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高血圧自然発症ラットにおけるカムカム投与が高血圧を抑制する生理学的メカニズムの研究

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Academic year: 2021

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氏 名 学位(専攻分野の名称) 博 士(環境共生学) 学 位 記 番 号 甲 第 677 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 26 年 3 月 20 日 学 位 論 文 題 目 高血圧自然発症ラットにおけるカムカム投与が高血圧を抑制 する生理学的メカニズムの研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授・博 士(医 学) 樫 村 修 生 教 授・博士(農芸化学) 石 田 裕 准 教 授・博 士(医 学) 本 間 和 宏 非常勤講師・博 士(農 学) 豊 原 秀 和 論 文 内 容 の 要 旨 【背景および目的】 日本においては,悪性新生物,心臓および脳血管疾患 を合わせると死因の約 6 割を占めるなか,2011 年患者 調査の概況において,悪性新生物,脳血管疾患,虚血性 心疾患,糖尿病,高血圧性疾患といった生活習慣病の総 患者数は,約 1800 万人に達している。この内,高血圧 性疾患は 907 万人で約 50% を占めている。また,2011 年度の国民医療費の概況は,10 兆 900 億円に上り,高 血圧性疾患は約 20% を占めている。 一方,世界人口の 5 分の 4 を占める開発途上国の多く は熱帯地域に位置し,農業を基幹産業としている。開発 途上国支援においては,人口,環境,食料問題など地球 規模の課題への取り組みが重要性を増している。本研究 で注目している開発途上国のひとつであるペルーは,社 会問題,貧困,環境問題,麻薬対策などの課題への取り 組みが重要視されている。このような中,日本カムカム 協 会 で は,ア マ ゾ ン 川 流 域 に 自 生 す る カ ム カ ム (Myrciaria dubia)を通じて現地人のために活動してい る。その目的は,カムカムの栽培および加工により,貧 困対策,社会問題対策,麻薬問題対策および自然保護対 策に貢献することである。カムカムは,現地人の間では 肌荒れ防止,風邪の予防や便秘の改善,肥満,糖尿病, 高血圧などに効果があるとされ,古くからジュースにし て利用されている。 血管内皮機能障害は,高血圧,動脈硬化,糖尿病およ び脂質異常症などにおいては,血管内皮機能障害がその 発症要因とされる。なかでも,高血圧は脳卒中の最も危 険な因子とされ,臓器障害や心血管疾患の合併とも深く 関与する。高血圧の発症および悪化に関与する主な機序 は,血管収縮因子であるアンギオテンシンⅡ(ATⅡ), エンドセリン-1,トロンボキサン,セロトニンなどの増 加,血 管 弛 緩 因 子 で あ る 一 酸 化 窒 素(Nitric oxide : NO),ブラジキニン,プロスタサイクリンなどの減少 など様々な物質の関与がみられる。 NO は,L-アルギニンを基質として NO 合成酵素 (NO Synthase, NOS)により生成され,なかでも血管 内皮からの内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)により 産生された NO は,血圧調節や内皮機能障害などの心 血管性の恒常性維持に重要な役割を果たしている。ま た,血管平滑筋においては,サイクリック GMP の増大 を通じて,血管を弛緩させることや eNOS 活性の減少 により NO 産生の減少が高血圧に関与することも報告 されている。 血圧の調節に関与するレニン-アンギオテンシン系に おいて,AT 変換酵素(Angiotensin Converting Enzyme, ACE)活性の増大は,強力な血管収縮作用である ATⅡ を増加させることが知られており,その ATⅡには, AT1と AT2の 2 種類の受容体が存在する。特に AT1受 容体は,血管平滑筋,肺,肝臓,腎臓などに分布し,血 管の収縮,血管壁肥厚,心筋肥大に関与している。特 に,高血圧の発症および悪化に関与する要因として, ACE の増大,ATⅡの増大などが関与するとされてい る。 カムカムには,果実中にビタミン C,ビタミン B1, ビタミン B2,クエン酸などが豊富に含まれているが, 近年,果皮中に高血圧を抑制するとされるポリフェノー ル類を多く含むことが報告されており,血圧上昇の抑制 メカニズムについてより詳細な検討が行われてきた。樫 村らは,高血圧自然発症モデルラット(SHR)を用い, カムカム果皮抽出液投与により,交感神経伝達物質によ る血管収縮反応および交感神経系を介さない血管弛緩物 質の発現の機序が観察されたことを報告した。このこと ─ 91 ─

