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「授業づくり」の諸次元

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「授業づくり」の諸次元. Author(s). 安藤, 豊. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 40(2): 87-101. Issue Date. 1990-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5119. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第40 巻 第2号 ionIC) Vo l i ido Un iver i lofHokka t ty ofEducat Journa on(Sec s .2 .40 ,No. 平成2年3月 M [ ar ch ,1990. 「授業 づくり」 の諸次元. 安. 藤. 豊. は じ め に. 社会科における 「授業づくり」 は, どの教科 でもそれなりにそうだが, ある特性をもっている. それは, 指導要領などを意識した場合における内容論レベ ルにおける 大枠 での制約はあるものの, (意識しなぃ場合はょり一層) 教材論レベ ルにおける自由度が比較的高い, ということである. つまり, 社会科 では, いわゆる 「地域学習」 などに代表的に見られる様に, 形の上では, そこ で 取り上げるべき素材の選択の裁量が大幅に教師に委ねられている. そのため, 指導要領や教科書によって指定された素材 (私は, のちに述べる様に「素材」と「教材」を区 別している) , 与えられた素材を直接教材化するのではなく, 素材そのものをも(一定の制限があるとは言 1 } え) 教師目から選択し授業をつく らなければならないという特性をもつ( . こ の こ と か ら, とく に, 社 会 科 では, 「授 業づ く り」の プ ロ セ ス に つ い て, 教 師 が あ る.モ デ ル を 保. 持することが要請さ れていると言うことができる.. 1 ・4単位として開講) の 「講義」 で, 数年前から行っ 本稿の主な目的は, 社会科教育法 (社会科教育1 「 ている学生自身による 授業づくり」 の実践報告である. ・課題に挑戦 0程の班に分け, 班ごとに 「1時間の授業をつくる」 という この 「講義」 は, 学生を1 してもらうことに している. そして‘ 授業テーマの選定からはじまって, 教材づくり, 授業プラン 50分) の模擬授業 (受講生を対象とした) 作成, 一時間 ( , 修正授業 プラ ンの作成までの全過程を学生 の自主性に委ねる形で進めている. それは, 先に触れたような社会科の特性を考えれば, 少しでも授業づくりの経験を与えることが 必要であると考えるからである. 自主性にまかせるといっても, 当然だが, まったく不干渉ということではない. 授業づくりの過 程で, 最低1回は討論することにしている. 討論の中味は, 主に教材づくりに関してだが, 模擬授 業ま でもちこむわけだから当然にも, 授業づくり全般に及ぶ. また, ただ模然と授業をつくるよう指示しても学生は考えようがないのだから, 当然にも,「授業 づくり」 の プロセスについて手続的知識をあらかじめ与えなければならない. このように して学生に与えて来たア ドバイスが, 全体として, 「授業づくり」で最低限意識するべ きポイントになっているのではないかと思われて来た. そこ で, 本稿では, このようなささやかな教育経験の報告を通して, 「授業づくり」の プロセスに 関するモデル形成のための初歩的知見をまとめておこうと考える. もとより, 実際の授業は, 授業観や授業構想の持ち方によ って 多様な成立の仕方をする. したがっ て, 後に述べるようなシェ マの適応範囲は自ずから限界があることは, あらかじめ明らか である. なお, 学生は, 次のような大筋に沿って, 作業を進めるよう懲悪している. 1. テーマ設定 87. . . .・ ●, . 1. ・ 1 . ・ . ・ . ・ :● ’ ● ’ ● . ・ ’ 1 1 ・ ・ r ・ 」 ’ ・ ..・ .. ・1 ,.・. : . : ● . ・ . ・ . ・ ・. . ・1 1 ・ 1 .・. . ・1 1 1 . ・●1 .・. ● ● ●. ●● :,.● 1 ,. 1 . ●● ● 1 . ・・ 、J ・1 ・ ー. . .

(3) . . . 安. 豊. 藤. 1 1 . テーマに関する内容研究 1 1 1 . 教材づくりと授業案作成 . IV. 模 擬 授 業 (含, 授業実施グループによる授業記録作成). V. 修正 (最終) 授業プラン作成. 1. 「授 業 づく り」 の ス テ ッ プ. もぎ¥三 豊髪トデの手順に従って進め. 1. プ. 1雷. マ. テ. 墾 議 塞 墓 参 国国軍 題 一 ; 個. 順 次 述べ て いく よ う に,「授 業 づ く り」の 過 程 は,. 昇り・. 教. 材. 1教 材--ギ謝ー ー 曇 i驚喜≦要三澱合議三室1 ・ だ か ら 階 段 を 登 る 様 に 一 段 ÷ 段 課 題 を・ る. , ,. こなして行けば, 自然に授業 プラン作成に到達. - -- ----- - - -- - ------- -- - -}・- - --- -- -- -- -”- -- -材. モ. iー. ス ト 【 リ ー づ く り. す る と 言 う も の で は な い の で あ る. 当 然 の こ と. 1. 目 標. て, 同 時 に, 「目 標」 や 「教 材」 を 考 え ざる を 得 な い (音が共鳴するように) よ う に, 常 に 全 体 を 視. 1. 授 業. である. 「発問」を考える時, それが音源になっ ,‐ 1. 野に 入れながら, ある部分 に ス ポ ッ ト . ラ イ ト を あ て て い る. こ の よ う な 複 合 的 な 過 程 を 「授 業 づ く り」 は 「 も う て い る. だ か ら, , ス テ ッ プ」と い う 用 語 が. ・. の り セ. ト. ・↓ プ ラ ン 作 成. “ ー. 総. r成. 1. * L. ( 模 擬) 授 業 実 施. 」. 「授業 づく り」 のステ ッ プ・モ デル. 適切かどうかわからない. とりあえず, この用語を使う. しかし, 一方, 複合的過程である, と言明 しただけ では, 「授業づくり」という実践的課題にとり くむ契機を与えることは出来ない. 人が 「授業づくり」 に取りくむ動機はさま ざまであるが, それが具体的行動に移行する 契機は, 教えようと考える課題(テーマ) の決定が意識されたとき であろう. その意味では,.とりあえず, モ デルに示した手順に従って作業を進めていく 必要がある. その限り では,「ステッ プ」という用語は, それなりに意味をもっているといえよう. 次に, こ の モ デ ル が 依 拠 し て い る 「授 業 構 想」 (授業観といっても良いであろう)に つ い て 触 れ て お く.. ここで「授業構想」とは, 「……授業を構 想するにあたっ て, 授業とはそもそも何が行なわれる場 2 { }であ であるとみなしているの……か. そのような, 教師の授業についての基本的な観念のあり方」 る .. ・. ′. L.. ● 、. 藤岡信勝氏によれば, 「授業構想」には三つのモデル(類型)があるとされ, それぞれ次のような指 標 (目じるし) で区別されるという.. 88.

