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「HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究」平成24年度報告書

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厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業

HIV 感染症及びその合併症の課題を克服する研究

平成 24 年度 研究報告書

国立病院機構大阪医療センター

HIV/AIDS先端医療開発センター長

白阪 琢磨

(3)

目 次

総括研究報告

1 HIV 感染症及びその合併症の課題を克服する研究

………7

研究代表者:白阪 琢磨(国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS先端医療開発センター) ■

分担研究報告

2 急性感染期の診断・治療での課題に関する研究

………17

研究分担者:渡邊 大(国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部 HIV 感染制御研究室) 3 血友病性関節症に対する間葉系幹細胞治療の開発

………21

研究分担者:竹谷 英之(東京大学医科学研究所附属病院 関節外科) 4 HIV 陽性者の生殖医療に関する研究

………27

研究分担者:久慈 直昭(慶應義塾大学病院 産婦人科) 5 抗 HIV 療法のガイドラインに関する研究

………39

研究分担者:鯉渕 智彦(東京大学医科学研究所附属病院 感染免疫内科) 6 HIV 医療の倫理的課題に関する研究

………43

研究分担者:大北 全俊(大阪大学 文学研究科) 7 HIV 感染者の口腔内免疫に関する研究

………51

研究分担者:吉村 和久(国立感染症研究所 エイズ研究センター) 8 HIV 陽性者の心理学的問題の現状と課題に関する研究

………55

研究分担者:仲倉 高広(国立病院機構大阪医療センター 臨床心理室) 9 HIV 陽性者の心理的負担、および精神医学的介入の必要性とネットワーク形成に関する研究

……77

研究分担者:廣常 秀人(国立病院機構大阪医療センター 精神科) 10 HIV 感染患者における透析医療の推進に関する研究

………81

研究分担者:秋葉 隆(東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科) 11 病病・病診連携の地域モデルの構築 (診療連携システム開発に関する研究)

………87

研究分担者:横幕 能行(国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科) 12 地域における HIV 診療および福祉連携のあり方に関する研究

………95

研究分担者:高田 清式(愛媛大学医学部附属病院 総合臨床研修センター・感染症内科)

(4)

13 地域 HIV 看護の質の向上に関する研究

………99

研究分担者:佐保美奈子(大阪府立大学 看護学部) 14 HIV 陽性者のセクシャルヘルス支援体制整備に関する研究

………115

研究分担者:井上 洋士(放送大学) 15 心理専門カウンセラーおよびピアカウンセラーの介入に関する研究

………123

研究分担者:藤原 良次(特定非営利活動法人りょうちゃんず) 16 当事者支援に関する研究

………135

研究分担者:桜井 健司(特定非営利活動法人 HIV と人権・情報センター) 17 HIV 陽性者の歯科診療の課題と対策に関する研究

………139

研究分担者:中田たか志(中田歯科クリニック) 18 神奈川県における検査と医療連携における NPO の役割に関する研究

………147

研究分担者:井戸田一朗(しらかば診療所) 19 HIV 陽性者ケア等に関する NPO/NGO の連携に関する研究

………157

研究分担者:中村 正(公益財団法人エイズ予防財団) 20 長期療養患者のソーシャルワークに関する研究

………167

研究分担者:小西加保留(関西学院大学 人間福祉学部) 21 長期療養者の受入れにおける福祉施設の課題と対策に関する研究

………177

研究分担者:山内 哲也(社会福祉法人武蔵野会 八王子生活実習所) 22 長期療養看護の現状と課題に関する研究

………181

研究分担者:下司 有加(国立病院機構大阪医療センター 看護部) 23 携帯を使った服薬支援“だ・メール”および検査予約システムの開発

………195

研究代表者:白阪 琢磨(国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS 先端医療開発センター) 研究協力者:幸田 進(有限会社 ビッツシステム) 24 Web サイトを活用した情報発信と情報収集、閲覧動向に関する研究

………199

研究代表者:白阪 琢磨(国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS 先端医療開発センター) 研究協力者:湯川 真朗(有限会社キートン) 25 「HIV 検査普及に対する意識調査」に関する研究

………221

研究分担者:白阪 琢磨(国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS 先端医療開発センター) 研究協力者:谷口 公敏(株式会社エフエム大阪)

(5)
(6)
(7)

HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究

研究代表者:白阪 琢磨(国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS 先端医療開発センター) 研究分担者:渡邊 大(国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療 研究部) 竹谷 英之(東京大学医科学研究所 関節外科) 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部 産婦人科) 鯉渕 智彦(東京大学医科学研究所 感染免疫内科) 大北 全俊(大阪大学文学研究科 哲学・倫理学) 吉村 和久(国立感染症研究所 エイズ研究センター) 仲倉 高広(国立病院機構大阪医療センター 臨床心理室) 廣常 秀人(国立病院機構大阪医療センター 精神科) 秋葉 隆(東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科) 横幕 能行(国立病院機構名古屋医療センター 感染症内科) 高田 清式(愛媛大学医学部付属病院 総合臨床研修センター) 佐保美奈子(大阪府立大学大学院 看護学研究科) 井上 洋士(放送大学 教養学部) 藤原 良次(特定非営利活動法人りょうちゃんず) 桜井 健司(特定非営利活動法人 HIV と人権・情報センター) 中田たか志(中田歯科クリニック) 井戸田一朗(しらかば診療所) 中村 正(公益財団法人エイズ予防財団) 小西加保留(関西学院大学 人間福祉学部) 山内 哲也(社会福祉法人武蔵野会 八王子生活実習所) 下司 有加(国立病院機構大阪医療センター 看護部) 研究目的 HIV 感染症は HAART によって医学的管理ができる 慢性疾患となったが、HIV 感染症の治療の分野で克 服すべき課題が山積している。本研究では平成 23 年度に改定されたエイズ予防指針の見直し作業班の 報告に基づき、A.治療・合併症、B.地域の医療の質 の向上、C.陽性者支援のための地域連携、D.長期療 養支援に大別し、課題の抽出と解決方法の提示を目 的とし、最終年度に対策と提言を目指す。 研究方法 目的達成のため今年度に実施した主な研究方法を 次に示す。A-1. 急性感染期の診断・治療での課題に 関する研究(渡邊):急性期治療例における残存プロ ウイルス量の長期観察、A-2. 血友病性関節症に対 する間葉系幹細胞治療の開発に関する研究*, $(竹 谷):血友病患者細胞から誘導した骨髄間葉系幹細胞

の in vitro での軟骨分化能等の検討、A-3. HIV 陽 性者の生殖医療に関する研究*, $(久慈):精液中抗 HIV 剤等の測定および洗浄精液を用いた不妊治療の 事業化の検討、A-4. HIV 感染者の口腔内免疫に関す る研究*(吉村):唾液のサイトカインや口腔病原微 生物量の測定と口腔症状の関連性の解明、A-5. HIV 医療の倫理的課題に関する研究*(大北):課題把握 のため海外ジャーナル等の文献調査および聞き取り 調査の実施、A-6. 抗 HIV 療法のガイドラインに関 する研究(鯉渕):国内外の知見を基にガイドライン を改訂。B-1. HIV 陽性者の心理学的問題と対応に関 する研究(仲倉):HIV 陽性者の神経心理学的障害出 現頻度の調査継続と日常診療で実施できる簡便なス

1

(8)

