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包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の重症化予防における理学療法

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 46 巻第 6 号 457 包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の重症化予防における理学療法 ∼ 464 頁(2019 年). 457. 理学療法トピックス シリーズ 「糖尿病重症化予防と理学療法」. 連載第 5 回 包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の. 重症化予防における理学療法* 林   久 恵 1) 大塚未来子 2). はじめに. 行った調査結果を紹介する。.  糖尿病患者の動脈硬化は加齢変化を大幅に上回る 速度で進行することが知られており,末梢動脈疾患. 重篤な下肢血流障害の病態・重症度分類. (Peripheral arterial disease:以下,PAD)に起因する.  重篤な LEAD の臨床症状は安静時疼痛と足部の潰瘍・. 臓器障害は直接的な運動制限・活動制限につながる。し. 壊死であり,重症下肢虚血(Critical limb ischemia:以下,. たがって,糖尿病患者におけるこれらの合併症の重症化. 2) CLI)に分類される病態である 。安静時疼痛は Fontaine. 予防は理学療法においても重要な課題となっている。. 分類Ⅲ,Rutherford 分類 4,潰瘍・壊死は Fontaine 分類. 1).  ESC のガイドライン(2017) では PAD は冠動脈疾. 2) 。 Ⅳ,Rutherford 分類 5/6 に該当する (表 1). 患と大動脈疾患を除くすべての急性および慢性動脈疾患.  足部潰瘍の原因が LEAD のみであれば,下肢動脈. の総称であり,下肢動脈疾患(Lower extremity artery. の血行再建の成功により下肢の予後改善が期待できる. disease:以下,LEAD)とは明確に区別されるべきで. が. あることが示されている。LEAD に加えて感染等の下. あったり,潰瘍の深さや感染等の影響によって治癒が遷. 肢切断リスクを有する場合は包括的高度慢性下肢虚血. 延することも多い。このように虚血以外にも下肢切断リ. (Chronic limb-threatening ischemia: 以 下,CLTI) と. スクを有し,治療的介入が必要な状態は CLTI として,. 3)4). ,糖尿病患者の LEAD は完全血行再建が困難で. 1)5). 。CLTI の重症度は WIfI 分類. 6). しての対応が必要であり,下肢動脈の血行再建(下肢血. CLI とは区別される. 流の改善)と足部潰瘍の治療が行われる。以前は,この. を使用し「潰瘍(Wound; W)」 「虚血(Ischemia; I)」 「感. ような下肢の治療目標は大切断を回避すること(Limb. 染(foot Infection; fI) 」の重症度を Grade 0-3 で評価す. preservation, Limb salvage)であったが,治療技術の. る(表 2)。. 革新と潰瘍の治癒率の向上により,治療目標は「下肢機 能を保つこと」に変わりつつある。この流れを受けて, 下肢機能を守る「理学療法」が必要とされるようになっ. CLTI に対する治療の変遷と理学療法  CLI とは,重篤な下肢血流障害(足関節血圧 50 mmHg. たが,本領域における理学療法士のかかわりは十分とは. 未満,または足趾血圧 30 mmHg 未満)により虚血症. 言い難いのが実情である。. 状を呈する状態であり.  そこで本稿では,重篤な LEAD に対する基本治療の. treatment:以下,EVT)あるいは外科的血行再建術. 変遷と CLTI の重症化予防に向けた運動療法の適応およ. (Lower extremity bypass:以下,LEB)により下肢血. び実施上の注意点について概説し,同患者に対する理学. 流が改善されない状態では(通常 6 ヵ月以内に大切断を. 療法士のかかわりについて日本糖尿病理学療法学会が. 要するため) ,運動を控え安静を保持することが推奨さ れてきた。腸骨・大. *. Physical Therapy in Aggravation Prevention of Chronic Limbthreatening Ischemia (CLTI) 1)星城大学 (〒 476‒8588 愛知県東海市富貴ノ台 2‒172) Hisae Hayashi, PT, PhD: Seijoh University 2)大分岡病院 Mikiko Otsuka, PT: Oita Oka Hospital Rehabilitation Center キーワード:重症下肢虚血,包括的高度慢性下肢虚血,下肢慢性創 傷,重症化予防. 2). ,血管内治療(Endovascular. 領域の血行再建が主流であった時. 代は,膝下領域の血管病変が多い高齢者や糖尿病患者 において,血行再建術後も下. 7). 動脈の残存狭窄や足部潰. 瘍がある場合は運動が推奨されることはなかった。しか し,膝下領域の血行再建(distal bypass や下. 動脈へ. の EVT)が広く行われるようになり,虚血による大切 断を回避できる症例が増えた一方で,足部潰瘍の完治を.

