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助産所出生数の減少解明に向けた出産施設選択に関する調査研究

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*1埼玉大学大学院経済科学研究科博士後期課程(Saitama University Graduate School of Economic Science) *2東京医療保健大学看護学研究科(Tokyo Healthcare University Graduate School Nursing)

*3東京大学大学院医学系研究科母性看護学・助産学分野(Department of Midwifery and Women's Health, Division of Health Sciences & Nursing, Graduate School of Medicine, The University of Tokyou)

2014年6月25日受付 2015年5月15日採用

資  料

助産所出生数の減少解明に向けた

出産施設選択に関する調査研究

—マーケティングの概念を視座として—

Investigation into birthing facility selection to explain

the decreasing number of births at birthing centers:

Applying a marketing concept perspective

平 出 美栄子(Mieko HIRADE)

*1

宮   文 子(Fumiko MIYAZAKI)

*2

松 崎 政 代(Masayo MATHUZAKI)

*3 抄  録 目 的  本研究は,助産所出生数の減少を解明する前提の調査研究とし,病院,診療所,助産所の選択理由の 比較について,マーケティングの概念を用いて調査・分析及び考察することを目的とする。 対象と方法  調査は,都内の保健センター,助産所,乳幼児教室の利用者などで,母親725名を対象に質問紙調査 を実施した。分析対象は389名である(有効回答率53.7%)。調査内容は,属性要因,出産施設の選択理由, 選択する際の影響要因に関する内容である。分析では出産した施設別に,大学病院・病院をA群,診 療所をB群,助産所・自宅をC群に分類し,属性要因とマーケティング・ミックス4P̶Product, Price, Place, Promotion̶の内容を3群で比較分析した。医療におけるProductは,ケアや医療サービス,医療 行為とした。調査期間は,2013(平成25)年2月から3月末である。 結 果  高年初産婦は,A群がB・C群に比べ多かった(p=0.027)。施設を選択する際の影響要因は,A群がB ・C群に比べ「35歳以上だから」という回答が多かった(p<0.001)。出産施設の選択におけるProductの 内容では,C群の7割が「健診時間が長く丁寧」「自然出産」「フリースタイル出産」「出産まで助産師が付 く」「母乳指導」「母児同室」を選択の理由としていたが,A・B群では3割程度であった。また,A群は「毎 回医師の健診がある」「規模が大きい」,B群は「毎回医師の健診がある」「個室がある」「豪華な食事」の回 答が多かった(p<0.001)。Priceでは,A群は「出産費用が安い」(p<0.001),A・B群は「妊婦健康診査公費

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補助券が使える」の回答が多かった(p=0.015)。Placeでは3群の半数が「自宅近く」を回答していた。 結 論  助産所の出生数減少に影響を与えると考えられるのは,高年初産婦(35歳以上)という理由及び,助 産所が提供しているProduct(サービス・ケア)と大学病院・病院群,診療所群の妊産婦が要望している サービス・ケアに差があることである。 Keyword:助産所,出生数,出産施設,マーケティング Abstract Objective

This study aims to investigate and compare reasons for birthing facility selection from hospitals, obstetrics clin-ic and birthing centers using a marketing concept in order to explain and discuss the decreasing number of births at birthing centers.

Subjects and methods

A questionnaire survey was conducted on 725 mothers using health centers, birthing centers, and infant activ-ity classes in Tokyo. Survey content comprised participant attributes, reasons for birthing facilactiv-ity selection, and influencing factors. Responses from 389 mothers (valid response rate, 53.7%) were analyzed. Participants were categorized based on their choice of birthing facility type as group A (hospital or university hospital), B (obstetrics clinic), or C (birthing center or home) and were compared regarding attributes and the marketing mix (the four Ps: Product, Price, Place, and Promotion). In the present medical context, Product referred to care, medical services, and medical practice. The survey was conducted between February and the end of March 2013.

Results

Group A comprised more elderly primipara than groups B and C (p=0.027), and "aged 35 years or older" was more commonly cited as a factor influencing facility selection in group A than groups B and C (p<0.001). "Long and thorough prenatal checkups", "option for natural birth", "option for freestyle birth", "midwife in attendance throughout labor and delivery", "provision of breastfeeding support", "option for rooming-in", and "meals beneficial for breast milk" were stated as Product-related reasons for birthing facility selection in 70% of group C compared to around 30% of groups A and B. Reasons such as "every prenatal checkup includes examination by a doctor" and "fa-cility is large-scale" were common in group A while reasons such as "every prenatal checkup includes examination by a doctor", "availability of private rooms", "lavish meals", and "celebration meal offered" were common in group B (p<0.001).

With regard to Price, "low cost of birth" was a commonly stated reason for birthing facility selection in group A (p<0.001), while "able to use government-issued coupons for prenatal checkups" was commonly stated by groups A and B (p=0.015). For Place, half of all three groups responded with "close to home" as a reason for facility selection" Conclusion

Possible reasons for fewer births at birthing centers are being an elderly primipara (age ≥35 years old) and the gap between What Product (Service Care) midwives are providing and what service care mothers in Group A (mothers at university hospital and obstetrics clinic) wanting to receive.

