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不登校経験を持つ成人が語る不登校の理由と意味づけに関する研究

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Academic year: 2021

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(1)不登校経験を持つ成人が語る不登校の理由と意味づけに関する研究. 専攻学校教育学専攻 コース 臨床心理学コース. 学籍番号M09062B 氏名  田中博之. 1 問題と目的. 頼した。承諾が得られ、調査を実施した者22名は、.  文盲断斗学省(2009)の調査によると、小・中学校で病. いずれも20歳イ切、30歳代前半の成人であり、男性11. 気や経済的な理由を除く「何らかの心理的、情緒的、. 名、女性11名であった。. 身体的あるいは社会的要因・背景により」30日以上欠. 2.2手続き. 席した児童生徒数は12万人以上に上る。不登校の問.  第一に、22名の協力者に対して個別に60分程度の. 題に対し、これまでさまざまな研究がなされ、文音附. 半構造化面接を行った。調査に関連して、筆者自身の. 学省や教育機関等で対策がなされてきた。適応指導教. 娘が中学2年生で不登校であり、不登校生徒を担当し. 室・教育支援センターの設置やスクールカウンセラー. てきた高校教員であることなどを説明した。面接はす. の配置、教員の研修と指導体制の充実等が推進されて. べてICレコーダーに言哉乗した。質問内容は不登校. きたが、数値の上で不登校児童生徒数とその割合は減. になった時期から現在までの状況、学校に行かなかっ. 少していない。. た理由、学校に行っていなかった時の親や教師の対応.  そこで、「学校に行くべきである」という価値観を離. と自分の希望、不登校経験がその後の人生に与えた影. れ、不登校は当該子どもにとってどういう意味がある. 響と意味などであるが、できるだけ自由に語ってもら. のかを問い直してみる必要があると筆者は考えた。本. えるよう配慮した。. 研究では、ナラティブ・アプローチの枠組みを用いる.  第二に、22名の協力者のうち、不登校の意味につい. ことによって、不登校経験者がなぜ学校に行けなくな. て肯定的に評価している者と否定的に評価している者、. ったのか、行かなくなったのかを当事者の視点で明ら. 評伝の定まらない者、自分を見つめたいという理由で. かにするとともに、成人した現在は不登校経験をどの. 自ら協力を申し出た者7名に対し、それぞれ60分程. ように捉え、自分の人生の中で意味づけているのか、. 度の非構造化面接をさらに2回(1名の者のみ1回). 面接者と調査協力者の相互関係の中でその語りが形成. 行った。. .されることに有効性があると考えた。語りを分析する. 3 結果と考察. ことにより、不登校}瞳生徒に関わる親や教育関係者. 3.1不登校の理由・要因の分析と考察. を初めとする大人は、子どもの人生における不登校を.  22名の録音された内容をすべて逐語言哉剥ヒした。こ. どのように理解し、支援していけばよいのかを考察す. れを精読した後質問項目ごとに協力者の語りを抽出. ることを本研究の主要な目的とした。. し、不登校の理由を分析した結果、不登校の理由を9. 2 方法. 要因に分類した。. 2,1研究協力者(以下、協力者とする).  第1回のインタビュー調査で単独の理由をあげた者.  成人の不登校経験者43名に面接調査への協力を依. は4名であり、他の18名については、複数の不登校. 126一.

(2) の理由をあげ、それらは本人に起因する要因と家族や. その次の主体的な行動を起こすことにつながったこと. 学校などの環境による要因カ灌雑に相互に関連しなが. である。どの協力者も不登校当時に学校に行かなくても. ら語られた。. よいとしていたわけではない。しかし、強制することに.  不登校の理由のなかで、明確には語られにくかった. はすべての協力者が抵抗感を持っていた。. 要因は、がんばり過ぎによる心的エネルギーの低下で.  第二の共通した語りは、ポジティブに意味づけてきた. あった。この要因は、周囲との違和感があるから、自. 理由として、時間・年齢の要因が語られたことである。. 分を適応させるために心的エネルギーを消費してしま. ゆったりとした時間の流れが不登校にまつわる苦痛を. うと考えられるため、同世代との違和感や自己肯定感. 癒したと考えられた。記憶をなくしていたり、起こった. の少なさの要因の万カ濾識されやすく、これら三要因. 事実については覚えているのに、感情を覚えてないとい. は密接に関連したり、重複していると考えられた。. う語りは、内的時間が止まってしまっていたと理解され. 本研究では、学校に行かないという現象は、本人の. た。藤岡(2005)は、不登校状態にある子どもたちは、「ソ. 特性と家庭、学校、地域社会などの環境要因榊難に. フトな解離、緩やかな解離が起きているのかもしれな. 絡み、それらの相互作用によって生じていることがわ. い」としている。無理して学校に行けば「もしかしたら. かった。不登校を理解する上で、不登校の直接のきっ. 死んでいたかもしれない」という協力者の語りは、家族. かけや学校に行かない顕在的な理由を明確にすること. から受けた心的外傷を鰯佳によって嚇卸していたり、引. よりも、そのように感じる自分の在り方を見出すこと. きこもることで自分を守っていたと考えられた。. の重要性が示唆された。.  これらのことから、不登校後の成功体験が肯定的評価. 3.2不登校の影響・意味づけについての分析と考察. をもたらしたのではなく、不登校によって自分らしさを.  協力者22名の不登校についての影響や意味づけに. 保てたからその後の体験を肯定的に評価できることに. 関する語りを抽出した。さらに7名の複数回インタビ. つながったと考えられた。. ュー協力者について、どのような出来事を話題にし、. 4 総合考察. どのような言葉で語り、どのような感情があったのか、.  本研究では、不登校の理由と意味づけを明らかにす. (あるレ)は語りの場面で感情が生じたのか)を語りの. るという二つの研究目的を掲げたが、これらは互いに. 流れのなかで明らかにするために、語りのシークェン. 関連しながら変化し、綱ヒしていくと考えられた。す. スをフローチャート化した。. なわち、不登校に苦しんだ協力者がなぜ不登校になっ.  協力者は、不登校の後、さまざまな体験を通してマイ. たのか、不登校経験はどういう意味があったのかを振. ナスに感じていた不登校の経験をプラス、あるいはマイ. り返るなかで、その経験を肯定的に意味づけ、生きる. ナスでないものへとその意味づけを変容させていた。進. 力に変換しようとする自然治癒力を持っていることが. 学先の高校や就労先、ボランティアでの経験、結婚と育. 明らかになった。. 児、語りの体験などによって自己概念を明確化したり、.  不登校児に関わる大人は、こうした彼らの心のメカ. ポジティブに変化させており、それぞれが年齢とともに. ニズムとプロセスを理解した上で、子どもがゆったり. その度合いを増加させていた。. と心の傷を癒したり、それぞれのぺ一スで心の成長を.  不登校したことの意味について、協力者の語りに共通. 育める関係をつくったり、そうしたシステムやサービ. していたのは、第一に、学校に行かないことで他の人に. スを提供していくことが望まれる。. 無理して合わせることなく自分らしさを守り、自宅で.       主任指導教員  (辻河 昌登). (あるいは、自分の部屋で)ゆっくり過ごせたことが、.       指導教員  (辻河 昌登). 一127一.

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