博 士 ( 医 学 ) 氏 家 英 之
学位論文題名
A novel active mouse model for bullous pemphigoid targeting humanlzed pathogenlCantigen (ヒト化した病原性抗原を標的とし、持続的な抗体産生と 皮膚病変を生じる新規水疱性類天疱瘡マウスモデルの樹立)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
【背景と日的】
水疱 性類 天疱 瘡(Bullous pemphigoid; BP)は最も頻度の高い自 己免疫性水疱症で、表皮 基 底 膜 部(BMZ)に 存在 し基 底細 胞と 基底 膜を 結び 付け てい る17型 コラ ーゲ ン(COL17, BP180,BPAG2)に対する自己抗体によって引き起こされる。最も病原性 の高いエピトープ は 、COL17のNoncollagenous 16A domain (NC16A)に 存在 する 。患 者IgGをマ ウス に 投与してもマウスに水疱は生じないことが 知られているが、それはNC16Aのアミノ酸配列 がヒトとマウスでは大きく異なるためと考 えられている。そのため、BP患者血清IgGの病 原性はこれまで証明されていなかった。我 カは最近、マウスCOL17を欠 損し代わりにヒト COL17を発現す るCOL17ヒト化マウス(COL177n.′´由チmice; COL17‑humanized mice)を 作成した。この新生児マウスにBP患者IgGを投与すると表皮下水疱が誘発された。(Nishie et al. 2007)これ によ って 初 めてBP患 者IgGの病原性が面函VOで証明された。しかし、
こ のIgG passive‑transfer BPモデ ルは 一過 性の 病変 しか 再現 す るこ とが でき なぃ 。 そこ で本 研究 では 、ヒ トCOL17 (hCOL17)を 標的 抗原 とし て、 持続 的に抗体を産生し長 期 的 な 病 気 を 再 現 す る こ と が で き る BPマ ウ ス モ デ ル の 樹 立 を 試 み た 。 【材料と方法】
BPマウスモデルの樹立には、標的抗原で免疫 したドナーマウスの脾細胞を免疫不全レシ ピェントマウスに移植する方法を用いた(Amagai et al. 2000)。
ま ず脾 細胞 移植 レシ ピェ ント マウスを作製するために、免疫不全マウス であるRa g2ナ rmceとCOL17‑humanized miceを 繰 り 返 し 交 配 し 、 ぬg‑2+/COL17‑humanized miceを
. 作 製した。次に脾細胞移植ドナーマウスを作 製するために、hCOL17タンパクを皮膚に発 現するTransgenic mlceの皮膚を野生型マウス(C57BLI6)に植皮した。間接螢光抗体法くIIF)、 ELISA法 、Western blot法 を用 い て、 植皮 マウ ス血 清中 の抗hCOL17抗 体お よび 抗hNC16A 抗 体を測定した。このドナーマウスの脾細胞を調整し、Rag‑2・′′COL17 humanizedmice に移植した(n 10)。コントロールとしてjぬゲ召ナmiceにドナーマウスの脾細胞を移植した
(n二ニ6)。レシピェントの血中抗体価および皮疹の程度を10週間観察した。また、皮膚を生 検し組織学的に検討した。
レシ ピェ ント 血清 中のIgGの病原性を確認 するために、移植後8日目の 血清からIgGを 精 製 し 、 新 生 児 のCOL17―humanizedmiceに 皮 下 注 し 変 化 を 観 察 し た (n:5) 。 T細 胞 あ る い はB細 胞 の 役 割 を検 討す るた めに 、ド ナー 脾細 胞のCD4十T細 胞、CD8+T 細 胞 およ ぴCD45R+B細 胞を それ ぞれ 除去 した のち に移 植し 、レシピェントの血清抗体価 と皮疹を観察した(各n二ニ4)。また、移植後2日目からシクロスポリンA(CsA)を35m名瓜g/day で14日 間 投 与 し 、 レ シ ピ ェ ン ト の 血 清 抗 体 価 や 皮 疹 の 変 化 を 観 察 し た (n=5) 。
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【結果】
植 皮し た 野 生 型マ ウ ス 血清 中には 、高力 価の抗hCOL17抗 体およ ぴ抗hNC16A抗 体が検 出 さ れ た 。 植 皮 マ ウ ス の 脾 細 胞 を 移植 し た レシ ピ ェ ント(Rag‑2+/COL17‑humanized recipients)の 血清 中 に は、 移植 後7日 以内に 抗hCOL17抗体(IIF法)およ び抗hNC16A抗 体(ELISA法)が 検出さ れた。抗hCOL17抗体は移植後9日前後でピークとなり、その後徐々 に 低 下 した が 、 移 植後10週で も5120倍 以上 の 高 値を 示 した 。抗hNC16A抗 体は移 植後9 日 前後で ピークと なり、 その後急 速に低下し、移植後6週でほば横ぱいとなった。コント ロ ール のRag‑2‑/‑ recipientsでは抗hCOL17抗体お よぴ抗hNC16A抗体は 、いずれ も検出 されなかった。
