比較をした図である.3.1で述 べた通りHST-Vバンドでは,Polar-Ringに存在するダストレーンが見えており,図5.1aではそのダストレー ンに沿うようにCOガスが存在していることがわかる.COガスは星の材料でありそれが多量に存在する場 所では星形成が活発である.可視光ではダストによる減光で隠されているPolar-Ringの星形成活動をCOガ スの分布がトレースしているのではないかと推察される.図5.2,5.3は,その比較の様子をチャネルマップ に表したものである. SST-IRAC 4.5µmとの比較を行った図5.1bでは赤外線が銀河の中心で目立って放射している.この4.5µm でのピークとCOガスのピークの一つが重なっていることからこの中央部が銀河の中心コアである可能性が 高い. (a)HST-Vバンドとの比較. (b)SST-IRAC4.5µmとの比較.画像右下は恒星.

図5.1:Arp230のALMAで得られたCO(J=1-0)輝線(Contour: 0.2,0.3,0.4,0.6,0.8,0.9,3.5Jy/beam.km/s)と他 波長(Rainbow color)との比較画像.

(28)

図5.2:Arp230のALMAで得られたCO(J=1-0)輝線(Contour: 0.2,0.4,0.6,0.8,3.5Jy/beam.km/s)とHST-Vバンド (Rainbow color)を比較したChannel map.右上にチャネルごとの視線速度(1620∼1715km/s),左下にビームサ

イズを記してある.

(29)

図5.3:Arp230のALMAで得られたCO(J=1-0)輝線(Contour: 0.2,0.4,0.6,0.8,3.5Jy/beam.km/s)とHST-Vバンド (Rainbow color)を比較したChannel map.右上にチャネルごとの視線速度(1720∼1815km/s),左下にビームサ

(30)

5.2

HI

ガスとの回転曲線の比較

また,図4.5aとHIガス(Schiminovich et al.2013)との比較を行ったところ,COガスの回転速度の方が

高いという結果(図5.4a)となった.

Schiminovich et al.では回転曲線を導出するのに速度場図を用いたTilted-ringモデルを採用している.本

研究で行ったEnvelope Tracing Methodでは,銀河のinclinationとPAを定数として計算をしている.しかし

特異銀河やMerger galaxiesの場合,その値は銀河中心からの距離によって変化するものである.従ってこ

れを補正させる方法がTilted-ringモデル(Rogstad et al.1974; Begeman 1987,1989)である.

Arp230のCOガスの分布は銀河中心コアから2kpc程度でPolar-Ringに付随しているが,それに比べてHIガ スは13.6kpcまで広がった分布をしている.1.4.1にてPRGsはマルチスピン構造を持っていると述べたが, HIガスはその2つの構造を含んでいることになる.ここでSchiminovich et al.が行ったTilted-ringモデルの 結果が図5.4bである.HIガスは銀河中心コアから離れるに従ってinclinationがなくなりPAがあがっている ことがわかる.しかしPolar-RingのCOガスは半径20′′なので外縁部でinclinationが異なる程度である.また この値を用いて再計算を行ってもCOガスの回転曲線はほぼ変わらないという結果になった.HIガスは銀河 中心部では星からの放射によって電離状態(HIIガス)となり希薄になる.HIガスで回転曲線を導出した場 合,銀河外縁部では正確な回転運動をとらえることができるが,銀河中心部ではその値は低く見積もられる 傾向がある.よってさらなる議論が必要ではあるが,図5.4aのCOガスで得られた回転曲線の方が信用でき

る値だと判断できる.またHIガスとCOガスを含めた回転曲線を導出するためにもEnvelope Tracing Method

やIterateive Methodを用いた再解析が必要である.

(a)HIガスとCOガスの回転曲線の比較 (b)銀河中心コアからの距離に対するHIガスの回転曲線,

inclination,PA(上段より),Shiminovich et al.2013

(31)

5.3

分子ガス質量の赤方偏移補正問題

式1.16は一般的には赤方偏移z> 1の高赤方偏移天体に使用するのが一般的である.Arp230の場合その 光度距離は23.9Mpcであるので近傍銀河と言える.空間的に分解できる近傍銀河は,柱密度を用いること によって分子ガス質量を見積もることができる.しかし先行研究の一つであるUeda et al.(2014)では式 1.16の式を採用している.本研究では言及していないが,Arp230の持つようなシェル構造もPolar-RIngと 同様2つの円盤銀河の衝突によって生まれた構造であると考えられている.このようなMerger galaxiesの Conversion factorの決定,分子ガス質量の計算については現在も議論が続いている.よって本研究でも式 1.16を用いて計算を行った.

(32)

6

まとめ

本研究では,ALMA望遠鏡のCycle0で得られたPRGsであるArp230(観測輝線:一酸化炭素CO(J=1-0))に

ついて解析を行った.HST-Vバンドとの比較により可視光ではダストによる減光で隠されているPolar-Ring の星形成活動をCOガスの分布がトレースしていることを推察した.またPosition-Velocity Diagramより Arp230の回転曲線を導出した結果,銀河中心コアより1.3kpcの場所でCOガスの回転速度が100km s−1を超 えることがわかった.更に銀河を球対称と仮定したとき力学平衡式と回転曲線より銀河中心距離Rの関数と して質量分布M(r)を表すことができる.これにより銀河中心コアより1.3kpcの半径の中に3.02 × 109Mの質 量が存在することがわかった.また,CO分子ガスの輝度より分子ガス質量を見積もったところ7.49×107M

とわかった.本研究では回転曲線の導出にEnvelope Tracing Methodを採用しているが,HIガスを含めずに

(33)

