平成
28年
度
学 位 論 文
幼児期 にお ける
謝罪行動 の認識 に関す る発達的変化
兵庫 教育大学大学院修 士課程
人 間発 達教 育専攻
幼年 教育 コー ス
丸 山 絢子
Ⅳ
[15022F
目次
I。 問題 と目的.…… … … ¨… … … … …… … … …… …… …… …… … …… …1 Ⅱ.方
法 … … ¨… … … …… … …・… … … ¨… …… … ¨… … … …… … … …51.対
象2.期
間3.実
験4.観
察 Ⅲ。結果 と考察…… … … … …… … … … …… … … ……… … … … …… …… … … … 91.ス
トー リーの理解度2.罪
悪感 に関す る認識3.加
害者 の行動 予測4.罪
悪感 と加害者 の行動予測 との関連5.謝
罪 行動 と行 動理 由6.謝
罪 行動 に影 響す る各要因 の検討7.謝
罪認識 と実 際の謝罪行動 との関連 Ⅳ.総
合考察.…… … … …23I.問
題 と 目 的 私 た ちは社会 生活 を営む 中で、精神 的 、身体的 、また は物理 的 な損害 を他者 に与 えて し ま うこ とがある。 その よ うな他者へ の加 害場面に直面 した際 の解決 手段 のひ とつ として、 謝罪 が用 い られ る。 安藤(1994)に
よる と、 ゴンザ レス ら(1992)は
、大学生 を対象 と し た研 究にお いて、 自身の怠慢や過失が理 由である苦境場面では、「事件」の結果 の重大 さや 本人 の責任 の程度 には関わ りな く、謝罪 が一番多 く用 い られ る傾 向が あ るこ とを明 らか に してい る。 また、松永(1993)に
よれ ば、相手の頭 を撫 で る、頭 を下げてお辞儀 をす る と い った行為 による謝罪は 1歳 半頃か ら見 られ る。2歳頃か らは言語 による謝罪 も見 られ始 め、 年齢 を重ね るにつれ て 自発 的 な謝罪や様 々な言語表 現 に よる謝罪 が現れ る。 実際 に、丸 山(2015)の
研 究で も、保 育 内容 に関わ らず様 々な原 因で生 じた対人葛藤 場 面 にお いて、4・5歳
児 は謝罪 を用いてい ることを観察 によ り明 らか に してい る。このよ うに、謝罪 は年齢 を 問わず 日常的 に用 い られ る行為 である と言 える。 謝罪 には、い くつかの効果が ある。 大渕(2010)は
、謝罪 が被害者 または第二者 に対 し て印象改善 と感 情宥和 とい う心理的影響 をもた らし、その結果 、加 害者 の罰 を軽減 させ る とい う考え方を、謝罪宥和理論 (apology mitigation theory)と 名付 けてい る。 また、早り││(2009)に
よれ ば、謝罪 は加害者 の後悔や 当惑 、被害者 の怒 りや悲 しさ等 の両者 の情緒的混乱や葛藤 を解決す ることもで きる。松永
(1993)は
大人 と子 どもの謝罪 に関す る研究 として、
Ohbuchiら
(1989)とDarbyら (1989)を
取 りあげてい る。Ohbucliら
(1989)の大学生 を対象 とした研 究では、謝罪 には被害者 の怒 りを和 らげる攻撃抑制効果があ り、 謝罪 は被 害者 の加 害者 に対す る印象や被 害者 の感 情等 の内的状況 に影響 を与 える ことが明 らか に され てい る。 また、
Darbyら
(1989)の
小学生 を対象 と した研 究において も、謝罪 した者 は訪f罪 しない者 と比べて、罪 に対 して よ り深 く後悔 し好 ま しい人物 と受 け取 られ 、 罪 が軽減 され る こ とが示 され てい る。 よつて、円滑 な人間関係 を築 くた めには、加 害者 が 被 害者 に対 して謝罪 を行 うことは必要不可欠 である。 幼児期 におい て も、様 々な種類 の謝罪 が存在す る。 従来 の研 究 において 、幼児 の謝罪 を 分類す る時 、もつ とも多 く使 われてい る言葉 は真 の謝罪 と道 具的謝罪 であ る。中川 (2003) に よる と、真 の謝罪 とは、違反 に対す る責任 を受容 し罪悪感 を認識 した上で行われ る謝罪 の こ とであ り、道具的謝罪 とは、保 育者 による罰 を回避す るな どの何 らかの 目的 を達成す るた めに行 われ る謝罪 の こ とをい う。 中澤 。中道・小松谷・ 官 田(2007)は
4歳
児か ら 6 歳児 を対象 に紙 芝居 を用いて対人葛藤場面 を提示 し、幼児 の謝罪 の使 い分 けを検討 した。 その結果、幼児 は全般的 に悪 い こ とを した らと りあえず 「ごめんね」 とい うルーテ ィン と しての謝罪 を行 うが、5-6歳
頃か ら徐 々に真 の謝罪 を行 えるよ うになるこ とが明 らかにな った。 また、丸山(2015)の
観 察 に よる と、5歳
児 にお いて、従来 の謝罪 に加 えて、相手 に伝 える意図を もたない訪寸罪 、 コ ミュニ ケー シ ョン と しての謝罪 、い ざこざ回避 のた めに 事前 に行われ る謝罪 が見 られ た。 この こ とか ら、謝罪 は年齢 に伴 いその性 質 が変化 してい くものであ る可能性 が考え られ る。さらに、謝罪 の生起や 種類 に影響 を及 ぼす要 因 として、早川
(2005)は
加 害者 と被害者 の年齢差 と性差に注 目してい る。4歳
児 と5歳
児 を対象 に紙芝居 を用いて対人葛藤場面 を提 示 し質問 を行 った ところ、4歳
児 は相手が年 下であ る場合 は多 く謝罪 を行 うが、5歳
児 は相 手 の年齢 に影響 を受 けない ことが分かった。 また、男児 は相手が年 下である場合 に よ り多 く謝罪 を行 っていることが分かつた。中川・ 山崎(2004a)は
謝罪 と親密性 の関連 を明 らか に した。 ものの取 り合いについての課題 文 を提示 し、課題文 の最後 に加 害者 が謝罪 を した とい う一文 を付 け加 えた。被害者 と加害者 の関係 は高親密群 と低親密群 に分 け、対象児 に は どち らかの場合 を提示 し、加 害者 の謝罪理 由を尋ねた。 その結果 、親密性 の高い相手 に 道 具的謝罪 を用い るのは6歳
児 に比べ て4歳
児 の方 が多 く、真 の謝罪 を用 い るのは4歳
児 に比べて6歳
児 の方が多 かった。 また6歳
児 は親密性 の高い相 手 に対 して は真 の訪1罪、親 密性 の低 い相手 に対 して は道 具的謝罪 を用い るこ とか ら、親密 性 に よって謝罪 を使 い分 け る こ とが示 された。 そ もそ も、謝罪 とは どの よ うに成 立す る行動 なのであろ うか。 大渕(2010)に
よる と、 加 害行為へ の関与、行為の不当性、結果 の責任 とい う3つ
の要素 をすべて肯定 して行われ るのが謝罪 で あ る。加害行為へ の関与 とは、「被害 に関連 した行為 を した ことを認 めるか」 で あ り、行為の不当性 とは、「そ の行為が不 当なものであった ことを認 めるか」であ り、結 果 の責任 とは 「自分 に責任 が あ るこ とを認 めるか」で あ る。 また、中川(2003)は
、年長 児 の謝罪 が 「責任 の受容→被 害者 の怒 りの認識→ 被害者 か ら許容 され たい とい う欲求→ 謝 罪 」 とい う一連 の流れ か ら生起 してい る と述べ てい る。 これ らの主張 を踏 ま え る と、加 害 者 が与 えた損害 に関 して理解 し罪悪感 を抱 くとい うこ とが、謝罪 の生起 に重要 であ る と思 われ る。 高井(2004)の
研 究に よる と、6歳