(4) . 「授業づくり」 の諸次元 授業構想の型. 問題提起者. 学習結果のチェック. 伝達志向. 教. 師. す. 触発志向. 教. 師. し. な. い. 追究志向. 子. も. し. な. い. ど. る. 4 ( } 「触発型 の典型は 有田和正 「追究型」 の 「授業構想」 の典型は 築地久子氏(静岡市安東小) 」 , , ,. 5 ) であ る とさ れ る 氏 の 授 業( .. そして, 我々 が, ごく一般に抱いている授業観は, 「伝達型」 とされるそれである. ところ で, 授業とは, 知識を伝達すること である, とする 「伝達型」 の授業観が- 固定観念とい えるほ ど普及した理由は何か. 多少, 横道にそれる話題であるが重要なことであるので触れておこ う .. ‐. -. 6 ) こ の こ と に つ い て, 遠 藤 豊 氏 は, 次 の よ う に 説明 し て い る( . 教育は一定の知識や技術を子どもに伝達するものである, という発想は, 日本の学校教育のなかでは伝統的に引 き継がれてきた考え方 です. 日本の学校教育は成立のいきさつからすでにそういう不幸な事情を背負ってきていて,ひとりひとりの子どもを 人間らしい人間として育てるということがまともに教育の目的として見られたことはほとんどなかった . つまり, 一方では国家社会に有用な人間であるとか, 経済の発展に役立つ人間をどうつくるとかいう観点があ り, 他方からは日本の社会改革を担っていく人間をどうつくるかといった, それぞれの立場からの発想でしか教 育をとらえてこなかったといってよいでしょう. 官であるとか民であるとか, あるいは左であるとさ右であると かの立場で, それぞれ教育に対して綱引きをして来たわけです.. つまり, よく知られているよう に, この国の近代教育は, 欧米文明の効率の良い受容を目的とし て出発した. そのような長い伝統が, 授業といえば知識を伝達す ることという授業観を普及させ , それの裏表の関係で, 子どもたち(学習者)に 「…… 多くの個別的手続的知識の記憶こそ重要であ る , 知識は大人から伝達されるもので, 自分はこれをお ぼえて適用さえすればよい, といっ た知識観(メ 7 ( )を発達させて来たの である タ認知的学習観-引用者-)」 . d i 教 育 (e ucaton) と は 本 来, 子どもから引き出す ( t ) ことである. 敗戦直後の指導要領 educa e 8 ) 今日 このよう な言明 は ヒ ーマニ ステ は, こ の こ と を 「学 ぶ の は 児 童 であ る」と 表 現 し た( ュ ィ , . ,. クな空想的観念としてあるの ではない. 子 ども が あ る こ と を 学 ぶ と い う.こ と は, あ る 知 識(あるいは, 概念.技能といってもよいが) を 得 る とし・. うことであるが, その際, 子どもは, 主体的に, 自ら, 知識を成長させ, あるいは再構成して いる 9 } ことが, 近年の心理学的・哲学的諸研究 で明らかにされて来ているのであ. る{ . l o ) この意味で, 今日, 教育理論は, 戦後初期のそれに 回帰したといい得るのである( . 知識を伝達するという つまり, ことは, 本質的に不可能なのである. 我々は, 我々 の与えた知識 (情報) にもとつぎ, 子どもが自力で頭の中に創り出した 「知識」 をもって 「伝達した」 と見なして い るに す ぎな いの であ る. n ( }ま た は「概 念 モ デ ル { 1 2 ) こ う して, 「教 え る」と い う こ と は, 子 ども の 頭 の 中 に, あ る「解 釈 内 容」 」. をつく ってやることである. それらは, 子どもが自ら, 主体的 創造的に つくるしかないのである , . そして, 先に記した 「触発型」 「追究型」 の 「授業構想」 の根底には, このような知識観の転換が 作用していると解釈できるのである. このような見地から授業を考えると, 授業とは, 何かを教える場ではなく 子どもの知識形成を , 援助する場であると いえよう. そのことを, 授業におけ る子どもの状態のあり方にそく して平たく 89.

(5) . 安 ‐藤. 豊. 1 3 ( )と い う こ と で あ る い え ば, 「考 え る」 . だ か ら, 「授業づくり」 にあたって, 授業者は, 最低限次のことを自覚する べきであると考える.. ものを 「教える」 営み ではなく, 子どもの思考を触発し, 「考える」 状態をつくる営. 本題にも どろう, 本節冒頭に示したモデル図が, どのようなタイ プの 「授業構想」 モデルにもとづいて発想さ れて い る か, と いう こ と で あ っ た.. それは, す でに 述べて来たことから明らかなように, 大枠としては 「伝達型」 に分類される. では, なぜ, 授業としては必ずしも望ましくない 「伝達型」 で発想したか. 理由は, 簡単である. 授業経験のない学生にとっては, 考え易いと判断するからである. 「触発型」 や 「追究型」 は名 人芸 といわれるベ テラン教師が実施している授業タイ プ である. このタイ プの授業を成立させている授 業技術は, 今のところ再現可能なところまで解明されたとは言えない. 名 人 「芸」 のうちにかく れ て見えない. だから, このタイ プの授業を (教職経験者といえども) 再現することは困難を窮める. だ から授業未経験者 (学生) には無理である. だから 「伝達型」 である. しか し, こ の こ と は, 先 に 行 っ た 授 業に つ い て の 言 明 を 捨て 去 る と い う こ と では な い.. では, どのような発想にもとづいているか. 私は, 吉本均氏の以下の言明が, このモデル図の 発想を最も適確に説明してくれていると考えて 1 4 ) い る( .. 教師は教えねばならないものをもたなくてはならない. ……そのことなしに授業というものは始まらない. 授 業というものは, 教えねばならないもの=教科内容を前提とし, それを次の世代に伝え, 習得させることで新し い学力と人格を発達させることを特別の任務として成立するものだからである. …… しかし, 教師は教えねばならないものを教えてはならない. それを子どもたちの学びたいもの, 追求したいも のに転化し, 発展させていかなくてはならないのである. 甲…つまり, 教えるという行動はそれ自身のためにあ るのではなく, 相手のなかに何らかの反応, 応答を, 強制的にではなく, 能動的に呼びおこすことを目的として い る も の だ か ら であ る.. こ の 発 想 は, あ え て い え ば, 「ゆ る や か な伝 達 型」と で も い っ て お こ う. も っ と も, こ の 発 想 の ゆ. くえには, 「触発型」 「追究型」 も包含できるのだが. 以上述べて 来たことから, 「授業づくり」にあたって, 前提的に, 次の諸点を自覚することが要 求 されよう. ① 教えねばならないもの (目標) を明確に自覚すること. 「 ● ② 目標を子どもから引き出すこと. それを可能にするの が「教材づくり」 , 発問づくり」 (教授 行動) である. ③ 目標を子どもから引き出せ ない場合, その原因は, 教材, 発問にあると考えるべきこと。 な ど であ る.. 以上のことを前提として, 以下, ステ ッ プ・モデル図にそ って, 「授業づくり」 の実際について 述 べ て いく こ と に す る.. 90.

