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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 秋 本 正 博

     学位論 文題 名

Bio‑systematics of Oryza AA genome wild   taxa (Oryza sativa complex) by morpho‑

  physiological traits , 1SOZymeSandRFLPS    ( 形態・生理形質,アイソザイムおよび PFLP を用いた      〇 梛 口 属 AA ゲ ノ ム 野 生 種 の 系統 分 類 学 的 研 究 )

学位論文内容の要旨

  Oryza属植 物 の中 でア ジア とオ セア ニア に分 布す る〇 .′ufipogon、 アメ リカ に 分布する〇,glumaepatz,血、オーストラリアに分布する〇.門?ピ′fめ〇門口f西、および アフリカに分布する〇,6ロr崩ffと〇,め門gむfロ門?mロ紜は、栽培イネとAAゲノムを 共 有 する 近緑 野生 種で 〇.5ロffvロcomplexを 構成 し、 イネ の育 種上 重 要な 遺伝 資 源 と さ れ る が 、 そ れ ら の 分 類 お よ び 系 統 分 化 に っ い て は 不 明 な 点 が 多 い 。 系 統 分 類 関 係 の 解 明 に は 対 象 と す る 生 物 群 の も つ 遺 伝 変 異 の 量 お よ び 地 理 的 分 布 を 明 ら か に す る こ と が 必 要 で あ る 。 遺 伝 変 異 は 形 態 特 性 や 生 理 特 性 、 生 化 学 マ ー カ ー 、 分 子 マ ー カ ー 等 の 多 型 性 に よ っ て 評 価 さ れ る が 、 多 数 の 系 統 に 対 し 性 質 の 異 な る 複 数 の 指 標 の 多 型 性 を 同 時 に 調 査 し 、 そ れ ら の 結 果 を 総 括 的 に 評 価 し た 研 究 例 は 少 な い 。 本 研 究 は 〇 り だ ロ 属AAゲ ノ ム 野 生 種 の 系 統 分 類 関 係 の 解 明 を 目 的 と し 、 上 記 の5種 、 合 計183系 統 に つ い て 形 態 ・ 生 理 的 特 性 、 ア イ ソ ザ イ ム 、 核 DNA、 ミ ト コ ン ド リ アDNA、 お よ び 葉 緑 体 DNAに お け る 多 型 性 を 調査した。

1 )実験環境下で植物体を栽培し、量的に評価が可能な22 の形態・生理的形質

を調査した。〇,′ ufipogonと〇,glumaepatulaは種内変異が大 きく、主成分分析

(2)

の 結 果 、 両 種 の 系 統 は そ れ ぞ れ2っ と3つ の 生 態 型へ と 分 けら れ た(O. rufipogon

‑I,IIおよび〇,glumaepatulaーI,II,III)。多年生的な特徴を示した〇.′ufipogon―I と〇 , glumaepatula―I、 およびー 年生的 な特徴を 示した 〇.′ufipogon一II、〇.

meridionalisと 〇 ,barthiiの間 に は それ ぞ れ 表 現型 の 類 似性 が 認 めら れ た。安定 な 環 境 下 で 密 度 依 存 的 な 死 亡 因 の 影 響 を 強 く 受 け る 多 年 生 型 野 生 イ ネ は 、 より 多 く の 資 源 を 栄 養 生 長 に 費 や し 、 不 安 定 な 環 境 下 で 不 可 測 な 撹 乱 を 強 く 受 ける 一 年 生 型 野 生 イ ネ は 、よ り 多 くの 資 源 を生 殖 生 長 に費 や す 傾向 を 明 らか に し た。

ア マゾ ン 河 の 洪水 域 に 分布 し 、 植物 体 を 川面 に 浮 遊さ せ る 〇. glumaepatula―II は 高 い 個 体 再 生 能 カ と 節 間 伸 長 能 カ に よ っ て 特 徴 づ け ら れ た 。 深 水 湿 原 に 生息 す る〇 .glumaepatulo一IIIは 大 型の 穂 と 浮水 能 カ を 持っ 小 穂 によ っ て 特徴づ けら れ た 。 異 な る 環 境 条 件 下 に 自 生 す る 野 生 イ ネ は 各 々 異 な る 自 然 選 択 圧 を 受 け、

