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在, 累 積 導 入 量 の 9 割 以 上 を 占 める Si 太 陽 電 池 の 場 合 は 約 29 が 非 集 光 時 の 最 大 値 である. 半 導 体 のバンドギャップ より 小 さいエネルギーの 太 陽 光 は, 半 導 体 中 で 吸 収 されずに 透 過 してしまい,Si セルの

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42 556 1 東京大学先端科学技術研究センター(〒1538904 東京都目黒 区駒場461) 42 556 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn.

量子ドット太陽電池の現状と将来展望

崇

1

Recent Progress and Future Prospects for Quantum Dot Solar Cell Technology

Yoshitaka OKADA1

1Research Center for Advanced Science and Technology, The University of Tokyo, 461 Komaba, Meguro-ku, Tokyo 1538904, Japan

(Received May 4, 2012, Accepted August 6, 2012)

In order to surpass the theoretical Shockley-Queisser limit of energy conversion e‹ciency of a single-junction solar cell, advanced concepts using multi-junction tandem structures and quantum nanostructures are presently under intense research. Recent develop-ments and future research opportunities with quantum nanostructure photovoltaics are reviewed.

. は じ め に NEDO(独新エネルギー・産業技術総合開発機構)が発表 した太陽光発電ロードマップ(PV2030+)1)では,わが国の 太陽光発電の具体的な導入目標として,2020年までに現状 の10倍,2030年には40倍とすることが掲げられている.ま た最近では,本年 7 月に導入する「再生可能エネルギーの 全量固定価格買い取り制度」の原案がまとめられ,電力会社 が 発 電 事 業 者 か ら 買 い 取 る 際 の 価 格 は , 太 陽 光 発 電 が 1 kWh 当たり42円などとなっている.今後再生可能エネル ギーの大規模普及が益々加速することになる. 一方,太陽電池のエネルギー変換効率は,現在主流の結晶 Si 太陽電池で Shockley-Queisser の理論値2)(Si の場合約29 )にほぼ近づいている.そこで,従来の延長線上にない新 しいアプローチやコンセプトを取り入れることにより,単接 合太陽電池の変換効率を上回り,かつ製造コストが50円/W 以下の低コスト化が展望できる次世代型高効率太陽電池の研 究開発が益々重要視されている. 1980年に多接合タンデム太陽電池が提案され,変換効率 は最大68になることが理論的に示された3).多接合タンデ ムセルでは,複数の異種半導体を,太陽光の入射側よりワイ ドバンドギャップ材料からナローギャップ材料へと順番に積 層させて,全体として太陽光スペクトルとの整合を高める方 式である.2009年,独 Fraunhofer 研が,族化合物半 導体を用いた InGaP/InGaAs/Ge 系 3 接合タンデム太陽電 池で,450倍集光動作下で41.8の世界最高効率(当時)を 報 告 し た4). ま た 2011 年 に は , 米 Solar Junction 社 が

In-GaP/GaAs/GaInNAs(Sb)系 3 接合タンデムセルで,500倍 集光下で43.5を達成し,世界記録を塗り替えた5).国内で はシャープ社が,非集光のセル効率として世界最高の36.9 を2011年に報告し6),現在集光セルの開発にも着手してい る.集光型太陽電池の世界の生産量は,2007年に宇宙用と して約 1 MW/年,また地上用では100~200 kW/年(500倍 集光で50~100 MW/年)に達している.今後2015年頃には 約 1 GW,さらに2030年頃には約40 GW にまで達し,これ は全太陽光発電導入量の約 1/3 を占めるまでになる7) 他方,半導体量子ドットを導入して太陽電池の高効率化を 図る量子ナノ構造太陽電池の研究開発も活発化している8) 量子ドットの利点は,◯同じ材料でも,その大きさを変える だけで光吸収の波長範囲を紫外光から近赤外光にわたって広 くチューニングすることができること(量子サイズ効果), ◯従来型の太陽電池では熱損失として失われてしまうエネル ギーを有効利用することが期待できること(ホットキャリア 効果,マルチエキシトン生成効果),◯量子ドットを周期的 に配列させた超格子構造を用いて,赤外光を吸収させるため のミニバンドを人工的に作りつけることができること9),そ して◯有機材料と組み合わせたハイブリッド太陽電池や,色 素に替えて量子ドット増感型太陽電池といった低コストのタ イプの太陽電池に適用できること,などがある.上記◯の量 子サイズ効果を応用したセル開発は主に Si 系材料で検討が 進んでいる.他方,上記◯と◯に関する研究技術開発は近年 特に盛んである.量子ドットを高密度に周期配列させた超格 子構造では,量子ドット間の結合(カップリング)が起こり, 個々の量子ドット中にある離散化されたエネルギーが 1 つ の束(バンド)となってミニバンドが形成される.この中間 バンドを介した光学遷移を利用して,赤外光の光を有効に吸 収し太陽電池の高効率化を図るものである. 本稿では,このような理論変換効率60以上の超高効率 化が可能とされる量子ドット太陽電池について,現状と将来 展望について解説したい. . 量子ドット中間バンド型太陽電池 . 中間バンド型太陽電池の原理 従来型の単接合太陽電池のエネルギー変換効率の理論最大 値は,Shockley-Queisser の熱力学に基づく詳細平衡モデル により非集光で約31,最大集光時に約40と計算され る2,10).詳細平衡モデルでは,以下を仮定する.1 つのフ ォトン吸収により 1 つの電子正孔対が生成され,電子は伝 導帯,正孔は価電子帯の各バンド内で速やかに熱緩和する, 再結合過程として発光再結合のみを考える,吸収層内で 各バンドの擬フェルミ準位は位置に依らず一定で,電子およ び正孔の分布はセル内で一様である,そして吸収層は十分 厚く,また表面での反射損失は無視できる. 得られる変換効率の値はセル材料の物性値に依存し,現

