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青年期の社会的スキルと学校適応に関する心理学的研究

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Academic year: 2021

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(1)99. 青年期の社会的スキルと学校適応に関する心理学的研究 キーワード:青年期,社会的スキル,学校適応,発達. 浅川潔司*・東由佳"・古川雅文*** (平成12年9月20日受理) 問題 近年,学校生活や社会生活等の対人場面での行動が適 切でなく,対人関係を形成することや社会的場面におい て円滑な行動を取りにくい子どもたちのことがしばしば 問題にされる。このようなことの理由の一つに,社会的 スキルの欠如があげられる。本研究ではこのような観点 から,青年期にある中学生や高校生において,その学校 適応がどのように彼らの社会的スキルと関係するのかを 検討することを主たる目的とした。 従来のモデルを概観して,仮説的な社会的スキルの生 起過程モデルを提唱した相川・佐藤・佐藤・高山 (1993)は,次のように社会的スキルの概念的特徴を整 理している。すなわち,彼らは社会的スキルは異体的な 対人場面に規定されるものであり,それ自体が目的指向 的であって,効果性と適切性を備えているという。そし て社会的スキルは生得であるというよりは各種の学習を 通して獲得されるものであること,対人反応として実行 される社会的スキルは測定可能であることが示されてい る。. ところで,有機体発達論を基盤とする人間一環境相互 交流論の観点から個人の環境適応について検討した一連 の研究(山本・ワッブナ一, 1990)によれば,環境には 物理的,対人的,社会文化的な側面があり,適応に至る には,個人はこれらの環境側面から影響を受けるととも に自らも環境に能動的,積極的に働きかけるという相互 作用の過程があると仮定されている。つまり,こうした 相互作用のはてに,ある時期,個人と環境の間に均衡的 な状態が生じるが,それがその時点での適応状態という のである。 環境の対人的側面についていえば,個人を取り巻く人々 との関係性は,他者との相互交流の質によって規定され ると考えることは妥当であろう。例えば,他者に対して 好意的な働きかけを行い,他者から自身に向けられた行 動に対しても適切な対応ができるようであれば,対人間 の社会的な葛藤を回避することができようOひいては, そのことが対人関係上に生じるネガティブな感情を低減 ・兵庫教育大学第1部(教育臨床講座) -甲南女子大学大学院 日キ兵庫教育大学(学校教育センター). させ,より円満で円滑な対人関係を築くことや安定した 生活の営みにつながるといえる。 このように考えるならば,個人が有する社会的スキル は学校環境への適応に深く関係すると思われるが,この ような観点からなされた研究は現時点では希少である。 わが国においては,学校適応と社会的スキルの関係を 主題とした研究に,戸ヶ崎・坂野(1997)がある。彼女 らは,小学校高学年の児童を対象に,家庭と学校におけ る社会的スキルを測定したうえで,母親の養育態度と児 童の社会的スキルの関係について検討し,さらに養育態 度と社会的スキルが,学校適応にどのような影響を及ぼ しているのかについて考察している。その研究結果によ れば,小学校高学年の児童の場合,友だちに気軽に話し かけるといった, 「関係参加行動のスキル」や,友だち が失敗したら励ましてあげるといった「関係向上行動の スキル」が,児童の学級内での社会的地位に影響するこ とが明らかになっている。 これらの結果は,対人関係を促進するような社会的ス キルを持っ児童は,その周囲の子どもたちから,肯定的 に受けとめられること,そしてこのことが当該児童の学 級内の対人環境面での適応を促進していることを示唆す るものであろう。 学校に個人が適応する過程を考えるとき,対人関係の もっ意味は大きいが,さらに学習や将来にわたる展望, あるいは特別活動や学校内のルールなどをどのように受 けとめているのか,といったことも学校適応を総括的に 検討する際には重要な観点である。 そこで本研究では,学校生活全般の適応に個人の社会 的スキルがどのように関係するのかを,中学生および高 校生を対象に検討することとした。中学生と高校生を対 象にしたのは,戸ヶ崎・坂野(1997)が対象とした小学 生と中学生・高校生とでは学校内での生活様態に大きな 違いがあると考えたからである。たとえば,小学生の学 校生活が担任教師を中心とするいわゆる「学級王国」と も称される比較的閉鎖的な空間での社会生活であるのに 比べ,中学校や高校の生活は,クラブ活動への参加に代 表されるように生活の枠組みが相対的に拡大されている。.