独自の適応形質を分化していると理解された。

2) デ ン プ ン あ る い は ア ク リ ル ア ミ ド を 担 体 に 用 い た15酵 素 の29遺 伝 子 座 に お け る ア イ ソ ザ イ ム 分 析 、 お よ び36プ ロ ー ブ を 用 い た 核 DNAのRFLP分 析 に よ り 、5種 は お の お の 独 立 し た 核 遺 伝 子 型 を 分 化 し て い る こ と が 明 ら か に な り 、 種形 成後、種 間の遺 伝子流動 が制限的 であっ たことが示唆された。〇, meridionalis は 他 種に 対 す る核 遺 伝 子の 差 が 最も 大 き かっ た 。 〇. meridionalisの分布す るオ ー ス 卜 ラ リ ア と 他 地 域 と の 、 ウ ォ ー レ ス 線 を 挟 ん だ 地 理 的 、 生 態 的 な 隔 離が 核 遺伝 子の分化 を強め たものと 推察され た。

3)9プ ロ ー ブ と8プ ロ ー ブ を 用 い 、 ミ ト コ ン ド リ アDNAと 葉 緑 体DNAのRFLP 分 析 を 行 った 。 〇 . rz.tfipogonは 他 の4種に 比 べ 、ミ ト コ ンド リ アDNA、 葉緑 体 DNAと も に 多 く の 種 内 変 異 性 を 持 っ て い た 。〇 ,ghtmaepatzdaの ミ トコ ン ド リア DNAと 葉 緑 体 DNAは そ れ ぞ れ 2っ の 型 (Mlと M2お よ び Clと C2)に 大 別

(3)

された。MlとM2はそれぞれ〇,Iongistaminataと〇,barthiiのミトコンドリア DNAに 類 似 し 、ClとC2は 共 に 〇 .barthiiの葉 緑 体DNAに 類 似す る こ とを 明 らかにした。〇.′ ufipogonのオセアニアに分布する系統のミトコンドリアDNA は〇, meridionalisのミ トコンド リアDNAに類 似するが 、両者の 葉緑体DNAに は類似性が認められなかった。

  同じ材料を 供試した にも関わ らず、各 調査では結果が一致しなかった。特に 形態 お よび 生 理 特性 、 核のマー カー(ア イソザイ ムと核DNA)、 細胞質分 子マ ー カ ー ( ミ ト コ ン ド リ アDNAと 葉 緑 体DNA)を 指標 と し て示 さ れる 種 内 、種 間の遺伝変 異性の間 には大き な差が認 められた。この結果の不一致は、各々の 指標の持つ 分化様式 や遺伝様 式の差に よるものであると推察された。各調査に よって得られた結果の比較、統合を試みた。

4) 形態 ・生 理的特性 が類似し た2つの多 年生型分類 群間、お よび3つの 一年生 型分類群 問に核、 オルガネ ラの遺伝 的な類似 性は認め られなかった。分類群間 に認めら れた形態 ・生理的 特性の類 似性は、 各特性の 表現型が似通った自然選 択圧の下、各分類群において独立に収斂的に分化した結果の成因的相同であり、

同祖因的 に分化し た結果で はないこ とが示唆 された。

5) O.rufipogonは形態・生理的特性、分子マーカー双方において他種と比較し、

より多くの種内変異を持っていた。〇.′ ufipogonはアジア、オセアニア広域の多 様な環境条件下に適応しており、これらの遺伝変異は〇.′ ufipogonの地理的分 化 の際に生じ た適応放散の結果であると推測される。同一地域で採集された〇,

r ufipogonの 多年生系統と一年生系統は、遺伝的に類似していたのに対し、地理 的 に隔離され た地域で 採集され た系統は 形態・生 理的特性 が類似していても遺 伝的には異なる傾向にあった。このことは、〇. rufipogonにおける多年生と―年

(4)

