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貧困アセスメント作成調査報告書

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(1)

貧困プロファイル

チュニジア共和国

2001 年 2 月

国際協力銀行

(2)

はじめに

国際協力銀行環境社会開発室では、初めての試みとして、チュニジア共和

国を対象とした「貧困プロファイル」を作成致しました。この「貧困プロファ

イル」は、既存文献/統計資料をもとに、各国毎の貧困・不平等の概況と要因、

政府貧困削減政策、ドナー等の支援状況の概況について纏めたものであり、本

行職員が国レベルでの貧困削減支援策を検討する際の資料とすべく作成された

ものです。

全世界では、依然として約12億人が1日1ドル未満の生活を余儀なくさ

れている絶対的貧困層

1

とされています。1996年に経済協力開発機構・開発

援助委員会(

OECD/DAC)が策定した新開発戦略は、「今なお、10億人以上

の人々が絶対的貧困の中で苦しんでいるが、こうした問題に取り組むことは、

我々先進国に暮らす者達にとって重要な人道的な責務である。

」とし、2015

年までに貧困人口比率を半減することを目標に掲げました。貧困削減が最重要

課題であるとの国際的な合意の下、援助機関は、途上国の貧困削減を目標とし

た、より一層効果的且つ効率的な開発支援を求められております。

国際協力銀行も、1999年12月に発表した海外経済協力業務実施方針

の中で、貧困削減を重点分野の一つと定め、開発途上国における貧困削減支援

のため、経済・社会インフラの整備や産業の育成による持続的な経済成長と、

貧困対策、社会開発等を通じた経済成長の成果の公正な配分の双方を引き続き

支援してゆく方針です。

貧困の要因は、当該途上国毎に多様であり、歴史・社会・文化的背景、自

然環境、経済構造、政治的問題等の諸要因が複雑に絡み合っています。貧困削

減支援を効果的・効率的に実施していくためには、このように多様な貧困要因

を的確に把握・分析した上で、各国の状況に合わせた貧困削減支援が必要です。

1 1998 年時点データ(世銀/IMF/OECD/UN, 2000)による。

(3)

当環境社会開発室社会開発班では、今後とも、更なる貧困プロファイルの

質的・量的拡充に取り組む所存であるところ、皆様方の忌憚のないご意見とご

指導を賜れれば幸いです

2

平 成 1 3 年 7 月

国 際 協 力 銀 行

環 境 社 会 開 発 室 長

畑 中 邦 夫

2本「貧困プロファイル」は、本行内の執務参考に供するとともに対外的にも紹介することを目的として いるもので、本「貧困プロファイル」にある調査結果については国際協力銀行の公式見解を示すものでは ないことをお断りしておきます。なお、本「貧困プロファイル」に係るご照会につきましては、次の問い 合わせ先までご連絡下さい。環境社会開発室社会開発班(電話番号:03-5218-3904)

(4)
(5)

目次

第1章 チュニジアの貧困概況 ...1

1−1

貧困の測定基準...1

1−2

貧困人口と不平等度の推移 ...2

1−3

貧困層の地理的分布...6

1−4

貧困の深度、重度およびそれらの動態... 10

1−5

貧困層の特徴... 11

1−6

人間開発 ... 22

第2章 チュニジア政府の貧困削減への取り組み... 25

2−1

国家開発計画と政府の貧困政策 ... 25

2−2

マクロ経済政策... 27

2−3

社会保障・福祉 ... 33

2−4

社会開発 ... 37

2−5

雇用促進 ... 41

2−6

地域開発 ... 46

第3章 貧困削減のためのパートナーシップ... 49

3−1

パートナーシップの現状... 49

3−2

ドナーによる取り組み... 50

3−3

市民社会・民間セクターによる取り組み... 55

別添1:別添資料... 59

別添2:本文中に掲載されている図の素データ... 63

別添3:用語集... 67

別添4:参考文献... 71

別添5:社会経済データマトリックス... 73

図表

1-1 INS による都市部・農村部の貧困率の推移(%) ...3

1-2 世銀による都市部・農村部の貧困率の推移(%) ...4

1-3 ILO による都市部・農村部の貧困率の推移(%) ...4

1-4 チュニジアにおける地域分布...6

1-5 地域別都市化の状況(1995)(%) ...8

1-6 地域別一人当たり消費支出の推移(ディナール) ...9

1-7 地域別一人当たり消費支出変化率の推移(%)...9

1-8 人間貧困指数と貧困率の地域別状況(1995 年)... 23

1-9 人間貧困指数と貧困率の県別状況(1995 年)... 24

2-1 輸出入の推移... 28

2-2 民営化の現状... 32

2-3 1993 年から 1999 年の雇用創出プログラムの内訳... 41

2-4 BTS によるマイクロクレジット融資内訳 ... 44

(6)

3-1 MANFORM プログラムのログ・フレーム ... 55

3-2 CRENDA の実績(1995 年∼2000 年 8 月) ... 57

1-1 INS、世界銀行、ILO による貧困ラインの比較(ディナール) ...1

1-2 基礎社会指標の推移...2

1-3 貧困測定基準による貧困概況の推移 ...2

1-4 貧困人口の農村・都市分布...4

1-5 3 測定基準による貧困概況 ...5

1-6 チュニジアの不平等度の推移(ジニ係数)...5

1-7 貧困人口の地域別推移(INS)...6

1-8 INS による貧困率の地域別推移(%)...7

1-9 ジニ係数の地域別推移 ... 10

1-10 世界銀行による貧困の深度と重度(1990 年) ... 10

1-11 G

ANA

および M

AHJOUB

による貧困の深度と重度の推移(INS データ) ... 10

1-12 農村・都市別貧困の重度と深度... 11

1-13 世界銀行による貧困層の特徴(1990 年世帯調査結果)... 11

1-14 G

ANA

および M

AHJOUB

による回帰分析結果(1995 年世帯調査結果*)... 12

1-15 G

ANA

および M

AHJOUB

による貧困層の特徴 ... 12

1-16 県別貧困率と世帯規模 ... 13

1-17 10 歳以上の非識字率の推移(%) ... 14

1-18

年齢別非識字率の推移(%)... 14

1-19 識字者(10 歳以上)の言語別構成の推移(%)... 14

1-20 地域別 10 歳以上の識字率(%)... 15

1-21 6 歳から 14 歳の就学率の推移(%) ... 15

1-22 初等教育における内部効率性の現状(1997/98∼1998/99 年)... 15

1-23

県別教育レベルと貧困率(%) ... 16

1-24 職業別一人当たりの消費支出の推移(ディナール) ... 17

1-25 職業別貧困率の推移(%) ... 17

1-26 男女別経済活動参加率および失業率の推移(%) ... 18

1-27 年齢別男女別失業率(1997 年)(%) ... 18

1-28 男女別失業者の年齢別学歴別構成(1997 年)(%)... 18

1-29 地域別貧困率と失業率(%) ... 19

1-30 チュニジアの保健指標の推移 ... 20

1-31 県別貧困率と保健・衛生へのアクセス状況(%)... 20

1-32 基礎インフラへのアクセス(%) ... 21

1-33 県別貧困率と県別飲料水・電気・電話へのアクセス状況(%)... 21

1-34 UNDP による人間開発指数および人間貧困指数... 22

1-35 G

ANA

A.および M

AHJOUB

, A.による HPI コンポーネント... 22

2-1 第 9 次国家開発計画の 6 目標 ... 25

2-2 主要経済指標の推移... 27

2-3 チュニジアの市場経済化政策と財政政策... 28

2-4 労働人口と GDP の産業別シェア(%)... 29

(7)

