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分析的手続きにおける仮説形成について-香川大学学術情報リポジトリ

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香 川 大 学 経 済 論 首 長 第68巻 第 2・3号 1995年11月 475-498

分析的手続きにおける仮説形成について

1 . は じ め に 日本公認会計士協会監査基準委員会は,平成

4

1

0

1

日付で監査基準委 員会報告書第

1

号(中間報告) ,-分析的手続」を公表した。この報告書は分析 的手続の意義を明らかにするとともに,その適用に関する指針を提供してい る。この報告書において分析的手続とは,-財務データ相互間又は財務以外の データと財務データ聞の矛盾又は異常な変動の有無を検討し,財務情報の合理 性を確かめる手続である」と定義されている。さらにこの報告書は分析的手続 の手法として,-財務データ又は財務以外のデータを使って財務諸表に計上さ れている金額の推定値を算出し,その金額と財務諸表に計上されている金額を 比較すること」や「記帳された金額又はそれをもとに算出した比率と監査人の 算定した推定値との比較」を挙げている。つまり,そこでは,監査人が被監査 会社に関する財務及び財務以外の情報並びに業界又は同業者の情報などを基礎 にして独自に算出した金額及び比率と,記帳上もしくは財務諸表上の金額及び それをもとにした比率との比較が,分析的手続のカテゴリーに含まれている。 一方,この報告書では明示されていないものの,財務分析上の諸比率(流動 比率,組利益率,各種目転率等)を計算し,それを時系列で分析することによ り,データ聞に異常な変動,重大な矛盾や不一致あるいは虚偽記載がないかど うかを確かめることを目的とした監査技術である比率一趨勢分析も,分析的手 (1) 日本公認会計士協会監査基準委員会,監査基準委員会報告書第1号(中間報告) ,分 析的手続」。 (2 ) 間報告書,パラグラア 2

(3 ) 同報告書,パラグラフ 8の(3)及び 9

香 川 大 学 経 済 論 首 長 第68巻 第 2・3号 1995年11月 475-498

分析的手続きにおける仮説形成について

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1 . は じ め に 日本公認会計士協会監査基準委員会は,平成

4

1

0

1

日付で監査基準委 員会報告書第

1

号(中間報告) ,-分析的手続」を公表した。この報告書は分析 的手続の意義を明らかにするとともに,その適用に関する指針を提供してい る。この報告書において分析的手続とは,-財務データ相互間又は財務以外の データと財務データ聞の矛盾又は異常な変動の有無を検討し,財務情報の合理 性を確かめる手続である」と定義されている。さらにこの報告書は分析的手続 の手法として,-財務データ又は財務以外のデータを使って財務諸表に計上さ れている金額の推定値を算出し,その金額と財務諸表に計上されている金額を 比較すること」や「記帳された金額又はそれをもとに算出した比率と監査人の 算定した推定値との比較」を挙げている。つまり,そこでは,監査人が被監査 会社に関する財務及び財務以外の情報並びに業界又は同業者の情報などを基礎 にして独自に算出した金額及び比率じ記帳上もしくは財務諸表上の金額及び それをもとにした比率との比較が,分析的手続のカテゴリーに含まれている。 一方,この報告書では明示されていないものの,財務分析上の諸比率(流動 比率,組利益率,各種目転率等)を計算し,それを時系列で分析することによ り,データ聞に異常な変動,重大な矛盾や不一致あるいは虚偽記載がないかど うかを確かめることを目的とした監査技術である比率一趨勢分析も,分析的手 (1) 日本公認会計士協会監査基準委員会,監査基準委員会報告書第1号(中間報告) ,分 析的手続」。 (2 ) 間報告書,パラグラア2。 (3 ) 同報告書,パラグラフ 8の(3)及び 9。

(2)

一-476 香川大学経済論叢 672 続に含まれるとされる。監査人が独自に算出した推定値と財務諸表土の金額(及 びそれをもとにした比率)との比較であれ,前年度の金額(比率)と今年度の 金額(比率)との比較であれ,それらの聞の大きな(異常な)不一致は,当然 監査人の注意をひくことになるであろう。そこで次に監査人は,データ間のそ ういった予想外のもしくは異常な変動の原因を突き止めようとする。その原因 は,誤謬・不正に帰国する虚偽記載によるものかもしれないし,それ以外の事 象かもしれない。監査人はそれまでに入手した被監査会社に関する情報及び他 の多様な情報を用い,さらに自らの知識と経験を働かせてその原因を探究す る。その結果として,監査人はその原因について一つの仮説(hypothesis)を作 り出す。さらに,仮説としてとりあげた原因が真にその予想外のもしくは異常 な変動の原因であるかを検証するために,他の監査手続を実施することにな る。 元来分析的手続は,重大な不正・誤謬が含まれる可能性のより高い領域に監 査人の注意をより多く向けさせることによって,監査業務における労力と時間 の配分を合理的に行うことができ,有効的かつ効率的に監査の目的を達成する のに役立つ,とされる。それゆえ,監査人が予想外もしくは異常な変動の原 因について仮説を形成することは,監査の有効性及び効率性に対して大きな意 味をもっている。誤った仮説を形成すると,重}要でない(適切でない)対象に 対して多くの監査労力が費やされ,本来重大な不正・誤謬の存在しているかも しれない領域に対して監査人の目が向けられないこととなってしまう。したが って,どのようなプロセスを経ると正しい仮説となるのか,もしくはどのよう な要因が誤った仮説を形成させてしまうのかを研究することが重要となる。 べ夕、ード及びビッグズ(Bedard,

J

, and

8

.

.

Biggs)は,監査の効率性と有効 性は財務データの中にパターンを認識し,当該パターンをひきおこした原因を 仮説としてとりあげ,さらに詳細なテスト(furthertest)のための指針としてそ (4 ) 鳥羽至英著 B監査基準の基礎J,427頁。 (5 ) 古賀智敏稿「分析的手続J,日本監査研究学会監査基準再検討部会編『新監査基準・ 準則~, 7l ~72 貰。 一-476 香川大学経済論叢 672 続に含まれるとされる。監査人が独自に算出した推定値と財務諸表土の金額(及 びそれをもとにした比率)との比較であれ,前年度の金額(比率)と今年度の 金額(比率)との比較であれ,それらの聞の大きな(異常な)不一致は,当然 監査人の注意をひくことになるであろう。そこで次に監査人は,データ間のそ ういった予想外のもしくは異常な変動の原因を突き止めようとする。その原因 は,誤謬・不正に帰国する虚偽記載によるものかもしれないし,それ以外の事 象かもしれない。監査人はそれまでに入手した被監査会社に関する情報及び他 の多様な情報を用い,さらに自らの知識と経験を働かせてその原因を探究す る。その結果として,監査人はその原因について一つの仮説(hypothesis)を作 り出す。さらに,仮説としてとりあげた原因が真にその予想外のもしくは異常 な変動の原因であるかを検証するために,他の監査手続を実施することにな る。 元来分析的手続は,重大な不正・誤謬が含まれる可能性のより高い領域に監 査人の注意をより多く向けさせることによって,監査業務における労力と時間 の配分を合理的に行うことができ,有効的かつ効率的に監査の目的を達成する のに役立つ,とされる。それゆえ,監査人が予想外もしくは異常な変動の原 因について仮説を形成することは,監査の有効性及び効率性に対して大きな意 味をもっている。誤った仮説を形成すると,重}要でない(適切でない)対象に 対して多くの監査労力が費やされ,本来重大な不正・誤謬の存在しているかも しれない領域に対して監査人の目が向けられないこととなってしまう。したが って,どのようなプロセスを経ると正しい仮説となるのか,もしくはどのよう な要因が誤った仮説を形成させてしまうのかを研究することが重要となる。 べ夕、ード及びビッグズ(Bedard,