(6) 「授業づくり」 の諸次元. 2, 教育内容研究 テーマが設定されると, それにかかわる情報収集が行なわれる. その情報収集を教育内容研究(以 下単に内容研究) とよ ぶ.. テーマは, 自由に設定されて良い. なぜならば, 社会科の内容論 (教えるべきもの) では, ある ・事象・概念を教えようと考えても それを教えることが不可避的に必要であるとか, 逆に, それを , 教えるのは決定的に誤りであるとか立論できるものはほとんどないとい ってよいからである. 社会科は, 本来, 国語や算数・数学のように, 教えるべき一定の内容が先に決められて設けられ た教科ではなく, 教育方法の枠組が先行して設けられた教科 である. このように方法によ って規定 される教科を 「方法教科」 とよぶ. だから, 内容論的には, 本来フリーであったといってよいのである. もっとも, 現状 では, 指導 要領・教科書で内容的に大枠がかけられているのも事実である. しかし, 「授業づくり」 が本来教師の主体性に属する営みであることを経験する意味でも, また, 主体性が重視されるからこそ自らの抱いた問題意識 (テーマ) にもとづいて進めるのが意欲的なと りくみを生み出すことにつながるという意味でも, 学生の自主的判断にまかせることに している.. 「テーマ設定の理由一 及び 「第1次文献目録」 を含むレポート提出) 1 98 9年) では, 次 の よ う な テ ー マ ( 今年 (. が寄せられた. 「北海道のアイヌ語地名」「日本人のなかのアイヌ人」「企業は売るためにどんな工夫をしているか -- 現代の 企業における生存競争について考える --」「元号って何だろう」「臓器移植は命を延ばす」「小売店とスーパー マーケットの違い -- 肉の販売から考える --」「環境破壊のその一端 -- フロンガスによるオゾン層の破 壊」「石狩川の水銀による汚染 -- 旭橋の下を見たことある ? --」「北海道の開拓 -- 石炭と鉄道 --」「紙 のリサイクル」「戦争と平和 -- 今日の世界と日本を考える」「よみがえれ/弥生人」 .. 以上のような考え方で, 班討議(各班毎に講義時間外に適時行う)を経て, テーマが設定されたら, そ のテーマにかかれる内容研究にとりくむことになる. ここで「内容」 とは, 「教材」 と区別して, 大枠(基本的)の考え方として, 次のように把握される. ……教育内容……は,……人類の歴史的な実践のなかでたくわえられた経験やその一般化としての科学的概念 や法則の体系(=現代科学や技術の体系) として客観的に確定されるもの……である. したがって教育内容は, 現代科学のもっとも一般的・基本的概念や法則をもって構成しなければならない. そして教材は, このような教 育内容を正確にになう実体として, 子どもの認識活動の直接的な対象であり, 科学的概念や法則の確実な習得を 1 5 ) 保障するために必要な材料 (事実, 資料, 教具など) として位置づけられるのである( .. 上の論述は, 自然科学教育に傾斜のかかった「教育内容-教材」規定であるが, 要するに, 「内容」 とは, テーマにかかわる当該専門分野の学問内容そのものを指すの である. したがって, 内容研究のステッ プで行なわ れる作業の基本的内容は, 次のよう である. ① ② ③ ④. 設定されたテーマが, どのような専門分野に関連しているか調査する. ①にもとづき, 関連文献を調査し, 文献目録を作成する. 文献を読みすすめ, テーマに関する情報収集に努める. テーマによっては,文献による情報収集ばかりではなく, 新聞・週刊誌,実物調査,フィ ー. ルドワークも積極的に計画する. ⑤ この一連の作業の目的は, ③, 当該テーマに関する 「ひとまとまりの知識」 を各自が頭 の中につくる ◎ 「教材」 としてつかえそうな情報を集める, である. 91. ・ 11 .. . . ・ ●1 .● .・. . ●・ 1 ● .1 . ・ ・ . 1 . 1 ’ 1 r .・1. ・ 1 1 . ●● ● .・ ●.● ・ ●● ● ● . ●● . ・ . : ● 11 .1 . ・ ..●. ● ● ● ・ ● ・1 . 1・ r . ● 」 ・1 . ・ ー. . .

(7) . 安 藤. 豊. ①の作業は, たとえば, 次のようなことである. 「鯨 と 日 本 人」 ( 19 8 7年のテーマ) を例 に 考 え て み よ う.. 0年代の初頭 以降問題となっ た国際的な反捕鯨運動とIWC による捕鯨禁止条 この テーマは, 197 例の批准を契機としてクローズアッ プされた捕鯨問題をとりあげたもの である. こ の 場 合, 授 業 に お け る 内 容 目 標 (その授業で何を教えるか, という目標) は さ て お き, た と え ば, 次. のような諸分野に目配りする必要が生じてこよう. まず, クジラそのものについての生態学や漁業学に関する情報, 捕鯨の歴史, クジラに関する文 含む, 化 史(文化人類学, 食物史, 民俗学など) , また反捕鯨運動は, 資源保護の実態に対する誤解を うに狩り出した社会心理についても 一種異常な様相を示したのだが, 捕鯨に反対する人々をそのよ・ ・ 調査・研究することが必要であろう. このように, ①は, 当該テーマに関する情報が, どのような学問分野 (範囲) にちらばっている のかを見定める作 業である. 以上のように, 調査対象分野を見定めながら文献目録をつくる. 文献は, 入手可能かどうか, 読 了可能か どうかにかか わりなく, なるべく広範囲にリス トア ッ プする. 各種の文献目録を利用する とともに, 文献を読みすすむことが, リストを豊富にする近道であることに留意すること が必要で あ る.. こう した作業をすすめる目的は, ⑤に示した通りである. ここ で, ③の意味は自明 であろう. ⑩について説明する. ス テ ッ プ・ モ デ ル で, 「エ ピ ソ ー ド」 と い っ て い る の が ◎ の 作 業 内 容 で あ る.. この作業は, 内容研究をすすめる過程で, 次のような視点で, 必要と思われた情報を適宜収集 す る こ と であ る.. ① ②. 自分にと・っておもしろいと 思えた情報. これは, ぜひ, 子どもに伝えたいと思えたイン パクトの ある情報.. これには, 二つの 意味がある. 5分見 一 つは, ①~④ま での作業 (研究) の結果, 「内容研究」 として提出さ れるレ ポート (各班4 うな, 例えて言えば, 骨と筋だけの, 抽象 当で発表してもらう)は, 応々にして, 百科事典の項目のよ, 的専門用語の羅列になる場合が 多い. これでは, 教材づくりに役 立たないばかりではなく, 当該テー マに関する生き生くとしたまとまりのある知識を 各自が形成するためには, かえって有害である. ● もう一つは, 最初から, 授業で使えそうな情報を探す, という視点をもって調査・研究に臨んだ 方が目的が明 確に自覚されやすく仕事 が進めやすいということである. こう して, 抜粋, あるいは要約された 「エピソー ド」 を例示しておこう. 1 98 7年) の農業関係予算二兆三千九百億円のうち, 交付金なども含む補助金は一兆五 (農業補助金は) 本年度 ( 実に六五%を占める 千五百億円と, . 国の一般会計の補助金比率は二六%だから, 二・五倍. これに地方公共団 二百億円を加えると 体の補助金九千 , その総額はざっと二兆五千億円前後に上る…… (農家) 一戸当り……百九 十二万円……補助事業の件数もざっと三百件. 農水省図書館に陳列されている 「農水省補助概要書」 は, 積み上 げ れ ば四、 五 十セ ン チに な る.. ・. 87・10・ 8) (「北海 道 新聞」‘. ……空知管内栗山町の勝部徳太郎さん(八三)は, 小麦農家では日本一の経営規模を一代で築き, 「東洋の小麦王」 と呼ばれる. ……「みんな補助金はもうけものと考えているようだが,(それをもらったら)堕落につながるんだ.」 ……年間粗収入はゆうに一億円を超える. 92.