クリーニング検査の開発、B-2. HIV 陽性者の心理的 負担、および精神医学的介入の必要性とネットワー ク形成に関する研究(廣常):初診 1 年後のメンタル ヘルス調査の継続と課題の抽出および研修会参加者 を対象としたネットワーク構築、B-3. HIV 感染患者 における透析医療の推進に関する研究(秋葉):拠点 病院等を対象に透析医療の困難とサポート状況に関 するアンケート調査の実施、B-4. 病病・病診連携 の地域モデルの構築(横幕):愛知県での拠点病院間 での光回線を用いた診療連携にクリニックを加えた 連携システムの構築、B-5. 地域 HIV 看護の質の向 上に関する研究(佐保):看護研修会の実施と院内研 修向け教材の開発、B-6. HIV 陽性者のセクシュアル ヘルス支援体制整備に関する研究(井上):セクシュ アルヘルス研修会スキルアップコースの開発。C-1. 心理専門カウンセラー、ピアカウンセラーの介入に 関する研究(藤原):薬害 HIV 感染被害者の心理的現 状把握のためのインタビュー調査準備とピアカウン セリングによる行動変容支援プログラム開発、C-2. 当事者支援に関する研究(桜井):保健所等で発見さ れた陽性者の受診行動の阻害因子と促進因子の解明 およびマニュアル『HIV 検査相談要確認・陽性告知 のポイント』の改訂、C-3. HIV 陽性者の歯科診療の 課題と対策$(中田):歯科診療ネットワーク形成を 目指した介入、C-4. 神奈川県における検査と医療 連携における NPO の役割に関する研究*,$(井戸 田):MSM のコミュニティー形成の少ない地域での検 査、啓発手段の開発と解決に向けた行政、医療機関 との連携、C-5. HIV 陽性者ケア等に関する NPO/NGO の連携に関する研究*(中村):NGO へのヒアリング とメーリングリストの運営。D-1. 長期療養患者の ソーシャルワークに関する研究(小西):精神疾患等 の障碍陽性者の生活課題をフォーカスグループイン タビューなどによる解明、D-2. 長期療養者の受け 入れにおける福祉施設の課題と対策(山内):福祉施 設の受け入れマニュアルを用いた研修会の実施およ び効果的研修プログラムの検討等、D-3. 長期療養 看護の現状と課題に関する研究(下司):訪問看護ス テーション連絡協議会での訪問看護研修会の実施と メーリングリスト「i-net」の立ち上げ、D-4. 地域 における HIV 診療および福祉連携のあり方に関する 研究(高田):地方の診療モデルとして、HIV 診療の 充実および福祉連携に関し愛媛県および四国の HIV 診療の実態調査と具体的な問題点・改善策の検討。 その他、携帯を用いた服薬支援ツールの改良および 検査予約システム開発、HIV 治療の薬剤情報提供ホ ームページの開発。なお、今年度が初年度の研究に *を、当初の予定あるいは研究目標達成による終了 研究には$を付した。 (倫理面への配慮) 研究実施で、疫学研究に関する倫理指針を遵守し た。個人情報を扱う研究では施設の倫理委員会の承 認後に実施した。 研究結果 今年度の主な結果を以下に示す。A-1. 今年度、 これまでの成果から、感染早期治療 1 例、慢性期治 療 20 例の検体を採取し、残存プロウイルス量および APOBEC type G-to-A 変異への影響につき解析中。 A-2. 血友病患者の骨髄細胞から採取した培養細胞 の増殖能力、表現型、軟骨細胞への分化能は、いず れも健常成人と差違が認められなかった。A-3. LC/MS/MS を用いた測定系を確立中であり、事業化は 模索中である。A-4.所属施設の倫理委員会で審査結 果待ちである。検体からの標的菌の特異的定量法を 開発した。A-5. 文献調査を進行中。生殖補助医療 技術における倫理的配慮等につき聞き取り調査を行 い倫理的課題などを抽出中。A-6. 国内外の知見と 海外のガイドラインを参考に年度内に改訂。B-1. 大阪医療センターでは新規受診患者 428 名中 151 名 に説明を行い 106 名に実施。他施設でも実施中。 B-2. 初診 1 年後のメンタルヘルス調査で収集した 243 例につき解析中。昨年度作成のハンドブックを 協力リストの施設および希望施設(計 430 施設)に 配布し意見を回収予定。B-3. 全国のブロック拠点 病院・中核拠点病院・拠点病院を対象に透析医療に 関するアンケート調査を実施した。回収結果から対 応を検討の予定。B-4.クリニックの HIV 診療医のニ ーズ調査を実施し、クリニックの通信環境調査と整 備を終了した。今後、診療支援に使用し、効果を評 価する。B-5. 大阪府看護協会と密な連携で、HIV 看 護研修を実施し、院内研修用の教材を開発した。B-6. セクシュアルヘルス研修会スキルアップコースの開 発を進めた。C-1. 心理学者、社会学者を含むイン

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タビュー調査委員会委員を選定中。行動変容支援プ ログラムを 1 例に実施中。C-2. 早期受診に繋がっ た事例とそうでない事例での早期受診の促進要因と 阻害要因につき過去の症例から分析・検討作業を進 め、10 月より大阪の ChotCast ナンバで陽性告知直 後でカウンセリングの担当症例等でも検討。『HIV 検 査相談要確認・陽性告知のポイント』マニュアルを 全国の主な自治体、関連 NGO(計 142 箇所)に送付 し、意見を集約中。C-3. 今年度は、大阪府との歯科 診療ネットワークにつき担当者と調整を行い、HIV 歯科診療研修会の開催とネットワーク構築の端緒に 繋げられた。C-4. MSM が検査を受けやすい環境整備 と陽性判明後速やかに医療へつなげられる体制作り のため拠点病院や行政との MSM 連絡会議を開催し (参加:17 名、情報・意見を交換した。C-5. 4NGO のヒアリングを実施し、10 月からメーリングリスト を立ち上げた。D-1. 精神疾患・障がいを有する HIV 陽性者の生活課題を援助者への質的調査を通して探 索的調査のフォーカスグループインタビューの質問 項目の精査とインタビューの選定のため半構造イン タビューを実施。D-2. HIV 陽性者の受け入れマニュ アルを用いた研修会を福祉施設向けに開催(9 箇所、 706 名)した。福祉施設における HIV/AIDS の効果的 研修プログラムの検討のため具体的事例からケース メソッド方式による教材を開発中。D-3. 各都道府 県設置の訪問看護ステーション連絡協議会に研修企 画案内を送付し各連絡協議会の定期的研修会等で当 研究班の研修会の開催希望を募り 3 県(101 名)で開 催。i-net は 29 事業所が登録済み。HIV 陽性者の介 護経験のある介護士と未経験の介護士を対象に HIV 陽性者受け入れで、知識の習得だけでは解決しない 課題を明確にするため半構造的インタビュー調査を 行った。介護支援 VTR を作成中。D-4. 県と連携し 介護老人保健施設および介護老人福祉施設の感染対 策担当者向けのセミナーを開催。その他、携帯を用 いた服薬支援ツールの改良および検査予約システム 開発、HIV 治療の薬剤情報提供ホームページの開発 を行った。 考察 指定研究の初年度であり主に調査や課題の抽出に 取り組んだ。ガイドライン、マニュアル、ハンドブ ック等や支援の各種ツールは実施での評価と改訂を 行う必要がある。その他、多くの研究から重要な結 果を得た。 自己評価 1) 達成度について 当初計画を概ね実施でき、目的を達成できた。 2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義について 本研究は HIV 感染症の治療等で課題を明らかに し、その対策につき検討を行うものであり、必要 性は高い。いずれも学術的意義も高く、国際的に も新規性が高い。治療のガイドライン改訂など、 社会的意義も大きいと考える。 3) 今後の展望について これまでの研究結果を踏まえ、さらに研究を深 める。 結論 HIV 感染症の治療と関連分野(治療・合併症、地 域医療の質の向上、陽性者支援のための地域連携、 期療養支援)で課題を抽出し、ほぼ計画通りに研究 を実施できた。 知的所有権の出願・取得状況 該当なし 巻末に今年度の 6 月 2 日に開催された研究計画ヒ アリングでの資料と HP および主な印刷物を掲げた。 研究発表 研究代表者 白阪琢磨

Shimamoto Y, Fukuda T, Tominari S, Fukumoto K, Ueno K, Dong M, Tanaka K, Shirasaka T, Komori K.: Decreased vancomycin clearance in patients with congestive heart failure.:Eur J Clin Pharmacol. 2012.

Watanabe D, Yoshino M, Yagura H, Hirota K, Yonemoto H, Bando H, Yajima K, Koizumi Y, Otera H, Tominari S, Nishida Y, Kuwahara T, Uehira T,

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Shirasaka T:Increase in serum mitochondrial creatine kinase levels induced by tenofovir administration.J Infect Chemother,18(5):675-82. 2012

Fujisaki S, Yokomaku Y, Shiino T, Koibuchi T, Hattori J, Ibe S, Iwatani Y, Iwamoto A, Shirasaka T, Hamaguchi M, Sugiura W: Outbreak of infections by hepatitis B virus genotype A and transmission of genetic drug resistance in patients coinfected with HIV-1 in Japan. J Clin Microbiol,49(3):1017-24. 2011

研究分担者 渡邊大

Watanabe D, Yoshino M, Yagura H, Hirota K, Yonemoto H, Bando H, Yajima K, Koizumi Y, Otera H, Tominari S, Nishida Y, Kuwahara T, Uehira T, and Shirasaka T: Increase in Serum Mitochondrial Creatine Kinase Levels Induced by Tenofovir Administration. J Infect Chemother,18(2):675-82, 2012

Yoshino M, Yagura H, Kushida H, Yonemoto H, Bando H, Ogawa Y, Yajima K, Kasai D, Taniguchi T, Watanabe D, Nishida Y, Kuwahara T, Uehira T, Shirasaka T: Assessing recovery of renal function after tenofovird isoproxil fumarate discontinuation. J Infect Chemother,18(2):169-74, 2012.