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Biggs)は,監査の効率性と有効 性は財務データの中にパターンを認識し,当該パターンをひきおこした原因を 仮説としてとりあげ,さらに詳細なテスト(furthertest)のための指針としてそ (4 ) 鳥羽至英著 B監査基準の基礎J,427頁。 (5 ) 古賀智敏稿「分析的手続J,日本監査研究学会監査基準再検討部会編『新監査基準・ 準則~, 7l ~72 貰。

(3)

分析的手続における仮説形成について 477-れを役立たせる監査人の能力に依存していると言う。彼らは分析的課題におけ るパターン認識及び仮説形成のプロセスと課題遂行結果の質(すなわち正しい 仮説を作り出し得たか否か)とを関連づける実証研究を行っている。そこで本 稿では,彼らの実証研究を詳細にレビューすることを通して分析的手続におけ る仮説形成のプロセスに係わる諸問題を検討することにする。 II.べ夕、ード及びビッグズの研究 1 研 究 論 点 彼らは,実証研究を行うにあたり次のような研究論点を設定した (1) 監査人は正しい仮説を形成することができるか。

(

2

)

どんなプロセスが正しい遂行結果につながるのか。 ( 3 ) もし正しい仮説が選択されなかったとして, (データ聞の)不一 致 (discrepancy)のパターンは認識されたのか。 ( 4 ) 仮説形成に至るまでの各プロセスのうち何のために被験者(監査 人)は認識したパターンに解釈を与えることができないのか。 2 研 究 方 法 (1)課 題 被験者である監査人には表1に示されているような財務情報が与えられる。 推定値(projections)は,今年度の直近の四半期の業績,過去の監査済みの業 績及び産業動向をもとにした期待値の要約として説明されている。未監査値 は,クライアントが示す年度末残高であった。被験者は,推定値は監査事務所 によって作成されたもの切であり,信頼し得るものであると教えられる。そこで 被験者の注意は推定値の正確性に対してではなく,推定値と未監査値との聞の ( 6) Bedard, J C and S Biggs Pattern R巴cognition,Hypotheses Generation, and

Auditor Performance in am AnalyticaI Task The Aaountzng Revzetρ, (JuIγ1991), pp 622-644 ( 7) lbzd, p 625 ( 8) lbid, pp.626-627 673 分析的手続における仮説形成について 477-れを役立たせる監査人の能力に依存していると言う。彼らは分析的課題におけ るパターン認識及び仮説形成のプロセスと課題遂行結果の質(すなわち正しい 仮説を作り出し得たか否か)とを関連づける実証研究を行っている。そこで本 稿では,彼らの実証研究を詳細にレビューすることを通して分析的手続におけ る仮説形成のプロセスに係わる諸問題を検討することにする。 II.ベダード及びビッグズの研究 1 研 究 論 点 彼らは,実証研究を行うにあたり次のような研究論点を設定した (1) 監査人は正しい仮説を形成することができるか。

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2

)

どんなプロセスが正しい遂行結果につながるのか。 ( 3 ) もし正しい仮説が選択されなかったとして, (データ聞の)不一 致 (discrepancy)のパターンは認識されたのか。 ( 4 ) 仮説形成に至るまでの各プロセスのうち何のために被験者ト(監査 人)は認識したパターンに解釈を与えることができないのか。 2 研 究 方 法 (1)課 題 被験者である監査人には表1に示されているような財務情報が与えられる。 推定値(projections)は,今年度の直近の四半期の業績,過去の監査済みの業 績及び産業動向をもとにした期待値の要約として説明されている。未監査値 は,クライアントが示す年度末残高であった。被験者は,推定値は監査事務所 によって作成されたもの切であり,信頼し得るものであると教えられる。そこで 被験者の注意は推定値の正確性に対してではなく,推定値と未監査値との聞の ( 6) Bedard, J C and S Biggs Pattern R巴cognition,Hypotheses Generation, and

Auditor Performance in am AnalyticaI Task The Aaountzng Revzeω, (JuIγ1991), pp 622-644

( 7) lbzd, p 625 ( 8) lbid, pp.626-627

(4)

-478ー 香川大学経済論叢 674 表1 ケ スデータに含まれる財務情報 1987推定値 1987未監査値 変化率(%) 比率 CR 涜 動 比 率 二 盗 致

i

L

i! I 50 I 52 十I3 Ifri動負債 QR 当 座 比 率z 組智笠藍 I 00

o

98 (2 0) 疏 動 負 債 GM 売 上 総 利 益 率 28 7% 27 8% (3I) (%) 1 B 1 現ー型盟主II益 売 上 高 7 5% 10 0% 十33 3 x 100 (%) 1 T 0 棚 卸 資 産 回 転 率 = 売 上 原 価 2 85 2 62 (8I) 期 末 棚 卸 残 高 RTO 売 上 償 権 回 転 率 = 発 上 高 3 00 3 00 期 末 売 上 債 権 残 高 残 高 INV 棚卸資産(先入先出法) $1,500 000 1$,650, 000 +10 0 12131/87 CA 波 動 資 産 4.496,000 4 646.000 + 3 3 12/31187 N 1 純 利 益 ( 税 率40%を 270 000 360.000 +33 3 1987 仮定する. ) SA 売 上 高 1987 6 000,000 6 000,000 -478ー 香 川 大 学 経 済 論 叢 674 表1 ケースデータに含まれる財務情報 1987推定値 1987未監査値 変化率(%) 比 率 CR 涜!liI)比率二 盗致i!一度 I 50 I 52 十I3 Ifri動負債 QR 当 座 比 率z jj!!~笈藍 I 00

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98 (2 0) 派 動 負 債 GM 売 上 総 利 益 率 28 7% 27 85百 (3I) (%) 1 B 1 盆型盟主II益 売 上 高 7 5% 10 0% 十33 3 x 100 (%) 1 T 0 棚 卸 資 産 回 転 率 = 2 e 上 原 価 2 85 2 62 (8I) 期 末 棚 卸 残 高 RTO 売 上 償 権 回 転 率 = 発 上 高 3 00 3 00 期 末 売 上 債 権 残 高 残 高 INV 棚 卸 資 産 ( 先 入 先 出 法 ) $1,500 000 1$,650, 000 +10 0 12131/87 CA 波 動 資 産 4.496,000 4 646.000 + 3 3 12/31187 N 1 純 利 益 ( 税 率40%を 270 000 360 000 +33 3 1987 仮定する. ) SA 売 上 高 1987 6 000,000 6 000,000

(5)

675 分析的手続における仮説形成について 479-不ー致の源泉としての未監査値へと注がれることになる。被験者はまた,ケー スデータの中に存在する推定値と未監査値との聞の不一致は唯一の誤謬もしく は不実表示