(2) 458. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 表 1 下肢虚血の重症度分類(Fontaine 分類/ Rutherford 分類) Rutherford 度. 臨床所見. 度. 群. 臨床所見. Ⅰ. 無症候. 0. 0. 無症候. Ⅱa. 軽度の跛行. I. 1. 軽度の跛行. Ⅱb. 中程度から重度の跛行. I. 2. 中等度の跛行. I. 3. 重度の跛行. Ⅲ. 虚血性安静時疼痛. II. 4. 虚血性安静時疼痛. Ⅳ. 潰瘍や壊疽. III. 5. 小さな組織欠損. III. 6. 大きな組織欠損. 文献 2)より引用 左に Fontaine 分類,右に Rutherford 分類を示す. Fontaine 分類は臨床で広く使用されている.Rutherford 分類では跛行が 3 段階,組織欠損が 2 段階に分類される.. 表 2 CLTI の重症度分類(WIfI 分類). 虚血. 潰瘍. 感染. Grade 0. Grade 1. Grade 2. Grade 3. ABI ≧ 0.80. ABI 0.6 ‒ 0.79. ABI 0.4 ‒ 0.59. ABI ≦ 0.39. AP >100 mm Hg. AP 70 ‒ 100 mm Hg. AP 50 ‒ 70 mm Hg. AP < 50 mm Hg. TP, tcPO2 ≧ 60 mm Hg. TP, tcPO2 40 ‒ 59 mm Hg. TP, tcPO2 30 ‒ 39 mm Hg. TP, tcPO2 < 30 mm Hg. 潰瘍なし. 下肢末端に限局した浅く・ 小さい潰瘍. 腱・骨・関節に達する深い 潰瘍. 広範囲におよぶ深い潰瘍. 壊疽なし. 壊疽なし. 足趾に限局した壊疽. 広範囲におよぶ壊疽. 感染徴候なし. 上皮および皮下組織の局所 感染. 皮下組織の深層におよぶ局 所感染. 局所感染に全身性炎症反応 症候を伴う. 文献 6)より引用 ABI:上腕足関節血圧 AP:足関節血圧 TP:足趾血圧 tcPO2:経皮的酸素分圧. 目的とした術後の活動制限によって,下肢機能喪失リス 8). クを高める点が問題視されるようになった 。  この問題に対し 2011 年に公開された研究報告. ない。そのためには,基本治療を理解し,運動の適応や 運動時に配慮が必要な点を押さえておく必要がある。. 9). で. は,虚血性潰瘍を有する症例を対象に,LEB 後に歩行 練習・物理療法・日常生活指導を含む包括的なリハビリ. CLTI に対する基本治療と理学療法実施時の 注意点. テーション(Vascular rehabilitation:VR)を行った場.  CLTI に対する最新の治療指針として 2019 年に公開. 合,LEB のみの場合と比較し歩行機能の改善・ADL お. された Global vascular guideline. よび QOL の向上が得られたことに加え,全例で潰瘍治. よび潰瘍治療の適応や進め方が詳細に示されている。理. 癒が確認されたことが示され,血行再建術後のリハビリ. 学療法は,血行再建術により可能な限り下肢虚血の改善. テーション(以下,リハ)の必要性および安全性が認識. が得られた状況で行うことが望ましいが,血行再建が困. されるようになった。. 難な場合においても緩和的にかかわる機会がある。ま.  以上の経過により,血行再建術後,足部潰瘍の治療過. た,術後は足潰瘍の有無によっても治療経過が異なる。. 5). には,血行再建術お. 程においてリハ(特に下肢機能を守るための理学療法) の需要が高まりつつあり,専門医の間でも術前に行う下. ○血行再建術後に理学療法を実施する際の注意事項. 肢機能評価・ADL 評価は治療方針の決定や到達目標の.  EVT により浅大. 動脈領域∼大. 膝窩動脈のステン. 10). ト留置を伴う血行再建が行われた場合,運動時に当該領. しかし,術前術後の評価や理学療法の実施に伴い再建さ. 域に過度な負荷がかからないよう配慮が必要である。血. れた血流を阻害したり,潰瘍を悪化させたりしてはなら. 管内に留置されているステントが関節運動によって繰り. 設定に際し重要な情報となることが啓発されている. 。.

