教師の職能発達を促す校長の指導助言機能に関する実証的研究 : 授業研究に焦点をあてた教授力量の形成への支援
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(2) 目. 次 頁. 1研究の背景…・………・……・…………・・……・・…・……………1. 1.研究構想の背景……………一…・・…・……………・……………弓 (1)問題の断在………・……・…・・……………・…・…・……・………1 1)指導力不足教員をめぐる問題 ………………・………………一・…・1 2)校長の指導助言への期待 ……………・・……………・・…・………蟄2 3)理論に裏打ちされた実践的引書 …・……………・……………・・…・・3 (2)先行研究の概要と課題……・・…………・…・……………・・…・……4 1)指導助言機能から…・・……………・……・…・_鯛。.。...._....。..4 2)り一ダーーシップ論から■pa””Pt Pt tu ta se ““m“””u■“““t“脚………・……・・…・……4. 3)授業への指導助言から議8hN……………・・………………・・…・…・…5. 2.本研究の圏的と方法……・…………・・……・…・………・…………7 〈1)研:究の目的…・…………・…・・………………… …………・……8 1)指導助言機能の解明 ………………・・………………・髄・…卿舞・.’庸“咀8. 2)摺導助言機能の構成要素の回国 ………………・……………・・…・一9 (2)研究の方法 ・…………・……・…・・……………・一……………・1◎ 1)米国での授業研究の取り組み……・…・………・………………・・… 10 2)事例校選定の予備調査・…・……………・・…………・……… ……10 3)事例校の参与観察…・…………・…・・……………・…・…………1◎. 4)アンケート調査………………・・………一………・……………10. 狂校長の指導助言機能……………………………・・……・……一12 1..指導助言機能のスタイル…………………………・……・…・……i2 (1)教育的(指導的)リv一一・・ダbeシップ………・………・・一…・………・…12. (2)り一ドラーナーシップ(L㈱dLeamership) …………・………………・13. (3)変革謝り一ダtSシップ・………………………………・…・……・・14 2.指導助言のあり方と可能性…・・……………・・…・……………・…・16 (1)指導助言機能発揮の立場(ポジシyン) ・…………・…・……………・16 (2)指導助言機能発揮の可能性 …・・…………・……………一…・……・18. 3.指導助言機能の意味と目的・・………………・……・………・…・…・1g (1)指導助言のとらえ方 ・…………・……・………・・………・……・…20 (2)指導助雷機能 …・・………・…・・……………・…・・…・…………・2◎. (3)校長と同僚との指導助言機能の違い………………・……・…………21 4.校長が発揮する指導助言機能……・……・……・………………一… 22. 5.校長の授業経営…・…・…………・…………・…・…・…………・・25.
(3) (1)授業研究における校長の授業経営のあり方・・………………・・………・25. 1)授業研究による授業改善と学力の向上…・………・……・・……一……25 2)学校改善を支える授業研究……・…………… ……………・…・…・26 (2)授業改善へ教育論,教授・学習理論,評価理論の導入……………一…・・27. 6。教師の職能発達活動の意義 ………………・・………一………・…2g (1)職能発達の概念規定 ・……・…………・・……・…………・………・29 (2)職能成長,発達,開発の意義…・…・…………・・…・……一…・…… 29 (3)職能発達論の展望 ・…………・・…・・…・……………・e…………・30 (4)職能発達活動と校長の役割 …・……・……・・…………・…・…・……30 (5)校長の指導助言機能による職能発達…・・……………・・……………・31. 皿米国における校長の指導助言機能に関する研究とその意義………・33 1.米国における授業研究への考え方 一………………・……・………・33 (1)米国校長の機能 ……・……・……・……・………・…・……・……・33 (2)米国の校内研修における校長の指導助言機能の検討………・…・……・…33. 1)米国の校内研修………・……・………………一・…・・…一……・・33 2)米国の校内野菊の評価………・・………・…・……・・…・…… ……・34 3)米国校長の校内研修における指導助言機能……一…………・………一・36. 2.日本の授業研究へのアプローーチ………………・……・………・…… 39 (1)ステイダラーとヒーーバートによる目下の授業研究のとらえ方……………・39 (2)日本の授業研究を通して,ステイダラーらによる米国校長への勧告…・……41 (3>日本の校内研修(授業研究など)への校長の関心・…………・……・……・44 (4)ルウィスによるとらえ方 …・………・……・………・…・……・・…・・50. 1)資本の授業改善についての解説………………・…一……………… 53 2)H本の授業研究タイプの把握一………………・…・・………・・…・… 54 3)日本の授業研究についての誤解の指摘と授業研究の本質………・………・55. 3.授業研究における米国校長の指導助書機能………………一・………S8 (1)米国校長の指導助言機能の方向性 …・・……………・…………・……58 (2)米国校長の指導助言機能を支えるピア灘一チング(Peer Coaching>や キャリアティーチャ・一・一・(Caごeer Teaoher)の活用…………60. 1)同僚による指導助言(ピア=一チング)・……………一・……一……・60 2)授業改善にあたるキャリアティL・・一・チャー・………………… ……・・…・64. 3)P℃研修の評価と校長の役割…………・……… ……・…………… 66 (3)米国校長の校内研修(授業研究など)経営の日本への示唆・……・………・68. 1)日本の校長の指導助言機能のこれまでの実状…………………………68 2)同僚性と協働化……………=”…・・…・一………・・…………・…69 3)教員文化や組織文化活用による校内研修……・……・……・……・……7◎ 4)漸進的,段階的な授業改善一……………・… ……・…………・・…・70. 鱒鼠.