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43 557 Fig. 1 Schematic energy band diagram for intermediate band

(IB) solar cell. IB consists of superlattice miniband formed by quantum dots, or multi-band formed in band anti-crossing material.

Fig. 2 DiŠering operation concepts in multi-junction tandem solar cell (left) and IB (multi-band) solar cell (right).

43 557 ―( )― Vol. 55, No. 12, 2012 在,累積導入量の 9 割以上を占める Si 太陽電池の場合は約 29が非集光時の最大値である.半導体のバンドギャップ より小さいエネルギーの太陽光は,半導体中で吸収されずに 透過してしまい,Si セルの場合,透過損失は全太陽光エネ ルギーに対して15~19程度ある.他方,バンドギャップ より大きいエネルギーの太陽光が入射し吸収されると,一部 は熱となり失われる.こうした熱損失は,全太陽光エネル ギーに対して約30にもなる.このように現在の単接合太 陽電池では,太陽光エネルギーの約半分は,透過損失と熱損 失により発電に寄与できていないことになる. Fig. 1に 合 計 3 つ の バ ン ド か ら な る 太 陽 電 池 の エ ネ ル ギーバンド構造図を示す.バンド 1 とバンド 3 は,バルク 結晶の場合,それぞれが価電子帯と伝導帯にあたり,バンド 2 はその間に量子ドット構造中のミニバンドなど人工的に導 入した中間エネルギーバンドである.このようにして,高い エ ネ ル ギ ー 域 の 太 陽 光 は バ ン ド 1 と 3 の 間 の 遷 移 を 使 っ て,また中間エネルギー域の太陽光はバンド 1 と 2,もしく はバンド 2 と 3 の間の遷移を使って吸収させることで,多 接合タンデム型太陽電池の場合と同様に,太陽光スペクトル との整合を高めて変換効率が増大する.この場合,太陽光を 吸収して量子ドット超格子からなる中間バンドに励起された 電 子 は ,も う 1 つ 光 子 エネ ル ギ ーを 吸 収す る こ とに よ っ て,量子ドットの外へ抜け出ることができる.脱出した電子 は,拡散・ドリフト中に別の量子ドットに再び捕獲されるも のがでてくる.この場合,捕獲・光励起(脱出)の過程を繰 り返しながら電極まで移動できることが必要である.一方, 量子ドット周辺のポテンシャルを持ち上げることによりトラ ップを抑制できるとする報告もある11).したがって,電子 の脱出速度は,量子ドット内での発光再結合や欠陥準位など の局所準位を介した非発光再結合過程の平均速度よりも十分 に速くなければならない.こうして,太陽電池の出力電圧の 減少を抑えつつ,出力電流および変換効率を増大させること が可能になる.一般に,InAs/GaAs 材料系などのタイプ ヘテロ構造の量子閉じ込めでは,キャリア再結合時間は数 ns のオーダーである.そこで,InAs/GaAsSb 系などのタイ プ構造にして,キャリア寿命を一桁以上長くする検討が成 されている12,13) 多接合タンデム型と中間バンド型太陽電池は,広いスペク トルを有する太陽光のエネルギー帯を細かく分割して,それ ぞれのスペクトル帯に適したバンドギャップあるいは中間バ ンドをもつ材料を使って光電変換を行うという点で,動作原 理は似ている(Fig. 2).現在,InGaP/InGaAs/Ge 系の 族化合物半導体を用いた 3 接合タンデム型太陽電池が実 用化されているが,このとき,InGaP トップセルは約650 nm 以下の短波長帯の太陽光を,InGaAs ミドルセルは650~ 900 nm の波長帯を,そして Ge ボトムセルは約900~2000 nm の赤外光を吸収するように設定されている.この 3 つの サブセルは,電気的に直列に接続されているため,タンデム セルの開放電圧は 3 つのサブセルの光起電圧の和で与えら れることになる.一方の短絡電流は,3 つのサブセルで発生 する光電流の中で最も小さい値に律速される.またこの 3 つのサブセルは,“トンネル接合インターコネクト層”を介 して物理的・電気的につながっている.トンネル接合層は, 電気的には低抵抗で直列抵抗損が小さく,トンネルピーク電 流密度が太陽電池の短絡電流密度より十分に大きいことが必 要である.また,光学的には太陽光を下部へ通す“透明”な 高エネルギーギャップの材料であること,そしてサブセルと 格子整合し,高品質な単結晶が形成可能であることが必要で ある.このため多接合タンデム太陽電池の製造には高度な技 術を要し,変換効率50以上を目指すための 4 接合化,5 接 合化技術の開発が課題である. 一方,中間バンド型太陽電池の特徴は,中間バンドはホス トとなる半導体の伝導帯と価電子帯,すなわち外部回路とは 電気的に絶縁された“浮島”にしていることである.太陽光 を吸収して価電子帯から中間バンドに励起された電子は,も う 1 つ別の光を吸収して伝導帯に励起されるか,吸収が起 こらない場合は再結合過程を経て元の価電子帯の状態に戻る かのどちらかの遷移しかとれないという状態を作り出す.し たがって電気回路で考えた場合,3 つのダイオードが直並列 につながった回路になり,変換効率の最大値で比較すると 3 接合タンデムセルとほぼ競合することになるが,多接合タン デムセルでは欠かせないトンネル接合層が不要といった利点

