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RS ウイルス 感 染 症 と 喘 鳴 喘 息 小 児 耳 31(, 2010 養 した 鼻 粘 膜 上 皮 細 胞 は,そうでない 細 胞 に 比 べ, 明 らかに RSV 感 染 に 対 して 抵 抗 性 を 示 し た このことは 細 胞 間 のタイト 結 合 が RSV 感 染 に 対 する

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Academic year: 2021

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― 50 ― (248) 札幌医科大学医学部小児科(〒0608543 北海道札幌市中央区南1 条西16丁目) ― 50 ― (248)

第 5 回

日本小児耳鼻咽喉科学会

スポンサードセミナーⅡ

RS ウイルス感染症と喘鳴・喘息

裕 幸

1)

,平 川 賢 史

1)

,正 木 智 之

2)

,氷 見 徹 夫

2)

,岡 林 環 樹

3)

横 田 伸 一

3)

,藤 井 暢 弘

3)

,小 島

4)

,澤 田 典 均

4) 1) 札幌医科大学小児科 2) 札幌医科大学耳鼻咽喉科 3) 札幌医科大学微生物 4) 札幌医科大学第二病理 キーワードRS ウイルス,喘鳴,喘息,タイト結合 は じ め に ウイルス性呼吸器感染症が気道アレルギーの 成立に関与しているのか 関与しているとす れば,どの様に,どの程度関与しているのか については必ずしも明らかになっていない。こ の関係について,乳幼児の最も頻度の高い重要 な呼吸器感染症である RS ウイルス(RSV)感 染症を例にとって考えてみる。RSV 感染症の 典型的な病像は喘息とよく似た症候を呈する細 気管支炎である。軽快後も長期に亘り喘鳴を反 復 す る , い わ ゆ る reactive airway disease (RAD)を起こすことが知られており,アト ピー型・非アトピー型の喘息発症の原因になる とも考えられている。この様に,RSV 感染症 と喘鳴・喘息とは,発症,病態,予後などの面 で関係が深いが,この両者の関係を 4 つのポイ ント(問い)に分けて考えることができる。つ まり,RSV 細気管支炎が気管支喘息と似た 臨床像を呈するのはなぜか アトピー素因 は RSV 感染重症化のリスクファクターとなる か RSV 細気管支炎の後,喘鳴を繰り返

し や す い つ ま り , RAD  reactive airway dis-ease を呈するのはなぜか RSV 細気管支 炎はアトピー型喘息発症のリスクファクターと なるか の 4 つである。との問いは,タ マゴが先か ニワトリが先か という関係 と捉える事もできる。これらの問いに答えを出 すことは,RS ウイルス感染症に限らず,他の 多くの呼吸器ウイルス感染症の病態,予後の解 明に繋がると考えられる。 RSV感染の成立 RSV 感染症の中心的な病態は細気管支炎で ある。その病理像では細気管支周囲に好中球, リンパ球をはじめとした種々の炎症細胞の浸潤 が認められ,細気管支の上皮は壊死して脱落し ている(図 1)。こうした細気管支の壊死と強 い炎症細胞浸潤がどのような機序で起こるのか については,従来から様々な研究が行われてき たが,最近では,主に自然免疫応答が関係する と考えられている。 気道・肺胞系には種々の防御機構が張り巡ら されている。太い気道では粘膜上皮細胞の線毛

