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I.:よ じ め に
看護師は,与
薬時あるいは 日常生活場面において,患
者か ら向精神薬の副作用についての質問を受けることがある。質 問 した患者が,拒
薬 による入退院を繰 り返 している息者で, 息者の質問 した内容が,ま
さに服用中の薬の副作用であった 時, どう答えてよいか戸惑 うことがある。 患者が安心 して服薬や受療行動が とれるようになるために は,そ
のニーズに応 じた副作用の説明は欠かせない。こうし た観点か ら以下のように文献を検討 した。 2013年7月 17日 現在,医
中誌Webで
「精神看護」「薬物 療法」「副作用」 をキー ワー ドに検索 した。該当す る文献 を すべて調査す るため文献検索の期間は限定 しなかった。検索 の結果,64件
が該当 し, この うち今回の研究 目的に関連す ると思われる文献16件を検討 した。 患者の服薬に関する研究内容 を概観す ると,医
師か らの説 明内容が記述 されているものDや
,副
作用の不安 に焦点 をあ てた ものがあったか。患者側か らは,薬
についての説明がな く状況か ら自己判断で副作用 と考え,中
断す ることを考えた とい う意見°や,看
護 師に も説明を求めるといった報告°, さらには,絵
で副作用の説明を行ったところ「副作用 を今ま で知 らなかった,教
えて くれてよかった」 と思者が語った研 究°もあった。 これ らの文献か ら示唆 されたのは,副
作用の 説明は患者の治療継続 に重要であるとともに,そ
の説明を医 師だけでな く看護師 に も求がてい る とい う点である。 しか し,看
護師の抗精神病薬の投与に伴 う副作用や身体合併症 に 関す る認識は低い とす る調査結果°もあ り,十
分に説明で き ていない現状がある。 以上,文
献 を検討 した結果,看
護師が副作用 を説明する重 要性は理解で きたが,実
際説明する上で, どの ようなことが 困難 となっているのか を調査 した報告はない。 したがって, 本研究では,看
護師が向精神薬の副作用 を説明す る際に感 じ ている困難を明 らかにし,患
者のニーズに応 じることので き 第45回 (平成26年度)日
本看護学会論文集 精神看護2015年
看護師が患者 に向精神薬の副作用 を説明す るうえで
感 じている困難
黒川め ぐみり。田中順子
D・清水恵介
D。東
プ
)key word:精
神看護,向
精神薬,副
作用 る説明の仕方について考えてみたい。 Ⅱ.目
的 看護師が患者 に向精神薬の副作用 を説明す るうえで感 じて いる困難を明らかにする。 Ⅲ.方
法1.研
究デザイン :自 記式質問紙法2.対
象:A病
院に勤務する全看護師93名3,デ
ー タ収集期間 :平 成25年10月4,デ
ー タ収集方法1)無
記名式のア ンケー トを作成 し実施,記
入期 間は2週
間 とした。2)ア
ンケー ト内容の概要 を以下に示す。なお,調
査項 目 については,類
似する先行研究がなかったため,独
自に設定 した。(1)封
象者の属性 (性別,年
齢,精
神科経験年数,精
神科 以外の科の経験年数)。 (2)これ までの精神科勤務の中で,患
者か ら薬の副作用に ついて質問を受けた経験の有無 (ただ し15歳以下の息者は 除 く)。 (3)質問を受けた経験があれば,そ
の時紺応に困ったと感 じたか。 (4)困難の具体的内容。5.デ
ー タ分析方法 :記述統計,質
的分析方法 を用いた。1)選
択式の項 目については記述統計 を用いた。2)自
由記述 の部分 は意味内容の類似性 に従 って分類 し, カテゴリー化 し分析 した。3)分
析 にあたっては,4人
の研究者で検討 し,適
宜,ス
ー パーバイザーの助言を受け信頼性の確保 に努めた。Ⅳ
.倫
理的配慮
対象者 には,研
究 目的,内
容,方
法 を,書
面 にて説明する くろかわ め ぐみ1)地
方独立行政法人長野県立病院機構長野県立 こころの医療 センター駒 ケ根2)長
野県看護大学 ―-139-―第45回 (平成26年度
)日
本看護学会論文集 精神看護2015年
とともに,研
究への参加 は任意であ り,ア
ンケー トの回収を もって参加の意志表示 とすること,協
力が得 られない場合で も何 ら不利益 を被ることはないことを説明 した。 また,結
