• 検索結果がありません。

棄権理由のうち用事と病気のもつ意味 --政治老年学の基礎としての障害者の政治学---香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "棄権理由のうち用事と病気のもつ意味 --政治老年学の基礎としての障害者の政治学---香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

棄権理由のうち用事と病気のもつ意味

―― 政治老年学の基礎としての障害者の政治学 ――

はじめに 第一章 用事,病気棄権者のデモグラフィックな特徴 第二章 棄権理由と投票以外の参加 第三章 見聞きしたメディア 第四章 棄権理由と集団加入 第五章 棄権理由と満足 おわりに

は じ め に

明るい選挙推進協会のデータに棄権者の棄権理由を聞く項目がある。そ うしたら,ある理由についてもっぱら高齢者が答え,別の理由には非高齢 者が答えるというように設えられている質問があった。それは棄権者の!み! 答えており,その年齢とのクロス表が「図1 棄権理由−用事」と「図2 棄権理由−病気」である(多数回答)。 いずれも,選挙があった一週間くらいの後の調査でありその選挙におけ るごく「日常的」なこととして,他の項目と並べて聞いてある。他の項目 は,面倒,無関心,事情不明,候補者不在,投票無価値,選挙無価値,で 一 二 二 − 1 − 29−2−250(香法2009)

(2)

図1 棄権理由−用事 N=1,666 1)調査年は,1980年,83年中の二つの選挙,86,89,90,92, 93,95,96,98年。総サンプル=25,001うち棄権=4,980. 図2 棄権理由−病気 N=466 一 二 一 29−2−249(香法2009) − 2 −

(3)

ある。用事は選挙以外のことをたくさん抱えている人が使う理由である。 病気は,他に項目がないので,怪我,知的・精神的障害も含む体に問題を 持っている人が,急病等を含んで,表明する理由である。 その意味では,用事と病気は,年齢に匹敵する程の独立変数の役目を果 たしている。 用事派の方は,65歳までほぼ均質に45∼50%の範囲で答えており,65 歳になると急激に落ち込む。忙しい人で,有職者で,用事を棄権の正当な 理由にしている人のようである。他方,病気派の方は,20歳から55歳代 まで10%の枠内で収めているが60歳を過ぎたら急速に病気であるものが 増えていく。そして,高齢者は,60歳以上で,いわゆる生活習慣病など のため様々な闘病を強いられる。いわば,障害者で投票をしない人が,他 図3 棄権理由−用事,病気 一 二 〇 − 3 − 29−2−248(香法2009)

(4)

に項目がないために相当数入っている可能性がある。用事のほうの項目は グラフで見るとおり非高齢者がもっぱら答えており,病気の項目は高齢者 がもっぱら答えている年齢関連の変数である。 そこで,両項目一緒にして,「図3 棄権理由−用事,病気」において, 非高齢者(20∼64歳),前期高齢者(65∼74歳),後期高齢者(75歳以上) という風にまとめて見た。そうすることによって,第一にどのデモグラ フィー的特徴が各年齢層の特徴をよく体現しているのか,違うのか,第二 に投票以外の政治参加を促しているのは何か,第三に投票しようというメ ディアは何か,第四に棄権層が加入する集団は何か,第五に棄権すること でいわゆる満足が得られていくのか,を明らかにする。これらの明確化の 後で,第二章以下の各章末に提言を提起する。

第一章 用事,病気棄権者のデモグラフィックな特徴

棄権理由と年齢の基本線にくわえ,性別などのデモグラフィックな特徴 が,棄権理由の「用事」と「病気」を分けているかを見るのがここのポイ ントである。更に,投票者との差をダイナミックに示すために,投票者の みのデータを示した!。主として,用事派は非高齢者で比較し,病気派は前 期高齢者と後期高齢者で比較する。 ! 性別は「図4 棄権理由の「用事」と性別」と「図5 棄権理由の 「病気」と性別」とによってみる。 用事派の場合,男女いずれも右肩下がりの年齢上の特徴はあるものの, 男女の順で○+1・○−6"と,男子と比べ女子のほうが7%ほど用事を言って ! 投票者+棄権者という全体標本にするとパーセント差が接近してきて甘くなる。 " 年齢を基準に横に値を見るとき,「・」を使う。例えば,非高齢者,男女,○+1・ ○−6のように書く。年齢を,縦に見るとき,年が若い順に「→」を使う。例えば,「病 気派は,○−14→○−20→○−20」というようにする。年齢を見るとき,用事派は高齢者を, 病気派は非高齢者を参考程度に見るという意味で( )で表す。 一 一 九 29−2−247(香法2009) − 4 −

