第 5 章 議論 23
5.3 分子ガス質量の赤方偏移補正問題
式1.16は一般的には赤方偏移z>1の高赤方偏移天体に使用するのが一般的である.Arp230の場合その 光度距離は23.9Mpcであるので近傍銀河と言える.空間的に分解できる近傍銀河は,柱密度を用いること によって分子ガス質量を見積もることができる.しかし先行研究の一つであるUeda et al.(2014)では式 1.16の式を採用している.本研究では言及していないが,Arp230の持つようなシェル構造もPolar-RIngと 同様2つの円盤銀河の衝突によって生まれた構造であると考えられている.このようなMerger galaxiesの
Conversion factorの決定,分子ガス質量の計算については現在も議論が続いている.よって本研究でも式
1.16を用いて計算を行った.
第 6 章
まとめ
本研究では,ALMA望遠鏡のCycle0で得られたPRGsであるArp230(観測輝線:一酸化炭素CO(J=1-0))に ついて解析を行った.HST-Vバンドとの比較により可視光ではダストによる減光で隠されているPolar-Ring の星形成活動をCOガスの分布がトレースしていることを推察した.またPosition-Velocity Diagramより Arp230の回転曲線を導出した結果,銀河中心コアより1.3kpcの場所でCOガスの回転速度が100km s−1を超 えることがわかった.更に銀河を球対称と仮定したとき力学平衡式と回転曲線より銀河中心距離Rの関数と して質量分布M(r)を表すことができる.これにより銀河中心コアより1.3kpcの半径の中に3.02×109M⊙の質 量が存在することがわかった.また,CO分子ガスの輝度より分子ガス質量を見積もったところ7.49×107M⊙ とわかった.本研究では回転曲線の導出にEnvelope Tracing Methodを採用しているが,HIガスを含めずに 計算を行っていることを考慮するとさらなる解析が必要であることが言える.
付録 A
研究結果におけるデータ表
A.1 回転曲線と質量分布の導出
表A.1:Arp230の回転曲線と質量分布導出のためのデータ表
銀河中心コアからの距離(kpc) 回転速度(km s−1) 質量(108M⊙)
0 32.79 0
0.116 50.44 0.07
0.232 70.62 0.27
0.348 70.62 0.40
0.463 73.14 0.58
0.579 75.67 0.77
0.695 80.71 1.06
0.811 83.23 1.31
0.927 85.75 1.59
1.043 85.75 1.79
1.159 95.84 2.48
1.275 100.89 3.02
1.39 103.41 3.46
1.506 100.89 3.57
1.622 100.89 3.85
1.738 100.89 4.12
1.854 100.89 4.40
1.97 103.41 4.91
2.086 100.89 4.94
謝辞
本論文を執筆,研究するにあたり多くの方々にご指導頂きました.指導教官である小野寺幸子准教授に は,私が学部1年の頃より気にかけていただき,電波天文学を学ぶきっかけとなった国立天文台のサマース チューデントの紹介や天文学研究室の使用許可,研究指導や英語ゼミなど様々な面で感謝しております.ま た国立天文台ALMA棟の伊王野大介准教授や大学院生の方々にも,サマースチューデントやその後の指導 において大変お世話になりました.日比野由美実習指導員には明星大学天文台の使用の際や天文部での活 動時,国立天文台・星と宇宙の日には太陽観測所でのお手伝いなど楽しかった思い出がいっぱいあります.
天文学研究室の同期や大学院生の方々,サルベージの仲間にはゼミや日常を通して大変楽しく大学生活 を送れたと思っております.最後になりますが,私の長い学生生活を陰ながらに支えてくれた家族に感謝 致します.ありがとうございました.