2-6 社会セクター内の投資配分(%) ... 30

2-7 地域別人口配分と社会セクター予算の地域別配分(1995 年)(%) ... 31

2-8 M

ISE A

N

IVEAU

プログラムによる活動 ... 31

2-9 M

ISE A

N

IVEAU

プログラムの実績... 32

2-10 1987-1998 年における民営化の実績 ... 32

2-11 民間投資率の比較... 33

2-12 国家連帯基金の目標と成果 ... 34

2-13 国家連帯基金の実績(1993-1999 年)... 35

2-14 マイクロプロジェクトのセクター別配分 ... 35

2-15 国家連帯基金の地域別配分状況(1994-1999) ... 35

2-16 政府による福祉政策 ... 36

2-17 PNAFN 受益者(世帯主)の特徴①... 37

2-18 PNAFN 受益者の特徴② ... 37

2-19 貧困層に対する教育支援プログラム ... 39

2-20 識字教育プログラムの推移... 39

2-21 一人当たりの保健支出と財源の推移(ディナール) ... 40

2-22 改革後の健康保険制度... 40

2-23 政府の雇用創出プログラム... 42

2-24 地域開発プログラム予算の推移... 43

2-25 チュニジア連帯銀行の概要... 44

2-26 チュニジア連帯銀行の問題点 ... 45

2-27 国家雇用基金の活動予定内容(2000 年) ... 46

2-28 国家雇用基金の優先プログラム... 46

2-29 チュニジアにおける地域開発戦略の概要 ... 47

2-30 貧困削減のための地域開発プログラムの概要... 48

3-1 対チュニジア支援主要ドナー(ODA 純総額:百万ドル)... 50

3-2 世界銀行による CAS プログラムマトリックス(貧困・社会開発分野)... 52

3-3 EU による支援プログラムの内訳(MEDAI:1996-1999)(ユーロ)... 53

3-4 MEDAI プログラムの進捗状況 ... 54

3-5 UTSS の社会福祉支援プログラム(1996/97 年実績)... 56

3-6 ENDA によるマイクロクレジット手法(CRENDA)の 10 原則 ... 58

(8)

略語一覧

AMGⅠ

Assistance Médicale Gratuite, Type Ⅰ

健康保険①

AMGⅡ

Assistance Médicale Gratuite, Type Ⅱ

健康保険②

BTS

Banque Tunisienne de Solidarité

チュニジア連帯銀行

CEC

Commission of the European Communities

欧州委員会

CGDR

Commissariat Général du Développement Régional

地域開発委員会

CIMEP

Community Involvement in Management of

Environmental Pollution

住民参加型環境教育プロジェクト

CPI

Consumer Price Index

消費者価格指標

DRI-GRN

Programme de Développement Rural Intégré et de la

Gestion des Ressources Naturelles

農村地域開発と資源の管理体制強化

EME

Equipe Municipale Elargie

セクター横断的な拡大地域チーム

ETE Euro

Tunisie

Entreprise

欧州-チュニジア企業支援

EU European

Union

ヨーロッパ連合

FAS

Facilité d’Ajustement Structurel

構造調整支援

FIPA

Foreign Investment Promotion Agency

海外投資開発庁支援

GAD

Gender and Development

ジェンダーと開発

GATT

General Agreement on Tariff and Trade

関税および貿易に関する一般協定

GDP

Growth Domestic Product

国内総生産

GNP

Gross National Product

国民総生産

GTZ

Deutzsche Gesellschaft für Technische

Zusammenarbeit

ドイツ技術協力公社

HDI

Human Development Index

人間開発指数

HPI

Human Poverty Index

人間貧困指数

IFAD

International Fund for Agricultural Development

(国連)国際農業開発基金

KFW Kreditanstalt

für

Wiederaufbau

(独)復興金融公庫

MANFORM

Mise à Niveau de la Formation Professionnelle et de

l’Emploi

職業訓練及び雇用促進計画

MFA Multi-Fiber

Agreements

多角的繊維取り決め

NGO

Non Governmental Organization

非政府組織

非政府組織

政府開発援助

Official Development Assistance

PDRI

Programme de Développement Rural Intégré

統合的農村開発プログラム

PDUI

Programme de Développement Urbain Intégré

統合的都市開発プログラム

PNAFN

Le Programme National d’Aide aux Familles

Nécessiteuses

貧困家庭への国家援助プログラム

PNEA

Le Programme National d’Education des Adultes

国家成人教育プログラム

PNUD

Programmes des Nations Unies sur le

Développement

国連開発計画

PRA Participatory

Rural

Appraisal

参加型農村調査

PRD

Programme Régional de Développement

地方開発プログラム

SAO

System of Aid towards Orientation

情報へのアクセスを整備するためのシ

ステム構築

(9)

SIPI

System of Information for Programmes for

Integration

プログラム間の計画・調整機能強化情

報システム

SIRISE

Système d’Information sur la Réinsertion et

l’Insertion Socio-Economique

社会経済的再統合及び統合のための

情報システムプロジェクト

SITAP

System of Information for the Active Treatment of

Poverty

積極的貧困対策のための情報システ

TAP

Traitement Actif de la Pauvreté

積極的貧困解決

UNDP

United Nations Development Programme

国連開発計画

UNFPA

United Nations Population Fund

国連人口活動基金

UNICEF

United Nations Children’s Fund

国連児童基金

UNTA

United Nations Regular Programme of Technical

Assistance

国連通常技術援助計画

USAID

United States Agency for International Development

米国開発庁

UTSS

L’Union Tunisienne de Solidarité Sociale

チュニジア社会連帯組合

WFP

World Food Programme

世界食糧プログラム

ZEP

Zone d’Education Prioritaire

優先教育ゾーンプログラム

(10)

第1章 チュニジアの貧困概況

1−1 貧困の測定基準

チュニジアにおける貧困の測定基準は、①国家統計所(Institut National de la Statistique:INS)が

1980 年より採用している独自の貧困ライン、②世界銀行により 1995 年に編み出された貧困ライ

ン、③国際労働機構(International Labour Organisation: ILO)による貧困ラインの三種類に分かれ

る(表 1-1)。INS の貧困ラインは、1980 年時点の都市部と農村部における下位 20%の支出レベル

に位置する世帯の食糧支出および非食糧支出の合計を貧困ラインとして算出したものである

1

。こ

れに対し、世界銀行による貧困ラインは、1990 年時点における 200∼250 ディナールの支出階層

を貧困層と仮定し、大都市部、その他都市部、農村部別に食糧支出(一人一日に最低限必要な消

費カロリーをそれぞれ 2,160、2,148、2,115 キロカロリーとし、その摂取に必要な食糧支出)を計

算し、それに、同支出階層の非食糧支出を加えて貧困ラインを算出したものである。また、ILO

は、1990 年を基準として食糧貧困ラインを都市・農村部別に設定(都市部 204 ディナール、農村

部 162 ディナール)した上で、全支出に占める食糧の割合を都市部 56.82%、農村部 62.31%に設

定して貧困ラインを算出し、その他の年については消費者物価指数により調整している。

表 1-1 INS、世界銀行、ILO による貧困ラインの比較(ディナール2 1975 1980 1985 1990 1995 <INS> 全国 64 102 161 225 298 都市部 87 120 190 278 368 農村部 43 60 95 139 184 農村/都市比率(%) 50.0 50.0 50.0 50.0 50.0 <世界銀行> 全国 142 196 258 都市部 158 218 290 農村部 134 185 242 農村/都市比率(%) 84.8 84.9 83.4 <ILO> 都市部 101 151 239 359 475 農村部 71 109 172 260 344 農村/都市比率(%) 70.3 72.2 72.0 72.4 72.4

出所:World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress while Preparing for the Future, 1995, INS 資料、Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

世界銀行の INS による測定基準に対する批判は、農村部および都市部においてそれぞれ下位 20%

をサンプルとすることにより、都市に対する農村の貧困ラインの割合が常に 50%となることに対

する懸念が主なものであった

3

。実際、表 1-1 に示されるとおり、INS の定める農村部の貧困ライ

ンは一貫して都市部の 50%となっており、世界銀行の約 84%、ILO の約 72%の都市に対する農村

の割合を大きく下回っていることが特徴的である。

なお、チュニジアの貧困ライン測定のための素データとなる世帯調査は、5 年ごとに INS により

実施されているが、2001 年 2 月の時点では 1995 年の世帯調査が最新の情報となっている。また、

1 INS による最低限の消費カロリーは都市部で 1,870 キロカロリー、農村部で 1,830 キロカロリーとなっており、FAO の定める 国際的な水準である 2,100 キロカロリーを下回っている。 2 2000 年 9 月 28 日時点において、1US$=1.4 ディナール。なお、貧困ラインは一人当たり平均支出額を表す。 3 World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress While Preparing for the Future, Volume II Annexes, 1995.