(4) rv授業研究における校長の指導助言機能の分析……………一…・…72 1.校長の指導二二機能による授業実践研究事例………・……・…・……・72 (1)校長の指導助言機能による教諭としての実践研究事例………・………・・■72. 1)実践研究事例①言語学習の方法論的研究一有意味学習の意義一…………72 2)実践研究事例②聴いて理解する能力の発達とその評価・…・……………73 (2)校長としての指導二二機能による実践研究事例……………・・…・・……74 1)実践研究事例③教師の職能成長を支える校長の指導助言機能に関する研究一74 一総合的学習,教科学習の授業実践力を中心に据えた授業改善の理論的考es一一一. 2)指導助言事例④教育計画表を活用した教師への指導助言事例…・・………75. 2.事例校選定のための予備調査 …・……………・・…………・…・…・77 (1) 調査対幽象校と調査方法 一・一・… 一・一・一“一… et一一・・一一・t・一・一・… 一・一t■77. (2)校長の特徴 ……・………・…・…・…………・…・… ……・・…’…77. (3)校長の指導助言のあり方 ……………・………・……………・……77 (4)A,B小学校選定の理由 ………………・……・…・………・…・……77 (5)参与観察校の授業二三 ……………・……………・………・……・・79 3.公立A小学校の授業研究における校長の指導助言一………………・…7g (1)教科教育(算数科)に対する校長の指導助書機能発揮の姿勢……………・79. 1)研究授業と授業研究の一例(概略)………・……・…………・…・…・81 2)確かな学力の定着をはかるための校長の考え……・・…………・………83 3)授業実践事例の考察・…・……………・……………・…・・……・…85 (2)授業研究における校長の指導助言機能のあり方…一■……………・・…・86 〈3)少人数習熟度別学習へ学習理論応用の可能性……・・…………・一…・・88. 4.公立8小学校の授業研究における校長の指導二二……………・…・…・93 (1)道徳教育の授業研究における摺二二書 …・…・……・・…・…・…・・……・94. (2)摺導助言機能による職能発達の研究方法・……………………………94 (3)米国の道徳教育(キャラクターエデュケーシsン)と授業研究からの視点…・95. (‘gL)B小学校の授業研究における校長の指導助言機能発揮の参与観察…………96. 1>道徳教育に対する校長の指導助言機能発揮の姿es ・……………・一・……96. 2)B小学校校長の道徳教育論から教師による実践へ…・…・…………・一…96 3)道徳教育の授業研究における校長の指導助言機能発揮の事例…・…………97 4)授業研究における校長の指導助雷 ・・……………・・………………庸1◎4 (5)道徳教育における校長の指導助言機能の要素の検討……………・…・・…105 5.B県公立小・中学校校長への指導助言機能による 校内研修(主として)に関するアンケート調査…・………・……107 (1)校内研修における学校改善への校長に対するアンケート項目と. その類型化・…・・…………107 (2)調査4項目の内容とその考察・……・………■■・…・…・…・…・・…・…1◎8 1)校内研修(主として授業研究)における,. 校長の指導助言機能発揮のあり方………・………………・・i◎8. 搬.
(5) 2)校内研修において,教育論,教授・学習理論,評価理論を導入した. 指導助言機能は必要か一…・109 3)低学力問題への対応策について・…・. ””t#一一#*ht−i#一一一一n#一ntb−i一=一Nsi一一#t” 110. 4)指導力不足教員への対応策について ・. 傷號輪・周’の脚随・・圏鳳一・・… @一騨・一一・… 11◎. (3)まとめ・・………………・…一…. .一一・一一一一一一一一・#・・一“一一一一一 110. V考察……・・…………・一………………・………・…………112 1.成果………・…・……・………………・……………・……・・u2 (1)校長の指導助言機能の構成要素と考えられる概念の析出……………・…・112 (2)教科教育における校長の指導助言機能による教師の職能発達…………・…114 (3)道徳教育における校長の指導助言機能による教師の職能発達…・…………H5. (4)教授力量の形成への校長の支援……………・…… ………・………・116 (5)本研究の学校教育実践への示唆・……・…………・………………… 116. 2.今後の研究課題………・………・・…………………………・…・117 (1)教科教育の授業研究における校長の指導助雷機能発揮の問題点…………一117 (2)教科教育の授業改善における指導助言機能構成要素の概念析出の課題…一…117. (3)道徳教育の研究課題………………邑・……………・…・…………i18 (‘(t)本研究の今後の課題…一……………・・………・………・…・……玉玉9. 参考文献・…………一…・・…・……………・・………………・・…121 資 料 資料1.米国概究者による授業研究のとらえ方(抄訳)…・……………i…… 1 (1)ステイダラー(XW.Stigler)とヒv一一一バート(」.Hiebert)によるThe Teαching Gap. (2)ルウイス(C.CLewis>によるLesson Simdy. 資料2.B県公立小・中学校長への指導助書機能による. 校内研修に関するアンケート調査…………・・……・ゼli. 短.
(6) 1研究の構想 1.研究構想の背景 (1)問題の所在 1)指導力不足教員をめぐる間題. 今,わが国では,低学力,指導力不足教員などの問題が大きく取り上げられ,学校の指 導機能の衰退が進行していると指摘されている。つまり学力をつけるためには授業が大切 であり,そして教師の指導力改善が求められているのである。学校では子どもの発達が期 待され,それには教師の職能発達も期待されるところであり,教師にとっては授業につい ての継続的研究や学習方法を改善する場であることが求められる。. では,どのようにして教員の指導力を高めていくかが重要である。指導力が不足してい るといわれる教師は,自己の指導力を客観的にとらえ,改善をはかろうとする意識を十分 もっていないように思われる。各種の研修も実施されているが,どんな斬新的な取り組み. を展開しようと,教師が意識変革をはかり日常的に研修が行われない限り,授業改善を学 校教育の場に根づかせることはできない。授業実践に現実的,実際的に対応しうる能力が 形成されるように日常的な校内研修が必要である。. 本来,学校は,そこで子どもがいきいきと学び,保護者や三二社会の信頼を得られる教 育環境を確保することが重要である。都道府県では,これまでに,子どもの指導に問題の ある教員に関して,教員の実態把握のあり方,教員に対する支援・指導体制,教育センタ ーなどでの研修のあり方,教員の適切な人事管理上への対応のあり方などについて検討L, 実際にそれらの施策を始めているのである。たとえば,これらの問題教員を「指導力不足」 として担任からはずし,研修を受けさせようとしている。そうした二度が文科省の指導で,. 公立学校教員の任命権をもつ都道府県と政令指定都市の教育委員会で広演っている。指導 力などに二三のある教員に対応すべき上記のような必要性はある程度認識せざるを得ない が,他方において,その対応が他の教員の教育活動に萎縮的効果を及ぼすことのないよう 配慮すべきであると考える。. つまり,問題は指導力不足として排除するだけでなく,どうやって教員の指導力を高め ていくかということである。教員は人によって指導方法が異なる。教え方に対する評価も さまざまである。指導力が足りないと見えても,そもそも教員として不適格なのか,経験 不足や技衛的な未熟さからくるのか原因はひとつではない。一人一人の教員の:事情を見て いくことが大切である。そして,必要:なのは,校長がその指導助言機能により校内研修の. 改善をめざし,学習理論などの導入をはかり,教員が自分の能力を磨けるような支援態勢 をつくっていくことである。. 20◎◎年∼20◎i年には,筆者が校長として勤務した小学校において,指導力不足と思わ れる5年生担任の男性教師(35才)は,教科などの専門的知識はもっているが,やや一一方 的に学習内容を二二し,板書をしていく傾向が強かった。その状況下で子どもの私語は目 だち,十分な授業展開がされていなかった。その教師への対応策として,筆者は教室訪問,. 学年研修,週教育計画表(週録)活用により継続的に具体的な指導助言を与えた。たとえ ば,教室訪問においては,一方的に学習内容を説明するのでなく,できるだけ個々の子ど 一1一.