Key words: birthing center, number of births, obstetric care facility, marketing mix

Ⅰ.緒   言

 全国助産所(有床)の出生数は,平成以来,約20年 間に渡り1万人以上を維持していた。だがこの出生数 は2008年に1万人を切り,漸減を続け4年後の2012年 には出生数8282人(割合は0.8%)となっている(母子 保健の主なる統計,2014)。この傾向は,関係者に大 きなショックを与えている。  2012年の全国,東京都,全国助産所の出生数の前 年度比は,全国がマイナス1.29,東京都がプラス1.30, 全国助産所がマイナス7.28となっている。また,2000 年を100%として2012年の出生数と比較した場合では, 全国が87%,東京都が107%,助産所が73%となる。 なぜ2000年に入り助産所の出生数が漸減しているのか。  そこで近年の産科医療の背景を概観するとマクロ 環境の変化が見られる。まず2004年から2008年前後 の期間では,「産科医療の崩壊」と報道された(軸丸, 2009)。また,2007年から2008年にかけて医療法19条

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の改正,2008年産科医療補償制度が開始され,2009年, 2014年と助産所業務ガイドラインの改定,2011年に産 婦人科ガイドラインの改定が行われた。加えて同時期 の社会的背景として,産婦の出産年齢が年々上昇し, 2012年には初産婦の平均年齢が30歳を越えた。この ような社会的環境の変化は,妊婦の出産施設の選択動 機や,助産所の出生数に影響を与えることが推測され るが,本稿の先行研究の渉猟においては,該当する研 究は見当たらない。  そこで助産所の出生数減少の原因としてケアの満足 度を確認したところ,既存研究では,助産所の満足度 は他の産科施設より高く,再利用率も高いという結 果が報告されている(堀内・島田・鈴木他,1997, pp.9-16;佐藤・加藤・伊藤他,2007, pp.465-471;島田・縣 ・新田,2007, pp.118-124;島田・杉本・関,2012, pp.1-11)。また医療サービスの研究に着目してみると,医療 経営・医療マーケティングでは,医療従事者と患者 間の「情報の非対称性」があり,情報格差を発生させ 医療サービスを困難にしているという論稿がある(川 上・木村,2013, pp.4-14;廣田,2010, pp.25-33)。だが, 妊婦と助産師職の間にある「情報の非対称性」につい ての研究はなく,助産所と妊婦に関する「情報の非対 称性」の論稿もない。「情報の非対称性」とは経済学か ら来た概念であるが,情報の量と質は,消費者(患者 や妊婦)よりも提供者(医療者)のほうがより多く保有 し,消費者側が不満・不利になる場合があるという概 念である。「情報の非対称性」は妊婦と助産師間にも存 在する可能性があると思われる。  ところで企業や病院では,利用者減少という事態 において,マーケティングツールのProduct, Price, Place, Promotion(4P)を用いて顧客や組織の状況を多 角的に判断し対策を講じる。また組織のマクロ環境で は,デモグラフィック要因,経済要因,政治/法的要 因,自然環境要因を念頭に入れ,組織・顧客の全体に 注意を払う(Kotler, Keller, 2009, pp.63-75)。だが助産 所に関連する研究では,マーケティングのマクロ環境 を視野とした研究は見当たらない。以上のような状況 では,助産所出生数の減少の原因を把握することは困 難であり,当然その対策は建てられないと考える。  そこで本研究では,助産所出生数の減少要因を探る ため,その基礎の研究として,出産施設の選択理由に ついて病院,診療所,助産所の比較について,マーケ ティング概念を視座として,調査票の作成や結果の分 析および考察を行うことを目的とする。マーケティン グの視点を入れた,助産所の環境分析と妊婦の選択行 動に関する調査を行うことは,助産所出生数の減少の 要因を探る基礎の研究となり,今後の助産所での出生 数増加の戦略方法に寄与するものと考える。

Ⅱ.概念枠組みと用語の定義

 出産施設の環境を分析する為には,まず組織が置か れている状況を知ることが重要となる(図1の①)。そ の上で経営・マーケティングは,マーケティング・ミ ックスの4Pなどを組み合わせながら実行する(図1の ②)。特に本研究では,医療がサービス業であること を受け,4Pの中の製品(医療分野では医療技術・サー ビス・ケア)に注目し,これを含め本質サービスと表 層サービスに分け(図1の③),妊産婦の施設選択への 関連をみる。本研究の目的である助産所の出生数の減 少を探るためには,図1に示すマーケティングのマネ ジメント・プロセスの概念枠組みの中から,図の①∼ ③が重要であると位置づけた。 1.サービス  サービスとは,「一方から他方へ提供される行為」濱 本(2008, p.37)であり,Christopher, Lauren(2002, p.4), 水流(2009, pp.142-162)らによる,特定の時・場所に おいて消費者ニーズを満たし,価値を創造し,顧客 にベネフィット(利益・利得)を与える活動のことで ある。また嶋口(1996, pp.64-73)によれば,「不可欠な サービス」が本質サービスであり,「あるにこしたこと はないサービス」が表層サービスである。水流(2009, pp.142-162)は,製品(助産サービス)は,妊娠期間中 から出産に至るまでの母体の健康と産後の社会生活へ の復帰が実行できる事に成果を出すことだとしている。 以上のことを受け,本稿では「健診・出産・産後」に 関わる一連のケア・サービスを本質サービスの内容と 定義し,「食事・設備など」を表層サービスと定義した。 2.高年初産婦  高年初産婦は日本産婦人科学会の定義を採用し,35 歳以上の初産婦とした(日本産科婦人科学会編,2008)。