(11)

世界銀行は 1995 年に貧困アセスメント調査を実施しているが、この内容は 1990 年の世帯調査に

基づいている。以上のことから、チュニジアにおける貧困概況に係る入手可能なデータは 1995 年

までとなっており、二次資料を用いた体系的な分析には限りがある。

1−2 貧困人口と不平等度の推移

チュニジアは、独立以来、社会経済指標の向上において顕著な実績を挙げており

4

(表 1-2)、その

結果 1975 年から 1990 年まで貧困人口は減少した。

表 1-2 基礎社会指標の推移 1970-75 1980-85 1993-1998 人口(百万人) 5.6 7.3 9.3 都市人口(対全人口:%) 49.9 53.8 64.1 出生率(女性一人当たりの出産人数) 6.2 4.9 2.2 一人当り GNP($) 770 1,160 2,060 初等教育純就学率(%) (男・女) 76 (89・62) 94 (100・87) 100 (100・100) 5 歳未満の栄養失調率(千人当りり) 20 - 9 平均余命(歳) 56 64 72 乳児死亡率(千人当り) 110 59 28 5 歳未満の死亡率(千人当り) 201 75 32 注:各データは提示された期間内で最も新しいデータを表示している。

出所:World Bank, Tunisia Social Indicators, 2000.

表 1-3 貧困測定基準による貧困概況の推移 1975 1980 1985 1990 1995 全国 1,223 823 554 544 559 都市部 700 393 325 354 389 貧困人口 (千人) 農村部 523 430 229 190 170 全国 21.9 13.0 7.8 6.7 6.2 都市部 26.4 12.3 8.4 7.4 7.1 INS 貧困率 (%) 農村部 17.8 13.7 7.0 5.8 4.9 全国 - - 810 600 690 都市部 - - 180 170 200 貧困人口 (千人) 農村部 - - 630 430 490 全国 - - 11.3 7.4 7.7 都市部 - - 4.7 4.1 3.6 世界銀行 貧困率 (%) 農村部 - - 19.2 10.7 14.1 全国 2,065 1,819 1,622 1,685 1,957 (脆弱層%) (40.8) (54.8) (65.8) (67.7) (71.4) 都市部 845 599 602 750 879 (脆弱層%) (17.2) (34.4) (46.0) (52.8) (55.8) 農村部 1,220 1,220 1,020 935 1,078 貧困人口 (千人) (脆弱層%) (57.1) (64.8) (77.6) (79.7) (84.2) 全国 37.0 28.8 22.7 20.7 21.8 都市部 31.8 18.8 15.6 18.2 16.0 ILO* 貧困率 (%) 農村部 41.6 39.0 31.1 23.2 31.1 注:ILO による貧困率は、貧困ライン以下の人口に加え、貧困ラインを 20%上回る脆弱層(vulnerable)が含まれている。

出所:World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress while Preparing for the Future, 1995、Memorandum of the President of the International Bank for Reconstruction and Development to the Executive Directors on a Country Assistance Strategy of the World Bank Group for the Republic of Tunisia, 2000, INS データ, および Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

(12)

しかしながら、貧困人口、貧困率の推移は表 1-3、表 1-4、図 1-1、1-2 および 1-3 のとおり、測定

基準により大きく異なった特徴を示している。特に、貧困率については、INS によると、1980 年

を除き常に都市部が農村部を上回っている一方で、世界銀行および ILO による比率は一貫して農

村部が都市部を上回る数値を示している。貧困人口については、全体的な傾向として 1980 年以降

の急速な都市化に伴い、世界銀行および ILO においても全貧困人口に占める都市部貧困人口の割

合が増加している(表 1-4)。また、INS のデータが 1975 年から 1990 年の期間を通して貧困率の

減少を示している一方で、世銀および ILO のデータは特に 1990-95 年の期間における貧困率の悪

化を示している。1990 年から 1995 年にチュニジアの GDP 成長率は年平均 3%を記録しているこ

と、社会指標も改善していることから、国全体としては極めて好環境にあるにも拘わらず貧困率

の減少傾向が停滞している理由については明らかではない。しかし、一般に貧困層の割合が低く

なるにつれ、貧困層を対象とした貧困削減プログラムの実施(ターゲッティング)が困難になる

傾向によるものと考えられている

5

貧困率の推移をより詳しく見ると、INS による貧困率(図 1-1)は 1975 年から 1980 年の都市部に

おいて 26.4%から 12.3%と激減し、その後は緩やかな減少傾向にある。INS による農村部の貧困

率の推移を見ると貧困率が最も減少している期間は 1980 年から 1985 年であり、13.7%から 7.0%

に減少した。さらに、1975 年の貧困率は都市部が農村部を上回っていたが、1980 年には逆転し、

1985 年に再び都市部が農村部を上回っている。次に 1985 年から算出されている世銀の貧困率の

推移(図 1-2)を見ると、1985 年に 19.2%であった農村部の貧困率は 1990 年に 10.7%まで減少し、

1995 年に 14.1%と約 3%上昇している。同時期の都市部の貧困率は、4.7%(1985 年)から 4.1%

(1990 年)、3.6%(1995 年)と農村部に比べて変化が少ない。一貫して低下傾向にある INS の貧

困率の推移と異なる点について、世銀は、1993∼95 年の旱魃による農業生産の減少が要因である

と分析している

6

。最後に、ILO による貧困率(図 1-3)は、農村部で 1975 年に 41.6%から 1990

年に 23.2%まで著しく減少したが、その後 1995 年に 31.1%にまで上昇している。一方、都市部貧

困率は 1975 年から 1985 年までは 31.8%から 15.6%まで農村部と同様に減少傾向にあったが、1990

年には 18.2%まで上昇し、その後 1995 年に再び 16.0%に減少した。

図 1-1 INS による都市部・農村部の貧困率の推移(%) 26.4 17.8 21.9 6.2 12.3 8.4 7.4 7.1 13.7 7.0 5.8 4.9 6.7 7.8 13.0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 1975 1980 1985 1990 1995 都市部 農村部 全国 出所:INS より入手。

5 World Bank, Memorandum of the President of the International Bank for Reconstruction and Development to the Executive Directors on a Country Assistance Strategy of the World Bank Group for the Republic of Tunisia, 2000, p. 7.

(13)

図 1-2 世銀による都市部・農村部の貧困率の推移(%) 3.6 7.7 4.7 4.1 14.1 10.7 19.2 11.3 7.4 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 1975 1980 1985 1990 1995 都市部 農村部 全国

出所:World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress While Preparing for the Future, 1995 および Country Assistance Strategy 2000 より作成。 図 1-3 ILO による都市部・農村部の貧困率の推移(%) 31.8 18.8 15.6 18.2 16.0 41.6 39.0 31.1 23.2 31.1 37.0 28.8 21.8 22.7 20.7 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 1975 1980 1985 1990 1995 都市部 農村部 全国

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000,2000 より作成。

表 1-4 貧困人口の農村・都市分布 1975 1980 1985 1990 1995 都市部 57.2 47.8 58.7 65.1 69.6 INS 農村部 42.8 52.3 41.3 34.9 30.4 都市部 22.2 28.3 29.0 世界銀行 農村部 77.8 71.7 71.0 都市部 40.9 32.9 37.1 44.5 44.9 ILO 農村部 59.1 67.1 62.9 55.5 55.1

出所:World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress While Preparing for the Future, 1995、Memorandum of the President of the International Bank for Reconstruction and Development to the Executive Directors on a Country Assistance Strategy of the World Bank Group for the Republic of Tunisia, 2000, INS データ, および Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

(14)

