博 士 ( 医 学 ) 浅 野 美 佐 子
学 位 論 文 題 名
Endogenous Gamma Interferon Is Essential ‑‑ .
1nGranuloma Formation Induced by Glycolipid‑ContainingMycolic in lVIice
(Rhodococcus aurantiacusの 誘導す る 肉 芽腫形成に おける内在 性IFN‑yの意義)
学位論文内容の要旨
研究目的
RhodococcusやMycobacterium、Corynebacterium等アクチノミセス類の細胞壁には疎水 性の強いミコー´レ酸が多く含まれている。この細胞壁脂質成分はマウスに肉芽腫形成誘 導能を有する。肉芽腫jま、ある種の異物に対する慢性局所性の炎症であり、主に単球/
マクロファージ及びマクロファージ由来の類上皮細胞、リンノヾ球が集積して惹起された 病変である。肉芽腫形成には、活性化されたマクロファージやT細胞からのサイトカイ ン産生が重要であるとぃわれているが、その詳細については未だに明らかにされていな い。本研究において、Rhodococcus aurantiacus「R.aurantiacus)またはその細胞壁成分 であるミコール酸含有糖脂質(Ga GM)により誘導,されるマウス肉芽腫形成に呆たす 内在性IFN‑yの役割について多角的に検討した。
材 料 と 方 法
感染マウス:
5 週齢 ddY マウスに R.aurantiacus (108CFU/ マウス)またはGa
GM (400メg/マウス)(沢井製薬大阪研究所加藤敬香博士より恵与された)を静脈内 投与した。
モノクロ ーナル抗体(mA b)の投与:
ラット抗 マウスエ FN‑y mAb(R4‑6A2)
(Img/マウ ス)は、感 染2時間 前あるいは1、2週後に静 脈内投与し た。ラット抗 CD4 mAb(GKl.5) 、 ラ ッ ト 抗CD8mAb(53‑6.72) (400ルg/マ ウ ス )6ま 、 感 染1目 前 あ る ぃ は1週 後 に 投 与 し た 。 マ ウ ス 抗N Kl.lmAb(PK136) (5004g/
マウス)は感染3目前または1週後に投与した。対照群には同量の正常ラットグ口ブリ ンまたは正常マウスグロブリンを投与した。
IF N‑ヱ 塑 堕 室: 臓 器抽 出 液及 び 血清 中 のIFN‑yの 測定 は 、ラ ッ ト抗 マ ウスIFN
‑y mAb及 び ウ サ ギ 抗 マ ウ スIFN‑7抗 血 清 を 用 い た サ ン ド イ ッ チELISA法 に よって行った。
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組織学的検索:肝臓、脾臓、肺のH&E染色標本を用いて顕微鏡1視野内に認められる 肉芽腫 の面 積(Granuloma size)及び数(Granuloma number)を測定した。その積を Granuloma areaとし た。
免 疫組 織 染色:G aGM投 与後3迥目の 脾臓 切片 を用い て、IFN‑ン陽 性細胞 を酵 素 抗 体 法(ABC法 ) に よ り 検 出 し た 。 一 次 抗 体 に は 、 抗IFNー7mAb(R4‑6A2) を 用いた。
結果
(1)肉芽腫形成
感染後、肉芽腫は1週目頃より肝臓、脾臓、肺に形成されはじめ、3週目には成熟し た肉芽腫が観察された。肉芽腫は、非壊死性であルリンパ球、単球、類上皮細胞から 構成されていた。
(2)内在性IFN‑yの産生
組織抽出液中の内在性IFN‑ア|よ、感染直後に一過性に上昇し、再度3週目に肉芽 腫形成に相関して上昇した。組織抽出液と比較すると低レベルではあるが、血清におい てもI FN‑yカミ3週目をピークに検出された。
(3)IFN‑ア陽性細胞の検出
免疫 組織染 色法 によ り脾 臓組織 内で のI FN‑y陽 ´陸細胞を検出した。IFN‑アを 産生する細胞は、肉芽腫内またはその周囲に存在した。
(4)肉芽腫形成とI FN‑y産生のGaGM濃度依存性
G aGMの 投 与 量 を200pgか ら800pgに 増 加 さ せ る と、 エFN‑y産 生 と肉 芽腫形 成 は、濃度依存的に上昇した。 ・
(5)抗IFN‑ymAbの肉芽腫形成に及ぼす効果
肉 芽 腫 形 成 は 抗IFN‑ンmAb投 与 に よ り 有 意 に 抑 制 され た 。 特 に 初 期 のIFNー yを中和した場合は肉芽腫の数が減少し、後期のIFNーアを中和した場合は単球から 類上皮細胞への分化及び肉芽腫の発達が抑制された。
(6)T細胞 また はナ チュ ラルキ ラー (NK)細胞 枯渇 によ るIFN‑y及び 肉芽腫 形 成に及ぼす影響
初 期 の IFN‑y産 生 は 抗 NKl.lmAbに よ り 、 後 期 のIFN‑ア 産 生 は 抗 CD8 mAbに よ り 抑 制 さ れ た。 肉 芽 腫 形 成 は 、 感 染 前 の 抗NKl.lmAb処 理 、ま たは感 染 後1週目の抗CD8mAb処理により抑制された。
