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博士(工学)小綿泰樹 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)小綿泰樹 学位論文題名

プルトニウムを利用 する圧力管型重水炉の      冷 却 材 ボ イ ド 反 応 度 の 研 究

学位論 文内容の要旨

  全 炉 心 に 酸 化 プ ル ト ニ ウ ム(MOX)燃 料 を装 荷し て利 用で きる 熱中 性子 炉は 、重 水減 速 ・軽 水冷 却の圧 力管 型原 子炉 (以 下、重水炉と略す)である。蓄積するPuを効率的に 燃 焼で きる 動力炉 とし て、 日本 では1995年まで設計の成立性を検討してきた。チェルノ ブ イリ 原子 力発電 所事 故以 来、 構造 が類似の重水炉の冷却材ボイド反応度(ボイド反応 度 と 略 す ) の評 価、 とり わけPuがボ イド 反応 度に 及ぽ す効 果が 注目 され た。 本論 文は MOX燃料 を使 用し た体 系で のボ イド 反応 度の測 定手 法の 開発 、実 験による核計算コード の 精度 と有 効性の 評価 を行 い、Puの 利用がボイド反応度に及ぼす効果の解明を重点とし て 、 ボ イ ド 反 応 度 の 挙 動 を 実 験 と 理 論 の 両 面 か ら 研 究 し た も の で あ る 。 本論文は7章から構成され、各章の概要は以下の通りである。

第1章 は序 論 で 、 本 研 究 の 意 義 と 背 景 に つい て述 べて ある 。動 力用 重水 炉の 安全 設計 に とっ て、 ボイド 反応 度の 特性 とそ の炉物理メカニズムの解明の重要性、更にボイド反 応 度の 研究 の意義 につ いて チェ ルノ ブイリ型炉の炉物理特性と対比して概説した。そし て 設計 コー ドの信 頼性 と設 計根 拠の 確証となる臨界実験の必要性及びボイド反応度の挙 動解明の方法論を示してある。

  第2章 では 、ボ イド 反応 度が 大き く正 になり うる 重水 炉格 子に おける重水と軽水の炉 物 理的 役割 を概説 した 。重 水炉 は二 種の減速物質を使用する二重減速格子であることか ら 、格 子条 件によ って はボ イド 反応 度は負から正の広い範囲の値をとりうる。そしても れ の大 きい 小型の 臨界 実験 装置(DCA)を 使って 測定 した ボイ ド反 応度のパラメー夕依存 性 か ら 得 ら れ た 結 論 が 大 型 動 力 炉 の 設 計 ヘ 適 用 し て も 有 効 で あ る こ と を 示 す 。   第3章 では 、燃 料置 換法 とパ ルス 中性 子法を 組み 合わ せて 一様 な格子をもつ炉心(一 様 炉心 )の ボイド 反応 度を 実験 的に 決定 する 測定 原理 を述 べて いる。一般に、MOX燃料 は少数体しか準備できないので、この手法|ま試験領域を大きく確保できなくても格子固 有 の物 理量 を得る のに 有効 であ り、 また他の炉物理実験への応用も考えられる。本手法 に より 一様 炉心で の測 定値 が得 られ たことで、異なる組成の燃料格子間でそれぞれの物 理 量の 直接 比較や 計算 精度 の正 確な 評価等が可能になった。本研究では、この手法を開 発 して デー タの外 挿に よりMOX燃料 一様 炉心の ボイ ド反 応度 を決 定できることを確認し た 。燃 料置 換法に よる 実験 の結 果、 同一実験条件でボイド反応度の燃料組成依存性を実 験 的に 決定 でき、 その メカ ニズ ムの 解明に有益である。数種の燃料格子で決定したボイ ド反応度の実験結果を、燃料のマクロ熱中性子吸収断面積を用いて整理すると、 23 9pUの

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0.3eVの 共鳴 吸収 がボ イド 反応 度をよ り低 減さ せていることが確認できた。またPuがUに 比 ベボイ ド反 応度 の抑 制上 有利 な理 由は 、こ の共鳴吸収によることを示した。この結果 に より本 手法 が減 速材 対燃 料体 積比 の大 きい 重水格子での反応度の測定に有効であるこ とを確認した。

  第4章 では 、第3章の 実験 結果 から 導い た考 察、即ちPuの共鳴断面積がボイド反応度の 低 減 に 寄 与 す る 効果 の妥 当性 をWIMSコ ード の解 析に より 検証 でき たこ とを述 べる 。本 解 析 は 、 第3章 の 実 験体 系に 基ず くが 、少 数の実 験パ ラメ ータ を補 足す るた め、MOX及 び ウラン 燃料 の核 分裂 性Pu又はUの濃 度範 囲を 拡大 して いる 。格 子計 算で はボイド反応 度 をエネ 少ギ ー群 、核 種、 領域 、断 面積 等の 成分に分離し、各成分の寄与を分析した。