Watanabe D, Koizumi Y, Yajima K, Uehira T, Shirasaka T: Diagnosis and Treatment of AIDS-Related Primary Central Nervous Lymphoma. J Blood Disord Transfus. S1-001. doi: 10.4172/2155-9864, 2012

Watanabe D, Ibe S, Uehira T, Minami R, Sasakawa A, Yajima K, Yonemoto H, Bando H, Ogawa Y, Taniguchi T, Kasai D, Nishida Y, Yamamoto M, Kaneda T, Shirasaka T: Cellulr HIV-1 DNA levels in patients receiving antiretroviral therapy strongly correlate with therapy initiation timing but not with therapy duration. BMC Infect

Dis,11:146, 2011 竹谷英之

Ebihara Y, Takedani H, Ishige I, Nagamura-Inoue T, Wakitani S, Tojo A: et al. Feasibility of autologous bone marrow mesenchymal stem cells cultured with autologous serum for treatment of haemophilic arthropathy.Haemophilia 2013 in press

Shimada K, Takedani H, Inoue K, Yamasaki K: Arthroscopic synovectomy of the elbow covered with rFVIIa in a haemophilia B juvenile with inhibitor.Haemophilia,18: e414-6,2012

久慈直昭

和田みどり, 田部陽子, 三井田孝, 久慈直昭:傾 斜回転装置を利用した連続密度勾配法による効率的 精子回収. Journal of Clinical Embryologist (1349-0834)13 巻 Page33-34、2011 年

鯉渕智彦

Kikuchi T, Iwatsuki-Horimoto K, Adachi E, Koga M, Nakamura H, Hosoya N, Kawana-Tachikawa A, Koibuchi T, Miura T, Fujii T, Kawaoka Y, Iwamoto A: Improved neutralizing antibody response in the second season after a single dose of pandemic (H1N1) 2009 influenza vaccine in HIV-1-positive adults. Vaccine,6;30(26):3819-23.2012.

Nakayama K, Nakamura H, Koga M, Koibuchi T, Fujii T, Miura T, Iwamoto A, & Kawana-Tachikawa A: Imbalanced Production of Cytokines by T Cells Associates withthe Activation/Exhaustion Status of Memory T Cells in Chronic HIV Type 1 Infection.AIDS Res Hum Retroviruses,28(7):702-14. 2012.

大北全俊

大北全俊:HIV 感染症対策が内包する枠組みに関 する政治哲学的分析の試み。メタフュシカ 41、1-12、 2010 年

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吉村和久

Harada S, Yoshimura K, Yamaguchi A, Boonchawalit S, Yusa K, and Matsushita S: Impact of antiretroviral pressure on selection of primary HIV-1 envelope sequences in vitro. J Gen Virol, 2013, in press.

Yokoyama M, Naganawa S, Yoshimura K, Matsushita S, Sato H: Structural Dynamics of HIV-1 Envelope Gp120 Outer Domain with V3 Loop. PLoS ONE,7: e37530. 2012

仲倉高広

Nakakura T:The Psychotherapy with HIV-infected Male through Landscape Montage Technique。Fourth International Academic Conference of Analytical Psychology & Jungian Studies、ポルトガル、2012 年

秋葉隆

Canaud B, Tong L, Tentori F, Akiba T, Karaboyas A, Gillespie B, Akizawa T, Pisoni RL, Bommer J, Port FK: Clinical practices and outcomes in elderly hemodialysis patients: results from the Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study (DOPPS). Clinical Journal of The American Society of Nephrology: CJASN.6(7):1651-62, 2011

Iwasa Y, Otsubo S, Yajima A, Kimata N, Akiba T, Nitta K: Intracranial artery calcification in hemodialysis patients. International Urology & Nephrology.43(2):585-8, 2011

Taniguchi M, Tanaka M, Hamano T, Nakanishi S, Fujii H, Kato H, Koiwa F, Ando R, Kimata N, Akiba T, Kono T, Yokoyama K, Shigematsu T, Kakuta T, Kazama JJ, Tominaga Y, Fukagawa M: Comparison between whole and intact parathyroid hormone assays. Therapeutic Apheresis & Dialysis: Official Peer-Reviewed Journal of the International Society for Apheresis, the Japanese Society for Apheresis, the Japanese Society for Dialysis Therapy.15 Suppl 1:42-9,

2011 横幕能行

Miyamoto T, Nakayama EE, Yokoyama M, Ibe S, Takehara S, Kono K, Yokomaku Y, Pizzato M, Luban J, Sugiura W, Sato H, Shioda T: The Carboxyl- Terminus of Human Immunodeficiency Virus Type 2 Circulating Recombinant form 01_AB Capsid Protein Affects Sensitivity to Human TRIM5α. PloS one. 7(10):e47757. 2012

Kitamura S, Ode H, Nakashima M, Imahashi M, Naganawa Y, Kurosawa T, Yokomaku Y, Yamane T, Watanabe N, Suzuki A, Sugiura W, Iwatani Y: The APOBEC3C crystal structure and the interface for HIV-1 Vif binding. Nature structural & molecular biology. 19(10):1005-1010. 2012

Hirano A, Ikemura K, Takahashi M, Shibata M, Amioka K, Nomura T, Yokomaku Y, Sugiura W. Short communication:lack of correlation between UGT1A1*6, *28 genotypes, and plasma raltegravir concentrations in Japanese HIV type 1-infected patients. AIDS research and human retroviruses. 28(8):776-779. 2012

高田清式

Honda M, Ishisaka M, Ishizuka N, Kimura S, Oka S and Takada K (behalf of Japanese Anti-HIV-1 QD Therapy Study Group) : Open-Label Randomized Multicenter Selection Study of Once Daily Antiretroviral Treatment Regimen Comparing Ritonavir-Boosted Atazanavir to Efavirenz with Fixed-Dose Abacavir and Lamivudine.Intern Med 50, 699-705,2011 佐保美奈子 古山美穂、佐保美奈子、豊田百合子、畑井由美子、 泉柚岐、飯沼恵子、澤口智登里、熊谷祐子、下司有 加:エイズ看護及び教育に対する看護管理者のニー ズ。日本看護学会論文集、268-271、2012 年

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井上洋士

Omura K, Eguchi E, Imahuku K, Kutsumi M, Ito M, Inoue Y, Yamazaki Y: The effect of peer support groups on self-care for hemophilic patients with HIV in Japan. Haemophilia. (in press)

大村佳代子、伊藤美樹子、 今福渓子、 江口依里、 九津見雅美、井上洋士、山崎喜比古: HIV 感染を知 らされた状況別にみた薬害 HIV 患者の疾患管理行動。 日本エイズ学会誌 14(3): 153-158, 2012 年 藤原良次 藤原良次、早坂典生、橋本謙、山縣真矢、間島孝 子、太田裕治、羽鳥潤、坂本裕敬、白阪琢磨: ケー スマネージメントスキルを使った行動変容支援サー ビスに関する研究。第 25 回日本エイズ学術集会・総 会、東京、2011 年 中田たか志 中田たか志:東京 HIV デンタルネットワークに参 加する歯科医師およびスタッフを対象にした、HIV 陽性者歯科診療に関するアンケート調査によるスタ ッフの意識と風評被害の実態。第 25 回日本エイズ学 会学術集会・総会、東京、2011 年 井戸田一朗 井戸田一朗:HIV 診療におけるアディクション、 シンポジウム「セクシュアルヘルスとアディクショ ン」。第 26 回日本エイズ学会学術集会・総会、横浜、 2012 年 小西加保留 小西加保留:アドボカシー概念の再考-HIV/AIDS ソーシャルワークを通して-『社会福祉学への展望』 芝野松次郎。小西加保留編著、相川書房 75-92、2012 年 山内哲也 山内哲也:「社会福祉施設における HIV 陽性者の受 入れに関する福祉施設長の意識と行動プロセス」。医 療社会福祉研究 第 21 巻、掲載予定 下司有加 下司有加:訪問看護ステーションにおける HIV 陽 性者の受け入れに関する研究。第 26 回日本エイズ学 会学術集会・総会、横浜、2012 年