(

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)

がひきおこしたものであることを仮定すること と,当該不一致をひきおこした

1

つの誤謬もしくは不実表示についての“最も 可能性のある仮説" (“

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s

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に以下,

MLH

と略す)を与え るように命じられる。 ケースデータを作り出すときの基礎にある前提は,もし推定値と未監査値と 間の不一致を1つのパターンとして考慮しなければ,被験者はそれらの不一致 をひきおこした誤謬を識別できないということである。ここで一致させなけれ ばならない重大な不一致とは, (推定値と比較した場合の未監査値の)棚卸資 産及び利益の増加,売上総利益率の減少及び売上高の無変化である(表

1

を参 照)。もしこれらの不一致を

1

つのパターンとして説明することができると考 えた場合,結果として得られる結論は,販売費及び一般管理費(以下,販管費 と略す)の一部が棚卸資産勘定に(誤って)資産計上された

(

c

a

p

i

t

a

l

i

z

e

d

)

と いうことになる。尚,ケースデータの中には不一致の原因についての経営者の 説明(期末における有利な価格での棚卸資産の大量購入)が含まれているが, それは不一致のうちのいくつかを説明するものではあるが,すべてを説明する ものではない。 ( 2 ) 被 験 者 被験者は,ピック 6に入る会計事務所の1つのニューイングランド(New

E

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g

l

a

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)

事務所の

2

1

人の

CPA

であり,

1

0

人がマネージャー,

1

1

人がシニ アであった。尚,いずれも分析的手続を行った経験がある。

(

3

)

データ収集と分析の手続

MLH

を形成するために被験者たる監査人はケースデータにとりくむ。被験 (9) Ibid (10) Ibid., pp. 627-628 675 分析的手続における仮説形成について -479-不ー致の源泉としての未監査値へと注がれることになる。被験者はまた,ケー スデータの中に存在する推定値と未監査値との聞の不一致は唯一の誤謬もしく は不実表示

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データ収集と分析の手続

MLH

を形成するために被験者たる監査人はケースデータにとりくむ。被験 (9) Ibid (10) Ibid., pp. 627-628

(6)

480 香川大学経済論叢 676 者の回答は言語プロトコ/レ

(

v

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lp

r

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t

o

c

o

l)の形で収集された。つまり,被 験者は課題を遂行している閉じゅうず、っと心に浮かんだことをすべて声に出し て言うよう要求された。研究者はオーディオテープを操作し,もし被験者が数 秒間以上黙りこんだら声に出していうことを促すために隣席する。オーディオ テープは転写され,後に研究者がそれを分析する。 3 結 果 (1) 課題遂行結果の分類 第一の研究論点は,遂行結果

(

p

e

r

f

o

r

m

a

n

c

e

)

の質(すなわち,正しい仮説を 作り出したか否かということ)取り扱っている。各監査人の作り出した

MLH

は,それがすべての不一致因子

(

d

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s

c

r

e

p

a

n

tc

u

e

s

)

を推定値からケースデータ にみられるのと同じ方向へ変化させるかどうかにより評価された。つまり,も しMLHがすべての不一致因子をケースデータにみられるのと同じように推 定値から未監査値へと変化させると,それは正しいものとみなされ,そうでな ければ誤っているとみなされる。 表

2

に示されているように,

2

1

人の監査人のうち

6

(M

1,

M

3

M

5

M

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M 1

0

S

1

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)が正しい仮説を作り出した。残りの監査人の

MLH

は様々 な点で誤っていた。まず

8

(M7

S

4

M

2

M

4

S

7

M

8

S

1

S

5

)の

MLH

は,推定値と未監査値との聞の不一致のすべてを正確に説明す ることのできない(解釈を与えることのできない)を誤謬を提案するものであ った。また別の

4

(M9

S

2

S

l

l

S

8

)

MLH

は,あまりに大ざっ ぱで正確さを欠いていた。すなわち,仮説として示された誤謬が(推定値と未 監査値との聞の)どの不一致をひきおこしたかを決定しえない。最後の3人 (S

3

S6

S9)

MLH

は,ある特定の誤謬ではなく

1

つの勘定にみら れる推定値と未監査値との聞の不一致を単に認識したにすぎなかった(例え ば,“棚卸資産は過大に評価されている)。 (11) Ibld, pp 628-629 480 香川大学経済論叢 676 者の回答は言語プロトコ/レ

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に示されているように,

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MLH

は,ある特定の誤謬ではなく

1

つの勘定にみら れる推定値と未監査値との聞の不一致を単に認識したにすぎなかった(例え ば,“棚卸資産は過大に評価されている)。 (11) Ibld, pp 628-629

(7)

