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精神遅滞児の課題解決における神経心理学的研究

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精神遅滞児の課題解決における神経心理学的研究

内 田 芳 夫*・有 村 重 輝**

1993年10月15日 受理)

Neuropsychological study of problem solving in Mental Retardation●       ●

Yoshio Uchida and Shigeki Arimura

Ⅰ.問題 と 目 的

神経心理学は,脳の局部に損傷をもつ患者について,その心理現象,心理過程の変化を明確な実 験心理学的手法を用いて究明し,なんらかの心理機能と大脳の各部位との具体的関係を明らかにし ようとする学問である(松野, 1972)。神経心理学の起源は, Broca (1861)が大脳左半球皮質の下 前頭回後部に病変をもった患者が,言語理解はできるが言語表出に障害を示す運動失語の症例を明 らかにした時点からと考えられる。その後, Wernicke (1874)が感覚失語の症例を発表した。この ような「狭い局在論」に対し,アンチ局在論者は, ①同じ皮質部位の損傷で多くの機能が障害を受 けることや, ②同一機能の障害が異なる皮質部位の損傷によっても生じるという知見から,損傷部 位を診断することはできない,と主張した。この見解には,心理機能を脳と切り離してしまう危険 性が存在していたが, Luria (1973)は,局在論と全体論の理論上の弱点を克服し,システム的力動 的局在論を提起した。彼は, 「人間のあらゆる精神活動は複雑な機能系であり,その実現はそのお のおのが,この機能系を保障するためにそれぞれ貢献している脳の諸装置の協調的に働く全複合体 により保障されている」と考えた。 従来までの神経心理学は,大人の脳損傷患者を対象にした研究が主流であったが, 1970年代に Luriaのイニシアチブによって小児期の神経心理学が形成され始めた。その後, 1980年頃から小児 を対象とした発達神経心理学的研究が行われるようになり,成人を対象とした実験結果とは異なる 知見が得られつつある(Developmental Neuropsychology, 1985) 。 わが国においては, 1970年代後半から知能障害児を対象に,碁石配列課題(黒田1979,神, 1982),コース立方体組み合わせテスト(小松1983,近藤, 1988,内田・他, 1992),ハノイの塔 (野口・他, 1989),図形模写・描画(小林・他, 1987),等の課題を用いて,さらに自閉症児を対 ・鹿児島大学教育学部障害児教育学科 ・*鹿児島県名瀬市小宿小学校

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62 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第45巻1994 象に, Wisconsinカード分類テスト(熊谷, 1984,上国料・他, 1985)やリズム再生や交替図形(黒 田, 1989),等の諸検査を用いて発達障害の脳的基礎の推定診断や神経心理学的診断に基づく機能 回復教育の試みが行われている。 本研究では, 「未知なる宇宙」とも呼ばれている前頭葉に焦点を当てて,前頭葉機能障害を敏感 に反映するWisconsinカード分類テスト(WCST)および「ハノイの塔」課題(TOH)を,年長精神 遅滞児・者に実施し,両課題の解決にみられる精神遅滞児・者の特徴を神経心理学的観点から検討 することである。

Ⅰ.方

汰 1.被  験  者 精神遅滞児・者15名,生活年齢(CA) : 13歳0か月-18歳3か月(平均16歳2か月) 精神年齢(MA) : 4歳7か月∼9歳8か月(平均6歳9か月) 2.課題と手続き 被験者に実施した課題は, ①Wisconsinカード分類テスト(WCST)と② 「ハノイの塔」課題 (TOH)の2種類である。 (1) Wisconsinカード分類テスト

田赤

:・:・:・:・苅

田育

◎ ◎ ◎ ◎ 図1 Wisconsinカード分頬テストの刺激カード(上)と反応カード(下) このテストは,色・形・数がそれぞれ4種類あるカードの分類行動を調べるものである。まず, 被験者に色・形・数がそれぞれ4種類ある64枚の反応カードを与える。被験者は, 4枚の刺激カー ドの下に分類していくことを求められる(図1参照)。例えば, 2つの赤い十字の反応カードは色 に関しては刺激カードト・(左端)に分類すれば正反応になり,形に関しては刺激カード3,数に関 しては刺激カード2が正反応となる。被験者が1枚のカードを分類し終るごとに,正誤の評価を被 験者に告げる。最初の分類カテゴリーである色に対して, 6試行連続して正反応が得られたならば, 次の分類カテゴリーに移行する。しかし,被験者には分類基準の切り換えについて何ら知らせない。 このテストは,被験者が第6カテゴリー(色-形-数一色-形-敬)までの分類が完了した時,あ

