日本の女性ミステリ作家と図書館・続 : 小池真理子・雨宮町子のケースについて図書館はどうみられてきたか・4
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(2) 文化編 (2003年 3月. 女共通 の閲覧室 をもつ決心 をしたとい うことには一種 のユーモアが あ る」「男子 ,女 子 の 区別 は,従 来 の 日 本 の半官 的な場所 では愚劣 なほど神経質であった」 と 記述 してい る。 また,そ の 「婦人間覧室」 を利用する 仲間が きっかけとなってつ くられた「婦人たちのグル. 地方. (青 森 )に. ). あ って,中 年 の女性 で,図 書館 を利用. する人はそれほど多 くはなかった。そうした中で,こ の人物が他 の人たち とは違 って,県 立図書館へ通 い ,. よ く本 を読んでいたことを印象付 けるエ ピソー ドとし て,こ のシー ンは挿入 されていると考 えられる。 当時の都道府県 ・市町村 の図書館 は,先 の宮本百合. ープ」 についてもふれてい る. 2。. この文章 は,敗 戦直後, 日本 の図書館 サービスが ど のような状況 の もとにあ つたか, を示 してい る一例で. 子 の文章 にあった 「上野の図書館」 のように,館 内利. ある とい えよう。ただ,こ こで とりあげられてい るの. 図書館史』 (1979)に よる と,1960(昭 和 35)年 度 の. はのちの 「国立国会図書館支部上野図書館」 (現 在 は. 利 用 状 況 は 「閲 覧 室 の 利 用 が 310日 ,男 36,596人. 「国際子 ども図書館」)で のことであ り,そ の利用 はあ くまで も館内での閲覧 に限 られてい た。先の文章 の続. 用 に限定 してい たわけではない。 しか し,『 青森県 立. (27,475冊. ),女. 20,158人 (12,885冊. )」. 回,男 9,792人 (9,789冊 ),女 4,147人. 「貸 出 309 (4,150冊. )」. 言葉が出て くるが,こ れは書庫 か ら出されて きた書籍. 「一 日平 均 ,閲 覧 783人 (131冊 ),貸 出 46人 (46 冊 )」 (p.349)と な ってお り,館 外 へ の貸 出 も実施 さ. を,館 内で読 むために受け取 る場所 のことである。 ま. れはいたものの,図 書館内での閲覧が主な利用形態 で. た,1948年 の国立国会図書館法 ,1950年 の 図書館法. あ ったことがわかる. 公布以前 のことであ ると思われるが,戦 後ではあ って も,利 用 は有料 であ り「閲覧料 を十銭だせ , と書 いて. また,1951(昭 和 26)年 に制 定 された「図書館利 用規則」 では,通 常 ,館 外へ貸出 を認めるのは,一 冊. ある」 との事実が紹介 されてい る。. のみであ り,先 の利用統計 の冊数 をみて も,図 書館 の. そ の宮本百合子 が没 した翌 々年 に生 れた,高 村薫 (1953年 ∼・昭和 28年 ∼)の 小説 で,今 年 (2002年. 外 に借 りてい くことので きる冊数は,1人 1冊 に限定 されてい たことが 明 らかである5。 したが つて 『晴子. 単行本 として刊行 された 『晴子情歌』 (原 文 は一部 旧 字 ・旧かな)に は,昭 和 30年 代 の シー ンがあ り,そ. 情歌』 の登場人物 の女性が「図書館で借 りて きた とい う本 を三,四 冊抱 えて」バスか ら降 りて きた, とい う. の 中に登場人物 のひと りが,図 書館 を利用 してい るこ. 状況 は,実 際には,あ りえない ものであ る。. きの部分 には「三階の書籍 か りだ しの ところ」 とい う. ). 3。. とを思わせる場面がある. 「『女性 は工場 の昼休 みに県立図書館でエ ングルスの 「空想 よ り科学へ」 を借 りて読 んだんだ。六 〇年 の八. 4。. 現代 の作家 で ある高村薫 の イメー ジには,図 書館 は,館 外へ本 を「貸出」するところ,と い うものが あ り,そ れがいつの時代 に定着 したかは,は つ きりとは. 」 (下 用 0注 :1960年 8月 )の お盆前 だ った』 巻 p.287)「『あ の人 は いつ も昼休 み は 図書館 だ と言. わか らない ものの,少 な くとも 1960(昭 和 35)年 の. う』 」「『暑 い 日で,真 昼 の誰 も歩 いてい ない 国道 にバ スが着 い て,母 が降 りて きた』 」「『そ の とき母 は図書. てい る場面 を登場 させても特 に不 自然ではない」 と考. 館 で借 りて きたとい う本 を三,四 冊抱 えていて,一 冊 は大江健三郎 だった。 もう一冊が文庫本 の 「空想か ら. うではな く,貸 出冊数 の制限が緩和 されてい くのは 1970年 代 の後半 になってか らである°。. 月. (引. 科学へ」 (原 文 のママ)で ,他 に何 があったかは もう 忘 れました。私 は中学三年 で したが,ぼ つぼつマル ク. シーンで「利用者が図書館 か ら複数 の図書 を借 り出 し えていたことを示 してい る。 しか し実態 は必ず しもそ ,. これ らの例 にもみ られるように,女 性作家 の文章 に. ス主義 を書 ってみる くらいの年齢 で した』 」 (下 巻 pp.. 登場する図書館や図書館員 は,そ れが ノンフイクシ ョ. 289-290)と あ り,主 要な登場 人物であ る,こ の語 り. ンであれ,小 説 であれ,作 者の出生年代 によつて も. 手 の母親が ,職 場 の昼休 みに県立図書館へ行 って,本. 作品の発表時代 によって も,ま た,作 品の時代設定 に よって も,描 かれ方 が異 なっている。「図書館 は どう. を借 りて くる姿が描 かれてい る。 この女性 は,小 説 の 冒頭部分 で「昭和九年 三 月」 に「数 えの十五歳」 (上 巻 pp.10-11)だ った とあ り,先 の シー ンにある 1960 (昭 和. 35)年 時点 の年齢 は,40歳 前後であると考 えら. み られて きたか」 とい うテーマで,前 回は女性 ミステ リ作家 として,加 納朋子 ,若 竹七海. (い. ず れ も 1960. 年代生れ)を と りあげて,そ の作品での図書館 の描 か れ方 について検討 した。今回は同 じ女性作家 で も,や. れる。 この シー ンは,青 森市 が舞台 で あ り,時 代 は 1960 (昭 和. ,. 35)年 のこととして設定 されてい る。当時 は. ,. や年代 が上に属する小池真理子 ,雨 宮町子. (先. の高村. 薫 と同 じく,い ず れ も 1950年 代生 れ)の 作 品 をとり.