677 -日目ーー--ーー一 一一一一一一 正 し い / 特 定 的 (correcl/Specific) 分析的手続における仮説形成について -481 表2 被験者によるMLHの分類 代 表 的 なMLlIの表現 Ml.M3 M5. M6 間 接 経 費 の 配 分 の 誤 謬 ( 売 上 総 利 益 の 行 よ り 下 で 費 用 化 さ れ る べ M10 S 1 0 き で あ っ た コ ス ト を 棚 釘l資 産 勘 定 へ 資 産 計 上 し た 。 ) 誤 り / 特 定 的 (lncorrecl/Speci f ic) M7 S4 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 と 負 債 勘 定 へ の 記 録 の 怠 り M2 期 末 に お け る 大 量 の 棚 卸 資 産 の 購 入 は ( 突 際 は ) 発 生 し て い な か っ た。(カットオフの誤謬) M4 S7 費 用 が 棚 卸 資 産 勘 定 へ 資 産 計 上 さ れ て い る 。 ; 売 上 原 価 を く ま な く 調 べ て(gO lhrough)いない. M8 売 上 を 記 録 し た が ( そ の 分 を ) 棚 卸 資 産 か ら 控 除 し な か っ た . S 1 売 上 が 適 切 に 記 録 さ れ て い な い . S5 売 上 が 記 録 さ れ て い な い 。 誤 り / 一 般 的 (Incorrccl/Genera 1) M9S2S11 棚 卸 資 産 の 価 格 設 定 / 評 価 の 誤 謬 S8 棚 卸 資 産 管 理 が 不 十 分 で あ る . 誤 り / 勘 定 (Incorrect/Account) S 3. S6 S9 棚 卸 資 産 が 過 大 に 表 示 さ れ て い る . 売 上 原 価 が 過 大 に 表 示 さ れ て い る . 正しい(Correcl)=MLlIが、ケースデータの中で与えられている情報因子(cu e)に 関 す る 推 定 値 と 実 際 値 と の 聞 に み ら れ る す べ て の 不 一 致 を 説 明 し て い る . 誤り (Incorrecl) 特 定 的(Specific)=MLHが 借 方 及 び 貸 方 記 入 さ れ た 勘 定 を 認 識 し て い る が 、 少 な く と も I つ の 不 一 致 を 説 明 し て い な い か 、 あ る い は 反 対 方 向 に 説 明 し て い る 。 全 般 的(Genera1)=MLIIが 特 定 の 勘 定 で は な く 般 的 な 誤 謬 の カ テ ゴ リ ー を 認 識 し ℃ い るu 勘 定(ACCOUDt)=MLIIが 調 査 す る 必 要 の あ る 唯 一 の 勘 定 を 認 識 し て い る 。 677 -日目ーー--ーー一 一一一一一一 正 し い / 特 定 的 (correcl/Specific) 分析的手続における仮説形成について -481 表2 被験者によるMLHの分類 代 表 的 なMLlIの表現 Ml.M3 M5. M6 間 接 経 費 の 配 分 の 誤 謬 ( 売 上 総 利 益 の 行 よ り 下 で 費 用 化 さ れ る べ M10 S 1 0 き で あ っ た コ ス ト を 棚 釘l資 産 勘 定 へ 資 産 計 上 し た 。 ) 誤 り / 特 定 的 (lncorrecl/Speci f ic) M7 S4 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 と 負 債 勘 定 へ の 記 録 の 怠 り M2 期 末 に お け る 大 量 の 棚 卸 資 産 の 購 入 は ( 突 際 は ) 発 生 し て い な か っ た。(カットオフの誤謬) M4 S7 費 用 が 棚 卸 資 産 勘 定 へ 資 産 計 上 さ れ て い る 。 ; 売 上 原 価 を く ま な く 調 べ て(gO lhrough)いない. M8 売 上 を 記 録 し た が ( そ の 分 を ) 棚 卸 資 産 か ら 控 除 し な か っ た . S 1 売 上 が 適 切 に 記 録 さ れ て い な い . S5 売 上 が 記 録 さ れ て い な い 。 誤 り / 一 般 的 (Incorrccl/Genera 1) M9S2S11 棚 卸 資 産 の 価 格 設 定 / 評 価 の 誤 謬 S8 棚 卸 資 産 管 理 が 不 十 分 で あ る . 誤 り / 勘 定 (Incorrect/Account) S 3. S6 S9 棚 卸 資 産 が 過 大 に 表 示 さ れ て い る . 売 上 原 価 が 過 大 に 表 示 さ れ て い る . 正しい(Correcl)=MLlIが、ケースデータの中で与えられている情報因子(cu e)に 関 す る 推 定 値 と 実 際 値 と の 聞 に み ら れ る す べ て の 不 一 致 を 説 明 し て い る . 誤り (Incorrecl) 特 定 的(Specific)=MLHが 借 方 及 び 貸 方 記 入 さ れ た 勘 定 を 認 識 し て い る が 、 少 な く と も I つ の 不 一 致 を 説 明 し て い な い か 、 あ る い は 反 対 方 向 に 説 明 し て い る 。 全 般 的(Genera1)=MLIIが 特 定 の 勘 定 で は な く 般 的 な 誤 謬 の カ テ ゴ リ ー を 認 識 し ℃ い る 勘 定(ACCOUDt)=MLIIが 調 査 す る 必 要 の あ る 唯 一 の 勘 定 を 認 識 し て い る 。

(8)

一一482 香川大学経済論議 678 ( 2 ) 正しい仮説を作り出した監査人の推論プロセ

A

a

第2の研究論点は,正しい仮説を作り出した監査人が課題をどのように遂行 したかという問題であった。そこで,最終的に正しいMLHを提案した監査 人の推論プロセスが,言語プロトコノレをもとにして詳細に検討される。 正しい仮説を作り出した監査人の典型的な例として,あるマネージャー (M 5 )の意思決定プロセスのフローチャートが図1に示されている。ここで,情 報因子は丸,推論は四角でそれぞれ表わされている。図1のパネルAは,情 報因子の獲得(認識)と評価の段階の意思決定行動を示す。パネルBは,監 査人が重要な情報因子を 1つのパターンへと結びつけ,それを説明する MLH を作り出すところを示している。三角は情報獲得段階(パネル

A

)

で作り出 し,統合段階(パネル B)に持ち込まれた推論を示す。そして,左端の数字は, 言語プロトコルのなかで推論プロセスの諸段階が生じたおおよその順序を示 す。 図1で示されているように,意思決定(推論)プロセス (MLH形成に至る プロセス)には,いくつかの重要な側面がある。第1に,パネルAの最後ま でにこのマネージャーは,すべての重要な情報因子を獲得し,さらにそれらを 正確に解釈した。第

2

に,パネル

A

は,このマネージャーが推定値と未監査値 との聞の不一致の組合せ

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a

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)

から推論を行っていることを示してい る。例えば,ライン 3とライン 4ところで結び合わされている 2つのボックス は,この監査人が売上総利益率と税引前利益にみられる推定値と未監査値との 聞の不一致から 2つの説明(解釈)が可能でトあることを推論していることを 示している。 1つの代替案(売上高の増加に関するもの)は,後のライン6で 反証されている。もう

1

つの代替案(販管費の減少)は,記憶の中に留められ ているようでライン14まで言及されていない。第3に,パネノレBでは,すべ ての重要な情報因子が

1

つの共通の推論へと結び合わされている事実が,この 監査人がそれらの情報因子を

1

つの首尾一貫したパターン

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(12) Ibid., pp.628-632 一 一482 香川大学経済論議 678 ( 2 ) 正しい仮説を作り出した監査人の推論プロセス 第2の研究論点は,正しい仮説を作り出した監査人が課題をどのように遂行 したかという問題であった。そこで,最終的に正しいMLHを提案した監査 人の推論プロセスが,言語プロトコノレをもとにして詳細に検討される。 正しい仮説を作り出した監査人の典型的な例として,あるマネージャー (M 5 )の意思決定プロセスのフローチャートが図1に示されている。ここで,情 報因子は丸,推論は四角でそれぞれ表わされている。図

1

のパネル

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は,情 報因子の獲得(認識)と評価の段階の意思決定行動を示す。パネルBは,監 査人が重要な情報因子を 1つのパターンへと結びつけ,それを説明する MLH を作り出すところを示している。三角は情報獲得段階(パネル

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)

で作り出 し,統合段階(パネル B)に持ち込まれた推論を示す。そして,左端の数字は, 言語プロトコルのなかで推論プロセスの諸段階が生じたおおよその順序を示 す。 図1で示されているように,意思決定(推論)プロセス (MLH形成に至る プロセス)には,いくつかの重要な側面がある。第1に,パネルAの最後ま でにこのマネージャーは,すべての重要な情報因子を獲得し,さらにそれらを 正確に解釈した。第2に,パネル

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は,このマネージャーが推定値と未監査値 との聞の不一致の組合せ

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つの首尾一貫したパターン

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(9)

679 分析的手続における仮説形成について -483-図 1 Eし い 仮 説 を 作 り 出 し た 監 査 人IM5Jの 意 思 決 定 プ ロ セ ス の7ロ ー チ ャ ー ト パ ネ ルA 情 報 の 獲 得 と 最 初 の 評 価 2

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9 10 679 分析的手続における仮説形成について 図 1 Eし い 仮 説 を 作 り 出 し た 監 査 人IM5Jの 意 思 決 定 プ ロ セ ス の7ロ ー チ ャ ー ト パ ネ ルA 情 報 の 獲 得 と 最 初 の 評 価 2

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(10)

-483-~484 香川大学経済論叢 図1(続) パ ネ ルB パ デ ー ン 認 識 と 仮 説 形 成 II 12 13 14 15 16 17

ι

-パネノレAからパネノレBへ 持 ち 越 さ れ た 推 論 A=棚 卸 資 産 が 増 加 し て い る B=阪 管 貨 が 減 少 し て い る c=利 益 が 増 加 し て い る D=売 上 高 は 変 化 し て い な い 680