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Fig. 3 Left: Schematic energy band diagram for quantum dot IB solar cell. Right: Theoretical power conversion e‹ciencies plotted as a function of energy bandgap. Air-mass 0 (AM0) is assumed.

44 558 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn. がある.Fig. 3 に従来の pn 接合半導体の接合部に,例えば 量子ドットを高密度に並べることによって形成される,1 つ の中間バンドが存在する太陽電池のエネルギーバンド構造を 示す.1997年,マドリード工科大学(スペイン)の研究グ ループ9)は,図中に示したような 3 バンド構成の場合,ここ では価電子帯(Ev),中間バンド(IB),伝導帯(Ec)を考

えたとき,E(IB-Ev)=EIV=0.7 eV, E(Ec-IB)=ECI=1.2

eV, E(Ec-Ev)=Eg=1.9 eV のエネルギー組み合わせのとき

に変換効率の最大値は63(大気通過量 AM0,最大集光時) に達し,単接合太陽電池の約 2 倍の効率が得られることを 示した.中間バンド型太陽電池の変換効率に関しては,中間 バンドの数の依存性についても理論計算が多数報告されてい る.ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のグルー プ14)では,中間バンドの数を 4 つ以上に増やすと,集光時 の理論変換効率は70を上回り,80近くにまで高められ るとしている. さらに特徴的なことは,非集光の条件で使用するのか, または集光動作させるかによって,最大の変換効率を達成す るために必要な材料の組み合わせの条件が変わってくるこ と,またそのバンドギャップの組み合わせの条件はある程 度幅に余裕があり,量産時に想定される化合物材料の組成比 の少しのずれのようなことがセルの特性にあまり影響しない と予想される点である.中間バンドを埋め込むホスト材料の バンドギャップエネルギー E(Ec-Ev)=Egは,最大集光下