Rag‑2+/COL17‑humanized recipientsには 移植後10日前後か ら顔面 に掻痒を 伴う紅斑 が出現し、脱毛斑となって次第に体幹に拡大した。小水疱やぴらんも観察され、病変部皮膚 で は軽度 の擦過で表皮剥離が生じた。皮疹は移植後10週でも広範囲に観察された。皮膚生 検 では、HE染色で真皮表皮境界部に裂隙が見られた。トルイジンブルー染色では肥満細胞 の 脱顆粒 が観察さ れた。 直接螢光 抗体法では、真皮表皮境界部に線状のIgGおよび補体C3 の沈着が見られた。一方、Rag‑2‑/一recipientsには皮疹は全く生じず、皮膚の組織学的変化 も見られなかった。
移植 後8日 目のRag‑2+/COL17‑humanized recipientsの 血清からIgGを 抽出し、 新生児 COL17‑humanized miceに皮下 注した ところ、 皮膚の脆 弱性が 生じ、組織学的にも上記と 同 様の変 化が見ら れた。 以上より 、Rag‑2+/COL17‑humanized recipientsは病原性のある 抗hCOL17抗 体 を 体 内 で 持 続 的 に 産 生 し 、 そ れ が 自 己 のhCOL17分 子 に 結 合 し てBP phenotypeを発現することが示された(BPマウスモデル)。
CD8+T細胞を除 去した のちに脾 細胞を移 植した 群では全 脾細胞 を移植し た場合 と同様 の 変 化 が見 ら れ た が、CD4+T細胞、 あるい はCD45R+B細 胞を除 去して移 植した 群では抗 体 産生 は見ら れず、皮 疹も生 じなかっ た。以 上より、BPマウス モデルに おいてCD4+T細 胞 とCD45R+B細胞 がBP phenotypeの誘 導に不 可欠であ ること が明らか になっ た。また 、 CsAを 投 与 し たBPモ デ ル マ ウ スで は 、 抗体 産 生 や皮 疹 の 出現 が 有 意 に抑 制 さ れた 。
【考察】
脾細 胞移植の 手技を用 いて、hCOL17を標的 とし持続 的な抗 体産生と皮膚病変を生じる 新 規BPマ ウス モ デ ル の樹 立 に成 功した。 今回観 察された 抗hCOL17抗体 が標的抗 原に結 合し補体が活性化され、肥満細胞の脱顆粒が生じ、最終的に真皮表皮境界部の裂隙形成に至 るプロセスは過去のIgG passive‑transfer BP新生児マウスモデルでも示されており、今回 作 製 し たBPマ ウ ス モ デ ル はBPの 病 態 を 忠 実 に 再 現 し て い る と 考 え ら れ た 。 こ のBPマウ スモデル では、CD4+T細胞 が抗体 産生に重 要な役 割を果た している ことが 明 らか と な った 。 実 際 のBP患 者に お い ても 、hCOL17反 応 性のCD4+T細胞の 存在が 報告 されている。また、ある特定のMHC class II alleleが高頻度でみられることも報告されて い る。 今 後BPモ デ ル を用 い てよ り詳細にCD4+T細 胞の機能 を解析 すること で、T細胞を 標的とした新規治療法の開発にっながると考えられた。
【 結論】
免 疫不全 の標的抗 原ヒト 化マウス を用いて、ヒト化COL17を標的とし持続的な抗体産生 と 皮 膚 病変 を 生 じる 新 規BPマ ウス モデルの 樹立に 成功した 。この 新規BPモデ ルはBPの 病 態解明 および新 規治療法 の開発 に有用で ある。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
A novel active mouse model for bullous pemphigoid targeting humanlzed pathogenlCantigen
(ヒ ト化 し た病 原 性抗 原 を標 的 とし、持続 的な抗体産生 と 皮膚病変を生じる新規水疱´l 生類天疱瘡マウスモデルの樹立)
水疱性類天疱瘡(Bullous pemphigoid: BP)は最も頻度の高い自己免疫性水疱症であり、