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~484 香川大学経済論叢 図1(続) パ ネ ルB パ ヂ ー ン 認 識 と 仮 説 形 成 II 12 13 14 15 16 17

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-パネノレAからパネノレBへ 持 ち 越 さ れ た 推 論 A=棚 卸 資 産 が 増 加 し て い る B=阪 管 貨 が 減 少 し て い る c=利 益 が 増 加 し て い る D=売 上 高 は 変 化 し て い な い 680

(11)

681 分析的手続におげる仮説形成について 485 として認識したことを示している。第4に,推定値と未監査値との聞の不一致 は販管費に関する問題を示しているという推論を繰り返し述べた後で,この監 査人はライン15において MLHとして,販管費と棚卸資産との間の費用配分 の誤り

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を提案し た。 結局,この監査人の意思決定(推論)プロセスは,どのようにしてこの監査 人が推定値と未監査値との聞の不一致のすべてを

1

つの首尾一貫したパターン に統合し,当該ノfターンに解釈を与えるのに適当な会計上の誤謬に記憶の中で アクセスできたかを例示している。 ( 3 ) 誤った仮説を作り出した監査人の推論プロセス ( i ) 情報獲得における誤り 誤った仮説を作り出した監査人の推論プロセスを分析する目的は,正しい解 決策を生み出すことを阻んだ、問題がパターン認識の段階か,あるいは仮説形成 の段階で生じたかを決定することにある。しかしながら,監査人(被験者)の 中には,ケースデータに含まれる情報因子を獲得(読み取ることが)できなか ったり,正確に解釈できないものもいた。情報因子の間に 1つのパターンを認 識できるためには,すべての情報因子を獲得し,それらを正確に解釈すること が必要でbある。言語プロトコノレの中に情報因子の少なくとも 1つについてそれ に関する言及がみられない場合には,当該監査人は情報獲得の誤りを犯したと みなされる。また 1つの情報因子を誤って解釈することにより,課題を正確 に形式化

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できない場合には,当該監査人は解釈の誤りを犯したと みなされる。 図2にみられるように 3人の監査人 (S1, S 7, M 9)が情報獲得もし くは解釈の誤りを犯した。 1人のマネージャー (M9)は, (当期)利益にみ られる推定値と未監査値との間の不一致を表わすいずれの情報因子もよみとら (13) lbzd, pp 632-633 681 分析的手続におげる仮説形成について 485 として認識したことを示している。第4に,推定値と未監査値との聞の不一致 は販管費に関する問題を示しているという推論を繰り返し述べた後で,この監 査人はライン15において MLHとして,販管費と棚卸資産との間の費用配分 の誤り

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つの首尾一貫したパターン に統合し,当該ノfターンに解釈を与えるのに適当な会計上の誤謬に記憶の中で アクセスできたかを例示している。 ( 3 ) 誤った仮説を作り出した監査人の推論プロセス ( i ) 情報獲得における誤り 誤った仮説を作り出した監査人の推論プロセスを分析する目的は,正しい解 決策を生み出すことを阻んだ、問題がパターン認識の段階か,あるいは仮説形成 の段階で生じたかを決定することにある。しかしながら,監査人(被験者)の 中には,ケースデータに含まれる情報因子を獲得(読み取ることが)できなか ったり,正確に解釈できないものもいた。情報因子の間に 1つのパターンを認 識できるためには,すべての情報因子を獲得し,それらを正確に解釈すること が必要でbある。言語プロトコノレの中に情報因子の少なくとも 1つについてそれ に関する言及がみられない場合には,当該監査人は情報獲得の誤りを犯したと みなされる。また 1つの情報因子を誤って解釈することにより,課題を正確 に形式化

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(12)

486 香川大学経済論議 682 図2 推 論 の 誤 り の 分 類 被 験 者 は 、 す べ て の 情 報 因 子 を 獲 得 し 、 か っ そ れ ら を 正 確 に 解 釈したか。 YES 被 験 者 は 、 解 釈 を 与 え る 必 要 の め 岳 パ タ ー ン を 認 識 し た か 。 被 験 者 は パ タ ー ン の す べ て の 部 分 を 正 確 に 解 釈 し た か 正 し い 1M,!M3, M5, M6, Ml 0, S 1 0) 一 今 NO:情 報 獲 得 の 誤 り IS 1 S7, M9) ぅ NO:パ タ ー ン 認 識 の 誤 り IS2, S6 M4, M8) ぅ NO:仮 説 形 成 の 誤 り IS3, S,4S5, S8 S9 SII M2 M7) なかった。又,別の2人のシニアーは,解釈の誤りを犯した。例えば,そのう ちの l人は,売上高に対する税引前利益の比率を売上総利益率として利用し た。この誤りは結果的に,売上原価以外の費用が(ケースデータの中には)ま ったく存在しないという当該監査人の結論につながり,そのことが棚卸資産勘 定へと資産計上された費用の実際の源泉についての理解を臨んだ。 486 香川大学経済論議 682 図2 推 論 の 誤 り の 分 類 被 験 者 は 、 す べ て の 情 報 因 子 を 獲 得 し 、 か っ そ れ ら を 正 確 に 解 釈したか。 YES 被 験 者 は 、 解 釈 を 与 え る 必 要 の め 岳 パ タ ー ン を 認 識 し た か 。 被 験 者 は パ タ ー ン の す べ て の 部 分 を 正 確 に 解 釈 し た か 正 し い 1M,!M3, M5, M6, Ml 0, S 1 0) 一 今 NO:情 報 獲 得 の 誤 り IS 1 S7, M9) ぅ NO:パ タ ー ン 認 識 の 誤 り IS2, S6 M4, M8) ぅ NO:仮 説 形 成 の 誤 り IS3, S,4S5, S8 S9 SII M2 M7) なかった。又,別の2人のシニアーは,解釈の誤りを犯した。例えば,そのう ちの l人は,売上高に対する税引前利益の比率を売上総利益率として利用し た。この誤りは結果的に,売上原価以外の費用が(ケースデータの中には)ま ったく存在しないという当該監査人の結論につながり,そのことが棚卸資産勘 定へと資産計上された費用の実際の源泉についての理解を臨んだ。

(13)

683 分析的手続における仮説形成について -487-図 3 誤 っ た 仮 説 を 作 り 出 し た 監 査 人(M8)の 意 思 決 定 プ ロ セ ス の フ ロ ー チ ャ ー ト パ ネ ルA 情 報 の 獲 得 と 最 初 の 評 価 9

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(14)

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意 味 を な さ な い 何 故 減 少 し た の か 12 13

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15 -パネルAか ら パ ネ ルBへ 持 ち 鎗 さ れ た 推 論 A =売 上 総 利 益 が 減 少 し て い る B=流 動 資 産 が 増 加 し て い る

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棚筒l資 産 回 転 率 が 低 下 し て い る 。 684 -図の出所はいずれも Bedardand Biggs [1991] 488 香川大学経済論叢 図3(続) パ ネ ルB パ タ ー ン 認 識 と 仮 説 形 成 11 上 昇 し て い る ¥ l 意 味 を な さ な い 何 故 減 少 し た の か 12 13