児 は他者 に身体的 。物 質的 な損 害 を与 える道徳的違 反 において も、他者 に損害 は与 えないが規則・慣習 に違 反す る慣 習的違反 にお いて も、guilt 感 情 (本研 究 にお ける罪悪感)に
基づ く反応 を とる と予 測 していた。 そ して、guit感
情 に 基 づ くもの と して、違反行為 を修正す る、権威者 に謝 る とい った行動 を挙げている。また、 大西(2008)は
、罪悪感 を感 じることで、責任 を感 じた り、や って しまった こ とを訂正 し た りす る といつた補償行動へ動機づ け られ る と述べてい る。つ ま り、罪悪感 は、謝罪や補 償行動 の よ うな向社会的行動 に結 び付 きやす い と言 え る。橋本(2006)は
、幼 児期 と児童 期 を対象 に、加 害者 が偶然 に危 害 を加 えて しまった対人・対物場 面 の ビデ オ を見せ 、加 害 者 となったパペ ッ トを用 いてそ の後 の行動 を演 じさせ た り、ア ンケー ト用紙へ の行動予測 を記入 させ た りす ることで、 自発的 な訪す罪・補償行動 か ら見 た罪悪感 の発達 を検討 してい る。 その結果、謝罪・補償行動 の発 達 は罪悪感 の発達 と深 く結 び付 いてい る可能性 を示唆 していた。つ ま り、罪悪感 と向社会的行動は密接 に関連 してお り、年齢 に伴 つて両者 とも に発達に してい くとい う可能性 が考 え られ る。 利根川 (2006)の 4・5歳
児 を対象 に した 自由遊び場 面にお ける葛藤 場面の観 察 では、生 じた葛藤476場
面の うち、謝罪 による葛藤解決方略 は見 られ なか った。浅賀 。三浦 (2007)の年少児 を対象に したいざこざの観察では、生 じたい ざこざ
137場
面の うち、訪1罪による い ざこざの終結は1場
面であつた。山 口・谷 向 (2009)の 2∼5歳
児 を対象 に したい ざこざ の観 察では、2歳
児 の69例
の中で 1回 (0.3%)、4歳
児 の70例
の中で2回
(0.7%)、5歳
児 の88例
の 中で1回(0.2%)ず
つ、それぞれ用い られた。 しか し、いずれ の研 究において も、謝罪 が行 われ た事例 に関す る考察は行われていなか った。丸 山 (2015)の 4・5歳
児 を 対象 としたい ざこざの観察で は、生 じたい ざこざ80事
例 の うち、謝罪が見 られた ものは 30 事例 で あった。 エ ピソー ド分析 を用 いてい ざこざの原 因や加 害者 の気持 ちについて の考察 は行 われ てい るが、それ らは分析者 の推測にす ぎず、幼児 自身 の謝罪認識で はない。 この よ うに、観察法 を用いた研 究で は、事例 か ら幼児 自身の謝罪認 識 を検討す る ことは困難 で あ る。先行研 究の中には、幼児 自身 になぜ謝罪 をす るのかを尋ねて、幼児の謝罪認識 を図 ろ うと試みているものがある。 中川・山崎 (2004a)に よる幼児の謝罪 と親密性 の関連 を検討 した研究では、真の訪寸罪 か 道 具的謝罪 か を表 す図版 を選択 させ るこ とに よって謝罪認識 を調べてい る。 しか し、 これ は直接的 に幼児 に謝罪理 由を尋ねた ものではない。早川(2009)に
よる謝罪行動 と加害行 為 の意図性 の関連 を検討 した研 究では、「それ は ど うして?」 と行動 の理 由を幼児に尋ねて いた。行動理 由は4つ
に分類 されてお り、被害者 に害を与 えて しまった と過失 を認識 して い る 「過失認識」、被害者 の気持 ちに対 して注 目 してい る 「気持 ちへ の焦点化」、他者 のル ール に帰属す る 「ルール帰属」、 これ ら3つ
に該 当 しない 「その他」であった。意図的 な加 害行為 の場面では、5歳
児 よ りも6歳
児 の方 で 「過失認識」 の回答が多 く、また、4歳
児 で は 「ルール帰属」 の回答が多か った。 しか し、偶発 的な加 害行為の場面では有意な人数 の 方 よ りは見 られ なか った。 両場面にお ける被害者 は、泣 き出 して しまった とい う悲 しみ の 感 情 を表 出 していた。 しか し、加 害場面 にお け る被 害者 の感 情 は悲 しみだ けではな く、損 害 を被 った こ とに関 しての怒 り、または被 害状況 に気付 いて い なけれ ば被害 に関 して は無 感 情であ るこ とも考 え られ る。 田村(2009)は
幼児 が他者 の感 情 を推測す る際 の手掛か り の発達的変化 について検討 した先行研究か ら、4歳
児は表情 の手掛か りのみ に依存 して他者 の感情 を推測す る傾 向がある と述べてい る。つ ま り、被害者 が表 出 してい る感情や感情 を 表 出 してい るか ど うか によって は、偶発 的場面で も謝罪理 由に偏 りが見 られ る可能性 が考 え られ る。 また、中澤 ら(2007)は
謝罪 を行 う幼 児 は 「罪 悪感 の認識 」「責任 の受容」「被 害者 の怒 りの認識 」「許容欲求」の4つ
の心的状態 を持つ可能性 を挙げてい る。 これ らの こ とか ら、「許 して欲 しいか ら」 とい う許容欲求に基づ くものや、「わか らない」も しくは 「な い」が とりあえず謝罪 を行 ってい る、とい う訪す罪理 由 も考 え られ る。また、都 築 。上 田(2009) は幼稚園の重要性 のひ とつ は子 ども同士の トラブル を経験で きる場であるこ とを述べ、 ト ラブル に対す る子 どもの社会性 を発達 させ る上で3歳
児 の保 育 は極 めて重要である と主張 してい る。集団生活 を初めて経験す る3歳
児や4歳
児 に とって、同年代 の子 ども との トラ ブル は経験が少 な く、保育者 の介入 によって解決へ と導かれ る場合 も少 な くない。様 々な トラブル を経験 し、対応 方法 を体験 してい くこ とで、 自分 自身 の力 で対人葛藤 を解決す るこ とが可能 になってい くと考 え られ る。特 に、謝罪行動 のよ うな向社会的行動 は、対人葛 藤 の場 で幼 児が 自発 的 に行 える よ うにな る とは考 えに くく、第 二者 の関わ りが重要 であ る こ とは明 白である。つま り、 これ まで どのよ うな トラブル に関与 したのか、また、 どの よ うに終結 させ て きたのか とい う経験 は、幼児 の謝罪 行動 の認識 に大 きな影 響 を与 え る と言 え る。 そのため、縦断的研 究 を用 いた幼児の謝罪行動 の認識 の変化 の検討 も必要である と 考 え る。 よつて、本研 究にお け る目的の
1つ
を、年齢 が訪ま罪行動 の認識 に ど う影響 を及 ぼ す のかを明 らかにす ることとす る。 中川・ 山崎 (2004b)に よる と、対人葛藤場面には、被害者 と加害者 の立場が明確 である 挑発 場 面 と、両者 の立場 が不明瞭 な曖味場面が あ る。 対人葛藤 場面 の終息 には様 々な方法 が あ るが、謝罪 の構成要素であ る責任 の受容や罪悪感 の認識 が生起 しやす いのは、挑発 場 面 だ ろ う。 また、中川・ 山崎(2004b)は
、Hinde,Titmus,Easton,&Tamplin(1985)に
よ る幼児 は親 しい他者 に対 して脅 しや攻撃、拒絶、反抗 な どの敵対行動 を頻繁 に示す とい う 主張 を挙げ、幼児 は親 しくない他者 よ りも親 しい他者 との間で対人葛藤 を生起 させやす い こ とが示唆 され てい る と述べてい る。つ ま り、 これ らのよ うな要素 を持つ場 面は、加 害者 に よる謝罪行動が起 きやすい と考え られ る。 また、大渕(2010)は