(3) 佐藤. 毅彦 :日 本 の女性 ミステ リ作 家 と図書館 。続. 43. あげた。 日本の社会 に敗戦直後 の混乱が,ま だ残 って い た 1950年 代 か ら 60年 代 に成長期 を体験 し,そ の. 況 ,そ の館 での地域 に関す る資料 の様子 が描写 されて. 後 ,作 家 として複数 の作品の中に図書館 をさせること. 地域資料は,さ ほどの量があるわけではないが,そ. い る。. になった両者が, どのような描 き方 をしてい るかを検. の現状 は「棚 の隅にひと東 にまとめ られた古 いス クラ. 討す ることで,図 書館 の描 かれ方 の多様性 の一端 をあ. ップブックが積 んであ る。誰 の手垢 もつ けられない ま. きらかにしようと試 みた。ふた りの作品 には ミステ リ. まに,埃 をかぶって しまった無用の長物 といった感 じ. の範疇 を超 えると考 えられるもの もあるが,こ こでは. のす る茶糸 のスクラップ帳で,開 くと綴 じ部分 の金属. それ らも検討 の対象 に含 める。. が ぎしぎしと鳴 った」「中は昭和 三十年代後半か ら四. (な. お,出 典 を明記す る際,『. 』 は単行書名,「. 」. 十年 にかけての広報紙や,臨 時発行 された薄いパ ンフ. は単行書 に収録 されてい る個 々の作品名 を表す もの と. レッ トな どが い っぱい詰 ま ってい た」 (p.121)と あ. する). る。 他 の利用者 については「部屋 には誰 も人がい なか っ 2。. た。 さっ きまで うろ うろ してい た学生ふ うの男 のふた. 小 池 真 理 子 と図 書 館. り連 れ も,と うに どこかに行 って しまった」 (p.123) 小池真理子 は,1952年. ,東 京 生 れ。成膜大学文学. とあ り,利 用者が少なか ったことを うかがわせる。. 部英米文学科卒業後 ,出 版社勤務 を経 て,1978年 エ ッセイ『知的悪女 のすすめ』 を発 表° 。その後 ,小. 書館 で喋 るのは罪悪 で ある と思 つているらしか った」. 説 の分野 で も作 品 を発 表 し,1989年 「妻 の 女友達」. とあ ったが,そ のあ との場面 では「受付 の ところにさ. で第 42回 日本推理作家協会賞 (短 編お よび連作短編 集 部 門)受 賞り,1996年 『恋』で 第 H4回 直 木 賞 受. っ きいた初老 の男が じっと前 を向いて座 っていた。あ. 賞",さ らに 1998年 には 『欲望』 で第 5回 島清恋愛文. り,活 発 な図書館利用 に対応 してい るようには感 じら. 学賞 を受賞 してい る“。. れない。利用者 の質問 に図書館員が回答 してい る場面. ,. 小池真理子 の作品 には,登 場人物が図書館 した り ,. 図書館 の職員 は,先 に「受付 にい た 白髪 の男」「図. まり動 かないので石像 の ように見 えた」 (p.124)と あ. は「彼女 はふ と思 い たつて,男 に近 づ き,F妙 な こと ・』『は ?』 『失礼 ですが,こ のあた り を伺 い ますが・…・. 図書館が小説 の場面 に使 われている ものが多数存在す るが,そ うした作品をい くつかのケース に分けて検討. のことにお詳 しくてい らっしゃい ますか』男 は憮然 と. する。. した顔 を したが,『 そ りゃあね』 とくぐもった声 で答 えた。『ここに勤務 して三十二年 にな りますか らね』 」. ★登場人物が図書館 で何かを調べ ようとするもの. とあ り,彼 女が この地域 のことについてききたい とい. ○ 『墓地 を見お ろす家』 ". う と「『なんですかな』 と男 は興味 を持 っているに も. 加納美紗緒 は,三 十代 の主婦。新築 の都心 に近 いマ ンシ ョンに引 っ越すが,周 辺は,墓 地や廃墟同然の地. 拘 わ らず,関 心 の なさそ うな顔 をして再び,前 を向い た」「男 はぺ らぺ らと喋 り始 めた。声が高 くな り,ホ. 域だ った。 このマ ンシ ョンでホラー映画 さなが らの現. ールの壁 にかすか に こだ ま した」 (pp.124-126)と い. 象が続 くので,図 書館 に調べ に行 く。. う対応 をしてい る。ず っと同 じ所 に長 く勤 めてい るの. 「区立図書館 は,JRの 高井野駅か らさらに北 に歩 い て十五分ほどの ところにあ った。国道 に面 した区役所. で昔 のことについてはよ く知 っている様子 は うかがえ. の裏手 にあるなんの変哲 もない三階建 ての建物 で,車. を見せて笑 った」「お手数 をおかけ しました,と 言 っ. がひっき りな しに走る国道 の騒音 を考 えるととて も読. て頭 を下げると,男 も軽 く会釈 を帰 した。美紗緒は外. 書 にふける環境 ではなかった」「美紗緒が区の歴史や. に出た」 (pp.126-127)と い う描写 は,必 ず しも図書. 行政 についての資料 が見 たい と言 うと,受 付 にいた 白. 館員 について好意的なイメー ジをもたらす ものではな. 髪 の男 は黙 って指 を三本突 き出 しなが ら,聞 き取れな い声 で 『三階』 と言 った。図書館 で喋 るのは罪悪 であ. いだろ う。. るが「男 はひと目で入れ歯 とわかる不 自然 に白い前歯. ° ○ 『闇のカルテ ッ ト』. ると思 っている らしかった」「三 階の行政資料室 には. 記憶喪失 の「ル ンペ ン」 (こ の作 品では,定 住す る. 人が まばらにい るだけだ った。隅の大 きな本棚 に『N. 家 をもたず に,主 として路上など生活 してい る人々を. 区関係資料』 と書 かれた黄 ばんだ カー ドが貼 って あ. あ らわす言葉 として使用 されてい る)が 図書館 を利用. る」 (pp.118-119)と ,図 書館 の周辺環境 や館 内 の状. する様子やその時の心境 ,ま た,そ のような人物 に対.
(4) 甲南女 予大学研究紀 要第 39サ. 文学 ・文化編 (2003年 3月. ). する他 の利用者 たちの反応,さ らに図書館職員が どう 対応 してい るかが描 かれている。なお,作 品中の 「公. 『税金 も払 って 示す描写がある。彼 は,会 話 の 中で 「. 園図書館」 は有栖 川公 園 にある東京都 立 中央 図書館. れ ど……』 」 (p.10)と い う発言 もしてい る。. (東 京都港区)を. ない人間が図書館 に来 るのはおか しいか もしれないけ 彼 は事故 により,過 去 の記憶 を失 っているが,面 伊. モデルとしている。. l. なので病院や警察 には行 っていない。「図書館 に通 う. ・図書館 の状況をあらわす描写 「五 月の連体が 明けたばか りの都 立公園図書館 は. ようになったのは,ひ とつ には記憶喪失 に関す る文献. 比較的,空 いていた。いつ もは学生で混み合 っている 三階の人文科学室 も,人 影 まばらで,占 領 されてい る. を読みたい と思 ったか らだった。何冊 かの医学書 を読. ,. テ ー ブ ルは三つ 四つ しかない」 (p.3)「 図書館 内 には 学生たちが行 き交 っていた。頭 にペ イズ リー模様 のバ ンダナを巻 いた男 とミニスカー トの女が,カ ー ド閲覧 コーナーで くす くす笑 い なが ら,互 いの腰 のあた りを つ ね っている」 (p.57)「 席 は半分以上 ,塞 が っている 様子 だった。誰 もが 目の前 に拡げた本や ノー トに目を. み,彼 は 自分がい わゆる “ 全生活史健忘"と 呼 ばれる 心 の病 にかか つてい ることを知 った」 (p.84)と ,利 用 目的のひとつが 「 自分 の生活 に関連 した事実 を調べ るため」 であ ることが明 らかになる。 やがて記1意 をとりもどした後 ,自 分が関係 してい る と思 われる事件 について「『去年 の新聞 を調 べ れば ,. 」 (p.248) 警察 が どんな動 きを して い たかが わか る』 へ と,新 聞を調べ るため図書館 行 くことを思 い立つ。. 落 としてい る」 (p.60)「 公園図書館 は,蝉 しぐれに包 まれてお り,夏 休 みを利用 してや つて来 てい る学生た. 「図書館へ行 くのは半 ば恐 ろ しかった。一 年前 の新 聞. ちで ごった返 してい た」 (pp.267-268)「 一 階の奥 の新. の縮刷版 を開いた途端 ,社 会面 にでかでか と自分 の顔. 聞資料室 に入る。資料室 に学生 の姿 は少な く,大 半が. 写真が載 ってい るのではないか。そ してその場 で,図. 暇つぶ しに昔 の新聞 を眺めに来たような初老 の男 ばか. 書館 の職員にそれを見 られ,警 察 に通報 されて しまう. りだった」 (p.268)公 園 には「 もう学校が始 まったせ. のではないか」 (pp.251-252)と 感 じてい る。 記憶 をとりもどした後 の図書館利用 については「汗. いか,子 供 たちの姿 はなかった。学生ふ うの男女が連 (p.293)な ど,学 生の利用が多 い図書館 の状況 が描写. まみれではあ って も,髪 を短 く切 りそろえ,ま ともな 恰好 をしてい る彼 のことをあの読書好 きのル ンペ ンと. されてい るが,そ れ以外 の利用者 の姿 は,暇 つぶ しの. 結 びつ けて考 える人間 はい ない よ うだった」「一 階 の. 老人 を除けば,ほ とんど描 かれてい ない。 ・ 「ルンペ ン」 が 図書館 を利用 していることについ て. 奥 の新聞資料室 に入る。資料室 に学生の姿 は少な く 大半が暇つぶ しに昔 の新聞 を眺めに来たような初老 の. の心理描写. 男 ばか りだ った」「まっす ぐ縮刷版 コー ナ ー に行 き. れ立 って,図 書 館 の ほ うか ら降 りて 来 る だ け だ」. ,. ,. 「自分 は臭 っているのか もしれない」「ニ ケ月以上は. 一九八八年七月分 と八 月分 の A新 聞縮刷版 を手 に取. 風 呂 とは無縁 の生 活 を してい る」 (p.3)「 公立 の 図書 館 にルンペ ンが入ってはならない, とい う法律 はない. った。席 に座 って,ペ ージをめ くる勇気 はなかった。. ものの,や は り,奇 異 な印象 を与 える らしい」「女子. 彼 は立 っ た ま ま,狭 い 棚 と棚 の 間 に 身 を寄 せ た」 (pp.267-268)と い う描写 になってい る。. 大生 たちが好奇心 たっぷ りの 目を して,彼 が手 に して. ・図書館 のボランテ イアについて. い る本 の タイ トルを読み とろうとした。彼 は本能的 に. 登場 人物 のひと りに,図 書館 で朗読奉仕 のボランテ. 本 の表紙 を手 の平 で隠 した」「 ミッシェル・フー コー の 『知 の考古学』 などとい う難 しい本 をルンペ ンが読. ィアを してい る女性が登場す る。彼女 は 「一 人 っ子」. んでいた, とわかれば,彼 女 たちはむこう一週間,キ ャンパスでの話題 に事欠かないだろう。だが,そ うさ せ るのはどうして もいやだ った」「彼 はそそ くさ と開 架式 の棚 に本 を戻 し,受 付台 にい た顔見知 りの中年 の 女 に軽 く頭 を下げる と,部 屋 を出た」 (p.4)「 俺 は 目 立 って るんだな,と 思 つた。臭 うせ いで。汚 いせ い で。 ルンペ ンが図書館で本 を読んでい るせ いで。思 つ ていた以上 に,自 分 は好奇 の 目にさらされてい るのか 也 もしれ ない」 (pp.7-8)と ,こ の利用者 が,自 分 がイ い の利用者 にどう思われてい るかを気 に して ることを. で,親 に庇護 されて育 ったが「子供 のころ,軽 い神経 症 を病 ん」 で「登 校拒否」 の状態 になった ことが あ る。両親 に先 立 たれたが,生 活 に不安 はない状態 で 「朗読奉仕 をす るために,丸 一 年 ,講 習 も受 け た。 自 分 の していることが,誰 かの役 にたつ ことを思 うのは ヽ を閉ざし,せ めて もの社会参 亡 嬉 しい」 (pp.16-17)「 ′ 加 としてボラ ンテ イアの朗読 をや りつつ,な んとか自 分 を ご まか して きた 自分が滑稽 だ った」 (pp.23-24) とい うキャラクタに設定 されてい る。 ・図書館 の職員 について 職員 について,「 ル ンペ ン」 の利用者 は「そそ くさ.