(3) 包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の重症化予防における理学療法. 459. 表 3 外科的血行再建術の術式と運動療法・生活指導に関する注意. 文献 16)より改変引用. 返し圧迫されたり,ねじられたりすることで金属疲労. 上肢に形成される。同術創が難治化することもあるた. が蓄積し破損すること(stent fracture)が知られてお. め,治療経過に注意が必要である。また,LEB 術後は,. り. 11). ,破損に伴い血管壁に瘤や解離が生じ,下肢血流. が阻害されることがある。発生頻度は大 37.2%と高く. 膝窩動脈で. 12). ,破損原因はステントの形状や留置部. 下肢末梢への血液供給量が増加し,足部や下. に浮腫が. 出現することも多い。術後,生活動作や歩行時間の延長 に伴い下肢の浮腫が増強する場合は,下. を挙上し浮腫. 位の他,日常生活の活動量などが影響すると考えられて. の軽減を促す。一方,術後に活動量の低下が著明な症例. いる。特に大. については,対側下肢の虚血が進行することもあるた. 膝窩動脈は膝関節の屈曲に伴う血管の形. 態変化が大きいことも検証されており. 13). ,対応可能な. ステントの開発も進んでいるが,すべての大. め,定期的な対側下肢の血行動態評価は不可欠である。. 膝窩動脈.  下肢の血行動態評価については生理検査の結果を確認. 病変に対応できる万能なデバイスはないことも報告され. することも重要であるが,理学療法室でも評価は実施す. 14). 。したがって,理学療法実施時はステントの. べきである。特に最新の検査結果と対象者の症状が乖離. 部位や運動時の注意事項などを担当医に確認し,適切な. している場合にはかならず足背動脈・後脛骨動脈・グラ. 運動様式を選択することが望ましい。下. ている. 領域について. フトに触れ拍動を確認する。超音波ドプラ血流計があれ. はステントが保険償還されないため,経皮的血管形成術. ば,上腕・足関節の収縮期血圧を測定し足関節上腕動脈. (Percutaneous transluminal angioplasty:PTA) が 行. 血圧比(Ankle-brachial index:ABI)を算出すること. われるが,再狭窄率が高いことも知られている。治療対. で虚血の存在を確認できる. 17). (図 1)。. 象領域が圧迫されるような姿勢(正座や胡坐,足を組む 等)は避けるよう生活指導を行う。.  血行再建術後,足潰瘍および運動を制限する併存疾患.  LEB により血行再建が行われた場合は,グラフトの. がない場合は,再建された血流の維持および PAD のリ. 圧迫や術創の哆開が起きないよう配慮が必要である。術. スクファクター改善を目的とした運動療法を行う。活動. 式によって,グラフトの走行や術創の位置が異なるた. 量は段階的に増加させ,5 分程度の連続歩行が可能とな. め,運動時の注意事項や避けるべき生活動作も異なる点. れば,歩行トレーニングを積極的に進める。強度・頻. に注意する. 15)16). (表 3)。. 度・時間については,各種ガイドライン. 2)18‒20). で提示.  膝下動脈領域の LEB は,自家静脈がグラフトとして. されている間欠性跛行に対する歩行トレーニングの推奨. 使用されるため,グラフト採取に伴う術創が下肢または. 事項が参考になる(表 4)。歩行時は足部に潰瘍が形成.