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(15)

分析的手続における仮説形成について -489-( ii ) ノTターン認識における誤り 3番目の研究論点は,パターン認識の問題を取り扱っている。もしすべての 情報因子を組合わせて(incombination)用いることがなければ,その監査人 はバターン認識の誤りを犯したものとみなされた。重要な情報因子のすべてを lつの首尾一貫したパターンとして認識することが,課題を正確に遂行するた めの重要なステップとなっている。 すべての情報因子を獲得し,正しく評価した 18人の監査人のうち 4人 (S 2, S6, M 4, M8)だけが,すべての情報因子を組合わせて用いようとは しなかった(図 2を参照)。パターン認識の誤りの代表的な例は,図 3で示さ れている。この監査人(マネージャー M 8)の意思決定(推論)プロセスの フローチャートは, (先ほどの監査人のそれと比べて)情報因子聞のつながり が少ない。パネノレBでは,この監査人は棚卸資産と流動資産にみられる増加 だけをMLHを作り出すのに用いている。つまり,損益計算書に関係する情 報因子は使われなかった。これは, MLHを作り出すためにすべての情報因子 が結びあわされている先ほどの監査人 (M5)のフローチャートのパネノレB と対照的である。また,この監査人のMLH(棚卸資産からの控除の怠り, fail -ure to relieve inventory)は「売上原価が増加したJ (パネルAのライン6) という推論を参照することによって反証することができたはずの誤謬であっ た。 このように,パターン認識の誤りを犯した監査人は,すべての重要の情報因 子の組合わせで推論しようとするのでなく,一時に1つもしくは2つの情報因 子で推論する傾向にある。 (iii ) 仮説形成における誤り 4つ目の研究論点、は,仮説形成プロセスのどの部分が認識したパターンに監 査人が解釈を与えることを妨げるかという問題であった。パターンを認識した (14) lbid., pp 633-636 (15) lbzd, pp 636-639 685 分析的手続における仮説形成について -489-( ij) ノfターン認識における誤り 3番目の研究論点は,パターン認識の問題を取り扱っている。もしすべての 情報因子を組合わせて(incombination)用いることがなければ,その監査人 はバターン認識の誤りを犯したものとみなされた。重要な情報因子のすべてを lつの首尾一貫したパターンとして認識することが,課題を正確に遂行するた めの重要なステップとなっている。 すべての情報因子を獲得し,正しく評価した 18人の監査人のうち 4人 (S 2, S6, M 4, M8)だけが,すべての情報因子を組合わせて用いようとは しなかった(図2を参照)。パターン認識の誤りの代表的な例は,図 3で示さ れている。この監査人(マネージャー, M 8)の意思決定(推論)プロセスの フローチャートは, (先ほどの監査人のそれと比べて)情報因子聞のつながり が少ない。パネルBでは,この監査人は棚卸資産と流動資産にみられる増加 だけをMLHを作り出すのに用いている。つまり,損益計算書に関係する情 報因子は使われなかった。これは, MLHを作り出すためにすべての情報因子 が結びあわされている先ほどの監査人 (M5)のフローチャートのパネノレB と対照的である。また,この監査人のMLH(棚卸資産からの控除の怠り, fail -ure to relieve inventory)は「売上原価が増加したJ (パネルAのライン6) という推論を参照することによって反証することができたはずの誤謬であっ た。 このように,パターン認識の誤りを犯した監査人は,すべての重要の情報因 子の組合わせで推論しようとするのでなく,一時に1つもしくは2つの情報因 子で推論する傾向にある。 (iii ) 仮説形成における誤り

4

つ目の研究論点は,仮説形成プロセスのどの部分が認識したパターンに監 査人が解釈を与えることを妨げるかという問題であった。パターンを認識した (14) lbzd., pp 633-636 (15) lbzd, pp 636-639

(16)

-490 香川大学経済論議 686 ものの,それに解釈を与える MLHを形成しえなかった監査人は,仮説形成 の誤りを犯したものとみなされる。言語プロトコル分析は, MLHに至るまで のプロセスをとおして,諸仮説がどのように形成されかっ評価されたかについ てのトレースを提供する。それゆえ,課題遂行結果の違いに結びつくような, この段階での意思決定行動の相違を発見できる。特に課題を解決していく際に 情報をどのように利用しているかの証拠は,諸仮説の中で監査人が(不一致の 原因として)提案した誤謬のタイプと,諸仮説の中で説明を与えられている焦 点もしくはターゲットとなった不一致の中に表わされている。 上記のような証拠を得るために,まず,パターン認識のあとで提案された諸 仮説を識別する。第2に,諸仮説の中で不一致の原因として示された誤謬のタ イプが,カットオフ(cut off)の誤謬(間違った期間に帳簿記入がなされた), 分類の誤謬(財務諸表の中の間違った場所に金額が記載される,例えば流動資 産が非流動資産として分類されている),評価の誤謬(帳簿記入に不適切な金 額が含まれている),及びその他の誤謬に分けられた。第3に,認識された不 一致のパターンのどの部分を説明したか(どの部分に解釈を与えたか)を決め るために,諸仮説はその主たる焦点(primaryfocus)に従ってコード化され た。すなわち, INV (棚卸資産/売上原価にみられる増加を主に取り扱って いる), SGA (他の費用の減少を主に取り扱っている),及びBOTH(その両 方を取り扱っている)という形で諸仮説は,コード化された(表3を参照)。 図

2

にみられるように,パターンを正確に認識した

1

4

人の監査人のうち の, 7人のシニアのうち 6人が仮説形成の誤りを犯した。それに対して 7人 のマネージャーのうち 2人だけが仮説形成の誤りを犯した。以下では,上述の コード化を基礎にして,まず、誤った仮説を(最終的に)作り出した監査人の仮 説形成の結果と正しい仮説を(最終的に)作り出した監査人のそれと比較する。 続いて, (最終的に)誤った仮説を作り出した監査人が意思決定プロセスの途 中で作り出した一連の諸仮説を分析する。 -490 香川大学経済論議 686 ものの,それに解釈を与える MLHを形成しえなかった監査人は,仮説形成 の誤りを犯したものとみなされる。言語、プロトコル分析は, MLHに至るまで のプロセスをとおして,諸仮説がどのように形成されかつ評価されたかについ てのトレースを提供する。それゆえ,課題遂行結果の違いに結びつくような, この段階での意思決定行動の相違を発見できる。特に課題を解決していく際に 情報をどのように利用しているかの証拠は,諸仮説の中で監査人が(不一致の 原因として)提案した誤謬のタイプと,諸仮説の中で説明を与えられている焦 点、もしくはターゲットとなった不一致の中に表わされている。 上記のような証拠を得るために,まず,パターン認識のあとで提案された諸 仮説を識別する。第2に,諸仮説の中で不一致の原因として示された誤謬のタ イプが,カットオフ(cut off)の誤謬(間違った期間に帳簿記入がなされた), 分類の誤謬(財務諸表の中の間違った場所に金額が記載される,例えば流動資 産が非流動資産として分類されている),評価の誤謬(帳簿記入に不適切な金 額が含まれている),及びその他の誤謬に分けられた。第3に,認識された不 一致のパターンのどの部分を説明したか(どの部分に解釈を与えたか)を決め るために,諸仮説はその主たる焦点(primaryfocus)に従ってコード化され た。すなわち, INV (棚卸資産/売上原価にみられる増加を主に取り扱って いる), SGA (他の費用の減少を主に取り扱っている),及びBOTH(その両 方を取り扱っている)という形で諸仮説は,コード化された(表3を参照)。 図