(5) 佐藤. 毅彦 :日 本 の女性 ミステ リ作 家 と図書館 ・続. 45. と開架式 の棚 に本 を戻 し,受 付 台 にい た顔見知 りの 中. 関係 で転勤が多 く,何 度 も学校 をかわっていた。兵庫. 年 の女 に軽 く頭 を下 げる と,部 屋 を出た。女 は見 て見 ぬふ りを したが ,敵 意 の あ る感 じは しなか った」「 そ. 県 の N町 ,大 阪梅 田か ら電 車 で三 十分 ほ どの,新 興 住宅地 に居住 してい る。「午前 中は 自室 で勉強 してい. れ こそ雨 の 日も風 の 日も,図 書館 が休館 の 日以外 ,毎. るふ りをしていたが,い て もたって もい られな くなっ. 日,本 を読 み にや って来 る得体 の知 れ ない 人間 の こ と. て,昼 食 もそ こそ こ に家 を出た。母 には図書館 に行. を,少 な くとも職員 たちは追 い 出そ う とは思 ってい な. く, と嘘 をつい た」 (p.65)と い うシーンがある。. い よ うだ った」 (pp.4-5)と い う よ うに感 じて い る。. ○ 「夜顔」 (『 水無月の墓』収録)Ю. また ,体 調 を回実 にボ ラ ンテ ィアをキ ャ ンセル した 女性 は「病 名 を聞 きたが って い る様 子 が 見 て とれ た. ). 主要な登場人物である女子大生が,大 学 の夏季休暇 に入って も,帰 省す るのがいやで 「親 に手紙 を書 き ,. しくて大学 の図書館 で調べ ものを しなければ. が ,さ すが に遠 慮 した ら しか った」 (p.56)「 身体 の 具. 勉強が 1亡. 合 が悪 いの で ,朗 読奉仕 は当分 ,で きな くな った ,と. な らな くな ったか ら,と 嘘 をつい」 て東京 に残 る。. 職員 に 申 し出た時 ,ち ら りと職員 の 目が彼女 の手首 に. (p.98)彼 女 は「大学進学 と同時 に,実 家 の あ る新潟 か ら東京郊外 のその町に越 し,九 二年 が過 ぎてい た」. 向 け られ た」 (p.57)の よ うに考 えて い る。図書 館 の 職員 は,あ か らさまにプライバ シー を詮索す るので は. 「通 つていた大学 は女子大 で,私 鉄 を使 えば二駅 とい. な く,一 般 的 な関心 の範 囲内 での対応 を して い る描写. う近 さに」ある。「生れつ き虚弱」 (p.80)で ,友 人 も で きない。その後 も,結 婚 して もうまくいかず,つ い. になって い る。 利用者 の 質問 に対応す る様子 につい ては「人文科学 室 に入 り,こ わ ごわ受付 デ ス クを見 る。 デ ス クで は. ,. 二 人 の学 生風 の男 がぶ厚 い本 を差 し出 しなが ら,中 年. に自殺 して しまう。 ○ 「幼女 たち」 (『 美神. (ミ. ューズ)』 収録)HI. 「一九七〇年 ,夏 目幸男が十八歳 になったばか りの. の 女 子 職 員 に何 や ら質 問 を して い る と ころ だ っ た」. 八 月」 (p。 14)「 多摩川 を見下ろせ るマ ンシ ョン」 に住. (p.61)の よ うなケ ース が描 かれ て い るが ,と りた て. んで「都立高校」 (p.17)に 通 っていた。「その夏 ,幸. て専 門的 な知識が必 要 とされて い るわ け で はない 。. 男 は或 る意味 で規則正 しい毎 日を送 っていた。午前中 は,予 備校 で夏期講習 を受け,午 後 は冷房 の効 い た公. そ の他 に,登 場 人物 が何 か を調 べ るため に図書館 を 利用す る作 品 の例 としては,次 の ものが ある。. 立図書館 で勉強す る。図書館 を出るのは, 日が霧 つて 涼 しくなってか ら。その後 は,町 の書店 をうろつい た. ○ 『仮面 のマ ドンナ・ 』. り,喫 茶店 で友達 と世間話に興 じた り。夕食 の支度 を. 大学 を 3年 で 中退 した後 は,小 説 を読 んだ り,画 を. す る母 の手間 を考 えて,遅 くとも七時 までには家 に帰. か い た りして い る男性 が ,事 故 にあ った女性 につい て 「『君 の こ とは全 部 ,調 べ た よ。今 日の午後 ,図 書館 に. った」 (p.19)夏 の あ る 日,路 上 で,知 り合 いの女性 と出会 い,「『プール ? それ ともデ ー トか しら』『図. 民つてい る 間 にね。 古 い新 聞 とあ の こ 行 った。 ママ が日. 書館 です』幸男 はぶつきらぼうに答えた」「『暑 いの に. ろの雑誌 をほ とん ど全 部 ,見 て きた よ』彼 は振 り向 い. 大変ね。お母 さんか ら聞いたわ。受験勉強中なんです. て ,面 白そ うに続 け た」 (p.193)と 発言 して い る。. って ?』 」 (p.21)と い う会話 を してい る。. ○ 『ナ ルキ ッソスの鏡』 ". 20代 で ,自 分 の 精神 状 態 に不 安 を感 じて い る,作. ★図書館 が出会 いの場 になってい るもの. 家志望 の男性 が ,自 分 の精神状況 につい て「知 りた い. ○ 「泣 かない女」 (『 妻 の女友達 小池真理子短編 セ レ. と思 って ,図 書館 に行 き,何 冊 ものぶ厚 い精神 医学専. クシ ョン 4. 門書 を読 み耽 った こ ともある。 だが ,ど こ に も彼 が 納. ミステ リー編』収録)2). 小笠原敬一は,二 十四歳,大 学院でイギ リス文学 を. 得す る よ うな こ とは書 かれて い なか った」 (p.100)と. 専攻 してい る。容貌 は魅力に乏 しいが,元 華族 の遠縁. ある。. で,成 績 は抜群 で ある。「真紀 は彼 と同 じ大学 に通 う. ★高校 生や 大学生が図書館 を利用す る もの. 学生である。知 り合 ったのは学内の図書館。偶然 ,同 じ,『 エ リザ ベ ス朝悲劇論』 とい う書物 を探 して い. ○ 「獣 の家」 (『 記憶 の 隠れ家』収録 )". て,言 葉 を交わ したのが きっか けだ った」 (p.69)と. 高校 三 年 生 の男子 が 「午後 か ら図書館 に行 って望 月 と合流 し,一 緒 に勉 強 した後 ,気 分転換 に二人で 町 を ぶ らつ くつ も りで い た」 (p.57)彼 は,父 親 の 仕 事 の. ある。 ○ 『無伴奏』8) この作品のヒロイ ンは「高校時代 の最後 の年 を私 は.