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Ⅲ.研 究 方 法

1.調査方法 1 ) 調査期間および対象と方法  調査期間は,2013(平成25)年2月から3月末までで ある。地域と対象は,都内にある2つの保健センター と子ども家庭支援センターに来院した母親,さらに子 どもクラブと都内5つの助産所を利用した生後3か月 以降から3歳前後までを持つ母親の725人である。方 法は,無記名の自記式質問紙法により,横断調査を実 施した。研究者または施設担当者が直接対象者に調査 票を配布し回答は郵送で回収した。調査地域を都内に 限定した理由は,他道府県に比べ,大学病院,病院, 診療所,助産所の数が多く,妊婦の施設選択に対する 理由が把握しやすい地域であると判断した(中井・関 口,2013)。 2 ) 調査票の作成  調査票の作成は,マーケティングの文献,及び,施 設選択に影響する既存研究(浅見,2002;遠藤・宮内 ・佐久間,2011;小林・渡邊,2008)を参考にし,本 研究者,助産師実務経験者,研究者の経験をもとに独 自の質問紙を完成させた。調査票は,2012年11月,乳 児教室に参加する母親6名に対してプレテストを行い, あいまいな表現や難しい単語,文章の確認をした後に 修正し,本調査票を作成した。 3 ) 調査内容  調査内容の作成は,産科施設選択の既存研究を参考 にしたこと,および,助産所の事業内容と病院・診療 所の類似したサービスの増加や高年初産婦,高齢産婦 の増加などは出産施設の選択に影響があると考え調査 内容とした。まず「出産場所を選んだ理由は何ですか, 該当する答え全てに○をつけてください」として,以 下の質問を設定した。  ①健診(健診時間・待ち時間について,子ども同伴, 3D・4Dの超音波診断の有無,医師の健診か助産師の 健診かなど),②出産(フリースタイル出産が可能か 否か,会陰切開・出産誘発剤の選択の自由,無痛・和 痛・帝王切開の選択,立ち会いの自由,出産まで助産 師の付き添いの不可など),③産後(母児同室,母乳 ・育児指導,産後のアロマセラピーなど),④イメー ジ・評判(医師・助産師・施設の評判など),⑤食事 (豪華,お祝い膳,野菜中心,母乳に良い食事など), ⑥施設・場所(個室,施設の規模,近隣か否かなど), ⑦費用(健診・出産費用など),⑧広告(ホームページ, パンフレットなど),⑨体調・気持ち(35歳以上であ ること,18歳以下であること,自然出産に対して自信 がないことなど),⑩対象者の背景(出産回数,出産 時の年齢,職業の有無,年収,ほか),⑪出産の満足 マーケティングのマネジメント・プロセス 環境分析 (SWOT分析など) 助産所経営に影響する ・デモグラフィック要因 ・経済要因 ・政治/法的要因 ・自然環境要因 分析 S: Segmentation(市場の細分化) T: Targeting(標的市場の設定) P: Positioning(位置づけ) ③製品(Product) 医療分野では 医療行為・技術・サービス ③本質サービス 健診・出産・産後 価格(Price) 場所(Place) 広告(Promotion) ③表層サービス 食事・設備など 計画 実行 管理 計画・実行の成果の評価 STP 戦略 相互作用 ②マーケティング・ミックス4Pなど ①マクロ的環境分析 フィードバック 図1 本研究の概念枠組み 出所)廣田,2010,p57を参照し筆者作成

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度,⑫出産の感想,⑬出産費用の感想などを含む合計 20項目で構成した。選択肢がない場合を想定し,① ∼⑨までの質問の最後には「特にない」を設定してい る。回答方法は,①∼⑩までが選択肢,⑪∼⑬リッカー ト尺度,他に意見を自由記述とした。尚,⑪∼⑬は本 研究の結果・分析では省く。 4 ) 統計解析  属性の記述統計を行った。対象を,大学病院・病院 選択者(A群),診療所選択者(B群),助産所・自宅選 択者(C群)の3群に分類し各変数を比較した。年齢は, 35歳未満,35歳以上に区分し比較した。初産婦は今回 の出産が1回目,経産婦は今回の出産が2回目以上の 者として分析を行った。カテゴリカルデータはχ2検定, 出産時の年齢,初産年齢などの連続データは一元配置 の分散分析と多重比較(Tukey法)を使用し比較した。 有意確率が両側5%未満を統計学的に有意とした。 2.倫理的配慮  研究参加者には研究目的・方法・意義および,参加 は自由であり,拒否した場合も不利益を被らないこと を口頭及び文章にて説明した。本調査は̶̶大学研究 倫理・安全委員会の研究倫理審査にて承認を得て実施 した(承認番号12-1-015)。