下記の表 1-5 からもわかるように、使用する測定基準によって貧困を示す数値が異なり、貧困概

況の分析も異なるが、チュニジアにおける貧困の動向は以下のように要約することができる。貧

困率は総じて減少傾向にあるが、

1985 年以降、

その減少速度がゆるやかになっており、

特に 1990-95

年の期間に改善傾向が停滞している(又は、世銀、ILO によると悪化している)。

なお、第 2 章において記述する政府の貧困削減政策で使用されている貧困率は INS のデータであ

ることから、本報告書においては、INS の貧困ラインに基づくこととする。

表 1-5 3 測定基準による貧困概況 調査機関 貧困の動向分析結果 INS 貧困人口は全体的に減少傾向にあるが、1985 年以降は減少傾向が緩やかである。 1975-80 年は都市部、1980-85 年は農村部において貧困率がより大幅に減少してい る。 絶対的貧困人口の増加は近年ますます都市部の傾向となっており、それは貧困人口 全体の 70%に及ぶ。 世界銀行 貧困問題は農村部に集中しており、貧困人口の 70%が農村部に居住している。 都市部の貧困も近年増加傾向にあり、全貧困人口に占める都市部貧困層は 1985-95 年の期間に 22%から 29%に増加している。 1985-1990 年に貧困率は特に農村部において減少しているが、1990 以降、同比率は 農村部において特に上昇している。 都市部の貧困率は 1985 年から 1995 年の期間に継続して平均 2.5%のペースで減少 している。しかしながら、都市化の影響により、都市部における貧困人口は増加してい る。 1990-1995 年の期間に増加した貧困人口は 9 万人に上り、そのうちの 6 万人が農村 部、3 万人が都市部に居住している。 ILO 貧困率は 1975-1995 年の期間に全体的に減少しており、特に都市部において減少傾 向が顕著である。 1985 年以降、貧困率の減少傾向がゆるやかになっており、特に 1990-1995 年の期間 における農村部の貧困率の上昇が顕著である。 貧困人口は全体的に増加しており、特に貧困ラインを 20%上回る脆弱層の貧困人口 に占める割合が増加している。 貧困(脆弱層を含む)問題は主に農村部に集中しており(55%)、脆弱層の 65%は農 村部に居住している。一方で、貧困の都市化が進捗している。

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

不平等度を示すジニ係数については、表 1-6 に示すとおり 1975-1995 年の 20 年間に若干改善され

ているものの、1990 年から 1995 年に再び上昇している。チュニジアは北アフリカ地域内におい

ては不平等度が比較的高い

7

。1995 年における都市部・農村部別の不平等度は公表されていないが、

1990 年までの傾向を見ると、一貫して都市部における不平等度が農村部を上回っていることが分

かる。さらに、農村部は継続して不平等度が改善されているのに対し、都市部においては不平等

度の推移に一連の傾向が見られない。

表 1-6 チュニジアの不平等度の推移(ジニ係数) 1975 1980 1985 1990 1995 全国 0.440 0.430 0.434 0.401 0.417 都市部 0.429 0.396 0.411 0.374 - 農村部 0.397 0.376 0.364 0.364 -

出所:UNDP, “National Report on Human Development”, 1999.

(15)

1−3 貧困層の地理的分布

チュニジア政府は、通常、国を①チュニス県、②北東部、③北西部、④中西部、⑤中東部、⑥南

部(南西部、南東部)の 6 地域に分類して統計をまとめている(図 1-4)。地理的分布としては、

特に北西部の山岳地帯に貧困層の割合が最も高く、中西部の山岳地帯および南部の砂漠地帯がそ

れに続いている。一方、チュニスを含む比較的欧州に近い沿岸地域が最も豊かな地域となってい

る。

図 1-4 チュニジアにおける地域分布 チュニス県 中東部 中西部 北東部 南(西)部 北西部 南(東)部

貧困人口の地域別推移を見ると、最も顕著な特徴としては、1980 年から 1995 年までの期間に一

貫して北西部、中西部および南部に貧困人口が集中していることである(表 1-7)。この 3 地域の

合計は、同期間に貧困人口全体の 62∼63%を占めている。

表 1-7 貧困人口の地域別推移(INS) 1980 1985 1990 1995* 地域 貧困人口 (千人) シェア** (%) 貧困人口 (千人) シェア (%) 貧困人口 (千人) シェア (%) 貧困人口 (千人) シェア (%) チュニス県 70 8.5 51 9.2 73 13.4 69 12.2 北東部 48 5.8 78 14.1 50 9.2 69 12.2 北西部 188 22.8 118 21.3 124 22.8 103 18.2 中西部 180 21.9 114 20.6 123 22.6 122 21.6 中東部 126 15.3 76 13.7 75 13.8 77 13.5 南部 143 17.4 117 21.1 99 18.2 127 22.3 全体 823 100.0 554 100.0 544 100.0 567 100.0 *1995 年の値については、社会事業省による試算を引用。**シェアは、貧困人口全体に占める割合を指す。

(16)

さらに、貧困率の地域別推移を見ると、1980 年から 1995 年の期間に常に北西部および中西部が

チュニジアにおいて最も高い貧困率を記録している(表 1-8)。1995 年時点で北西部を上回り、中

西部と並んで約 9%という高い貧困率を示している南部に関しては、貧困率が上下する傾向があ

る。特に 1980 年から 1995 年の 15 年間に他の地域の貧困率が大幅に減少したのに対し、南部の減

少は 1%に満たない。この背景には、東部沿岸部は欧州市場に近く、工業化も進んでいる一方で、

内陸部である北西部、中西部および南部は、チュニジアの中でも最も開発が遅れた地域であり、

国土の殆どが農村地帯として孤立した地域であることが大きな要因として存在する。しかしなが

ら、1990 年以降、これまで貧困地域と言われてきた北西部および中西部の貧困率が若干低下して

いる(南部においては上昇)一方で、工業化の進んだ北東部においては逆に上昇しているという

傾向が見られる。

表 1-8 INS による貧困率の地域別推移(%) 1980 1985 1990 1995 チュニス県 6.30 3.60 4.20 3.69 北東部 11.50 7.80 4.50 5.63 北西部 17.60 10.60 10.20 8.32 中西部 19.70 10.90 10.30 9.26 中東部 15.80 5.10 4.40 4.02 南部 9.80 10.90 8.10 9.14 全体 13.00 7.80 6.70 6.30 *1995 年の値については、社会事業省による試算を引用。

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

なお、地域内農村・都市別の状況に係るデータは入手可能ではないため、これ以上の詳細分析は

困難であるが、都市化

8

と貧困率を各地域内における県(gouvernorat)別に見たものが図 1-5 であ

る。同図からは、一般的な傾向として、①北西部および中西部においては都市化が遅れているこ

と、②都市化が遅れている県においては、同じ地域内においても貧困率が高いことが読み取れる。

8 「都市化」は、都市の人口増加過程を指し、具体的には都市部における人口の全人口に対する割合で表される。

(17)

図 1-5 地域別都市化の状況(1995)(%) <チュニス県> 100 90 81 4.0 3.7 3.5 0 20 40 60 80 100

Tunis Ariana Ben Arous

3.2 4.2 5.2 6.2 7.2 8.2 9.2 10.2 都市化率 貧困率 <北東部> 58 34 65 3.9 4.2 4.0 0 20 40 60 80 100

Nabeul Zaghouan Bizerte 3.2 4.2 5.2 6.2 7.2 8.2 9.2 10.2 都市化率 貧困率 <北西部> 32 47 25 38 10.8 9.9 10.0 9.8 0 20 40 60 80 100

Beja Jendouba Le Kef Siliana 3.2 4.2 5.2 6.2 7.2 8.2 9.2 10.2 都市化率 貧困率 <中西部> 29 38 21 10.8 10.4 10.4 0 20 40 60 80 100

Kairouan Kasserine Sidi Bouzid 3.2 4.2 5.2 6.2 7.2 8.2 9.2 10.2 都市化率 貧困率 <中東部> 62 44 77 100 4.1 3.8 3.8 3.9 0 20 40 60 80 100

Sousse Monastir Mahdia Sfax 3.2 5.2 7.2 9.2 都市化率 貧困率 <南部> 56 61 65 55 71 70 8.4 7.7 7.7 8.7 7.5 8.0 0 20 40 60 80 100

Gafsa Tozeur Kebili Gabes Medenine Tataouine 3.2 5.2 7.2 9.2

都市化率 貧困率

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

地域別の一人当たり消費支出を時系列的に見ると、1975 年から 1995 年まで一貫して全体平均を

上回っているのがチュニスおよび中東部であり、一貫して低い値を示しているのが北西部、中西

部および南部となっている(図 1-6)。このことから、チュニジアにおける貧困の地域分布におい

ては、1975 年から 1995 年の期間に構造的変化が現れていないことが分かる。

(18)

図 1-6 地域別一人当たり消費支出の推移(ディナール) 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1975 1980 1985 1990 1995 チュニス 北東部 北西部 中西部 中東部 南部 全体