(6) 甲南女子大学研究紀要第 39号. 46. 伯母 と共 に暮 らした」 (p.15)「 当時通 つていた高校 で. 文学 。文化編 (2003年 3月. ). ○ 「花 ざか りの 家」 (『 記憶 の 隠れ家』収録 )口. ). 秘密裡 に結成 されていた制服廃止委員会 の委員長 に選. 「 そ んな倉越 と手塚 が ,親 し く口 を き くよ う にな っ. ばれた。宮城県 は公立私立 を問わず ,大 半の高校 が男. たのは,ほ かで もな い ,中 学 三 年 になった年 に,二 人. 女別学 であ る」 (p.19)と い う人物 である。. して図書 委員 に選 出 され たか らで あ る」 (p.135)と あ. 伯母 にボー イフレン ドのことについて きかれて「私 は即座 に『東北大 の 図書館 で知 り合 ったの』 と答 え た。『消 しゴム を落 とした時,隣 にい た彼 が拾 って く れたのよ。次 に彼がシヤープペ ンシル を落 として,私 が拾 ってあげたの』そう,図 書館 でね, と伯母 は安心 したように言った。図書館で知 り合 った男 は皆 ,イ ン テ リで品が よ くて無害 である, と信 じているような感 じだった」 (p.133)と 述べ てい る。彼 は,東 北大学 の. る。. ★ 図書館 で働 く人物 が描 かれて い る もの 螂 ○ 『欲望』 青 田類子 は,私 立 の学校 図書館 に勤 めて い る。 ・ 中学生時代 の エ ピソー ド 中学時代 の友 人か らの手紙 に「学校 図書館 の 司書 を. 三年生で,実 家 は仙台,高 校 か ら東京 にいった老舗 の. な さっている との こ と。 い か に もあなた ら しい , と思 い ま した。 中学時代 なた はい つ もど こか′ 1布 い よ う. 和菓子屋 の虐、 子 である。実際に,ふ た りが,は じめて. な印 象 が あ りま したが ,そ れは どこにで もい る よ うな. 言葉 をかわ したのは 「地下のバ ロ ック喫茶」「小 さな. 単 なる ガ リ勉 少女 の ,鎧 で 固 めた よ うな怖 さで はなか. 穴 ぐら」 (p.47)の ようなスペースである。 この他 に,登 場 人物 の 大学生 が 「『帰 るの ?』 『い. った。 あ なたにはあの ころか ら,あ なた 自身 の 世界が あ っ た」 (p。 15)と 書 か れ て い る。 ま た ,こ の 人 物. や。大 学 の 図書 館 に行 く。調 べ ものが あ っ て ね』 」. が ,中 学校 の 同級生 につい て 「当時 ,私 は読書量 を彼. (p.170)と 発言 してい る場面や 「祐之助 は,大 学 の図. と競 い 合 ってい たc自 分 の知 らない本 を彼 が 読 んで い. 書館 にお り,そ の後でエマ と待 ち合わせ をする ことに なっている」 (p.173)と い うシーンがある。. る と腹立 た しくな り,す ぐに図書館 に行 って探 して来. ,あ. ては読 みふ け った。探偵小 説 であろ うが ,少 年 向 き冒 険小説 で あろ うが ,何 で もよか った。内容 は選 ばなか. ★その他 ,図 書館 が ス トー リーの中 に登場す るもの. つた」 (p.33)と 回想 して い る シ ー ンが あ っ た。職 に. ○ 「団地」 (『 恐怖配達人』収録 )‖. つ く以前 か ら,読 書 や本 に親 しみ を感 じて い る人物 で. 団地 の便利 さを説明する発言で 「小学校や中学校 は 近 くにある し。 デパー トみたい にでかいマーケ ッ トが. あ った こ とをうかが わせ るエ ピソー ドで ある。 ・図書館 へ 就職す る までの経過. 二つ もある し。公園 も病院 も銀行 も郵便局 も図書館 も. そ の後 「一 九七 〇年 ,私 は都 内 にある私 立大 学文学. あ る。駅 は近い し,大 勢 の人間が住んでるか ら寂 しく. 部 に入学 した。 日本赤軍派 に よる, よど号 ハ イジ ヤッ. ない し」 (p。 191)と ,図 書館 も施設 のひとつ にあげ ら れてい る。 また,団 地 に住 む主婦 の発言 に「『今 ,夫. ク事 件 が起 きた年 で あ る」「大学 で は演劇 部 に入 部 す る こ とになるのだが , もとよ り演劇 に興味 が あ ったわ. は会社 に行 ってる し,子 供 は図書館 に行 ってる し』 」. けで は な い」 (p.47)と い う学 生 時代 を送 り,職 業 を. (p.208)と い うものがあ る。. 選択す る時期 を迎 える。. ○ 「首」 (『 薔薇船』収録)い. 「公立 や私 立 の一 般 の 図書館 で は な く,学 校 の 図書. 「英語 のテキス トを机 の上 に拡 げ,図 書室 で借 りて. 館 司書 を希望 したの は,規 模 が小 さければ ,個 人 の 自. 来 たばか りの 『十五少年漂流記』 を手 に取 った時 で し. 由が効 くだろ う と都 合 のいい想像 を働 かせ たか らであ. た」 (pp.136-137)と い う場面 は,こ の 人物 が,中 学. る。資 格 を取 り,私 は 中学 か ら短 大 まで そ ろ って い. 一年 になった年 の冬 であ り,期 末試験 を控 えて,学 校. る,都 内 にあ る私 立. か ら帰 ると部屋 で勉強 し,本 をた くさん読 んでいた。. 験 を受 けた。新規採 用が 一 人だけ の ところに百 人近 い. ○ 「封印の家」 (『 薔薇 の木 の下』収録)“. 応募が あ り,ま るで期待 して い なか ったのだが ,ど う. 「父亡 き後 ,大 半 の蔵書 は図書館や大学 な どに寄付. K女 子 学 園 の 学校 司書 の採 用 試. い うわ けか ,私 だ けが採 用 され た」 (pp.86-87)と い. して しまった」 (p。 91)と い う発言があ る。 この 人物. う経過 で ,現 在 の職場 に勤 め る こ とになった。. の父 は医者 で,六 十二歳で病死す るが,生 前 は,医 学. ・図書館 の仕事 につい ての考 え方. 雑誌 に記事 を書 い た り,僻 地医療 に貢献 した とい うこ. あ る 日,書 店 で 「ず いぶ ん前 か ら欲 しい と思 ってい. とで「新聞 の イ ンタビュー を受 け」 (p。 92)た こ とが. て ,い つ の まにか見 かけな くな って しま った厚手 の イ. ある。. ギ リスの翻訳小説が ,復 刻版 として新刊 コー ナ ーの片.
(7) 佐藤. 毅彦 :日 本 の女性 ミステ リ作 家 と図書館 ・続. 隅 に並 んで い た」「手 に とった とた ん ,ど う して も欲. た。 しばらくの間,私 の生活 はおおむね,そ んなもの. しくな った。上下巻合 わせ て七 千六百 円。学校 図書館. だ った」 (p.87)「 夏休 み と春休 み,冬 休 み は学 生 同. 用 の希望 図書 リス トに入 れてお け ば ,何 の 問題 もな く. 様 ,た っぷ りとれたので,そ の度 に両親 の住 む札幌 の. 受 け入 れ られ るで あ ろ う こ とは,わ か って い た。 だ. 家 に帰 った」「学校司書 は私 を含 めて四人お り,全 員. が ,図 書館 の本 は あ くまで も図書館 の本 で あ って私有. が女だった」 (p.88)と あ る。 なお,こ こでは「学校司書」 とい う言葉が使 われて. 物 で はない」 (p.8)と 考 えて い るシー ンが ある。 また「本 が 好 きだか らとい って必ず しも司書 は務 ま らない ,と い うこ とは知 っていた。司書 とい うの は一 種 のサ ー ビス業 で あ り,カ ウ ン ター越 しにあ らゆる種. い るが,こ の 人物 と中学 時代 の 同級 生 との 会 話 で 「『私 ね,今 ,図 書館 に勤 めてるの よ』『司書 になった の ? へ え。す ごい な。 どこの 図書館 ?』 『学校司書. 類 の 人 間 と対話 で きなければい けない 。個 人的 な趣味. な の。学 校 の 図 書 館 で 働 く専 任 の 司 書 教 諭 よ』 」. に溺 れなが ら本 の価値 を決 め る こ とも許 されない 。人. (p.133)と 発言 して い る場面 が あ る (い うまで もな. 間嫌 い で 閉鎖 的 ,頑 固 で 内 向 的 な人 には 殊 に 向 か な. く,現 実 には,「 司書教諭」 と「学校司書」 は別 の存. い , と断言す る人 もい て ,そ うまで言 われ る と 自分 に. 在 である)口 。. は無理 か も しれない ,と 思 ったが ,そ れで も他 に進 む. ・職場 の人間関係. 道 は考 え られ なか った」 (pp.86-87)と も感 じて い る。 ・現在 の職場 と業務 の 内容. 彼女 は,高 等部 の教師. (妻 帯者 )と. 親密 にな り,週. に一度 ,彼 がマ ンシ ョンを訪 れるようになる。その き. 「私 は,中 学校 か ら短 大 までそ ろ った私 立 の 女子 高. っかけは「世界史の文献 を探 しに図書館 を頻繁 に訪 れ. に勤 めて い る。 とい って も,教 師 で はない 。学校 には. ていた彼 に頼 まれ,た またま私が手助けをした ことか. 別棟 になって い る大 きな図書館 が 建 っていて ,私 は そ. ら,親 しく口をきくようにな ったのが始 ま りだった」. こで働 く学校 司書 で あ る」 (p.9)そ こでの 毎 日は 「 日. (pp.88-89)と い う。職場 では「勤 め先 の学校 の教 師. 頃 ,華 や い だ もの とは無縁 の生 活 を送 ってい る」「司. や職員 たち と個 人的 な親 しい 関係 は持 たなか った」. 書 にな って か ら,早 くも二 十 年 た って い る。毎 日毎. 「私 と他者 とは常 にどこかで決 め られたよ うに一線 を. 日,図 書館 で本 に囲 まれた生 活 を して い なが ら,何 も. 引 き合 い,引 かれた線 のこちらとあちらに分かれて. 