果 は本研究にのみに使用 し,デ
ー タは終了後,廃
棄す ること, 学会での発表を予定 していること,公
表にあたってはプライ バ シーを厳守す ることや,回
答時間は20分以内に終了する 内容 とし,身
体 的負担がかか らない ように配慮 した。 ア ン ケー トの参加 をもって同意を得た とみな した。なお,本
研究 は所属施設の倫理委員会に申請 し承認を得て実施 した。V.結
果
ア ンケー トの回収率は93名中82名(88,1%)で
あった。1.対
象者の概要 対象の概要を表 1に 示す。 性別は,男
性 14名,女
性63名,無
記入5名,年
齢構成は 30代 24名(293%),40代
21名 (25,6%),50代 31名 (37.8%) と,30代
∼50代が全体の 92.7%を 占めていた。精神科の経 験年数は,5年 未満が 15名 (18.3%),5年 以上が64名 (78.0%) であった。 また,全
体 の66名(80.5%)が
精神科以外の科 の経験 を有 してお り,ア
ンケー トの対象者は中堅看護師が中 心であった。2.患
者か ら薬の副作用 について質問 を受けた経験 の有無 は,「あ り」が 77名 (93.9%),「 なし」は5名 (6.1%)であっ た。3.質
問の対応 に困難 を感 じた経験 の有無 は,「はい」が 60名(779%),「
いいえ」が 17名(22.1%)で
あった。 質問の姑応 に困難を感 じた経験の有無 に「はい」 と答えた 精神 科経験年数1年
未満1年
以上5年
未満5年
以上10年
未満10年
以上15年
未満15年
以上20年
未満20年
以上25年
未満25年
以上30年
未満30年
以上 無記入 精神科以外 の科 の経験年数 な し1年
未満1年
以上5年
未満5年
以上10年
未満10年
以上15年
未満15年
以上20年
未満20年
以上25年
未満25年
以上30年
未満30年
以上 無記入 性 別 年 齢 表1
対象者の概要 (n=82) 男性 女性 無記入 14名63名
5名 20+ヽ 304埓 404ヽ50代
60+(
無記入4名
24名
21名
31名
1名 1名6名
9名23名
7名 8名 9名9名
8名3名
13名2名
38名
13名 9名 1名2名
1名0名
3名 表2
看護師が感 じた困難 1医療者側の要因 医師 との連 携 に関す る困難 結 果 へ の 責 任 を取 らな けれ ば な らない こ とに よつて生 じる困難 忠者 の苦痛 と治療者 の役割 との間で生 じる葛藤 説 明方 法 に 関す る困難 アセ ス メ ン トに関す る困難 カテ ゴ リー 医師 との連携が うま くとれていない ことによる不安 〔コー ド数:5〕 副作用 を説 明す る と拒薬 につなが るのではないか と い う心配〔コー ド教 :16〕 副作用による患者 の苦痛 を感 じなが らも服薬 を勧 め なけれ ばい けない葛藤
〔コー ド数:3〕 肥満 。男性機能不全の訴 えに対応す る難 しさ 〔コー ド数:3〕 処 方調 整 が難 しい患者 に副作 用 を説 明す る難 しさ 〔コー ド数:3〕 患者 に納得や理解 して もらうことの難 しさ 〔コー ド数:6〕 説 明 ス キル に 関 わ る難 し さ 〔コー ド数:3〕 服 用 して い る薬 の 内容 や 、そ の作用・副 作用 を うま く 説 明す る こ との難 しさ
〔コー ド数 :10〕 忠者像 を把握 で きない ままで の対応 の難 しさ 〔コー ド数:2〕 薬 の副 作 用 か 、違 う要 因 に よ る もの な の か判 断 に迷 う 〔コー ド数 :10〕 サ ブ カ テ ゴ リー ―-140-―
定型 的 な副作用ではない訴 えに封応す る難 しさ 患者 のペースで説 明を求 め られた ときの難 しさ 服薬 自体 に抵抗 のある患者 に対応す る難 しさ カテ ゴ リー 副作用に表記のない訴えや、「落ち 着 くとは?」 などの質問に困つた 〔コー ド教:2〕 一方的で執拗な訴えや、看護者を試 す ような言い方に困つた 〔コー ド教:3〕 服薬 に不安や抵抗 が強いため、紺応 に困つた
〔コー ド数 :1〕 サブカテ ゴ リー 第45回 (平成26年度
)日
本看護学会論文集 精神看護2015年
表3
看護師が感 じた困難 :患者側の要因 60名 (77.9%)は,20代
で2名(50%),30代