2

にみられるように,パターンを正確に認識した

1

4

人の監査人のうち の 7人のシニアのうち 6人が仮説形成の誤りを犯した。それに対して 7人 のマネージャーのうち 2人だけが仮説形成の誤りを犯した。以下では,上述の コード化を基礎にして,まず、誤った仮説を(最終的に)作り出した監査人の仮 説形成の結果と正しい仮説を(最終的に)作り出した監査人のそれと比較する。 続いて, (最終的に)誤った仮説を作り出した監査人が意思決定プロセスの途 中で作り出した一連の諸仮説を分析する。

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687 分析的手続における仮説形成について -491 表 3 パ タ ー ン を 認 識 し た 被 験 者 が 作 り 出 し た 仮 説 ーーーーー一ーーー パネルA 一 連 の 諸 仮 説 、 誤 謬 の タ イ プa及 び 焦 点bによってあらわされている。 正 し い 仮 説 を 作 り 出 し た 被 験 者 M1 M3 M5 M10 S 1 0 1 .

REC/BOT H 1 REC/BOIH 1 REC/1NV 1 REC/SGA 1 CLA/BOIH 2 REC/BOTH 2 NON/SGA 2 REC/BOT H 2 NON/BOIH 3 REC/BOIH 3 REC/BO 1 H 3 REC/BOTll 4 REC/BOIH 5 REC/BO 1 H 6. NON/BOT H 7 REC/BOIH 誤 ゥ た 仮 説 を 作 り 出 し た 被 験 者 焦 点 は1NVそして マ ネ ー ジ ャ ー シ ニ ア ー 焦点は1NV シ こ ア ー :/ あ る い はSGA M2 S5 S8 S3 S 11

1 CUII1NV 1. REC/1NV 1 NON/1NV 1 NON/SGA 1 NON/1NV 2 VAL/INV 2 REC/INV 2 VAL/INV 2 REC/INV 2 NON/INV 3 VAL/INV 3 REC/INV 3 NON/INV 3 NON/INV 3 NON/INV 4 REC/BOIH 4 NON/INV 4 NON/INV 4 NON/INV 5 CUT/ INV S9 5 NON/INV 5 REC/INV 5 NON/BOIH 6 CUIIINV 1 NON/INV 6 VAL/1NV 6 NON/1NV 6 VAL/INV 7 CUIIINV 2 NON/INV 7 NON/INV 7 VALlINV 8 CUIIINV 3 NON/INV 8 VAL/INV 9 NON/SGA 4 NON/INV S4 9 VALlBOIH 10 NONII NV 1 VAL/INV 10 VAL/INV 11 CUIIINV 2 VAL/INV 3 VAL/INV M7 4 VAL/1NV 1 REC/SGA 5 REC/SGA a CLA=分類の誤謬 CUI= カ ッ ト オ フ の 誤 謬 REC=記録の誤謬 VAL=評価の誤謬 NON=その他の誤 謬 b INV= 棚 卸 資 産 に 関 す る 説 明 に 焦 点 SGA=他の焚周に焦点 BOTH=両方に焦点 ・表の出所はいずれもBedardand Biggs [1991] 687 分析的手続における仮説形成について -491 表 3 パ タ ー ン を 認 識 し た 被 験 者 が 作 り 出 し た 仮 説 ーーーーー一ーーー パネルA 一 連 の 諸 仮 説 、 誤 謬 の タ イ プa及 び 焦 点bによってあらわされている。 正 し い 仮 説 を 作 り 出 し た 被 験 者 M1 M3 M5 M10 S 1 0 1 .

REC/BOT H 1 REC/BOIH 1 REC/1NV 1 REC/SGA 1 CLA/BOIH 2 REC/BOTH 2 NON/SGA 2 REC/BOT H 2 NON/BOIH 3 REC/BOIH 3 REC/BO 1 H 3 REC/BOTll 4 REC/BOIH 5 REC/BO 1 H 6. NON/BOT H 7 REC/BOIH 誤 ゥ た 仮 説 を 作 り 出 し た 被 験 者 焦 点 は1NVそして マ ネ ー ジ ャ ー シ ニ ア ー 焦点は1NV シ こ ア ー :/ あ る い はSGA M2 S5 S8 S3 S 11

1 CUII1NV 1. REC/1NV 1 NON/1NV 1 NON/SGA 1 NON/1NV 2 VAL/INV 2 REC/INV 2 VAL/INV 2 REC/INV 2 NON/INV 3 VAL/INV 3 REC/INV 3 NON/INV 3 NON/INV 3 NON/INV 4 REC/BOIH 4 NON/INV 4 NON/INV 4 NON/INV 5 CUT/ INV S9 5 NON/INV 5 REC/INV 5 NON/BOIH 6 CUIIINV 1 NON/INV 6 VAL/1NV 6 NON/1NV 6 VAL/INV 7 CUIIINV 2 NON/INV 7 NON/INV 7 VALlINV 8 CUIIINV 3 NON/INV 8 VAL/INV 9 NON/SGA 4 NON/INV S4 9 VALlBOIH 10 NONII NV 1 VAL/INV 10 VAL/INV 11 CUIIINV 2 VAL/INV 3 VAL/INV M7 4 VAL/1NV 1 REC/SGA 5 REC/SGA a CLA=分類の誤謬 CUI= カ ッ ト オ フ の 誤 謬 REC=記録の誤謬 VAL=評価の誤謬 NON=その他の誤 謬 b INV= 棚 卸 資 産 に 関 す る 説 明 に 焦 点 SGA=他の焚周に焦点 BOTH=両方に焦点 ・表の出所はいずれもBedardand Biggs [1991]