、罰 は謝罪 を引 き起 こ す 上 で重要 な役割 を担 ってい る と述べ てい る。保 育者等 が対人葛藤 場面 に介入す るこ とは 少 な くな く、保 育者 か らの罰 を回避 す るために道 具的 に謝罪 を用い る幼児 も少 なか らず存 在 す る。 以 上 に基づ き、本研 究では、偶発 的 な場面 にお ける被 害者 の被 害状況 の認識 の有無、お よび保育者 の存在 によって、謝罪行動 の認識 は異 なるのか どうかについて検討す ることを 第2の
目的 とす る。 被害者 の状況認識 による影 響 につ いては、被害者 が被 害状況 を認識 し てい ない場合 (被害者非認識 条件)、 被害者 が被害状況 を認 識 してい る場合 (被害者認識 条 件)の
違 いによ り検討す る。 さ らに、第二者 の影 響 につ いて も考慮 し、被 害者 は被 害状 況 を認識 していないが保 育者 が認識 してい る場合 (保育者認識 条件)を
加 えて検討す る。 また、幼児の訪寸罪認識 と実際 の謝罪行動 との関係 に関す る研 究は見 られ ない。す なわち、 謝罪行動 を取 るべ き と認識 している幼児 が対人葛藤場面で実際 に謝罪 行動 を取 ってい るの か、あるいは、謝罪行動 を取 るべ き と認識 していない幼児が実際 に謝罪行動 を取っていな い のか とい うことは、まだ明 らかに されていない。 よって、実験で得 られた幼児の訪寸罪認 識 と実際 の謝罪行動 が結び付 いてい るのか ど うかを検討す る こ とを、第3の
目的 とす る。 したがって、本研 究にお ける主な 目的は以下の3つ
である。 第1の
目的 は、年齢 が謝罪 行動 の認識 に どう影響 を及 ぼす のか を明 らかにす ることであ る。第2の
目的 は、偶発的 な 場面 において、被 害者 の被 害状況 の認識 の有無、お よび保 育者 の存在 に よって、加 害者 の 謝罪行動 の認識が異 な るのか について明 らかにす ることであ る。第3の
目的 は、幼児 の謝 罪認識 と実際 の謝罪行動が結 び付 いてい るのか どうかを検討 す ることであ る。I.方
法1.対
彙 本研 究の対象児 は、兵庫県 の公 立A幼
稚園 に通 う4歳
児 クラスの園児26名 (男児 15名 、 女児 11名)で
、平均年齢 は4歳
11か月だった。なお、クラス と年齢 は2015年
9月 当時の ものである。担任 と副担任 は2年
通 して 同一人物 で あった。 またA幼
稚 園 は2016年
4月 よ り認定 こども園 とな り、対象児 の内女児 1名 が保 育部在籍 となった。体制 の変化 に伴い、2015年
度 では4歳
児 クラス と5歳
児 クラスが 1ク ラスずつで あったが、2016年
度 には3 歳児 クラスが1つ増 えた。なお、対象者26名の内、質問に関す る答 えを得 られ なかった幼 児2名を除 く、24名 を分析対象 とした。2.期
間2015年
4月 か ら2016年
9月 までであ る。 実験 は、2015年
9月 に1回 目を、2016年
9 月 に2回
目を実施 した。観 察 は、2015年
4月 か ら2016年
9月 まで行った。 なお 、筆者 は 対象園 において2015年
4月 か ら2016年
9月 まで長期休暇 を除 き、週 に約 1回のペー スで 登 園か ら降園まで保育に参加 してお り、対象園に通 う幼児か らは保育者 の1人
で ある と認 識 され てい る可能性 が高かつた。 そ のた め、筆者 は研 究 中で も普段 の保 育 中 と同様 に 「先 生」 とい う一人称 を用いて幼児 と会話を した。3.実
験(1)課
題 紙芝居 を用 いて課題 文 を提示 した。 ス トー リー 内容 は、謝罪 が生起 しや すい ことを考慮 し、加害者 と被害者 の立場が明確 で あ り、親 しい他者 に損害 を与え る加 害場面 とした。課 題 は、被害者 が被 害状況 を認識 していない もの、被 害者 が被 害状況 を認識 してい るもの、 被 害者 は被害状況 を認識 していないが保 育者 が認識 してい るもの、 とい う3条
件 を設 定 し た。1つ目を 「被 害者 非認識 条件」、2つ
目を 「被 害者認識 条件」、3つ
目を 「保 育者認識条 件」と呼ぶ。各条件 はそれ ぞれ3枚
の絵 で構成 され、1枚日と2枚
目のス トー リー 内容 はす べての条件で同一 である。3枚
目のみが条件 によって異 な り、3枚
目のス トー リーで各条件 が成立 してい る。条件 ごとの紙芝居 を図 1∼3に示 した。なお、課題 に用いた名前は、いず れ も対象園に同名 の園児がいない ことを事前 に確認 してある。 【条件1:被
害者非認識 条件 】 ① この男の子 (女の子)は
ね 、あき らくん (あか りちゃん)っ
て言います。あき らくん (あ か りちゃん)が
歩 いていた ら、お友達 の絵 を踏 んで破 い て しまい ま した。 ② その絵 は、いつ も一緒 に遊 んでい るお友達 の絵 で した。 お友達 は、一生懸命絵 をかいて いま した。 ③ あ き らくん (あか りちゃん)が
ど うしよ うかな と思 ってい る と、お友達が近 くに歩いてきま した。お友達 は、あき らくん (あか りちゃん
)が
絵 を破 いた ことを知 りませ ん。 図1実
験で用いた紙芝居(被害者非認識条件) 【条件2:被
害者認識条件】 ①この男の子 (女の子)は
ね、つ とむくん (はなちゃん)っ
て言います。つ とむくん (は なちゃん)が
歩いていたら、お友達の絵を踏んで破いて しまいました。 ②その絵は、いつ も一緒に遊んでいるお友達の絵で した。お友達は、一生懸命絵をかいて いました。 ③つ とむくん (はなちゃん)が
どうしようかなと思っていると、お友達がこちらに走って きて、「あ!つとむくん (はなちゃん)が
ぼく (わた し)の
絵を破いた !」 と怒った顔をし ています。②
③
図
2実
験で用いた紙芝居
(被害者認識条件
) 【条件3:保
育者認識条件】 ① この男の子 (女の子)は
ね、たろ うくん (さゆみちゃん)っ
て言います。たろ うくん (さ ゆみちやん)が
歩いていた ら、お友達の絵を踏んで破いて しまいま した。 ②その絵は、いつ も一緒に遊んでいるお友達の絵で した。お友達は、一生懸命絵 をかいて いま した。 ③たろ うくん (さ ゆみちやん)が
どうしようかな と思っていると、お友達が近 くに歩いて きま した。お友達は、たろ うくん (さゆみちゃん)が
絵を破いたことを知 りません。で も、 先生は、たろ うくん (さゆみちやん)が
絵 を踏んで破いた ところを、ずっと見ていま した。 6①
②
③ 図
3実
験で用いた紙芝居(保育者認識条件)(2)手
続き 各課題 は条件1から条件3の
順に、以下の手順で行った。 ①実験の説明;「今か ら先生がお話をするよ。お話の後にクイズを出すか ら、 どんなお話だ ったか覚えておいて、クイズに答えてね。」 と対象児に教示 した。 ②ス トー リーの提示 ;紙芝居を用い、各条件のス トー リーか ら1つを示 した。 ③ス トー リーの理解 の確認 ;条 件 1におけるス トー リー理解に関する質問は、「問1:あ
き らくんが破いたものは何だつたか」「問2:お
友達はあきらくんが絵を破いたことを知って いるか」であ り、正答は 「問1:絵
(紙でも可)」 「問2:知
らない」であった。条件2に
お ける質問は、「問1:お
友達はつ とむ くんが絵 を破いたことを知っているか」であ り、正答 は 「問1:知