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

さらに、一人当たり消費支出変化率の推移を見ると、チュニジア全体の傾向としては 1980-1985

年の期間における成長率が最も目覚しく、その後 1980 年代後半から 1990 年代前半にかけて成長

率は低下している(図 1-7)。一方、こうした全国的傾向と異なった数値を示しているのが、北西

部、中東部、南部である。北西部は 1980-85 年にその他地域が成長率を伸ばしている中で成長率

を減少させている。また、中東部は、1990 代に入り、他地域を引き離して顕著な成長率を記録し

ている。南部は 1975 年に全国で最も高い値を示しているにもかかわらず、以降、成長率は著しく

低下している。なお、中西部は全国的な傾向と同様な推移を示しているものの、1990 年代に入っ

てからの成長率は 3%と全国平均 7%の半分にも及んでおらず、他地域と比較しても深刻な停滞状

況にあることが分かる。

0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 1975-80 1980-85 1985-90 1990-95 チュニス 北東部 北西部 中西部 中東部 南部 全体 図 1-7 地域別一人当たり消費支出変化率の推移(%)

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

次に、地域別にジニ係数の推移を見ると、1980 年から 1990 年の 10 年間に全体として 0.33 から

0.44 の間に収束している(表 1-9)

。1990 年を見ると全体的に貧困層の多い北西部、中西部および

南部において地域内格差が低く、チュニスおよび北東部が最も高くなっていることが分かる。中

西部における不平等度は他の地域と比較すると急速に低下している。前述した通り、①西部領域

(19)

には山岳地帯が多く、南部においては砂漠地帯が広がっていること、②チュニスは都市部であり、

北東部も産業都市が集結した地域であることから、先にみた農村部よりも都市部の不平等度が高

い傾向があると言える。

表 1-9 ジニ係数の地域別推移 1980 1985 1990 チュニス県 0.413 0.425 0.392 北東部 0.399 0.396 0.396 北西部 0.400 0.372 0.377 中西部 0.419 0.392 0.367 中東部 0.406 0.408 0.377 南部 0.379 0.377 0.338 全国 0.430 0.434 0.401 出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

1−4 貧困の深度、重度およびそれらの動態

チュニジア政府は、貧困の深度および重度について公式な数値を発表していない。このため、本

項では、世銀の貧困アセスメントにおいて算出された 1990 年のデータおよび今次調査における

A. Gana および A. Mahjoub の算出データを基にするが、世銀によるデータおよび Gana らの算出結

果が異なった数値を示していることから本項においては紹介に留めることとする。

表 1-10 世界銀行による貧困の深度と重度(1990 年) 都市部 大都市 その他 農村部 全国 貧困の深度(%) 0.51 0.86 3.25 1.74 貧困の重度(%) 0.15 0.29 1.21 0.63

出所:World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress While Preparing for the Future, p. 13.

表 1-11 Gana および Mahjoub による貧困の深度と重度の推移(INS データ)

1975 1980 1985 1990 1995

貧困の深度(%) 9.52 5.12 3.98 2.82 3.26 貧困の重度(%) 0.056 0.023 0.021 0.016 0.020 出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

世銀によると、貧困の深度および重度ともに農村部の方がより深刻である(表 1-10)。また都市部

内においては、大都市よりもその他の都市部においてより両指標ともに深刻度が高い。さらに、

INS のデータを基にした Gana および Mahjoub によると、1975 年から 1990 年の間に、チュニジア

全体の貧困の深度が大きく改善されている(表 1-11)。一方、1990 年代に入り、1990 年から 1995

年の期間に貧困の深度は再び深まっている。貧困の重度については 1975 年から 1980 年の期間に

大幅に改善されているものの、その後はほぼ変化が見られない。ただし、1990 年から 1995 年に

かけては貧困の深度とともに重度も若干悪化していることから、世銀および ILO による貧困率の

上昇にも見られたとおり、

1990 年代に入りチュニジアの貧困状況は悪化傾向にあることが分かる。

さらに、Gana および Mahjoub の算出を用いて都市部・農村部別の貧困の深度と重度を見ると、1980

年から 1990 年の期間に、一貫して農村部の方が都市部よりも貧困の深度、重度ともに高い。従っ

(20)

て、農村部において貧困の度合いがより深く、また貧困層間の格差も大きいことが示されている。

表 1-12 農村・都市別貧困の重度と深度 1980 1985 1990 都市部 農村部 都市部 農村部 都市部 農村部 貧困の深度(%) 3.495 7.050 2.021 3.500 2.126 2.350 貧困の重度(%) 0.013 0.035 0.008 0.018 0.009 0.012 出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

1−5 貧困層の特徴

チュニジアの世帯調査には、他国と比較しても貧困の特徴を導き出すだけの情報が不足している。

世界銀行は 1995 年に実施された独自の貧困アセスメントの中で、チュニジアの世帯調査のあり方

に言及し、同調査は支出消費パターンについての分析が主であり、社会状況や労働市場に係る情

報が欠落していることを指摘している。中でも、①貧困層の経済的特徴および生活状況、②送金

を含む世帯収入源、③市場条件および賃金、④社会経済インフラへのアクセス状況およびセーフ

ティネット等の公共サービスの効率性、⑤地域別諸価格に係るデータが不足しており、貧困層の

特徴を包括的に把握することは困難であるとしている

9

。従って、本項においては、1995 年の世銀

による貧困アセスメント、UNDP の国別人間開発報告書および今次調査における A. Gana および

A. Mahjoub による回帰分析(世帯ではなく、県の指標を基に算出)から得られた結果をもとに、

可能な限りの分析を行うこととする。

世界銀行は 1995 年の貧困アセスメントにおいて、貧困層の特徴として表 1-13 に示されるように 6

点を挙げている。

表 1-13 世界銀行による貧困層の特徴(1990 年世帯調査結果) 特 徴 ①農村部に集中: 貧困は主として農村に見られる現象である。 (貧困人口の 70%以上は農村部居住) ②地域間格差: 非常に顕著な地域間格差が見られる。 (北西地域が最も貧しく、中西部がその次に貧困地域とされる) ③世帯規模: 全国的に貧困層ほど世帯規模が大きく、世帯に占める扶養家族の割合が高く、若者を世帯主としていない。 ④教育: 全国的に人的資本と貧困との相関関係が強い。 (貧困層の 60%以上が公教育を全く受けていない世帯主の家庭である) ⑤職業: 都市部における貧困層は賃金労働者である確率が高く、次に非農業活動における自営業に従事している傾 向がある。 ⑥農業条件(土地、灌漑等): 農村部における貧困層は主に農業活動から収入を得ているが(自営自作および農業賃金労働者)、農業以 外の収入も並行して得ているのが通常である。多くの農村貧困層が土地や家畜を所有しているが、所有地は 小さく、灌漑は殆どなく、生産性が低い。

出所:World Bank, Memorandum of the President of the International Bank for Reconstruction and Development to the Executive Directors on a Country Assistance Strategy of the World Bank Group for the Republic of Tunisia, 2000.