(2) 100. また,校則や進路といった面は,小学校生活に比べて中 等教育機関においては生徒や教師にとって強い関心事と なっている。 したがって,学校環境という点では同様であるにして も,学校種によって適応のために必要とされる社会的ス キルには小学生や中学生,高校生の間で質的に異なるこ とも考えられる。あるいは自我が成長する青年期にあっ ては,次第に個人志向的な脱社会化が発現するが,その ような過程における学校環境の諸側面への適応には新た な社会的スキルの関心や形成が生じることもあろう。 このような観点から本研究では,中学校や高校での適 応感に社会的スキルが関係するのかについて検討するこ とを第1の目的とした。ついで,学校適応感の高群及び 低群によって,自らの社会的スキルの重要性の認知に差. る質問文が準備されていた。本来高校生用に開発され た本尺度であったために,中学生に実施するにあたっ ては,現職の中学校教員の意見が求められたが,変更 事項は兄いだされなかった。本尺度に対する反応は5 件法によって求められ,最も肯定的な反応に5点が, 最も否定的な反応に1点が付与された。このため,各 下位尺度の得点範囲は4 -20点であり,全体得点の範 囲は24点-120点であった。 社会的スキル測定尺度:菊池・堀毛(1994)による 「社会的スキル100項目」をもとに質問項目が作成され, 中学校および高校の現職教員17名を対象に,生徒の学 校適応に各スキル項目がどの程度重要であるかについ ての評定が求められた。その評定結果に基づき, 7つ のスキル領域において評定得点の上位5項目が抽出さ れて,生徒用社会的スキル尺度が構成された。本尺度 を構成する下位尺度は, 「基本となるスキル」, 「感情. が生じるのかどうかが検討された。 方法 被調査者兵庫県内の公立中学1年生172名(男79名, 女93名)と公立および私立の高校2年生575名(男311 名,女264名)の計747名が被調査者として本研究に参 加した。 材料学校適応感測定尺度:内藤・浅川・高瀬・古川・ 小泉(1986)による高校生用学校環境適応感尺度のう ち24項目が中学生および高校生の学校環境への適応感 を測定するために使用された。本尺度はすでに妥当性 と信頼性が確認されていた。その下位尺度に学習意欲, 教師関係,友人関係,規則への態度,特別活動への態 皮,進路意識をもち,各下位尺度ごとに4項目からな. 処理のスキル」, 「攻撃に代わるスキル」, 「ストレスを 処理するスキル」, 「計画のスキル」, 「援助のスキル」, 「集団行動のスキル」であった。本尺度に対する反応 は4件法によって求められ,非常に大切である(4点) ∼全く大切でない(1点)の得点が付与された。した がって,各下位尺度の得点範囲は5点∼20点となった。 手続き各学校において,学級を単位にした集団場面で, 担任教師から質問紙が配布され,回答後に回収された。. 結果 まず,社会的スキルと学校適応感の関係を検討するた. 表1各社会的スキルの平均値およびS.D. 社会的スキル基本感情処理攻撃に代わるストレス処理計画援助集団行動スキル全体. 学校適応感高低高低高低高低高低高低高低高低. 富男Mean17.84 16.15 17.21 15.36 16.94. 14.94 16.78 16.05 16.73 15.73 16.68 16.00 16.42 15.36 118.63 109.63. S.D. 1.22 2.39 2.21 3.32 1.84 3.44 2.16 2.98 2.07 3.49 2.31 3.92 2.56 4.06 10.18 20.65. 女Mean 17.87 16.43 18.08 16.00 16.47 15.73 17.26 15.39 17.08 15.30 17.60 15.91 17.30 14.21 121.69 109.00 S.D. 1.36 2.66 1.64 2.78 2.26 2.59 1.91 2.90 2.33 2.83 2.44 3.46 2.33 3.98 ll.33 18.16. 霊男Mean17.39 15.50 17.37 15.49 16.72. 14.49 17.40 14.97 17.49 15.13 16.74 15.15 16.02 12.77 119.15 103.53. S.D. 1.94 3.38 2.ll 3.61 2.25 3.66 1.95 3.60 2.04 3.72 2.16 3.92 2.71 3.79 ll.38 20.83. 女Mean18.48 16.92 18.51 16.90 17.53 15.62 17.83 15.97 17.03 15.63 17,68 16.71 16.51 14.25 123.59 112.03 S.D. 1.51 2.14 1,79 2.56 2.ll 2.37 2.12 2.61 2.31 2.86 1.92 2.29 2.57 3.10 ll.28 14.18.