っている」であった。条件3に
おける質問は、「問1:お
友達はたろ うくんが 絵 を破いたことを知っているか」「問2:先
生はたろ うくんが絵を破いたことを知っている か」であ り、正答は 「問1:知
らない」「問2:知
っている」であった。誤答が得 られた場 合は、正答を示 して理解 したか どうかを確認 した。また、条件1の
問1で
「紙」 と答えた 幼児に対 しては、肯定を した上で絵であることも付 け加 えた。 ④罪悪感 に関する質問;「○○くん (ちゃん)は
どれ ぐらい悪いと思 う?」 と質問をし、図4に
示す罪悪感を表す図版 (「す ごくわるい」「ちょっ とわるい」「あま りわるくない」「ぜん ぜんわるくない」の4種
類)か
ら自分の意見に最 も近い ものを選 ばせた。「○○」には、各 ス トー リーにおけるカロ害者の名前を入れた。④ ④ ④ ④
けごくらゎ こ
あ部
]
ぜんぜんわ
“
1
わ
る
い 彎摯
1‐ 1摯:留
111評
│
図4罪
悪感を表す図版の例(被害者非認識条件)⑤行動予沢1と理 由の質問 ;「も し□□ くん (ちゃん
)が
○○ くん (ちゃん)だ
った ら、 この 後 ど うす る?」 「どうしてそ うす るのかな?」 と質問を した。「□□」 の部分には、対象児 の名前 を入れた。 面接場所や時 間 は定 めず、 自由遊び時間や空 き時間に幼児 に声 を掛 けて、人気 のない所 で横 並びに座 って行 った。幼児 か ら断 られた際 には無理強い をせず、時間や 日付 を改 めて 再度声 をか けた。担任 か らの声かけを含 め5回
以上断 られた幼児 に関 しては対象児か ら外 す こ ととした。 また、質問中に幼児 が視線 を さま よわせ た り立 ち上がった りす るな ど、落 ち着 きがな くなった と判断で きる、 も しくは筆者 の声掛 けに対 して3回
以上無言 が続 くよ うであれ ば、「分か らない?」 等 と声 をか け、質問 に対す る答 えが得 られていない場合 で も 次 に移 ることとした。 面接内容 は園の許可を頂いて録音 し、後 日逐語録 を作成 した。4.観
察 筆者 は、長期休暇 を除 き、週 に約1回
のペー スで対象園にて登園か ら降園までの保 育に 参加 してい る。保 育中に、保 育者 のひ と りとして幼児 と関わ る中で得 られた謝罪行動 の認 識 に関わ りそ うな事例 を簡易 に書 き残 し、保 育終了後 に記録 を作成 した。 事例 では対象児 はA∼
Z児
、対象児以外 の幼児 で事例 に登場す る幼児 はa∼z児 と表記 し た。Ⅲ
.結
果 と考 察1.ス
トー リーの理解度 各条件におけるス トー リーの理解 に関する質問への回答を表 1に 示 した。4歳
児の条件1 の問1以外の質問では6割
以上の幼児が正答 を述べていた。条件 1の問 1のみ単純な二択 を問 う質問ではなかったため、答えること自体が困難であったと考える。また、5歳
児は全 ての質問に対 して7割
以上の幼児が正答を述べていた。以上のことか ら、幼児はス トー リ ーの内容を概ね理解できていたもの と考える。 表1各
条件 における理解度に関する質問の正答者数 条 件1 条 件 2 条 件 3備児
dの
(轟
)(異
亀
)(異
お
)(幾
)爺児ぶЪ
ごЪ
(晃L)(漢
λ
)。
話の
数値は人数,()内は%2.罪
悪感 に関す る日臓 罪悪感 に関す る質問へ の回答 を、表2に
示 した。 ほ とん どの条件で加害者 は 「す ごくわ るい」 と判断 してい る幼児が最 も多 く、5歳
児 の条件3で
のみ、「ち ょつ とわ るい」 と判断 してい る幼児 が最 も多かつた。被害者 と保 育者 の認識 の違 い は、加害者 の一連 の行動 を見 ていたか ど うかである。被害者 は、加害者 が絵 を破 いた とい うことのみを認識 してい るが、 保 育者 は加 害者 の行動 が偶発 的 であった ことまで 目撃 してい る。 そ の結果、被 害者 は怒 り を表 出 してい るが、保 育者 はその よ うな感情表 出や言葉 はない。 よって、5歳
児 は、保 育者 が 自分の行動 を理解 してい るだ ろ うとい う安心感 か ら罪悪感 が和 らいだ可能性 が考 え られ る。 表2各
条件における罪悪感の捉え方 条件1
条件2
条件3 すごくわるい10(41.7) 14(58.3) 13(542)
ちょつとわるい 4歳児 あまりわるくない 6( 25.0) 7( 29.2) 3( 12.5) 3( 12.5) 3( 12.5) 7( 29.2) 14( 583) 7( 29.2) 6( 250) 13( 54.2) 3( 125) 1( 4.2) 1( 42) 3( 12.5) の回答 を 「わ るい」 な い」 群 に分 類 し、 9 ぜんぜんわるくない5(20.8) 0( 0.0) 1( 4.2)
黎じ言+ 24(100.0) 24(1000) 24(100.0) すごくわるい12(50.0)
ちょつとわるい8(33.3)
5歳児 あまりわるくない2( 83)
ぜんぜんわるくない2( 83)
「す ごくわるい」 と 「ぜんぜんわるくない」 「ちょつ とわるい」 の回答 を 「わ る く 群 、「あま りわ るくない」 と 罪 悪感 の年齢発達的変化 を表
3に
示 した。年齢 よつて罪悪感 の捉 え方に変化があるか どうかを検討す るために、マ ク ニマーの検定 に よつて条件 ご とに年齢 間の比較 を行 ったが、いずれ の条件 において も有意 差 は見 られ なかった。 表3罪悪感の年齢発達的変化鰍
潮
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数値は人数,()内 は淵
% また、条件 によつて 「わ るい」「わるくない」の判断に違いがあるのか どうかを検討す る た めに、 コクランのQ検
定に よつて年齢 ごとに条件間の比較 を行 ったが、 どち らの年齢 に おいて も有意差 は見 られなかった (4歳 児 でq=5.000,5歳
児 でq=0.000)。 いずれ の条件 に おいて も、4歳
児 は、6割
以上の幼児 が加 害者 は 「わ るい」 と認識 してお り、5歳
児 は、8 割以 上の幼児 が加 害者 は 「わ るい」 と認識 していた。3.加
害者の行動予測 加 害者 の行動予測 に関す る質問へ の回答 を、内容で4つ
に分類 した。「ごめんな さい」等 の言語 による謝罪行動 を 「謝罪 」、「の りで絵 を くっつ ける」 な どの絵 を元通 りに しよ うと す る行動 を 「修復 」、「分 か らない」または無回答 を 「不明」、前 述 の3群
に当てはま らない ものを 「その他 」 とした。 松永(1993)は
被 害者 の頭 を撫 でた幼児 を行為 に よる謝罪 と捉 えていた。加害者 が被害者 に対 して何 らかの行動 を もつて与 えた損害の埋 め合 わせ を しよ うとす る行為 を行為 に よる謝罪 と捉 え られ るので あれ ば、本研 究にお け る 「修復」 も謝罪 の一種である と位置づ けることができる。よつて、本研 究にお ける「謝罪行動」は、「謝罪」 と 「修復」を含む もの とし、「不明」 と 「その他」 を 「非謝罪行動」 とした。 行動予測 に関す る質問へ の回答 を表4に
示 した。4歳
児は、全 条件 に共通 して3割
以上の 幼児 が謝罪行動 を予測 して いた。 しか し、最 も多い行動予測 は 「不明」であ り、4歳
児 は他 者へ の加 害場面 にお け る対応 の認識 が不十分であ る、 または、 自分 の気持 ちを言葉 で上手 く表現す ることがで きない可能性が考え られ る。他方、5歳