において変換効率が63に達するのは Eg=1.9 eV のときで あるが,Fig. 3 が示すように Eg=1.6~2.2 eV の範囲であれ ば60以上の高い変換効率が実現できる15) . 中間バンド型太陽電池の現状と課題 中間バンド太陽電池に向けた吸収層材料として,遷移金属 を高濃度ドープした半導体16,17)や,高不整合化合物混晶18) どのバルク材料が検討されている他,量子ドットを規則正し く配列させた量子ドット超格子を用いて,超格子ミニバンド を中間バンドとして利用する方式が研究されている.中間バ ンド型太陽電池において,各バンドの擬フェルミ準位を互い に十分に分離させるためには,各バンド間のキャリアの遷移 は光学遷移が支配的で,熱励起・熱放出による遷移が極力抑 えられている必要がある.ここで量子井戸を基本とした超格 子の場合,ミニバンドと伝導帯(および価電子帯)の間には 連続準位が基本存在するが,量子ドット超格子では,伝導 帯・価電子帯とエネルギー的に完全に分離されたミニバンド が形成可能なため,バンド間の熱的遷移を原理的に抑制する ことができる19).InAs/GaAs 系量子ドット超格子におい て,各バンドの擬フェルミ準位の分離が起こることが実験的 に確かめられている20).中間バンド材料として量子ドット 超格子を導入した量子ドット太陽電池は,筆者らのグループ を含めいくつかのグループにより試作されており,ホスト半 導体材料のバンドギャップ以下のエネルギー帯における光感 度や,短絡電流の増大が報告されている2127) 量子ドット太陽電池を作製する上での課題の一つは,太陽 光を十分に吸収するために,量子ドットの総数を増やすため の超高密度化を達成することにある.このような量子ドット 超格子セルを作製するため,自己組織化量子ドットの多層積 層成長が有望である.半導体基板結晶の格子定数よりも大き い格子定数をもつ異種半導体をエピタキシャル成長させた場 合,成長初期には 2 次元的な層状成長が起こり,その後,3 次元的な島成長へと移行して量子ドットが自己形成される. このとき,量子ドット材料として広く使われている InAs の 格子定数は,基板として使われる GaAs よりも7.2大きい ため,通常の GaAs を量子ドットの埋め込み層(中間層)に 用いた InAs/GaAs 系の積層成長では,ひずみエネルギーが 積層とともに結晶内に蓄積し,そのひずみ場が上の層に放射 状に伝わっていく結果,量子ドットのサイズが徐々に増大し てしまう.このため,実際には10~15層以上にわたって InAs 量子ドットを均質に成長させることは技術的に容易で はない. そこで,中間層のところで量子ドットとは逆向きの格子ひ ずみを発生させて,1 周期毎に平均のひずみ量を一旦ゼロに 戻しながら多層化を行うと,欠陥密度が低く高品質な量子ド ッ ト 結 晶 が 作 製 で き る こ と が 示 さ れ た . ひ ず み 補 償 法 (Strain-Compensation Technique),またはひずみバランス

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45 559 Fig. 4 Left: Schematic layer structure and microscope picture of InAs quantum dot IB solar cell fabricated on GaAs (001) substrate by molecular beam epitaxy (MBE). A 20 nm-thick GaNAs strain-compensated spacer layer is used to embed each InAs QD layer. Right: AFM image of InAs QDs after 10 layers of stacking.

Fig. 5 Quantum e‹ciency spectra measured for strain com-pensated InAs/GaNAs QD solar cell with 10, 20, 30 and 50 stacks of QD layers. GaAs pin control cell is also shown.