(21)

一方、今次調査において実施された Gana および Mahjoub の回帰分析によると、表 1-14 のような

結果が得られた

10

。ここから導き出される貧困層の特徴は表 1-15 のとおりである。これらは、世

界銀行による分析結果とほぼ一致しており、チュニジアにおける貧困層の特徴が、1990 年代初頭

から半ばにかけて変化していないことを示唆している。以下、こうした分析結果をもとに、1)

居住地域、2)世帯規模、3)教育、4)職業、5)保健・衛生へのアクセス、6)基礎インフ

ラについて貧困との関連を概観する。

表 1-14 Gana および Mahjoub による回帰分析結果(1995 年世帯調査結果*) 従属変数 独立変数 回帰係数 P 値(%) R2 識字率 0.2496 0 0.945 定数 -2.608 1.1 - 臨時職従事者数 0.241 0 0.938 都市化率 -0.087 0 0.93 定数 11.945 0 - 世帯規模 4.229 0 0.917 定数 -15.587 0 - 診療所(PHC)への距離が 4km以上の世帯率 0.1285 0 0.909 定数 4.379 0 - 安全な水へのアクセス世帯率 -0.129 0 0.906 定数 17.76 0 - 失業率 0.399 0 0.93 人口に占める男性の比率 -0.674 2.0 0.898 32 県の貧困率 定数 75.359 3.4 - 注*:1995 年世帯調査結果および 1994 年人口調査、貧困率については、1997 年の貧困家庭の援助国家プログラム:PNAFN のための社 会事業省データを使用。 表の読み方としては、回帰係数がプラスかマイナスかにより従属変数と独立変数の相関関係が正であるか負であるかを見ることが出来る。 P 値は有意水準を示し、0%レベルにおいて最も統計的相関関係が高く、10%を越える場合には相関関係における統計的な信頼性はな いと判断される。R2は高いほど相関関係が顕著であることを表す。

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

表 1-15 Gana および Mahjoub による貧困層の特徴

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

1) 居住地域(農村・都市)

1−2にみたとおり、チュニジアにおける貧困率は、INS によると都市部がより高く、世界銀行

および ILO とは異なった値を示している。一方、INS 統計を用いた Gana および Mahjoub による

分析結果においても、都市化が進んでいる県においてはより貧困率が低いという相関関係が強く

現れており、矛盾した状況が示されている。いずれにしても、これは図 1-5 においても既に見た

とおりであり、概して農村部と貧困との関連性は高いと想定することができる。

10 使用した独立変数は全 23 県の、①都市化率、②ヘルスサービスへのアクセスがない割合、③安全な水へのアクセス、④非識 字率、⑤1 ヘクタール以下の土地を持つ農民の割合、⑥共同耕作率、⑦衛生施設へのアクセスがない割合、⑧男性率、⑨世帯 規模、⑩臨時職従事者率、⑪障害者率、⑫60 歳以上の人口割合、⑬離婚女性又は寡婦の割合、⑭電気へのアクセス率、⑮失 業率、⑯家事手伝い又は自営業の割合であった。 貧困層は非識字者である場合が多い。 貧困層は農村に居住している可能性が高い。 貧困層の世帯規模はより大きい傾向が強い。 貧困層はヘルスケアおよび安全な水へのアクセスが少ない。 貧困層は失業者が多い。 貧困層には女性が多い。

(22)

なお、チュニジアの農村部における貧困層の大部分は、生産性が低い農地を持つ農業従事者(自

営自作および農業賃金労働者)である。これは途上国一般或いは先進国の一部によく見られる。

多くの農村貧困層が土地や家畜を所有しているが、平均 2 ヘクタールの殆ど灌漑のない小規模な

土地しか持たず、特に天水農業地域は生産性が低くなっている

11

。農村の貧困層は主に農業活動か

ら収入を得ているが、農業以外の収入

12

も並行して得ているの場合が多い。

2)世帯規模

貧困層の特徴として、都市・農村の別なく世帯規模が大きいという点が挙げられる。チュニジア

全体の出生率を見ると、表 1-2 でみたとおり、約 20 年余りの期間に 4.0 人も減少しており、特に

1990 年代に入りその傾向は目覚しい。貧困層はこうした家族計画に成功した人口層に何らかの理

由で含まれなかった人々と考えられる。チュニジアの地域別平均世帯規模は、表 1-16 に見るとお

り、4∼6 人の範囲に収束している。貧困率の高い北西部および中西部においては、世帯規模も 4.9

から 5.9 人と比較的高い。また、同じく貧困率の高い南部(南西部および南東部を含む)では世

帯規模が 5.4 から 6.2 と特に高くなっている。一方、比較的貧困率の低いチュニス県、北東部およ

び中東部においては、貧困率とともに世帯規模も 4.5 から 5.3 と全国平均の 5.6 を下回っているこ

とが分かる。前述したとおり、チュニジアにおいては支出階層別のデータが不足しているため、

これ以上の分析は困難である。

表 1-16 県別貧困率と世帯規模 地域 県名 世帯規模(人) 貧困率(%) Tunis 4.5 3.5 Ariana 5.1 4.0 Tunis Ben Arous 4.8 3.7 Nabeul 4.9 3.9 Zaghouan 5.3 4.2 北東 Bizerte 5.0 4.0 Beja 5.1 9.9 Jendouba 5.1 10.0 Le Kef 5.0 9.8 北西 Siliana 5.5 10.8 Kairouan 5.7 10.4 Kasserine 5.6 10.4 中西 Sidi Bouzid 5.9 10.8 Sousse 4.9 3.8 Monastir 5.0 3.9 Mahdia 5.3 4.1 中東 Sfax 4.9 3.8 Gafsa 5.7 8.0 Tozeur 5.4 7.5 南東 Kebili 6.2 8.7 Gabes 5.5 7.7 Medenine 5.5 7.7 南西 Tataouine 6.0 8.4 全国 5.6 6.2 出所:1995 年世帯調査結果および 1994 年人口調査、貧困率については、1997 年の貧困家庭の援助国家プログラム:PNAFN のための 社会事業省データより作成。

11 World Bank, Memorandum of the President of the International Bank for Reconstruction and Development to the Executive Directors on a Country Assistance Strategy of the World Bank Group for the Republic of Tunisia, 2000.

12 具体的な農業以外の収入についてのデータは存在しないが、季節労働や農業以外の自営業を含むインフォーマルセクターから の収入が想定されている。(World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress while Preparing for the Future, Volume I, 1995, p. 15.

(23)

3)教育レベル

チュニジアは 1956 年の独立以来、人的資源開発を最重視してきた国である。この結果、表 1-17

に示されるとおり、非識字率は 1966 年から 1999 年の期間に全国で 67.9%から 27.0%に減少して

いる。都市部、農村部の数値も 1994 年から 1999 年の男性を除き著しい改善傾向を示している。

問題点としては、農村・都市部間格差が著しいことであり、この傾向は女性に顕著である。1999

年時点においても農村・都市部間格差は男性で 16.4%、女性は 26.8%にも及び、農村女性の非識

字率は依然として 53.2%と高い数値を示している。チュニジアにおいては、初等教育の就学率が

大幅に改善されていることから(表 1-21)、若年層において識字レベルが高く、高齢者については

識字レベルが低いことも特徴的である(表 1-18)。

表 1-17 10 歳以上の非識字率の推移(%) 全国 都市部 農村部 1966 1975 1984 1994 1999 1966 1975 1984 1994 1999 1966 1975 1984 1994 1999 男性 53.9 42.3 34.6 21.2 17.7 39.1 30.2 23.5 4.5 11.8 64.7 54.9 48.0 32.2 28.2 女性 82.4 67.9 58.1 42.3 36.3 68.3 52.7 43.2 31.3 26.4 92.1 84.3 76.2 60.1 53.2 全体 67.9 54.9 46.2 31.7 27.0 53.2 41.4 33.2 22.8 19.0 78.3 69.3 61.9 46.2 40.8 出所:Institut National de la Statistique, Recensement General de la Population et de l’Habitat 1994: Caracteristiques d’Education, 1997,

pp.12-16.

1999 年のデータについては INS, Enquete Population-Emploi 1999 Janvier 2000 Resultats Preliminaires.

表 1-18 年齢別非識字率の推移(%)

10−14 15−19 20−24 25−29 30−34 35−39 40−44 45−49 50−54 55−59 60+

1975 24.2 27.7 38.3 54.7 68.9 78.3 83.5 84.9 86.2 87.5 90.1 1984 17.2 24.6 27.1 34.0 45.3 60.0 74.6 82.0 85.6 86.4 89.9 1994 6.3 9.6 15.3 23.3 24.8 30.1 40.5 54.3 69.2 76.8 84.9 出所:Institut National de la Statistique, Recensement General de la Population et de l’Habitat 1994: Caracteristiques d’Education, 1997,p17

チュニジアにおける言語の構成は、1975-1994 年の期間に大きく変化しており、アラビア語、フラ

ンス語に加え英語の識字者が増加していることが分かる(表 1-19)。チュニジアはアラビア語を国

語としているが、市場経済化政策に伴い活発化している欧州との貿易を促進するにはフランス語

および英語の識字がますます求められている。また、地域別には、東部においてアラビア語のみ

の識字者が多く、英語の識字についてはチュニス県および南西部においてその割合が高いことが

特徴的である(表 1-20)。

表 1-19 識字者(10 歳以上)の言語別構成の推移(%) 言語 1975 1984 1994 アラビア語のみ 10.6 22.3 20.1 アラビアとフランス語 80.5 67.8 63.8 アラビア語、フランス語と英語 7.5 8.2 15.0 その他 1.4 1.7 1.1 全体 100.0 100.0 100.0