(5)

図4 棄権理由の「用事」と性別 図5 棄権理由の「病気」と性別 一 一 八 − 5 − 29−2−246(香法2009)

(6)

いない。 病気派の場合,男女いずれも右肩上がりの年齢上の特徴はあるものの, 前期高齢者から示すと,男性は(○−41→)○−21→○−1であり,女性は(○− 45→)○−2→○+11であり,男性は前期高齢者であまり病気とは言わない。 女子は,前期高齢期から投票者の%と同じ棄権率を示し,後期高齢期では 11%も上回ってしまう。女!子!の!有!病!率!は!,!男!性!よ!り!高!い!。 " 学歴別は「図6 棄権理由の「用事」と学歴別」と「図7 棄権理 由の「病気」と学歴別」によってみる。 用事派の場合,右肩下がりの年齢上の特徴はあるものの,年齢順に言う ならば,非高齢者に小中・高・大=○+22・○−7・○+27と,小・中と大学 卒にこの種の用事を言うものが沢山いる。 病気派の場合,右肩上がりの年齢上の特徴はあるものの,前期高齢者以 降の年齢順に言うならば,小・中で(○−13→)○−17→○−13で,高卒で(○− 47→)○+5→○+19で,大卒で(○−18→)○+16→○+41で,高卒,大卒が早く 図6 棄権理由の「用事」と学歴別 一 一 七 29−2−245(香法2009) − 6 −

(7)

から病気を言い出し,学歴が高くなるにつれその傾向は強くなった。高卒 は,後期高齢者で大卒とともに投票者をはるかに上回った。 ! 職業別は「図8 棄権理由の「用事」と職業別」と「図9 棄権理 由の「病気」と職業別」によってみる。 用事派の場合,ほぼ右肩下がりの年齢上の特徴はあるものの,数の多い 非高齢者の値のみ掲載すると○+21・○+9・○+23・○+20で,非高齢者の事 務・生産の集団が低い。さらに,殆どいない学生,無職の投票者は5%で あるのに彼らは28%も用事を語った。前期高齢者−後期高齢者は実数が 少ないので言及しない。 病気派の場合,右肩上がりの年齢上の特徴はあるものの,前期高齢者− 後期高齢者の並びにすると,農林・商工・管理は(○−22→)○−9→○+21, 事務・生産は(○−37→)○+12→○+98,(学生・)無職は(○+19→)○+6→ ○−8,主婦は(○−15→)○+25→○+69であった。非高齢者では,やはり早々 と「無職」者が病気を理由に挙げている。 図7 棄権理由の「病気」と学歴別 一 一 六 − 7 − 29−2−244(香法2009)

(8)

図8 棄権理由の「用事」と職業別 図9 棄権理由の「病気」と職業別 一 一 五 29−2−243(香法2009) − 8 −

(9)

! 都市規模別は「図10 棄権理由の「用事」と都市規模別」と「図 11 棄権理由の「病気」と都市規模別」によってみる。 用事派の場合,非高齢者では○+33・○+18・○+20・○+24と,大都市で33 ポイントも用事を口にする人が多い。 病気派の場合,大都市が(○−10→)○+21→○+39,10万以上都市で(○− 28→)○+13→○+40,10万未満都市(○−18→)○+22→○+20,郡部(○−15→) ○+24→○+25,であり,後期高齢者で一番病気を口にするのが10万以上の 都市にすむものである。それを口にするのが最も少ないのが10万未満の 都市にすむものであるが,それは小さな違いであって,その殆どが4割を 超えている。 用事派は,男,小・中・大卒,農林・学生・主婦,大都市,に多く,病 気派は,女,高卒,大卒,無職・主婦,10万以上都市,で棄権理由とす るものが多かった。 図10 棄権理由の「用事」と都市規模別 一 一 四 − 9 − 29−2−242(香法2009)

