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45 AUTO TECHNOLOGY 2018 ハイとロービームを1灯で自動車メーカーは 世界的に事故ゼロを目指した取り組みを強化している そのうち 国内においては 歩行者の交通死亡事故が多い傾向にあり なおかつその70 %が夜間に起きている さらに 2015年の全国における横断歩行者の夜間死亡事故

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Academic year: 2021

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Chapter 写真 : 桜井 健雄

8

Chapter

(株)

小糸製作所

配光可変

歩行者 交通死亡事故 70% 夜間 発生 している しかも 横断歩行者 事故 96% がロービーム 使用時 だという ハイビームは 対向車 しくさせるため つい 使用 えてしまう だがロービームでは 歩行者 えきれない そのジレンマを 解消 するのが 配光可変 ハイビーム ︵ADB︶ 前方車 にはロー その りをハイビームにする 技術 である 今回小糸 このハイ ロービームを 可能 にし 小型化 コストを 実現 した

Development of an Integrated Low Beam /

LED Ar

ray ADB Headlamp

開発

商品化

(2)

イと

自動車メーカーは、世界的に事故ゼロを目指した取り 70% 96%が、ロービームでの そこで、できるだけハイビームでの照射を活用すべく Adaptive Driving Beam )の開発が進められて た( )。 小 糸 製 作 所 は、 シ ャ ッ タ ー で 遮 光 す る 機 小糸製作所技術本部静岡設計部の主管である諏訪聡男 新車の価値としてデザインの重要性は年々高まってお 今回、従来は2灯式であったLEDアレイ式ADBを の河合宏樹は、 「レンズの共通化が、今回の大きな課題の一つでした。 ロービームは、余分な光を水平線より上へ照射しないよ うにするカットラインをくっきり結像させるため、表面 が滑らかでツルツルしたレンズを使います。それに対し、 LEDアレイ式のハイビームでは、間隔をあけて横に並 んだ複数のLEDの光をレンズで拡散して均一な照射に するために、レンズ表面が波打っています。これを、今 回は一つのレンズで成立させなければならなかったわけ です」   それを実現するため、今回の開発ではレンズ表面に細 かいステップと呼ばれる菱形の模様が刻まれている。 「上下の垂直方向は結像性を維持させつつ、 左右の横方向は光を拡散させる機能を備え ています。この菱形が特徴で、ステップ一 つひとつについて、上下方向は曲率を小さ くすることによって拡散が少ない形状にし、 左右は曲率が大きく光がより拡散する形状 になっています( 図2 )。   レンズのステップ技術自体は、少し前か ら あ り ま し た が、 そ れ は ゴ ル フ ボ ー ル の ディンプルのような丸い形状です。それで すと、ロービームの際に上下方向へ光が拡 散し、結像性が損なわれるので、光を拡散 させないためにこの菱形を開発しました。   菱形形状は、縦横比と山の凹凸比を様々 試験して、最適な調和を探していきました。 それは膨大な試行錯誤となったのですが、 まずシミュレーションで当たりを付け、 20 〜 30に絞り込んだあとに2〜3の候補を選 び、レンズを試作して実験しました。する とシミュレーションと実物とで誤差があり、 それを調整して合わせていくというフィー ドバックを1ヵ月半ほどかけて行い、その 作業を数回繰り返して完成度を高めていき ましたので、延べ半年くらいの時間を要しました。   その際のレンズ設計のソフトウェアは、研究所にお願 いしました。私は入社直後に研究所へ配属されていまし たので、当時の上司に菱形のステップを設計するための ソフトウェア開発を依頼し、そのおかげでこれが設計で きたのです」

例を見な

繊細な凹凸

設計

  実際、レンズ表面にステップの模様を見ることはでき るが、その出っ張りはわずか数ミクロンメーターという 歩行者 交通死亡事故 70% 夜間 発生 している しかも 横断歩行者 事故 96% がロービーム 使用時 だという ハイビームは 対向車 しくさせるため つい 使用 えてしまう だがロービームでは 歩行者 えきれない そのジレンマを 解消 するのが 配光可変 ハイビーム ︵ADB︶ 前方車 にはロー その りをハイビームにする 技術 である 今回小糸 このハイ ロービームを 可能 にし 小型化 コストを 実現 した 【配光イメージ】 【光学原理】 先行車 LEDアレイ式 ADB 対向車 レンズ LEDアレイ ロービーム 図 1 LED アレイ式 ADB の配光イメージと光学原理 従来レンズ ロー ロー ハイ フラット型 ハイにスジ、不均一 ローのカットオフラインがぼける ロー、ハイともに良好 問題点 高さ 数μm 凹凸型 波型 外観 配光 ハイ 開発レンズロー+ハイ 図 2 ロービームとハイビームの配光を両立するレンズステップ