考察
こ の 研究 は 、R.aurantiacus及 ぴGaGMによ り誘 導され た内 在性IFN‑yが 、肉 芽 腫形 成に重要な役割を担っていることを示している。内在性IFNー7は2相性に産生 され、後期のI FN ‑yは肉芽腫の発達と強い相関性を示した。抗体投与実験より、初 期 のIFN‑yはNK細 胞 から 産生 されT細 胞の 免疫応 答性 を高 めた ルマク ロフ ァー ジ の 集 積 、活 性 化 に 働 き 、 後 期 のIFN‑yはCD8゛T細 胞 から 産生 され、 単球 の類 上 皮細胞への分化や肉芽腫の発達に関与することが示唆された。本研究の成果は,その後 発 表 さ れたBCG感 染 にお けるIFN‑yリ セプ ター遺 伝子 ノッ クア ウトマ ウス を使 用 した 研究 と、住 血吸 虫感 染に おける 抗I FN‑y mAb投与実験の成果と完全に一致し
た 。I FN‑yは 一 般 的 にCD4゛T細 胞 か ら 産 生 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る が 、 Nakaneら は り ス テリ ア 感 染 に お い て 内 在 性IFN‑yはCD4゛T細 胞 の み なら ず、N K細胞 やCD8゛T細 胞か らも産生されることを証明した。一方R.aurantiacusにより 誘 導 さ れ た 肉 芽 腫は 、IFN‑ア と 同 様 に 初 期 のNK細 胞 と 後 期 のCD8゛T細 胞に 応 答性を示した。リステリア、住血吸虫やりューシュマニア感染により誘導される肉芽腫 は、CD4゛T細胞に依存的であることが報告されている。R.aurantiacusによる肉芽腫 形 成 は エFN‑ア 産 生に 依 存 的 で あ り 、そ の担 当細 胞がNK細胞 からCD8゛T細胞 に 変化する点は興味深いところである。
結論
(1)R.aurantiacus感染及びR.aurantiacus由来Ga,GMの静脈内投与により、同様の経 過 で 3週 目 を ピ ー ク に 肝 臓 、 脾 臓 、 肺 に 肉 芽 腫 が 形 成 さ れ た 。
(2) 内 在 性IFN‑yは 、 各 臓 器 に お い て2相 性 に 産 生 され 、 感 染 直 後 のIFNーy はNK細 胞 か ら 、 感 染 後1―3週 目 のIFN‑yは 、CD8゛T細 胞 か ら 産 生 さ れ た。 肉芽腫 形成 もま た初期 のNK細胞 と後期のCD8゛T細胞に応答性を示した。
(3)内 在性IFN‑yは 、肉 芽腫病 変内 に局 在することが、免疫組織染色により明か になった。
(4) 肉 芽 腫 形 成 は 、 抗IFN‑アmAb投 与 に よ り 抑 制 さ れた 。 特 に 初 期 のIFN― アを中和した場合は肉芽腫の数が減少し、後期のIFN‑アを中和した場合は単球
, から類上皮細胞への分化が抑制された。
以 上の こ と か ら 、 肉 芽腫 病変 局所 におい てNK細胞 とCD8゛T細 胞か ら産 生さ れ た I FN‑yは 、 肉 芽 腫 の 形 成 及 び 発 達 に 必 須 の 因 子 で あ る 。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 皆 川 知 紀 副 査 教 授 長 嶋 和 郎 副査 教授 小野江和則
学 位 論 文 題 名
Endogenous Gamma Interferon Is Essential inGranuloma Formation Induced b.y Glycolipid‑Containing Mycolic in lVIice
(Rカodococcus aurantiacusの 誘 導 する 肉 芽 腫 形 成 に お け る 内 在 性IFN‑Yの 意 義 )
I研究目的
RhodococcusやMycobacteriumヽ,Cor ynebacterium等アクチノミセス類の細胞壁には疎水 性の 強い ミコ ール 酸が 多く含まれている。この細胞壁脂質成分はマウスに肉芽腫形成能 を有 する 。一 方肉 芽腫 形成 には 、マ クロフ ァー ジやT細胞からのサイトカイン産生が重 要で ある とぃ われ てい るが、その詳細については明らかにされていない。本研究におい て、Rhodococcus aurantiacus(R.aurantiacus)またはその細胞壁成分であるミコール酸 含 有 糖 脂 質 (Ga GM)に よ り 誘 導 さ れ る マ ウ ス 肉 芽 腫 形 成 に 果 た す 内 在 性IFN‑ア の役割について多角的に検討した。
n材 料 と 方 法
