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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 )    茂 木 洋 晃

学 位 論 文 題 名

A novel adherent culture method of glioblastoma stem ―     like cells using typelCollagen

(コラーゲン1 を用いた膠芽腫幹細胞の接着培養法の新規開発に関する研究)

学位論文内容の要旨

【背景 と目的】1997年に急性 骨髄性白 血病においてその腫瘍細胞起源を示す癌幹細 胞の存在が示唆されて以降,固形癌においても癌幹細胞の報告が相次いでいる.髄芽 腫や膠 芽腫など の脳腫瘍 において はCD133発現群が 癌幹細胞 としての 能カを持つこ とが報告されている.悪性脳腫瘍,特に膠芽腫は現在の標準治療である可及的外科摘 出,放射線治療,アルキル化剤であるテモゾロマイドを用いた集学的治療を行った場 合でも 中央生存 期間は2年に満たず,極めて予後不良の疾患である.癌幹細胞は腫瘍 の発生,増大,浸潤,再発に深く関与するとされ,手術による完全摘出が困難な脳腫 瘍分野における新たな治療標的である.

  これまで癌幹細胞の培養に関しては,無血清培地にいくっかの増殖因子を加え球体 (sphere)を 形成 さ せる ことで幹 細胞を濃 縮させる 方法が一 般的であっ た.しか し sphere形成法 では幹細 胞を未分 化状態に 維持できず,また内部が壊死することがあ り、問題であづた.これらの現象は幹細胞の未分化維持に働く各種因子や幹細胞機能 を維持 する各種 栄養因子 がsphere内部に 浸透できないために生じると考えられる.

これは 血vitroにおける抗腫瘍実験に際しても均等な薬剤への暴露が困難である点な どから大きな障壁になり、接着培養系における癌幹細胞増殖法の確立が重要と考えら れてきた.

  近年になり,laminin coated plateを用いた接着培養での癌幹細胞増殖が可能なこ とが報 告された .ただし,lamininは冷蔵保存が必要で管理が煩雑であり,本研究で は室温 保存が可 能なtypelcollagen coated plateの膠芽腫幹細胞接着培養への応用 の可否を検討した.

【対象 と方法】 膠芽腫幹 細胞の代 表的なマー カーであ るCD133陽性細 胞の局在を検 討 すべ く 、 膠芽 腫 の標 本を用い て連続切 片を作成 しtypelcollagenとCD133の免疫 染色を 行った。 また、一 般的なヒ ト膠芽腫細 胞株であ るU87MGと手術 検体から作成 したPrimary cultureをNon‑coated plate(Non‑coat)、typel collagen‑coated plate (CoD、laminin‑coated plateとい った各種 環境で、serum contained medium (SCM) もしく は各種増 殖因子を 添加した 幹細胞用のserum free medium (SFIVDを用いて培 養した 。各々の 条件にお けるRNAレベ ル・タンパ クレベル での幹細 胞マーカーの発 現 の程 度 をRTPCRと免 疫 細 胞染 色 にて 半 定 量的 に 解 析し た 。ま た 、Col/SFMで 培

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養 され た 膠 芽腫 細 胞の 幹 細 胞性 の 有無 を検討 する目的 でSphere形成能 をlimiting dilution assayで検討した。また、免疫不全マウスであるヌードマウス(5‑8週齢)ヘ、

Col/SFMで 培 養 し た 膠 芽 腫 細 胞 を1万 個 か ら10万 個putamenに 定 位 的に 移 植す る ことでその腫瘍形成能を検討した。

【 結果 】CD133陽 性細 胞 は 壊死 組 織 周囲と 腫瘍血管 周囲に存 在するtypelcollagen に 接す る よ うに 局 在す る こ とが わ かっ た。SFMに よる培養 では、U87MGはNon‑coat に てSphere形 成が 確 認さ れ 、Lamに てHemisphereを 形 成し 、 均等 な 薬剤暴 露を目 的 とし た 接 着培 養 に不 向 き であ る こと が判明 した。一 方でColはSFM培 養におい て も 単 層 培 養 の 状 態 を 維 持し 本 研 究の 目 的 の必 要 条件 を 満 たす こ とが 分 か った 。 Col/SFMで 培 養 し たU87MGと 膠 芽 腫 細 胞 に お い てCD133やNestinの 発 現 増 強 が 認 めら れ た 。ま た 、Co:USFMで10回 以 上継 代 し た膠 芽 腫 細胞 はNon‑coat/SFMで培 養する ことによ り高率にSphere形成を認 め、幹細 胞性を維持 していることが示唆さ れ た。 免 疫 不全 マ ウス へ の 移植 でCol/SFMに て培養し た膠芽腫 細胞は1万 個の移植 でも腫瘍形成を認めた。