(10)

第二章 棄権理由と投票以外の参加

棄権している人でさえ,後援会,演説会,機関誌購読には関わっている だろうし,彼らは適切な指導があれば,投票のすぐ前まで来ている政治参 加意欲を,投票に至るまで伸ばせるかもしれない。政治参加から投票参加 に変換するのにディスエンパワーメントされた個所があるかもしれない。 ここに重大な問題がある。ここでは,政治参加⇒用事,病気かその逆かと いう因果関係の問題が関わっているが,普段後援会などに参加するかとい う質問であり,「用事」「病気」はその選挙で棄権したかどうかの質問で, 明らかに時間的な順序は政治参加⇒用事,病気である。しかし,「はじめ に」で触れたように,政治に対する基本的な態度として,用事と設定し, また体調の問題も病気と設定しているので,独立変数として扱う。 「図12 棄権理由の「用事」と参加」と「図13 棄権理由の「病気」と 参加」のグラフを作って見た。 図11 棄権理由の「病気」と都市規模別 一 一 三 29−2−241(香法2009) − 10 −

(11)

! 後援会加入 後援会加入については,用事派にとって投票者に対して○−8→(○−11→ ○−11)と大きく開きがあり,特に人数の多い非高齢者にとってそれは一定 の動員力を示していると思えるが,それでもあと8%の差が投票者との間 についている。 病気派は,非高齢者にとって用事派と偶然に小数点を丸めたところで一 図12 棄権理由の「用事」と参加 図13 棄権理由の「病気」と参加 一 一 二 − 11 − 29−2−240(香法2009)

(12)

致したが,人数の少ないところで発生した問題であってことさら問題では ない。高齢者3グループの数字上の値は,(○−8→)○−15→○−14であり, 高齢者グループ内では,殆ど人間は残っていない。 ! 演説会参加 演説会参加については,用事派にとって投票者に対して○−14(→○−16→ ○−23)と,さらに大きな差があり,非高齢者にとってあと8%の差を残し ている。 病気派は,(○−14→)○−20→○−20と,大きな差を見せ,演説会の動員力 の力強さを見せている。 " 機関誌購読 機関誌購読については,用事派にとって○−13(→○−9→○−25)と,非高 齢者レベルを13%も押し下げる力を見せる。 病気派にとって,(○−13→)○−15→○−13と,その人数の上で有力なとこ ろで,機関誌購読の投票促進効果は大きなものがある。 ここまで見てきたところで,三つの参加変数で最も投票促進効果が弱 かったのが,後援会加入変数であり,残りの演説会と機関紙購読は同じ程 度によく動員を果たす変数である。それで,演説会,機関紙購読に一層力 を入れるのは勿論であるが,機関紙については投票率の促進につき機関紙 の内容改善等に関しては直接政党に申し入れることが重要である。演説会 については政党に関わるところもあるが,様々な形態の「演説会」(政治 の勉強会,国会報告会,等)もあろうからNPO 等に関わってもらって, いろいろなレベルの演説会の試行をしてみることも一考である。

第三章 見聞きしたメディア

ここでも,明推協のデータを,投票者と棄権者にわける投票者のデータ 一 一 一 29−2−239(香法2009) − 12 −

(13)

と,更に棄権者をわけるデータを取り上げ,ここでも「棄権理由」に焦点を 当てて分析する。比較を行うが,対照部分は投票者のみのサンプルである。 棄権者に注目したのは,先に述べたように,「用事」は非高齢者が使う 理由であり,「病気」は高齢者が使う理由であるからだ。この人たちが, 投票の呼びかけを見たり・聞いたりなどしたかどうかである。結果は,「図 14 棄権理由−用事とメディア」と「図15 棄権理由−病気とメディア」 に掲げてある。ここの因果関係は,用事があったから,あるいは病気だか ら,これらにメディアに接触した,またはしなかった,と考えれば良いだ ろう。主なものだけ取り出してみる。 ! 新聞ニュース 非高齢者は,用事において,新聞の投票勧誘の経験をある程度持ってお り,しかもそれらと接触したものが投票者と比べ少なめなのである。頻度 の差は,非高齢者は,○−9であり,投票者に比べ一定の違いである。 図14 棄権理由−用事とメディア 一 一 〇 − 13 − 29−2−238(香法2009)