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平成24年度 エイズ対策研究事業 研究計画ヒアリング会 研究代表者 白阪琢磨 (独立行政法人国立病院機構大阪医療センター) HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 H24ーエイズー指定ー002 場所:新宿オークタワー 会議室 Room1 日時:平成24年 6月 2日 (3年計画の1年目) エイズ対策研究事業の企画と評価に関する研究(研究代表者:福武勝幸先生) 目 的 HIV感染症治療、ケア、長期療養、患者支援における課題を明らかにし、 対策の提示と必要なら提言を行う 方 法 期待される効果 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 H21~23 白阪琢磨国立病院機構大阪医療センター HIV感染症治療の開始時期と治療終焉指標に関する研究(渡邊) 治療終焉のためのプロウイルスDNA等臨床指標の開発に関する研究 (岩谷) 抗HIV療法の実施状況と副作用調査に関する研究(桒原) 抗HIV療法のガイドラインに関する研究(鯉渕) 血友病患者におけるHIV感染症の治療に関する研究(西田) HIV検査相談所におけるHBVの分子学的研究(杉浦) HIV関連リポジストロフィーの治療に関する研究*(秋田) HIV感染患者における透析医療の推進に関する研究*(秋葉) 診療連携システム開発に関する研究(横幕) *エイズ看護の在り方に関する研究(佐保) 抗HIV療法に伴う心理的負担、および精神医学的介入の必要性に関す る研究(廣常) HIV陽性者の心理学的問題の現状と対応に関する研究(仲倉) セクシュアルヘルス支援体制のモデル開発と普及に関する研究(井上) 服薬アドヒアランスの評価法の開発に関する研究(加藤) HIV外来診療のあり方に関する研究(高田) 長期療養者の受け入れにおける福祉施設の課題と対 策(山内) 長期療養患者のソーシャルワークに関する研究(小 西) 長期療養看護の現状と課題に関する研究(下司) HIV検査相談所における陽性告知からその後の当事 者支援に関する研究(桜井) ケースマネージメントスキルを使った行動変容支援 サービスに関する研究(藤原) HIV陽性者の歯科診療の課題と対策(中田) 携帯を用いた服薬支援(忘れちゃダメール)、 携帯を用いた検査予約システム ケア 長期療養 患者支援 治療・合併症 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 H21~23 白阪琢磨国立病院機構大阪医療センター HIV感染症の治療と関連分野(治療・合併症、ケア、長期療養支援、 患者支援)で克服すべき課題を抽出し現状を分析、検討した。ほぼ計 画通りに研究を実施できた。 抗HIV治療のガイドライン改訂 福祉施設の受入マニュアルの作成 ホームページでの情報提供 携帯による検査予約システムの開発 セクシュアリティー支援ナース(仮)の教育プログラム開発 臨床指標としてのプロウイルスDNA測定系の確立 各研修プログラムの開発 HIV陽性者支援の地域社会資源・制度に関する要望書 毛髪の薬剤量の測定系開発 重複感染例のHBVの分子疫学解析 訪問看護研修の有用性 自立困難症例の全数把握 平成23年度の主な成果 実施 実施 実施 実施 実施 実施 実施 実施 実施 実施 実施 実施 新規課題克服班(案) ○ 平成24年度より、課題克服班(白阪班)を、医療体制整備班(山本班)との役割分担を明確にしながら効率 化し、主として地域医療に関する新たな課題克服班(指定研究)を組織する。 ○ 新たに組織する課題克服班は、歯科・透析・精神科医療を含む、病医院等の一般医療機関から治療拠点 病院までの一次・二次医療圏を対象とした研究モデルの確立を目的とし、地域医療におけるHIV診療の標 準化、慢性期チーム医療・診療連携、在宅訪問看護・介護、血友病関節障害対策、 地域陽性者ピアサ ポート・行動変容支援、研究班・NGO連携、医療施策評価、等を研究対象とする。 血友病関節障害 生殖補助医療 短期終了型(2~3年) NGO医療連携支援 (SHIP) 短期終了型(1年) 陽性者サポート 地域診療連携 行動変容支援 継続事業型 在宅介護標準化 歯科・透析医療 精神科的介入 チーム医療 在宅訪問看護 地域HIV診療標準化推進 抗HIV治療ガイドライン 感染研・医療連携 継続研究型(コア) 看護の在り方 急性感染期対 応 研究班・NGO連携 医療施策評価(財団) 行政対応型 NGO/NPOプラットフォー ム形成(財団) 旧課題克服班の研究 旧課題克服班の研究 新課題克服班に追加研 究 新課題克服班に追加研 究 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター 【経緯・目的】 HIV感染症は治療の進歩によって慢性疾患となったが、未だに多く の課題がある。厚生労働省は前年度、いわゆるエイズ予防指針の見直し作業で、現 状と課題を明らかにし、今後のエイズ施策の方向性を示した。同作業班の報告書で、 医療提供体制の問題点として「各ブロックの現状に応じた医療提供体制の構築が依 然としてなされていない」と指摘し、見直しの方向性の要点に「中核拠点病院を中心 とした、地域における診療連携の強化」を掲げた。同指針の見直しには、指針第三 普及啓発及び教育の項で、医療従事者等に対する教育、第五 医療の提供の項で、 医療提供体制の充実、良質かつ適切な医療の提供及び医療連携体制の強化、主要 な合併症及び併発症への対応の強化、長期療養•在宅療養支援体制の整備、人材 の育成と活用、個別施策層やその他の施策の実施、個別施策層に対する施策の実 施、日常生活を支援するための保健医療•福祉サービスの連携強化の7項目の見直 しが述べられた。本指針作業班の報告書を踏まえ、当研究班は、特に合併症及び併 発症への対応、長期療養•在宅療養支援体制の整備、ならびに、多職種連携による ケア提供の充実のための研究を遂行し、併せて地域医療におけるNPO/NGO等との 連携の在り方についても検討を行う。 【他の研究班との研究区分】 医療体制整備研究班との研究区分については、当研 究班は地域で中核拠点病院、拠点病院、一般病院さらにNPO/NGOとの連携の中で、 拠点病院から一般病院さらにNPO/NGOの連携での、一般医療機関の診療機能に応 じて、患者に良質かつ適切な医療を提供する基盤作りのモデル構築を目指す。 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター

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【主な研究】 1.抗HIV治療、外来診療チーム医療、HIVケアについての指針等を作成する。 2.歯科診療の確保については、医療体制研究班と連携しつつ、地域の実情に応 じ拠点病院と歯科診療の主体たる地域診療所との連携体制の構築を図る。 3.主要合併症及び併発症への対応の強化では、精神医学的な効果的介入のた めの精神科のネットワーク構築や、透析医療担当者への研修等の実施などによ る受け入れ体制の構築を目指す。 4.長期療養・在宅療養支援体制の整備ではクリニックでの訪問看護サービスお よび慢性期病院等との連携を推進する。 5.日常生活支援のための保健医療・福祉サービスの連携強化では、専門知識に 基づく医療社会福祉相談やピア・カウンセリンク等の研修機会の拡大をはかる。 6.医療関係者あるいは医療施設等と関連NGO/NPOとの連携は重要な課題であ り、地域医療におけるNGO/NPOの在り方およびそれらの連携プラットフォームの 構築を目指す。 7.その他、HIV陽性者の血友病関節症の治療、生殖医療、口腔免疫の研究、お よびHIV医療の倫理的課題の研究について取り組む。 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター 1. HIV感染症治療および合併症等の対策に関する研究 1.1 渡邊 大 急性感染期の診断・治療での課題に関する研究 1.2 竹谷英之 血友病性関節症に対する間葉系幹細胞治療の開発 1.3 久慈直昭 HIV陽性者の生殖医療に関する研究 1.4 鯉渕 智彦 抗HIV療法のガイドラインに関する研究 1.5 大北全俊 HIV医療の倫理的課題に関する研究 1.6 吉村和久 HIV感染者の口腔内免疫に関する研究 2. 地域HIV医療の質の向上に関する研究 2.1 仲倉 高広 HIV陽性者の心理学的問題と対応に関する研究 2.2 廣常 秀人 HIV陽性者の心理的負担、および精神医学的介入の必要性と ネットワーク形成に関する研究 2.3 秋葉 隆 HIV感染患者における透析医療の推進に関する研究 2.4 橫幕 能行 地域病病・病診連携の地域モデルの構築 2.5 高田 清式 地域におけるHIV診療および福祉連携のあり方に関する研究 2.6 佐保 美奈子 地域HIV看護の質の向上に関する研究 2.7 井上 洋士 HIV陽性者のセクシュアルヘルス支援体制整備に関する研究 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター 3. HIV陽性者支援のための地域医療連携に関する研究 3.1 藤原 良次 心理専門家運セラーおよびピアカウンセラーの介入に関する研究 3.2 桜井 健司 当事者支援に関する研究 3.3 中田 たか志 HIV陽性者の歯科診療の課題と対策 3.4 井戸田一朗 神奈川県における検査と医療連携におけるNPOの役割に関する研究 3.5 中村 正 HIV陽性者ケアに関するNPO/NGOの連携に関する研究 4. 長期療養支援に関する研究 4.1 小西 加保留 長期療養患者のソーシャルワークに関する研究 4.2 山内 哲也 長期療養者の受け入れにおける福祉施設の課題と対策 4.3 下司 有加 長期療養看護の現状と課題に関する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター 【 評価できる点、推進すべき点 】 ・ 医療機関とNGO/NPO連携プラットホームの構築は重要な課題 であり、必須と考える。 この研究者とこの構成員でないと出来ない研究と考える。 ・ HIV感染者に対する総合的な医療体制の構築に資する研究である。 ・ 多職種連携による適切な医療促進の基盤造り。 ・ これ迄着実に成果を挙げて来ており、チーム医療、ケアの在り方など を検討してマニュアルや治療のガイドラインの作製等を継続的に 行って来ており、更なる奮闘を期待する。 得られた知見を着実に論文にまとめて来ている点も評価して良い。 【 疑問点・改善すべき点その他助言等 】 ・ 精神疾患、透析、長期療養、在宅療養などの検討を。 【 倫理性について改善を要する点 】 ・ 特になし ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【 対策】 いずれも貴重なご意見を賜り、有り難うございます。 ご意見を尊重し研究を進めて参ります。 事前評価委員会からのコメントと対策 HIIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究 白阪琢磨 国立病院機構大阪医療センター http://www.haart-support.jp/ マニュアル等の主な印刷物 いずれもhttp://www.haart-support.jp/ からダウンロード可 抗HIV治療ガイドライン HIV診療における 外来チーム医療マニュアル HIV感染症と 精神疾患ハンドブック 病院のなかの臨床心理 NGO情報一覧 社会福祉施設で働く みなさんへ 社会福祉施設で働くみなさんへ 研修ノート 在宅医療を支えるみんなに知ってほしいこと 退院援助のための支援シート 要確認・陽性告知のポイント