(7) もの学習活動をみさだめながら,授業を進める。その教授・学習過程における学習内容を 子どもに分かりやすい板書構成でさらに理解を促す,などの摺導助言を与えたのである。. また,学年主任が中心となる学年研修で,その教師の学習指導の実態も取りあげ学年研修 を進めるよう指示し,筆者も研修会に参画した。二二育計画表活用においては,教師自身 から見て良かった思われる教科の授業展開例と,子どもの学習活動などから見てうまくい かなかった学習展開例の概略を記入するよう指示した。それに対して教授・学習過程にお ける教師の指導事例,子どもの学習活動事例,板書構成などについてコメントを書き加え ることを試みた。子どもを掌握して授業展開をするという点には,まだ問題が残ったもの のその教師の授業改善への努力と学習指導の技術向上は見られるようになった。 2)校長の指導助雷への期待. 指導助言が,学校でどのように行われており,どのような指導助言が効果があるかとな ると,おのおの自分の経験に即して論じるだけでまとまった調査・研究はない。同僚問の. 指導助言でなく,校長、教頭,各種主任など,指導回書を専門的職能とするものの場合に ついても同様である。学校経営においてほとんど未開拓の分野といってよい1),と解説さ れている。. また,現場教師による教師教育へのアンケート調査結果において,教師からの『校長は 指導性(教科教育)をもっと発揮すべきである。』,『校長は管理的な面よりは,教育内容 を三二すべきである。』との回答に対して,前田は,f事態はかなり深刻であるといえるし,. 教育実践上に校長が指導力をなくしてしまったのかという問題を早急に考えることが必要 となろう」2)と指摘している。. 米国では,「これまでも指導的役割が強調されていたが,今Nにおいて教授上の指導者 (instructlonal leader)としての校長の役割が従来にも増して強調されている」3)と述べられ ている。. さらに,北神は,諸外国の例を通して,f校長の資質能力は,学校経営や摺導・助雷に関. する専門的知識・技術だけでなく,それを基盤とした具体的行為として,学校の教師集団 を組織,り一ドし,教育活動を運営していける力量というものである。しかも,そこでは 専門的知識・技術と経験に裏打ちされた,つまり教育理論や経験科学的な知識・技術を基 礎iにもつたものとしての指導力や経営力が求められているのである」4)と述べている。つ まり,理論と経験に裏打ちされた指導:カが要求されているのである。. 1980年代,筆者は中堅教員として,ある中学校に勤務していた。当時のその学校の校長 (高校教諭からの46才,男性校長)は次のような状況であった。教師の脹務と子ども管 理に重きをおき,偏った学校経(進学最優先,校務分掌に特定の教師を固定し優遇するな どの姿勢)を進め,教授上の指導者としての意識に欠けていたため,多くの教師は授業改. 善の意欲を失い,教師の自己啓発はほとんど見られず,教師集団のモラールは低下し,教 師や保護者の二二も無くしたのである。. 一一方,199◎年代に勤務した中学校の男性校長(54才,元県教委指導主事)は,教授・. 学習理論,とくに教育工学理論(教育機器を教育過程に適用して,教育の効率を高め,教 授・学習過程を設計,実施,評価するためのシステム的研究を進める理論)により学習の システム化に取り組んでいた。筆者はその校長から教育工学理論,評価理論や専門的知識 を校内研修,授業研究のなかで,また繕人的に指導助需を受けた。英語科(LL, RAなど 一2一.
(8) の機器活用)における学習活動のなかで,KR情報あたえる(フィードバック)ことによ り学習状況を確認させることによって学習意欲を高める理論であった。筆者は理論を英語 科に応用し,実践化をはかりその成果を確認した経験がある。 3)理論に裏打ちされた実践的助言. B本には,明治以来の授業研究の歴史があり,臼本の土壌のなかで培われてきた教育研 究や教育実践が,それぞれの学校に学校文化として潜在している。しかし,今H低学力,. 指導力不足などの問題がもち上がっているところがら,校内研修における授業研究が形骸 化し,十分機能していないことが想像される。授業改善こそ学校改善の基盤であるとの考 えにたつと,校内研修において,教授・学習理論,評価理論などの導入による研究授業や 授業研究を通しての授業改善が考えられる。そして,指導力不足問題のように教師のカ:量. についての課題解決のためには,授業経験はもちろん教授・学習理論も兼ねそなえ,教師 を指導する立場にある校長の指導助言機能が必要であると考える。それが教師の職能発達, とくに教授力量の形成を促すと考える。. そもそも,学校での研修は実践的研究であり「実践」が基礎にあるが,それを裏付ける. 理論をもつことも重要である。つまり,日々の実践においても,学習理論を学習指導に応 用し,授業を行ない検証する態度を育成することが大切である。それには学校は理論の実 践化や実践を理論的に高める場として,学習理論などを中核に据えた校長の指導回書によ り理論に裏付けられた臨床的実際的方法で校内研修を進めることが求められる。. とは雷え,教師が授業において自己実現をはかろうとする過程において,校長が抽象的. な教育観使命感,子ども観,指導観などのみを要請し理想的な教師像を求めるべきでは ない。評価を行ない,理論と実践にもとつく指導助言機能を発揮し,適切に実践指針を示 し,知的刺激を与え,自己啓発を促し,能力を引き出し,将来への教師個々の歩む道を開. くことが必要である。そこから,教師の授業への二心・意欲・態度」があらわれ,職能 発達につながると考えられる。. ところで,自らの力量向上を求める校長は,理論的な指導助言による教師の校内研修の 改善が不可欠であることに気づき,その研修内容として教育論,教授・学;習理論評価理 論などの導入の必要性を認識するであろう。なぜなら,理論導入の研修は,授業を理論的,. 実証的に改善する可能性があるからである。授業力量の形成を促すためには,教師と共に 理論的実践的に取り組める教授力量のある校長が要請される。. 駐】. 1)高野桂一・下村哲夫編著『実践学校経営診断6指導助言活動の診断』ぎょうせい, 玉988, PP、i銭一vi.. 2)前山一男「教師の力量形成に関する研究」臼本教育学会教師教育に関する研究委員会 編『教師教育の課題』明治図書,1983,pp.341−343.. 3)阿久津浩f現代教育改革における学校の自己革新と校長のリーダ・・一一シップに関する基 礎的研究」『筑波大学教育学系論集』,1988−90,pp.89−91.. 4)北神正行「現代教育改革における学校の自己革新と校長のリーダーシップに関する基 礎的研究」『筑波大学教育学二三集』(その2),1988−90,pp.37−38,. 一3一.