(8) 「 授 業 づ く り 」 の 諸 次 元 こ れ だ け の 事 業 を, 補 助 金 な し で や り 遂 げ た. い や, 「 補 助 金 を も ら っ て た ろ う 」 と, 徳 太 郎 さ ん は 言 う. 農 業 基 盤 整 備 を 農 業 機 械 に は 情 ま ず 金 を 通 常 の 二 倍 の 能 力 と い う 重 装 備 . 「 農 水 省 は 過 剰 投 資 と み て 認 め な さ い 」. な る が 「 能 率 の 悪 い 方 に 右 な ら え す る か ら 嫌 い だ 」. 補 助 事 業 な ら 定 価 で 買 も 土 建 業 が ヒ マ な 時 期 に や れ ば 半 値 で す む.. ト ヨ タ 費 が ピ ー つ け た. (影 響) か し, 下. 自 動 車 が こ ク に な る 夏 ト ヨ タ の 場 信 号 は い つ 請 関 連 会 社. を や め て, い 契 約 を す る. (中 略) に も 礼 拝, ホ ン ダ の 部 品 も つ く っ て い る の. の 夏, 場 の 平 合, 今 も 平 日 は,. 土,. 日 曜 日 日 に 電 気 を 夏 は 五 億 円 用, 教 会 は. の 休 み 使 わ な 安 く な 金 曜 日. い た ら, こ つ ぎ 込 み, 補 助 事 業 で う 農 業 機 械 (「. こ 農 機 も 北 「. ま 業 械 四 海 北. で の 規 模 に な ら 機 械 は 経 営 面 積 を 入 れ る と 共 同 割 引 き だ し, 基 道 新 聞 」 ’8 7 ・ 1 0 海 道 の 農 業 」 ’8 7. な か っ の 割 に 利 用 と 盤 整 備 ・ 1 0) 年. 独 自 の カ レ ン ダ ー に 基 づ く 生 産 を は じ め た. … … 電 力 消 る と, 電 気 代 が 安 く な る と の 電 力 会 社 の 呼 び か け に 目 を ゴ ル フ は 平 日 料 金 ( 木 ・ 金) で, 水 道 使 用 料 平 均 化, し ( 「 朝 日 新 聞 」 ’8 7 ・ 7 ・ 2 6 ) で 休 み な し … …. 「『 円 高 』 と 私 た ち の く ら し 」 87 年. 0 大 塚 製 薬 ふ フ ァ イ ブ ミ ニ に 負 け じ お と ら じ と コ カ コ ー ラ で も せ ん い 飲 料 を 出 す そ う で あ る.. そ の 名 も 「 フ ァ イ. ピ ー 」.. 0 大 塚 社 内 で は フ ァ イ ブ ミ ニ の こ と を 「 フ ァ イ ビ ー 」 と 呼 ん で い る そ う だ. 0 あ た っ た と 思 っ た ら マ ネ す る こ と が 重 要. シ ェ ア の 大 き な 企 業 に と っ て マ ネ を す る と い う こ と は 重 要 な 意 味 が あ る . . ・ . . ・ ・ . 例 ; カ ネ ボ ウ ハ リ ス ガ ム の チ ュ ー イ ン グ ポ ン ポ ン と ロ ッ テ の チ ュ イ ン グ ポ ン .. (北 海 道 コ カ ・ コ ー ラ ボ ト リ ン グ 株 旭 川 工 場 で の 聞 き と り 調 査) 「 企 業 は 売 る た め に ど ん な 工 夫 を し て い る か 」 ’8 9 年. 0 弥 生 時 代 の 水 田 に は カ カ シ が 必 要 な か っ た. い ト ゲ が は え て い た .. 0 弥 生 時 代 の 村 と い う と, 戦 い は じ め た 時 代.. そ の 頃 の イ ネ に は 巴 (の ぎ) と い う 害 獣 を ふ せ ぐ 細 長. 平 和 な 農 村 生 活 を イ メ ー ジ し が ち だ が,. 「 内 容 研 究 」 と は ,. な お ,. な ぜ な ら,. 内 容 研 究 の ス テ ッ プ で,. 実 は,. こ の 時 代 は,. . 1 1 . ,. ◆ .. : 雫 ・. 1. . く : .. . . ’、. . ・ 1. 1 1 1. ・ 1・ -. ’ 1 1. .. e. 11 ,. 1 ●. . 、 . . ・. 1 1 . ・. ・ .. 1. 1. . 1 .. ﹈ - -. 「 エ ピ ソ ー ド 」 を あ つ め る こ と で あ 「 テ ー マ の 範 囲 」 を 意 識 し て ,. 授 業 で 教 え る べ き 目 標 (い わ ゆ る 「 本 時 の 目 標 」 と い わ れ る も の) が 強 く. を 直 接 意 識 し て す す め る こ と に な る.. 「 目 標 」 (= 内 容) は す る こ と に よ っ て, 「 目 , 命 題 の 形 式 で 表 現 し て み る こ と が 重 要 で あ る. そ う 標 」 が 明 確 に 自 覚 で き る よ う に な る. ( こ こ で 「 命 題 」 と は, と り あ え ず, 「 主 語 と 述 語 を 含 む 断 定 文 」 と 定 義 し て お く 明 こ の よ う に す す め た 例 を 紹 介 し て お こ う. ’8 8 年 に あ る 班 が 「 旭 川 市 の 町 づ く り を 通 し て, 自 分 達 が 住 ん で い る 地 域 に 興 味 ・ 関 心 を 抱 か せ , る 」 と い う テ ー マ を 設 定 し た. そ し て, こ の 班 の 学 生 は, 旭 川 市 の 歴 史, 市 街 地 形 成 の 変 遷 , 建 物 の 変 遷 , な ど に つ い て 調 査 し, 一 定 の エ ピ ソ ー ド を 集 め た. 私 は, 「 興 味 ・ 関 心 」 と い う 到 達 目 標 の 不 明 瞭 な 「 目 標 」 は 「 目 標 」. -. 人 々 が 初 め て 武 器 を も ち. (甲 元 真 之 「 弥 生 時 代 の 基 礎 知 識 」 東 京 美 術) 「 よ み が え れ 弥 生 人 / 」 ’8 9 年. 意 識 さ れ た 場 合, 「 エ ピ ソ ー ド一 集 め は, 「 教 材 づ く り 」. ・ .. た り 得 な い こ と , 「 町 づ く・ り 」 93. 、. ー.