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急性感染期の診断・治療での課題に関する研究

研究分担者:渡邊 大(国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部 HIV感染制 御研究室) 研究協力者:上平 朝子(国立病院機構大阪医療センター 感染症内科) 岡本瑛里子(国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部) 蘆田 美紗(国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部) 鈴木佐知子(国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部) 土肥 浩美(国立病院機構大阪医療センター エイズ先端医療研究部)

研究要旨

【目的】急性 HIV感染症の診断と治療の課題を解決するために二つの研究を行った(1:感染早期コホート研 究と 2:残存プロウイルス長期観察研究)。【方法】(1)2003〜2010 年に当院を受診した新規診断症例のうち、急 性 HIV感染症と診断された症例(急性群)と、診断の 2 年前までに HIV検査が陰性もしくは献血歴があった症 例を対象とし、慢性期に診断された症例は初感染症状の有無によってさらに 2 群に層別化した(有症状群と無 症状群)。推定感染時期から抗 HIV療法の開始時期もしくは CD4 数が 2 回続けて 350/μL 未満となった時期のう ち短い期間を、免疫が低下するまでの期間とした。(2)ART が導入され血中 HIV-RNA 量が感度未満で維持され ている症例を対象とし、末梢血 CD4 陽性 T リンパ球中の残存プロウイルス量を測定した。また、残存プロウイ ルスのダイレクトシークエンスを行い、トリプトファン残基におけるナンセンス変異の有無について解析した。 【結果】(1)231 例が対象となった。最終陰性から HIV感染症の診断までの期間は、無症状群(中央値 336 日) と比較して有症状群(中央値 273 日)で有意に短かった。免疫が低下するまでの期間の中央値は全体で 1.9 年 であり、無症状群(3.3 年)と比較して、急性群(0.8 年)・有症状群(2.1 年)で有意に期間が短かった。(2) 抗 HIV療法によって血中 HIV-RNA 量が測定感度未満で維持されている 46 症例を対象に測定を行った。残存プロ ウイルス量は慢性期治療例と比較して急性期治療例で低く抑えられていた。慢性期治療例 38 例のうち 7 例に、 急性期治療例 7 例のうち 3 例にナンセンス変異を認めた。急性期治療例の 3 例はナンセンス変異がメジャーシ ークエンスであった。【考察】(1)初感染症状が早期の免疫低下、受検行動の促進に関与している可能性が示唆 された。(2)急性期に ART を導入することによる残存プロウイルスの量的・質的変化については、さらなる解析 が必要である。 研究目的 急性 HIV感染症にはさまざまな医学的課題が残さ れている。まずは、診断が困難であり、多くの症例 が正しく診断されずに見逃されていることがあげら れる。発熱・倦怠感といった初感染症状が出現する ため、急性 HIV感染症は一般に医療機関で診断され る。この初感染症状のために、医療機関を受診する 症例は決して少なくはない。しかし、初感染症状は 通常、一過性で対症療法のみで軽快するため、確定 診断には至らずに単なる発熱疾患として扱われる可 能性が容易に想像される。 急性 HIV感染症のコホート研究により、HIV感染 症の自然経過の評価が可能であると考えられている。 我々は急性 HIV感染症の入院例の多施設実態調査を 報告したが、半数以上の症例が感染から 1 年以内に 抗 HIV療法が開始されていた。他の単施設からの報 告も同様の結果であった。これらの観察から、本邦 における HIV感染症の自然歴は過去に提唱されてい たものと比較して早期に進行している可能性、もし くは急性 HIV感染症と診断された症例は全症例の中 の重症例であるという選択バイアスが存在している 可能性が考えられた。そこで本研究では、確定診断 にいたった急性 HIV感染症に加えて、初感染症状を 疑う症状が出現したが慢性期に診断された症例につ

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いても注目し、感染時期が 2 年以内で推定可能であ る HIV感染者を対象に免疫が低下するまでの期間に ついて検討した(感染早期コホート研究)。 急性期における抗 HIV療法(ART)についても標準 的な治療指針がなく、国内では自覚症状や身体障害 者手帳の取得の条件等を照らし合わし、その適応を 個々の症例で判断せざるを得ないのが実情である。 一方、我々は先行研究で、急性期での ART 導入例で は残存プロウイルス量が低レベルに維持されること と、残存プロウイルス量は治療期間との関連性は低 いことを報告し、残存プロウイルス量の臨床指数と して可能性と早期治療の有用性を示した(D. Watanabe et al., BMC Infect Dis, 2011)。また、 急性期に ART を導入した症例の残存プロウイルスに は APOBEC-type G-to-A 変異によると思われる nonsense 変異を多数認めた。しかし、これらの結果 は cross-sectional な解析であり、本研究では症例 を追加するともに、longitudinal な解析を行うこと とした(残存プロウイルス長期観察研究)。 研究方法 2003〜2010 年に当院を受診した新規診断症例の うち、急性 HIV感染症と診断された症例(急性群) と、慢性期に診断された症例のうち診断の 2 年前ま でに HIV検査が陰性もしくは献血歴があった症例を 対象とし、後者については、HIVの初感染を疑う症 状があった症例(有症状群)と同症状がなかった症 例(無症状群)に分類した。推定感染時期から抗 HIV 療法の開始時期もしくはCD4 数が2 回続けて350/μ L 未満となった時期のうち短い期間を、免疫が低下 するまでの期間とした。情報は診療録から後ろ向き に収集した。統計解析における有意水準を 0.05 とし た。 残存プロウイルス量については、抗 HIV療法が導 入され血中 HIV-RNA 量が感度未満で維持されている 症例を対象とし、末梢血から CD4 陽性 T リンパ球を 分離し、DNA を抽出した。精製した DNA を鋳型とし て、Lightcycler DX400 を用いて TaqMan PCR 法を用 いて HIV-DNA のコピー数を決定した。HIV-DNA 量は CD4 陽性 T リンパ球 100 万個当たり(相対量)もし くは全血 1ml(絶対量)に含まれるコピー数として 算出した。また、ポワソン分布法を用いてコピー数 を決定し、TaqMan PCR 法との比較を行った。残存プ ロウイルスのダイレクトシークエンスを行い、gag 領域の 9 カ所のトリプトファン残基(W16・W36・ W155・W212・W249・W265・W316・W414・W438)、PR 領域の 2 カ所のトリプトファン残基(W6、W42)、RT 領域の 7 カ所のトリプトファン残基(W24、W71、W88、 W153、W212、W229、W239)におけるナンセンス変異 の有無について検討した。 (倫理面への配慮) 各研究について、院内の倫理委員会に相当する受 託研究審査委員会で倫理審査を行い、承認を取得し た(承認番号 0913、0973)。この審査委員会で審査・ 受理された方法で研究を遂行し、具体的には文書で の同意の取得や、検体処理やデータ管理の際の匿名 化などを行った。 研究結果 感染早期コホート研究については、231 例が対象 となった。全体の患者背景を表 1 に示した。 急性 HIV感染症と診断された症例(急性群)は 81 例、慢性期に診断された症例のうち初感染症状を疑 う症状があった症例(有症状群)は 86 例、症状が無 かった症例(無症状群)は 64 例であった。まず、年 齢・性別・推定感染経路について検討したが、3 群 間で統計学的有意な差異を認めなかった。次に医療 機関の受診について検討した。急性群では 78 例 (97%)が医療機関を受診し、3 例(3%)が保健セン ター等の VCT で診断されていた。有症状群では 51 例(59%)で医療機関の受診があった。最終陰性から HIV感染症の診断までの期間については、有症状群 と無症状群で比較した。有症状群の中央値は 273 日 であり、無症状群(中央値 336 日)と比較して有意