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Chapter 微細なもので、指で触れても凹凸 は 分 か ら な い ほ ど だ( )。 そ れほど繊細なステップを施したレ ンズ設計はほかに例がないのでは ないかと、河合は言う。   設計に苦労する河合の様子を、 開発当時に同じ製品開発部に所属 し て い た、 小 糸 製 作 所 技 術 本 部 豊田設計部Uグループの担当員で ある藤吉貴智は、次のようにねぎ らう。 「試作の段階では、レンズを切削 加工で作るので、狙った設計通りのステップを刻むこと ができますが、 量産になると金型で成型するので、 ステッ プの付き方が微妙に違ってきます。そこを考慮して設計 する難しさもあったと思います」   レンズ表面のステップの設計についてはほかに、光の 色 の 調 整 の 難 し さ も あ っ た。 シ ス テ ム 全 体 の ま と め を 担った小糸製作所システム商品企画室主管補である杉本 篤が話す。 「試作品の段階では、当初、青とか赤とかの色が出てし まい、白い光にならなかったので、本当にできるのだろ うかと思うような開発の出だしでした」   また光の色の問題について河合は、 「レンズの屈折力は光の波長によって異なり、青はよく 曲がり、赤は曲がりにくいといった特性があります。こ れによってプリズムのような現象が起こり、色が分離し てしまいました。そこを、ステップの設計を変えること によって拡散し、そしてまた光を混ぜ合わせることによ り、白くする制御を行いました。ヘッドライトの色は商 品性にも大きくかかわることですから、シミュレーショ ンを使って光の波長による分散性を考慮しながら、実験 も織り交ぜて試行錯誤していきました」と振り返る。   そのうえで、杉本は、 「デザイン的な見栄えとしては、やはりヘッドライトの レンズですので 表面の凹凸は見 せず、透明感の あるレンズの印 象は残したいと 思いました」と、 話す。   結果的に、透 明感のあるレン ズに仕上がって いるが、設計をした河合は、 「透明感を意識するというより、機能、性能ありきの視 点で、緻密な光の制御をするために細かいステップとな るよう設計していきました」と、答える。   機能美という言葉があるが、性能優先で開発されたス テップを表面に持つレンズは、透明感のある見栄えに仕 上がっている。

部品

込ん

  次に、一つのランプユニットの中に、ロービームとハ イビーム二つの光源を設ける苦労もあった。ロービーム

ヘッドライトの配光を可変にし、

よりハイビームを使う

 LED を横に複数並べ、ヘッドライトの配光を可変にする配光可変型 ヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)は、対向車や前走車の 運転者を眩惑せずに遠くを見通せるヘッドライトとして注目を集めている。 これまでは2灯式の上級車種への採用が中心であったが、横断歩行者 の夜間死亡事故件数の 96%がロービームで起きているとの警察庁の調 査もあり、普及拡大が望まれる。この開発は、2灯式で成立していた ADB を1灯で実現するため、ロービームとハイビームのそれぞれの機能 を満たすレンズ開発や、ハイビーム用の光源となる LED の配置に制約 が生じるのを、ロービーム用のシェードとハイビーム用のリフレクタを一 体化するなど構造の工夫で解決した。また、LED は光に熱はないものの、 LED 自体が熱を帯びるため、ロー/ハイビーム両方の LED の熱を逃が すヒートシンクの開発にも苦労があった。これにより軽自動車や小型車 へも ADB 採用の道筋ができた。 ハイ用LEDをレンズ焦点下側に配置 光 学 構 造 配 光 ローシェード ローとハイの配光が分離する ローとハイの配光がつながる ローシェード兼 小型リフレクタ ロー用LED ロー ハイ用LED ハイ ロー ハイ ハイ用LED ロー用LED (開発品)ハイ用LEDの上方にリフレクタを配置 図 3 レンズの表面にステップと呼ばれる菱形の 模様がある。光の上下には拡散を少なく、 横方向には拡散させる効果を持つ 図 4 ロービームとハイビーム配光を両立する光学構造と配光