(9) . 安 藤. 豊. というは範囲が広す ぎ, これでは授業がつくれないことをア ドバイスした. ついで, 一時間の授業 で教え得る 「内容」 は, ひとつであると考えて置いた方が良いことを, そして, その目標 (内容) を 「00は□□である」 という命題形式で, 簡潔に表現するべき(目標をハッキリ自覚するために) であ ることを指示した. その結果, この班の学生達は, 目標 (内容)を, 「旭川市の現在の市街地形成にとって, 牛朱別川 切り替え ( 1 9 30年7月) が 決 定 的 で あ っ た」 と ま と を 絞 っ た.. こうした命題形式で, 目標 (内容) が設定されると, 内容研究におけるエピソー ドあっめは, 直 接教材づくりをめ ざしてすすめられることになる. )が必要か, またあり得るか, いろ その際, 目標 (内容) をにらみながら, どんな素材(エピソード いろ 《アイ デア》 を出してみることが決定的に重要になっ てくる. たとえば, 市中を流れる石狩川の近くに, 〈中島交親会館〉という古い建物がある. これは, この 地 域 が, 石 狩 川 と 牛 朱 別 川 の 中 洲 (中島 -- この地名は現在失なゎれている) で あ っ た こ と を 示 す, 現 存. する唯一の証拠といい得るかもしれない. 旭川市街地のほぼ真中に〈中島〉があったという事実は, 子どもにと って, 一定のイン パクトを持つ事実であると仮想することができる. 「教材」 )を示 し, 「町 だから, この古ぼけた, 誰れも見向きもしなくなっ ている小さな建物の写真( 1 7 ) 名にもない 〈中島〉 という名 称がついているのはどういうわけ でしょう」 と でも 「発問」 する( . *この建物は, 公民館と同じ機能をもつ公共施設らしい, 公民館などの名称には, 所在地の町名などがつけられる のが普通である. こ れ は, 「導 入」 に つ か え る か も し れ な い. こ の よ う な 《アイ デア》 を考えてみるの である. そして, それに見合う情報 (エ ピソー ド) をあ. つめる, という具合に内容研究をすすめるのである. この例は, 考えてみれば, ま ったく別種の内容研究のすすめ方 ではない. 命題形式で目標(内容) が設定されない段階における内容研究(エピソードあっめ)においても, 自覚的であるとないとにかか わらず, 上記のような目標 (内容) に対する意識が常にはたらいているのである. だからある情報 (エピソード) を 抜 粋 でき る の で あ る.. 3. 個 別 教 材 をつ く る 内 容 研 究 に よ っ て, テ ー マ に 関 す る 「ひ も ま と ま り の 知 識」 (テーマに関する 「『認識内容』 の形成」 と ぃってもょぃが) が 形 成 さ れ, 一 定 の 「エ ピ ソ ー ド」 が 集 め ら れ た ら, 直 接 の 「授 業 づ く り」 を 目 指 し. て 「個別教材」 づくりの作業段階 (ステップ) にすすむ. 「個別教材」 づくりの作業内容の大枠は次の通りである . ① ②. エ ピソー ドの教材化. その教材にもとづく 発問づくり. (ただし, 発問以外の教授行為が選択されることもある). ①と②をセ ッ トに して, 私は, 「個別教材」 とよぶことにしている . この作業内容をイメージするためには, 「教材」 とは何か, 「発問」・「教授行為」 とは何か 両者 , はどのような関係にあるか, という点に ついて述べておく必要があろう . 94.

(10) . . 「授業づくり」 の諸次元 ま ず, 「教 材」 に つ いて 触 れ る.. す でに, 「教育内容」 と対比される意味での 「教材」 の概念規定について述べたように, 「教材」 は, ある 「内容」 を教えるための手段として位置づく.. た と え ば, 小 学 校 理 科 で扱 わ れ る 「て こ」 「て ん び ん」 な どは, 「力 の モ ー メ ン ト (ト ル ク)」 と い. 「 「 う 「教育内容」(科学的概念) を教えるための 「教材」 である・ . 同様に, 食塩水」 は, 溶解」 を教え 「 「 「 「 るための 教材」 であり, ひまわり」 は 植物の成長」 を教える 教材」 である. また, 戦前の伏字だらけの本は, 「検閲」 を教える 「教材」 であるし, 野球での英語使用禁 止の事 1 8 ) 実は, 戦時政策の一つである 「敵性用語使用禁止」 を教える 「教材」 である( . このように, 「教材」は, 目的とする, 教えるべき「教育内容」に対して, 手段という関係にある. 以上のことを 「教材」 に力点をおいて考えた場合, それが有すべき条件は次のように規定さ れて 子どもたちが一定の教育内容 (たとえばあるひとつの科学的概念) を認識して自分のものにするために, 直接 に取りくむ対象が教材であるから,教材は教育内容の構造を全面的に正確にになうものとして構成される必要が ある. しかし, 子どもたちが直接に取り組むということは, 子どもたちが五官や運動器官やすでに手に入れてい る思考力を用いてその対象を分析したり, 操作したり, 総合したりすることにほかならないから, そのようなこ とを確実に容易になしうる性質を教材はもたなければならない.先の教育内容の構造を全面的に正確にになう性 質を 「典型性」 と呼ぶとすれば, これは教材の 「具体性」 と呼ぶことができるであろう.. 2 0 ( ) 「教材」の類型については 「教師が教材に対して どんなはたらきを願っているかという観点」 , , 2 1 ) という観点からの機能的観 点からの と授業における子どもの学習活動 でどのようにはたらくか( , 類型化が試みられている. しか し, ここでは, その実際をイメージしやすいという 点で, 教材の存在形式からの類 型化の試 みに着目するべきであることを指摘しておく. その存在形式とは, ① 「問題」 ②文章教材. ③教具. 2 2 } ④学習形態の 「四つの形式」 である( .. 次に 「発問」 について説明する.. 授業における教師から子どもへの問いかけがすべて 「発問」 なのではない. 2 3 ) 吉本均氏の次の指摘が, 「発問」 論の基本である( . 教えたいものを教えるのではなく, 教えたいものをまさに, 学びたいものへ転化することのドラマを成立させ る中核に位置しているのが発問なのである.教えることと学ぶことの矛盾を統一する教師の指導の中心にあるの が発問である.. つまり, 「子どもたちが自らの力で教材内容にた ちむかい, それを追求して自分のものに してい 2 4 )契機として 「発問」 は位置づくのである { く」 . 教材の情報を, 自分の頭の中で考えるように子どもの 思考を触発するのが「発問」の機能である. * 発問をはじめとして, 指示, 説明などの言語行為, 資料や教具などの教材の提示, 子どもの討論の組織など, 現実に子どもと向いあう授業の場面で, 教師が意図的に子どもにはたらきかける行為の総称を「教授行為」と し、つ.. 「授業づくり」では 教材との関連で, 発問以外の教授行為の選択, 「発問十指示」など発問と他の教授行為 , の組み合せの選択が行なわれる場合もある.. 「教材づくり」 を 「発問づくり」 は レベ ルのちがう作業である , . 「教材づくり」(教材研究)は 教育内容と学習者(子ども)とのつなぐものとして, 子どもの直接の , 学習 対 象に ふ さ わ し い 「情 報 パ ッ ク」 (子どもが学ぶべき, ひとまとまりの学習内容)をつ く る こ と であ り, 95. ●. ● . ・ . ●. ● .・ ●. 9 1 ) い る( ..