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に短かった。初診時の CD4 数が 400/μL 未満の症例 の割合は、無症状群(23 例、36%)と比較して、急 性群(48 例、59%)・有症状群(52 例、60%)で有意 に増加していた。免疫が低下するまでの期間の中央 値は、全体で 1.9 年であり、無症状群(3.3 年)と 比較して、急性群(0.8 年)・有症状群(2.1 年)で 有意に期間が短かった。 残存プロウイルス量の測定に関しては、抗 HIV療 法によって血中 HIV-RNA 量が測定感度未満で維持さ れている 46 症例を対象に測定を行った。先行研究で 改良を行ったTaqMan PCR法による測定系とポワソン 分布法の両者の測定値の比較を行ったが、良好な一 致性を認めた(図 1)。 TaqMan PCR 法で測定感度未満となった 4 例のうち、 2 例はポワソン分布法による結果との解離を認め、 そのうち 1 例はプライマーミスマッチが明らかとな った。これらの 4 症例はポワソン分布法による測定 値を採用した。次に急性期治療例 7 例と慢性期治療 歴 39 例に分類して、検体採取時の CD4 数と HIV-DNA 量(相対量と絶対量)を比較した(図 2)。 急性期治療例は慢性期治療例と比較して CD4 数が 有意に高値であった。一方、HIV-DNA 量は急性期治 療例で低く、この有意差は CD4 数で調整を行った絶 対量でも消失しなかった。19 例(急性期治療例 3 例 と慢性期治療例 16 例)については経時的に測定を行 った。相対量、絶対量とも 2 年後には HIV-DNA 量の 統計学的有意な低下を認めた(図 3)。 最後に 18 カ所のトリプトファン残基に注目した。 慢性期治療例 38 例のうち 7 例に、急性期治療例 7 例のうち 3 例にナンセンス変異を認めた。急性期治 療例の 3 例はナンセンス変異がメジャーシークエン スであったが、慢性期治療例の 7 例はマイナーシー クエンスであった。急性期治療例 3 例および慢性期 治療例 14 例について経時的に評価したが、ベースラ インの測定でナンセンス変異があった 4 症例のうち 3 症例はナンセンス変異が消失していた。一方、新 たにナンセンス変異が出現した症例は認めなかった。 考察 感染時期が 2 年以内で推定可能である HIV感染者 を対象としたコホート研究から、重要なふたつの結 果が得られた。一つは、HIV感染症の自然歴である。 初感染症状を有した症例において、統計学的有意に 推定感染時期から免疫低下までの期間が短かった。 初感染症状を伴わない症例(無症状群)に限定して も、免疫低下までの推定期間の中央値は 3.3 年であ り、これは過去に提唱されてきた HIV感染症の自然 歴と比較し、短期間で免疫が低下していることの可 能性を示している。もう一つ重要なことは、初感染 症状により受検行動が促進された可能性が示唆され たことである。有症状群は無症状群と比較して、HIV 検査の最終陰性から診断までの期間が有意に短く、 図 3 残存プロウイルス量の経時的変化 図2 急性期治療例(7例)と慢性期治療例(39 例)の比較

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これは感染から早期に診断されていることを意味し ている。自主的な HIV検査では HIV-RNA 量の測定が なされないことが多く、感染早期例の診断には不向 きである。初感染症状の自覚により、急性 HIV感染 症の可能性を危惧して HIV検査を受検した症例も存 在しており、感染早期例を対象とした検査システム の構築も検討すべき課題の一つと考えられた。 本年度は、平成 21-22 年度に改良を加えた測定系 での残存プロウイルス量の測定の実施に加え、プロ ウイルスのシークエンスにおいて成果が見られた。 45 症例中 10 症例でナンセンス変異を認めた。特に 急性期治療例の 3 症例においては、いずれかのトリ プトファン残基がストップコドンに完全に置き換わ っている(つまり、W-to-*であり W-to-*/W ではない ということ)ことが確認された。この 3 症例におい ては、末梢血の主たる潜伏感染細胞においては感染 性を有するウイルス粒子が作製されないことを意味 している。 また、経時的な観察を行ったが、抗 HIV療法の継 続によりナンセンス変異は消失する可能性が示され た。本研究でのべ 11 サンプルでナンセンス変異を検 出したが、そのうち 10 サンプルが初回測定のサンプ ルであった。このことから、ナンセンス変異を有す る潜伏感染細胞は他の潜伏感染細胞より寿命が短い 可能性が考えられた。この点については、抗 HIV療 法の施行期間との関連性も含め、詳細な解析が必要 である。 潜伏感染細胞がどのようなメカニズムで長期間維 持されているかは、現在いくつかの諸説が考えられ ている。潜伏感染細胞の寿命が長いこと、潜伏感染 細胞が細胞分裂を行っていること、そして抗 HIV療 法下においても検査では検出できないレベルで HIV の増殖が起こり新たな感染細胞が出現していること が考えられている。特に、3 つ目のメカニズムが近 年、問題視されるようになってきている。ナンセン ス変異に注目することによってこの問題の解決の糸 口となることが期待される。今後の解析症例数を増 やすとともに、シークエンスも行い、量的および質 的な解析から、急性期に ART を開始する意義解明と、 臨床指標としての残存プロウイルスについての解析 を行いたい。 結論 感染時期が 2 年以内で推定可能である HIV感染者 を対象としたコホート研究から、初感染症状が早期 の免疫低下に関連していること、初感染症状の自覚 が受検行動を促進している可能性があることが示唆 された。残存プロウイルス量は、急性期治療例にお いては低レベルに抑えられており、シークエンス解 析では APOBEC-tyep G-to-A mutation によると考え られるナンセンス変異を 7 例中 3 例のメジャーシー クエンスに認めた。この意義の解明には、症例数や 観察期間を増やして解析を追加する必要がある。 健康危険情報 該当なし 知的財産権の出願・取得状況 該当なし 研究発表 1)原著論文による発表

Watanabe D, Yoshino M, Yagura H, Hirota K, Yonemoto H, Bando H, Yajima K, Koizumi Y, Otera H, Tominari S, Nishida Y, Kuwahara T, Uehira T, and Shirasaka T. Increase in Serum Mitochondrial Creatine Kinase Levels Induced by Tenofovir Administration. J Infect Chemother 2012;18(5): 675-82.