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― 51 ― (249) 図 RSV 細気管支炎で死亡した 2 カ月男児の剖検肺 組織 (HE 染色) 細気管支上皮の壊死,脱落とともに, 細気管支周囲に炎症細胞の強い浸潤を認める ― 51 ― (249) によるクリアランスが働き,少し細い気道で は,サイトカイン,ケモカイン,ロイコトリエ ン,そして抗菌ペプチドとしての肺サーファク タント,ラクトフェリン(LF)などが防御機 能を発揮している。さらに肺胞では肺胞マクロ ファージや好中球が,細菌,ウイルスなどの侵 入 を 防 い で い る 。 RSV が 気 道 に 侵 入 し た 場 合,これにまず対応するのは肺サーファクタン ト蛋白質 A(SPA)やラクトフェリン(LF) などの液性因子である。我々は,LF は RSV に対して中枢気道で一次防御を行うが,SPA は末梢気道・肺胞においてオプソニン効果を発 揮し,自然免疫を増強することを明らかにし た1) もう一つの感染防御機構として細胞間のタイ ト結合(細胞間接着因子)がある。細胞と細胞 の間には種々のタイト結合分子が存在し,フェ ンス機能,バリア機能,シグナル伝達などの役 目を果たしている。我々は手術時に得られたヒ ト鼻粘膜上皮細胞に hTERT(human Telo-mere Reverse Transcriptase)遺伝子を導入し, 寿命が延長した細胞系を確立した2)。この細胞 は in vitro において単層を形成し,RSV に良好 な感受性を示した。この細胞を用いて鼻粘膜上 皮細胞のタイト結合が,RSV 感染にどう働く かを検討した。タイト結合を強めることを目的 にウシ胎児血清(FBS)を添加した培養液で培 養した鼻粘膜上皮細胞は,そうでない細胞に比 べ,明らかに RSV 感染に対して抵抗性を示し た。このことは細胞間のタイト結合が RSV 感 染に対する強力なバリアになっていることを示 唆している。 RSV下気道炎急性期の病態 RSV 感染初期(急性期)の病態を明らかに するために,RSV 下気道炎小児の鼻汁を調べ たところ,インターロイキン(IL)6,腫瘍壊 死因子(TNF)a などの炎症性サイトカインの 高い活性が認められた3)。更に in vitro の検討 で,RSV 感染細胞においては,IL6, TNFa などの mRNA 転写が感染 2 時間後という早期 か ら 亢 進 し , 感 染 か ら 数 時 間 ~ 10 時 間 後 に は,それらの蛋白が産生されることも確認され た 。 図 3 に 示 す よ う に , RSV の 感 染 に よ っ て,主要な核内転写因子である NFkB と In-terferon Regulatory Factor(IRF)を初めとし て多くの遺伝子の発現が亢進することが確認さ れている(図 2)4) この反応の中で近年とりわけ注目されるのが TLR3 と TLR4 である。気道上皮細胞に RSV やライノウイルスが感染すると,その刺激で細 胞 表 面 に TLR3 が 発 現 す る 。 RSV は 1 本 鎖 RNA ウイルスであるが,細胞内で増殖する過 程で 2 本鎖 RNA となり,それがネクローシス やアポトーシスにより細胞外に放出されると, 近接した感染細胞表面の発現が亢進した TLR3 に対してリガンドとして働き,IL8 などのケ モカインの産生を亢進すると考えられる57) 同様の機序は TLR4 でも見出されている。気 道上皮細胞に RSV が感染すると,細胞表面上 の TLR4 の発現が亢進し,そこに,RSV の F 蛋白,あるいは環境中の LPS(lipopolysaccha-ride)や HDM(house dust mite)がリガンド として作用し,IL8, RANTES などのケモカ インの産生を高めると考えられる810)。その結

果,様々な炎症細胞が組織に集簇し,ヒスタミ ン,LT,エラスターゼなどのケミカルメディ エーターを産生・放出して細胞障害を引き起こ

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― 52 ― (250) 図 RSV により活性化される気道上皮細胞の遺伝子群 図 RSV 下気道炎の病態 ― 52 ― (250) す。これらは,感染細胞自体が産生する炎症性 サイトカインと相まって,強い下気道の炎症, 浮腫,狭窄を起こし,喘鳴へとつながる(図 3)。 では,こうした TLRs を介する反応は,最 終的に生体にとってどのような意味を持つので あろうか。これについては,TLR4 遺伝子多型 (SNPs)の検討により一つの方向性が示されて い る 。 TLR4 細 胞 外 ド メ イ ン の Asp299Gly, Thr399Ile などの変異は,LPS に対する感受性 を低下させ,IL6 や C反応性蛋白(CRP)の 反応も低下させることが知られている。このよ うな遺伝子変異を有する個体(ヒト,マウス) では重症感染症や敗血症を起こしやすいことが 明らかになっているが,重症 RSV 細気管支炎 群では軽症群に比べ,この遺伝子変異の頻度が 高いことが示された11)。TLR4 欠損マウスでは RSV 感染から回復できないことも示されてお り8),TLR4 を介した自然免疫応答は炎症を惹 起するものの,最終的には下気道炎症からの回 復や軽症化に寄与しているものと考えられる。