児 は、全条件 に共通 して7割近 い幼児が謝罪行動 を予測 していた。また、最 も多い行動予測 は 「謝罪」であ り、5歳
児 は親 しい他者への加 害場面においては、言語 によつて謝罪 を行 うべ き とい う認識 が確立 してい る可能性 が考 え られ る。 10表4各条件における行動予測 条件1 条件2 条件3 謝罪行動 非謝罪行動 謝罪行動 非謝罪行動 謝罪行動 非謝罪行動 q値 謝罪 修復 不明 その他 計 謝罪 修復 不明 その他 計 謝罪 修復 不明 その他 計
備児。
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甥(43(mS(a60脇
咄7 数値は人数,()内 は% 「謝罪行動」か 「非謝罪行動」か とい う観点で、4歳
児か ら5歳
児へ の個人 ごとの回答 の 変化 を示 した ものが表5で
あ る。年齢 によって行動予測 に違いがあるのか を検討す るため に、マ クニマーの検 定によって条件 ごとに年齢 間の比較 を行 った ところ、全条件 で有意差 が見 られた。よつて、4歳
か ら5歳
へ の年齢の増加 に伴い、謝罪行動 も増加す ることが確認 で きた。 これ は、 中川・ 山崎(2004a)や
早川(2005)等
の図版等 の場面提示 を用いた研 究 において、年齢発達 と共 に謝罪 を行 う幼児 が増加 してい る とい う研 究結果 と同様 であ る。 さらに、4歳
児で 「謝罪」 を予測 していた幼 児 は、5歳
児で も 「謝罪 」を予 測 していた。 ま た、4歳
児 で 「修復 」を予測 して いた幼児 のほ とん どが、5歳
児 で 「謝罪」 を予測す るよ う になった。 これ は、謝罪行動 は行為 による謝罪 か ら始 ま り言語 による謝罪 に移行す る とい う松永(1993)の
考 えを支持 す るものである。 衰5行 動予測の年齢発達的壼化 朱件l 5歳児 謝罪行動 非謝罪行動 条件3 5歳児 謝罪行動 非謝罪行動鮒
潮
非謝罪行動 修復 4歳児 不明 その他 計 (21181 4 (167) (41鰐2667** 5 (2081 24 050) 3 (125) (4532667林 4 (167) 24 D 2 0 8 0 1 0 ︲6 0 < 0 < 0 0 0 2 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 1 2 1 0 0 0 4 つ l D 5 0 1 0 0 0 0 0 1 0 3 0 6 0 3 0 ︲7 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 3 0 2 0 5 0 0 1 ” 1 ” 0 0 2 0 0 0 0 3 0 2 0 5 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 ● 0 0 (208) 4 (167) (5082214* 3 (125) 24 条件間に違いがあるか どうかを検討するために、「謝罪行動」か 「非謝罪行動」かの観点 で、コクランのQ検
定によつて年齢 ごとに条件間の比較を行ったが、有意差は見 られなか った (4歳 児で 嘔0.000,5歳児でq=0.667)。 よって、被害者や第二者の被害状況の認識は、 謝罪行動の生起に影響を及ぼ していなかった と言える。4.罪
悪感 と加害者の行動 予測 との関連 罪悪感 と行動予測 の関係 を表6に
示す。両者 の関連 を検討す るために、年齢 ごとに χ2検 定 を行った ところ、4歳
児 の条件 1に おいてのみ有意 な関連 が見 られ た。よって、被害者 が 数値は人数,()内は%加害者及び損害に気付いていない状況では、
4歳
児 は、「わ る くない」を選択 した幼児 よ り も 「わ るい」 を選択 した幼児 の方が、謝罪行動 を予測す る幼 児 の割合 が多 か った。 また 、 条件2や
条件3で
は有意差 は示 されていないが、「わ るくない」を選択 した幼児で訪す罪行動 を予測 した幼児 は条件3の
1名のみであ り、すべての条件 を通 して謝罪行動 を予測 してい た幼児のほ とん どは 「わるい」 を選択 していた。一方、5歳
児 では、「わ るい」 を選択 した 幼児 と 「わ る くない」 を選択 した幼 児 の謝罪行動 の割合 に差 は ほ とん ど見 られ なか った。 田村(2009)は Darbyと
Schlenkerが 6∼9歳
児 を対象 に行 った、訪寸罪 な し場面 と謝罪 あ り場面で加害者 はそれぞれ どの程度反省 してい ると思 うかを問 う研 究を取 り上げ、6∼9歳
の児童期 において、子 どもは謝罪 を常 に誠実な もの として認知 しな くな る可能性 を述べ て い る。つま り、児童期 の子 どもは先行研 究にお ける道具的訪す罪 の よ うな誠 実 ではない謝罪 を理解 してい る可能性がある。「わ る くない」 を選択 しなが ら謝罪行動 を予測 した幼児 は、 この よ うな誠実 ではない謝罪 を想 定 していた可能性 がある。 実際の保 育 においては、保 育 者 は これ らの幼 児 がわ るい 。わ る くない の焦点 を どこにおい てい るのか を考 え、介入 して い くことが大切だ と考 える。 表6年齢別にみた罪悪感と行動の関連 4歳児 わるくない 計 わるい 5歳児 わるくない (10030∞ぶ
5 01XI 15 24 (625)(1000) (571)(1∞0) 3 3 (1000)(llX1 0) 15 24 (625)(llX1 0) 5 20 (250)(1000) 1 4 (250)(1000) 6 24 600(1000 7 8 070(1000) 15 24 (625)(1000) 1 81Xl 0 1 0 9 0 0 0 0 9 9 20 0 4 0 24 5 0 2 0 7 ︲5 0 2 0 ︲7 ︲5 0 3 0 ︲8 20 0 4 0 24 00 ∞ 5 0 1 0 6 0 0 数値は人数,()内 は%5.謝
罪行動 と行動理 由 謝罪行動 を予測 した幼児 を対象 とし、行動理 由に関す る質 問へ の回答 を、内容 で4つ
に 分類 した。早川 (2009)に よる謝罪行動 を行 うと予測す る理 由の分類 にのっ とり、「踏んだ か ら」「破 いたか ら」等 の被害者 に害を与 えて しまった過失 を認識 してい るものを 「過失認 識」、「かわいそ うだか ら」「寂 しいか ら」等 の被害者 の気持 ちを考慮 してい るものを 「気持 ちへ の焦点化」、「悪いか ら」「謝 るか ら」等の悪い ことを した ら謝 るとい う規範意識 か ら生 じるものを 「規範帰属」、「分か らない」「先生が見ていたか ら」等 それ以外の理 由を 「その 他」 とし、表7に
示 した。なお、早川(2009)は
「先生に怒 られ るか ら」とい う理 由を 「ご めんね っていわ ない とい けないか ら」 とま とめて 「ルール帰属」 と分類 していたが、本研 究にお ける 「怒 られ るか ら」 とい う理 由は罰 回避 によるもの とみ な し、「その他」 に分類 し 12た。
5歳
児では、全条件 を通 して 「過失認識」の割合 が多 く、条件 に よる割合 の差 は見 られ な か った。一方、4歳
児 では、条件2に
お いて 「過失認識」の割合 が多 く、条件 1と条件 3 で は行動理 由にあま り割合 の差 は見 られ なか った。 条件2は
被 害者認識 条件 であ り、被 害 者 は加害者 に対 して怒 りを表 出 していた。 また、「つ とむ くん (はな ちゃん)が
