博 士 ( 理 学 ) 石 塚 吉 浩
学 位 論 文 題 名
IvIantle diapir model for polygenetic volcanoes : Geological and petrological study of Rishiri volcano , northern Hokkaido , Japan
(複 成 火 山の マ ント ル ダイ ア ピルモデル : 北海道北部,利尻火山の地質学的・岩石学的研究)
学位論文内容の要旨
近年火山深部には 局所的な高温領域(マント ルダイアピル)が存在し,そ れが火山活動の 熱源となっていると 考えられている.しかしな がら,マントルダイアピルの 進化に関する研 究は こ れま でほ とん ど行 わ れて こ詮 かっ た.本研究 では先行する火山活動の影 響(例えば 熱)を無視できる北 海道北部の第四紀利尻火山 に注目し,詳細な野外調査, 年代測定,マグ マ化学組成の時間変 化を基に複成火山の一生を 通じたマントルダイアピルの 進化を明らかに した.
利 尻 火山 の活 動は20〜13万年 前以 降に 開始し,噴 出率,活動時期,噴出中心 の移動,マ グマ化学組成の違い から初期,最盛期,末期に 区分できることが明かとなっ た.火山活動は 初期において低い噴 出率(くO.1 DRE km3/ky以 下同じ)をもち,約4万年前 の最盛期では噴 出率がく0.35〜く0.4と最も高くなり,その後末期において再び噴出率がく0.09と減少した.
噴出 率 に対 応し て火 口間 距 離も 変化 し, それそれの 火口間距離は初期で17km, 最盛期でく 6km,そ して 末期 で は再 ぴ15kmと 拡 大し た. 利尻 火山 の 活動 は少 なくとも数千 年間まで継 続したが,現在では 噴気活動を含め一切の徴候 は認められない.利尻火山噴 出物は玄武岩か ら流紋岩まで多様で あるが,すべての活動期で 玄武岩質マグマと珪長質マグ マが活動してい る.このうち珪長質 マグマは下部地殻の部分融 解によって生じた可能性がも っとも高く,そ の 温度 は 初期 が850度 で最 盛期 に1050度ま で上 昇し ,末 期 で再 び700度 に低 下し たこ と が 明らかとなった.こ のような珪長質マグマの温 度変化は単一の熱源が下部地 殻を加熱し,そ の後冷却に伴って地 殻も冷却したことを示して いる.この変化は噴出率の時 間変化とも調和 的であり,利尻火山 は単一のマントルダイアピ ルの上昇と冷却で説明できる .利尻火山の玄 武岩質マグマは,カ ンラン石とスピネルの組成から初期にfertile,そして最盛期にdeplete, さらに末期では再びfertdeなマントルかんらん 岩と平衡なメルトと共存でき る組成であるこ とが判明した.この ことは活動期毎に全岩化学 組成が明瞭に異なっているこ ととも調和的で ある . 観察 され た玄 武岩 質 マグ マの 起源 マン卜ルの 時間変化は,Griffiths and Campbell (1990)が想定するマ ントルダイアビルが深部か ら上昇し,ダイアピルの頭部 から順次玄武岩
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質マグマが分離・上昇すれば説明できる・
海洋島火山(ハワイなど)の一生を通じたマントルダイアビルの進化を利尻火山と比較し た結果,玄武岩質マグマの起源マントルが両火山で全く正反対の時間変化を描くことが明ら かとなった.この違いは海洋島火山が移動するプレート上にあるため火山自身もダイアピル の中心部ヘ近づきそして離れていくモデルで説明されるが(Duncan et al.,1994),利尻火 山の場合比較的定常状態の基盤岩上に形成されたためダイアビル自身が冷却するモデルで説 明できる.利尻火山はその活動した場所・時期に恵まれていたため,ひとつの火山のー生を 捕えることができ,その一生は単一のマントルダイアピルの進化で説明できることが明らか となった.本研究の結果は複成火山の起源とその生涯の解明に大きく寄与すると考えられる.