重 水炉格 子は ボイ ド率 が大 幅に 変化 して も、 ボイド反応度に及ぼす主なエネルギー範囲 は1〜 2eV程 度の 熱・ 減速 領域 である 。こ のた めPuの0.3eVの共鳴吸収のような細かいパ ラ メータ の影 響に つい ては 均質 化と 積分 的扱 いを行う四因子分析では必ずしも明確にな ら ない。 本解 析で は、 ボイ ド反 応度 の各 成分 と熱化中性子スペクトル変化との比較によ り 、る 9Puの0.3eVの共鳴吸収がポイド反応度の抑制をより助長することを明らかにして い る。こ れは 、中 性子 束が 大き く窪 む共 鳴幅 内では、ボイド率の増加によってその窪み は 更 に 顕 著 に な り 、 共 鳴 核 分 裂 率 を 減 少 さ せ 負 の 寄 与 が 重 畳 す る こ と に よ る 。   第5及 ぴ6章 では 、動 力炉 の余 剰反 応度 又は 出力 分布 制御 に使用 する3種 類の中性子吸 収材(ポイズンと略す)がボイド反応度に及ぽす影響とそのメカニズムの解明について述 ぺる。このうち減速材中に溶解する BポイズンくloBと略す)又は挿入する制御棒について は 第5章 に、 燃料 中に添加するガドリニア(Gdと略す)については第6章にそれぞれ示す。

ポ イズン は、Pu冨 化度 に応 じて 付加 され 、燃 焼サイクル全体を通して炉心に滞在するの で 、ボイ ド反 応度 への 影響 因子 とし て重 要で ある。これらポイズンの効果についての解 明 には、 第3章と 同様 実験 及ぴWIMSコ ード 等の 解析 結果 とを 用い てい る。 更に摂動計算 コ ードPERKYを用 いて ボイ ド反 応度を 各種 成分 に分 離し 、そ れら のポ イズ ン濃度等依存 性 を分析 した 。ま た第5章 では 、これ らの ポイ ズン を含 む炉 心で のボ イド 反応度の測定 の ために 、独 自に 改良 した 臨界 水位 差法 の測 定原理についても述べる。臨界水位差法は パ ルス中 性子 法と は異 なる 測定 法で 、狭 い範 囲の反応度測定に用いられるが、外部中性 子 源 を 使 用 し な い で 、 ま た 正 の 反 応 度 も 測 定 で き る 利 点 が あ る 。 `    Bは 炉心 全体 に一 様に 数ppm添加 され 、炉 心全体がポイズン入格子となるが、制御棒 は 炉心出 力分 布の 平坦化と臨界制御のみに使用する局所的吸収材である。減速材中のIoB は 、その 中性 子吸 収率がボイド率によって変化するので、IoB濃度の増加と共にボイド反 応 度を正 方向 に移 行させる。制御棒もIoBと同様の効果があるが、挿入数が少なく、体積 も小さいためボイド反応度への影響は小さいことが分かった。

  第6章 では 、燃 料の 高燃 焼度 化に伴 って 添加 され るGdのボ イド 反応 度に 及ぽす効果に つ いて述 べて いる 。運 転初 期の 取替 燃料 には 核分裂性物質と巨大な熱中性子吸収断面積 のGdが共 存し 、格 子の 非均 質性 を一 層高 める 。Gdは重 水中 の Bと異 なり 燃料と一体物 質 で燃料 集合 体の 内部 の数 本の ピン に添 加さ れる。運転中にその濃度を調整できなく炉 心内では分散的に存在するので、ボイド反応度に及ぽす濃度や配置の効果が重要である。

ボ イド反 応度 はGd濃度 の増 加に 対し て他 のポ イズンの場合と同様正の効果であるが、飽

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和特 性を 示す こと を確 認した。しかしそのメカニズムは他のポイズンの場合と異なる。

Gd入 燃料 格子 はボ イド 率の増加が大きいほど隣接格子での熱中性子束の増加と中性子ス ペクト´レの硬化を誘導し、ボイド反応度を間接的に正方向ヘ移行させることが分かった。

隣接 燃料 がMOXの 場合は 、239Puの0.3eVの共鳴の存在と1/Eスペクトル領域での捕獲対核 分裂 断面 積比 ( げ 。/ びf) の特 性が ボイ ド反 応度の正方向への移行を抑制する。

第 7章 は 結 論 で 、 本 論 文 の 各 章 に お い て 得 ら れ た 結 果 を ま と め た 。 本研 究は 、我 が国 が構 想し た重 水炉 の安 全性 評価に おい て重 要な ボイ ド反 応度 の挙動 を評 価す るた め実 験と 解析を行ったものである。その成果は、動力炉の核設計に適用す ると とも に、 また 炉物 理分野では、重水格子の中性子スペクトル場における積分実験に よるPuの核データの検証に使用される。

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学位論文審査の要旨      主査    教授    成 田正邦      副査    教授    石 川迪夫      副査    教授    熊 田俊明      副査    助教授    沢村晃子      学位論文題名