ぼ く (わた し)の
絵 を破 いた !」 と加 害者 の行動 を言葉で説 明 していたた め、過失 を認識 しやすい条 件 で あった と考え られ る。 早川(2009)の
結果 と、本研 究の条件 1と 条件2の
結果 を比較す る と、5歳
児 の 「気持 ちへ の焦点化」の割合 に違 いが見 られ た。早川(2009)の
研 究 は、偶発 的 な場 面かつ、加 害者 が被 害者 のパ ズル を壊 して被害者 が泣 き出 して しま う、とい う条件 であった。つま り、 条件 1と の違 いは、被害者 が被害状況 を認識 してい るか どうかであ り、条件 2と の違 いは、 被 害者 の感 情が悲 しみか怒 りか、である。早川(2009)の
結果 にお いて、「気持 ちへ の焦点 化」が謝罪理 由であった幼児 は 4名 で 12.9%で あったが、本研 究では条件 1、2共
に0名で あった。 これ らの ことか ら、被 害者 の被 害状況 の認識や感 情に よって、加 害者 の被害者 に 対す る共感 の程度 が異 なる可能性 が考 え られ る。 田村(2009)は
、子 どもに謝罪 のルール を教 え る際 に、「違反 を犯 した ら謝 らなけれ ばな らない」 ことを教 える と述べている。違反 を犯す とい うことはす なわ ち悪い こ とであ り、 保護 者や保 育者 に教 え られ た通 り、 まず は謝 らな けれ ばな らない とい う意識 がある可能性 が考 え られ る。 よつて、「悪 いか ら」 とい う「規範帰属」 を謝罪理 由 とした幼児 は、大人の 教 えを強 く意識 して謝罪 を行 ってい る可能性 が ある。 表7各
年齢における条件ごとの行動理由 過 失認識 気 持ちへの焦 点化 4歳 児規範帰属 その他 計 過失認識 気持ちへの焦 点化 5歳児
規範帰属 その他 (33.3) (66.7) 3 2 (33.3) (11.1) 2 1 (22.2) (11.1) 1 1 (11.1) (11.1) 9 9 (100.0) (100.0) 2 (22.2) 3 (33.3) 2 (22.2) 2 (22.2) 9 (100.0) 12 13 10 (667) (72.2) (58.8) 0 0 1 (0.0) (0.0) (5.9) 4 2 2 (22.2) (11.1) (11.8) 2 3 4 (11.1) (16.7) (23.5)
18 18 17
計 (100.0) (100.0) (100.0) 数 値 は 人 数,()内
は% 136.謝
罪行動 に影響す る各要 因の検討 謝罪行動 を予測 した幼児 につ いて、条件別 、年齢別 に、謝罪 行動 の種類 、罪 悪感 、行動 予測 、行動理 由を表9∼14に示 した。 「気持 ちへの焦点化」を謝罪理 由に した幼児は、加 害者 を 「す ごくわるい」 と判断 し、1 名 を除いて 「修復」行動 を予測 していた。 内山(2007)は
罪悪感 に関す る2つ
の研究を紹 介 してい る。Barrettら(1993)は
、2歳
児 を対象 に恥 と罪悪感 の行動傾 向 に関す る実験 を 行 い 、罪悪感 を抱 くと壊れ た人形 を直そ うとす る等 、状況 を改 めよ うとす る行動傾 向を明 らかに した。 また、石川 。内山(2001)は
5歳
児 を対象 に、罪悪感 が生 じる状況 を検討 し た。 その結果、他者への危害場面では、共感性 が関与 してい ることが明 らかになった。 つ ま り、「気持 ちへの焦`点化」が謝罪理 由で あ る幼児 は、他児 よ りも共感性 が高 く、強 く罪悪 感 を抱いたた めに、絵 を修復 し、状況 を改 め よ うとした と考 え られ る。 「わるくない」 と判断 した上で謝罪行動を予測 している幼児の行動理 由は、すべて 「過 失認識」であった。「過失認識」 を理 由 とす る幼児 は、少 な くとも状況 を理解 し、 自分 に原 因が ある こ とを理解 してい る。 その上 で罪悪感 を抱 いてい ない とい うこ とは、 自分 に原 因 が あった として も非はない と捉 えてい るか、絵 を破 る とい う行為 自体は大 きな害にな らな い と捉 えてい る可能性 がある。前者 の場合、行為へ の関与は認 めているが、行為 の不当性 と結果 の責任 は認 めていないので、大渕(2010)の
分類 に よれ ば否認 行動 が起 きる。 しか し、実際 に謝罪 は行われてい るため、後者 である可能性 が高 い と考 え られ る。絵 を破 る以 外 の行為 で も同様 の結果が生 じるのか否かを検討す る必要がある。 特徴的 な回答 を示 した幼児 として、V児
を挙げ る。条件3にお いて、V児
は、4歳
児では 「先生に、破れて ごめんな さいってい う」とい う行動 を予測 し、「先生がずっ と見てるか ら」 とい う謝罪理 由を述べていた。謝罪対象 が保育者である と述べた幼児 は、V児
のみである。5歳
児 にな る と、「先生が気付 いて友達 に言 つちやつた らごめんね ってい う」 とい う行動 を 予測 し、「破 い ちゃったか ら」 とい う 「過失認識 」 を謝罪理 由 と して述べ ていた。 つ ま り、 どち らの年齢 において も保育者 の存在 には気付いてお り謝罪 を行 うが、謝罪 対象や謝罪理 由が異なっている。 このよ うな違いがあるのは条件3に
おいてのみであ る。 また、条件3の 5歳
児 にお けるQ児
の 「破 いて、先生が知 ってたか ら」、条件 1の5歳
児 にお けるL児
の 「見 られた ら、 ごめんな さい ってい う」の よ うに、 自分で訪1罪行動 を と る際の条件 を付力日す る幼児 もいた。 さらに、条件 1の5歳
児 にお けるH児
の 「破 い ちゃっ て ごめんね」のよ うに、謝罪行動 を とる理 由を先に述べ る幼児や 、 さらに、条件3の 5歳
児 にお ける I児 の 「謝 って仲直 りす る」の よ うに、謝罪 を行 えば相 手か ら許容 され るだろ う と先 の展開を予淑lした幼児 がいた。 この よ うに、年齢発達 に伴 い幼児の謝罪認識 には変化 が現れ ることもある。 14表
9条
件1における4歳児の翻罪行動選択者の回答 行動 の種類 謝罪理 由の種 類E (の りでくつつけてあげる
)
すごく
わるい
ハ
I置しよ∬
:し 過失認識K
′_
´_′修復 ,_二 ._ヽちよつとわるい
′
_._,ヽ
、 すごくわるい ちょつとわるいR
′二 _P冤た^:ュz、すごくわるい
R (テ
ープでくっつける)
フ‐`・ ′υV・(か
わいそうやから) 気持ちへの焦点化S rキ
ロ
ハし
千
二
等乳よ
ぅ
7ふrス、
すご
く
わる
い
r■
、
ハ
lw=ゎ■
、
二
ヽ
表10条件1における5歳児の謝罪行動選択者の回答 行動 の種類 行動 予測H
′絲i、_.ヽ硼'Lム′二、ぜんぜんわるくない
H (破
いちゃつてごめんね)
ヒ′VL′V・′りヽ・‐ν(踏
んじゃつたから) 規範帰属I
′
輩番、
すごく
ゎるい
′
雷
=、一
L:`■、
,ヽ すごくわるい ちょつとわるい ちょつとわるい すごくわるい ちょっとわるい ぜんぜんわるくない ちょつとわるい すごくわるいT
1 (ご
′´ム′■輩´,、.、すごくわるい めんねつていう
)
フL`句′υV (破
いてしまつたから) 過失認識V
′
´ム′
覗モ
_、.、ちょ
っと
わるい
′
み
、
_…_さ..,ヽ・ 工薔
`ヽ^饉′
i゛…―
´」虫′
上
_´ヽ
(テープで貼ってあげる)
すごくわるい(ぃ