(9) (2)先行研究の概要と課題 欄題の所在」で述べたように,臼本の学校教育としては一部とは言え,教師の指導力 不足や校内研修の形骸化など教師自身にかかわる問題も抱えている。それらの対応策とし て,特別な研修や配置換えなどが導入される一一方で,校長の指導助雷機能も強く求められ ている。そして,それに論究した先行研究は以下のように多々みられる。 1)指導助言機能から. ①高野は,校長の指導助言機能に関する理論と実態的研究の事例で「教師は専門的権威 に裏付けされ,科学的根拠をもつ… また実際の教育活動に結びつく指導助言を必要と しているのに,それが十分えられない玉),などと論じている。. ②下村は,校長の指導助言は相手を拘束する指示命令と違って耳を傾けるかどうかは, 相手側の意志に任されている。指導助言を職制上の権力でなく,「教育の専門家」また「教 師の教師」としての権威である,ととらえている。校長の指導助言のねらいとしては,「校 長の指導助言には,端的に言って二つの側面がある。その一つは,教職員の『職能成長』 (pr◎fessional groWth)}こかかわる面であり,いま一つはより実践に即した教育活動ないし. 教職活動に関わる面である。校長の実際的な役割からすると,後の面での指導助言に,よ りウエイトがかけられるのはある意味では当然であるが,その背後に前の面,すなわち『職. 能の成長』にかかわる指導助言のあることを忘れてはならない。教脊活動や教職活動に即 した実務的な指導助書においても,おのおのの教職員の『職能成長』を期待し,助けると いう校長の思いがなければ,たんなる指揮命令と混同され,教職員の内に受けとめられ, 成長の契機となることはむずかしい。『教師の教師』としての校長の指導助言のねらいは, 第一義的に教職員の『職能の成長』を助成するところである」2)と述べている。そして, どのような指導助言が有効適切であるかを具体的な方法にわたって論じ’,診断の具体的視 点・基準・尺度を明らかにしょうとした。. ③全国公立小・中学校長会研究協議会では,子どもの低学九教師の指導力不足などが 大きな問題になっている現在,どのようにして学力向上をはかるか,どのようにして教師 の指導力を高めていくかの対応策として,3か年の全国小・中学校長会研修会において,. 各分科会の研究課題として研究されている。これらの研究内容は,全国各誌・中学校の校 内研修の課題に重なり全国的傾向にある。すなわち,基礎・基本の徹底と定着をはかるた. めの個別学習,少人数学習,TT,習熟度別学習,補充学習,発展学習などへの取組みで ある。そして,そのために教師の職能発達への校長の搭導性がとくに重視されるようにな り,校内研修での取り組みの関心が高まっている傾向が見られる。この資料は碍本の教育. 改革への対応の流れ,方向性を全国レベルで示している。とくに,学力向上の方策,教師 の職能発達と校長の指導性が研究課題となり,分科会でそれぞれ課題への対応が協議され ている3》。. 本研究が,特定の学校や地域に限られたものでなく,一一rw的に広く金国的にも通ずるも. のか確認する必要があった。また,本研究を推進するにあたり,事象を客観化するため,. 全国校長会研修大会において,本研究に関連がある校内研修における校長の指導性,学力 向上の方策の実態を取り上げ,検討を加えた。 2)リ・・一一’ダーシップ論から. ①中留は,教育的り一ダーシップは実は学校においてヨ常行われている教授・学習活動 一4一.
(10) (広義の教育)を中心に展開されるものであるが,この点とかかわって特に校長の文化的 リーダーシップの力量が要請されてくる。校長の文化的り一ダーシップは教職員に対する. 教育的り一ダーシップの役割と無関係では決してなく,毎日の意思決定や=ミュニケーシ ョン,参加といったマネジメント力量を通しながら文化的,象徴的力量がたえずそこに影. 響を与え,マネジメントを具現化しているカとなっている,と述べている。つまり,校長 の指導助書機能として,教育的リーダーシップを発揮するには,文化的なり一ダーシップ の力量もそなえていることが望まれる4),としている。. ②八尾坂は,教師側が望む校長のり ・一ダーシップ行動として,校長に望むリーダーシッ プは,一一言で言えば,「教職員の立場をより理解し,重視することを基盤としたリーダー. シップ」である。すなわち,あくまでも教員に焦点を当てた要望となっている。そして, 次のような諸点をあげている。. ア教職員の関心事への支援的働きかけ,K.学校効果・改善に向けての献身,ウ.配慮,エ.. 信頼蓄積,オ.公平性,ヵ意思決定における参画,キ模高等である。これらのキーワード は主に,人間性重視の次元に属している。校長自身の意識においても指導助言の理念とし. て,ド人間性重視」の次元に重きをおいている。校長はこのことをふまえた指導助言機能 の発揮が重要である5),と論じている。. ③中留は,アメリカの校長が指導型リーダーとしての役割行動を発揮すると教師から認 められる校長行動の特性として,①資源提供者(Res◎urce ProVider),②指導資源者 (lnstructional Resource),③意思疎通者(Comrmnicater),④親近者(Visible Presence)のlti9.で,. たとえば,①の内容として,校長が研修を積極的に進める,学力の目標達成をさせる,学 校における重要な教育資源者と見られている,などについての調査結果の報告がある。そ して,米国の校長に教育実践の改革志向が強いのは,このような教師からの要請があるか らである6),と述べている。. ④さらに,中心は,学校改善の過程のうち実施レベルにあたる教育課程実施管理におい て機能する校長のり一ダーシップが教授,学習上の教育的(指導的)リーダーシップであ る。これには二つの様式があって,ひとつは校長が直接,兜童・生徒を指導する方法(広 ・狭義の授業)と今ひとつは児童・生徒の変容のために教師の広・狭義の授業を問接的に 支えるべく教育活動としての教職員に対する指導助言による方法である7},と説明してい る。. ⑤岡東・福本は,文化的り一ダーシップの発揮によって創造された新たなビジョンや価 値を,表現し伝達するのがシンボリックな力量:であり,それを学校の組織構造やコミュ ニケーションの体系,組織内の人間関係,あるいは教育実践,教授方法へとさらに具現化 していくのが,テクニカルカ量,人間的力量,教育的力量となる。したがって,それぞれ のジーダーシップカ量は,学校の組織文化が形成され,機能し,さらなる有効性を求めて 変革されるのを促進する,広義の文化的力量として体系化することができる8),と理論的. 考察のなかで述べている。別に濁東は,校長が支持的で,教師の発達を促進させるような 教育的指導が,健全な風土を醸成し,教師のモラ・一一一ルを高め,有効な革新を成功させ,子. どもの学力にも肯定的に作用している9),と指摘している。 3)授業への指導助言から. ①前田のアンケート調査において,ある教師が瞳想としては,真に力量をもった校長 一5一.