(14)

病気と答えたもののうち,同じく,(○−12→)○−20→○−18と,投票者に 比べか!な!り!大!き!な!割!合!で!接!触!し!て!な!い!。逆に言うと,新聞に接触する者は 投票しやすくなる。 " テレビニュース 用事と答えた棄権者のうち,○−2(→0→○−7)に見るように,非高齢 者と前期高齢者は投票者と同じ接触量であるが,後期高齢者は値がかなり 低くなっている。 病気と答えたもののうち,(○+2→)○−16→○−14に見るように,値の落 ち込みは既に前期高齢者から始まっており,それは後期高齢者まで同じ状 態を示す。 # ラジオ 用事と答えたもののうち,0(→○+1→○+4)というように,前期高齢 図15 棄権理由−病気とメディア 一 〇 九 29−2−237(香法2009) − 14 −

(15)

者の段階から棄権者が上回り始め,高齢者では倍ぐらいになるまで棄権者 が上回った。テレビよりラジオが好きな高齢者の顔が浮かんでくる。しか し投票に行かせる役は果たしてない。 病気と答えたもののうち,(○−3→)○−2→○−14と,投票者を上回ると ころはなかった。病気棄権者の情報欠如状態を物語っている。逆に病気の 者にはラジオが良い。 ! 広報紙 (公報)広報については,投票者については,最も利用度が高いものの ひとつに入る。 用事と答えたもののうち,○−8(→○−5→○−9)と,全ての時期におい て棄権者を超えている。 病気と答えたもののうち,(○−9→)○−31→○−14と,前期高齢者と後期 高齢者ともどもにほとんど読んでいない。しかし読むものには大きな動員 効果を持っている。 " 広報車 用事と答えたもののうち, ○−7(→○−6→○−25)と,棄権者は投票者 より劣っている。 病気と答えたもののうち,同じ順で,(○−11→)○−10→○−12と,安定し て劣っている。 # 掲示 用事と答えたもののうち,○−1(→○+2→○+2)で,投票者とあまり変 わらない。 病気と答えたもののうち,(○−1)→○−8→○−10と,投票者に劣ってい た。 一 〇 八 − 15 − 29−2−236(香法2009)

(16)

! 非接触 用事と答えたもののうち,○+6(→○+5→○+3)と,すべて投票者を上 回っていた。 病気と答えたもののうち,(○+7→)○+20→○+16と,圧倒的に投票者を 上回っていた。 次のように纏めることが出来るし,提言につなげられるだろう。 用事派は,新聞ニュース,テレビニュース,広報紙,広報車で,病気棄 権派と比べて投票者をわずかに下回っていた。 他方,用事派は,ラジオ,掲示において投票には関係ない状態で,今後 力を入れても難しいだろう。 病気棄権派は,テレビ・新聞,ラジオ,広報紙,広報車などは,一緒に 見て,一緒に視聴する介護担当者の役目が重要になってくる。 更に,病気棄権者の最悪の問題は,外出をしないことである。これも介 護担当者の手を煩わせることになるが外出をさせ,自治体の手で作られて いる,××センターなどで集わせていると,ポスター,広報車など回って くるので,自然と選挙情報は見聞きするようになる。一言で言えば,投票 に行けない人的,物理的,環境を改善することによる「投票におけるイン クルージョン」をその理念に掲げたい。

第四章 棄権理由と集団加入

集団加入に関しては,因果関係が実に難しい。ここでは,とりあえず, 用事派としての集団加入の特色は如何に,病気派としての集団加入の特色 は如何に,という「はじめに」に掲げた因果関係の基本線でいく。そこで, 「図16 棄権理由−用事と集団加入」と「図17 棄権理由−病気と集団加 入」という棒グラフを作ってみた。 もうひとつ,従属変数の値が第三章のメディアとは逆に理解されねばな らないことである。例えば,「図16」の老人クラブ(会)の33%をとって 一 〇 七 29−2−235(香法2009) − 16 −

(17)