(4) 460. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 図 1 末梢動脈の触知部位と ABI 判定基準 a.臥位にて足背動脈および後脛骨動脈を触知する.拍動の触知は第 2・3・4 指をあてて確認する. b.足関節上腕動脈血圧比(Ankle-brachial index: ABI)は,上腕動脈および足背/後脛骨動脈の 収縮期血圧をドプラ血流計にて測定し,上記式にて算出する.. 23). されることを予防するために適切なフットウェアを着用. いる. 。3 ∼ 4 週間にわたり治療器を 24 時間接続して. する(シリーズ 4「靴のフィッティング指導」参照) 。. おく必要があり,治療部位によっては荷重ができないこ ともある。週単位で荷重や活動制限が必要な場合は治療. ○潰瘍治療過程で理学療法を実施する際の注意事項  足潰瘍がある場合は,血行再建術後も潰瘍に対する治. 期間中に可動域制限(特に足関節)が生じないように下 筋のストレッチを行う。. 療(疼痛管理含む)を継続する必要があり,その過程で 理学療法を行う際の注意事項も治療毎に異なる(図 2)。. ・植皮術・皮弁形成術は,潰瘍の表面積が広く上皮化に 長い期間が必要な場合,閉創を目的に行われる。移植す. ・デブリードマンは,壊死組織や感染した組織で正常に 21). る皮膚(skin graft)が対象者自身のものか人工物かに. であり,潰瘍の治. よって,また遊離皮弁か有茎皮弁かによって固定期間が. 癒遅延原因となる問題を改善するための処置である。外. 異なるが,術後は皮膚の生着を阻害するような関節運動. 科的デブリードマンが実施された直後に患部に負荷がか. や患部に圧迫・ズレの力が加わる動作を避け,生着が. かると出血や疼痛が誘発されるため,直後の運動は避け. 確認されても組織が脆弱である点を考慮し患部を保護. 適正免荷を徹底する。患部が足底荷重面である場合は,. する。. 復さない部分を取り除く医療行為. 荷重応答時の創変化を事前に徒手抵抗下で確認し慎重に 荷重を開始する。. ・神経ブロックは,虚血性潰瘍の疼痛を抑制するために カテーテルを留置し持続的に該当する神経の伝達機能を. ・局所陰圧閉鎖療法(Negative pressure wound therapy:. 遮断するものである。鎮痛効果は高いが,感覚低下や随. NPWT)は,治療対象創に閉鎖環境で陰圧を加え,滲. 意運動の低下が生じるため,活動時はブロック対象領域. 出液のうっ滞を防ぎ,創の辺縁を引き寄せ,血流を増加. の擦過傷や転倒に注意が必要である。随意運動の低下が. させて潰瘍治癒を促す治療である. 22). 。動脈性潰瘍や糖. 尿病性潰瘍の治癒促進効果が得られることも報告されて. 著明な場合は,可動域確保を目的とした他動運動を行う (感染にて関節運動を避けるべき状態を除く)。.