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―( )― Vol. 55, No. 12, 2012

法(Strain-Balance Technique)と呼ばれるこの製造技術は, BaF2基板上の PbSe 量子ドット/PbEuTe 中間層の材料系で

初めて実証された28).その後,InP 基板上の InAs 量子ドッ

ト/AlGaInAs 中間層29),GaAs 基板上の InAs 量子ドット/

GaNAs 中間層30)の材料系で歪み補償成長技術が開発されて きた. 著者のグループが開発した量子ドットを用いた中間バンド 太陽電池の試料構造を Fig. 4 に示す25,26,30).基板には GaAs (001)を用い,分子線エピタキシー法(MBE)で pin 構造中 の i 層中に10層,20層,30層,そして50層と多重積層させ た InAs 量子ドット超格子を導入し,ひずみ補償系の中間層 材料として20 nm 厚の GaNAs 希釈窒化物混晶半導体を用い ている.まず20層積層させた InAs 量子ドット試料を原子間 力顕微鏡で観察して求めたドットの平均直径,高さ,直径サ イズの揺らぎ,また 1 層あたりの面内密度は,約39 nm, 5 nm, 13,および 4×1010/cm2である.ひずみ補償法を用 いて作製した量子ドットのサイズ揺らぎは,ドット間の結合 を生じさせるために目標とする10以内に概ね近づいてお り,最終的に量子ドット超格子にして中間バンド型太陽電池 へ発展させる上で,十分に高均一な量子ドットの積層構造が 得られるようになっている.Fig. 5 に短絡電流駆動時の分 光感度(量子効率)特性を示す.波長約880 nm より短波長 側の GaAs 層による吸収に加えて,950 nm 付近にピークを 持つ光電流の寄与は,量子ドットの埋め込み層として用いた GaNAs 中間層(ひずみ補償層)によるものである.さらに 波 長 1200 nm 辺 り の 赤 外 光 領 域 ま で 吸 収 端 が 拡 が っ て い る.室温でのフォトルミネッセンス測定では,波長1050~ 1200 nm にかけて発光ピークが観測され,この結果は分光 感度測定で得られた吸収端波長と一致していることから, InAs 量子ドットからの寄与であることがわかる.また量子 ドットによる赤外光領域の光吸収は,積層数を20層から30 層,50層へと増加させるとともに単調に増大しており,積 層化により量子ドットの密度を増加させることは光出力電流 を増大させるのに大変効果的であることを示している. Fig. 6 は,AM1.5の非集光下で得られた電流電圧特性で ある31).積層数を増大させると短絡電流密度が単調に増大 し,50層積層時の短絡電流密度は Isc=26.4 mA/cm2,変換 効率は h=13.7がと良好な値が得られている.これは,量 子ドットを導入していない GaAs の単接合太陽電池の値と比 べて,InAs 量子ドットおよび GaNAs 中間層の両方の寄与 が加わるため,約30の電流増大になる.一方,積層量子 ドット太陽電池の場合,量子ドット部での光吸収量が現状ま だ十分でなく,このことが開放電圧を減少させている.これ は,量子ドット層で生成されたキャリアが主に熱励起によっ て伝導帯へと引き抜かれること,さらに量子ドット準位から 価電子帯への再結合割合が相対的に多くなっていることが原 因と考えられている.しかし今後,太陽電池構造の最適化お よび集光動作による光学遷移割合の増大により,開放電圧の

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Fig. 6 Projected current-voltage curves measured for strain compensated InAs/GaNAs QD solar cell with 10, 20, 30 and 50 stacks of QD layers. GaAs pin control cell is used as a reference.

Fig. 7 Theoretical AM0 conversion e‹ciencies plotted as a function of concentration for an ideal material-bandgap com-bination case and for InAs/GaAs material case.

Fig. 8 Top: AFM image of the topmost InGaAs QD surface in 10 layer stacked InAs/GaNAs QD sample grown on GaAs (311)B by MBE. Bottom: Cross-sectional STEM image.

Fig. 9 AM1.5 current-voltage curves measured for (a) 10-layer stacked InGaAs/GaNAs QDSC grown on GaAs (311)B substrate, (b) GaAs pin reference SC grown on GaAs(001) substrate, respectively. 46 560 ―( )― J. Vac. Soc. Jpn. 増大と30以上の高効率化が見込める(Fig. 7)15) 続いて,GaAs(311)B 基板という特殊な高指数基板上に 作製した InGaAs 量子ドットは,(001)基板上に作製したも のと比較して,サイズ均一性と面内の配列性に優れ,かつ高 密度に成長させることができる(Fig. 8)32).GaAs(311)B 基板上に10層積層させた InGaAs/GaNAs/GaAs 系ひずみ補 償量子ドット太陽電池の場合,量子ドット層による発電電流 成分として2.25 mA/cm2が得られ,(001)基板上に作製した 同 じ 構 造の 積 層 量子 ド ッ トセ ル の 値1.76 mA/cm2と 比 べ て,約0.5 mA/cm2の増大が得られた.これは(311)B 基板 上の方がより高密度に量子ドットが形成されることが一つ影 響している.このときの短絡電流密度,開放電圧,FF,ま た変換効率の値は,24.26 mA/cm2, 0.791V, 0.840, 16.12 であり,2008年に発表された時点で世界最高効率の量子ド ットセルである(Fig. 9)33).その後,2009年にロシア・科 学アカデミー・サンクトペテルブルグ研究所と IoŠe 研究所 のグループが,InAs/AlGaAs 系で積層量子ドット太陽電池 を 報 告 し , 短 絡 電 流 密 度 , 開 放 電 圧 , FF の 値 と し て , 27.66 mA/cm2, 0.840 V, 0.792, 18.32,変換効率18.32を 記録した34) 太陽電池では,吸収と再結合は常に競合する関係にある. したがって一般には吸収レートを上げる(吸収係数の大きい 材料を選ぶなど),再結合寿命を長くするといった工夫が成 される.量子ドットが形成する中間バンドを介した赤外の長 波長光の吸収率を増大させるためには,中間バンドに十分な キャリア密度が存在していること(理想的には状態の半分が 電子で占有されていること)が必要である.一つは集光 (photo-ˆlling)させる方法,もう一つは量子ドットに不純物 ドーピングを行うアプローチがある.これらの効果の詳細に ついては本稿では割愛するが,別途解説論文を参照された い35,36) 以上で紹介したボトムアップのアプローチである単結晶成 長技術を駆使して,高密度量子ドット超格子を作製する方法 の他に,トップダウン的手法で超微細構造を均一に加工する 技術も研究されている.超微細エッチング技術で形成された ディスク状の Si 量子ドットでは,大きさのばらつきが±5