休 み の 日に書 店 め ぐ りを しな くて もよ さそ うな もの. 終始 ,に こにこと愛想 よ く微笑み合 っていただけだっ. だ ,と 誰 もが言 う」「順番 に店 内 を一 巡 す るの に,一 時 間 で す ん だ ため しは な い 。そ れ は,私 の さ さや か. た」「私 はただ,本 を読 んだ り,映 画 を観 た り,地 味 な暮 らしをする ことに満足 してい る,ど こか変 わ り者. な,欠 かす こ とので きな い 楽 しみ の ひ とつ で あ った」. の女 に過 ぎない と思 われて い た」 (pp.248-249)と い. (p.9)と 描写 されて い る。. う状況 にあった。 ・昔 の友人 に職場 を案内する場面. 学校 図書館 と仕事 の実情 につい ては「お 世辞 に も レ. ,. ベ ルの高 くない学校 で あ ったが ,歴 史 が あ るこ とと. 「三時半 になって,ふ と未返却 の本 をチ ェ ックす る. 卒業 生 の 中 に元 華族 の令嬢 も少 な くなか ったせ い か. 仕事 が残 っていたことを思 い出 した。私 はボー ドを片. ,. ,. 生徒 はか な り裕福 な家庭 の娘 ばか りだ った。寄付 金 の. 手 に開架式 の棚 を見て回 り,返 却 されてい ない何冊 か. 多 さが功 を奏 したか ,施 設 は どこ もか しこ も充実 して. の本 と貸出 カー ドを照合する作業 を始 めた」 (pp.237-. い た。 中 で もキ ャ ンパ ス に別棟 と して建 て られた大 き. 238)「 何冊 くらい蔵書があるの ?」. な ドーム型 の美 しい 図書館 は,蔵 書 の数 を誇 りとす る. 万 くらいかな。学校図書館 の中では全 国で一番規模 が. 見事 な もので ,国 内 のみ な らず ,外 国 か らも関係者が. 大 きいの よ」 (p.240)と 回答 してい る。. とい う質問に「八. 視察 に訪 れ る こ とで 有 名 だ った」「朝 は八 時 四十五 分. 友人が 「三島由紀夫 の作品 を何冊 か,棚 か ら抜 き取. まで に出 勤 し,そ の 日の 新 聞 をそ ろ え て か ら開館 す. ると,ぱ らばらと中をめ くり,そ のつ ど裏表紙 の内側. る。休 み 時 間 と昼休 み ,そ して放 課後 以外 は生 徒 や短. につい てい る貸出 カー ドを引 き出 して眺めた」「貸出. 大生 の 出入 りは少 な く,教 師や教授 らが 時折 ,や って. の回数が多いの と少ないの と差があるね」 とあるよう. 来 ては調 べ もの を して い く程度 で ,手 が空 い た時 は存. に,貸 出の記録 にはブックカー ドを使用 してい ると思. 分 に読 み た い本 をあ さる こ ともで きた」「四時五 十分. われる。. には 閉館 し,五 時 ち ょう どには もう帰 り支度 を整 えて 帰途 につい て い る。寄 り道 をせず にアパ ー トに帰 り. この会話 の続 きの部分で,三 島の作品を「熱心 にこ こで読 んでい く生徒」力れヽ たことが紹介 される。彼女. 自分 で食事 を作 り,銭 湯 に行 って十 二 時 には床 につい. は「 目立 たない」「あ ん ま り笑 わない真面 目な感 じ」. ,.
(8) 甲南女子大学研究紀要第 39号. 48. 文学 0文 化編 (2003年 3月. ). 「 目立 たない地味 な生徒」 などと形容 されて い る。同. 日また図書館 へ 出向 くと,「 図書館 には必 要 な雑 誌 の. じ学園の短大 に進学するが,卒 業 を前 にして心中を図. バ ックナ ンバ ー が 保 管 され て い た。 そ の うち の一 冊. り,亡 くなって しまう。. に,新 聞 で はつい に見 るこ とので きなか った男 の鮮 明 な顔写 真 が 載 ってい た」 (p.244)と あ る よ う に,新 聞. 他 に,図 書館 の事務 を担当する人物 が登場す る作品. ・雑誌 の バ ックナ ンバ ー を,図 書館 で調 べ ,コ ピーす る とい う行動 を とって い る。. に次 の ものがあ るc. O「 寺田家 の花嫁」 怪 しい隣人』収録)Ю ゆ と りのある生活 をしてい る女性 が,両 親 の死後 財産があつたので,働 かな くて も生活で きたが 「学生 時代 の恩師 に頼 んで,短 大 の図書館 に就職口を見つ け て もらい,簡 単 な事務 の仕事 を始め」 (p.131)る 。過 疎地域 の嫁探 しパーテ イー に参加 して,結 婚す るが 流産 し,夫 やその家族 にも不信感 をもつ。 (『. ,. ,. 同 じ作 品登場す る,有 田. (男. 性 )は 騎 手 で ,年 齢 は. 30代 。 ある競走馬 につ い て調 べ るため に「『軽種 馬協 会 の デ ー タ通 信 サ ー ビス に ア クセ ス して』」 (pp.94-. 95)と ,パ ソ コン通信 を利用 して い る知 人 に,依 頼 し て い る場面 が あ る。 また,十 数年前 の外 国 での競走馬 誘拐事 件 につ い て 「『当時 の 新 聞 の 縮刷版 にあ た って み よ う と思 う』」 (p.102)と 発 言 して い る。 さ らに. ,. この件 に関 して ,共 同通信 の写真部 に属す る知 人 に記. 3.雨 宮 町 子. 事 を FAXで 送信 して もらう (pp.133-135)。. と図 書 館. 彼 が ,北 海道 の 千歳空港近郊 にい る際 ,あ る こ とを 雨 宮 町 子 は,1954年 生 まれ。『骸 の 誘 惑』 で 1997. 調 べ る必 要が生 じた とき,タ クシ ー の 運 転 手 に「『図. 年 第 2回 新潮 ミステ リー倶 楽部賞 を受賞 し,デ ビユー. 書館 。市立 図書館 へ 。 どこで もいい です。 い ちばん近. 現 在 まで に数点 の ミステ リ,ホ ラ ー小 説 を発. い ところ』」 と告 げ る。「運転手が , もう閉 まって い る. した. │。. 表 して い る。発表 された作 品 は数点 だが ,そ の 中 で. ,. ので はないか と言 った。五時五十分 だ つた。市立 図書. 図書館 を利用 した り,図 書館 に勤 め る人物 が描 かれて. 館 は五 時 に閉館す るのだろ うか。有 田にはわか らなか. い る ものが 複数あ る。. った。生 まれてか らこれ まで ,図 書館 を利用 した こ と が な い」「―一 図書館 は 閉 まって い なか った。 閉館 時. }. ○ 『眠 る馬』 深 町洋子 は「開業 医 の一 人娘」 で ,「 彼 女 自身 ,外 科医」「専 門 は小児外科」 であ る。「医師 としての仕事. 刻 は七 時 だ とい う」 の よ うに,ま った く利用経験 の な い 人物 が なにか を調 べ よ う と した際 に,市 立 図書館 を 思 いつ く, とい うス トー リー になって い る。. の あ い まに,ボ ラ ンテ イア活 動」 (p.57)を して い た. そ の 図書館 での職員 の対応 は 「 カウンター には六十. が ,体 調 を くず して ,現 在 は開業 して い ない。夫 は競. 年配 の男性 が座 っていた。 どの よ うに した ら自分が望. 走馬 に関す る仲介業務 を して い る。. む よ うな本 を見 つ け られ るのか尋 ねる と,検 索 しま し. た ま ってい く新 聞 の扱 い につい て 「記事 を読 み返 し. ょう,二 件 です ね , と言 って ,に こ りとも しない で. ,. た い ときは 図書館 へ 行 く とい う こ とで ,夫 婦 は妥協」. 端 末 を叩 い た。無愛 想 だが 不 親切 で は な い」「年 配 の. (p.174)し たが ,あ る 日,彼 女 は購読 して い る 『朝 日. 図書館 員 は,一 件 目の検索 を終 えて ,書 名 リス トの プ. 新 聞』 の 中 に切 り抜 きの跡 を発見 し,切 り抜 かれた記 事 を調 べ るため 「 区立 図書館」 へ 行 く。 そ こで 「図書. リ ン トア ウ トを差 し出 しなが ら,『 と りあ えず は,リ ス トの五 番 目までの本 で 間 に合 う と思 い ます。現在す. 館員 か ら新 聞 の束 を受 け取 り,閲 覧用机 の一 つ に向か. べ て書架 にあ ります。 閲覧可能 です。二 件 目も検索す. う」「切 り抜 い た記事 はす ぐに見 つ か った」「 カウ ンタ. るの は簡単 です 。 で すが ,そ うい う ことをお調 べ にな. ーヘ 戻 り,先 月 の読売 と毎 日を閲覧 した い と言 ってい. るな ら,最 初 に百 科事典 な どにあた つてみ るのが 早 い. た」「一 週 間分ず つ ホチ キ スで 綴 じられ た二 紙 の 山 の. で しょう。 こち らへ ど うぞ』 図書館 員 は カウ ンター の. 中 か ら,切 り抜 きの あ った朝 日と同 じ日付 の新 聞 を見. 外 へ 出る と,先 に立 って書架 の あ い だ を歩 い て い く。. つ けて ,広 げる。記 事 を探 す」「言 売売 新 聞 には男 の 顔. 美術書 の書 架 の前 で立 ち止 まる と,『 ああ ,こ れ で 用. 写真 も載 ってい る。写真 はず いぶ ん小 さい。鮮 明 とは. が足 りるか も知 れ ませ ん』 一 冊 の事典 を有 田に手渡 し. い えな い」「顔写真 の 載 って い る読売 の記事 を コ ピー. て ,F百 科事典 は あそ この棚 で す。 この事 典 に載 って. した」 とあ る。帰 って「スナ ップ写真 と図書館 で コピ. い なければ,百 科事典 も利用 して くだ さい』有 田 は礼. ー した記 事 の写真 を比 べ てみ る。 まちが い な く同一 人. を言 って ,立 った まま事典 を開 い た。そ の項 目はす ぐ. 物 だ とい う確 信 が 持 て な い」 (pp。 175-176)の で ,後. に見 つ か った。 て い ね い な説 明が続 く。読 み終 えて. ,.