感 染 マ ウ ス : 5週 齢ddYマ ウ ス にR.aurantiacus(l08CFU/ マ ウ ス ) ま た は Ga GM (400/197マ ウ ス ) ( 沢 井 製 薬 大 阪 研 究所 加 藤 敬 香 博 士 より 恵与 され た) を静 脈 内 投 与 し た 。
モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体(mAb) の 投 与 : ラ ッ ト 抗 マ ウ スIFN‑ア mAb (R4‑6A2)
(Img/ マ ウ ス ) は 、 感 染2時 間前 あ る い は1、2週 後 に 静 脈 内 投 与 し た 。 ラ ッ ト 抗 CD4 mAb(GKl.5) 、 ラ ッ ト 抗CD8mAb(53‑6.72) (400メ g7マ ウ ス ) は 、 感 染1日 前 あ る い は1週 後 に 投 与 し た 。 マ ウ ス 抗N Kl.lmAb(PK136)(500pg7 マ ウス) は感 染3目前 また は1週 後に 投与 した 。対 照群 には 同量の 正常 ラッ トグロブリ ン または 正常 マウ スグ ロブ リン を投 与し た。
IFN ‑ヱ 型 宣 : 臓 器 抽 出 液 中 のIFN‑ア の 測 定 は 、 ラ ッ ト 抗 マ ウ スIFN‑ア mAb及 ぴ ウ サ ギ 抗 マ ウ スIFN‑y抗 血 清 を 用 い た サ ン ド イ ッ チ ELISA法 に よ っ
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て行った。
組織学的検索:肝臓、脾臓、肺のH&E染色標本を用いて顕微鏡1視野内に認められる 肉芽腫の面積(Granuloma size)及び数(Granuloma number)を測定した。その積を Granuloma areaとした。
免 疫 組 織 染 色 :Ga GM投 与 後3週 目 の 脾 臓 内 のIFN‑y陽 性 細 胞 を 酵 素 抗 体 法 (ABC法 )に よ り検 出 した 。 一次 抗 体 には 、 抗IFN‑ymAb (R4‑6A2)を用いた 。 m結果
(1)肉芽腫形成:感染後3週目をピークに、リンバ球、単球、類上皮細胞から構成さ れた肉芽腫が肝臓、脾臓、肺に形成された。
(2) 内 在性IFN‑ア の産 生 :組 織 抽出 液 中の 内 在性IFN‑ア は、 感 染直 後 に一 過 性に上昇し、再度3週目に肉芽腫形成に相関して上昇した。
(3)IFNーア陽 性細胞の検 出:免疫組 織染色法に より脾臓組 織内でのIFN―.y陽 性細胞を検 出した。IFN‑yを産生す る細胞は、肉芽腫病変内またはその周囲に存在 した。
(4) 抗IFN‑アmAbの 肉 芽 腫 形 成 に 及 ぼ す 効 果 : 肉 芽 腫 形 成 は . 抗IFN‑ymA b投与により 有意に抑制 された。特 に初期のIFN‑yを中和し た場合は肉芽腫の数が 減 少 し 、 後 期 のIFN‑ア を 中 和 し た 場 合 は 肉 芽 腫 の 発 達 が 抑 制 さ れ た 。
(6)T細 胞ま た はナ チ ュラ ル キラ ー (NK) 細胞 に 対する抗 体のIFN‑ア産生 及び 肉 芽 腫 形 成 に 及 ぼ す 影 響 : 初 期 のIFN‑ア 産 生は 抗N Kl.lmAbに より 、 後期 のI FN‑ア 産 生 は 抗CD8mAbに よ り 抑 制 さ れ た 。 肉 芽 腫 形 成 は 、 感 染 前 の 抗NKl.l mAb処 理 、 ま た は 感 染 後 1週 目 の 抗 CD 8mAb処 理 に よ り 抑 制 さ れ た 。
W考察
(1)R.aurantiacusま たはGaGMに より 肝 臓、 脾 臓、 肺 に肉 芽腫が形成 された。
(2) 内 在 性IFN‑ア は2相 性に 産 生さ れ 、後 期 のIFNーア は 肉芽 腫 の発 達 と相 関 性を示した。
(3)T細 胞 ま たはNK細胞 に 対す る 抗体 投 与実 験 から 、 内在 性IFN‑yの 産 生と 肉 芽 腫 形 成 は 、 初 期 の NK細 胞 と 後 期 の CD8十 T細 胞 に 応 答 性 を 示 し た 。
(4) 肉 芽 腫 形 成 は 、 抗IFN‑アmAbに よ り 抑 制 さ れ た 。 初 期 のIFN‑yは 単 球 、 T細胞の 集積に働き 、後期のI FN‑yは単 球の類上皮細胞のへ分化及び肉芽腫の発達 に関与することが示唆された。
以上 の 結果 、R.aurantiacusま たはGaGMに より 誘 導さ れ た内在性IFNーア は、肉 芽腫形成に重要な役割を担っていることが明らかになった。また初期のNK細胞と後期 のCD8十T細胞 は 、内 在 性IFNーyの 産生 を 介し て 肉 芽腫 形 成を調節し ている可能 性が示唆された。
以 上より、本 研究は博士 (医学)の 学位論文と して妥当な ものと判断 される。