(3) 青年期の社会的スキルと学校適応に関する心理学的研究. -. 図2校種別・性別および適応感水準別における 「集団行動のスキル」平均得点 低群の有意差はないが女子群には生じること,高校生群 では男女群とも有意な適応感高一低群差はあるものの, その差の幅が男子群に比して女子群では小さくなってい ることがわかった。また,高校生の男子群の適応感低群 は,高校生の女子群の適応感低群,中学生男子群の適応 感低群のいずれよりも低得点を示していた。 考察. 0 ォ J l I T 1 T -. (哩)確酔bqr叶Y. O C D W T ハ ノ I O C O ( O < * ク ー 0. 中高生の社会的スキルの必要性と彼らの学校適応感の 問には,中程度の正の相関関係が認められたことから, 両者は相互に影響しあう関係にあるといえよう。人間関 係を円滑に運ぶようなスキルを身につける必要性を感じ ている生徒ほど,学校生活もより充実したものとなって いること,そして相対的に学校適応感が低い群はどそう したスキルの必要性を感じないことなどを本結果は示唆 している。 次に,学校適応感の高低群による社会的スキルの重要 度認知についての結果を検討したところ,中学生は,集 団行動のスキルを必要とする点で高校生よりも高得点を 示していた。このことは,中学校と高校では,学校での 活動スタイルが異なっていることもその一因と思われる。 つまり,学級を単位として種々の活動を行うことが高校 生に比べると多い中学生では,グル-プの中でうまくふ るまうことができるといったスキルが必要である場面が 多くあるだろうQそのため彼らは高校生よりもこのスキ ルの獲得がより大切であると認知しているのではないか と考えられる。また,集団への同化や帰属の傾向が高校 生よりも中学生においてより強いこともこのような結果 を生じた一因とも考えられる。 女子群が社会的スキルの必要性を高く認知していると いう結果は,友人に求めるものが男女で異なることによ. 中学生群高校生群. 図1. ・. において有意の傾向にあった(F-3.62, df-1/362, p <.10,図2参照)。下位分析(Ryan法:危険率p<.05) によれば,中学生の男子群では適応感高一低群間の有意 差は認められなかったが,中学生女子群,高校生男女群 ではいずれも,適応感高群の得点が低群の平均得点を上 回っていた。さらに,中学校群では男子群では適応感高一. g. のスキルもp<.01)。 また,校種と性の交互作用が,基本となるスキルにお いて有意の傾向にあった。 (F-5.86, df-1/362, p<.10, 図1参照)。これは,高校生において,女子群が男子群よ りも高得点であることを表してしていた。中学生群には このような有意差は認められなかった。さらに,校種と 性と適応感高低の二次の交互作用が,集団行動のスキル. 萌mtmesz. (F-5.86, df-1/362, p<.05) ,感情処理のスキル(F9.46, df-1/362, p<.01),援助のスキル(F-5.50, df1/362, p<.05),そして社会的スキル全体(F-4.01, df1/362, p<.05)においてであり,いずれも女子群の方 が男子群よりもスキル得点が高くなっていた。 学校適応感水準の主効果は,いずれのスキルでも有意 であり,高群が低群よりも高得点を示していた(いずれ. e. 意で(F-5.52, df-l/362, p<.05) ,中学生が高校生 よりも高得点であった。しかし,その他の社会的スキル における校種の主効果は,有意ではなかった。 有意な性の主効果が見られたのは,基本となるスキル. o l O o i n o. めに,両変数間の相関係数を算出した。その結果,.38 と中程度の正の相関関係が認められた。 両者の問にこのような関係が認められたことから次に, 学校に適応している群とそうでない群とでは,自らの社 会的スキルの重要度認知にどのような違いが見られるか を検討するために,校種別,性別における学校適応感得 点の上位25% (高群),下位25% (低群)の者が抽出さ れ,表1に示すように整理された。 この結果に基づいて, 2 (校種) ×2 (悼) ×2 (過 応感高群・低群)の3要因分散分析が行われた。その結 果,校種の主効果は,集団行動のスキルにおいてのみ有. 校種別・性別における「基本となるスキル」 平均得点. るものかもしれない。たとえば,典型的な女性は親密な 腹心の友,同じ感情を共有する友を求めると和田 (1994)はいうが,本結果は,この見解を一部反映して いると考えられる。.