(11) . 安 藤. 豊. ここ では選択される情報の質が問われる. それに対して, 「発問づくり」 は, その情報に関連する子どもの思考をひき出す営み である. 2 5 } 両者の関係について, 藤岡信勝氏は, 次のように説明 している( . ……子どもの学習の可能性の幅をつくり出すのが教材研究である. 教材研究は, 子どもがふれることになる素材 の文化的な質を決める. そこでつくり出された可能性を現実性に転化するのは, 発問づく ,り(より一般的には 教師の教授行為のプロ グラミング)である. 教材がよくても発問がわるければ, 教材のよさは子どもの学習と して実現しない. 子どもの豊かな学習の成立のためには, どちらも必要なのである. どちらも必要だが, 教材研究と発問づくりでは, 子どもの思考に対する配慮が決定的に異なる. (中 略) 教材研究をすれば発問はおのずから決まる, とする考え方は望ましくない. 発問という独自のレベルを意識 しにくくするから である. そのレベルでの多様なバリエーションを視野に入れた上で, 適切な発問を選び意味 づける作業がイージーになるからである, 発問づくりは, それ自体として研究しなければならない 重要な課 , 題である. 藤岡氏もいうように,「発問づくり」には, それ独自の論理がある. 行論の関係で詳しく触れることは出来な いが, 次の文献を参照して欲しい. 有田和正 『社会科発問の定石化』 1 988年 明治図書. 「特集 発問論への新しいページ」 『授業づくりネットワーク』 No 89年2月 学事出版. .6 19. 「発問づくり」 には 上述の参考文献のように 一定の原則がある しかし それらでは注意が , , , . 行き届いていないもっ とも基本的な点について注意を喚起しておこう. 学 生 の つく っ た 「発 問」 に つ ぎの よ う な も の が あ っ た.. A ( )川の流れが変っ たことによ って, 旭川の街は, どう変ったか, 考えて書きなさい.. ( )広島で, 何人 ぐらい死んだか, 予想して下さい. B A, Bとも考えずらい, その原因は何か. A では, 「どう変ったか」 の 「どう一 が何を指示しているのか不明なの で考えずらい, 街なみなの か, 人口なのか, 交通体系なのか, 指定がないの である. これでは学習者は, 何について考えれば よいのかわからない. 思考が集中しない. B は, 量 を た ず ね て い る. しか し, そ の 量 に つ い て の オ ー ダー が 示 さ れ て い な い. だ か ら, 学 習. 者は, どのような単位で考えればよいのかわからない. 考える範囲が定まらないから, あてず っ ぽ うに答えるよりしかたない. ここでも, 思考は活発にならない. 「発問」 をつくるときの大前提は その問いによ って 学習者 (子ども) が どのような思考状 , , , 態になるかを考えることである.その問いが自分に向けられたときどう反応する(どう答えるか)かと, 発想してみること である. そのことが, 「発問づくり」 における 「主観主義」 をのりこえる道である. 自分 (教師) の意図の みに依拠した 「発問づくり」 は, 必ず どこかで 「お しつけ」 を生む. こ の よ う に, 「教 材 づ く り」 と 「発 問 づ く り」 は, そ れ ぞ れ 独 自 の レ ベ ル の 仕 事 であ る. 96.

(12) . 「授業づくり」 の諸次元. そのことを前提とした上で, この両者を 「授業づくり」 という視点から見た場合, 私は, 考え方 2 6 ) として, 有田和正氏の次の論述のように把握しておくのが実践的であると考える{ . どんな教材で, どんな発問をしたとき子どもが動き出すか -- ということが, いつも頭の中にある. そして, 「この教材・資料で子どもと勝負するには, どんな発問をするべきか」と考える. やってみる. 何度も や っ て みる。. (中 略) 例えば, 店の人はどうあるのがよいのか考えさせるとき, 教師が店の人になって, 子どもに買い物をさせる.. 子 ども が 「ごめ んく ださ い. こ の 魚をく ださ い」. というと, 教師は, 「う る さ い な 今 テ レ ビ でい い の をや っ て いる か ら 後 でき てく れ 」 , ,. という. (中略) また, 教材研究をしながら, 子どもに追究させたいことを明らかにしていく. 追究させたいことが鮮明になっ てくると自然に発問も決まってくる.「店の品物を売りつくすには, どうしたらよいでしょう」「この紙でポスト を作りたいのだがどうでしょう」「学校には,便器はいくつあるでしょう」「東京2 3区内に牧場はあるでしょうか」 などは, 教材研究から自然に出て来た発問である.. 少し, 前提的説明が長くなったが, 本題にも どろう. 先に述べた, 「個別教材」 づくりとは, 上で述べたような意味での 「教材」 と 「発問」 をセ ッ トで 考えることを意味している. 「授 業 づく り に お け る 教 材 構 成 (あるぃは「授業の流れ といってもよいが) の 基 本 単 位 は 「問 い - 答 」 」 , ,. え」 ではなく次のように考えるべき である. 「問 い」 ÷ → 「考 え る」. このことは, 「1. 『授業づくり』 のステ ッ プ」 で述べた授業の基本的機能で指摘したことから考 えても了解されよう. こ こ では, あ る 教 材 (内部情報) に つ い て 「問 い → 考 え」 さ せ る の で あ る か ら, 「発 問 づ く り」 に 傾. 斜のかか った思考作業が要求されることになる.. 2 7 ) 一般に, 何かを問うということは何かをかくすということである( . 「 「 この原則は, 教材づくり」 にも 発問づくり」 にも適用されよう. その意味で, 上述のような基本単位の考え方の上では, いわゆる 「教材」 についても, それが, 子どもの側から見て, 何かを問いかける対象であるか ぎり, それにふさわしい 「しかけ」 が必要に な っ て く る.. そのようなしかけを, 私は, 教材の 「トリ ッ ク性」 とよんでいる. 従って, 教材は, 「典型性」「具体性」 「トリ ック性」という三つの要素を有することが要求される といえよう. このことを実例 で説明しよう.. 2 8 ) 有田和正氏は, 教科書教材も立派な 「教材」 になるとし, 次の例を示している( .. 97.