(11) が授業を見て,批判,指導してくれることである。力量が高まらないのは,批判を受ける ことがないからである。また,指導されないからである」1。)と述べている。. ②村山は,学校経営の究極の目標は,現在の子どもたちの個性・能力を存分に伸ばすた め,授業の質を改善し,「よい授業を生み出すこと」である。そのためには,教師の二 業力」を高めることが急務であり,丸面の課題である。校長は教師個々の暖業力向上」 のために教育の先達として援助・助言し,校内研修のあり方を改善することであるH),と 指摘している。. ③片桐は,校長が積極的にり一ダーシップを発揮している領域とそうでない領域とを識 別できる。そうした点で費を引くのは,教科指導や研究体鰯づくりの領域における校長の 取り組みの低さである。校長の経営行動は,教科指導や研究体制づくりの領域よりも管理 や経営的な領域に重心が置かれている。校長が校内研修会や研究会のあり方や学校独自の 教育課程づくりの重要性を見直し,その条件整備に努めていくことは,学校の変革志向性 を高める∼つの手段となりうるのではないだろうか12},との提言がある。. ④露口はアンケートによる調査研究を行ない,校長が授業研究会で,積極的に指導臨書 を行った。特に,総合的学習に関しては,自己の過去の研究,教育実績を背景に,指導力. 量を発揮したことを示している。このことが教職員からの信頼獲得に寄与している,と論 述し,また校長の「『変革的リーダーシップ』は『学校成果』に対しても非常に強い影響 を及ぼしている」とも述べ,校長の学習理論による総合的学習への指導を論文のなかで次 のように紹介している。校長へのインタビュー一から「授業研究会での積極的な指導をはじ めとし,特に,総含的学習の導入に際しての理論構築において指導力量が発揮されている。. 総合的学習の意味や理論構造,本校での方向性を論文形式で作成し,いち早く教師に配布 したのである。総合的学習の導入に不安を抱いていた教師も『この論文によって意味や方 向性を理解することができた』」13)と述べている。. ⑤MHudgingsらは,校長の役割は,教育的リーダーとしての校長であるという。経営と 教育的な改善の鍵になる側面は,教師の教室で教師を観察する校長に大きくかかわってい る。指導と学習を評価する校長の力量である。校長は授業を観察し,効果的な指導を成立 させる知識をもたねばならない。効果的な学習指導の一般的に受け入れられる構成要素が. 明確に示されていない。それ故,効果的な摺導とその研究において,効果的な学習摺導の 構成要素が実証されなければならない。そのために,多くの学校レベルで校長は教師の教 室で,教師を観察し彼らと共に有意味に支援できる討論を行っている]4),と解説している。. 以上のように先行研究を吟味したその結果,こうした諸論文において校長の指導助言機 能に雷及した先行研究はかなり見られ,教育理論をもつ校長の指導助言機能の重要性につ. いても言及されている。しかし,校長自らが,教育論,教授・学習理論評価理論をもっ て教科学習,総合的学習,道徳学習などに具体的に指導玉書機能を発揮し,教師の職能発 達を支援することによる成果を実証した先行研究は,見られない。. また,今Hの時点で,露口のような校長の指導助言機能や校内研修,職能発達などにつ いての意識調査についても,国内外においてかなり多く見られる。しかし,具体的な理論 構築による総合的学習の実践については,論究されていない。また,他の先行研究におい ても校長の指導助言が,学校でどのように行われ,どのような効果があるかとなると,ま .6一.
(12) とまった調査研究は見られない。校長自らが校内研修において,教科学習などへ教授・学 習理論や評価理論などを具体的に導入し,教師に対して指導助欝を行った成果に焦点をあ てた調査研究も見あたらなかった。. [註]. 1)高野桂一『学校経営の科学④指導助言論』明治図書,1980,pp.49−51,. 2)高野桂一・下村哲夫編著『実践学校経営診断6指導助書活動の診断』ぎょうせい, 1988. pp.26−29.. 3)全国小・中学校長会研究大会編集部「教師の職能発達を促す校長のあり方など」『全 国公立小・中学校長会研究協議会の資料』2◎02−20◎4. 4>中高武昭「学校文化を形成する校長のリv一・一ダーシップに関する研究(その1)一学校 文化の構造と文化的リーダーーシップの特性一」『九州大学教育学部紀要(教育学部門)』 第4◎集, 1994, pp.62−67.. 5)八尾出面「校長のジーダーシップ・イメージに対する校長自身および教員意識一同一 校事例分析をふまえて一」『奈良教育大学紀要』第43巻,第1号,1gg4, pp.100−103.. 6)中歯武昭『学校指導者の役割と力量形成の改革』東洋館出版社,1995,pp.64−68.. 7)中留武昭徽育課程経営に焦点をあてた校長のリーーダーシップスタイルの考察一学校 改善を規定する学校文化との関連性をベースにして一」『九州大学教育学部紀要(教 育学部門)』第42集,1996,PP.84−86.. 8>岡東壽隆・福本昌之編著『学校の組織文化とり一ダ…一・シップ』多賀出版,2000, pp.314−318.. 9)岡出自隆『スクールリーダーとしての管理職』東洋館出版,1994,pp.32−39.. 10)前壷一男f教師による教師への提言』B本教育学会教師教育に関する研究委員会編『教 師教育の課題』明治図書,1983,pp、341−343.. 11)村山芳正「授業を経営する校長の視点」実践校長学研究会編『学校を創り出す校長の 教育力』第一公報社,1994,pp.102−104.. 12)片桐隆嗣「現代教育改革における学校の自己革新と校長のリーダーーシップに関する. 基礎的研究一校長・教員の意識に見える学校運営と校長の経営行動一」『筑波大学教 育学系論集』(その3),1990−92,pp31−35.. 13)露口健司「校長のり一ダーシップと学校成果の関係」『岸本教育経営学会紀要』24暑, 2000, pp.7e−74. 14) Judith M. Hudgings, Upgrading Classroom IAstruction, Princilg?als Should Stress Effective.. Teaching Elements in Classreoms instrztction, NASSP Vol.76 No.542, Mafch 1992, pp.13−17.. 2.本研究の目的と方法 教育改革の理念を生かすカリキュラムの創造や教師の職能発達を支える指導助言の研究 は,2玉世紀の学校教育推進のための不可欠で最優先的な課題ととらえられる。このため, 校長は校長としての学校経営の実践経験を基盤とし,現在の学校教育の重要課題に現実的,. 実際的に対応しうる実践的な理論と方法をもたねばならない。本研究はそれらの究明を員 ざしている。. 一7一.
