化膿性関節炎(痛風)の診断(070822、101227)
101227 参考文献 4、5、6 を読んで感染性関節炎の内容を追加記載。 単関節炎を疑ったときには、痛風の診断の前に、化膿性関節炎の可能性を絞り込めたほうが いい。頻度は少ないかもしれないが、痛風とは重症度が全く違う。感染性関節炎の基本的知識を 含めて、化膿性関節炎の診断について調べてみた。 □ 分類/原因 化膿性関節炎をはじめとして、真菌性、結核性、嫌気性、淋菌性、梅毒性、ウイルス性などが ある。4) 化膿性関節炎の起炎菌としては黄色ブドウ球菌が主たるものである。(最近は MRSA や嫌気 性菌による関節炎が注目されている。)4) 原因は黄色ブドウ球菌が最も多く、難治性を示すのも黄色ブドウ球菌。他に原因菌として重 要なのは B 群溶連菌、肺炎球菌と淋菌。5) 医原性に生じることもある。4) 化膿性関節炎患者の 47%に関節の基礎疾患がある。(例えば偽痛風が見つかったとしても、 必ずしも化膿性関節炎は否定できず、両者の併存があり得る。) 5) 心内膜炎の合併も多い。(血液培養は 30%弱が陽性) 5) (ウイルス性関節炎)知っていれば診断できるが、知らないと絶対に診断できないのがパル ボウイルス。晩秋から春にかけてとくに多くみられる。成人では 50%くらいが既感染。小児で はいわゆるリンゴ病の皮疹のみ。これが 10 代になると 10%以上で関節痛、5%程度で関節 炎が見られます。成人では皮疹は無いか、あってもレース模様のような微妙な皮疹しか見ら れない。5) (結核による骨髄炎、関節炎)結核性骨髄炎はたいてい椎体におきる(40~50%):脊椎カリ エス、Pott’s 病。Pott’s 病の 50%しか胸部 X 線像に異常が出ない。5) □ 症状/所見 関節に原因菌が侵入すると、滑膜炎が生じ関節軟骨が溶ける。症状としては、初めは激しく 痛み、関節の動きが悪くなる。関節が溶けて変形する前に適切な診断と処置が必要。4) 通常は単関節に起きるのが特徴。(単関節炎といえば化膿性関節炎、痛風、偽痛風を考え る。)5) 急激な疼痛、著名な腫脹、発赤、熱感を伴う。4) 股関節、足関節、肘関節、手関節、肩関節など、大関節に多いといわれている。5) 免疫抑制状態、関節注射などの侵襲の有無などを評価する。4) 化膿性関節炎は 5 歳以下の乳幼児に多くみられ(75%)、適切な治療が行われなかった場合 には成長途中の小児の関節に障害を残す。侵される関節は単関節がほとんどで、下肢に多 く、膝関節、股関節、足関節、肘関節となります。打撲などの minor trauma が発症の契機とな ることが良くある。5) 乳幼児では”おむつを換えるときに痛がる“”跛行を呈する“”歩こうとしない“などが良くある 訴え。5) 淋菌による関節炎は播種性淋菌感染症の一環としておく。その 75%は非対称性の数個の関 節を侵す関節炎(asymmetric oligoarthritis)。5) (淋菌による化膿性関節炎は)Reiter 症候群との鑑別は比較的難しく、胸骨、椎体、臀部に病 変があると Reiter 症候群の可能性が高く、肘にあれば淋菌の可能性が高いといわれている。 5) 参考文献 2 には以下のような記載がある。
Identifiable risk factors and the arthrocentesis are most helpful in predicting septic arthritis. There is no evidence that a patient’s symptoms or the physical examination are useful for predicting nongonoccal bacterial arthritis.