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るいは64枚のカードをすべて分類した時点で終了する。 (2) 「ハノイの塔」課題 「ハノイの塔」課題とは, 3本のペグの1本(PI)に, n枚のディスクが下から大きい順にお かれた初期状態から,移動規則に従って,すべてのディスクを他の1本のペグ P3 に, n枚の ディスクを下から大きい順に置かれている目標状態へと到達できるように移動させる課題である。 移動規則は, ①一度に, 1枚のディスクしか動かしてはならない, ②より小さいディスクの上に より大きいディスクを乗せてはならない,というものである。 被験者には,初期状態から目標状態への移動を告げ,移動規則を説明した後で,課題を遂行させた。 課題遂行中に,ルール違反による誤りが見られた場合には,一時中断し,検査者が規則違反の見ら れた直前の状態に戻してから,再び課題を続行させた。 なお,課題解決過程は,すべてVTRに記録し再生した。 3.実 施 期 間 1992年11月17日-11月25日 川HI 果 1. Wisconsinカード分頬テスト(表1参照) (1)誤反応総数と固執性誤反応数との相関は, 0.728であった(図2参照)。固執性誤反応率が, 平均して66.48%であり,誤反応総数のうち固執性誤反応が多いことが認められた。 (2)固執性誤反応数と分類カテゴリーとの相関は, 0.644であった(図3参照)。 (3) MAと誤反応総数との相関は, 0.514であった(図4参照)。総じて, MAが高くなるにつれて, 誤反応総数が減少する傾向が認められた。一方, MAと分類カテゴリー数との相関(r-0.348)お よびMAと固執性誤反応数との相関(r-0.281)はいずれも低かった。 (4) MAと第一カテゴリー獲得試行数との相関は, 0.567であった(図5参照)。 表1 WCSTの遂行成績 疲験児 誤 反応 固 執 性 固 執 分類 カテ 被験児 誤 反応 固 執 性 由 執 分 類 カテ 総 数 誤反応数 反応 率 ゴ リー数 総 数 誤反応 数 反応率 ゴリー数 H ● R 35 23 65.7 2 H ●M 47 4 6 97 .9 0 N - G 52 52 100 0 T . H r 44 23 52 .4 2 K ● A 29 14 48 .3 5 M ●E 4 1 18 43 .9 1 T ● T 30 27 90 .0 0 A k.N 39 30 76 .9 0 T .H h 43 13 30 .2 0 M ●M 37 21 62 .1 1 A i. T 40 12 30 .0 3 A ■ T 41 39 95.9 1 Y ● T 37 19 51.4 3 U . E 44 43 97.7 0 N ● Y 3 1 17 54 .8 3

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固執性誤反応数 64 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第45巻(1994) ■ ■ V = M O + M 1 * x + ... M 8 干x 8 + M 9 * x 9 l ⊂) M 0 2 .4 1 0 4 4 7 M 1 - 6 .2 5 6 3 6 5 9 3 3 ○ ○ LM 2 0 .0 9 5 3 2 8 3 6 7 8 1 7 R 0 .7 2 8 6 6 9 3 0 0 5 5 ○ ■○ ○ ○ ○ ○ ○ I I 25    30    35    40    45    50    55 図2 誤反応総数と固執性誤反応数との関連    誤反応総数 分類カテゴリー数 】 一 一 Y = M O + M 1 * x + …PM 8 ★x 8 + M 9 ★X g M O 5 一0 6 3 2 13 9 1 8 7 M 1 - 0 .2 0 6 9 1 8 2 1 1 0 9 M 2 0 .0 0 2 12 4 7 0 2 8 3 7 6 R 0 ●6 4 4 7 3 8 ー3 5 8 2 ,L ■J l I 1 0     20     30     40     50     60 図3 固執性誤反応数と分類カテゴリー数との関連 固執性誤反応数

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誤反応総数 I V = M O 十M 1* x + ... M 8 ★x 8 + M 9 * ㌔ ト ○ M 0 8 0 .9 9 4 14 3 5 6 1 ■M 1 - 0 .8 8 3 2 2 0 4 0 5 7 2 ○ ■M 2 0 .0 0 4 3 7 9 7 3 12 8 6 6 R 0 .5 14 7 3 9 6 7 4 13 ○ ○ ○ ? ○ ○

