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貧困削減のためのパートナーシップ

ドキュメント内 貧困アセスメント作成調査報告書 (ページ 58-84)

3−1 パートナーシップの現状 

チュニジアにおいては、貧困削減のためのまとまったパートナーシップは行われていない。3−

3で言及するように、社会福祉支援が充実しており、ドナーによる貧困削減を目的とした支援は 極めて限られているのが現状である。

2

章にて概説したとおり、チュニジア政府は過去に様々な経済安定化政策、社会福祉・支援プロ グラムや雇用創出、地域開発プログラムを実施し、貧困削減に取り組み、一連の成果を生んでき た。こうした実績は、パートナーシップよりもむしろ政府主導の政策実施能力の賜物ということ ができる。政府のプログラムに複数のドナーが共同支援することにより結果的に協調した形をと っている事例は存在するものの、政府とドナーによる頻繁な会合の開催等、体系的なパートナー シップには至っていない 。 67

68

このうち、USAIDは、貧困層の多い北西部の

Kasserine

県および南部の

Sousse

県における都市周 辺部を対象とした住民参加型環境教育プロジェクト(Community Involvement in the Management of

Environmental Pollution: CIMEP)を 1995

年より実施している。これは各県において、地方政府職

員、地方議員、NGO、住民を構成員とするセクター横断的な拡大地域チーム(equipe municipale elargie: EME)を形成し、フォーカスグループディスカッション等を通じて地域の環境問題につい て建設的な議論を交わし、様々なプロジェクト に結び付けていくものである。持続可能性を重視 した同プロジェクトは、プロジェクトの実施コストを一件当たり

5,000

ドル以下に抑え、マネー ジメント体制整備を重視した。この結果、①住民は資金のみならず労働力を提供することによっ て地域活動に協力するようになり、②地方政府には「貧困地域=サービス提供対象」という意識か ら「貧困層=共同で地域開発に取り組むパートナー」としての認識が醸成され、③慈善福祉活動組 織という位置付けであった

NGO

にも行政と共に地域開発に取り組む姿勢が認められるようにな る等、主に意識改革という点で成果が見られた。その結果、これまで公共保健サービスを利用せ ず、子供の下痢等の疾患についても自宅で不適切な治療を施していた貧困層が公共サービスに積 極的にアクセスするようになったという波及効果が現れた。本案件は、一党支配の長いチュニジ

69

パートナーシップの中でも

1980

年代後半以降、活発になりつつあるのが、政府と

NGO

およびド ナーと

NGO

との連携であろう。政府と

NGO

の取り組みとしては、

1992

年より、沿岸地域開発委 員会(Commissariat General du Developpement Regional: CGDR) が

NGO

支援基金を設立し、2百 万ディナールが

10

NGO

に対して支給された。また、第

2

章において既述したチュニジア連帯 銀行や貧困家庭の国家援助プログラム(PNAFN)は一部

NGO

を通じて貧困層支援を実施してい る。一方、

NGO

や地方政府とドナーとのパートナーシップについては、米国開発庁(United States

Agency for International Development: USAID)や国連児童基金(United Nations Children’s Fund:

UNICEF)がより積極的である。

67 例えば、国家連帯基金には、ルクセンブルグ(北部および北西部における2プロジェクト:計6百万ディナール)、ベルギー

(北西部に9百万ディナール)、イタリア(Gafsaへの姉妹都市支援計3百万ディナール)、米(医療機器供与)、中国(コン ピュータ供与)がそれぞれ支援されたが、支援形態は財政および物品供与である。

68 2章においても言及したとおり、沿岸地域CGDRは、①第2章にみたPDRIおよびPDUIに代表される地域開発プログラム、

②北東部および中東部の11県(gouvernorat)のための地域開発計画立案を担当する経済開発省傘下の政府機関である。

69 プロジェクトとしては、住居改修、排水口拡張、小規模橋建設、ゴミの仕分け、保健教育等が実施された。

アにおいて形成されてきた官僚的な地方政府と、社会サービスについては政府に依存しがちな住 民が、その慣習を打破して最大限に協力した成功事例として高く評価されているプロジェクトで ある。

3−2 ドナーによる取り組み 

対チュニジア支援総額は表

3-1

のとおりであり、二国間支援においてはフランスが圧倒的な規模 を誇る。それに続くドナーは日本、カナダを除き全てが欧州のドナーである。また、多国間支援 では欧州委員会(Commission of the European Communities: CEC)が他の国連機関を大きく引き離 して

1

位となっている。特に

CEC

は、

1995

年のバルセロナ宣言 を受けて、

1996

年から支援額が

3

倍に増加しており、

1997

年度において、

2

位の世界食糧プログラム(World Food Programme: WFP)

の支援総額の約

50

倍もの支援を実施している。

70

  1位  2 位  3 位  4 位 

<二国間ドナー> 

1995  フランス  スペイン 

(8.1) 

ベルギー 

(5.5) 

オランダ  3-1  対チュニジア支援主要ドナー(ODA純総額:百万ドル)

5 位  スイス 

(86.3)  (3.3)  (1.2) 

フランス  1996 

(58.8) 

ベルギー 

(9.9) 

スペイン 

(11.5) 

オランダ  カナダ 

(2.3) 

1997  フランス 

(60.3)  (11.5) 

ドイツ 

(9.9) 

スペイン 

(9.7) 

ルクセンブルグ 

<多国間ドナー> 

1995  CEC 

(30.3)  (3.9) 

UNTA 

(2.6) 

UNFPA 

(2.0) 

IFAD  1996  CEC 

(113.7) 

WFP 

(5.4)  (2.4) 