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学 位 論 文審 査 の 要 旨
主査
教授 宇井忠英 副査
助教授 新井田清信
副査
教授 高橋栄一(東京工業大学大学院理学研究科)
学位論文題名
Mantle diapir model for polygenetic volcanoes : Geological and petrological study of Rishiri volcano , northern Hokkaido ,Japan
( 複 成 火 山 の マ ン ト ル ダ イ ア ピ ル モ デ ル : 北 海 道 北部 , 利尻 火山の地 質学的・ 岩石学的 研究)
近年 ,火山深部にはマントル内 に局所的な高温領域(マント ルダイアビル;以下ダイアビル)
が存在 し,それが火山活動の熱源 となっていると考えられてい る.しかし,実際の火山活動の推 移に伴 うダイアピルの進化につい ては未開拓の分野で,今後の 発展が待たれている状況にある.
本論 文は,とのような現状にあ るダイアビルについて,先行 する火山活動の影響(例えば熱)
を無視 できる北海道北部の利尻火 山に注目し,地質調査,年代 測定,マグマ化学組成の時間変化 を基に 火山の一生を通じたダイア ピルの進化を明らかにした.
利尻 火 山の 活動 は20〜13万年 前以降に開始し,噴出率,活 動時期,噴出中心の移動, マグマ 化 学組 成 の違 いか ら初 期, 最 盛期 ,末 期の3っに区分できる .K‑Ar年代測定および噴出 量の見 積りの 結果,噴出率は初期にく0.1 (DRE km3/ky;以下同じ) と低く,約4万年前の最盛期おい てく0.35〜くO.4と最も高くなり ,その後末期においてく0.09と再び減少することが明らかとな っ た. こ のと き噴 出率の変化に 対応して火口間の距離も変化 し,火口間距離は初期で17km,最 盛 期で く6km, そ して 末期 では 再ぴ15kmと 拡大した.利尻火 山の活動は少なくとも数千 年間ま で継続 したが,現在では噴気活動 を含め一切の徴候は認められ ない.
利尻 火山噴出物は玄武岩から流 紋岩まで多様であるが,すべ ての活動期で認められるのは玄武 岩質マ グマと珪長質マグマである .このうち珪長質マグマは鏡 下観察およぴ微量・希土類元素組 成から ,下部地殻の部分融解によ って生じた可能性がもっとも 高い.地質温度計を用いた珪長質 マ グ マ の 温 度 は 初 期 が850度 ,最 盛期 に1050度ま で上 昇し ,末 期 に再 び700度 へ低 下し てい る.っ まり珪長質マグマの温度変 化は噴出率の時間変化と相関 関係にあり,マグマの温度が低い 初期に 噴出率も低く,地殻が最も 高温となったであろう最盛期 に噴出率が最も高くなり,活動末 期にマ グマの温度が下がり噴出率 も低下する.このような変化 は単一の熱源が下部地殻を加熱し その後 冷却に伴って地殻も冷却し たことを示しており,利尻火 山は単一のダイアビルの上昇と冷 ―278―
却で説明できる. さらに利尻火山の玄武岩質マ グマは,カンラン石とスピネルの組成から初期に fertile,そして最 盛期にdeplete,さらに末期で再びfertileなマントルかんらん岩と平衡なメル トと共存できる組 成であることが明らかとなっ た.これは報告された同位体組成とも調和してい る.観察された玄 武岩質マグマの起源マントル の時間変化は,Griffiths and CampbelJ (1990) が想定するダイア ビルが深部から上昇し,ダイ アピルの頭部から順次玄武岩質マグマが分離・上 昇すれば説明可能 である.すなわち利尻火山の 発達史は単一のダイアビルの進化で説明できる.
以 上 によ うに利尻火山で明らかに なったダイアビルの進化を テクトニクスの異なる海洋島 火 山の ダ イア ビル モデ ル(Duncan et al.,1994)と比較した.そ の結果,移動するプレート上 に 形成した海洋島火 山の場合,火山自身がダイア ビルの縁辺から中心部,そして再び縁辺ヘ移動す ることによって火 山の一生を説明できるが,比 較的定常状態の基盤岩上に形成した利尻火山の場 合 , ダ イ ア ビ ル 自 身 の 冷 却 と 地 殻 へ の 熱 伝 導 が 火 山 の 一 生 を 決 め て いる と 考え られ る.
す な わち ,著者は,利尻火山にお いて高精度な地質調査,K‑Ar年代測定,鏡下観察,化学 分 析を自ら行い,こ れら広範囲に渡る結果と最新 のマグマ生成論を基に,火山の一生を通したダイ アビルモデルの構 築に成功している.このよう なダイアピルの進化に関する新知見は,火山の起 源とその生涯に対 して重大な貢献を行うものと 期待される.
よ っ て 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る と 認 め る .
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