P

- ( , J 50   60  70   8   90 100 1 10 120 図4 MAと誤反応総数との関連      MA(月数) 第-カテゴリー達成試行数 V = M O + M 1* x + M 8 * x ー+ M 9 ★X 9 1 M 0 ▼2 2 .7 2 7 5 2 2 7 2 M 1 - 4 .1 6 3 9 7 6 3 5 5 M 2 0 .0 2 0 5 1 9 2 6 0 2 2 9 R 0 .5 6 7 6 8 18 8 7 4 6 50  6   70  80  90 100 1 10 120 図5 MAと第一カテゴリー達成試行数との関連 MA(月数)

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66 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第45巻(1994 2. 「ハノイの塔」課題(表2参照) (1)移動回数とMAとの相関は0.355であったが,規則違反とMAとの相関は, 0.559であった (図6参照)。 MAが高くなるにつれて,規則違反による誤反応は減少する傾向が認められた。 (2)移動回数と移動時間との相関は0.367であったが,移動回数と第一試行に要した移動時間と の相関は, 0.464であった(図7参照)。第一試行に要した移動時間が長い者ほど,移動回数が少な い傾向が見られた。 表2 TOHの遂行成績 被験児 移動 回数 規則違反 によ 被 験児 移動 回数 規則違 反 によ (回) る誤 り (回) (回) る誤 り (回) H ● R 14 2 H ●M 23 3 N ● G 17 8 T . H r 25 3 K ● A 7 0 M ●E 8 2 T ● T 35 0 A k.N 30 1■ T .H h 39 4 M ■M 8 1 AI. T 8 1 A ● T ll 0 Y ● T 7 0 U ● E 15 2 N ● Y 2 2 5 規則違反による誤り(回) t l 一 一 . l y = M O * M 1 * x + ... M B * x 8 + M 9 ★H g ● M 0 6 .4 3 5 9 0 5 5 2 4 M l ノ - 0 .0 3 7 0 9 7 5 3 5 9 1 1 ■M 2 - 0 .0 0 0 16 7 3 6 2 6 2 4 7 3 R 0 .5 5 9 9 5 9 3 2 5 0 3 ○ ○ ○ I I t 50   60   70   80   90  100 1 10 120 図6 MAと規則違反による誤りとの関連     MA(月数)

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血 巴 -小       -                        レ   -  -      T L ・ ・ 1         1 -・ -ト                       ニ   ー           い 移動時間(秒) ○ ● I l I Y = M O ◆ M 1 * x + ... M 8 ★X 8 + M 9 ★X g P M ●0 6 5 .5 2 8 8 4 3 7 3 2 】 ● ● ● , M 一5 .2 6 0 6 0 3 2 3 8 5 ■M 2 0 .0 9 8 6 9 9 3 9 亨4 6 9 R ー0 .4 6 4 0 0 7 2 3 9 7 7 ○ 8 i ○ ○ O n ○ l I l l l 10   15       30    35 図7 移動回数と第一試行に要した移動時間との関連 40 移動回数(固) 3. Wisconsinカード分類テストと「ハノイの塔」課題との関連 (1) WCSTの分類カテゴリー数とTOHの第一試行に要した移動時間との相関は, 0.907であっ た(図8参照)。 (2) WCSTの誤反応総数とTOHの規則違反による誤り回数との相関は, 0.759であった(図9 参照)。また, WSCTの固執性誤反応数とTOHの規則違反による誤り回数との相閑はO.667であっ た(図10参照)。

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68 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第45巻(1994 移動時間(秒) -ーY ■、= M O + M 1 * x + ... M 8 * x 8 + M 9 ★ X g M O 8 . 1 1 4 0 3 5 0 8 7 7 M 1 ー2 1 .9 1 6 6 6 6 6 6 7 M 2 8 -5 4 8 2 4 5 6 1 4 R 0 .9 0 7 7 9 8 0 2 1 6 8

喜\

I I I I I -1 0   1   2    3    4    5    6 図8 分類カテゴリー数と第一試行に要した移動時間との関連 分類カテゴリ一致 規則違反による誤り(回) Y=MO +Ml*x +...M8★x8+M9★xg 30.090729 198 -1.6585581 723 M 2 0 .0235 130 93249 R 0.75995 53 1898 ○ ○ ○ 25 30     35     40     45     50 図9 WCSTの誤反応数とTOHの規則違反による誤りとの関連 55 誤反応総数