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のLEDをレンズ焦点の中 心に据えると、ハイビーム 用のLEDはどうしても中 心からずれてしまう。それ によって、ロービームとハ イビームの光が混ざり合っ たとき、真ん中に影ができ てしまうという難問が生じ た( )。 そ の 解 決 策 を、 藤吉が説明する。 「ロービームのカットライ ンを作るシェードの下に、 ハイビームを反射するリフ レクタを設けることで、レ ンズの中心近くをハイビー ムの光が通るようにしまし た。シェードとリフレクタ を一体化することで、ハイ ビームの照射範囲を下へ広 げ、ロービームとの隙間を 無くしたのです( 図5 )」   とはいえ、一体化された シェードとリフレクタを作 るのに一苦労することにな る。杉本は、 「単純に一体化するだけでは、シェードの厚みがあるた め、結局、ロービームとハイビームの間にわずかな隙間 が残り、そこが陰になってしまいます。それを解決する ためには、シェードの先端を鋭く、ナイフエッジのよう に薄く仕上げなければなりません」と、課題を説明する。

杉本 篤

Atsushi SUGIMOTO 株式会社小糸製作所 システム商品企画室 主管補 「弊社での受賞はこれが 5 回目であり、 周りに受賞した人がいる一方、自分 には縁がないのではないかと思って いました。今回、私が代表で申請す ることになり、開発内容をまとめて 論文を提出しましたが、すでに 3 年 連続で受賞していたこともあってプ レッシャーを感じていました。それ が受賞出来て嬉しかったです。また、 受賞したことで記録に残る仕事がで きたのではないかと考えています」

諏訪 聡男

Akio SUWA 株式会社小糸製作所 技術本部 静岡設計部 主管 「普段仕事の話は家でしないのですが、 置いてある楯を見て、嫁さんが凄いね と。それが嬉しかったです。それから、 私はここにいる4人とは畑違いで、開 発のためのコーディネイト的な役割で したので、一緒に受賞の仲間に入れて くれて有り難うという気持ちです」

藤吉 貴智

Takatomo FUJIYOSHI 株式会社小糸製作所 技術本部 豊田設計部 Uグループ 担当員 「小さいころからクルマが好きで、自動 車業界に就職しましたが、今回、この 開発の仕事をすることができ、さらに栄 誉ある賞を受賞することができたことをと ても嬉しく思います。また、記録に残る 仕事ができたということも、今後の自分 にとって大変プラスになったと思います。 これからも世の中で役に立つ製品の開 発を続けていきたいと思います」

井上 貴司

Takashi INOUE 株式会社小糸製作所 研究所 研究1グループ 技師補 「大きな賞を受賞でき、大変嬉しく 思っています。仕事が評価されたこと と併せて、授賞式の華やかな舞台に 立てたこともいい経験になりました。 また受賞できる開発をしていきたいと、 強く思いました」

河合 宏樹

Hiroki KAWAI 株式会社小糸製作所 技術本部 製品開発部 「大きな賞をいただけたことで、会社 の人だけでなく、家族や友人にも自 分の開発した製品を知ってもらえるよ いきっかけになりました。今後も広く 社会に貢献できる開発をしていきた いです」 図 5 シェードとリフレクタを一体化しハイビームとロービームの間の光の隙 間をなくした

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Chapter   藤吉は、 「通常、ナイフエッジ形状にするための材料は成型性の 良い樹脂を使用しますが、ハイビームのLEDの直ぐ近 くに配置する必要があり、樹脂ではLEDの熱の影響を 受け変形してしまう問題がありました。そこで、アルミ ダイキャストを選び、なおかつ先端の薄いシェードとリ フレクタの一体構造を検討しました( 図6 )。   部品メーカーに、薄いシェードをアルミダイキャスト で作りたいと言ったところ、はじめは、そんなに薄い物 はできないとの回答でした。そこで、金型の抜きや、ア ルミ充填の仕方を色々工夫し、将来へ向けた挑戦に協力 し て ほ し い と 言 っ て 依 頼 に 応 じ て も ら い ま し た。 試 作 の 金 型 で 試 行 錯 誤 を 繰 り 返 し な が ら、 ナ イ フ エ ッ ジ の シ ェ ー ド と リ フ レ ク タ の 一 体 構 造 が 出 来 上 が っ た の で す」   物が出来上がったところで、リフレクタに光を反射さ せるためのアルミ蒸着を施すことになる。ここでもまた 工夫が求められた。   杉本は、 「ハイビーム用LEDの上下にあるリフレクタ間隔が非 常に狭く、アルミ蒸着を奥の方までムラなくつける難し さがありました」と、説明する。   また、諏訪は、 「アルミを気化させて飛ばす訳ですが、蒸着する部品の 置き方を工夫し、試行錯誤を繰り返して 最適な条件を見つけ出しました。また、 リフレクタの両端は光らせてはいけない 部分であり、必要なところにだけきれい に蒸着する難しさもありました」と話す。   まさに、繊細かつ精密な物づくりが求 められる開発となった。