Ⅳ.結   果

 母親725名に配布し,回収数は440(回収率60.7%) である。これから出産施設の重複回答を除いた数は 411(A群186人,B群110人,C群115人 )で あ る。 更 に出産後5年以上を無効回答とし,これを差し引いた ものを有効回答数389(53.7%)とした。分析対象389 はA群182人,B群106人,C群101人であった。各群 の有効回答率は,A群97.8%,B群96.4%,C群87.8% である。 1.対象者の属性・特性 1 ) 出産回数と年齢  表1に示したように,全体で初産婦202人(52.3%), 経産婦184人(47.7%),出産時の平均年齢は32.3歳で あった。年齢は表1に示したように施設ごとの有意な 関連は無かったが,初産(n=202)で施設ごとに高齢 初産婦の割合を比較したところ,A群(n=103)では35 歳以上がn=32(31.0%)で,B群(n=62)でn=9(14.5%), C群(n=37)でn=6(16.2%)であり,出産施設ごとの高 齢初産婦の割合に有意な関連を示した(P=0.027)。  初産婦の平均年齢は,31.4歳であり,出産施設別に みると,A群 31.8歳,B群30.8歳,C群31.0歳であっ 表1 対象の背景 項 目 大学病院・病院A群(n=182) B群(n=106)診療所 C群(n=101)助産所・自宅 合計 pa 初産婦 経産婦 1回目2回目 3回目 4回目 103(57.2) 55(30.6) 14( 7.8) 8( 4.4) 62(58.5) 36(34.0) 6( 5.7) 2( 1.9) 37(37.0) 36(36.0) 23(23.0) 4( 4.0) 202(52.3) 127(32.9) 43(11.1) 14( 3.6) <0.001*** 出産時の年齢 30歳未満 30∼34歳 35∼39歳 40歳以上 51(28.2) 65(35.9) 51(28.2) 14( 7.7) 29(27.4) 51(48.1) 22(20.8) 4( 3.8) 23(22.8) 42(41.6) 31(30.7) 5( 5.0) 103(26.5) 158(40.7) 104(26.8) 23( 5.9) 0.289 妊娠前の職業 会社員 パート 専業主婦 その他 79(44.4) 25(14.9) 53(29.8) 21(11.8) 40(37.7) 27(25.5) 28(26.4) 11(10.4) 44(44.0) 13(13.0) 25(25.0) 18(18.0) 163(42.4) 65(16.9) 106( 7.6) 50(13.0) 0.109 現在の職業 会社員 パート 専業主婦 その他 37(20.7) 16( 8.9) 113(63.1) 13( 7.3) 19(18.1) 8( 7.6) 73(69.5) 5( 4.8) 23(22.8) 12(11.9) 52(51.5) 14(13.9) 79(20.5) 36( 9.4) 238(61.8) 32( 8.3) 0.125 世帯年収 200万円未満 200~300万円未満 300~400万円未満 400~500万円未満 500~600万円未満 600~700万円未満 700万円以上 8( 4.5) 20(11.9) 20(11.4) 30(17.0) 30(17.0) 14( 8.0) 53(30.1) 0( 0.0) 9( 8.8) 16(15.7) 20(19.6) 16(15.7) 13(12.7) 28(27.5) 1( 1.0) 6( 6.0) 18(18.0) 19(19.0) 10(10.0) 14(14.0) 32(32.0) 9( 2.4) 36( 9.5) 54(14.3) 69(18.3) 41(14.8) 41(10.8) 113(29.9) 0.16 a. Pearson のχ2検定 ***: p<0.001. 数値はn(%)を示す。欠損値は除く。