(9) 佐藤. 毅彦 :日 本 の女性 ミステリ作家 と図書館 ・続. 49. 事典 を元の場所へ戻 した。五冊 の本 は離 れた二つの書. だろ うか。 ク ビに決 まってい る」 (pp.10-11)と 考 え. 架 にあった。 閉館 まで一時間 しかない。それぞれの目. て 自重 してい る。. 次 にざっと目を通す。必 要な情報 をい ちばん手 っ取 り 早 く与 えて くれそ うな一冊 だけを棚 か ら抜 いて,閲 覧. 彼女が返却 した本か ら「ひらりと,何 かがページの あい だか ら抜 け落ちた。床 か ら拾 い あげ る」「二つ折. 机 に向か った」 (pp.355-356)と い つた もので,押 し. りになった罫線入 りの紙。 ノー トの切れ端 らしい。広. 付けが ましくな く,利 用者 に的確 な対応 をしてい る様. げてみ る」 (p.12)と あ り,こ の紙片 が きっか け にな. 子が うかがえる。 J ○ 『殺 される理由』. って,事 件 が展開する。亮介 は,夏 川鮎子 のおかれた 困難な状況 を推測 し,な んとか彼女 を助けようと,行. 図書館 でアルバ イ トをしてい る男性 に関わる事件 を 扱 った連作短編集 で ある。「先月,亮 介 は三十 になっ た」 (p.10)と あ り,「 大学 の獣医学部 の卒業 を目前 に 控 えたある日,亮 介 は 自転車 に当て逃げされて骨盤骨 折 の 重傷 を負 った」「快復 には予想外 の 月 日を要 し た。内定 して い た 中央競馬会へ の就職 も白紙 となっ. 動 してい く。 図書館職員が,利 用者 の個人情報 に接触 で き,利 用 者 のためを思 つてのことではあって も「図書館資料 の 管理」 とい う目的以外 に,個 人情報 を使用 して しまう ス トー リーは,利 用者 の図書館員 に対す る信頼 を傷 つ ける可能性 のあ るもの といわざるをえない。. イ トをした ことがあ り,そ の ときの人脈 をたよりに. 他 には,次 の作品の ように図書館 は登場 しないが 新聞 を調べ る際 にコンピュー タを利用 してい るものが. 図書館利用者 にまつ わる事件 を解決 しようとして,さ. ある。. まざまな行動 を起 してい く。. ○ 『骸 の誘惑』 “. た」 (pp.14-15)と い う経歴 で あ る。興信所 で アルバ ,. ,. うわけにはいかない。 どんなに薄給 で も」「正 式 な司. 予備校 の古文担当講師 (女 性 )が 「パ ソコンを立ち 上 げ た。オ ン ラ イ ンで 新 聞情 報 に ア ク セ ス す る」. 書 の資格 をもっているわけではない。単なる臨時雇 い. (p.320)場 面がある。. 図書館 での待遇 については「区立図書館 での職 を失. であ る。 ほとんどボランテ ィアの ようなものだ。 ボラ ンテ ィア との差 は 『時給 をい ただ い て,い い んで す か』 と恐縮 しない だけ,で あ る」「火曜か ら木曜,そ れ に 日曜 の週 四 日は この 区立 図書館 で働 い て い る」 「図書館 の休館 日である月曜が亮介 の休 日だつた」「時. 4。. 日本 の 女 性 ミス テ リ作 家 と 図 書 館 ・ 続. 小 池真理子 の 著書 には,「 著 者 自作 年譜」 が収 録 さ れ て い る‖。そ れ に よれ ば,小 学校 時代 は東 京都 大 田. ,大 田区立 久 原 小 学 校 入学。 ピ ア. 計 の針 は五 時十分 まえを指 してい る。図書館 は七時 ま. 区在住 で ,1959年. でだが,火 曜 日は早番で,返 却 された本 を書架に戻せ. ノ を習 い 始 め る。 1962年 ,『 りぼ ん』『 な か よ し』 な. ば仕事 は終了す る」 (pp.H-12)と な ってお り必ず し も優遇 されていないこ とがわかる。 また,ア ルバ イ ト. どに掲載 されて い た少女漫画 の影響 を受 け ,自 分 でス. であ って も,カ ウンター業務 を こな してお り,「 取 り. た りし始 め る。学校 の 図書館 で本 を借 りて読 む楽 しみ. 寄 せ を ご希望 の図書 がはい りま した」 (p.10)と 利用 者へ の電話連絡 をする こともある。. を知 る。 1965年 ,父 の 転 勤 で ,兵 庫 県 西 宮 市 に 転. 利用者 の一 人,夏 川鮎子 は「二 十 一 の 女子 大 生」. トー リー を編み出 して漫画 を描 い ては ,友 達 に読 ませ. 居 ,私 立 甲子 園学 院中等部 に入学。 そ の後 ,転 居 に よ り,西 宮市 の公立 中学校 を経 て ,兵 庫 県 立鳴尾 高校 に. で,亮 介 は,彼 女 の「住所 も電話番 号 もわか ってい. 入学す る も,父 の転勤 のため ,仙 台市 に転居 し,宮 城. る」「P区 立 図書館 で利用者登録 をす る とき,申 込書 に記入す る事項 なのだ。 カウンター にある コンピュー. 県 立 第 三 女子高校 に編入 して い る。 この ころ,反 戦運 動 や集 会 へ 参加 し,喫 茶 店 に入 りび た る 日 々 を過 ご. タの端末 を操作す れば,図 書館員な ら誰で も見る こと. す。 1971年 ,高 校 卒 業 後 ,受 験 に失 敗 し,仙 台 で 浪. がで きる情 報 であ る」「亮介 は,鮎 子 の 自宅 に電 話 を. 人生 活 を送 る。 1972年 ,成 限 大 学 文 学 部 英 米 文 学 科. した ことさえ何度かある」「××図書館 です。取 り寄. に入学。 卒業後 は,出 版社勤務 を経 て ,エ ツセ イ集 の. せ をご希望 の本がはい りました。一週間以内に取 りに. 発表 ,小 説 の刊行 とい う経歴 をた どって い る。. きて くだ さい」 (p.10)と ある よ うに,図 書館 職員 な. 小 池真理子 は,作 品点数 も多 く,そ の傾 向 も多様 な. ら,利 用者 のプライバ シー に関す る情報 に接触 しうる. ものが あ るが ,図 書館 の描 かれ 方 には ,い くつ かの特. ことが示 されてい る。彼 は「ときどき考 える一― これ. 徴 が あ る。 まず ,学 生 と図書館 との 関 わ りを描 い た も. 以外 のせ りふ を言 ったら,ど うなる ?. のが 多 い こ とが あげ られ る。受験 勉 強 をす る. 図書館ァ ク ビ. (「. 獣の.