Yoshino M, Yagura H, Kushida H, Yonemoto H, Bando H, Ogawa Y, Yajima K, Kasai D, Taniguchi T, Watanabe D, Nishida Y, Kuwahara T, Uehira T, Shirasaka T. Assessing recovery of renal function after tenofovird isoproxil fumarate discontinuation. J Infect Chemother. 2012;18(2): 169-74. 渡邊 大:HIVと免疫システム「週刊医事新報」 (4617): P62-63、 日本医事新報社、 2012 年 10 月 20 日 吉野宗宏、矢倉裕輝、櫛田宏幸、米本仁史、廣 田和之、坂東裕基、矢嶋敬史郎、小泉祐介、大寺

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博、富成伸次郎、渡邊 大、桑原 健、西田恭治、 上平朝子、白阪琢磨:当院における 1 日 1 回投与 ダルナビル/リトナビルの使用成績「日本エイズ 学会誌」14(3):P141-146、2012 2)口頭発表 廣田和之、渡邊 大、小泉祐介、米本仁史、大 寺 博、矢嶋敬史郎、西田恭治、上平朝子、白阪 琢磨:急性 HIV感染症で食道潰瘍を生じた 1 例。 第 199 回日本内科学会近畿地方会、大阪、2012 年 12 月 渡邊 大、矢嶋敬史郎、廣田和之、米本仁史、 小泉祐介、大寺 博、西田恭治、上平朝子、白阪 琢磨:インテグラーゼ領域の N155H 変異が Q148K 変異に置き換わった raltegravir による治療失敗 の 1 例。第 26 回日本エイズ学会学術集会・総会、 横浜、2012 年 11 月 渡邊 大、上平朝子、下司有加、治川知子、東 政美、藤友結実子、廣田和之、米本仁史、小泉祐 介、大寺 博、矢嶋敬史郎、西田恭治、白阪琢磨: HIVに感染後、2 年以内に診断された症例における 免疫が低下するまでの期間と、それに関与する因 子の検討。第 26 回日本エイズ学会学術集会・総会、 横浜、2012 年 11 月 岡本瑛里子、渡邊 大、蘆田美紗、鈴木佐知子、 土肥浩美、廣田和之、米本仁史、矢嶋敬史郎、小 泉祐介、大寺 博、西田恭治、三田英治、上平朝 子、白阪琢磨:大阪医療センターの HIV/HBV 共感 染者における HBV のゲノタイプの検討。第 26 回近 畿エイズ研究会・学術集会、神戸、2012 年 7 月 渡邊 大、坂東裕基、廣田和之、米本仁史、大 寺 博、小泉祐介、矢嶋敬史郎、西田恭治、上平 朝子、白阪琢磨:Western blot法が陰性化したAIDS の 1 例。第 197 回日本内科学会近畿地方会、神戸、 2012 年 6 月

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血友病性関節症に対する間葉系幹細胞治療の開発

研究分担者:竹谷 英之(東京大学医科学研究所附属病院 関節外科) 研究協力者:辻 浩一郎(東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター・幹細胞プロセッシ ング分野)

研究要旨

血友病は先天性に凝固因子が欠損している。特徴的な症状として幼少期からの関節内出血がある。この関節内 出血が繰り返し起こることで、血友病性の関節症が発生する。関節内出血は膝関節を始めとして、肘関節、足関 節に好発する。血友病性関節症は、学童期以降の身体機能を著しく阻害する。 本邦で可能な関節症に対する整形外科的な治療としては、主に 2 つの方法(早期関節症に対する滑膜切除と 末期関節症に対する人工関節置換術)があるが、進行期の関節症に対して、有効な手術治療がないのが現状で ある。そこで病期に合わせた治療法の開発と人工関節置換術適応患者数の減少あるいは必要年齢を引き上げる 事を目的として、血友病患者自身から採取した細胞を間葉系幹細胞に体外で分化誘導し、関節症の見られる膝 関節に移植を目的とした臨床応用の実現を目指している。 今回、血友病患者から採取した自己骨髄細胞を培養し、健常人と同等の能力と性状を持つ間葉系幹細胞を培 養できることを確認した。この結果をもとに、院内のヒト幹細胞臨床研究審査委員会に臨床研究を提出し承認 を得た。さらに同研究を現在、厚生労働省のヒト幹細胞臨床研究審査委員会に申請中である。 研究目的 血友病は、先天性凝固異常症で幼少期から関節内 出血のために、青年期から末期関節症となる。その 一方で血友病性関節症に対する治療方法は、早期関 節症に対する滑膜切除術と末期関節症に対する人工 関節置換術しかない。そのため早期から末期の間は、 対症療法で対応するしかないのが現状である。また 人工関節が必要な血友病患者の平均年齢は約 40 歳 で、将来再置換術が必須と思われ、適応年齢を遅ら せる治療も必要である。 自己骨髄から間葉系細胞を採取し、軟骨細胞へ分 化誘導し細胞を、関節内に移植するのは、現在欠落 している関節症進行状況に合わせた治療方法になり、 そのうえ人工関節置換術が必要となる年齢を高齢化 させることも期待できる。 本治療の確立は、生産年齢の血友病患者の関節機 能の改善による社会生産性の向上と、人工関節手術 適応患者数の減少による医療費の軽減につながる。 そのために必要な基礎実験として、血友病患者の 骨髄細胞の分化能を確認することを目的としている。 研究方法 血友病性関節症患者 3 名および健常成人 1 名から 骨髄 4ml を採取し、15%自己血清を含む DMEM 培養液 を用いて培養し、10-12 日目に subconfluent になっ たところで初回継代を行い、その後 10-12 日後に細 胞を回収し、細胞数、フローサイトメトリーによる 解析、染色体異常の発生の有無について検討し、回 収された細胞の軟骨細胞への分化能について検討し た。 (倫理面への配慮) 患者の文章による同意を得た後、全身麻酔下で手 術を行う際に骨髄細胞を採取した。採取された骨髄 細胞を匿名化した上で、院内の幹細胞治療研究セン ターにて培養を行った。なおこの研究は東京大学医 科学研究所所内の倫理審査に承認(承認番号19-10) を得ている。 研究結果 ⅰ) 調整細胞数 血友病性関節症患者 3 名および健常成人 1 名から 採取した骨髄液中の骨髄細胞から、本臨床研究の手 順書にしたがい骨髄間葉系幹細胞の調整を行い(1

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継代)、培養 20 日目に培養された間葉系幹細胞数か ら、骨髄液 2ml あたりから産生される間葉系幹細胞 数(フ ラスコ 1 枚あたりで産生される骨髄間葉系幹 細胞数)を算出し、以下の結果を得た。 以上のように、手順書にしたがい血友病性関節症 患者 3 名(症例 1~3)および健常成人 1 名(対照) の骨髄から調整された骨髄間葉系幹細胞数は、いず れも、本臨床試験で目標とする骨髄液 2ml から産生 される間葉系幹細胞数(フラスコ1枚あたりで産生 される骨髄間葉系幹細胞数)1 x 106個以上であった。 この結果は、血友病性関節症患者の骨髄間葉系幹細 胞は、健常成人の骨髄間葉系幹細胞と同等の増殖能 力を有していることを示している。 ⅱ) 軟骨細胞への分化能 血友病性関節症患者 3 名および健常成人 1 名から 採取した骨髄液中の骨髄細胞から、本臨床研究の手 順書にしたがい骨髄間葉系幹細胞の調整を行い(1 継代)、培養 20 日目に培養された間葉系幹細胞を、 NH ChondroDiff Medium(Miltenyl Biotec)を用い て軟骨細胞へ分化誘導した。軟骨細胞の確認は、ト ルイジンブルー染色にて行った。 その結果、血友病性関節症患者 3 名および健常成 人 1 名の骨髄から調整された骨髄間葉系幹細胞は、 いずれも、トルイジンブルー陽性の軟骨細胞に分化 することができた(図 1)。このことより、血友病 性関節症患者の骨髄間葉系幹細胞は、健常成人の骨 髄間葉系幹細胞と同じように、軟骨細胞への分化能 を有していると考えられた。 ⅲ) フローサイトメトリー 血友病性関節症患者 2 名および健常成人 1 名から 採取した骨髄液中の骨髄細胞から、本臨床研究の手 順書にしたがい骨髄間葉系幹細胞の調整を行い(1 継代)、培養 20 日目に培養された間葉系幹細胞をフ ローサイトメトリーで解析すると、100%の細胞が、 CD105 陽性、CD166 陽性で、CD45 陰性、CD14 陰性、 CD34 陰性、CD31 陰性の細胞であった(図 2,3,4-a,b, c,d,e,f)。 ⅳ) 染色体検査 血友病性関節症患者および健常成人から採取した 骨髄液中の骨髄細胞から、本臨床研究の手順書にし たがい骨髄間葉系幹細胞の調整を行い、3 名の血友 病性関節症患者の骨髄間葉系幹細胞については、本 臨床試験に実際に使用される 1 継代の培養細胞(培 養期間 20 日)を用いて、1 名の健常成人の骨髄間葉 系幹細胞については、1 継代追加した 2 継代の培養 細胞(培養期間 30 日)について、染色体検査を行っ た。その結果を以下にまとめた(表 2)。以上の結 果は、本臨床研究の手順書にしたがい、血友病性関 節症患者骨髄から調整された間葉系幹細胞について は、調整培養期間中に、少なくとも染色体レベルで 異常が発生する可能性は極めて低いことを示してい る。また、血友病性関節症患者骨髄からではないが、 本臨床研究の手順書にしたがい、健常成人骨髄から 1継代追加して2継代した間葉系幹細胞においても、 染色体異常の発生は認められなかった。 考察 上記の結果は、①本臨床試験の手順書にしたがっ て、血友病性関節症患者骨髄液から、健常人骨髄液 と同等に、100%の純度で、本臨床試験で目標とする 数の間葉系幹細胞の調整が可能であること、②本臨 床試験の手順書にしたがって血友病性関節症患者骨 髄液から調整された間葉系幹細胞は、健常人骨髄液 から調整された間葉系幹細胞と同等に、軟骨細胞へ の分化が期待できること、③本臨床試験の手順書に したがって血友病性関節症患者骨髄液から調整され た間葉系幹細胞は、少なくとも染色体レベルでは異 常を発生しない可能性が極めて高いことを示してお り、本臨床試験で使用する血友病性関節症患者の骨 髄から調整された間葉系幹細胞の安全性は高いと考 えられる。 結論 血友病患者の骨髄細胞は、我々が目標とする軟骨 再生医療に用いる間葉系幹細胞の材料として使用で きることが確認できた。