みると,後期高齢者に老人クラブ活動が少ないというばかりではなく,逆 に参加が行われた結果ひくい%になったことも想像される。ここでは,老 人クラブの投票促進効果といわれる。逆の場合は,投票意志沮喪効果とい われる。 ! 町内会と「用事」,「病気」理由 棄権理由中用事派については,年齢順に○−12(→○+1→○−20)であり, 町内会は,非高齢者においては全体の71%に対して59%の,加入率であ る。即ち,投票促進効果が見られる。更に大きい違いで,後期高齢者では 用事派で相当なまでに投票促進効果が見られる。 図16 棄権理由−用事と集団加入 一 〇 六 − 17 − 29−2−234(香法2009)

(18)

棄権理由中病気派については,町内会は,(○−5→)○−6→○−7 と,「病 気」高齢者に対して,投票者度数を上回って,非高齢者−後期高齢者まで の序列に対して,高齢者の投票を促進する効果を持っている。 ! 老人クラブと「用事」,「病気」理由 棄権理由中用事をあげた人について,老人クラブは*(→○+1→○−21)で, 後期高齢者にたいして相当な投票促進効果を持っている(実数は少ない)。 棄権理由中病気をあげた人について,老人クラブは○+4→○−2 で,「病 気」高齢者に対して,投票者度数とほぼ同じく,高齢者の投票にはあまり 関係がなさそうだ。 図17 棄権理由−病気と集団加入 一 〇 五 29−2−233(香法2009) − 18 −

(19)

" 同好会・趣味の会と「用事」,「病気」理由 棄権理由中用事をあげた人について,「同好会・趣味」は○−4(→○−8 →○+1)と,年齢とともに投票促進効果を持ってくるが,特に非高齢者, 前期高齢者にこの傾向が強い。更に,病気を挙げた人では,(○−8)→○− 11→○−4 一貫して同好会の投票促進効果を認めることができる。 # 集団加入無と「用事」,「病気」理由 棄権理由中用事をあげた人について,「加入無」は○+14(→○+5→○+17) と,全体的に投票意思沮喪効果を持っているが,特に非高齢者と後期高齢 者にこの傾向が強い。 棄権理由中病気をあげた人については,「加入無」は,(○+13→)○+9→ ○+14と,用事棄権者より強い投票意思沮喪効果を持っているが,この効 果は全体的なものである。 結局全体として,最大の投票意思沮喪効果を持っているものは,「!加!入! 無!」!の!グ!ル!ー!プ!で!,!こ!の!人!た!ち!に!,!何!ら!か!の!形!で!集!団!形!成!の!手!が!か!り!を!与! え!る!と!い!う!こ!と!が!,!彼!ら!を!エ!ン!パ!ワ!ー!メ!ン!ト!し!て!ゆ!く!方!法!で!あ!ろ!う!。同時 に,集団と高齢者との関係では殆どの集団が高齢者を既に投票者へと形成 する役割を果たしていた。 そこで,用事を言う若い人には,町内会を通した投票促進運動が有効で あろう。用事を言う高齢者は,当然のことながら老人クラブであり,その 元気な部分の活動には目を見張るものがある。一方,病気の人たちには何 の効果もなかった。病気の高齢者に対しては,同好会と町内会が有効であ る。

第五章 棄権理由と満足

生活満足,政治満足は棄権理由によってどのような動きをとるのだろう か? それを示すのが,「図18,19 棄権理由の「用事」,「病気」と生活 一 〇 四 − 19 − 29−2−232(香法2009)

(20)

図18 棄権理由の「用事」と生活満足,政治満足(満足なもの程値が低い) 図19 棄権理由の「病気」と生活満足,政治満足 一 〇 三 29−2−231(香法2009) − 20 −

(21)

満足,政治満足」である。表記は,棒グラフの上の数字の左側の数字が棄 権理由で得られた値であり,右側の少し大きい太字のものが,投票者を入 れたサンプルの値である。 用事を選定するグループでは,非高齢者−前期高齢者−後期高齢者の順 に値が少なくなり,順調に満足感を伸ばしている。投票者サンプルとの比 較でいえば,生活満足,政治満足いずれも用事選定グループの方が満足感 が訪れるのが後期高齢期で0.1ほど早いのである。 病気を選定するグループでは,政治満足の方で非高齢者から後期高齢者 に至るまで投票者サンプルより値が低く,満足している。しかし,生活満 足の方では,非高齢者から前期高齢者に至るまで,満足化の方より不満の 方に転じるという考えられない方向を示す。例えば,前期高齢期に病気に かかった人は多分自分の将来を悲観的に見たのかもしれない。 つまり,用事言及者と病気言及者の政治満足者は全サンプルより更に一 層満足化に向かい,それは満!足!が!故!の!棄!権!に!近!い!心!理!を示す。病気言及者 の生活満足者は,不!満!が!故!の!棄!権!を示しているといえよう。