イ/

熱を逃が

  ところで、LEDは光に熱はないが、 LED自体は熱を帯びる。その放熱も、 今回の開発で一つの課題となった。1灯 という小さな躯体の中で、ハイとローの LEDが近くに配置され、その両方のL EDの熱を逃がさなければならない。こ れを担当したのは、小糸製作所研究所研 究1グループの技師補である井上貴司で ある。 「私は、2灯のLEDアレイ式ADBの 開発にもかかわってきましたので、その 際にも熱対策の苦労を味わってきました。 そのうえで、1灯でという話が来たとき には、正直、実現できるのだろうかと不 安になりました。2灯の開発の際に、熱 の問題は原理原則に従って解決するしか ないと認識していたので、まずはランプ の構成から順を追って、わずかなことで も見逃さずに手を打って行くしかありません。熱の経路 であるLEDから基板、そしてヒートシンクに至る過程 のすべてを見直しました。そして、1〜2℃の対策を積 み上げて成立させました」   2灯の際には、基板の真ん中にLEDがあるため、熱 を逃がす銅箔の面積を広げるなどの対策を用いることが 図 6 シェードの厚みは影を生むため、先端はナイフのエッジのように薄 くした(上)。これをアルミダイキャストで実現した。下は LED

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河合は、 杉本も、 そのうえで、熱を空気中へ逃がすヒートシンクの検討 60種類ほどシミュレーションで検証してみました。しか 結 論 を 言 え ば、 シ ン プ ル に フ ィ ン が 並 ん だ 形 状 に 製造に際しては、基板を斜めに取り付けるヒートシン 今回の開発は、企画室、技術本部、研究所といった各

を小型、軽

も広げ

夜間

安全を広げ

  こうして、LEDアレイ式ADBを1灯で成立させる 開発は完了した。実際、このヘッドライトを採用する小 型車に試乗したが、トンネル内で先行車のさらに先の道 路の状況が明るく見えることは、運転に大きな安心を与 えた。このことは、街灯の少ない道路においても、事故 を 減 ら す の は も ち ろ ん、 日 常 的 な 夜 間 の 運 転 を よ り 安 心・安全にさせることは間違いない。   これによって、将来へどのような展望が見込まれるの だろう。   河合は、 「これまでADBは、上級車種に採用されるものでした が、小型車や軽自動車などへもどんどん採用してもらい、 ロービームで起きている夜間の事故を減らし、安全に役 立つ装備になっていってほしいと思いながら開発してき ました」と、開発への想いと将来への期待を話す。   井上は、 「1灯にできたことで、小さく仕上がりましたから、A DBを一気に普及させるきっかけになっていけばいいと 思っています」と期待する( 表1図7 )。   杉本は、 「今回は 11個のLEDで 11分割のADB配光を作ってい ますが、さらに配光を細かく分割し、遮光する範囲を最 少化して明るく照らす範囲を増やしていきたいと思って います。ハイビームが点灯しているだけのように見えて も、実は、対向車のドライバーの顔の部分だけ影をつく れるとか、より小型にするとか、自動運転の時代になっ たときにはカメラやセンサを使った計測や判別に役立つ 技術だと考えています」と、新たな構想を話すのである。 従来品 外形 サイズ 体積 質量 部品点数 消費電力 25,00㎥ 950g 37 53W 12,70㎥(▲50%) 500g(▲48%) 23(▲35%) 45W(▲15%) 115 150 85 115 130 175 ロー ハイ 開発品 表 1 開発品と従来品との比較 図 7 従来の 2 灯(左)と今回開発した 1 灯の比較

参照

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