【考察 】新たな治療標的として注目されている癌幹細胞の特徴として抗癌剤や放射線 治療へ の耐性が報告されており、再発に深く関与していることが示唆されている.ま た,免 疫不全マウスへの移植で強い組織浸潤能を持つ事が報告されるなど,腫瘍の性 格の再現性も優れている,このように癌幹細胞はin vivo.in vitroのいずれにおいて も癌治 療研究において重要な存在となっており,簡便かつ利便性の高い培養条件の確 立が望 まれる. Pollardらはlamininによるadherent cultureにて培養した細胞は高 い確率 で細胞株として樹立可能であり,強い腫瘍形成能を持ち,sphere法よりも有効 で あ る こ と を 報 告 し て いる . 今 回の 研 究 でtypelcollagenとEGFやFGF2な ど を 含 むSFMと の 組 み合 わ せが 細 胞 増殖 .CD133の発 現の両面 から有用 であるこ とが示唆 された.

再生医 療の分野 において 、Leeらの報 告では,collagenIcoated plate/SCMで増殖さ せた骨 髄問質細 胞が中枢 神経への 移植で神 経細胞マー カーやグリア系のマーカーを 発現し ている.これらのことは,collagenI coated plateが多分化能を維持したまま 骨髄問 質細胞を培養でき,癌幹細胞とぃう未分化な細胞培養への応用に適している可 能 性も 示 唆する .実際にCol/SFMで培養した 膠芽腫細 胞は腫瘍 形成能を 持ち、培 養 条件を 変更すれ ばSphere形成能 も持ち、 幹細胞性 を維持して いると言える。また、

Col/SFMでの培 養は簡便 かつ安定 した細胞増 殖を示し 、得られ た手術検 体が少な い 場合やSphereを形成し にくい腫 瘍への応用が期待できる。′rypelcollagenが幹細胞 性を維 持する機 序に関し ては直腸 癌細胞株 を用いた研 究でa2ロlinte grinの関与が 指 摘さ れ て いる が 、膠 芽 腫 にお い ては 検討で きておら ず、今後 の課題と 言える。

【 結 論 】typelcollagenによ っ て膠 芽 腫 細胞 は 接着 培 養 を維 持 し たま まCD133や Nestinといっ た幹細胞 マーカー を強く発 現するよ うになり、Sphere形成能や腫瘍形 成能も 持ち、膠芽腫幹細胞接着培養法の新たな選択枝となりえることが示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

哉 亨 宏 博

A novel adherent culture method of glioblastoma stem‑

    like cells using typelCollagen

(コラーゲン1 を用いた膠芽腫幹細胞の接着培養法の新規開発に関する研究)

  発 表内容 はグリオブラストーマにおける癌幹細胞接着培養法の確立に関する研究である。

髄芽腫や膠芽腫などの脳腫瘍においてはCD133発現群が癌幹細胞としての能カを持つことが報告 されている。悪陸脳腫瘍、特に膠芽腫は現在の標準治療である可及的外科摘出、放射線治療、

アルキル化剤であるテモゾロマイドを用いた集学的治療を行った場合でも中央生存期間は2年に 満 たず、 極めて予後不良の疾患である。癌幹細胞は腫瘍の発生、増大、浸潤、再発に深く関 与するとされ、手術による完全摘出が困難な脳腫瘍分野における新たな治療標的であると考えら れる。

  これまで癌幹細胞の培養に関しては、無血清培地にいくっかの増殖因子を加え球体(sphere) を形成させることで幹細胞を濃縮させる方法が一般的であった。しかしsphere形成法では幹細 胞を未分化状態に維持できず、また内部が壊死することがあり、問題であった。これらの現象 は幹細胞の未分化維持に働く各種因子や幹細胞機能を維持する各種栄養因子がsphere内部に浸 透できなぃために生じると考えられる。これはin vitroにおける抗腫瘍実験に際しても均等な 薬剤への暴露が困難である点などから大きな障壁になり、接着培養系における癌幹細胞増殖法の 確立が重要と考えられており、その培養法に関して検討している。

本研究では室温保存が可能なtypelcollagen coated plateの膠芽腫幹細胞接着培養への応用の 可否を検討した。

  U87MG、グリオブラストーマのprimary cultureを検討したが、CD133陽性細胞は壊死組織周囲 と 腫瘍血 管周囲に存在するtypelcollagenに接するように局在することがわかった。SFMによ る培養では、U87MGはNon−coatにてSphere形成が確認され、LamにてHemisphereを形成し、均 等な薬剤暴露を目的とした接着培養に不向きであることが判明した。一方でColはSFM培養にお いても単層培養の状態を維持し本研究の目的の必要条件を満たすことが分かった。Col/SFMで培