(5) 包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の重症化予防における理学療法. 461. 表 4 各種ガイドラインで推奨されている歩行トレーニング. ガイドライン. 末梢閉塞性動脈疾患 の治療ガイドライン (JCS2015 年改訂版). TASC Ⅱ. 公開年. 2007. 運動様式. 2016 AHA/ACC Guideline on 心血管疾患におけるリハビリ the management of patients テーションに関するガイドラ with lower extremity PAD: イン(2012 年改訂版) Executive summary. 2015. 2012. 2016. トレッドミル歩行. トレッドミル歩行. トレッドミル歩行. トラック歩行. 自転車エルゴメータ. トラック歩行. ペースメーカ付きのトラック 歩行による疼痛が中等度に達したら休む. プロトコル. 運動 - 休む - 運動のパターンを繰り返す. 負荷強度. 傾斜 12%,速度 2.4 km/h で 跛行症状が 3 ∼ 5 分以内 跛行を生じるに十分な 「ややつらい」程度(New 跛行症状が 3 ∼ 5 分以内に生 に生じる程度の速度と 強度 Borg 指数 6 ∼ 8/10)の下肢 じる程度の速度と傾斜 傾斜 疼痛が生じるまで継続. 10 分以上歩ける 場合の負荷強度. 3.2 km/h で歩けるよう であれば勾配を増加す る。歩行速度 4.8 km/h を目標とする. 1 回あたりの運動 時間. 最初は 35 分,患者が慣 れるにつれ 50 分まで延 長する. 頻度. 3回/週. 3回/週. 1 ∼ 2 回 / 日,3 回以上 / 週 3 回以上 / 週. 治療期間. 3 ヵ月. 3 ヵ月以上. 3 ∼ 6 ヵ月. 3.2 km/h とするか傾斜を強 くする 歩行速度 4.8 km/h を目標と する 30 分∼ 1 時間 / 回. 30 分∼ 1 時間 / 回. 35 ∼ 45 分 / 回. 12 週以上. 図 2 潰瘍の治療と理学療法実施時の注意点. ○ CLTI の予後に影響を及ぼす合併症と理学療法の課題. ザード比 2.36, 95% 信頼区間 1.13 ‒ 4.92, p = 0.22)であ. ・人工透析. ることが報告されている.  透析患者は重篤な LEAD の比率が高く予後も不良で. て下肢切断・死亡リスクの評価が Class Ⅰ推奨事項とさ. あることが知られている。人工透析は,膝窩動脈以遠の. れているが. LEB 術後の死亡・下肢切断を予測する独立した因子(ハ. ためリハ目標も設定しにくいことが多い。臨床では医師. 24). 。現実的な治療計画におい. 5). ,透析患者については,予後予測が難しい.

(6) 462. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 文献 16)より引用. 図 3 PAD for HD risk score. や豊富な診療経験をもつ関連職種と情報を共有すること. 告されており,CLTI の集団においてはサルコペニア比. が基本であるが,透析患者の LEB 後の下肢切断・死亡. 率がより高いことが予測される。また,前述のとおりハ. 16)25). にて算出するこ. イリスク集団である透析患者はサルコペニア併存率が. とも可能である(図 3) 。病態が変化した場合は,スコ. 40%であり,糖尿病は同患者のサルコペニアに寄与する. アを算出し直し,リスクの変化に対応した目標を再度設. 独立した因子であること(オッズ比 3.11; 95% 信頼区間. 定する。. 1.63 ‒ 5.93; p< 0.001)また,糖尿病は死亡に関与する因. リスクは PAD for HD risk score. 子であること(ハザード比 2.39; 95% 信頼区間 1.51 ‒ 3.81; ・糖尿病. p< 0.001)が報告されている.  糖尿病合併 LEAD の特徴として,膝下病変が多いこ 8). 30). 。以上より,下肢虚血. に代謝性疾患の影響が重なることで,サルコペニアのリ. 。また遠位動脈において血管壁. スクが高くなり,機能低下や生命予後悪化が加速する症. の石灰化が生じている症例では,動脈狭窄が存在して. 例が一定割合存在することを認識し,理学療法を計画す. いても足関節血圧の値が高くなり(偽陰性),虚血の発. る必要がある。. とが指摘されている. 見が遅れることがある。加えて,EVT や LEB により 血流が改善されても,細小血管障害により微小循環領. ・認知症 . 