(13) . 安 藤. 漁業別の源力<高の変化 ^ 農林水贋省). 漁業別の漁力<高の変化 倉林水産省). 岸. 豊. の の. 匡型回. 鋭角打 ( ・. 資料Bを提示して, 2本の線が途中で切れていることに気づいたことを確認して, 次のように発問する. 二本の線は, 遠洋漁業とおきあい漁業ですね.1973年から後は, どうなるでしょう.予想を書きこみましょ つ.. こ の よ う0 こ 「教 材」 に こでは グラフ) に ト リ ッ ク を 加 え る こ と と, 「発 問」 と を セ ッ トに し て, 「個. 別教材」 がつく られる.. 4. 目標 をリ セ ッ トす る こう してつくられた 「単位教材」 に盛られ た情報間に飛躍のないように内容的整合性をつくり出 す作業が 「ストーリー」 づくり である. 「目標」 はスーリーの範囲内で設定されることになる. 「車粉公害」 というテーマで 「授業づくり」 をこころみた グルー プの事例にそく して説明しよう . こ の 問 題 に 取 り く ん だ グ ル ー プは,「公 害 に つ い て-私たちの環境を守る-」と い う テ ー マ で ス タ ー ト. した. 公害問題が新聞紙上で騒がれなくなってから久しいが, 問題は決して終ったわけではない. また, 新たな公害問題も発生している. 公害防止に努めることは, 私たちの社会的義務である. そ こ で, 公害を防ぐにはどうしたらよいか, その原因, 対策を指導したい, というわけ である. ちょ う ど, 札幌では9割以上の小学校がこの問題に取り組ん でおり, 市教委でも推奨している, との新聞報導がされたばかり であった. 彼らには, この報導が念頭にあ ったの であろうか, 身近な 地域に起っ ている事例をとりあげるとして, ス パイ クタイ ヤ問題に焦点を絞った. そこ で, それに関する・ 情報を収集することになる. 彼等は, 文献・ 情報はもちろん, 札幌市教委指 導室, 脱スパイ ク運動をすすめている札幌弁護 士会, さらに, 旭川市環境部などに取材した. 幸運なことに, 札幌弁護士会が, この問題に関する 「一件資料」 ともいうべき諸資料を取り揃え て届けてく れた. その中には, 松本市, 仙台市が発行した, 車粉と健康被害を告発した パンフレッ ト, スタッ ドレスタイヤに関する調査資料, 札幌市の審議会資料などが収められていた. こう して, 必要な情報は, 一通り揃っ た. 次は, テーマにかかわる範囲で, 授業で使えそうなエ ピソー ドを探し出すことになる. 彼 ら が選 び 出 し た エ ピ ソ ー ドに は, 次 の も の が あ っ た. ・スパイ クピンの微小破片や道路粉じんの侵入によって黒く肥大し, 「じん肺症」に近い病状を示している野犬の心臓 「河北新報一 切抜き 松本市パンフレット掲載写真) ( , . ・アスファ ルトには, ベンツピレンという発ガン物質が含まれている. 「北海道新聞」 切り抜き) ・人の肺からスパイク粉じん発見 ( . 98.

(14) 「授業づくり」 の諸次元 ・横断歩道の白線が松本市では一ケ月 (松本市パンフ) , 旭川市では, 三日で消失 (旭川市環境部) . ・旭川市では, 削られた路面を補修するのに, 年間1億7 00万円, 白線引きに1 00万円かかっている. ,8 ・旭川における降下ぱいじん量は, 台場交差点で4月頃, 1 6 00kg/lhaになる(旭川市 「旭川の環境」 ) . これは相撲 の小錦7人分にあたる. な ど であ っ た. 次 い で, 「個 別 教 材」 を つ く る こ と に な る. こ の と き, エ ピ ソ ー ドを 「教 材」 の 形 に す る こ と 「発 ,. 問」 をつくること, と同時に, ストーリーづくりが進行する. この間の作業は錯綜する. ストーリづくりでは, 直接エピソー ドに乗せられている情報間に論理 的に整合な筋道をつける作業が先行す ることもある. この グループの学生たちは, 概略, 次のような 「個別教材」 原案を構想した. ① 札幌市の車粉発生状況 (写真) を見せ, 注意を喚起する. ② 「旭川市で-ケ月に つもる車粉の量は l ha当り何 kgか」「車粉は人体に どんな悪影響を及ぼす か」 と問い資料を提示 し, 説明する. ③ 「何日で横断歩道の線が消えるか」 と問い, 原因がスパイ クタイヤであることを説明す る . ④ 「これらの被害を防 ぐため, どのような対策が考えられて いるか」 と問い, スタッ ドレスタイ ヤと答えさせる. ⑤ 「あなたはスタッ ドレスをなぜ履かないのですか」 と問い, 資料を提示し, スタ ッ ドレスの性 能 を 説明 す る. (模擬授業の相手は車を使用している学生). ①~⑤に, 先に示したエ ピソー ドを対応させる, というもの であった. こ れ では ス トー リ ー に な っ て い な い. た と え ば, ② の 二 つ の 「問 い」 に つ いて い え ば, 何 の ヒ ン ト も 与 え ら れ ず に, い き な り 聞 か れ て も 答 えよ う の な い 間 で あ る.(ある学生は,相手の驚きを強めるためにヒントを与えるべきではないと反論した.). さらに, ここ では, 車粉の形状, 組成など車粉そのものに ついてのエピソー ド (情報) が入らなけ れば話がつながらない. また, ③との関係でも整合性を欠いている. ④には, 論理的に飛躍がある . このようなことを指摘しながら, 原案を大幅に修正した授業プランを作成させた. 最大の修正は, いわゆる 「本時の目標」 である. 授業のテーマを 「ス パイクタイヤ是か非か」 と し, 授業そのものは, 「『ス パイ クタイヤ禁止条例』 の制定に賛成か反対か」 というディ ベー トを組 織することを中心に構想することとし, 結論 (目標) を開いたものにすることにした. なぜ, このようにしたか, 「目標をリセ ッ トする」 という意味の説明を兼ねて, 以下述べる. 学生のプランでの 「目標」 は, 「身近な公害の事例として, 車粉公害を知る」 であ った. 授業を構 想する場合, これでは, 目標の範囲が広す ぎるのである. 何を知 ったら車粉公害を知 っ たことにな るのか, その範囲が限定できないからである. また, この目標で構想された①~⑤は, その内容を 考えると, 明らかに, 車粉の問題性を一方的に強調し, 「だからスパイクはやめよう」と結論づける ことを強く志向している. しかし, 寒冷地である北海道の冬の ドライ ブの安全性ということを考えると, 単純には, そのよ うな結論に行きつけない. そのことは, 子どもでも考えつくだろう. また, 結論として, スタッ ドレスという選択肢ばかり ではな く, 大人には思い付かないことかも . 「 「 しれないが, すべての道路をヒーティ ン グする」 削れない道路をつくる」 などという選択肢も論 理的には成立するのであ. る. そして, そのような可能性を出 してみることが授業に活気を与えるし, また, 公害行政を含む行政一般に ついて, 子どもが考えをめ ぐらす機会をつくることにもなると考 えられる. 99. .・ . . ・1 . 1. ・. ・. 、 1′ ● ● . . ● . 1L .・ ● ● ’ ‘{ 」 ノ 11 ・1 : . 1 . ・1・ 1」 ・1 1 ● J . ●.・ ● ●」 . 1 ● ● ・ - - ・1 11 1 ・ ー. . .