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健康危険情報 該当なし

知的財産権の出願・取得状況 該当なし

研究発表

Ebihara Y, Takedani H, Ishige I, Nagamura-Inoue T, Wakitani S, Tojo A, et al. Feasibility of autologous bone marrow mesenchymal stem cells cultured with autologous serum for treatment of haemophilic arthropathy.Haemophilia 2012 on-line

表 1:培養された間葉系幹細胞数 2ml 骨髄液から産生される骨髄間葉系幹細胞数 症例 1 3.0 x 106 症例 2 1.6 x 106 症例 3 1.5 x 106 対照 1.0 x 106 図 1:骨髄間葉系幹細胞から誘導した軟骨細胞(トルイジンブ ルー染色 pH7.0)40 倍 図 2-4:症例 1-3 の培養 20 日目培養間葉系幹細胞のフローサ イトメトリー解析結果 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 図 2-a:CD45 図 2-b:CD14 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 図 2-c:CD34 図 2-d:CD105 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 図 2-e:CD166 図 2-f:CD31 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 図 3-a:CD45 図 3-b:CD14 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 図 3-c:CD34 図 3-d:CD105 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 100 101 102 103 104 FL2-H 0 20 40 60 80 100 % of Max 図 3-e:CD166 図 3-f:CD31

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図 4-a:CD45 図 4-b:CD14 図 4-c:CD34 図 4-d:CD105 図 4-e:CD166 図 4-f:CD31 表 2:核型分析と染色体数 核型分析 染色体数 症例 1 (1 継代) 異常無し (10/10 細胞) 異常無し (50/50 細胞) 症例 2 (1 継代) 異常無し (10/10 細胞) 異常無し (20/20 細胞) 症例 3 (1 継代) 異常無し (3/3 細胞) 異常無し (3/3 細胞) 対照 (2 継代) 異常無し (20/20 細胞) 異常無し (50/50 細胞)

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HIV陽性者の生殖医療に関する研究

研究分担者:久慈 直昭(慶應義塾大学病院 産婦人科) 研究協力者:高桑 好一(新潟大学医歯学総合病院 総合周産期母子医療センター 教授) 加嶋 克則(新潟大学 医学部 産科婦人科学講座 講師) 兼子 智(東京歯科大学 市川病院産婦人科) 片山 昌勅(明治薬科大学 生体機能分析学) 加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部 微生物学教室) 親泊あいみ(慶應義塾大学 医学部 微生物学教室)

研究要旨

本研究では、HIV 陽性者男性カップルに対する不妊治療と、精液を介した感染制御に関する基礎的検討を行 った。 HIV 陽性者男性カップルに対する不妊治療に関しては、三つの医療機関と一つの検査機関から構成されるユ ニットにおいて、HIV 陽性である夫精液から改良型 Percoll-Swim up 法により HIV を除去した精子浮遊液を使 用した体外受精-胚移植により、10 年間に妻および出生児に対して一例の感染も起こさずに 187 組の夫婦中で 95 組において生児を得ている。 また、精液を介した水平感染の制御を考えるとき、精液中のウイルス量とともに精液中の HIV 治療薬濃度の 測定も極めて重要である。この目的で、今回イオントラップ型 LC/ MSnを用いて HIV-1 非感染精液に添加した 4 種の抗 HIV 剤(ダルナビル(DRV)、ラルテグラビル(RAL)、テノホビル(TDF)、アバカビル(ABC))の検出と 信頼性検定を行った。その結果、精液からの添加回収率は 90%以上、検量線は 0.1 ng/ml-500 ng/ml で 4 種の 化学療法剤を検出可能であり、さらに質量分析法(MS)においてはそれぞれの分子イオンピークを確認すると 共に MS フラグメントの帰属が出来た。 さらに精液中ウイルスの高感染性の原因は精液に含まれる遊離ウイルス粒子内でおこる細胞侵入前の逆転写 開始によるという仮説を検証するため、精液からの遊離ウイルスの分離法を検討した。その結果、70%パーコー ルに 20%パーコールを重層し、精液洗浄と同様に傾斜回転型密度勾配作成器で作成した勾配を用いて、ウイル ス、PBMC、精子を分離する至適条件を定めることが出来た。 研究目的 1) HIV 陽性者男性カップルに対する不妊治療 わが国において HIV 感染者は徐々に増加しつつ あるが、HAART 療法の導入により、HIV 感染者の予後 は改善されている。その結果、HIV 陽性男性、陰性 女性夫婦において挙児を希望する症例が増加してい る。従来、このような夫婦に対しては妻の二次感染 の可能性を考慮し、避妊が指導される状況であった。 このような状況の中で、われわれは HIV 陽性である 夫精液から改良型 Percoll-Swim up 法により HIV を 除去し、この精子浮遊液を使用した体外受精-胚移植 により、妻が二次感染することなく、妊娠しうるよ うな生殖補助技術の開発を行い、成果を上げてきた。 このたびの研究においては、さらに症例を重ね、本 療法の有効性、安全性について検討を進めた。一方、 近年生殖補助医療を受ける女性の高年齢化が指摘さ れており、本療法を受ける患者夫婦についても同様 の傾向が認められている。一般に妻の年齢が高年齢 になるにつれて、生殖補助医療の有効性(妊娠継続 率)が低下することが指摘されている。そこで、本 療法に関して、妻の年齢により妊娠継続率がどのよ うになるかについて検討した。 2) 精液中 HIV 化学療法剤濃度測定を基礎とした感 染制御の研究 精液を介した水平感染の制御を考えるとき、精液 中のウイルス量とともに精液中の治療薬濃度の測定

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表 1:培養された間葉系幹細胞数  2ml 骨髄液から産生される骨髄間葉系幹細胞数   症例 1  3.0 x 10 6 個 症例 2  1.6 x 10 6 個 症例 3  1.5 x 10 6 個 対 照  1.0 x 10 6 個                                                       図 1:骨髄間葉系幹細胞から誘導した軟骨細胞(トルイジンブ ルー染色 pH7.0)40 倍  図 2-4:症例 1-3 の培養 20 日目培養間葉系幹細胞のフローサ
図 4-a:CD45  図 4-b:CD14  図 4-c:CD34  図 4-d:CD105  図 4-e:CD166  図 4-f:CD31  表 2:核型分析と染色体数  核型分析  染色体数  症例 1  (1 継代)  異常無し (10/10 細胞)  異常無し (50/50 細胞)  症例 2  (1 継代)  異常無し (10/10 細胞)  異常無し (20/20 細胞)  症例 3  (1 継代)  異常無し (3/3 細胞)  異常無し (3/3 細胞)  対照  (2 継代)  異常無
図 1:検 体採取手順
表 3  「貴院から HIV 感染患者の透析治療を依頼した透析施設に対して、(祝日や夜間対応のため)HIV 暴露後予防内服薬をあらか じめ貸与などされていますか。」との質問への反応  透析施設に対して、(祝日や夜間対応のため)HIV 暴露後予防内服薬をあらかじめ貸与    貸与しない  108 施設(69.7%)  希望があれば貸与などする  36 施設(23.2%)  原則として貸与などする  11 施設(7.1%)  (5) 拠点病院による地域の医療施設に対する HIV の 啓発活動  拠点病院による地
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参照

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