(24)

表 1-20 地域別 10 歳以上の識字率(%) 地域 アラビア語 のみ アラビア語 と仏語 アラビア語、 仏語、英語 アラビア語、 仏語、英語、 その他 アラビア語 とその他 アラビア語 以外 合計 チュニス県 16.0 63.8 17.8 1.2 0.5 0.8 100.0 北東部 22.9 64.3 11.7 0.5 0.3 0.3 100.0 北西部 18.7 66.4 14.5 0.2 0.1 0.1 100.0 中央西部 20.9 63.9 14.9 0.2 0.1 - 100.0 中央東部 21.8 62.2 15.1 0.6 0.2 0.1 100.0 南西部 19.4 63.0 17.2 0.2 0.1 0.1 100.0 南東部 24.1 63.0 12.3 0.3 0.2 0.2 100.0 合計 20.1 63.7 15.0 0.6 0.3 0.3 100.0 出所:Institut National de la Statistique, Recensement General de la Population et de l’Habitat 1994: Caracteristiques d’Education, 1997,p.22

識字率と同様、チュニジアの就学率も目覚しい改善傾向を示している。1989 年の教育改革以降設

定された基礎教育過程対象年齢である 6∼14 歳の就学率の推移を見ると、1975 年に 59.9%であっ

た就学率は 1994 年に 86.2%となり、約 30%の上昇を示している(表 1-21)。男女別に見ると、男

子の就学率は同期間に 70%から 89%と約 20%上昇しているのに対して女子の就学率は 49.0%か

ら 83.2%と増加率は 34.2%に及んでいる。中でも農村部における女子の就学率は 25.3%から 71.0%

と約 3 倍に上昇していることが特徴的である。

表 1-21 6 歳から 14 歳の就学率の推移(%) 全国 都市部 農村部 1975 1984 1994 1975 1984 1994 1975 1984 1994 男子 70.0 82.8 89.0 82.3 89.4 92.5 57.6 76.6 84.1 女子 49.0 68.7 83.2 72.7 85.5 91.8 25.3 52.4 71.0 全体 59.9 75.9 86.2 77.6 87.4 92.2 41.9 64.9 77.8

出所:Institut National de la Statistique, Recensement General de la Population et de l’Habitat 1994: Caracteristiques d’Education, 1997, pp.12-16.

一方、チュニジアにおいては、教育の内部効率性においては課題が残されており、1997/98∼1998/99

年の初等教育レベル

13

の進級率平均は男子 79.9%、女子 84.2%、留年率は男子 17.5%、女子 13.6%、

退学率は男子 2.6%、女子 2.2%となっている。また、高学年ほど留年率および退学率が高いこと

も問題と考えられる(表 1-22)。

表 1-22 初等教育における内部効率性の現状(1997/98∼1998/99 年) 指標 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 1- 6 年平均 男女平均 進級率 85.1% 84.5% 81.4% 82.5% 76.5% 61.9% 81.9% 留年率 13.6% 14.6% 16.4% 14.6% 19.0% 29.6% 15.7% 退学率 1.3% 1.0% 2.2% 2.9% 4.5% 8.5% 2.4% 女子 進級率 86.3% 86.3% 84.3% 85.0% 79.4% 63.9% 84.2% 留年率 12.5% 12.7% 13.8% 12.3% 16.7% 28.4% 13.6% 退学率 1.2% 1.1% 1.9% 2.7% 3.9% 7.8% 2.2% 男子 進級率 84.0% 82.9% 78.9% 80.3% 73.9% 60.1% 79.9% 留年率 14.6% 16.3% 18.7% 16.6% 21.1% 30.7% 17.5% 退学率 1.4% 0.9% 2.4% 3.1% 5.0% 9.2% 2.6% 出所:Ministry of Education. UNICEF. UNESCO. Bilan à l'an 2000 Rapport National を元に A.Gana & A. Mahjoub が作成。

13 基礎教育課程の 9 年間のうち 1 年から 6 年までが前期(初等教育レベル)、7 年から 9 年が後期(中等教育レベル)とされて いる。

(25)

貧困との関連で見た場合、1990 年時点において貧困層の世帯主の 60%以上が公教育を受けておら

ず、90%以上が初等教育以上の学歴を有していない

14

。地域別に見ると、貧困率と基礎教育純就学

率および識字率との関係を読み取ることができる

(表 1-23)。貧困率の高い北西部(Beja、Jendouba、

Le Kef、Siliana)および中西部(Kairouan、Kasserine、Sidi Bouzid)における就学率は低く、非識

字率は圧倒的に高い。特に、中西部の 3 県は、チュニジアの中でも最も就学率が低く、最も非識

字率が高い地域となっている。

表 1-23 県別教育レベルと貧困率(%) 地域 県名 就学率 非識字率 貧困率 Tunis 93.9 22.1 3.5 Ariana 91.5 29.6 4.0 チュニス県15 Ben Arous 93.8 23.0 3.7 Nabeul 88.9 33.1 3.9 Zaghouan 81.0 45.2 4.2 北東部 Bizerte 86.9 35.9 4.0 Beja 84.1 46.4 9.9 Jendouba 81.0 50.0 10.0 Le Kef 85.6 44.0 9.8 北西部 Siliana 82.6 47.2 10.8 Kairouan 74.6 50.0 10.4 Kasserine 75.3 51.6 10.4 中西部 Sidi Bouzid 80.2 48.2 10.8 Sousse 89.2 30.4 3.8 Monastir 90.2 24.9 3.9 Mahdia 83.8 44.0 4.1 中東部 Sfax 86.3 31.4 3.8 Gafsa 88.1 36.3 8.0 Tozeur 89.3 33.8 7.5 南東部 Kebili 90.7 38.5 8.7 Gabes 87.8 35.7 7.7 Medenine 88.7 35.8 7.7 南西部 Tataouine 88.4 39.4 8.4 全国 86.2 36.2 6.2 注:就学率は 6∼14 歳までの基礎教育純就学率、識字率は成人識字率を示す。

出所:Institut National de la Statistique, Recensement General de la Population et de l’Habitat 1994: Caracteristiques d’Education, 1997,p.37 および 1997 年の貧困家庭の援助国家プログラム:PNAFN のための社会事業省データより作成。

4)職業

先にみた世銀の貧困アセスメント調査によると、賃金労働者が貧困層となる確率が高いと言われ

ている。チュニジアにおける賃金労働者は 1997 年時点で労働者全体の 68.5%を占めるが、農業セ

クターにおいては、女性 6.6%、男性 11.3%、非農業セクターにおいては、女性 93.4%、男性 88.7%

である

16

。チュニジアの貧困層の特徴を把握するためには、賃金労働者の置かれている状況を把握

することが重要である。

表 1-24 は、一人当たりの消費支出を職業別にみたものである。雇用者および管理職と賃金労働者

および農民との格差は大きく、チュニジアにおける賃金格差が示されている。また、その推移を

見ると、1980 年代後半には雇用者及び管理職が支出を減らし、その他賃金労働者及び農民が支出

を増加させている一方で、1990 年代には逆の傾向を示しており、1990 年代に前者と後者の格差が

14 World Bank, Republic of Tunisia Poverty Alleviation: Preserving Progress While Preparing for the Future, 1995, p. 16. 15 チュニス県は District of Tunis、第 2 コラムの県名は Governorat と呼ばれる。

(26)

拡大した。これは、1−2にみたジニ係数の推移とも対応しており、総じて、雇用者および管理

職=富裕層、賃金労働者および農民=貧困層という図式がチュニジアの産業構造に当てはまること

を示唆している。

表 1-24 職業別一人当たりの消費支出の推移(ディナール) 1985 1990 1995 平均成長率 (%:85-90) 平均成長率 (%:90-95) 管理職、高級官僚 2,199 1,619 1,957 -5.28 4.18 中間管理職 1,235 1,169 1,183 -1.07 0.24 その他事務職 1,126 952 992 -3.09 0.84 雇用者(農地所有者、鉱業、貿易、サービス業) 1,330 1,172 1,195 -2.38 0.39 貿易・サービス業における職人および自営業者 669 749 686 2.39 -1.68 工業、販売業、サービス業賃金労働者 594 608 578 0.47 -0.99 農民 504 580 550 3.02 -1.03 農業関連産業従事者 393 386 410 -0.36 1.24 失業者(経済活動を行っている人口中) 562 367 356 -6.94 -0.60 退職者および非労働者 823 840 878 0.41 0.90 その他 595 678 600 2.79 -2.30 平均 691 716 729 0.72 0.36 出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