域の血行動態が改善されず,潰瘍の治癒が遷延するこ.  認知症患者は血行再建後の合併症のリスクを高め,入. ともある。したがって,糖尿病合併例においては,皮. 院費用を増加させることが報告されている. 膚表在の血行動態を評価するための指標として皮膚灌. 程における患部の保護(off − loading の遵守)や回避す. 流圧(Skin perfusion pressure:以下,SPP)または経. べき姿勢の理解も難しいため足潰瘍の治療期間も長くな. 皮的酸素分圧(Transcutaneous oxygen tension:以下,. り,治癒後の再発も予防しにくい。これらの特徴を踏ま. tcPO2)の測定値が有用である。足部の潰瘍治癒には. えてリハ目標を設定する必要がある。. SPP が 40 mmHg 以上 34 mmHg 以上. 31). 。治療過. 26). ,断端(創)治癒には tcPO2 が. 27). 必要であるとされている。. ・対側下肢のリスク管理.  上記の末梢循環の問題に加えて,末梢神経障害に起因.  CLTI の治療過程では,大切断(下. する問題も CLTI の理学療法を進めるうえでは注意が必. の切断)を回避するため,小切断(足趾や足部の切断). 要である(シリーズ 4「理学療法評価」 「DM foot の理. が施行される。小切断後は歩容の左右非対称性が顕著と. 学療法」参照)。. なり,対側下肢にかかる負荷も大きくなるため,対側下 肢の評価および保護が不可欠である. ・サルコペニア  PAD 集団の 25% にサルコペニアがみられ,サルコペ. または大. 領域. 32). 。. CLTI に対する理学療法士のかかわり. ニア群では6MD が有意に短く,間欠性跛行出現後疼痛.  AHA/ACC(2016 executive summary)20)には LEAD. が消えるまでの回復時間(recovery time)も有意に長. の潰瘍には集学的治療が有用であること,またそのチー. 28). 。また,虚血性潰瘍を呈する. ム構成員に理学療法士(以下,PT)が含まれることが. 重症例では,潰瘍のない LEAD と比較し第 3 腰椎レベ. 明記されている。PT は,全身におよぶ血管病変の状態. いことが示されている. ルの体幹筋の断面積が有意に低下していること. 29). が報. とそれに附随する病態を考慮した運動を行う役割が求め.

(7) 包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の重症化予防における理学療法. 463. ⢾ᒀ⑓㊊⑓ኚࡢデ⒪࡟࠿࠿ࢃࡗ࡚࠸࡞࠸⌮⏤. 文献 34)より引用. 図 4 糖尿病足病変・糖尿病腎症患者における理学療法士のかかわりの実態調査 公益社団法人日本理学療法士協会/日本糖尿病理学療法学会会員 4,680 名(2016 年 12 月末日の時点) を対象に下肢慢性創傷(糖尿病足病変含む)の診療へのかかわりについて web アンケート調査が 行われた. 有効回答 1,363 件(回収率 29.1%)の内,下肢慢性創傷に対する理学療法実施率は 498 件(36.5%) であった.理学療法士が糖尿病足病変の診療にかかわっていない理由についての回答は「医師の処 方がない」が 75.5%, 「医師,看護師に任せている」が 19.4%, 「足病変の病態を理解していない」 が 15.2% であった.. られており,虚血以外の問題が混在する潰瘍治療過程に. ためには,理学療法を行っていない理由(図 4)として. おいて PT の専門性を駆使して対応することにより対象. 挙がっていた, 「医師看護師に任せている 19.4%」,「足. 者の予後改善に貢献できると考える。. 病変の病態を理解していない 15.2%」についての対策が.  2017 年に米国 PT 協会と ACEWM(academy of clinical. 必要であると推察された. electrophysiology & wound management)創傷管理グ. 士協会は「理学療法普及のための講習会・研修会事業」. ループの連名で公開されたホワイトペーパー. 33). には,. 35). 。この調査の後,理学療法. を開始した。同事業は足病変に対する理学療法の基礎知. 創傷治療における PT の役割が病態毎に提示されてお. 識を広く伝達することを目的とした「糖尿病足病変予防. り,創傷治療にかかわる PT の教育課程や州ごとに異な. の理学療法研修会」と慢性創傷患者に対する理学療法の. る PT の職務範囲・保険償還に関する更新情報を随時確. 課題を共有し解決することを目的とした「足潰瘍治療期. 