不登校経験を持つ成人が語る不登校の理由と意味づけに関する研究
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(2) の理由をあげ、それらは本人に起因する要因と家族や. その次の主体的な行動を起こすことにつながったこと. 学校などの環境による要因カ灌雑に相互に関連しなが. である。どの協力者も不登校当時に学校に行かなくても. ら語られた。. よいとしていたわけではない。しかし、強制することに. 不登校の理由のなかで、明確には語られにくかった. はすべての協力者が抵抗感を持っていた。. 要因は、がんばり過ぎによる心的エネルギーの低下で. 第二の共通した語りは、ポジティブに意味づけてきた. あった。この要因は、周囲との違和感があるから、自. 理由として、時間・年齢の要因が語られたことである。. 分を適応させるために心的エネルギーを消費してしま. ゆったりとした時間の流れが不登校にまつわる苦痛を. うと考えられるため、同世代との違和感や自己肯定感. 癒したと考えられた。記憶をなくしていたり、起こった. の少なさの要因の万カ濾識されやすく、これら三要因. 事実については覚えているのに、感情を覚えてないとい. は密接に関連したり、重複していると考えられた。. う語りは、内的時間が止まってしまっていたと理解され. 本研究では、学校に行かないという現象は、本人の. た。藤岡(2005)は、不登校状態にある子どもたちは、「ソ. 特性と家庭、学校、地域社会などの環境要因榊難に. フトな解離、緩やかな解離が起きているのかもしれな. 絡み、それらの相互作用によって生じていることがわ. い」としている。無理して学校に行けば「もしかしたら. かった。不登校を理解する上で、不登校の直接のきっ. 死んでいたかもしれない」という協力者の語りは、家族. かけや学校に行かない顕在的な理由を明確にすること. から受けた心的外傷を鰯佳によって嚇卸していたり、引. よりも、そのように感じる自分の在り方を見出すこと. きこもることで自分を守っていたと考えられた。. の重要性が示唆された。. これらのことから、不登校後の成功体験が肯定的評価. 3.2不登校の影響・意味づけについての分析と考察. をもたらしたのではなく、不登校によって自分らしさを. 協力者22名の不登校についての影響や意味づけに. 保てたからその後の体験を肯定的に評価できることに. 関する語りを抽出した。さらに7名の複数回インタビ. つながったと考えられた。. ュー協力者について、どのような出来事を話題にし、. 4 総合考察. どのような言葉で語り、どのような感情があったのか、. 本研究では、不登校の理由と意味づけを明らかにす. (あるレ)は語りの場面で感情が生じたのか)を語りの. るという二つの研究目的を掲げたが、これらは互いに. 流れのなかで明らかにするために、語りのシークェン. 関連しながら変化し、綱ヒしていくと考えられた。す. スをフローチャート化した。. なわち、不登校に苦しんだ協力者がなぜ不登校になっ. 協力者は、不登校の後、さまざまな体験を通してマイ. たのか、不登校経験はどういう意味があったのかを振. ナスに感じていた不登校の経験をプラス、あるいはマイ. り返るなかで、その経験を肯定的に意味づけ、生きる. ナスでないものへとその意味づけを変容させていた。進. 力に変換しようとする自然治癒力を持っていることが. 学先の高校や就労先、ボランティアでの経験、結婚と育. 明らかになった。. 児、語りの体験などによって自己概念を明確化したり、. 不登校児に関わる大人は、こうした彼らの心のメカ. ポジティブに変化させており、それぞれが年齢とともに. ニズムとプロセスを理解した上で、子どもがゆったり. その度合いを増加させていた。. と心の傷を癒したり、それぞれのぺ一スで心の成長を. 不登校したことの意味について、協力者の語りに共通. 育める関係をつくったり、そうしたシステムやサービ. していたのは、第一に、学校に行かないことで他の人に. スを提供していくことが望まれる。. 無理して合わせることなく自分らしさを守り、自宅で. 主任指導教員 (辻河 昌登). (あるいは、自分の部屋で)ゆっくり過ごせたことが、. 指導教員 (辻河 昌登). 一127一.
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