具体的に職業別貧困率を見ると、表 1-25 のとおり、1985 年および 1990 年の両年ともに貧困率が

最も高いのが失業者、続いて農業関連産業従事者となっている。また、農民については、1985 年

から 1990 年に貧困率が減少しているのが特徴である。

表 1-25 職業別貧困率の推移(%) 1985 1990 貧困率 人口 シェア 貧困率 人口 シェア 一般事務職 1.1 1.6 2.3 1.5 職人および卸売業・サービス業の自営業者 7.0 9.6 6.4 11.8 工業、販売業、サービス業賃金労働者 9.1 40.0 9.7 45.7 農民 6.8 16.4 2.5 5.9 農業関連産業従事者 12.8 17.0 12.7 18.0 失業者(経済活動を行っている人口中) 18.6 4.9 19.2 4.0 退職者および非労働者 4.8 5.2 6.4 9.4 その他 11.4 5.2 4.7 3.7 チュニジア全体 7.7 100.0 6.7 100.0

出所:Gana A. & Mahjoub A., Poverty Assessment Study Tunisia: A Report for JBIC 2000 より作成。

失業については、チュニジアは近年深刻な問題を抱えている。第一に、チュニジアにおける失業

率は常に高く、また全体の失業率が特に 1990 年代に入り増加していることが挙げられる。表 1-26

に見るとおり、1975 年に 12.9%であった失業率は、1997 年には 15.7%に上昇している。男女別に

統計を見ると、女性の経済活動参加率は伸びているものの、男性と比較した場合、圧倒的に低く、

失業率も男性 15.4%、女性 16.7%で女性が男性を上回っていることが分かる。これらは初等教育就

学率等の社会指標における男女間格差を解消し、他のアラブ諸国よりも高いジェンダー開発指数

17

を示すチュニジアにおいても、労働市場における男女の雇用機会には格差が存在することを示唆

している。

17 ジェンダー開発指数(Gender development Index: GDI)は、具体的には、平均余命、教育達成度および収入を男女別に算出し、 その男女間格差を算出したもので、1 に近いほどジェンダー不平等度が低い。1998 年のチュニジアの GDI は 0.688 でアラブ 諸国平均 0.612 を上回っている(国連開発計画、人間開発報告書 1995:ジェンダーと人間開発、1995、p. 256、および人間開 発報告書 2000:人権と人間開発、2000)。

(27)

表 1-26 男女別経済活動参加率および失業率の推移(%) 1966 1975 1984 1994 1997 経済活動参加率 男性 85.5 81.1 78.6 73.8 73.4 女性 5.6 18.9 21.8 22.9 23.7 失業率 男性 - 13.4 13.7 15.0 15.4 女性 - 10.6 11.0 17.2 16.7 全体 - 12.9 13.1 15.6 15.7

出所:PUND, National Report on Human Development 1999. 1999, p.98

第二に深刻な問題としては、若者の失業者が増加していることである。表 1-27 にみるとおり、男

女ともに年齢が低いほど失業率が高い。特に、18-19 歳の男性の失業率は 35.6%(都市部 35.8%、

農村部 35.4%)、女性が 28.2%(都市部 26.3%、農村部 31.0%)、20-24 歳ではそれぞれ男性 31.1%

(都市部 31.9%、農村部 29.7%)、女性 28.4%(都市部 27.9%、農村部 29.4%)となっており、都

市部、農村部ともに 18-19 歳および 20-24 歳の男女において失業が最も深刻化している。学歴別に

失業者の構成を見ると全般的に初等教育の学歴保持者が最も多く、中等教育の学歴保持者がそれ

に続いているが、25 歳から 34 歳の失業者には男女ともに高学歴者が目立つことが近年、チュニ

ジアの抱える深刻な問題となっている(表 1-28)。

表 1-27 年齢別男女別失業率(1997 年)(%) 都市部 農村部 男性 女性 全体 年齢 男性 女性 全体 男性 女性 全体 男性 女性 全体 18-19 35.8 26.3 32.1 35.4 31.0 33.9 35.6 28.2 32.9 20-24 31.9 27.9 30.5 29.7 29.4 29.6 31.1 28.4 30.2 25-29 20.6 18.8 20.0 21.7 20.6 21.4 21.0 19.2 20.5 30-34 11.5 13.1 12.0 15.7 10.5 14.9 12.9 12.6 12.8 35-39 7.7 7.9 7.7 12.7 8.8 12.1 9.2 8.1 9.0 40-44 6.1 5.2 5.9 11.5 3.1 10.2 7.8 4.6 7.2 45-49 4.7 4.6 4.7 9.0 2.4 7.8 6.0 3.9 5.6 50-54 5.5 5.6 5.5 6.4 3.4 5.9 5.8 4.6 5.6 55-59 4.7 4.5 4.7 5.1 1.1 4.4 4.9 2.7 4.6 全体 14.2 16.2 14.7 17.7 17.7 17.7 15.4 16.7 15.7

出所: Institut National de la Statistique, Enquete Nationale sur L’Emploi en 1997、p. 132。

表 1-28 男女別失業者の年齢別学歴別構成(1997 年)(%) 男 性 女 性 無学歴 初等教育 中等教育 高等教育 無学歴 初等教育 中等教育 高等教育 18-19 3.2 66.7 30.1 - 9.7 65.8 24.5 - 20-24 2.8 50.0 45.2 2.0 8.4 48.7 39.3 3.6 25-29 5.7 44.4 41.9 7.9 13.1 27.8 45.8 13.3 30-34 12.8 59.1 23.9 4.2 18.7 41.5 32.5 7.2 35-39 10.9 72.2 14.5 2.4 26.3 50.0 21.7 2.0 40-44 22.6 59.2 17.5 0.7 49.7 38.7 11.6 - 45-49 39.1 40.9 17.1 2.9 60.7 13.7 19.4 6.3 50-54 60.3 28.2 8.9 2.6 90.3 9.7 - - 55-59 76.7 19.7 3.6 - 100.0 - - - 全体 10.7 52.9 32.9 3.5 14.8 43.5 35.8 5.9 出所:Institut National de la Statistique, Enquete Nationale sur L’Emploi en 1997. 1999, p. 141 より作成。

チュニジアの失業問題については、失業率の算出根拠に疑問を呈する議論もあり、失業率が概し

て高く算出されており、実際は職務経験のない求職者(first-time job seekers)の失業率についての

表  1-3  貧困測定基準による貧困概況の推移  1975  1980  1985  1990  1995  全国  1,223 823 554 544  559  都市部 700 393 325 354 389 貧困人口 (千人)  農村部 523 430 229 190 170  全国  21.9 13.0 7.8 6.7  6.2  都市部 26.4 12.3 8.4 7.4  7.1 INS 貧困率 (%)  農村部 17.8 13.7 7.0 5.8  4.9  全国  - - 810 600
表  1-4  貧困人口の農村・都市分布  1975 1980 1985 1990 1995  都市部  57.2 47.8 58.7 65.1 69.6  INS  農村部  42.8 52.3 41.3 34.9 30.4  都市部     22.2  28.3  29.0  世界銀行  農村部     77.8  71.7  71.0  都市部  40.9 32.9 37.1 44.5 44.9  ILO  農村部  59.1 67.1 62.9 55.5 55.1
図  1-5  地域別都市化の状況(1995)(%)  <チュニス県> 100 90 81 4.0 3.73.5 0 20406080100
図  1-6  地域別一人当たり消費支出の推移(ディナール)  0200400600800100012001400 1975 1980 1985 1990 1995 チュニス 北東部 北西部 中西部 中東部 南部 全体
+7

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較的⾼温場の場合では,主にアセチレンが⽣成される.⼀⽅で⽐較的低温場の場合で