生 の 分 化 が 地 理 的 分 化 の 後 、 各 々 の 地 域 に お い て 独 立 的 に 生 じ た も の で あ る こ とを示唆する。

  〇 ,glumaepatulaの ミ ト コ ン ド リ ア 型Mlは 葉 緑 体 型Clと 、M2はC2と 対 に な る傾 向が 認め られ た。Ml‑Cl型は 〇,Iongistaminataに 、M2−C2型は〇.bar thii に そ れ ぞ れ 由 来 し 、 多 元 的 に ア フ リ カ か ら ア メ リ カ に 伝 播 され た と推 測さ れる 。 細 胞 質 と は 対 称 的 に 〇 ,glumaepatzぬ の 核 遺 伝 子 は 他 種 か ら独 立 した もの で、 細 胞 質 型 の 異 な る 系 統 に 多 く の ア イ ソ ザ イ ム 対 立 遺 伝 子 やDNAの 制 限 酵 素 断 片 が 共 有 さ れ て い た 。 地 理 的 分 化 の 過 程 に お い て 異 な る 細 胞 質 型 の 植 物 問 に 遺 伝 子流動が生じてい たと示唆される。

  〇.mび潴〇門口fぬと〇.rzゲゅ〇g〇門のオセアニア系統は類似したミトコンドリア DNAを 分 化 し て い た が 、 そ の 他 の 分 子 マ ー カ ー で は 同 様 の 傾 向 は 認 め ら れ な か っ た 。 両 者 の ミ ト コ ン ド リ アDNA間 に 収 斂 進 化 が 生 じ た 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

  本 研 究 で は 形 態 ・ 生 理 的 特 性 、 お よ び 分 子 マ ー カ ー を 指 標 と し た 複 数 の 変 異 解 析 の 結 果 を 比 較 、 統 合 し 〇 り ′za属AAゲ ノ ム 野 生 種 間 の 系 統 分 類 関 係 を 明 ら か に し た 。 分 化 様 式 の 異 な る 指 標 が 示 す 多 型 性 は 、 対 象 と す る 生 物 群 の 系 統 分 化 に 対 し 、 異 な る 側 面 か ら の 解 釈 を 与 え る 。 系 統 分 類 関 係 の 解 明 に は 複 数 の 指 標 を 用 い た 遺 伝 変 異 の 解 析 と そ れ ら の 総 括 的 な 評 価 が 必 要 で あ る こ を 示 し た 。

(5)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 名誉教授

島本 佐野 三上 森島

義也 芳雄 哲夫

啓子( 国立遺伝学研究所)

     学位論文題名

Bio‑systematics of Oryza AA genome wild   taxa (Oryza sativa complex) by morpho‑

physiological traits , 1SOZymeSandRFLPS

(形態・生理形質,アイソザイムおよびPFLP を用いた    〇 ryza 属 AA ゲノ ム野生種の系 統分類学的研究)