(13) 今日,わが国では,子どもの学力が低下しているとの結果に教育界が揺れている。21 世紀の学力の展望としてPISA調査の教訓を生かし,学力問題に対して少人数による個別 教育の対亦が多くの小・中学校で進められている。また,指導力の不足した教師の闇題も. 大きく取りkげられている。とくに,学力確保の方策,学力向上の授業改善策として,習 熟度別学習などが重要な課題となっている。一方では,学力そのもののとらえ方に異論も あるし,学習指導方法,授業時数を増やしても,子どもに学ぶ意欲がなければ学力は身に っかないとの指摘もある。. そうしたなかで,どのようにして教師の指導力を高めていくかが,重要となる。しかも 今Nでは,教師のみでなく,学校としての説明責任が聞われており,学校改善が求められ ている。授業改善も,授業研究などの成果によって教室授業のなかで学校として実施され. るべきものである。そして,授業(教科,道徳総合的学習など)経営は学校経営の基盤 であり,学校改善に不可避なものであるととらえている。学校では継続的な研究が可能で あり,理論を実証し,教授・学習の方法を改善する場であり,また学習理論を実践化し, それを検証する態度を養い,授業実践を理論的に高めていく場でもある。. それには,校長には教育的(指導的)り一ダーとして,校内研修,とくに授業研究にお. いて現実的に実際的に対応しうる確かな教育論,学習理論授業観などをそなえた指導助 言機能を示す責任がある。. (1)研究の圏的 1)指導助雷機能の解明. これまで述べてきたように校長による指導助言は重要であり,授業改善において,校長 には教師と共に学ぶような姿勢をもつ教育的り一ダー一として,校内研修,とくに授業研究. のなかで,実際的に対応しうる確かな教育論(授業観教材観など)と教育方法論(教授 ・学習理論,評価理論)をそなえた指導助言が不可欠である。なぜなら,授業研究を中心 に据えた校長の指導助言を教師の職能発達の重要な促進要因の一つとしてとらえているか らである。しかし,日本では,それは自明のこととして深く探求されておらず,その効果 は十分に実証されていない。. そ1で,教師の職能発達とりわけ授業研究において,それに影響する校長の指導助言機 能(職能発達を促し,教職を専門職として深化させる機能)に着目し,これを研究対象と したのである。授業研究のなかで,職能発達を促すため校長がどのように指導助言機能を. 発揮しているか,とくに校長が教育論や学習理論を教師の授業実践指導にどのように生か しているかは,極めて興味深い課題である。. 効果的,成功的に授業改善を進めている学校においては,授業研究のなかで,教師は自 己の職能発達を学習国訳についての知識を発展させるものであるととらえている。そして,. そのような学校では,授業研究において継続的,漸進的な改善を基本とし,直接的な学習. 指導の改善と子どもの学習に不断の焦点をあてている。結論として,校長の指導助言を生 かした授業研究では,校長が教師と共に発展させた知識を共有することとなり,そして斬 新な授業研究の成果によって,陰々の教室授業のなかで,教師の資質をより一層向上させ,. 学習指導を漸進的に改善させることが可能となり,子どもの学業成就へ影響を与え,学校 改善につながるのである。. 一8一.
(14) 2)指導助言機能の構成要素の析出. さて,本研究の独自性にも通じる構成要素の概念析出について考究する。. 概念規定があって,そこから研究が出発するように思ってしまうがそれは逆である。概 念規定は真か偽でなく,役に立つか否かの観点からなされるべきであって,あらゆる研究 課題にアプローチするのに有効な概念規定を行うべきである’)との言説や先行研究を参考. にして,次のような指導助言機能の構成要素の概念を想定し,本論文の枠内で仮説として 設定し,以下に述べるような調査を通して実証を試みた。. 授業改善のため,授業研究の過程で求められる校長の指導助言機能の要素を明確にする ことが,分析的に研究を進めるうえで必要であり,そのうえに,授業研究における校長の. 指導助言機能発揮による教師の職能発達の確認には,「仮説」の有効性を検証することが 不可欠と考える。. そのために,筆者の教育実践の経験や,教諭としてまた校長としての教育実践研究の知 見から,次の①∼⑤のような要素が必要であるとの仮説に立つことにした。. ①教授・学習理論,評価理論など実践上の理論と指導助言の技術 これらは,授業研究において,教師に専:門的知識や技能への知的刺激を与え,学習指導 の課題に対応する理論に接近させ授業改善を促す。. ②確かな教育観(道徳教育・人権教育観,教師としての使命感など),子ども観(校長 のビジョンによる子ども像),授業観(教授・学習過程における授業改善のあり方),教 材観(教材の内奥にあるものを読みとり効果的に活用). 校長のこのような見識が教師に理解されると,教師は校長に精神的な支持を求め,また 実質的な指導助言を積極的に求めるようになり,自らの職能発達を促す。 ③先行研究の知見(教授・学習形態論,教科教育論,道徳教育論,リー一・ドラーナーとし ての校長のリーダーシップ論など). 校長がこれらの知見を援用する校長のスタンスは,教師に知的刺激を与え授業改善への 探究心を育成する。. ④実践を理論的に高める力 日々の授業のなかで,校長の指導助言機能により,教師が学習理論の実践化をはかるこ とは,理論応用の知見や裏づけがさらに実践を理論的に高めていくことにつながり,教師 全体の職能発達が見られ,教育実践がレベルアップする。. 次の⑤は上記①∼④の指導助言機能要素の概念の背:景となる重要な構成要素と考えられ るが,確認のため検証の対象とした。. ⑤人材育成力 主任の指導助言機能は地位でなくまさに機能であり,制度的「権威」でなく,「専門性」. に依拠したものであり,その主任などを育てる力量は校長の指導助言機能の重要な要素で ある。. 校長には,指導助言機能により組織の一人一人のカを引き出す主任を育てる役割が考え られる。校内研修でとらえると,校長の直接的なものと,主任の間接的なかかわりのもの がある。主任の任務は,校内研修をはじめ,分掌組織内の教師の意欲を盛り上げ,その力 を十分に発揮させ,分掌組織内の任務を成し遂げることを指導助言機能により校長を援助 することにある。教師一人一人目力を引き出す指導力ある主任の育成が重要である。 一9一.