プルトニウムを利用す る圧力管型重水炉の      冷 却 材 ボ イ ド 反 応 度 の 研 究

  重水減速軽水冷却圧力管型原子炉は、軽水炉に比べて中性子の寄生吸収が小さく、酸化プル トニウム燃料を全炉心で利用できる熱中性子炉である。しかし、この型の原子炉はチェルノブ イリ原子炉と類似した二重減速炉であり、冷却材ボイドによる反応度係数が正になる可能性を もっている。特にチェルノブイリ原子力発電所事故以来、重水炉の冷却材ボイド反応度(ボイ ド反 応度と略 す)の評価、とりわけPuがボイド反応度に及ばす効果が、炉の安全確保の観点 から注目されるようになった。

  本論文では、重水減速動力炉の核設計手法の確立と成立性に理論的根拠を供することを目的 に、圧力管型重水炉のポイド反応度挙動が実験と理論的解析の両面から研究されている。実験 は、重水臨界実験装置により行われ、ポイド反応度の測定手法の開発、種々の炉物理パラメー タを変化させてポイド反応度の測定を行っている。解析では、核計算コードモデルの改良を行 うと 共に、Pu燃 料がポイド反応度に及ぼす効果を重点としてポイド反応度挙動を解明してい る 。 ま た 、 実 験 と 計 算 の 比 較 に よ り 改 良 コ ー ド の 精 度 と有 効 性 が 評価 さ れ てい る 。   本論文は7章から構成され、各章の概要は以下の通りである。

  第1章は本研究の意義と背景を述べている。ポイド反応度と関連する中性子挙動解明の、炉 の 安 全 設 計 ・ 制 御 性 に と っ て の 重 要 性 と 、 挙 動 解 明 の 方 法 論 を 示 し て い る 。   第2章では、重水炉における正のポイド反応度の原子炉物理にとる説明と、臨界実験装置に よ る 実 験 結 果 を 大 型 動 力 炉 ヘ 適 用 す る こ と の 有 効 性 に っ い て 概 説 さ れ て い る 。   第3章は、著者が開発した燃料置換法とパルス中性子法を組み合わせたポイド反応度測定手 法について述べている。この方法iま少数体燃料の部分的装荷炉心の測定値を、全装荷格子の物 理量に外挿する手法で、従来は、主に物質バックリングの決定に適用されていた。本研究で初 めて反応度の測定に応用し、その有効性が実証された。本法により、異なる燃料組成、格子パ ラメータを有する炉心に対する炉物理量間の比較、計算との比較等が可能になった。得られた ボイド反応度を、共通の指標(例えぱ、熱中性子吸収断面積)で比較・整理し、239Puの0.3eV の 共 鳴 吸 収 が ボ イ ド 反 応 度 の 低 減 化 に 寄 与 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。

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  4章 では 、Puの共 鳴 断面 積に よる ボイ ド反 応度の低減効果を 改良WIMSコードにより検 証 し て い る 。 著 者 はWIMSコ ー ド の ラ イ ブ ラ り をUKAEAか らJE NDL‑3.1に置 き換 える こ とにより格子計算精度の向上をはかり、更に本コードがポイド反応度挙動の解明手段として有 効であることを示した。摂動法的手法を導入してボイド反応度をエネルギー群、核種、領域等 の成分に分離して解析し、239Puの0.3eVの共鳴吸収に よるボイド反応度低減化を計算によっ ても明らかにしている。

  5及 び6章 では 、2種類の中性子吸 収材、ioB(重水減速材およ び制御棒中に添加).Gd

(燃料中に添加)のボイド反応度に及ぼす影響にっいて述べている。吸収材は燃料サイクル全 体を通して炉心に存在するのでポイド反応度への影響因子として重要である。第5章で、吸収 材を含む炉心でのボイド反応度の測定手法として、著者が本研究のために改良した臨界水位差 法と、吸収材ioBへの応用 を述べている。この方法は外部中性子源に依存せず、また正の反応 度 も 測 定 で き る利 点を 有し てい る。 実 験結 果はWIMSコー ドの 他、 摂動 計算 コー ドPERKY 等により解析されている。ioBはその濃度の増加と共にポイド反応度を正方向に移行させるこ と、それは軽水の大きな減速効果に起因することが示 されている。第6章では、Gdが熱中性 子束の増加、中性子スペクトルの硬化を助長し、ポイド反応度を正方向ヘ移行させること、し かし 、239Puの0.3eVの 共鳴と1/Eスペ クトル領域での捕獲対核分裂断面積比aの特性は、こ の傾向を抑制することを明らかにしている。

  第7章は結諭である。

    以上のように本論文は、我が国が構想した重水減速軽水冷却圧力管型原子炉の安全性上重 要なボイド反応度を評価するための実験と解析を行ったものである。その成果は、原子炉物理 学 お よ び 原 子 炉 設 計 学 の 進 歩 に 寄 与 す る と こ ろ 大 な る も の で あ る 。   よ って 著者 は、 北海 道大 学博 士( 工学 )の 学位 を 授与 され る資 格あ るも のと認める。

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