  本 論 文 は 、 図21、 表26か ら な る 総 頁 数117の 英 文 論 文 で あ る 。 別 に 、 参 考 論文10編 が添え られてい る。

  作 物 の 近 緑 野 生 種 は 、 一 次 遺 伝 資 源 と し て 重 要 で あ り 、 そ れ ら の 遺 伝 変異 の 量 、 そ の 地 理 的 分 布 と そ れ ら の 系 統 発 生 的 関 係 を 知 る こ と は 重 要 で あ る 。 本研 究 は 、 イ ネ 属 のAAゲノ ム 野 生種 で 、 〇り/za sativa complexを 構成 し て いる ア ジ ア、オ セアニア に分布 する〇, ′ ufipogon、中南米に分布する〇.glumaepatula、オ ースト ラリアに 分布す る〇. meridionalis、お よびアフリカに分布する〇.bar thii と 〇. Iongistaminataの 系 統 分 類関 係 の解 明を目的 とし、 上記の5種の形 態・生 理 的 特 性 、 ア イ ソ ザ イ ム 、 核 DNA、 ミ ト コ ン ド リ ア DNA、 お よ び 葉 緑 体DNA に お け る 多 型 性 を も と に 、 多 変 量 解 析 の 指 標 が 示 す 遺 伝 変 異 を 解 析 し た 。   実 験 環 境 下 で 供 試5種 を 栽 培 し 、 量 的 に 評 価 が 可 能 な 形 態 ・ 生 理 的 特 性 を 調 査 し た 。 自 生 地 の 環 境 が 類 似 す る 〇 . ruipogonの 多 年 生系 統 と 中 米・ 南 米 北部 に分布 する〇. glumaepatulaの多年生系統の問、および〇.´ーごゲpogonの―年生系 統、〇 .mer idionalisと〇.barthiiの間 には形 態・生理 的特性 の類似性が認められ た 。 〇l glumaepatulaのア マ ゾ ン河 の 洪 水域 に 自 生す る 系 統 とブ ラ ジ ル南 部 の 深 水 湿 地 に 自 生 す る 系 統 で は 、 各 々 固 有 の 表 現 型 が 分 化 し て い た 。 異 な る 環 境条 件 下 に 自 生 す る 野 生 イ ネ は 、 各 々 異 な る 自 然 選 択 圧 を 受 け 、 適 応 的 な 形 質 群が 確 立 し て い る と 理 解 さ れ 、 収 斂 進 化 の 可 能 性 が 示 さ れ た 。 ア イ ソ ザ イ ム 遺 伝子 座 の 多 型 性 と 、 核DNAのRFLP分 析 に よ り 、5種 は 各 々 特 異 的 な 核 遺 伝 子 型 が

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分 化 し 、 種 形 成 後 、 種 問 の 遺 伝 子 流 動 が 制 限 さ れ て い る と し た 。   ミ ト コ ン ドリ アDNAと 葉 緑 体DNAのRFLP分析 か ら 、〇 .rz.tfipogonは 、 ミ ト コ ン ド リ アDNAと 葉 緑体DNAと もに 他 の4種に 比 べ 種内 変 異に 富 ん でい た 。 RFLPデ ータの主 成分分析の 結果、〇 .glumaepatulaのミトコンドリアDNA型は、

〇. IongistaminataのミトコンドリアDNA型に、類似するタイプと〇.barthiiのミ ト コ ンド リ アDNA型 に 類 似す る タイ プ の2っ に大 別 され た。 〇,glumaepatula の 葉 緑体DNA型 は、2っ の タイプ に大別さ れ、その 一方は〇 .barthiiの葉緑 体 DNA型 に類似し た。このこ とから、 〇.glumaepatulaは中米・南米北部に分布す る 系統が〇 ,longistaminataと共通の祖先型に由来し、アマゾン河流域に分布す る 系統が〇 barthiiと共通の 祖先型に 由来すると推測され、両者が多元的にア フ リカから アメリカヘ 伝播し、 その後の 地理的分 化の過程 において 異なる細胞 質型の植物問の遺伝子流動が示唆された。

  〇,′ ufipogonは他種と比較し多くの種内変異を持ち、アジァとオセアニアの広 域 の多様な 環境条件下 に適応し ており、 地理的分 化の際に 適応放散 が生じたと 推 測される 。同一地域で採集された〇.ruipogonの多年生系統と一年生系統は、

遺 伝的に類 似するが、 異なる地 域で採集 された系 統は形態 ・生理的 特性が表現 型 的に類似 していても 遺伝的に 異なった 。したが って、多 年生と一 年生の分化 は 地理的分 化の後、各 々の地域 において 独立的に 生じたと 考えられ る。また、

〇. rzrfipogonのオセアニア系統と〇Imeridionalisは、類似したミトコンドリア DNA型 を、 そ の 他の 分 子 マーカ ーでは異 なる遺伝 子型を持 つことか ら、両者 の ミトコンドリアDNA問に収斂進化の可能性が示唆された。

  本 研究 は 、イ ネ 属AAゲ ノム 野 生 種の 形 態 ・生 理 的特 性お よび分子 マーカー の 変異を明 らかにし、 比較、統 合を行っ たもので 、イネの 植物遺伝 資源の遺伝 的 評価、系 統分類学お よび進化 学におい て重要な 貢献をし 、高く評 価できる。

よ っ て、 審 査 員一 同 は 、最 終 試験 の 結 果と 合 わせ て 、 本論分の 提出者秋 本正 博 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実