つまり、症状や身体所見で化膿性関節炎の診断が出来るとするエビデンスがなかなか無いという ことである。それでも、リスクファクターの評価や関節穿刺が診断に有用としている。ここで挙げら れているリスクファクターは JAMA の THE RATIONAL CLINICAL EXAMINATION シリーズを引用し ているので原著を紐解いてみた。
(参考文献 1 より引用) 尤度比をみると、単独で陽性尤度比の高い検査項目はあまり無い。最近の関節手術や股関節/ 膝関節置換術+皮膚の感染が陽性尤度比 5 以上である。このような場合は、言われなくても化膿 性関節炎を疑う状況である・・・・。検査では陽性尤度比がことごとく低い。白血球や炎症所見が上 がっていたとしても決して診断できるものではない。実際、痛風でも上がる。これらの検査の陰性 尤度比は比較的低く、除外にはやや有用と思われる(信頼区間が広いので、当てにならないとい われると辛いが)。いずれにしても、これらの組み合わせが重要と思う。 □ 検査 最終的には単関節炎の鑑別は関節穿刺以外にはないので、おかしいなと思ったら関節穿刺 をすることが大事。5) 混濁した膿状の関節液から起炎菌を証明できれば診断は確定するが、細菌を証明できない 症例も多い。4) 関節液の白血球数が 5 万/mm3以上で、糖が 40mg/dl以下であれば化膿性関節炎である可 能性が高い。4) 化膿性関節炎では関節穿刺液の白血球数は典型的症状の場合で 50000 個以上になる。た だし、1/3 の症状ではそれ以下といわれている。5) X 線所見は初期には認められないが、10 日を過ぎると関節周囲の骨萎縮などの所見を認め るようになる。4) 幼児では股関節の診察は痛みのため評価が難しいことも多く、エコーが役に立つ。5) 化膿性関節炎の超音波像のポイントは、不均一なエコー輝度の関節液の貯留、滑膜肥厚、
パワードプラ超音波でよく認められる滑膜血流の増加である。初回の検査で骨びらんが既に 認められることもある。小児における一過性滑膜炎は化膿性関節炎に類似することがある。 超音波検査では関節液の貯留があるが、通常は無エコーで均一である。パワードプラ検査 においては、滑膜は通常肥厚するが、血流の増加は認められない。いずれにしても、臨床所 見や検査所見が感染性病変を示唆するものであれば、関節穿刺は必ず行わなければならな い。6) やっぱり、決め手は関節穿刺による評価である。典型的な痛風の病歴であれば特に痛風の治 療を始めてもいいと思うが、ハッキリさせるのであればこれしかない。参考文献 2 でも、WBC の値 と、多形白血球の割合が診断に有用であることが分かる。 (参考文献 1 より引用) ちなみに、参考文献3によると、痛風の診断は以下のように記載されている。項目の数で、尤度 比が計算できる。単関節炎をみたときには critical(化膿性関節炎)、common(痛風)の両面からア
プローチしたい。 □ 1 回以上の急性関節炎 □ 1 日で症状のピーク □ 単関節炎 □ 関節の紅斑 □ 母趾基部の痛みまたは腫脹 □ 片側性の母趾基部の急性関節炎 □ 片側性の距骨の急性関節炎 □ 痛風結節 □ 非対称性関節腫脹 □ 高尿酸血症 □ レントゲン上の骨糜爛を欠く骨嚢胞 □ 関節液培養陰性 陽性尤度比 陰性尤度比 診断基準6項目以上を満たす 22 0.13 診断基準5項目を満たす 8.6 0.05 血清尿酸値>7mg/dl 1.9 0.19 関節液の尿酸結晶 85 0.15 痛風結節 30 0.71 参考文献
1. Margaretten ME, Kohlwes J, Moore D, Bent S. Does this adult patient have septic arthritis? JAMA. 2007 Apr 4;297(13):1478-88.
2. Bacterial (nongonococcal) arthritis in adults UpToDate 15.2
3. Edgar R. Black et al. Diagnostic Strategies for Common Medial Problem. Philadelphia, ACP, 1999.
4. 園田広典.感染性関節炎.治療, 80 : 1050-1051, 1998.
5. 岩田健太郎ら.感染症外来の帰還.東京,医学書院,2010.
6. F. Martino et al. (翻訳:神島 保ら).骨軟部の超音波診断-リウマチの早期診断のために.東 京, シュプリンガー・ジャパン株式会社,2008.