UNDP 

(1.5) 

UNTA 

(1.0) 

CEC 

(137.7) 

WFP 

(2.8) 

UNTA 

(1.7) 

(3.1) 

日本 

(4.5) 

WFP 

(1.8) 

UNFPA 

UNDP  UNICEF  1997 

(1.6)  (1.0) 

出所:外務省、ODA白書1999年下巻、p. 345。

1

章および第

2

章で概観したとおり、チュニジアは安定した経済成長と社会セクターへの重視 により、1975年以降貧困削減に一定の成果を収めてきたといえる。こうした政策は政府自らのイ ニシアティブにより実行されてきたことから、チュニジアの貧困削減については

ODA

支援の果た してきた役割は比較的小さいと言える。また、第

2

章に見たとおり、政府自らが募金等の民間資 金を動員する等の資金運用を上手く操作してきたことから、チュニジア政府は貧困削減について 外部資金に頼るという意識を持ち合わせていない。

こうした背景から、対チュニジア支援において貧困削減を支援の中枢に据えているドナーは殆ど 存在しない。唯一、貧困削減を支援目的としている

UNDP

についてもその支援額はわずかであり、

プロジェクトも

1

件のみである。なお、日本の援助に関しては、チュニジアは一般無償対象外国 であるが、小学校建設等による国家連帯基金の活動支援やリプロダクティブヘルス分野等、貧困 削減に関連した支援も一部実施してきた。以下、貧困削減という視点から支援を展開してきた

UNDP、世界銀行による支援状況とともに CEC(EU)の支援状況を概観する。なお、二国間ドナ

ー最大のフランスについては貧困削減を目標としておらず、また関連支援を実施する予定もない

70 EUと地中海地域における安定化のための経済協力合意(Association Agreement)

ことから同章においては単独では取り挙げず、EUとの共同支援について言及するに留める 。 71

1)UNDP 

UNDP

の対チュニジア支援総額は年間で百万ドルと小額であるが、唯一のプロジェクト である

「社会経済的再統合および統合のための情報システムプロジェクト(Système d’Information sur la

Réinsertion et l’Insertion Socio-Economique: SIRISE)

」は政府の貧困削減戦略のために非常に重要な 意味を持っている。これは、第

2

章においても既述した、社会事業省が中心に行っている社会福 祉・支援関連の各種プログラムや国家連帯基金、BTS、地域開発プログラム等について、各プロ グラムのターゲット層を明確化し正確にモニタリングしていくためのシステム作りを手がけるも ので 、

1999

年から

3

年間の予定で実施されている 。問題意識としては、チュニジアにおいて実 施されている数々の社会開発プログラムのターゲッティングが的確に実施されておらず、一部の 人口が便益を受けている状況を改善し、プログラムの効果が全対象人口に行き渡ることを目的と している。

72

73 74

SIRISE

のコンポーネントとしては、①様々なプログラムによる情報へのアクセスを整備するため

のシステム構築(System of Aid towards Orientation:SAO)、②PNAFNプログラムのマネージメン ト能力強化のための情報システム構築(System of Information for the Active Treatment of Poverty:

SITAP)

、③地方、地域、国レベルにおける支援について的確なターゲッティングを行うための様々

なプログラム間の計画・調整機能強化情報システム構築(System of Information for Programmes for

Integration: SIPI)

、④公共および民間セクター、

NGO

等のマネージメントの基礎形成過程に対する

支援が含まれている。こうした情報構築システムは積極的な貧困解決(Traitement Actif de la

Pauvrete: TAP)と呼ばれ、一律に支援対象となる貧困世帯を認定する従来の方法に代わり、貧困

世帯の中における様々な人々の潜在能力に注目しながら各プログラムの対象人口を絞っていく手 法である。また、貧困層であるにも拘わらず社会福祉支援プログラムの便益を受けていない人口 についてもこうした様々な指標を駆使してモニタリングを行い、貧困世帯の動向を常に把握する ことを目標としている。

75

76

なお、UNDPは、国別人間開発報告書の第

2

版 を77

2001

6

月に発行予定であり、テーマとして プロジェクトの進捗状況としては、1999 年に貧困削減・社会政策評価 を行い、この結果を受け てソフトウェアシステムを構築した。そしてチュニス県の

Tunis、 Ariana、北東部の Zaghouan

3

パイロット地域において、各種プログラムのターゲット層に係る調査を行った。これによりさら にシステムが見直され、2000 年

10〜11

月に各地方に配属されている社会事業省職員やソーシャ ルワーカーを主な対象とした研修員研修が実施された 。2001 年末にはこの研修結果を受けてプ ログラムを実施し、その評価を行うところまで進捗する予定である。

71 貧困削減に間接的影響を及ぼす支援としては、第2章で言及した地域開発プログラム(PDRIおよびPRUI)のインフラコンポ ーネント(電化、給水、排水、道路修繕等)を支援している。

72 この他、UNDPNGOへの直接支援を行っているが、プロジェクトとしては唯一のものである。

73 UNDPはソフト支援を担当しており、コンピュータ等の購入についてはチュニジア政府が負担している。

74 支援対象官庁は社会事業省。

75 この調査結果は、報告書(PNUD, Perception, Analyse et Evaluation des Politiques, des Stratégies et des Programmes de Lutte Contre la Pauvreté et de Promotion Sociale en Tunisie, 1999)にまとめられた。

76 2000102UNDP, Mr. Ridha Zattal, Ajoint du Representant Residentとの面談時予定による。

77 1版は1999年に出版済み。

ドキュメント内 貧困アセスメント作成調査報告書 (ページ 58-84)

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