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から,カムカム果皮に豊富に含まれるポリフェノール類 やビタミン C が,SHR の血管内皮細胞の損傷を修復 し,血管弛緩物質である NO の放出を促進させる可能 性があると推察された。しかし,カムカムによる高血圧 抑制作用に関する詳細な検討はほとんどされていない。 そこで,本研究では,SHR を用いて,カムカム果皮 抽出液および果汁の長期投与による高血圧抑制の生理的 メカニズムを検討するため,高血圧発症の主要な原因と されている eNOS および ATⅡの観点から,大動脈のタ ンパク発現に対する分子生物学的解析,大動脈の摘出血 管による薬理学的解析および大動脈カテーテル挿入法を 用いた体循環による薬理学的解析を試みた。このような 科学的根拠から,カムカムの付加価値を生かした商品開 発により,途上国の雇用の拡大と経済効果から農村貧困 の削減の具体的で実践的な方策の一部を担っていくこと を研究目的とした。 【方 法】 1)SHR を用いカムカム果皮抽出液および商品開発して いる果汁を長期投与し,血圧に対する作用を観察すると ともに,血管平滑筋の弛緩作用に関与する NOS および 同収縮作用に関与する ACE が与える影響を,大動脈に おける NOS 活性, eNOS タンパク質発現,AT1受容体 タンパク質発現および ACE 活性から検討した。 2)SHR を用いてカムカム果汁を長期投与し,カテーテ ル挿入法により覚醒状態の体血圧測定を行った。交感神 経伝達物質のノルエピネフリン(NE),AT1を選択的に 拮抗するロサルタン(Losartan)および eNOS 合成酵 素阻害剤 L-NMMA を投与し,大動脈における ATⅡお よび eNOS の関与を検討した。 3)SHR を用いて,カムカム果汁を長期投与し,摘出大 動脈による張力測定を交感神経伝達物質による濃度依存 性大動脈収縮反応の検討をした。NE による血管収縮反 から得られた最大張力状態から,内皮依存性血管拡張物 質のアセチルコリン(Ach)による交感神経系を介さな い血管弛緩物質の濃度依存性張力測定を検討した。続い て,交感神経 a1受容体を選択的に刺激するフェニレフ リン(PHE)による血管収縮物質の濃度依存性張力測 定を検討した。さらに血管内皮細胞の NO 合成酵素阻 害剤である L-NMMA でベースライン状態を保ち PHE による血管収縮物質について濃度依存性張力測定を検討 した。また,別の摘出大動脈で平滑筋由来弛緩物質のニ トロプルシド(SNP)による平滑筋収縮抑制以外の関 与について濃度依存性張力測定を検討した。 【結 果】 1)カムカム果皮抽出液投与後,SHR における収縮期お よび拡張期血圧は有意に抑制され,その血圧抑制率はそ れぞれ平均 32.0% および 54.4% であった。また,SHR の大動脈 AT1受容体タンパク発現は,有意な低下が認 められたが,大動脈 NOS 活性,大動脈 eNOS タンパク 発現および血清 ACE 活性は,有意な変化が認められな かった。一方,カムカム果汁投与後,SHR における収 縮期および拡張期血圧は有意に抑制され,その血圧抑制 率はそれぞれ平均 18.3% および 42.0% であった。また, SHR の大動脈 eNOS タンパク発現は,有意な増大が認 められたが,大動脈 NOS 活性,血清 ACE 活性及び大 動脈 AT1受容体タンパク発現は,有意な変化が認めら れなかった。 2)カテーテル挿入法において,カムカム果汁投与後, SHR における体血圧は,有意に抑制された。カムカム 果汁投与後,SHR において NE および Losartan 投与 時の体血圧は,低下を示した。カムカム果汁投与後, SHR において L-NMMA 単独投与および NE と L-NMMA 同時投与時の体血圧は,有意な変化がみられなかった。 3)摘出大動脈による張力測定実験において,NE,Ach および PHE の濃度依存性収縮反応を検討した。カムカ ム果汁投与後,SHR における NE 収縮反応は,10−6 ら 10−4M 濃度で有意に低下した。また,カムカム果汁 投与後,SHRC における Ach 弛緩反応は,10−7から 10−4M 濃度で有意に増大した。また,カムカム果汁投 与後,SHR における PHE 収縮反応は,10−7から 10−4 M 濃度で有意に低下した。しかし,カムカム果汁投与 後,SHR における SNP 弛緩反応には,有意な変化は みられなかった。 【考 察】 1)カムカム果皮抽出液投与による SHR の血圧抑制に は,大動脈における血管収縮に関係する ATⅡに特異的 な AT1受容体反応性の抑制の関与が推察された。この ことから,カムカム果皮中に多く含有するポリフェノー ル類が大動脈における ATⅡの特異的な AT1受容体の反 応性低下が関与すると推察される。 カムカム果汁投与による SHR の血圧抑制には,大動 脈における血管弛緩に関係する eNOS が活性化し NO 産生の増大の関与が推察された。このことから,カムカ ム果汁投与による高血圧の抑制には,大動脈において, カムカム果汁に含有するポリフェノール類やビタミン C,あるいはその組み合わせが,内皮依存性弛緩の障害 を減弱させ,血管内皮において eNOS が活性化され ─ 92 ─