(10) 甲南女子大学研 究紀 要第 39号. 文学・文化編 (2003年 3月. ). 家」「幼女 たち」),図 書館 で調べ もの をす る と親 に嘘. いる. の手紙 を書 く (「 夜顔」),大 学院生 の男女が図書館 で. 職員 は,利 用者 の質問 に対 して, とお りいっぺ んの対. 知 り合 う. (「. 泣 かない女」),女 子高校 生が男子大学生. (『. 墓地を見おろす家』)。 また,「 公園図書館」 の. 応 を して い るだ け で あ る. (『. 闇 の カルテ ッ ト』)。 『欲. と知 り合 った場所 を図書館であるといつわる,大 学生. 望』で は,女 性 の学校図書館司書が ,主 要な登場人物. もに『無伴奏』),な どである。 ま. のひと りであ り,私 立学校 (女 子 中・高校 )の 実態 を. た 『闇のカルテッ ト』 には,図 書館 の状況 を説明 して. ある程度反映 した描かれ方 になってい る。「一種 のサ. いる場面が数 力所あるが,そ こに利用者 として登場 し. ービス業 である」 ことや,図 書館 の本 の選択 について. てい るのはほとん ど学生 で ある。 さらに「夜顔」『無. 「図書館 の本 はあ くまで も図書館 の本 で あ って私有物. 伴奏』 では,学 生の登場人物が,事 実 と異なる状況説. ではない」 とい う一定 の見識 を持 ってい ること,な ど. 明を,保 護者 にする際 の口実に,図 書館 の無難なイメ. は紹介 されてい るが,学 生や教員 に対するサ ービス内. ージが使 われる,と い うス トー リー になつてい る。 図書館 で調べ もの をするケースでは,記 憶喪失状態. 容 については具体的 に描写 されてはい ない。む しろ利. の「ル ンペ ン」男 性 が,昔 の 新 聞 ・雑 誌 を調 べ る. にはもう帰 り支度 を整えて帰途 についてい る」 とヒマ. 闇のカルテ ッ ト』),大 学 を中退 し定職 をもたず にい る人物 が昔 の事件 について新聞 ・雑誌 を調べ る (『 仮. そ うで早 く帰れる職場 とい ったイメー ジになって い. 面 のマ ドンナ』),主 婦 が地域 資料 を調 べ る. を引いて「変 わ り者」 とみ られるようなキャラクタと. が図書館 に行 く. (と. (『. (『. 墓地 を. 用者が少な く「四時五十分 には閉館 し,五 時ち ょうど. る。 また,こ の人物は,他 の教職員 とのあいだに一線. 見おろす家』),作 家志望 で精神的 に不安定な状態 にあ. して描かれてい る。. る男性 が精神医学 の専門資料 を調べ る. スの鏡』)な ど,必 ず しも調べ ることと日常的 には縁. 雨宮町子 の作品では,か つ て小児科医 をしていて現 在 は主婦 の女性が,区 立図書館 で古 い新聞 ・雑誌 を調. のないような立場 の人物が,何 かを調べ る必要がある. べる. (『. ナ ルキ ッソ. シチ ュエーシ ョンにおかれると,図 書館 を利用 してい. 眠 る馬』),競 馬 の騎手が,事 典 な どの参考図 民る馬』)場 面が 書 を北海道 の市立図書館で調べ る (『 日 (『. る点が特徴的である。 また,図 書館 に来てい る「ルン. あ るが,発 表時期 が 1990年 代 後 半 とい う こ と もあ. ペ ン」 や図書館 の朗読 ボラ ンテ ィアをしてい る人たち. り,何 かを調べ る際 に,コ ンピュー タを使 って情報源. が,他 の利用者 や図書館職員か らどうみ られてい るか. にアクセスするシーンもみ られる。 また,雨 宮作品 に. を気 にか け て い る心 理 につ い て も,描 か れ て い る. 登場す る図書館員 は,「 六十 年配 の男性」 (『 眠 る馬』). 闇のカルテ ット』)。 ただ,図 書館 でボラ ンテ ィアを. で,利 用者の質問 に対 して「にこ りともしないで,端. (『. 間の カ. 末 を叩い た。無愛想 だが不親切 ではない」 と,過 度 に. ルテ ッ ト』),学 校図書館 によくきてい た生徒 が卒業後 ヽ ″ 亡 中をはかる (『 欲望』)な ど,図 書館 に関係する こと. 愛想 よ くす ることはないが ,押 し付 けが ましい わけで. が,必 ず しもいい イメー ジにつ なが らないケースがみ. 応 を して い る。 また,「 先月」「三 十 になった」「正 式. られる。. の職員 でな くアルバ イ ト」 の男性職員. してい る女性 は神経症 を病んだ ことが あ り. (『. もな く,必 要な情報 を提供するとい う点では的確 な対. (『. 殺 される理. 小池作品 に登場す る図書館員 は,「 白髪 の男」「初老. 由』)は ,司 書資格 をもってい ないが,カ ウ ンター業. の男」 (『 墓地 を見おろす家』)「 図書館員 の男」「中年. 務 を担当 し,利 用者 の個人情報 に接す ることも可 能な. の女子職員」 (『 闇 の カルテ ッ ト』)「 学校 の 図書館 司. 環境 にある。直接的な被害 をもたらす ことはないが. 書」 (『 欲望』)な どである。「ル ンペ ン」 の利用者 か ら. 利用者 のおかれた状況 をひとり合点 し,独 断的な行動. みて も「敵意 のある感 じは しな」 い し,「 得体 の知 れ. をとってい る。 これ らの職員は,男 性 ではあるが,年. ない人間のことを,少 な くとも職員たちは追 い出そ う. 配者やアルバ イ トで,他 の企業や行政,研 究機関な ど. とは思 つてい な い」 (『 闇 の カル テ ッ ト』)よ うで あ. の意志決定過程 において,中 枢的な存在 となってい る. る。 しか し,図 書館員が不U用 者 か らの質問 に対応する 場合で も,必 ず しも専門的な知識が強調 されてい ると. 年齢 の正規職員男性 ではない。. ,. はい えない。その図書館 の存在す る地域の資料 につい. これ まで 「図書館 はどうみ られて きたか」 とい うこ. ての質問 に関 して も,利 用者 は図書館員がほん とうに. とで,複 数 の作品 に図書館 を登場 させてい る作家 の作. 質問 に有効 な回答 をして くれるのか確信 が もてず ,た め らいがちに質問 してい る し,職 員 の回答 で も,た だ. 品を分析 して きたが,個 人が 「本 を借 りる」 とい う現 代 の図書館 での主要な利用形態が多 く描 かれてい るわ. 長 く同 じ図書館 に勤務 していることのみが強調 されて. けでは必ず しもない。今回 と りあげたふた りの作品で.
(11) 佐藤. 毅彦 :日 本 の女性 ミステリ作家 と図書館 ・続. も,む しろ何 か を調 べ るため に,図 書館 へ 行 くとい う. か,図 書館 がそれにこたえる機関 と考 えられず別 の手. ケ ース の方 が 多 い 。. 段 で解決 されて しまうことが多 い。 はっき り言 って. ,. 調 べ るための場 と して ,多 様 な登場 人物が ,さ まざ. 現在 の公共図書館 の大部分 は,市 民 か ら忘れ られた存. まなシチ ュエ ー シ ョンで 図書館 を利用す る場面 が描 か. 在 であることを認 めなければならない だろ う」 (p.67) と述べ てい る°。その時点 か らすでに 40年 が経過 しよ. れては い る。 しか し,現 実 には,す で に,図 書館 に出 な って きてお り,今 後 は「何 か を調 べ るため にわ ざわ. うとしてい る。 図書館数や利用者数 は増加 し,利 用 さ れる資料 の数 も増加 した。 しか し,図 書館 のイメー ジ. ざ図書館 へ 行 く」 とい うモ チ ー フは,ス トー リー の 中. は,日 本 の社会 にお い て 40年 前 と比 べ て,変 わって. で使 われ な くな ってい く可能性 もあ る。. い ない部分 も存在 してい ると考 えられる。. かけな くとも,多 様 な情報源 にアクセ スで きる よ うに. お わ りに. 5。. 図書館 を取 り巻 く状況 を解明するひとつの糸口 とし て 「図書館 はどうみ られてきたか」 について検討 して. アメ リカでの体験 を もとに,図 書館 につい て精力 的. きたが,図 書館 のイメー ジ,図 書館 が社会 において ど. な発 言 を続 け て い る菅谷 明子 は「 日本 で 『図書館』 と. のような存在 とみ られて きたかは,過 去 の歴 史的 な部. い え ば ,せ い ぜ い 本 を借 りた り,新 聞 ・雑 誌 を読 む. 分 についてだけでな く,今 後 の図書館経営 の方向性 に 影響す ると思われる。図書館 について,現 在 の 日本 で. か ,あ るい は受験 生 の 自習室 とい った イメ ー ジ しか な. い」 と述べ てい る。そうした状況 に対 して,ア メ リカ の「ニ ューヨー ク公 共図書館科学産業 ビジネス図書館. 定着 してい るイメージが存在 してい る状態 のままで 現状 の枠組 みを変 えて,ビ ジネス支援 などのサ ービス. での取材 をふ まえて,日 本 で も「ビジ. を優先 させていって も,そ れが,利 用者に充分 に活用. (通 称 SIBL)」. ネス図書館 とい うイ ンフラは,個 人が持 つ様 々なアイ. ,. されないこ ともあ りうる。. デイアや能力 を最大限に引 き出 し,経 済 を活性化 させ. 図書館 のサ ービス内容 は多様化 し,利 用者 か らさま. る上で,一 考 に価す るもの といえるのではないだろ う か」 と主張す る°。. ざまな要求が よせ られる一方 で,図 書館 が使 える資源. 実生活や仕事 に役立つ情報 を提供する図書館 サ ービ スが, 日本で,こ れまでにも実施 されてい ない わけで はない また,ニ ュー ヨー ク公 共図書館が,ビ ジネ 2)。. ス情報 の提供 に,そ のサ ービス を集中 してい るわけで もない. 3)。. でぁるな らば,今 ,な ぜ ,こ とさらこ うし. は,資 料費 について も,専 門職員 について も,ま す ま す予算 の確保 が困難 になって きてい る。そう した状況 中では,図 書館 のイメージが空洞化 して しまうおそれ があるのではないか'。 2002年 1月 か ら放映 されたテ レビ ドラマ『恋 ノチ カ ラ』 で は,ヒ ロ イ ンの 友 人 「倉 持 春 奈 (23歳 )」 が ,「 司書 をめ ざす OL」 「昼 は仕事 を しなが ら,夜 は. た方向が強調 されるのか。 「ビジネス」 を意識 したサ ー ビスが,他 よ りも優先. 司書 になるための講座 に通 っている」 とい うキヤラク. して提供 された場合 , 日本 で,成 功す る可能性 が高 い. タに設定 され て い た。OLが 「 目指 す」職種 と して 「司書」 が肯定的 にとらえ られてはい る。 しか し,そ. と考 えられるのか どうか,ま た,そ れは利用す るがわ にとって望 ましい ものなのか どうか,な どの点 につい て,多 方面 か ら検証す る必要がある。実際にこれ まで にも,そ うしたサ ー ビスが まった く実施 されて こなか ったわけではない にもかかわらず ,利 用者 の図書館 イ. れ以上具体的なス トー リー展開はな く,実 際 の仕事 の 内容や,そ の専門性 などをア ピール してい るシーンが ° 放映 されたわけではない 。 これ までは「図書館 はどうみ られて きたか」 とい う テーマ について, ミステ リやテ レビ ドラマでの図書館. メー ジが,菅 谷 の指摘 して い る よ うに「本 を借 りた り,新 聞 ・雑誌 を読 むか,あ るい は受験 生の 自習室」. の描 かれ方 を中心 に検討 して きたが,今 後 は,そ れ以. といった ものであるなら,そ れを変えてい くことが. 外 の領域 も視野 に入れて,図 書館 が どのように「み ら. ,. 日本 の図書館 で,ビ ジネス支援サ ービスが定着す るた. れて きたか」 を,歴 史的経過 とともに将来的な動向 と. めの前提条件 となる。. の 関連 に もふれつつ,検 討 して い きたい と考 えて い. 1963年 に出版 された 『中小都市 における公 共図書 館 の運営』 (中 小 レポー ト)は ,当 時 の状況 につい て 「た またま資料 に対す る要求 が起 って も,図 書館 に対 す るこれまでの悪 い イメー ジはその足 をとめて しまう. る。.