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47 561 47 561 ―( )― Vol. 55, No. 12, 2012 以下ととても均一で,面内密度も 5×1011/cm2前後の高密度 化が実現されている37) . 将 来 展 望 量子ドットを用いた高効率中間バンド型太陽電池の原理, および MBE 成長による自己組織化量子ドットの積層化技術 と量子ドット太陽電池の現状に関して概説した.現在の単接 合太陽電池のエネルギー変換効率の理論最大値(Shockley-Queisser: SQ 効率)を上回り,かつ低コスト化を展望でき るような次世代型太陽電池は,ひとくくりにして“第三世代 太陽電池”と呼ばれる.詳細平衡モデルにより決定される SQ 効率の壁を打ち破ることができれば,原理的には,エネ ルギー変換効率は熱力学的上限まで高めることができる.そ のためにも集光型セルの開発が不可欠である.集光型太陽光 発電システムは,太陽光をレンズや反射ミラーを使って集め て発電する方式であるため,一つ一つの太陽電池セルの面積 が小さく,半導体の使用量を少なくできるメリットがあるこ とから,現在のところ,低コスト化など経済的効果の方のみ が注目されている.しかし実は,熱力学的にも多接合タンデ ムセルや高効率量子ナノ構造セルの変換効率を50以上ま で高めるための技術として大変重要であることを指摘した い15,38).したがって,第三世代太陽電池は集光型太陽光発電 システムに組み込むことで,低コスト化とセルの高効率化の 両方が達成できる大変魅力ある発電方式といえる. 現在,使用する族系化合物半導体の面積あたりのコ ストは結晶 Si よりも 2 桁程度高いものの,セルの変換効率 が40以上になると,500~1000倍の集光システムでは,1 Wあたりの生産コストはかえって安くなるといった試算も 成されている.将来のメガソーラーのみならず,ソーラータ ウン,スマートシティーなど地域における分散型電源とし て,また電気自動車の充電ステーションへなど幅広い用途が 考えられる.他方,有機材料と組み合わせたハイブリッド太 陽電池や,色素に替えて量子ドット増感型太陽電池といった 低コストのタイプの太陽電池への応用も年々期待も高まって いる. 謝辞 本稿で紹介した研究成果は,革新的太陽光発電技術研究開 発(革新型太陽電池国際研究拠点整備事業)「ポストシリコ ン超高効率太陽電池の研究開発(SOLAR QUEST)」の委託 の下で行われた.経済産業省,NEDO,および多くのプロジ ェクト関係者各位に深く感謝する次第である.また日頃奮闘 を続けている研究室の研究員,大学院生諸氏に感謝する. 〔文 献〕 1) 太陽光発電ロードマップ(PV2030+) www.nedo.go.jp/library/pv2030/pv2030+.pdf

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810804.

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Fig. 2 DiŠering operation concepts in multi-junction tandem solar cell (left) and IB (multi-band) solar cell (right).
Fig. 3 Left: Schematic energy band diagram for quantum dot IB solar cell. Right: Theoretical power conversion e‹ciencies plotted as a function of energy bandgap
Fig. 5 Quantum e‹ciency spectra measured for strain com- com-pensated InAs/GaNAs QD solar cell with 10, 20, 30 and 50 stacks of QD layers
Fig. 7 Theoretical AM0 conversion e‹ciencies plotted as a function of concentration for an ideal material-bandgap  com-bination case and for InAs/GaAs material case.

参照

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