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伸  

  吉

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強 が 認 め ら れ た 。 ま た 、Col/SFM に よ り 高 率 にSphere形 成 を 認 め 、

、 の 移 植 でCol/SFMに て 培 養 し た 膠 ニ コ ラ ー ゲ ン1が 有 用 で あ る と の 報

  今 回 の 研 究 発 表 に 対 し て 、 副 査 の 近 藤 先 生 か ら の 質 問 が あ り 、Sphereを 実 際 に カ ッ ト し てCD133 の 免 疫 染 色 を 行 っ て 、 そ の 分 布 を み る と 接 着 培 養 、 も し く はsphereの ど ち ら が 有 用 な 培 養 法 か 判 別 で き る の で は な ぃ か 、 と の ヨ メ ン 卜 が あ っ た 。 ま た 、CD133/nestin以 外 に 検 討 し た マ ー カ ー は な い か 、 と の 質 問 が あ っ た 。

  そ れ に 対 し て は 、CD15の 検 討 を 行 い 、 コ ラ ー ゲ ン で 増 強 す る こ と は 確 認 で き て い る が 、 追 試 で き て い な い た め 、 今 回 は 報 告 に は 含 め て い な ぃ と の コ メ ン 卜 で あ っ た 。   松 野 教 授 か ら は 、 コ ラ ー ゲ ン1で 培 養 し た 細 胞 の 幹 細 胞 性 は ど の よ う に 示 さ れ る の か 、 と の 質 問 が あ っ た 。 そ れ に 対 し て は 、Sphere形 成 さ せ るconditionCol/SFMを 戻 す こ と に よ っ てSphere 形 成 能 を 保 っ て い る こ と が 確 認 さ れ た 、 と の 回 答 で あ っ た 。

  田 中 先 生 か ら は 、 今 後 は よ り 少 数 の 細 胞 移 植 で 腫 瘍 形 成 能 が あ る か な ぃ か を 確 認 す る 事 と 、 継 代 し て の 腫 瘍 形 成 が あ る か な い か 、 を 確 認 し た 方 が よ い の で は 、 と の コ メ ン 卜 が あ っ た 。 ま た 、 腫 瘍 の 分 子 生 物 学 的 な プ ロ フ ァ イ リ ン グ と 今 回 の コ ラ ー ゲ ン1と の 関 連 、EMTチ ェ ン ジ な ど 今 後 調 べ て い く と 面 白 い の で は な い か 、 と の コ メ ン ト が あ っ た 。 そ れ に 対 し て 、IDHl mutationは コ ラ ー ゲ ン 生 成 に 係 わ っ て い る と の 報 告 が あ り 、IDHl mutationグ ル ー プ が 予 後 が 良 い 理 由 と コ ラ ー ゲ ン と い う ECMの 関 連 が 興 味 深 く 、 今 後 検 討 し て い き た い 、 と の 返 答 が あ っ た 。   寳 金 教 授 か ら は 、sphereを 構 成 し て い る 細 胞 と コ ラ ー ゲ ン で 培 養 し た 細 胞 に は 何 か 差 が あ る の だ ろ う か 、 と の 質 問 が あ っ た 。

  返 答 と し て 、 推 察 の 域 を 出 な い が 、Sphereを 構 成 し て い る 細 胞 は 自 身 でECMを 分 泌 す る な ど 、 幹 細 胞 維 持 の 環 境 を 形 成 す る 能 カ を 持 っ た も の が よ り 濃 縮 さ れ て い る が 、 コ ラ ー ゲ ン で の 培 養 細 胞 は 、 自 身 で は 幹 細 胞 維 持 の 環 境 を 維 持 す る 能 カ が 低 い 、 っ ま り 幹 細 胞 性 が よ り 低 い も の も 含 ま れ て い る た め 、 腫 瘍 形 成 ス ピ ー ド が 遅 い こ と が 考 え ら れ る と の 返 答 で あ っ た 。

  こ の 論 文 の 基 礎 論 文 はNeuro‑oncologyに 投 稿 中 で あ る が 、 癌 幹 細 胞 を タ ー ゲ ッ ト と し たdrug screemngの 実 験 系 を 確 立 す る う え で 布 石 と な る デ ー タ を 提 供 し う る と 考 え ら れ 、 審 査 員 一 同 は こ れ ら の 成 果 を 評 価 し 、 大 学院 課 程 に お ける 研 鑽 や 取 得単 位 な ど も 併せ 、 申 請 者 が 博士 ( 医 学 ) の学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 考 え ら れ た 。

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実