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規則違反による誤り(回) い1・-宇︹1いソ1-トHJ"1∵-=1 1、=-モ︰-=一一書一一一-Y = M O + M 1 * x + ... M 8 * x8 + M 9 ★H g M 0 7 .9 9 6 9 4 5 6 2 5 1 M l - 0 .5 2 8 2 9 3 4 6 9 3 6 M 2 0 .0 0 9 5 1 3 18 8 2 6 3 4 良 0 .6 6 7 6 8 15 8 0 3 1 1 0      20      30      40      50 固執性駅反応数 図10 WCSTの固執性誤反応数とTOHの規則違反による誤りとの関連

Ⅳ.考

察 1. Wisconsinカード分類テスト MAと分類カテゴリー数との相関(r-0.348)および, MAと固執性誤反応数の相関(r-0.281 が,いずれも低かった理由として, MAは脳の後部領域を反映する知的水準の指標である(加藤・ 鹿島, 1989)のに対し,分類カテゴリー数(概念の変換)および固執性誤反応数(保続現象)は, 前頭葉機能を反映する指標であり,両者の脳的基礎が異なることによるものと考えられる。 また,固執性誤反応数と分類カテゴリー数との間に,信頼できる高い相関(r-0.644)が得ら れたのは, Milner (1963)が指摘しているように,両者の脳的基礎(前頭葉)が共通しているから であろう。 MAと第一カテゴリー獲得試行数との関連において, MAの高い者ほど,少ない試行数で第一カ テゴリー(色)を発見することができる傾向が認められた。第-カテゴリー獲得とは,ある概念の 形成を意味し,その機能は大脳皮質後部の三次野によるものである(Luria, 1976), このように,脳の後部領域の情報を反映する第一カテゴリーの獲得とMAは,いずれも脳的基 礎(後部領域)が共通していることから,両者に信頼できる相関が得られたと考えられる。 さらに,固執性誤反応が多く見られたが,被験者個々のカード分類行動を類型化すると, ①最初 選択したカテゴリーに固執するタイプ, ②第-カテゴリー(色)から第二カテゴリー(形) -の移

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70 _ ヨ ■ I A ヨ         ∵ ト                         1 -  ト . -八 ・ 1 い 1 ・ r l l     叫       り                   V L   ︰   ・           ヨ 1 1 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第45巻(1994 行が困難なタイプ, ③第二カテゴリーから第三カテゴリー(敬) -の移行が困難なタイプ,等が認 められた。 2. 「ハノイの塔」課題 「ハノイの塔」課題を解決するために要求される心理学的内容は, 「どれだけ先まで移動プランを 立てることができるか」ということ,すなわち, "自ら行為のプランを立案すること"である(野口, 1990)。さらに, Spitzら(1981)は,精神遅滞児群における「ハノイの塔」課題の遂行状況を検討 するさいに, 「探索の深さ(depthofsearch)」を考慮する必要があるという見解を提起した。この 探索の深さという概念は,プランニングの能力を評価するうえで有効な指標と考えられる。 MAと移動回数との相関が0.355と低かった理由として, MAが脳の後部領域の情報を反映する指 標であるのに対し, 「ハノイの塔」課題を解決するためには,野口(1990)やSpitzら1981が指 摘しているように,プランニング能力(前頭葉の関与)が要求され,両者の脳的基礎が異なること に起因したものと考えられる。 一方, MAと規則違反による誤りとの関連は,比較的高い相関(r-0.559)が得られた。 この背景にはMAの高い者ほど,言語による行動調節機能が働き,ルール違反が減少したと考 えられる。しかし,言語による行動調節機能は前頭葉の関与であることを考えると,両者の脳的基 礎は異なり,これまでの論述と矛盾するところであり,今後の検討課題である。 さらに,移動回数と第一試行に要した移動時間との関連を検討した結果,第一試行に要した移動 時間が長い者ほど,移動回数が少ない傾向が認められた(r-0.464)。これは,第一試行に要した 移動時間が, 「ハノイの塔」課題全体のプランニングの指標となり得ることを物語っている。 3. Wisconsinカード分類テストと「ハノイの塔」課題との関連 WCSTの分類カテゴリー数とTOHの第一試行に要した移動時間との間に,非常に高い相関(r -0.907)が得られた。 WCSTにおいて,分類カテゴリー数が多いということは,概念の形成とそ の変換が良好であることを意味し,また, TOHの第一試行に要した時間が長いということは,衝 動的な解決方略を採択せずに,適切なプランニングが行われたことを意味する。つまり,概念の変 換とプランニング機能の脳的基礎は前頭葉にあり,その共通性から高い相関が得られたものと仮定 できる。 さらに, WCSTの固執性誤反応数とTOHの規則違反による誤り回数との間にも,信頼できる高 い相関(r-0.667)が得られた。固執性誤反応数が少ないということは,前述したように保続傾 向が低く,概念の変換が良好であることを示唆しており,また,ルール違反による誤反応が少ない ということは,言語による行動調節が十分に機能していることが仮定できる。概念の変換や言語に よる行動調節に関与する脳的基礎は前頭葉にあり,その共通性から高い相関が得られたものと考え られる。 本研究の一部は,日本特殊教育学会第31回大会において口頭発表した(内田, 1993)。