(15) . 安 藤. 豊. では, 当初, 彼等が このように考えると, 一連のエピソ ー ド(教材)に乗せられている情報の範囲 . ・ 構想した目標にたどりつけるような学習内容を身につけさせることはできないことが解る. なぜな ら, これでは, 子どもが納得しないと思われるからである. 与えられた教材情報の中 で, 達成可能な目標に切りかえることが要請されるのである. 2 9 ( )という 有田和正氏は, 「授業は, ねらいのよしあしではなく, ネタのよしあしで決まる」 . これに対して, 授業のスジは, 目標→教材→授業である, という意見もある. しかし, 教材に乗せられた情報と目標との距離が大きくなると, 必然的に 「おしつけ」 が生じる. 子どもの学習を保障するという立場からは, 教材のもつ学習可能性という制約条件の範囲内で, 当 初の目標を捨て, それをリセ ッ トするという必要が生じてくるのである. そのことが, 「おしつけ」 を回避する有力な回路なのである.. むす びに かえ て 教員養成のためばかりでは なく, 「授業づくり」の プロセスを明 確化したマニ ュアル的なものが必 要と考えている. 本稿は, そのための最初の試みである. 今後とも, 事例を積みあげ, 命題の形で提出できるよう な マ ニ ア ッ ク な も の に し て 行 き た い と 考 え て い る.. 註 ( 1 ) この特性が, 逆に, 強い 「定型化」 への志向として表われているが現実である. いわゆる 「副読本」 などを読ま せて事すめり, とする授業である. だからこそ, 後に述べる様に, 教員養成大学では, 学生に出来るだけ実地に近 い 「授業づくり」 を経験させるべきであると考える, 2『教育』 No 9 19 87年4月 国土社. ( 2 ) 藤岡 信勝 「授業構想の三つのモデル」 p .5 .47 は) 同 上 p.57 19 88年, 明治図書) 4 ( ) 藤岡 信勝編 『実践・個を育てる力 -- 静岡市立安東小学校・築地学級の授業』( , 上田 薫 1 98 8年 明治図書) など参照のこと. 編 『子どもも人間であることを保証せよ』 ( 1 ( 5 ) 『有田和正著作集』 ( 989年 明治図書) など参照のこと. 0 1 9 86年 太郎次郎社. ( ) 遠藤 豊 『自由の森学園・その出発』 p 6 .9 01 『現代基礎心理学 7 ( ) 波多野 誼余夫, 稲垣 佳代子 「文化と認知-知識の伝達と構成をめぐって」 p 7 .2 思考 知能 言語』 19 83年 東大出版会. 97 4年 東京法令出版. 05 上田 薫他編 『社会科教育史資料 1』 1 194 ( ) 「学習指導要領一般編」 ( 7年) p 8 .2 ・ 15 『北海道歴史教室』 4号 19 88年12月 北海道歴史 ( 9 ) 安藤 豊 「授業における 『教授行為』 の位置と意味」 ( 19 89年 中公新書)参 教育者協議会) で鳥峨した. また, 稲垣 佳代子, 波多野 誼余夫 『人はいかに学ぶか』 ( 照 のこ と.. l ( o ) 佐伯 畔他 『すぐれた授業とは何か-授業の認知科学』 p .96(佐伯氏の発言) 1989年 東大出版会. 9 73年 明治図書. ( 1 1 ) 宇佐美 寛 『思考指導の論理』 p .23 1 4年 誠信書房. また, 佐伯 畔 『考えることの教育』 8 1 9 8 ( 1 2 ) ノーマン 『認知心理学入門』 (富田達彦訳) p .1 2年 国土社新書) も参照のこと. ( 19 8 89年1月 明治図書. ( ) 安藤 豊 「『考える』′社会科」 p 1 3 .318 19 .5 『教育科学/社会科教育』 No 85年 明治図書 (教育新書) ( 1 ) 吉本 均 『授業成立入門-教室に ドラマを/』 pp 4 .124一125 19 . ( ) 高村 泰雄 「教授過程の基礎理論」 p 1 5 .56 城丸 章夫他編 『講座 日本の教育 6 教育の過程と方法』 100.

(16) . 「授業づくり」 の諸次元 1 97 6年 新日本出版社. ( 1 ) 思想の科学研究会編 『哲学・論理用語辞典』 p 6 4 9 1 9 86年 ・三一書房. .2 「 「 ( ) このように, 教材づくりでは, 教材」 と 発問」 (教授行為) とセットにした 「単位教材」 を考えることについ 1 7 ては, 次項で述べる. ( 1 め この事例は, 白川 隆信 「検閲・敵性用語・戦時下のスポーツ -- 高校日本史・軍国主義の授業の教材例 --」 1一41 北海道社会科授業研究会 『道社研通信』 No 9 89年6月. pp .3 .5 1 ( 1 ) 鈴木 秀- 須田 勝彦 「基礎学力の指導過程」 p 9 0 前出書. 4 城丸他註( 1 5 .8 仰 山崎 林平 「教材の類型とよい発問の条件」 p 4 『教育科学/社会科教育」 No 17 1 9 81年6月 明治 .1 .2 図書. 棚 ) 森脇 健夫 「魅力ある授業をつくるために」 p 1 1 98 7年4月 歴史教育者協 .45 『歴史地理教育』 No .41 議会. 『教育科学/社会科教育』 No 鰹 ) 藤岡 信勝 「教材化の四つの形式」 5 1 98 2年1月 明治図書. .22 ◎ 吉本 均 「授業にとって発問とは何か-発問研究の位置-」 p 5 19 83年 明治図 .16 『授業研究』 No .25 書. 捌 ) 有田 和正 『社会科発問の定石化』 p 4 1 9 88年 明治図書. .1 ( 2 ) 藤岡 信勝 「戦後教育研究にみる『教材研究と発問づくり』の問題」 p 5 4 3 19 8 8 .2 .26 『授業研究』 No ,p .32 年4月 明治図書. 回 有田 和正 「子どもをゆさぶる発問の工夫」 p 6 『教育科学/社会科教育』 No 4 1 6 98 4年1 2月 明 .8 .2 治図書. 肋 安藤 豊 「『子どもたちの現状から出発する』視点を基本に」 (北海道合研研究推進委員会編『北海道の教育( 87 『教育科学/社会科教育』 No 年版)』 及び 「『大単元』に対する導入は『ムダ』である」 ( 3 1 1 3 9 8 8年8月 明 . 治図書) 参照のこと. 園 有田 和正 「どんな資料が子どもを動かすか」 p 2 『教室ツーウエー』 No 7 1 88年1月 明治図書. 9 .6 .2 回 有田 和正 『社会科の活性化』 p 6 1 9 8 5年 明治図書. .1 (本学助教授 旭川分校). 101.

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