付録

A

研究結果におけるデータ表

A.1

回転曲線と質量分布の導出

表A.1:Arp230の回転曲線と質量分布導出のためのデータ表 銀河中心コアからの距離(kpc) 回転速度(km s−1) 質量(108M) 0 32.79 0 0.116 50.44 0.07 0.232 70.62 0.27 0.348 70.62 0.40 0.463 73.14 0.58 0.579 75.67 0.77 0.695 80.71 1.06 0.811 83.23 1.31 0.927 85.75 1.59 1.043 85.75 1.79 1.159 95.84 2.48 1.275 100.89 3.02 1.39 103.41 3.46 1.506 100.89 3.57 1.622 100.89 3.85 1.738 100.89 4.12 1.854 100.89 4.40 1.97 103.41 4.91 2.086 100.89 4.94

(34)

謝辞

本論文を執筆,研究するにあたり多くの方々にご指導頂きました.指導教官である小野寺幸子准教授に は,私が学部1年の頃より気にかけていただき,電波天文学を学ぶきっかけとなった国立天文台のサマース チューデントの紹介や天文学研究室の使用許可,研究指導や英語ゼミなど様々な面で感謝しております.ま た国立天文台ALMA棟の伊王野大介准教授や大学院生の方々にも,サマースチューデントやその後の指導 において大変お世話になりました.日比野由美実習指導員には明星大学天文台の使用の際や天文部での活 動時,国立天文台・星と宇宙の日には太陽観測所でのお手伝いなど楽しかった思い出がいっぱいあります. 天文学研究室の同期や大学院生の方々,サルベージの仲間にはゼミや日常を通して大変楽しく大学生活 を送れたと思っております.最後になりますが,私の長い学生生活を陰ながらに支えてくれた家族に感謝 致します.ありがとうございました.

(35)

参考文献

[1] Bekki K., ApJ, 490, L37 [2] Bekki K., ApJ, 499, 635

[3] Bounaud F., Combes F.2003, A&A, 401, 817

[4] Galletta G., Sage L.J., Sparke L.S., 1997, MNRAS 284, 773

[5] Halliday C., Davies R.L., Kuntschner H., Birkinshaw M., Bender R., Saglia R.P., Baggley G., 2001 MN-RAS, 326, 473

[6] Haud U., 1988, A&A, 198, 125

[7] Hernquist L., Quinn P.J., 1988 ApJ, 331, 682

[8] Horellou C., Combes F., 2001, Astrophysics and Space Science, 276, 1141

[9] Iodice E., Arnaboldi M., Sparke L.S., Gallagher J.S., Freeman K.C., 2002 A&A 391,117-126 [10] Khoperskov S.A., Moiseev A.V., Saburova A.S., 2014, arXiv:1404.1247

[11] Moiseev A.V., Sminova K.I., Sminova A.A., Reshetnikov V.P., 2011, MNRAS, 418, 244 [12] Reshetnikov V., Sotnikova N., 1997, A&A, 325, 933

[13] Reshetnikov V., Fa´undez-Abans M., de Oliveira-Abans M., 2011,Astron. Lett., 37, 171 [14] Schiminovich D., van Gorkom, J.H., van der Hulst, J.M., 2013, AJ, 145,34

[15] Schweizer F., Whitmore B.C., Rubin B.C.,1983, AJ, 88, 909 [16] Sofue Y., Rubin V., 2001 ARA&A, 39, 137S

[17] Sofue Y., 2009 PASJ, 61, 2, 153 [18] Sofue Y., 1999, ApJ, 523, 136S

[19] Solomon P.M., Barrett J.Q., 1991, Dynamics of Galaxies and Their Molecular Cloud Distributions [20] Solomon P.M., Downes D., Radford S.J.E., 1992 AJ, 398, 29

[21] Toomre A., Toomre J., 1972, ApJ, 178, 623

[22] Ueda J., Iono D., Min S.Y., Alison F.C., Desika N., Komugi S., Daniel E., Hatsukade B., Kaneko H., Matsuda Y., 2014 AJ, 214, 1

[23] Whitmore B.C., Lucas R.A., McEloy D.B., Steiman-Cameron T.Y., Sackett P.D., Olling R.P., 1990, AJ, 100, 1489

図 1.1: ハッブルの音叉図( Hubble 1936 , The Realm of the Nebulae , Yale University Press )
図 1.5: 様々な観測により示された銀河系の回転曲線( Sofue 2009 ) .銀河のバルジ,円盤,ダークハローによるフラッ トな回転構造がはっきりと示されていることがわかる.
図 1.7: PRGs の角度による見え方の違い( Whitmore et al . 1990 ).ある特定の方向からしか観測できないので, Polar- Polar-Ring の同定は難しいことがわかる.
図 1.13: 2 つ の 渦 巻 銀 河 の 衝 突 の 模 式 図( Bournaud &amp;
+7

参照

関連したドキュメント

野辺山宇宙電波観測所.一番奥の大きなパラボラ・アンテナが,レガシー観測で使用された 45

第 112 巻 第 1 号 65 ア電波物理研究所に転職)と一緒に 200 MHz

姫路科学館の4階には、

野辺山

07 「見る」ためには波長の違いに注目-反射式望遠鏡の原理と「鏡」の精度について- 図 1  野 辺 山 電 波 観 測 所

レーザの動作波長域を拡大するために,非線形光学効

用語説明 電子顕微鏡 光よりも波長の短い電子を用いることで、原子のようなより小さいものの観察を可能にし た顕微鏡。

starbursts and AGNs at a z = 3.09 protocluster core 」 と題して口頭講演を行いました. 今回の発表は私が ALMA