っぱい頑張って描いとったから) すごくわるい 15表11条件2における4歳児の謝罪行動選択者と行動理由 行 動 の 種 類 謝罪理 由の種 類 対象児 F 罪悪感 すごくわるい (のりで張 り付 けてあげる) (かわいそうや から) すごくわるい 表12条件2における5歳児の謝罪行動の選択者と行動理由 対象児 E F 行 動 の 種 類 罪悪感 すごくわるい すごくわるい 謝 罪 理 由 の種 類
G (ま
だ罫る
)
すごく
わるい
(破
いてし
まつたから
),1
謝罪七士f:よ2′‐:、
過失認識
H
′畳_.`FりLA′ ム、あまりわるくない
′』ツγ蟄弾
:
′璽ず、ちよつとわるい
` (謝
る)
フい´L・′υν(悪
いことしたと思うから) 過失認識」
′
コ人′
覗モ″
1、二
、
すごく
わるい
′
ぃ
__.^_`.ヽ ,ヽL (本
当にごめんねつていう)
ψ‐′・ ′りヽ・OV (紙
破いて本当にごめんなさい) 過失認識M
ぶ看
)
ち
よ
つ
と
わ
る
い
(破いたから) 過失認識0
′
ニュヲチ′
.、ちょ
っと
ゎるい
′
_.´ =͡_͡P
′"_″ “留丁上_″,、■ヽぜんぜんわるくない : (怒 つ て 、 ご め ん ね つ て い う) L′ VL′ V■ ′Vヽ ‐‐V (だ つ て さ 、 踏 ん で破 れ た か ら) 過失認識
Q
′
コ人′
覗モ″
,こ、
ちょ
っと
わるい
′
T.1、″
,.″:‐―
`工ヽ
,ヽ すごくわるい すごくわるい すごくわるいX
′^椰:、._、ピ3輩 ′上_´:、いちよつとわるい A (絵 破いたからごめんねつていう) フい′Lつ′νV (悪 いから) その他 S 十 ■ 畳L^′ L二:―:ご 傷 :ヽ 二 _PR卜 _夕七 :■2 す ご くわ る い ′ ^_ム _._ム、, 4_L牲 :ユフ ● ‐ l―:″‐ :」 フ ヽ すごくわるい の (テープで直してあげる) 16
表13条件3における4歳児の闘罪行動の選択者と行動理由 ぜんぜんわるくない ヽイ (の
り
で
く
」
ζ
得て
ぁ
げ
る
)
す
ご
く
わ
る
い
話鷲鰐暦
景
鵠
や 表14条件3における5●児の樹罪行動の選択者と行動理由 fT剛の 種 類 罪悪感 すごくわるい すごくわるい 調 非 埋 日 の 種 類 ぜんぜんわるくない ちょつとわるい ちょつとわるい ちょつとわるい ぜんぜんわるくない すごくわるい ちょつとわるい すごくわるい ちょつとわるい すごくわるい すごくわるい ちょつとわるい ちょつとわるい ちょつとわるい すごくわるい (描けるように)7.謝
罪認識 と実際の謝罪行動 との関連 実験 の結果か ら、2回
とも謝罪行動 を予測 した幼児、1回
のみ訪1罪行動 を予測 した幼児、2回
とも謝罪行動 を予測 しなかった幼児 の3つ
に分類 し、各分類 ごとに代表的な幼児 の事例 を取 り上げ、謝罪認識 と実際 の訪寸罪行動 との関連 について考察 を した。(1)各
年齢 ともに開 罪行動 を予測 して いる幼児1)F児
17F児
は、4歳
児、5歳
児 ともにすべての条件 で 「謝罪」 を予測 していた幼児 であった。事 例 1は、4歳
児 の 10月 に起 きた事例 で、謝罪 行動 を取 った事例 で ある。 事例1
謝罪行動 を取 つた事例 遊戯 室で、F児
を含む男児4名が鬼 ごっ こを してい る。F児
は鬼 の方 を向いて手を叩い た り、「こっちもお るで !」 と言 つた りしなが らあお っていた。鬼がF児
の方に向き直 り 走 り寄ろ うとした瞬間、F児
は反 対方向に走 り出 した。 しか し、近 くでお姫様 ごっこを し ていた5歳
i児 とぶつ か って しまった。i児 が 「いつた !」 と言 つてF児
を見 る と、F児
は 「ごめん」 と謝 った。 事例 1は、偶発 的 な加 害場面で ある。i児 は言葉でF児
に対 して不満 を訴 え、F児
はそれ を受 け入れ 自身の過失 を認 めたために、訪す罪 した と思われ る。事例1は
被 害者 が被害状況 を認識 してい る場合 であ り、本研 究にお ける条件2に
近い。F児
は、条件2に
おいては、4 歳児時点で 「意地悪や か ら」 とい う理 由で謝罪 していたが、事例1で
の訪寸罪理 由は、 自分 が 友達 にぶつかって しまったか らとい う「過 失認識 」か、被 害者 が痛 が って い るか らとい う 「気持 ちへの焦点化」に近いのではないだろ うか。 このよ うに、類似 した場面でも謝罪理 由は異 なる場合がある。 事例2は
、5歳
児 の 6月 に起 きた事例で、謝罪行動 を取 つた事例 である。 事例2
謝罪行動 を取 った事例F児
は複数の幼児 とうずまき じゃん けん(うず の端 と端 か らスター トして相手 と出会 っ た らじゃんけんを し、負 けた ら道 を譲 る遊び)を
してい る。F児
はV児
と うずの途 中で 出会 い、 じゃん けんで負 けたので 自分 のチー ムの所 まで戻 り、最後尾 に並んだ。 しか し、 先 ほ どまで並んでいたがブ ランコの様子 を見 に行 って戻 つて きた 」児 が、「あ、おれ ここ 並ん どったんやで !」 と言 つてF児
の前 に入 つた。F児
は 「そ うなん?」 と返 して、J 児が前 に入 る ところは止 めなかった。」児 は 「順番抜 か しす んな よ」 とF児
に告 げる と、F児
は 「ごめん」と言つた後 に笑 いなが ら「してへんや ろ!」 と言 つた。J児
とF児
はお 互 いに笑 っていた。 事例2は
、友達か らルール違反 を指摘 され て謝罪 を した、とい う事例 であ る。J児
は意図 を もつて違反 を犯 した訳ではない。また、J児
が並んでい るとい うことを知 らなかった こと 18は
F児
の反応か らも明 らかであ り、列か ら離れていた 」児 の場所 を空 けておかなかった こ とがル ール違反 になるか どうかは確 かではない。F児
も実際 に、していない とい うことを主 張 して い る。 しか し、ルール違反 を指摘 されてす ぐに謝罪行動 を取 った ことか ら、意図な くル ール違反 を犯 した場合 、F児
は謝罪行動 を取 るべ きだ と認識 している可能性が ある。2)M児
M児
は、4歳
児、5歳
児 ともにすべ ての条件 で 「謝罪」を予測 していた幼児 であった。事 例3は
、4歳
児 の 9月 に起 きた事例 で、謝罪行 動 を取 らなか った事例 であ る。 事例3
謝罪行動 を取 らなか った事例H児
は新聞紙 を丸めて細 くした棒 のよ うな ものをM児
に見せ 、「これ めっちゃ固いん や で !」 と自慢 している。M児
はそれ を触 り、「うわ めっちゃ固いやん !」 と言つた。H
児 はそ の棒 で棚 を何度 か 叩いてみせ た。 棒 は折れ る こ ともへ こむ こ ともなか った た め、 「す ごい !」 とM児
は称 賛 した。M児
が 「貸 して」 と言 うと、H児
はM児
に棒を渡 し た。M児
がH児
と同様 に棚 を叩 くと、棒 は棚 に当たつた所 でへ こんで しまった。H児
が 「あ !ぼ くの折れた !」 と言 うと、M児
は 「ん」 と棒 を差 し出 し、走 って行 って しまっ た。H児
はへ こんだ回 りの部分 を押 していたが、気 に入 らなかったのか、 ビニールテー プ を巻いて補修 していた。 事例3は
、偶発的 な加 害場 面である。被害者 が被害状況 を認識 してい るた め、本研 究に お ける条件2に近い。M児
は、条件2に
おいて は、「破 いたか ら」 とい う過失認識 を理 由に 謝罪 を予測 していた。今 回 の場合 、「折ったか ら」 とい う理 由で謝罪 をす る可能性 もあつた だ ろ う。 しか し、M児
はH児