認する方法が明記されている。一方,日本においては. の理学療法研修会」から構成されている。この事業を通. 末梢循環障害に伴う下肢慢性創傷や糖尿病足病変に対. じて,CLTI の診療にリハが必要であることを認識して. する PT のかかわりは十分とはいえないのが実情であ. いる専門医・関連職種と連携し,術後の機能改善から虚. る。2017 年に日本理学療法士協会から公開された調査. 血の進行・潰瘍再発の早期発見,重症化予防に至るまで. 結果. 34). では,「下肢慢性創傷の診療にかかわっている」. と解答した PT は 36.5%(有効回答数 1,365 件)であり, 糖尿病足病変の診療にかかわっていない理由としては, 「医師からの処方がない」が 75.5%を占めていた(図 4) 。. チーム医療に不可欠な役割を担う PT が増えることが期 待される。. ま と め. 下肢慢性創傷および糖尿病足病変は重症度によって優先.  本稿では,CLTI の重症化予防に向けた理学療法につ. すべき治療が異なることに加え,併存疾患も多様である. いて,特に血行再建術後に理学療法を行ううえでの注意. ため主たる診療科が多岐にわたる。したがって,理学療. 点や当該診療への理学療法のかかわりの実態を提示した。. 法の診療報酬算定も「心大血管」 「運動器」 「脳血管」 「廃.  血行再建術後や積極的な創傷治療後は病態が改善され. 用」と様々であり,処方は足部創傷に対する理学療法と. ており治療上の問題も関連職種間で共有できるのでかか. してではなく足部創傷にも配慮が必要という形で出てい. わりやすい。しかし,術後潰瘍が治癒した後は,再発予. るものと予測された。また,同調査では糖尿病足病変の. 防が課題となることを強調したい。PT が担うべくより. リスク把握に向けた理学療法評価の実施状況も提示され. 重要な役割は,CLTI の治療が一旦完結した症例や,下. ており,関節可動域や末梢神経障害,変形については回. 肢虚血や慢性創傷の治療歴はなくとも発症リスクが高い. 答者の 6 割以上が評価を実施していたのに対し,下肢虚. 症例の足部の異変を理学療法場面で早期に発見し,重症. 血や足底圧の評価といった疾患特異性を考慮した項目は. 化を予防していくことであると考える。. 実施率が低いことが確認された。この傾向を変えていく.  PT が虚血の有無を見極め,創傷難治化予防に向けて,.

(8) 464. 理学療法学 第 46 巻第 6 号. 関連職種に情報を共有するゲートキーパーとしての役割 を担うことができれば,PT は創傷治療のチーム医療に 不可欠な存在となるであろう。 文  献 1)Aboyans V, Ricco JB, et al.: Editor’s Choice - 2017 ESC guidelines on the diagnosis and treatment of peripheral arterial diseases, in collaboration with the European Society for Vascular Surgery (ESVS). Eur J Vasc Endovasc Surg. 2018; 55: 305‒368. 2)Norgren L, Hiatt WR, et al.: Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease (TASC II). J Vasc Surg. 2007; 45 Suppl S: S5‒S67. 3)van Haelst STW, Teraa M, et al.: Prognostic value of the society for vascular surgery Wound, Ischemia, and foot Infection (WIfI) classification in patients with no-option chronic limb-threatening ischemia. J Vasc Surg. 2018; 68: 1104‒1113 e1101. 4)Abu Dabrh AM, Steffen MW, et al.: The natural history of untreated severe or critical limb ischemia. 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参照

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