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た(P=0.448)。 2 ) 職業  職業の特徴は,表1に示したように,妊娠前は「会 社員」が最も多く42.4%であった。出産後の現在では, 「専業主婦」が最も多く61.8%,次いで「会社員」20.5% であった。妊娠前および現在の就労の有無と出産施設 には,有意な差は認められなかった。 3 ) 世帯年収  全対象者では,「700万円以上」が最も多く29.9%で あった。出産施設と収入には有意な差は認められなか った。 2.出産施設選択時に影響を及ぼす要因 1 ) Product要因  健診・出産・産後の内容を本質サービスとし,表2 に示した。  特徴的な結果としては健診要因・出産要因・産後要 因の全ての項目で,回答結果に有意な差が認められた。  まず,健診に関する質問項目では,「健診時間が長 く丁寧」「スタッフ少人数制である」「子ども同伴が可 能な健診」は,A・B群に比してC群で回答した者の 割合が高かった(p<0.001)。また,「毎回医師の健診が 可能」は,A群31.6%,B群31.7%と高い割合を示した (p<0.001)。「3D・4D超音波が可能」では,B群38.5% であり,A群C群に比べ高かった(p<0.001)。健診に 関する施設選択の理由において「特にない」と回答し ている対象者は,A群36.2%,B群24.0%であり,C 群6.9%に比べ高かった(p<0.001)。  次いで,出産に関する質問項目において,A群が回 答した項目では,「特にない」が37.7%と多く,次に「カ ンガルーケアが可能」26.9%,「夫・子立ち会い出産可 能」20.0%であった。B群では「特にない」が最も多く 32.4%,次に「自然出産希望」25.7%,「夫・子立ち会い 出産」「カンガルーケアが可能」それぞれ24.8%であっ た。「無痛・和痛出産ができる」はB群が14.3%であり, A・C群に比べ高かった(p<0.001)。「助産師の付き添 いがある」はC群76.2%でありA群15.4%,B群14.3% に比べ高かった(p<0.001)。特徴的結果として「特にな い」は,A群,B群が多く回答しており,C群は皆無で あった(p<0.001)。 表2 本質サービス(健診・出産・産後)の要因による施設の選択理由 項目 大学病院・病院A群(n=182) B群(n=106)診療所 C群(n=101)助産所・自宅 pa 健診要因 健診時間が長く丁寧 子ども同伴が可能な健診 待ち時間が少ない スタッフ少人数制である 毎回助産師の健診が可能 毎回医師の健診が可能 3D・4D超音波が可能 特にない 37(20.9) 11( 6.2) 25(14.1) 8( 4.5) 21(11.9) 56(31.6) 17( 9.6) 64(36.2) 23(22.1) 17(16.3) 15(14.4) 11(10.6) 10( 9.6) 33(31.7) 40(38.5) 25(24.0) 74(73.3) 45(44.6) 32(31.7) 47(46.5) 23(22.8) 1( 1.0) 0( 0.0) 7( 6.9) <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** 0.013* <0.001*** <0.001*** <0.001*** 出産要因 フリースタイル出産希望 自然出産希望 助産師の付き添いがある 夫・子 立ち会い出産が可能 カンガルーケアが可能 会陰切開の選択が可能 必要時分娩誘発剤が可能 無痛・和痛出産ができる 帝王切開ができる 特にない 22(12.6) 33(18.9) 27(15.4) 35(20.0) 47(26.9) 6( 3.4) 15( 8.6) 9( 5.1) 17( 9.7) 66(37.7) 19(18.1) 27(25.7) 15(14.3) 26(24.8) 26(24.8) 8( 7.6) 10( 9.5) 15(14.3) 10( 9.5) 34(32.4) 71(70.3) 96(95.0) 77(76.2) 101(82.2) 76(75.2) 34(33.7) 25(24.8) 0( 0.0) 1( 1.0) 0( 0.0) <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** 0.017* <0.001*** 産後要因 母子同室 育児指導が受けられる 母乳指導が受けられる 母乳外来がある 産後アロマを実施 産後教室がある 産後長期に頼れる 特にない 46(26.1) 42(23.9) 62(35.2) 36(20.5) 11( 6.3) 9( 5.1) 13( 7.4) 74(42.0) 27(25.7) 31(29.5) 34(32.4) 12(11.4) 31(29.5) 11(10.5) 6( 5.7) 35(33.3) 79(78.2) 51(50.5) 71(70.3) 31(30.7) 17(16.8) 19(18.8) 60(59.4) 2( 2.0) <0.001*** <0.001*** <0.001*** 0.003** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** a. Pearson のχ2検定 *: p<0.05, **: p<0.01, ***: p<0.001. 数値はn(%)を示す。欠損値は除く。

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 産後要因での特徴としてA・B群は,「母子同室」「育 児指導が受けられる」「母乳指導が受けられる」など健 診要因・出産要因の項目より産後要因の項目を多く選 択していた。  「産後アロマを実施」はB群で29.5%であり,A・C 群に比べ高かった(p<0.001)。「産後長期に頼れる」は, A群7.4%,B群5.7% に 比 べ,C群59.4% と 高 か っ た (p<0.001)。「特にない」は,A群42.0%,B群33.3%を 選択しており,C群2.0%より高かった(p<0.001)。 2)表層サービス(食事・場所など)の要因(表3)  まず,食事要因に関する全ての質問項目において, 回答結果に有意な差が認められた。特徴的な結果とし て「豪華な食事が出る」「お祝い膳が出る」において,B 群が42.9%を占め,A・C群に比べ高かった(p<0.001)。 「母乳に良い食事が出る」は,C群が80.6%を占め,A 群17.5%,B群18.1%に比べ高かった(p<0.001)。「特 にない」の項目は,A群が59.3%を占め,B群,C群に 比べ高かった(p<0.001)。  次いで,Place・設備要因の特徴として「個室があ る」は,B群では71.7%が回答しており,A・C群に 比べ高かった(p<0.001)。「新しくてきれい」はB群で 33.0%,「施設規模が大きい」はA群で30.0%,「施設規 模が小さい」はC群で30.3%であり,各項目の結果に 有意な差が認められた(p<0.001)。「自宅に近い」は,A 群51.1%,B群55.7%,C群51.5%が回答していた。「特 にない」の項目は,A群6.7%,B群1.9%であり,C群 17.2%に比べ低かった(p<0.001)。  Promotion要因では,B群50.5%,C群49.0%であり, A群30.3%に比べ高かった(p<0.001)。  Price要因の特徴は,「出産費用が安い」の項目にお いて,A群の30.7%に対して,B群9.7%,C群19.6% であり有意な差が認められた(p<0.001)。「補助券が 使える(妊婦健康診査公費)」を回答した割合は,A群 22.3%,B群23.3%であり,C群9.3%に比べ,有意な 差が認められた(p=0.015)。また「特にない」は,A群 53.6%で あ り,B群65.0%,C群70.1%(p=0.017)に 比 べ 低かった。 3 ) 年齢・出産回数などに対する気持ちの特徴  表4に示すように,「35歳以上(高齢出産)だから」 を回答した者は,A群が25.9%に対して,B群9.0%, 表3 表層サービス(食事・場所など)の要因による施設の選択理由 項目 大学病院・病院A群(n=182) B群(n=106)診療所 C群(n=101)助産所・自宅 pa 食事要因 豪華な食事が出る お祝い善が出る 家族も一緒の食事 野菜中心 の食事が可能 母乳に良い食事が出る 嗜好に合う食事が出る 無農薬・有機野菜の食事 特にない 26(14.7) 29(16.4) 6( 3.4) 7( 4.0) 31(17.5) 6( 3.4) 2( 1.1) 105(59.3) 45(42.9) 45(42.9) 18( 9.0) 9( 8.6) 19(18.1) 6( 5.7) 4( 3.8) 23(21.9) 4( 4.1) 0( 0.0) 16(16.3) 64(65.3) 79(80.6) 21(21.4) 23(23.5) 11(11.2) <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** Place・設備要因 個室 新しくてきれい 施設規模が大きい 施設規模が小さい 駐車場がある 自宅に近い 実家に近い 特にない 41(22.8) 41(22.8) 54(30.0) 1( 0.6) 33(18.3) 92(51.1) 49(27.2) 12( 6.7) 76(71.7) 35(33.0) 2( 1.9) 7( 6.6) 24(22.6) 59(55.7) 32(30.2) 2( 1.9) 33(33.3) 3( 3.0) 0( 0.0) 30(30.3) 11(11.1) 51(51.5) 11(11.1) 17(17.2) <0.001*** <0.001*** <0.001*** <0.001*** 0.091 0.740 0.002** <0.001*** Promotion要因 ホームページ 出産サイト 地域の広告 看板 パンフレット 特にない 54(30.3) 8( 4.5) 4( 2.2) 3( 1.7) 7( 3.9) 110(61.8) 52(50.5) 10( 9.7) 3( 2.9) 13(12.6) 5( 4.9) 39(37.9) 47(49.0) 6( 6.3) 7( 7.3) 4( 4.2) 4( 4.2) 38(39.6) <0.001*** 0.225 0.096 <0.001*** 0.933 <0.001*** Price要因 出産費用が安い 妊婦健診が安い 補助券が使える 特にない 55(30.7) 7( 3.9) 40(22.3) 96(53.6) 10( 9.7) 4( 3.9) 24(23.3) 67(65.0) 19(19.6) 6( 6.2) 9( 9.3) 68(70.1) <0.001*** 0.644 0.015* 0.017* a. Pearson のχ2検定  *: p<0.05, **: p<0.01, ***: p<0.001 数値はn(%)を示す。欠損値は除く。