お わ り に

以上のように,デモグラフィー,投票以外への参加,メディア,加入集 団,そして満足感,において,異なる棄権理由で答えてくれた棄権者を区 別するであろう,「用事」と「病気」について,それぞれ異なる変数へ帰 属させ説明できたようである。 デモグラフィーにおいては,用事派は本当に用事があるものを先頭に, 実は他にも理由があったのだが,回答表で間に合わせる都合のいい言葉が 他に見当たらないので選ばれた言葉であるということがほのかに浮かんで くる。この態度と比べると,病気派は正直に理由を答えており,中でも女 が高齢化に伴う病気の多発化の影響を諸に受けているようだ。しかし,中 途障害者についてはある程度分かるにしても,生まれつきの障害者などは 一 〇 二 − 21 − 29−2−230(香法2009)

(22)

分からない。 純粋政治的な意味で何らかの参加に関わって,それでも投票参加しない という人はいるか,という観点で分析したが,結構残っていた。後援会が 投票促進効果という点では一番弱く,演説会が一番強かった。機関紙は直 接コントロールできないにしても,演説会は様々な関与の方法がある。特 に,演説会の病気派に対する投票促進効果は非常に強いものがある。しか し,これらの参加に対する有権者の関心は低下気味であり,ここでの演説 会にもおのずと努力の限界はある。 メディアは,病気棄権派については介護担当者,支援者に協力を願うの は言うまでもないが,用事棄権派についても,新聞やテレビだけでなく 様々な種類の伝達手段を使って投票を勧誘する ―― 政治に限らず非政治 的活動をしている人まで到達できる ―― ので,非政治的若者の把握手段 となるだろう。というのは,用事派で「非接触」という非高齢者は投票者 との違いが6%を上回っているに過ぎず,病気派の20%という大きな違 いに比べればまだまだ軽い方である。こういう段階になれば,候補者達 に,様々党派的関与を禁じている文言を持つものを ―― 投票勧誘に限定 して戸別訪問を許可するとか,各種公営の選挙運動の自由化 ―― 解放し て行けば現在の閉そく状況を打ち破るものに変貌するのではなかろうか。 文言,ポスター等の作る方法は専門的コンサルタントやNPO にエンパワ ーメントを依頼することになるだろう。 集団所属は,直接,我々にエンパワーメントの手がかりを与えてくれ る。用事派で最大の手がかりは,病気派と同じ町内会である。そして町内 会は自治体の準構成団体となっており,自治体がする,あるいは社協や民 間を通してする行事を通して投票促進運動をやればいい。そういう努力を 通して,生活満足もまともな曲線になって行くのだろう!。 ! 2009年5月10日に「福祉オンブズ香川」の代表に選出された。ここまで筆者は一 生障害者にあるひとびとを「基礎」に,中途障害者=老年期の人と係わっていくとい う意味で「政治老年学の基礎」という言葉を使った。 一 〇 一 29−2−229(香法2009) − 22 −

参照

関連したドキュメント

これは基礎論的研究に端を発しつつ、計算機科学寄りの論理学の中で発展してきたもので ある。広義の構成主義者は、哲学思想や基礎論的な立場に縛られず、それどころかいわゆ

これらの定義でも分かるように, Impairment に関しては解剖学的または生理学的な異常 としてほぼ続一されているが, disability と

と言っても、事例ごとに意味がかなり異なるのは、子どもの性格が異なることと同じである。その

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

政治エリートの戦略的判断とそれを促す女性票の 存在,国際圧力,政治文化・規範との親和性がほ ぼ通説となっている (Krook

あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ

2) ‘disorder’が「ordinary ではない / 不調 」を意味するのに対して、‘disability’には「able ではない」すなわち