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NO 産生の増大が関与すると推察される。 2)本研究で用いた SHR の高血圧は,a 交感神経受容 体を介する平滑筋収縮反応に関与することが報告されて おり,カムカム果汁を投与した SHR では,a 交感神経 伝達物質に対する受容体の反応性減弱が生じ,血管平滑 筋細胞内 Ca2+の減少により収縮反応が減弱することが 推察された。また,Losartan 投与と NE+Losartan 投 与間の血圧の上昇に有意差がなかったことから,カムカ ム果汁を投与した SHR の血圧上昇の抑制には,ATⅡ が関与しないことが考えられた。同様に L-NMMA 単独 投与および NE と L-NMMA 同時投与時の体血圧は,有 意な変化がみられなかった。これは,カムカム果汁を投 与した SHR は,血圧上昇が抑制され,大動脈血管内皮 細胞で合成される eNOS の増大が関与している可能性 を示唆された。 3)カムカム果汁を投与した SHR は,摘出大動脈にお ける NE および PHE による濃度依存性収縮反応が有意 に減弱し,SNP による濃度依存性弛緩反応や NOS 阻 害薬の L-NMMA でベースライン後の PHE による濃度 依存性収縮反応は有意な変化がなかった。しかし,カム カム果汁を投与した SHR は,Ach による濃度依存性弛 緩反応が有意に増大した。このことから,SHR におい て,カムカム果汁の投与により弛緩反応が増強したこと は,内皮由来弛緩因子である NO の遊離が増大した可 能性が考えられる。このことから,大動脈内皮細胞にお いて一酸化窒素経路を活性化し,血管内皮細胞で合成さ れる NO の関与が示唆された。 【総 括】 既に,ビタミン C およびポリフェノール類を豊富に 含むカムカム果実を用いて,SHR の高血圧が抑制され ることは明らかとなっている。本研究では,その高血圧 抑制のメカニズムについて,血管平滑筋の弛緩作用に関 与する NOS および収縮作用に関与する ACE が与える 影響を,大動脈における NOS 活性,eNOS タンパク質 発現,AT1受容体タンパク質発現および ACE 活性から 検討した。また,カムカム果汁を用いて,カテーテル挿 入法による覚醒状態の体血圧実験により,交感神経系活 性収縮物質の関与,内皮細胞由来弛緩物質の関与および レニン・アンギオテンシン系収縮物質の関与と,摘出大 動脈による張力測定実験により,交感神経系活性物質の 濃度依存収縮反応,内皮細胞由来弛緩物質の関与の検 討,および平滑筋由来弛緩物質の関与の検討を行った。 カムカム果皮抽出液投与による SHR の高血圧抑制に は,主に血管平滑筋の収縮に関与する AT1受容体の抑 制によるものと推察され,カムカム果汁投与による高血 圧抑制は,主に血管内皮細胞の弛緩に関与する内皮機能 修復と NO 産生を亢進によるものと推察された。また, カムカム果汁投与による SHR の高血圧抑制には,摘出 大動脈による張力測定結果から NE 収縮感受性の脱感 作,さらにカテーテル挿入法による覚醒状態において, AT1受容体遮断により体血圧が増大したことから,AT1 受容体反応性の抑制が関与すると推察された。この高血 圧抑制には,カムカムに多く含有するポリフェノール類 がアンギオテンシン系に関与したことが推察される。ま た,NE および PHE 投与による平滑筋への a 受容体に 作用する Ca 濃度以外の作用が示唆された。さらに,カ ムカム果汁投与による SHR は,Ach による血管弛緩感 受性を増大させ,PHE による血管収縮感受性を鈍化さ せたことから,血管内皮細胞の修復にともない eNOS タンパク発現の増大,L-NMMA の投与による血管平滑 筋の収縮および体血圧の増大から,eNOS 活性促進に関 与した可能性が考えられる。この高血圧抑制には,果汁 に含有するポリフェノール類に加えビタミン C が NO 産生に関与することが考えられた。 審 査 報 告 概 要 先行研究において,カムカム果皮抽出液が高血圧自然 発症ラット(SHR)の血圧を抑制する報告がなされて きたが,その高血圧抑制メカニズムについて,詳細な検 討がなされていない。本研究では,高血圧自然発症ラッ ト(SHR)を用いて,カムカム果皮抽出液および果汁 の長期投与による高血圧抑制の生理的メカニズムを検討 するため,高血圧に関与する内皮型一酸化窒素合成酵素 (eNOS)およびアンギオテンシンⅡ(ATⅡ)の観点か ら,大動脈におけるタンパク発現に対する分子生物学的 解析,大動脈摘出血管およびカテーテル挿入法による体 循環系の薬理学的解析を行った。その結果,高血圧抑制 には,カムカム果皮抽出液投与により血管平滑筋の AT1受容体の減弱,果汁投与により血管内皮機能障害の 修復と eNOS の増大が関与することが明らかとなった。 この高血圧抑制には,カムカムに含有するポリフェノー ル類に加えビタミン C の関与が考えられた。本研究で ─ 93 ─

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は,in vivo から in vitro の幅広い面から検討を行い新 規性のある結果を得た。

よって,審査員一同は博士(環境共生学)の学位を授 与する価値があると判断した。

参照

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