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C群3.1%であり,有意な差が認められた(p<0.001)。 「初めての出産だから」の項目では,A 群31.0%B 群 38.0%に対して,C群では14.6%であり,有意な差が 認められた(p<0.001)。

Ⅴ.考   察

1.マーケティング・ミックス4Pからみた施設選択 の理由と助産所の関連 1 ) Product要因における助産所の強みと情報の非対 称性  大学病院・病院,診療所を選択する妊婦は,「健診 時間が長く丁寧」「自然出産 希望」「フリースタイル出 産希望」「助産師の付き添いがある」などの選択が少な かった。  松下(2001, p.64)は組織の戦略的成功要因の判断 に,組織内部の強み(Strengths)・弱み(Weaknesses) と, 組 織 外 部 か ら 来 る 機 会(Opportunities)・ 脅 威 (Threats)を明確にする「SWOT分析」を勧めている。 これは自社の強みをいかに戦略として捉えるか,弱点 はなにかという環境分析の1つである。表2に示した ように,大学病院・病院群,診療所群は,「健診・出 産・産後」の質問に対して,「特にない」という項目を 多く選択している。すなわち大学病院・病院,診療所 を選択する妊婦が,本稿の調査票で示した,「健診・ 出産・産後」の内容に対して望むことが少ないことを 指している。  助産所の強み(Strengths)は,助産師主導型で妊婦 健診,出産介助,産後のケアが実践できることである。 だが,今回の調査結果では,この主力への選択が大学 病院・病院,診療所の選択者において少なく,この傾 向は,助産所の出生数に影響を与えると考えられる。 これは助産所の強みとする内容と妊婦の選択理由に 乖離があると思われる。特に「出産時,助産師の付き 添いがある」の選択結果は,大学病院・病院群15.4%, 診療所群14.3%となっている。これは,出産時におけ る助産師の役割および専門性が,妊婦に知られていな いかまたは必要とされていないことが推測できる。特 に,出産時に助産師が付き添い,出産介助を実施する 助産所において,この結果は,「弱み(Weaknesses)」 になるものと考えられる。さらにこの値は,出産時に おける助産師の役割に対する認知不足という課題が示 唆される。  ここで情報に着目すると,女性は妊娠以前に助産師 の専門性や出産の内容など,産科医療の情報について 詳しく知る機会が少ない(遠藤・宮内・佐久間,2011, pp.80-85)。医療にとって情報は重要なファクターであ る。それは医療などのサービスが形としては見えづら く(Kotler, Hayes, Paul N, 2012a, pp.9-11;薄井,2003, pp.048-055),人は情報によってその内容を判断せざる を得ないからである。  情報に対して,経済学の視点から川上・木村(2013, pp.4-15),廣田(2010, pp.025-033)は,医療サービスに おける「情報の非対称性」が重要な問題であることを 指摘している。「情報の非対称性」は,「需要側(妊婦) と供給側(医療者)との間に,保有する情報の質と量 に差異がある状態のこと」(真野,2004, p.25)である。 これを視座とした時,妊婦と助産所の間には,「情報 の非対称性」として情報の質と量に格差が生じている と思われる。つまりこれは,助産所のケアやサービス と妊婦の施設選択の理由への乖離を発生させ,出生数 の減少に至るのではないかと考える。妊婦と助産所の 間にある「情報の非対称性」の修正は急務の課題である。 2 ) 施設選択に影響する表層サービス  本研究結果から,大学病院・病院,診療所を選択す る妊婦は,「規模が大きい」「個室」「新しくてきれい」 「豪華な食事が出る」「お祝い膳が出る」などのサービ スに対する要望の高さが示された。 表4 年齢・出産回数などに対する気持ちの特徴 複数回答(%) 項 目 大学病院・病院A群(n=182) B群(n=106)診療所 C群(n=101)助産所・自宅 pa 35歳以上(高齢出産)だから 18歳以下(若年出産)だから 自然に出産することに自信がないから 助産院で出産してみたい 初めての出産だから 経産婦だから 特にない 45(25.9) 1( 0.6) 5( 2.9) 2( 1.1) 54(31.0) 43(24.7) 44(25.3) 9( 9.0) 0( 0.0) 4( 4.0) 1( 1.0) 38(38.0) 24(24.0) 29(29.0) 3( 3.1) 0( 0.0) 5( 5.2) 74(77.1) 14(14.6) 23(24.0) 9( 9.4) <0.001*** 0.569 0.624 <0.001*** <0.001*** 0.987 0.002** a. Pearsonのχ2検定 **: p<0.01, ***: p<0.001. 数値はn(%)を示す。欠損値は除く。