(15) 校長の人材育成ビジョンは,一人一人の教師から見るとき,教師自らの能力開発への決 意に結びつくものでなければ人材育成は,成功しない2),とある,また人材育成とは,単 に個人の能力を開発するだけではなくて,個人の総合力としての組織的な力量を高めるこ とも含んでいる。その意味では人材育成とはまさに個人と組織とのかかわりにおけるマネ ジメントである3),とも述べられている。そして,校長の評価により,人は自らを育てる ものである。能力開発とは本人に能力開発への注意をうながす行為である。それは個人だ けでなく学年のような組織における能力開発の場合も同じである“),と人材育成と校長の 山導助書機能による評価の有意性が説かれている。. 研究授業や授業研究の継続的参与観察のなかで,これらの要素の有効性を検証し,教師 の職能発達を促す校長の指導助言機能の重要な要素であることを見出したい。 他にも指導密書機能の構成要素と見られるものはあるが,今後の硫究課題にしたい。. (2)研究の方法 1)米国での授業研究の取り組み 卓越(high quality>した教師により優秀な子どもを育成しようとしてきた米国が, B本の. 授業研:究に出師し校長の摺導助言機能について論じている。米国における日本の授業研究. に対するとらえ方に視点をあてる。そして,21世紀の米国の授業研究における授業改善 の構想から,H本の授業研究のあり方を見つめ直し,そこにおける校長の指導助言機能に よる教師の職能発達に関する研究を推進する。 2)事例校選定の予備調査. 2◎◎3年4月の時点で,B県T市の小・申学校(12校)は,市教育委員会から校内研修を 充実させているとの情報を得た。それぞれの学校の訪問(20◎3年4月目20◎4年ll月〉を 実施した。訪問回数は学校の事情によって異なる。訪闘校の授業研究における校長の指導 助言の実状を通して,校長の指導のもとに教頭,研修主任,教科主任,外部講師が指導助 言にあたっている学校が多いなか,2小学校は,とくに校長自らが指導助言機能を発揮し. ていることが観察された。そこで,2小学校を参与観察校と選定し,継続的に13回∼14 回の参与観察を行った。. 3)事例校の参与観察. 参与観察は主として授業研究に焦点をあてた。授業研究の要素は学習指導案,概究授業 (授業観察),研究協議会である。たとえば,研究授業では,教授・学翌過程において教 師の教授内容と子どもの学習活動が明確に位:置づけられ授業が展開されているかを観察し. た。授業研究においては,とくに算数科の習熟度別少小数学習に対して,校長が学習理論 を導入し教師と共に学ぶ姿勢をもって指導助言機能を発揮しているか,また校長が道徳教. 育論を導入し教師の指導力向上のために指導助言機能を発揮しているかなど,教育課題に 対応する教師への指導助言関係を継続的に観察した。. なお,一方的な参与観察のみでは,校長の掴導助言機能による教師の教授力量の形成や 子どもの学力の変容は把握できないと考えられるので,適宜参与観察校の校畏,教師への インタビューを行ないその内容も十分吟味し,筆者の観察内容と合わせて考究し,研究課 題ヘアブローチを試みた。 4)アンケート調査. 以上のように本研究においては,校内研修の参与観察校に2小学校の校長の指導助言事 一le..
(16) 例を取り上げた。参尊観察校校長の指導助醤機能の分析と合わせて,B県の他の小・中学 校の校内研修における校長の指導助言機能発揮の意識や教師の授業改善の支援への取り組 みを把握することも重要なことことであると考え,校長の指導助言機能による校内研修(と. くに授業研究)に関するアンケート調査僚肉記述,15項碍)を実施した。今の学校教 育の課題を把握し,校内研修に対する校長の姿勢は,現場教師の授業実践,とくに授業改 善に大きな影響を与えることが考えられるので,回答内容を検討する必要があった。校長 の指導助言機能発揮による授業改善に対する共通的な考えや斬新的な考えが述べられると 予測した。. £駐】. D加治佐哲也「教育経営の社会的麹盤の変容と研究の有用性1『碍本教育経営学会紀要』第40号 1998, pp.135−137.. 2)蛭田政弘「教職員評価と人材育成1北孝申正行編『り一ダーシップ研修』教育開登研究所20◎4,pp.95−96. 3) 同 上 PP.95−96、 4) 同 」二, PP,≦)5−96.. 一ll一.
(17) ∬校長の指導助言機能 1.指導助言機能のスタイル 先行研究をふまえ,論を進めるにあたって本研究にかかわる指導助言機能の枠組みを明 確にするため,中心になるもの,またそれに関連する指導助言機能の様態を以下のように とらえている。. 教職が本来高度の専門的知識や内面的に豊かな人間的教養をもたねばならない仕事であ り,そのためにたえざる現職研修による職能発達を必要とする点にかかわる,指導助言は,. 教師のそのような専門的職能発達をもたらすための一つの有力な経営的手段である。指導 助言は,まさに教師の営みへの内面的働きかけによって,教職を専門職として深化させる 課題解決を担う重要な機能なのである。指導助需は,継続的に教師に与えられることによ って,専門職そのものの質を高め,その確立へと向かわせる力となるのである1),と指導 助言機能発揮の重要性が述べられている。 Calvin A. RQesnerらは, f指導助言機能発揮のり一ダー一・シップスタイルは,校長ら管理. 職に要求されている仕事を成功的に成就させるための主要な要素である。また,教師組織 への雰囲気,教師との人問関係や彼らの仕事のやりがいに影響を与えている。校長にとっ て,組織集団を理解し,彼らを導く適切なリーダーシップスタイルを選ぶことは重要であ る」2>,また「校長は教師の特性をとらえ,また教師がどのような状況にあるかを見さだ. めて指導助言機能を発揮すべきである。校長がよかれと思う指導助言とそれを受け取る卓 越した教師においてさえ,その内容に対する認識に遠いが生じる。すなわち個に応じ,そ の状況を把握する必要があり,画一的なリーダーシップは効を奏しない」3)と言っている。. (1)教育的(指導的)り一ダーシップ. 教授,学習上のリーダーシップは,教師の学習指導や子どもの学習活動に対して校長が 直接的ないしは間接的に関わるわけだが,その場合,文化的リーダーーシップを触媒として. 関与することがり一ダーシップの効果をあげる上でも重要である。まず,前者の場合,特 に教師の活動に対しては,教師の指導技術や教材開発などを直接指導するよりも,むしろ 教師集団のもっている教員文化や組織文化などの学校文化を対象にすることのほうが支援 的(援助的)であるといえる。教員文化や組織文化を支援の対象とするということは,教 師の力量を促進させるための積極的な風土や高いモラールの高揚に留意するということで もある4),と文化的り一ダーシップの効果が説明されている。. また,米国と異なって臼本の場合は,各組織内部での凝集性をもっていることも事実 である。そこで,臼本においては米国の綱度にはない各内部組織の主任層である教師集団 に対して,教授,学習を支えるべく指導,助言をeg一一一義的に行ない,その主任層を介して. 学校改善の実施過程における校長の一般教師に対する間接的で支援的なリーダーシップを 発揮するという視点がまた必要になってこよう,5)と指摘されている。米国における,ピ アコーチングの有用性を示唆しているように思われる。. 一方,校長が行う指導助書にしても,校長は教育理論や学説よりも自己の「教育理想」 「教育信念」や「経験」に基づいて指導助書を行っているのが実態なのである。それでは,. 独善的,経験主義的もしくは場あたり的な指導助言となる危険性が大きく,学校全体の教 一i2一.