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― 53 ― (251) ― 53 ― (251) アトピー素因は RSV 感染重症化のリスク ファクター 次に,アトピー,アレルギー素因と RSV 感 染症の関係,すなわち,アトピー素因があると RSV 感染症は重症化しやすいのかという点が 問題となる。これに関しては,アトピー遺伝子 の SNPs 解析の研究が報告されている。アレル ギーに関係する IL4 の590T allele,および 重症の喘息やアトピーとの関連が示唆されてい る IL4Ra の Glu551Arg 多型は,RSV 細気管 支炎による入院患者で多く認められている12) また,IL10の592C, 592A のホモ接合体で は,IL10の活性が高く,Th1 の活性を抑制 し,肥満細胞の増殖を促すことが明らかになっ ているが,RSV 細気管支炎の入院群ではこの SNPs を持つ患者が多いと報告されている13) このように,アトピー素因と関係する SNPs を 有する例では RSV 感染症が重症化しやすいこ とが統計学的に示されているが,どの報告にお いてもそのオッズ比は低く,このことだけで RSV 感染症の重症化を説明するのは難しい。 呼吸器ウイルス感染は喘息発作を誘発する 一方,RSV 感染症は喘息発作を誘発するか が問題となる。国立病院機構三重病院の藤澤隆 夫先生は,反復性の喘鳴を呈する小児の鼻汁 (284検体)のウイルスを調べ,その74.6から RSV,ライノウイルス,エンテロウイルスな どを検出したと報告している。また,喘息発作 で入院した患者についての解析では,アレル ギー感作・アレルゲン曝露・ウイルス感染の三 つが重なった場合,喘息発作による入院のリス クが,これらのリスクが無い場合に比べ20倍 にもなるという14) RSV下気道炎後に RAD を呈するのはな ぜか RSV 下気道炎では,軽快後も長期にわたり 喘鳴を反復する“RAD”を呈する症例が多く 認められる。Stein ら15)は繰り返す喘鳴(過去 1 年間に 3 回以上)のリスクは,RSV 感染群 で有意に高く,非感染群の小児が RAD を起こ した頻度を 1 とした場合のオッズ比が,6 歳時 で4.3, 11歳時で2.4であったと報告している。 ただ,同時に測定した血清総 IgE 値は両群間 で差がなかったことから,RSV 感染症は RAD の原因にはなるが,アレルギー発作とは無関係 としている。 RSV 感染後,気道過敏性が亢進し,RAD や 喘息・喘鳴を引き起こす機序については現在, いくつかの仮説が提唱されている。一つは, RSV 下気道炎後,下気道のリモデリングが長 期間続くためという考え方である。実際,マウ スに RSV を感染させると,150日間に渡って 炎症細胞浸潤とリモデリングが続き,気道過敏 性の亢進も持続したことが示されている16)。こ こに新たな呼吸器感染症が加わることで,炎症 が再燃して喘鳴を生じ,気道過敏性の亢進が持 続・増悪することは容易に想像できる。 も う 一 つ は , 乳 児 期 早 期 の RSV 感 染 は , Th2 優 位 な 反 応 を 誘 導 す る と い う 機 序 が あ る。これは,乳児期には Th1 の機能が未成熟 ということが基盤にある。そのうえでウイルス 感染が起こると,前述したように,TLR3 を介 して気道上皮の Thymic Stromal Lymphopoie-tin(TSLP)の発現を亢進する。TSLP は樹状 細胞を活性化し,この樹状細胞がナイーブ T 細 胞 を Th2 に 誘 導 す る 。 Th2 は IL 4, IL 5, TNFa な ど の 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン を 産 生 す る。一方,TSLP によって活性化された未分化 の樹状細胞は,IL8, Thymus and Activation-Regulated Chemokine(TARC)のようなケモ カインを放出して好中球を誘導する。そしてこ れらが好酸球の産生を高め,気道の好酸球性炎 症を起し,気道過敏性の亢進,喘息の増悪につ ながっていくと考えられる。 文 献