表 皮 基 底 膜 部(BMZ)に 存 在 す る17型 コ ラ ー ゲ ン(COL17)の 特 にNoncollagenous 16A domain (NC16A)に 対す る 自 己抗 体 に よっ て 引 き起こさ れる。 最近、マ ウスCOL17の発 現 を 欠 損 さ せ 、 代 わ り に ヒ トCOL17 (hCOL17)を 発 現す る 遺 伝子 改 変 マウ ス(COL17 ヒト 化マウ ス)が作 製された 。この 遺伝子改 変マウ スの新生 児にBP患 者IgGを 投与する と、表皮下水疱が誘発された。しかし、このIgG passive‑transfer BPモデルは一過性の病 変し か再現 すること ができな い。そ こで本研 究では 、hCOL17を標的抗原として、持続的 に抗体を産生させることで、長期的な病態を再現することができるBPマウスモデルの樹立 が試みられた。
BPマウスモデルの樹立には、標的抗原で免疫したドナーマウスの脾細胞を免疫不全レシ ピェントマウスに移植する方法が用いられた。まず、脾細胞移植レシピェントマウスを作製 す る ため に 、Rag2ナマウ スとCOL17ヒト化 マウスを 繰り返 し交配し 、Rag‑2+l COL17ヒ ト化 マウス が作製さ れた。次 に脾細 胞移植ド ナーマ ウスを作製するために、hCOL17タン パク 質を皮 膚に発現 するトラ ンスジ ェニック マウス の皮膚を野生型マウスに植皮し、抗 hCOL17抗体 の 産 生を 誘導し た。この ドナー マウスの 脾細胞 を、Rag‑2+ICOL17ヒ ト化マ ウス に移植 した。レ シピェン トの血 清中の抗hCOL17抗体は 移植後9日前 後でピークとな り 、 その 後 徐 々に 低 下 した が 移 植 後10週 でも 高値 を示した 。抗hCOL17抗 体は移 植後9 日前後でピークとなり、その後低下した。移植後10日前後から掻破跡を伴う紅斑が出現し、
次第に体幹に拡大した。さらには、小水疱やびらんも観察された。皮膚生検では、真皮表皮 境界部に裂隙が見られ、トルイジンブルー染色では肥満細胞の脱顆粒が観察された。直接螢 光抗 体法で は、真皮 表皮境界部に線状のIgGおよび補体C3の沈着が見られた。以上より、
Rag‑2+ICOL17ヒ ト 化マウ スのレシ ピェン トは抗hCOL17抗体を体 内で持続 的に産 生し、
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次
宏
也
鎮
和
山
水
渕
畠
清
岩
授
授
授
教
教
教
准
査
査
査
主
副
副
それが自己のhCOL17分子に結合してBP表現型を示すことが判明した(BPマウスモデル)。
CD8+T細胞 を除 去し たの ちに 脾細 胞を 移植 した 群では全脾細胞を移植した場合 と同様 の 変化 が見 られ たが 、CD4+T細 胞あ るい はCD45R+B細胞 を除 去し て移 植し た群で は抗体 産 生は 見ら れず 、皮 疹も 生 じな かっ た。 以上 より、BPマウスモデルにおいてCD4+T細胞 とCD45R+B細 胞がBPの 表現 型の 誘導 に不 可欠 であ るこ と が明 らか にな った 。また、CsA を 投 与 し たBPモ デ ル マ ウ ス は 、 抗 体 産 生 や 皮 疹 の 出 現 が 有 意 に 抑 制 さ れ た 。 岩測准教授 から、BPの表現型がself limitingかどうか、制御性T細胞の経時変化はどう か、CD4+T細胞依存性に抗体産生が起こる のか、などについての質問があった。次いで畠 山 教 授 か ら 、COL17が欠 損す ると 表現 型はBPと同 様に なる のか 、BPの病 態に 炎症 は関 与 して いる のか 、COL17反応性のT細胞が存在するのかどうか、移植した脾細胞は 減少し ていくのかど うか、持続的に抗COL17抗体 を産生するモデルの作製は可能かどうか、など についての質問があった。最後に清水教授から、モデルマウスを作製して得られた経験を踏 まえた今後の 展望にっいての質問があった。いずれの質問に対しても 申請者は、COL17を 欠損する表皮 水疱症患者についての知見、BPの病態発症機序の知見、T細胞依存性の他の 自己免疫疾患 マウスモデルに関しての知見、制御性T細胞と自己免疫性疾患モデルに関す る 過去 の報 告やBPに おけ るT細 胞の 働き につ いて のこれまでの研究結果、及び論 文等を 引用し、おお むね適切に回答した。
この論文は 、遺伝学的及び免疫学的手法による新規のBPモデルを樹立し、そのモデルに お けるCD4+T細胞 の重 要な 役割 を明 らか にし た点 で高く評価され、今後さらなるBPの病 態 解 明 や 新 規 治 療 法 の 開 発 に っ な が っ て い く こ と が 期 待 さ れ る 。 審査員一同 は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併 せ申 請者 が博 士( 医学 ) の学 位を 受け るの に充 分な 資格 を有 する もの と判定 した。
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