(18) 育活動を変革し,活性化していくための指導助言機能にはなりえないであろうPt。校長 自身の経験に固執するだけでなく,校長自らの教育論などによる指導助言機能の必要性を 説いている。. 教育的り 一一ダーーシップをもつりーーダーは,職務遂行のf実際」において,平均的なり一 ダー一一よりも指導助言に,より多くの時間を費やしている。教育的リーーダーシップをもつ校. 長の役割は,第一に,学校のアカデミックな目標(学力成就)を実現するために必要な諸 資源の提供者である。第二に,教師の実践活動を助言するにふさわしいカリキュラム・教 授法に関する知識・技術の指導資源者である。第三に,校内の教職員のあらゆる組織長寝 との意思疎通者である。第四に,鼠に見える存在としての親近者である,7)と米圏におけ る教育的り一ダ・一…シップの指導助言機能を紹介している。. (2)リードラーーナーシップ(しead Learnership). ルウィスは,「パターーソン第二学校の授業研究の発展は,従来とは違った校長機能によ. るものであり,多分校長のラーナーシップ学びの精神”に信頼が置かれているところであ. る。Liptak校長は,数学の授業を自ら実施し,自己の実践を通して,学習者としての機 能を調査研究している」8),と説明し,そしてLiptak校長の主要な仕事は,学ぶことであ り,他の教師が学ぶことを支援することであると確信している。すなわち,校長は教育的 (摺導的)なリーダーのみならず,り一ドラーナー洗導的な学習者’1なのである,9)と述 べている。. バース(RS.Barth>も,「校長のより重要な役割は,教師や子どもがするであろうことを. 希望し,期待し,そのことを経験し,表明し,モデリングする重要な企画に関係すること である。校長は学習者(教師)のり一ダーであり,ヘッドラーナーなのである]10)とも述 べているのである。そして,学校改善のため職能発達へのかかわりと注意深い計画によっ て,校長と教師は共に子どもの学習を保障することが職能発達の申心的な焦点である,”) ととらえている。. 教師個人の変革のみでなく,教職という専門職の集団や組織を総体的に変革するカとな らなければならないのである。そのために校長自身が教育専門集団のなかの有機的な一員 としてと同時に,また校長という固有の措導的役割をおびたものとして存在しなければな らないだろう。校長が専門職としての教職集団の一員である必要があるからである12)。校 長は,他の教師と異なり教師の教師,すなわちジードラ■・一一・ナーmなのである。まさにLiptak. 校長の理念に共通するものがある。. 校長のり一ダー行動は,法的な権威(管理,経営〉や学校運営上の人格的特性などり一 ダーシップの「事実の側面」を重視した従来のリーダーシップ論’3)に対して,Liptak校長 は,校長のビジョン形成,すなわちラーナーシップをもったり ・一ドラーナーなどインフォ. ーマルで農に見えにくい「価値の側面jに焦点をあてている。これまでの研究では,個人. 的な好みの問題であると見られる傾向にあったジーダーの哲学や価値解釈に霞を向けた 「価値ジーダーシップ論」M}であるととらえているようである。価値的摺導助言機能を校. 長が発揮することは,学校改善に向けて,教師の信念や価値による行動様式に一定の方向 づけを行うことになる。. 属に見えにくいアイディアも重視し燈上にのせて検討する必要がある。アイディアの提 一13一.
(19) 起が管理職や中竪のり一ダーによって尊重されているという組織風土が重要である,’”と 提案されている。. 学習実態を勇気づける一つの方策は校長と教師が一緒に職能発達活動に参加することで ある。校長と教師は共に学ぶことから利益を得る,16}との報告もある。. (3)変革的り一ダーシップ 変革的なリーダーシップをもつり一ダーは,教師の必要とするものを認めるだけでなく,. 教師の潜在的能力を引き出す努力をする。り一ダーと教師の両者が金体とし情緒的な,知. 的な,そして道徳的なかかわりを通して,職能発達するよう教師を勇気づける。また,変 革的なり一ダーシップは,責任のある,そして改革的な環境のなかで,組織的にかかわり,. 結果を出すための実行に刺激を与え,協働的に変容する過程内でリーダーと教師のきつな を深めるm,と論説されている。この機能は校長自らが,教育課程に対応する知識,能力 をもち,教師の潜在能力を引き出し,知的刺激を与え,学校改善を推進する歯面助言機能 ととらえることができる。. 20世紀末になり変革的なリーダーシップが注目されてきたようだが,それは組織金体 の改革をするには,構造や機能の改善では不十分で,組織の文化を射程に入れた変革が必. 要である。学校組織の特性は,硬構造ではなく柔構造であることが多い。組織構造は子ど もの発達段階や行動特性に応じて教授・学習構造は可変的である18}。このことから,教師. の教授論・学習論による教授法は固定するべきでなく,可変的な教授・学習過程に対応す べく,よりよい論をもとめて,独善性に陥らないよう絶えず改善の方策を探ることが望ま. れる。そのために,教師個々のたゆまざる自己研鐘と校長の論理的指導助言機能発揮が必 要となる。. また,組織マネジメント能力が求められ,人間性重視(配慮,公平性,学校効果・改善 への献身,支援など)を基礎としつつ,変革的り一ダーシップが期待されている。教職員 を感じさせ,動かすシンボリックでしかも人一味のある変革的り一ダーシップ19>が,今 後のり一ダV一一一一シップ基盤とも考えられている。. しかし,変革的ジーダーシップが,「組織学習」の促進に有効性をもっことなどを指摘 しながらもそれが生徒の学習成果にどう結びつくかについては,なお不明瞭である2e),と の説もある。. 教育的り一ダーシップは教育的な専門家の高いレベルを基礎にした教室実践における活 動的な役割を要求する。そのようなり一ダーシップは確かに指導の専門家が教師に引き継 がれているところのものである。教育的ジーダーシップのより最近のイメージは,変革的 リーダーシップ論の中心的次元のなかにある。この理論は結果として,学校改善の背景で 効果的なリーダーシップとして潜在的に,より強く優雅である。それのみならず他のスク ールリーダーシップも変革的リーダーシップの次元のなかで発見される。教育的ジーダー シップをはじめ,他のり一ダーシップも変革的り一ダkUシップのなかで見られるのである。 具体的に,学生の成績に関する直接的,間接的,変革的なり ・一ダーシップ効果として,と. くに11年生と12年生の算数,社会,語学の成績に影響を与えている2D,など米国の変:革 量り一ダーシップに関しての実践事例の研究論文が見られる。. 一14一.
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