18名 (75,0%), 40代 18名(85,7%),50代
21名 (67,7%),60代 1名 (100%) で あ っ た。 精 神 科 の 経 験 年 数 を み る と,1年
未 満5名(83.3%),1年
以 上5年未 満7名(77.8%),5年
以 上10年 未満 17名(73,9%),10年
以上15年未満6名(85.7%),15
年 以 上20年未 満5名(62.5%),20年
以 上25年未 満7名(77.8%),25年
以 上30年未 満6名(66.7%),30年
以 上6 名(75,0%)が困難 を感 じた経験があると答 えてお り,年
齢, 精神科 の経験年数が困難感 に大 き く影響 していることはな かった。4.ど
の ようなことが困難 と感 じたのか 看護師が感 じた困難の要因 として,「医療者側の要因」,「患 者倒lの要因」の2つが考 えられた。「医療者側の要因」 を表 2に,「息者側の要因」 を表3に示す。 以下,看
護師が患者に向精神薬の副作用 を説明す る上で感、じている困難の内容を
,カテゴリー 【
】と
,サブカテゴリー
< >の
関連性か ら明 らかに してい く。1)医
療者側の要因ここは
,【アセスメントに関する困難】〔
説明方法に関する
困難】【
息者の苦痛と治療者の役割との間で生じる葛藤】〔
結
果への責任を取らなければならないことによって生じる困
難】【
医師との連携に関する困難】の
5個のカテゴリーで構
成されていた。
【
アセスメントに関する困難】では
,<薬
の副作用か
,違
う要因によるものなのか判断に迷う
><患
者像を把握できな
いままでの対応の難しさ
>というように
,息
者像のアセスメ
ント不足により副作用と精神症状あるいは身体症状の鑑別が
できていないため
,封
応に困っていることがわかった。
【
説明方法に関する困難】では
,<服
用している薬の内容
や,そ の作用・副作用をうまく説明することの難しさ
><説
明スキルに関わる難 しさ>な
ど,典
型的な作用や副作用の知 識が不足 していることや,看
護師経験の不足か ら,<患
者 に 納得や理解 してもらうことの難 しさ>が
あ り,不
全感を感 じ ていることがわかった。 また,<処
方調整が難 しい息者 に副 作用 を説明す る難 しさ><肥
満・男性機能不全の訴えに対応 す る難 しさ>な
ど,薬
の調整が難 しい患者や性的な問題や肥 満 と副作用 の関連 を説明す るこ とに困難 を感 じていた。【
息者の苦痛と治療者の役割との間で生じる葛藤】では
,治療者側の立場として
<副
作用による息者の苦痛を感じなが
らも服薬を勧めなければいけない葛藤>を 感じており
,説
明
しにくさに影響していた。
【
結果への責任を取らなければならないことによって生じ
る困難】では
,副
作用を強く訴える患者や病識に乏しく中断
歴 のあ る患者 な どに<副
作用 を説 明す る と拒 薬 につ なが るのではないかという心配>が あり,看 護師が説明すなことを躊
,苫・してい るこ とがわかった。 【医師 との連携 に関す る困難】では,<医
師 との連携が う ま くとれていない ことによる不安>を
感 じてい るこ とがわ かった。その内容 としては,副
作用による苦痛 を訴 える患者 に,医
師か らの説明 を期待 したが受け入れ られなかった無力 感や,医
師の説明内容 を把握で きていないため説明に自信が 持てないことなどがあった。2)患
者側の要因ここは 【
服薬自体に抵抗のある息者に対する難しさ】【
息
者のベースで説明を求められたときの難しさ】【
定型的な副
作用ではない訴えに対応する難しさ】の
3個のカテゴリーで
構成されていた。
【
服薬自体に抵抗のある息者に姑する難しさ】では
,<服
薬に不安や抵抗が強いため
,対
応に困った
>というように
,息者が服薬に不安や抵抗が強いと困難を感じることがわかっ
た。
【息者のペースで説明を求められたときの難 しさ】では, 息者からの<一
方的で執拗な訴えや,看
護者を試すような言 い方に困った>と,相
手のペースで質問されるときに困難を 感じていた。 【定型的な副作用ではない訴えに対応する難 しさ】では,<副
作用に表記のない訴えや,「落ち着 くとはP」 などの質 問に困った>な
ど,抽
象的な質問に答えることに苦慮 してい た。Ⅵ
.考
察
副作用についての質問を受けたことのある看護師は約
9割-141-第45回 (平成26年度