(4) 102. 相関分析の結果と一貫しているが,適応感が高い生徒 は社会的スキルの重要性認知においても高得点を示して いた。学校にうまく適応していると自ら感じる生徒は, 周囲の対人環境(教師・友人など)との関係が順調であ ると思われる。もともと社会的スキルは好ましい人間関 係を築いたり維持していくことに用いられるものである とすれば,より適応的な個人はどその適応度を維持して いくためにも社会的スキルの重要性に対する認知が肯定 的になるのかも知れない。 二次の交互作用が見出されたが,その分析結果から中 学生男子群をのぞいて他の3群では,適応感高群に比べ て適応感低群では,集団行動のスキルをあまり重要と認 知していない傾向が見られた。これらの群では,学校生 活での集団活動や学級の重要性を中学生男子群はど認識 していないことを示唆しているものと思われる。このよ うな発達差や性差に関しては,社会化の過程に起きる脱 社会化や個性化の観点から検討してみる必要もあろう。 さらに,相対的に学校生活を充実したものととらえてい ない生徒たちは,クラスの仲間への参加,他者との交流 を積極的に行う必要性を感じてないことを本結果は示唆 している可能性もある。. 引用文献 相川充・佐藤正二・佐藤容子・高山巌1993社会的スキ ルという概念について一社会的スキルの生起過程モデ ルの提唱一宮崎大学教育学部紀要社会科学, 74, 1-16.. 内藤勇次・浅川潔司・高瀬克義・古川雅文・小泉令三 1986高校生用学校環境適応感尺度作成の試み兵庫 教育大学研究紀要, 7, 135-145. 菊池章夫・堀毛一也(編著) 1994社会的スキルの心理 学100のリストとその理論川島書店 戸ヶ崎泰子・坂野雄二1997母親の養育態度が小学生の 社会的スキルと学校適応におよぼす影響一積極的拒否 型の養育態度の観点から-教育心理学研究, 45, 173-182.. 山本多喜司・ワッブナS. 1990人生移行の発達心 理学北大路書房 和田実1994社会的スキル尺度のこと菊池章夫・掘 毛一也(編著)社会的スキルの心理学100のリスト とその理論川島書店pp.184-191..

(5) 青年期の社会的スキルと学校適応に関する心理学的研究. 103. ABSTRACTS A psychological study on the relation between social skills and school adjustment in adolescence : Key words : Adolescence, Social Skill, School Adjustment, Development. Kiyoshi ASAKAWAl, Yuka AZUMA and Masafumi KOGAWA3 The present study was designed to investigate the relation between social skills and school adjustment and cognition of social skills in adolescence. 172 0f junior high school students and 575 0f senior high school students took part in the study. Each subjects was asked School Adjustment Scale, and Social Skills Scale. Main findings were as follows ; 1) There was significant correlation between social skills and the school adjustment. 2) As to Group-Behavior Skills, junior high school students showed higher mean scores than senior high school students. 3) As to Basic Skills, Emotional-Processing Skills, Helping Skills, and total of Skills, female students showed higher mean scores than males. 4) In any sub scale of the Social Skills Inrentory, students in higher adjustment group showed higher mean scores than the lower adjustment students. Those findings were discussed from viewpoints of school psychology and developmetal psychology.. 1. Dept. of clinical psychology in education , Hyogo University of Teacher Education, Yashiro-cho, Kat0 -gun, Hyogo, JAPAN, 673-1415 2.. Graduate. School. of. Psychology. at. Konan. Women′s. University. 3. The Center for School Education Research, Hyogo University of Teacher Education.

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参照

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