(12) 甲南女子大学研究紀要第 39号. 52. は じめに. 1)『 宮本百合子全集』 として,河 出書房 (全 15巻 ,1951 ∼1953),新 日本出版社 (全 25巻 ,1979∼ 1981,別 巻 1 ・2,補 巻. 1・. ). 短編 セ レクシ ョン 4 ミステ リー編』 1997,河 出書房新 社 (初 出「小説推理」1988.8)『 あなたに捧 げる犯罪』. 注 1。. 文学 。文化編 (2003年 3月. 2,1981∼ 1983,補 遺, 1986),か ら刊行 さ. れたシリーズがある。 さらに,現 在 ,新 日本 出版社 か ら新たな全集が刊行 中 (全 33巻 ,2000∼ )で ある。 2)宮 本百合子 「図書館」『文芸』 1947.3. 1989,双 葉 社 ,『 あ な た に捧 げ る 犯 罪』 1992,双 葉 社 (文 庫 ),『 妻 の 女友達』 1995,集 英社 (文 庫 ),に も収 録。. 13)小 池真 理子 『無伴 奏』 1994,集 英 社. (文. 庫 )(『 無伴. 奏』 1990,集 英社 この 作 品 (文 庫)の 裏 カ バ ー には,「 学 園紛 争 ,デ モ,フ ォー ク反戦集会。1960年 代 ,社 の都 ・仙 台。荘 ). ここで は 『宮本百合子全集 第十 七巻』 1981,新 日本. 厳 なバ ロ ック音楽 の流れる喫茶店で出会 い,恋 に落 ち た野間響子 017歳 と堂本渉 021歳 。多感 で不 良 っぽい. 出版社 ,pp。 701-709,を 参照 した。 3)高 村 薫 『晴子情歌 上』2002,新 潮社 高村 薫 『晴子情歌 下』2002,新 潮社. 4)青 森県立図書館 史編集委員会編集 『青森県立 図書館 史』 1979,青 森県立 図書館 ,p.349(な お,こ の 部分 は 『東奥年鑑』 三十六年版 を出典 とすることが記載 されて いる. 女 子高生 と男 か らも女か らも愛 され るような不思議 な 雰 囲気 の 大学 生 の 危 険 で 美 しい 恋」 と記 載 され て い る。 また,佐 々木譲 による文庫版解 説 では「すで に何 ペ. 書館利用規則 (昭 和 二十六年十 一 月 二 十七 日)」 「第 三 章 館外利用 第十条 本県内 に居住 し館長 にお いて. ー ジか この作 品 を読 んだ読者 は,こ の作 品が六十年代 後半 とい う時代 につい ての,ノ ス タルジー に満 ちた小 説 であることに気がつい たろ う」 (p。 287)と 述べ られて い る。小 池真理子 は,高 校時代 か らの十代 後半の 一 時. 必要 と認 めた者 には,資 料 を館外 に携 出利用 させ る こ とがで きる」「第十 三条 同時 に携 出で きる冊数 は一冊. 期 を仙 台 で過 ご してお り,そ の ことが ,こ の作 品 に も 反映 されてい ると考 えられる。. ). 5)『 青森県立図書館史』pp.760-762,に は,「 青森県立図. とす る。但 し,特 別 の事 由によ り館 長 の 許可 を得 る者 は,こ の限 りではない」 とある。 6)『 青森 県立 図書館 史』pp。 942-957,に は,1970年 代 後半 の時点 で も,青 森県内 の 多 くの 図書館 では,貸 出 冊数制限が,2冊 ない し 3冊 (弘 前市 立弘前図書館 のみ. 4冊 )で あることが示 されてい る。. 2.小 池真理子 と図書館. 1)小 池真理子『知的悪女 のすすめ』 1978,山 手書房. 2)小 池真 理子 「妻 の 女 友 達」『あ な た に捧 げ る 犯 罪』. 14)小 池真理子 「団地」『恐怖配達 人』 1993,双 葉社. (文. 庫)『 恐怖配達人』 1990,双 葉社 ,に も収録。 15)小 池真 理 子 「 首」『薔 薇 船』 1999,早 川 書 房 (初 出 「 ミステリマガジン」 1992.8). 16)小 池真理子 「封印 の家」『薔薇 の木 の 下』2000,徳 間 書 店 (初 出「小 説 現 代」 1993.H)『 記 憶 の 隠 れ 家』 1995,講 談社 (文 庫 )に も収録。 17)小 池真理子 「花 ざか りの家」『記憶 の 隠れ家』 1995, 講談社 (文 庫 )(初 出 「小説現代」 1994.6) 18)小 池真理子 『欲望』 (前 掲 ). 19)「 司書教諭」 は「学校図書館法」 の条文 に規 定 されて. 1989,双 葉社. 3)小 池真理子 『恋』 1995,早 川書房 4)小 池真理子『欲望』 1997,新 潮社. い る正規 の資格 であ り,「 置 かなければな らない」 とさ れて い るが,こ れ までは,少 数 の 例外 を除 い て,学 校. なお「島清恋愛文学賞」 につい ては,石 川県美 川町 の HPの 中で,概 要 0選 考委員 プロフ イール・歴代受賞 者 ,が 紹介 されてい る。. 現場 で発令 される ことは なか った。 1997年 に法改正が 行 われ,猶 予期 間が設定 されて い たが,2003年 4月 か らは,12学 級以 Lの 小 ・中・高等学校 には,必 ず 「司 書教諭」が発 令 され る こ とにな る。一 方 「学校 司書」. http:〃 www.townomikawaoishikawaojP/. 5)小 池真理子 『墓地 を見お ろす 家』 1993,改 訂初版 ・. は法律 に定 め られた正規の資格ではな く,現 在学校 図. 角川 ホ ラー文庫 (初 出 『墓地 を見お ろす 家』 1988,角 川文庫書 き下ろ し長編 6)小 池真理子 『闇のカルテ ッ ト』 1989,双 葉社 7)小 池真理子 『仮面 のマ ドンナ』 1987,角 川書 店 (文. 書館 での事務作業 を担当 して い る職員 を総 称 して使 う ことが 多 い。「学校司書」 として勤務するために必 要 な 資格 は,特 に定 め られてはい ない。. ). 英社. 庫). 8)小 池真理子 『ナ ルキ ッソスの 鏡』 1993,集 英 社. (文 庫 )(初 出 「小説現代」 1993.7) 10)小 池真理子 「夜顔」『水無月 の墓』 1996,新 潮社 (初 1994。. (初. 出 「小説す ばる」 1994.5). (初. 出「小説すばる」 1992.2∼ 9) 9)小 池真理子 「獣 の家」『記憶 の隠れ家』 1995,講 談社. 出「小説 NON」. 20)小 池真理子「寺 田家の花嫁」『1蚤 しい 隣人』 1995,集. 10). 11)小 池真 理子「幼 女 た ち」『美神 (ミ ュー ズ)』 2000, 講談社 (文 庫 )(初 出「小説現代」 1995。 5)『 美神 (ミ ューズ)』 1997,講 談社 ,に も収録。 12)小 池真理子 「泣 かない女」『妻 の 女友達 小池真理子. 3.雨 宮町子 と図書館. 1)雨 宮 町子 『骸 の 誘惑』2000,新 潮 社 誘惑』 1998,新 潮社. (文. 庫 )(『 骸 の. ). 2)雨 宮町子『眠 る馬』 1999,幻 冬社 3)雨 宮 町 子 『殺 され る理 由』2000,徳 『問題小説』 1998。 10) 4)雨 宮町子 『骸 の誘惑』 (前 掲). 間 書 店 (初 出.
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