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Ⅴ.結

論 召 書 h 罰 代 目 -" 那 加 翁 朋 u H 判 別 p r H n か   げ -H " -叩   -          -      小 爪 男 日 付   爪 -引 -    -                  -1 -; i H J I     ト N 日 羽 引 封 ぷ i け 査 句 点 胡 小 山 m p 莞 1. WCSTにおける分類カテゴリー数や固執性誤反応数とMAとの相関は,いずれも低かった。 2. WCSTにおいて, MAの高い者ほど第一カテゴリー獲得試行数(概念形成の指標)は,減少傾 向にあった。 3. TOHにおける第一試行に要した時間(初期段階のプランニング)が長い者ほど,目標状態ま での移動回数が少なかった。 4. WCSTの分類カテゴリー(概念変換の指標)とTOHの第一試行に要した移動時間(プランニ ングの指標)との間に,高い相関が認められた。 5.精神遅滞児・者の発達的特徴や指導の手がかりを得る際に, MAを指標にするだけでは不十分 であり, WCSTやTOH,等の課題を通した神経心理学的アプローチが有効であることが示唆 された。 文     献 1)神常雄(1982) :普通児および知能遅滞児における意識的行為の発達.岩手大学教育学部年報, 41, 157-177. 2)上回料里美・内田芳夫(1985) :自閉症児の認知に関する神経心理学的研究.日本特殊教育学会第23回大 会発表論文集, 494-495. 3)加藤元一郎・鹿島晴雄(1989) :概念の形成と変換について(1).精神科治療学, 4(4), 541-545. 4)小林久男・田中克典・中谷恭子・松野豊(1987) :精神遅滞児における図形描画の発達的検討.発達障害 研究, 9(3), 215-224. 5)小松秀茂(1983) :知能障害児の空間的認識・構成活動の構造的分析.いわき短期大学紀要, 95-107. 6)近藤文里(1988) :精神薄弱児の構成活動に関する研究.滋賀大学教育学部紀要, 38, 95-107. 7)熊谷高幸(1984) :自閉症児のカード分類反応.特殊教育学研究, 21(4), 17-23. 8)黒田直実(1979) :重度知恵遅れの子どものプログラム機能について.障害者問題研究, 19, 2ト30. 9)黒田吉孝1989) :自閉症児ならびに失語症者における言語の叙述機能の特徴とその障害に対する神経心 理学的分析.障害者問題研究, 56, 60-69. 10) Luria, A.R. (松野豊訳(1976) :人間の脳と心理過程.金子書房. ll) Luria, A.R. (鹿島晴雄訳(1973) :神経心理学の基礎.医学書院. 12)松野豊1972) :思考の神経心理学(1),児童心理, 179-196.

13) Milner, B. (1963) : Effects of different brain lesion on card sorting. Arch Neurol, 9, 90-100.

14)野口和人・松野豊(1989) :知能障害児と健常児の交換課題の解決に及ぼす解決様式及び課題材料の効果(3). 日本特殊教育学会第27回大会発表論文集, 140-141.

15)野口和人(1990) :知能障害児におけるプランニングの障害とその改善法.松野豊編著「障害児の発達神 経心理学」,青木書店, 197-204.

16) Spitz, H. H. (1981) : A note of general intelligence and the MA deviation concept. Intelligence, 5(1) , 77-83.

17)内田芳夫・樋口美樹(1992) :精神遅滞児の構成活動に関する研究,鹿児島大学教育学部研究紀要, 43,

83-94.

18)内田芳夫(1993) :精神遅滞児の課題解決における神経心理学的研究.日本特殊教育学会第31回大会発表 論文集, 262-263.

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