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 浅見(2002, pp.15-23)は,産科施設の満足度に影響 を与えるサービスの構成因子として「hospitality因子」 を抽出している。「hospitality因子」は,ホテルなどの サービス業にも共通した要素である。たとえば産科 医療では,超音波検査の写真・DVDなど複写サービ スというような細かなサービスも重要視されており, hospitality因子は,経営への施策になると述べている。 また嶋口(1996, pp.64-73)は,サービス業の満足度を 高める要素として,表層サービスは満足を上方に伸ば す役割があると述べている。今回の調査では表層サー ビスの一部として食事,設備の内容を質問した(表3)。 その結果,診療所群では「個室」「新しくてきれい」「豪 華な食事が出る」「お祝い膳が出る」などが多く回答さ れている。これを表2に示す「健診要因・出産要因・ 産後要因」の本質サービスの回答と比較すると,表3 の食事・設備などの表層サービスに対する回答のほう が多い。  一方,大学病院・病院群は,食事サービスでは 「特にない」が59.3%と高く,また,「個室」の希望は 22.8%と低い結果であった。このことは,両群に医師 が存在するにもかかわらず,大学病院・病院群は救急 な対応ができ,食事などよりも安全性を重視する視点 から選択するものと推測される。  また,今回の調査では助産所の強みである「母乳に 良い食事」「母乳外来がある」「母子同室」などのサービ スに対して,大学病院・病院群,診療所群の選択が低 かった。母親が母乳育児を希望する潜在ニーズはあ る(母子保健の主なる統計,2014, p.131)。しかし,助 産所の強みとする食事,ケア,サービスの内容を知ら なければ,妊婦は選択することは出来ない。これもま た,助産所の出生数減少の一要因になると考えられる。 実施されているケアやサービスおよびその評価を含め, ホームページなどでのPromotion活動を取る必要があ ると考える。 3 ) Price要因からみえる社会・制度の関連  出産費用では,表3で示すように,大学病院・病院 群が「出産費用が安い」を選択している。これは施設 間の年収の違いによる影響が考えられる。表1で見る と,年収300万円以下は,診療所群8.8%,助産所群7% に対して,大学病院・病院群は16.4%であり,大学病 院・病院群が「出産費用が安い」ことを選択する傾向 にあるのではないかと推測される。加えて,我が国の 子どもを産む世代は,低所得者層が増加しているとい う報告があり(内閣府,2013, pp.1-13),この社会的背 景もまた,「出産費用が安い」という施設の選択理由に 影響を与えるだろうと考えられる。  健診費用では,大学病院・病院群,診療所群は,助 産所群に比べ「補助券が使える(妊婦健康診査公費)」 を選択している(表3)。この結果は,東京都内の助産 所において妊婦健診補助券が未だ使用出来ず(2014年 3月現在),償還払い制度となっているためだと考え られる。妊婦健康診査公費補助券使用における結果か ら言えることは,出産施設による制度の差がなく,消 費者が公平に補助券を使えるようにすることは急務で ある。 2.マクロ環境からくる助産所の外部環境の脅威  (Threats)  本研究結果から,大学病院・病院群の妊婦は高齢産 婦の割合が高く,また「35歳以上(高齢出産)だから」 (表4)であることを気にして施設を選択していること が明らかになった。年齢は,マーケティングに影響を 与える環境要因の1つと言われている(Kotler, Hayes, Paul N, 2012b, pp.103-144)。Kotlerはマーケティング の実践において,年齢のほかに,経済,政治/法的, 自然などのマクロ環境は,組織(助産所)努力ではコ ントロールすることが困難であるにもかかわらず,組 織(助産所)を左右するものとして注意を払う必要が あると言及している。  現在日本では,35歳以上の産婦が増加を続け,2008 年に20万人を超えた(厚生労働省,2012;内閣府, 2013, pp.1-13)。妊婦が「35歳以上」であることを気に して施設を選択した場合,今回の調査結果のように, 大学病院・病院を選択する傾向が高くなり,助産所は 益々厳しい環境に追いやられるのではないかと思われ る。ここで年齢以外の近年のマクロ環境を概観した 場合,先に述べたようにいくつかの社会環境の変化 がある。経済環境要因では,2007年の世界金融危機や 2008年のリーマン・ショックが日本経済に影響を与 えた(川本,2009, pp.70-72)。政治/法的環境要因では, 2007年から2008年にかけて助産所運営に関する医療 法19条の改正,助産所ガイドラインの全面改定が行 われた。また,2004年以降の社会的背景では「産科医 療の崩壊」という報道が加熱し,その潮流の中,2007 年日本医師会は,「このままでは『お産難民が発生す る』」という意見広告を新聞掲載した(軸丸,2009)。自 然環境要因では,2011年に震災が発生した。以上のよ うなマクロ環境の変化が,助産所の出生数にどのよう