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~492 香川大学経済論議会 688 (ア)正しい仮説を作り出した監査人と誤った仮説を作り出した監査人 の比較 仮説の中で示された(不一致の原因としての)誤謬のタイプの観点からする と,記録の誤謬(正しいタイプ)が最終的に正しいMLHを作り出した監査 人の作り出した仮説の大半を占めていた。他方,正しいMLHを作り出しえ なかった監査人が最も頻繁に提案した誤謬のタイプは,その他のタイプの誤謬 であった(表3を参照)。例えば,ある監査人はただひとつの勘定にみられる 推定値と未監査値との聞の不一致(例えば,棚卸資産の過大評価)を誤謬とし て述べているにすぎなかった。 また,正しいMLHを作り出した監査人は,パターン全体(the entire pat -tern)に注意の目を向ける仮説を提案する強い傾向を示した。すなわち,彼ら は棚卸資産/売上原価にみられる増加と,他の費用の減少の両方に解釈を与え るような仮説を作り出している。一方で,正しいMLHを作り出せなかった 監査人は,パターンの一方の側面特に棚卸資産/売上原価にみられる増加だけ を説明する仮説を作り出している。 (イ)誤った仮説を作り出した監査人の仮説 認識したパターンにマッチする仮説を提案するプロセスで,ほとんどの監査 人は一連の諸仮説を作り出し,そして評価する。そして,最後にMLHとし てひとつの仮説を選ぶ。正しいMLHを提案し得なかった監査人の仮説形成 のプロセスは, 3つのグループにわけられた。最初のグループの監査人 (S5, S8,S9)は,損益計算書の売上総利益より下に存在する推定値と未監査値 との聞の不一致を(仮説の中で)説明しようとはしなかった。言語プロトコノレ 分析から得られた証拠は,このグループの監査人は損益計算書に存在する不ー 致のパターンを例外的なもの (anomalous)とみなしていることを示してい る。このグループの監査人はすべて,棚卸資産にみられる推定値と未監査値と の聞の不一致を説明することに集中していた。彼らはまた,個々にそのタイプ は異なるものの,特定の lつのタイプの誤謬にこだわる傾向を示している。(表 ~492 香川大学経済論議会 688 (ア)正しい仮説を作り出した監査人と誤った仮説を作り出した監査人 の比較 仮説の中で示された(不一致の原因としての)誤謬のタイプの観点からする と,記録の誤謬(正しいタイプ)が最終的に正しいMLHを作り出した監査 人の作り出した仮説の大半を占めていた。他方,正しいMLHを作り出しえ なかった監査人が最も頻繁に提案した誤謬のタイプは,その他のタイプの誤謬 であった(表3を参照)。例えば,ある監査人はただひとつの勘定にみられる 推定値と未監査値との聞の不一致(例えば,棚卸資産の過大評価)を誤謬とし て述べているにすぎなかった。 また,正しいMLHを作り出した監査人は,パターン全体(the entire pat -tern)に注意の目を向ける仮説を提案する強い傾向を示した。すなわち,彼ら は棚卸資産/売上原価にみられる増加と,他の費用の減少の両方に解釈を与え るような仮説を作り出している。一方で,正しいMLHを作り出せなかった 監査人は,パターンの一方の側面特に棚卸資産/売上原価にみられる増加だけ を説明する仮説を作り出している。 (イ)誤った仮説を作り出した監査人の仮説 認識したパターンにマッチする仮説を提案するプロセスで,ほとんどの監査 人は一連の諸仮説を作り出し,そして評価する。そして,最後にMLHとし てひとつの仮説を選ぶ。正しいMLHを提案し得なかった監査人の仮説形成 のプロセスは, 3つのグループにわけられた。最初のグループの監査人 (S5, S8,S9)は,損益計算書の売上総利益より下に存在する推定値と未監査値 との聞の不一致を(仮説の中で)説明しようとはしなかった。言語プロトコノレ 分析から得られた証拠は,このグループの監査人は損益計算書に存在する不ー 致のパターンを例外的なもの(anomalous)とみなしていることを示してい る。このグループの監査人はすべて,棚卸資産にみられる推定値と未監査値と の聞の不一致を説明することに集中していた。彼らはまた,個々にそのタイプ は異なるものの,特定のlつのタイプの誤謬にこだわる傾向を示している。(表

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689 分析的手続における仮説形成について

-493-3

を参照) 第2のグループの監査人 (S3, S 4, S ll)はより先へとすすんでいた。 というのは,彼らパターンの両方の側,すなわちINVとSGAの両方を考慮 に入れていたのである。彼らは別々の仮説の中で別個に各々の仮

u

に解釈を与え ていたが,それらを統合する

1

つの誤謬を提案することができなかった。つま り,彼らが成功しえなかったことは 2つの側面の聞のリンケージを形成する ことができなかったことを物語っている。(表

3

を参照) 第

3

のグループにはいる監査人

(M2

M

7)は

2

人で,いずれもマネージ ャーであった。そのうちのI人 (M7)唯一の仮説を提案しただけであり,そ れは正しい誤謬のタイプではあったものの,棚卸資産/売上原価に存在する不 ー致に解釈を与えるものではなかった。もう 1人のマネージャー (M2)は, 様々なタイプの誤謬を仮説として提案した。言語プロトコルの最初のころ(言 語プロトコルの第

4

行)にカットオフの誤謬を仮説として提案したことが,他 の仮説を偏向なく (inan unbiased manner)評価する能力に明らかに影響を及 ぼした。実際のところ,このマネージャーは最終的に正しいMLnを提案し えなかった監査人のうちで,途中で正しい仮説を作り出していただく一人の監 査人であった。しかし,このマネージャーは,その正しい仮説を確証しようと する努力も反証しようとする努力もほとんどなかった。 IIしぺダード及びビッグズの研究のインプリケーション 1 研究の重要性 ベダード及びビッグズの研究は,分析的手続における監査人の意思決定遂行 の結果(パフォーマンス)の正否と,意思決定プロセスがどのような関連を有 しているかを分析した。彼らの研究は特に意思決定プロセスの中でも,分析的 手続のプロセスにおける重要な2つの段階としての,パタ}ン認識と仮説形成 のプロセスが,パフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを分析の対象とし た。彼らによれば,分析的手続におけるパターン認識とは,財務情報開(及び 財務情報と非財務情報との間)に存在する諸関係を認識することであり,その 689 分析的手続における仮説形成について

-493-3

を参照) 第2のグループの監査人 (S3, S 4, S ll)はより先へとすすんでいた。 というのは,彼らパターンの両方の側,すなわちINVとSGAの両方を考慮 に入れていたのである。彼らは別々の仮説の中で別個に各々の側に解釈を与え ていたが,それらを統合する

1

つの誤謬を提案することができなかった。つま り,彼らが成功しえなかったことは 2つの側面の聞のリンケージを形成する ことができなかったことを物語っている。(表3を参照) 第

3

のグループにはいる監査人

(M2

M

7)は

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人で,いずれもマネージ ャーであった。そのうちのI人 (M7)唯一の仮説を提案しただけであり,そ れは正しい誤謬のタイプではあったものの,棚卸資産/売上原価に存在する不 ー致に解釈を与えるものではなかった。もう 1人のマネージヤ'-(M 2)は, 様々なタイプの誤謬を仮説として提案した。言語プロトコルの最初のころ(言 語プロトコルの第

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行)にカットオフの誤謬を仮説として提案したことが,他 の仮説を偏向なく (inan unbiased manner)評価する能力に明らかに影響を及 ぼした。実際のところ,このマネージャーは最終的に正しいMLnを提案し えなかった監査人のうちで,途中で正しい仮説を作り出していただく一人の監 査人であった。しかし,このマネージャーは,その正しい仮説を確証しようと する努力も反証しようとする努力もほとんどなかった。 IIしぺダード及びビッグズの研究のインプリケーション 1. 研究の重要性 ベダード及びビッグズの研究は,分析的手続における監査人の意思決定遂行 の結果(パフォーマンス)の正否と,意思決定プロセスがどのような関連を有 しているかを分析した。彼らの研究は特に意思決定プロセスの中でも,分析的 手続のプロセスにおける重要な2つの段階としての,パタ}ン認識と仮説形成 のプロセスが,パフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを分析の対象とし た。彼らによれば,分析的手続におけるパターン認識とは,財務情報開(及び 財務情報と非財務情報との間)に存在する諸関係を認識することであり,その

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