1) Kurose M, Kojima T, Koizumi J, et al.: Induction of claudins in passaged hTERT-transfected human nasal epithelial cells with an extended life span. Cell Tissue Res 2007; 330: 6374

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2) Sano H, Nagai K, Tsutsumi H, et al.: Lactoferrin and surfactant protein A exhibit distinct binding speciˆcity to F protein and diŠerently modulate respiratory syncytial virus infection. Eur J Immunol 2003; 33: 2894902

3) Matsuda K, Tsutsumi H, Okamoto Y, et al.: De-velopment of interleukin 6 and tumor necrosis factor alpha activity in nasopharyngeal secretions of infants and children during infection with respiratory syncy-tial virus. Clin Diagn Lab Immunol 1995; 2: 3224 4) Tsutsumi H, Takeuchi R, Chiba S. Activation of

cellular genes in the mucosal epithelium by respirato-ry syncytial virus: implications in disease and im-munity. Pediatr Infect Dis J 2001; 20: 9971001 5) Hewson CA., Jardine A, Edwards MR., et al.:

Toll-like receptor 3 is induced by and mediates antiviral activity against rhinovirus infection of human bron-chial epithelial cells. J Virol 2005; 79: 122739 6) Groskreutz DJ., Monick MM., Powers LS., et al.:

Respiratory syncytial virus induces TLR3 protein and protein kinase R, Leading to increased double-stranded RNA responsiveness in airway epithelial cells. J Immunol 2006; 176: 173340

7) Kato A, Favoreto-Jr S., Avilla PC., et al.: TLR3 and Th2 cytokine-dependent production of thymic stromal lymphopoietin in human airway epithelial cells. J Immunol 2007; 179: 10807

8) Kurt-Jones EA., Popova L., Kwinn L., et al.: Pat-tern recognition receptors TLR4 and CD14 mediate response to respiratory syncytial virus. Nature Im-munol 2000; 1: 398401

9) Monick MM., Yarovinsky TO., Powers LS., et al.: Respiratory syncytial virus up-regulates TLR4 and sensitizes airway epithelial cells to endotoxin. J Biol

Chem 2003; 278: 5303544

10) Hammad H, Chieppa M, Perros F, et al.: House dust mite allergen induces asthma via Toll-like recep-tor 4 triggering of airway structural cells. Nature Med 2009; 15: 4106

11) Tal G, Mandelberg A, Dalal I, et al.: Association between common Toll-like receptor 4 mutations and severe respiratory syncytial virus disease. J Infect Dis 2004; 189: 205763

12) Hoebee B, Rietveld E, Bont L, et al.: Association of severe respiratory syncytial virus bronchiolitis with interleukin4 and interleukin4 receptor alpha poly-morphisms. J Infect Dis 2003; 187211

13) Hoebee B, Bont L, Rietveld E, et al.: In‰uence of promoter variants of interleukin10, interleukin9, and tumor necrosis factor-alpha genes on respiratory syncytial virus bronchiolitis. J Infect Dis 2004; 189: 23947

14) Stein RT, Sherrill D, Morgan WJ, et al.: Respirato-ry syncytial virus in early life and risk of wheeze and allergy by age 13 years. Lancet 1999; 354: 5415 15) Mejáƒas A, Ch áavez-Bueno S, Jafri HS, et al.:

Respiratory syncytial virus infections: old challenges and new opportunities. Pediatr Infect Dis J 2005; 11 Suppl: S18996

別刷請求先

〒0608543 北海道札幌市中央区南 1 条西16 丁目

札幌医科大学医学部小児科 堤 裕幸

Respiratory syncytial virus infection and wheezing/asthma

Hiroyuki Tsutsumi1), Takashi Kojima4), Satoshi Hirakawa1), Tomoyuki Masaki2),

Tamaki Okabayashi3), Shinichi Yokota3), Nobuhiro Fujii3), Tetsuo Himi2), Norimasa Sawada4)

1) Department of Pediatrics 2) Department of Otolaryngology 3) Department of Microbiology

4) 2ndDepartment of Pathology, Sapporo Medical University School of Medicine

参照

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