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に影響を与えているかは,更なる研究が必要であると 思われる。しかし,近年,助産所の出生数が減少して いる背景には,Kotlerらが述べるように(2012b),個々 の組織ではコントロールが不可能な,産む世代の年齢 や他に政治,経済,自然などマクロ環境からの脅威 (Threats)が助産所の出生数に影響を与えていると考 えられる。  特に出産の当事者である女性の年齢が35歳以上に なることは,助産所の出生数減少の要因として重くの しかかる問題であると思われる。助産所の経営戦略で は,マクロ環境が出産する個人の要望にどのような変 化を与えていくのか,環境分析に注意を払う必要があ る。

Ⅵ.本研究の限界と課題

 Kotlerらは(2012a, pp.9-17),プロフェッショナル集 団がマーケティングに消極的でありその時間が持てな いと述べ,また宮 (2001, pp.145-159)は,助産所経 営におけるマーケティング不足を危惧した。マーケテ ィングは,助産師活動と経営の両方を実施する助産所 にとって必要であると考える。このマーケティングの 概念に依拠し調査を実施したが,本稿は地域が限定さ れていること対象者数が少ない条件での研究となった。 また今回の目的から,各項目を経営学的視点で丁寧に 解釈した。内部相関する変数も多いため,多変量解析 の場合では,使用できない変数が出てきて,説明の機 会がなくなる可能性があった。そこで,単変量解析と して,情報量を多いままに提示した。このような本研 究の限界と課題を認識しながら,助産所のマーケティ ング研究を活かしていきたい。

Ⅶ.結   論

 本研究の結果,以下の点が明らかになった。  第1にマーケティングのマクロ環境では,年齢要因 との関連性が示唆された。病院・大学病院群は,「35 歳以上(高齢出産)だから」という理由により施設選択 する割合が高かった。特に35歳以上の高年初産婦は, 診療所,助産所より病院・大学病院を選択する傾向に あった。  第2にマーケティング・ミックスでは,特にProd-uct(サービス・ケア)に関連があった。大学病院・病 院群,診療所群は,助産所のProduct(サービス・ケ ア)で強みとされる「健診時間が長く丁寧」「自然出産 希望」「フリースタイル出産希望」「助産師の付き添い がある」「母乳指導が受けられる」などに対する要望が 低かった。さらに大学病院・病院群・診療所群は,「健 診要因・出産要因・産後要因」のサービス・ケアにお いて「特にない」と回答している割合が高かった。  大学病院・病院群,診療所群は,「規模が大きい」「毎 回医師の健診が可能」「個室希望」「新しくてきれい」 「豪華な食事が出る」「お祝い膳が出る」などのサービ スに対する要望の高さが示された。  すなわちこれは,大学病院・病院群,診療所群の妊 産婦の要望しているものと,助産所の提供している Product(サービス・ケア)の違いである。助産所の出 産数の減少に影響を与えているのは,助産所の提供し ているProduct(サービス・ケア)と大学病院・病院群, 診療所群の妊産婦の要望しているProduct(サービス ・ケア)に差があることである。  第3に,Price要因では,大学病院・病院群が「出産 費用が安い」を選択している。加えて,大学病院・病 院群,診療所群は,「補助券が使える」を選択しており, 妊婦健康診査公費の補助券が使用可能なことは選択要 因との関連性が示唆された。 謝 辞  本研究を実施するにあたり,お母様方には快く参加 協力を頂きました。今後の産科医療が改善して欲しい という内容のお手紙を添付して下さる方もいらっしゃ いました。深謝いたします。また,同時に研究のため に御協力して下さった施設関係者の協力無しには完成 できない研究でした。皆様には心より感謝いたします。 文 献 浅見万里子(2002).顧客満足度に影響する出産サービス の構成因子.日本助産学会誌,16(1),15-23. 母子衛生研究会(2014).母子保健の主なる統計.東京: 母子保健事業団.

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参照

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