に棒が折れた とい う事実を指摘 され ると、H児
に棒 を返 して そ の場か ら逃 げて しまった。 このよ うに、謝罪行動 を行 うべ き場合 を認識 していた として も、実際 の場面で は訪寸罪行動 を取 るこ とがで きない幼児 もい る。3)S児
S児
は、4歳
児 の条件2以
外 では 「修復」を予測 していた幼児であった。 なお、4歳
児 の 条件2で
は、「不明」 を予測 していた。事例4は
、5歳
児 の 5月 に起 きた事例 で、異年齢児 のい ざこざ場面に介入 した事例である。 事 例4
い ざこざ場面に介入 した事例 19朝 の準備 が早 く終わ つた
S児
は、3歳
児 クラスの保 育室 に行 き、3歳
児 の朝 の準備 を手 伝 ってい る。S児
が 「ここに入れ るんやで」 と言いなが ら3歳
女児m児
のオムツを棚 の ケー スに入れ てい る。S児
に直 して もらつたm児
は、次の準備 をす るために 自分の ロッ カー に向かお うとす るが、振 り返 った時 に、床 に広 げ られていた別の3歳
女児t児
の園 服 を踏 んで しまった。 園服 は畳む途 中で袖等 を伸 ば され た状態 であったが、踏 まれ た こ とで袖の位置がずれて しまった。t児は顔 を上げてm児
を見つ め、m児
も立 ち止 まってt 児 を見 るが、お互い に何 も言 わない。S児
が近寄って来て、「こうした ら大丈夫」と言い、 袖 を元 の状態 に伸 ば した。t児 はS児
を見たが、何 も言 わず にまた園服 を畳み始 めた。S
児 は、「次 はお帳面や で」 とm児
に声 をか ける と、m児
は 自分の ロッカーヘ と向かった。3歳
児 は集 団生活 が初 めてであ り、同年代の友達 とどの よ うに接 した ら良いのかが まだ分 か らないのだ ろ う。t児がm児
を見つ めてい ることか ら、m児
に対 して何か言いたい こと が あ るよ うに感 じられ るが、 自分の気持 ちを言葉 に して伝 える術 を持 たないのか も しれ な い。対 してm児
も、t児 に対 して伝 えたい こ とが あ る、または、t児 か ら何 かを言 われ るこ とを待 ってい るのか も しれ ないが、や は り言葉 にす る術 がないのだろ う。S児
は間に入 り、 園服 を元 の状態 に直す ことで、t児 の不満 を解 消 した。被 害者 が加 害者 に訪寸罪 を要求 してい ない場合 、加害者が与 えた損害 を修復す ることでい ざこざが終結す ることがある。S児
が加 害場面の際 に修復行動 を予測す ることは、まず相手 に与 えた損害 に対 して対応す るべ きだ、 とい う認識 がある可能′性があ る。(2)5歳
児のみ謝罪行動 を選択 している幼児1)Y児
Y児
は、4歳
児 では 「不明」、5歳
児 で は条件2の
み 「修復」を予測 し、条件 1と3で
は 「不明」を予測 していた幼児であった。事例5は
、4歳
児 の 11月 に起 こった事例 で、訪1罪 行動 を取 つた事例 である。 事例5
謝罪行動 を行 った事例保 育室で
A児
、U児
、Y児
が朝の準備 を してい る。A児
は黙 々 と準備 を してい るが、U児
とY児
は準備物 をカバ ンか ら出 しなが らも、お喋 りを した り、お互いの体 を軽 く押 した りしなが ら遊んでいる。 その時、U児
のパ ンチを避 けたY児
がA児
とぶつ か る。A
児 は少 しよろけてか ら、「準備せ んなあかんねんで」 と告 げ る。U児
とY児
はA児
の方 を見てい るが、何 も言わない。A児
が、「そんなん しとった ら、Zく んになっちゃ うで !」と言 うと自分の棚 に戻 り、準備 を再開 した。
Y児
はA児
やU児
を見 ていたが、「ごめん」 と言 うと準備 に戻 り、以後 は遊ぶ ことな く準備 を進 めた。U児
は何 も言わなかったが、Y
児 が準備 に戻 る様子 を眺 めてか ら、準備 に戻 つた。 そ の後、A児
は何 も言わず に準備 に 戻 つた。 事例5は
、偶発的 な加 害場面 である。 しか し、被害者 であるA児
は 自分が受 けた身体的 被 害 を訴 えるのではな く、U児
とY児
に今何 をすべ きか とい うことを教 えてい る。しか し、U児
とY児
の反応か ら、十分に伝 わ らなかった と感 じたのか、同 じクラスのZ児
の名前 を 出 した。Z児
は普段 の園生活で保育の最 中にふ ざけた り、外 に飛び出 して遊んだ りす るため に、保育者 に注意 を され ることが多い。おそ らくA児
は、U児
とY児
が いけない ことを し てい る、とい うことを暗 に伝 えたかったのだろ う。その発言を受 けて、Y児
は 自分 の行動が い けない ことだ と気付 き、悪い ことを してい るこ とに対 して謝罪 をすべ きだ と感 じて、謝 罪行動 に至 った ので はないだ ろ うか。 この よ うに、謝罪行動 に関す る認識 が曖味である場 合 には、他者 か らの関与に よって謝罪 が 引き起 こされ る こともあ る。(3)謝
罪行動 を予測 して いな い幼児1)N児
N児
は、謝罪行 動 を予測 しなかった幼児であった。5歳
児では全 条件 を通 して 「不明」を予測 していた。 で、謝罪行動 を取 つた事例 である。4歳
児 では全 条件 を通 して「その他 」、 事例6は
、4歳
児 の 7月 に起 きた事例 事例6
謝罪行動 を行 った事 例 IJIで机 に座 り、給食 を食 べ てい る。 そ の 日の給食 はカ レー で、デ ザー トに冷凍みかんが ついてい る。N児
はみかんが嫌いなため、N児
のお盆には冷凍みかんは乗 つていない。冷 凍みかんは時間 の経過 につれ て溶 け始 め、次第 に周 りに水 がたまって きた。N児
はそのみ ず たま りに興味を示 した よ うで、観 察者 のお盆 をち らち らと見て きた り、「ここ (水が)た
まってる!」 と指 さしを した りしてい る。 相づ ちを打 ち、給食 を食べ進 めてい る と、N児
がカ レー のついたスプー ンで、水たま り を混ぜ始 めた。N児
は笑顔 である。観察者が眉 を下げて 「Nく
ん、先生それ はいやだなぁ」 とい うと、N児
は手 を とめて観察者 の方 を じっ と見つめていた。観察者 が も う一度 、「それ は、先生 された ら嫌だな ぁ」 とい うと、N児
は 「ごめんな さい」 と言い、給食 を食べ るこ とを再開 した。 0 4事例
6は
、悪意 の有無 は定かで はない が、意図的 な加 害場面である。N児
は実験 では謝 罪行動 を予測 していなか ったた め、 どの よ うな場合 に謝罪行動 を行 うべ きか とい う認識 が まだ明確 ではない可能性がある。しか し、被害者 の不満 を理解す る と、N児
は被害者 に対 して謝罪行動 を とり、加害行動 をや めることができた。 事例6で
はN児
の行動 に不満があ る とい うこ とを、被 害者 は、直接的 な表現 でN児
に告 げている。実験 にお ける条件2で
は、 表情や言葉 か ら被 害者 が不満 を もつてい る とい うこ とを察す る こ とは可能 で あった が、直 接 的 な表現 で伝 えてはいなかった。N児
は、相手が嫌がつていた ら謝 る、 とい う謝罪認識 を持 ってい る可能性 が ある。 この よ うに、幼児 の謝罪行動の認識 は個人差が大きい。 よって、謝罪行動 の認識 を検討 す るためには、知識 や経験 と しての謝罪 行動 の認識 を問 うた めの実験 と、実際 の訪ま罪行動 の事例の両面か ら検討 してい くことが大切であ ると考える。 22Ⅳ