Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design景 観 法
か ら
見 え
て
く
る
も
の
一
デ ザ イ ナ
ー
の
社
会 的 役 割 が 問 わ れ
て し
・る
As
Seen
from
the
Perspective
of
the
Landscape
Act
−
What
is
a
Duty
of
Designer
in
his
Society
?
黒 川 威 人
KUROKAWA ・Taketo 金 城 大 学短期 大 学 部Kinjo
junior
college景 観 法 研 究 特 別 部 会 会 長
Chairof
the study−
group
ofthe
Landscape
Act
1 .
明 治 以降
に 失 わ れ た も の 失 わ れて初 めて その価 値 が 分 かるとい うもの は少 なくない が、
景 観 は ま さ し く そ れ に 当 る だ ろ う。
景 観 法 が 施 行 さ れて、
日本では よ う や く地 域 固 有の景 観 に 価 値 を 与 える格 好 に は なっ た が、
明 治 維 新 以 降、
日本の景 観 は 日本 人 自 身 に よっ て、
価 値 のないものとして軽んじ ら れ 続 けてき たとはいえ まいか。
長い鎖 国 を 解いた 幕 末 以 降、
我 が 国で は 西欧 列 強 と 肩 を 並べ る た め に、
殖 産 興 業・
富 国 強 兵 が 焦 眉の急 を 要 する課 題であ り、
景 観 どころ では な かっ たであろうこと は 想 像 に 難 く ない。
し か し一
方、
日本の景 観の価 値 を 認 め、
世 界 に紹 介 してき たの は、
幕 末 か ら 明 治 に か けて海 外 か ら やっ てき た西欧 人 た ちで あっ たこと に 思いを 致 さね ば な らない。
渡 辺 京二の 「逝 き し世 の面 影 田」 に は、
そ う し た 西 欧 人 た ち が 驚 異の眼 差 しで日 本 の景 観 や 文 化 を 見ていたことが 記 さ れてい る。
既 に 産 業 革 命 が 機 械工業 を 中 心とし た 第2
次の ピー
ク を 迎 え、
環
境の悪 化 な ど負
の遺 産 も また拡 大 し始めて いた西欧 諸 国 にとっ て、
未だ汚 染 さ れて い ない日 本の景 観は、
それは愛すべ き、
美しい風 景だっ たのであ
ろ う。
西欧
の都市
が失
ったものが そこには確 実
にあっ た。 と こ ろが 日本
人には そ れ が 見 えていなかった。 そ して、
第
二次大戦後
、
戦 勝 国ア メ リ カ か ら の一
方 的な文物
の受容
が な さ れ たこ とを考
え合
わ せ る と、
日本 人
は幕 末
か ら同じ過 ちを繰
り 返 し て い る よ う に私に は見え る。
2000
年
に施行
さ れ た 大規模
小 売店
舗 立 地 法(
大店
立 地 法)
な ど も外
圧 によるもの であっ た と されるが、
郊 外の ロー
ドサ イ ドに大 規 模 店 舗 を 乱 立 させ、
中 心 市 街 地 をシャ ッター
通 り化
させ た 例 等 は記憶
に新
しい。
輸 出 立 国 を 守るためとはいえ、
目先の利 益に走 り、
か け がえ のない 固 有の文 化 を 始 め、
町 並みや 景 観 を 破 壊 してき た 罪 は 大 きいと いわ ね ば な ら ない。
根 底 に は、
明 治 以 来の西 欧 に 対 するコ ン プ レックスが あ り、
我 が 国のものは すべ て劣っ ていると考 える精 神 構 造がある。
日本 中の都 市で し ば し ば繰り返される西 欧 風の 町並 み や、
テー
マパー
ク 型の都市
開 発 は その端
的 な 現 れとい え よ う。
「景 観 法 」 を機 に、
こう し た 精 神 構 造 を 根底
か ら 払 拭 す る方 策も ま た求め られるの で ある。
2
.
景 観 法
研究 特 別 部 会
の誕 生
こ こ で 「 景
観 法特 別
研究部 会
」 につ い て若
干の解 説
と活動
の 歩み を紹 介し て お き た い。
時 限 に よる 「景 観 法 研 究特
別 部 会」が 発 足 し たのは2004
年6
月 の こ と である。
こ の年6
月18
日 「景観 法 」 を含む い わ ゆ る 「景 観緑
三 法」 が国
会で成 立 し公布
さ れ た、
折
し も 学 会 は 春 期 研 究 発 表 大 会のさ な かであっ た。
所 は東 京工科 大 学のキャンパ ス で大 会2
日 目の昼 過 ぎであっ た よ う に 覚 えて い る。
杉 山 会 長 と顔 を 合 わ せ た 際、
前
日の国 会で の 「景 観 法 」 成 立 を機
に 時 限 の 研究 部 会 を 立 ち 上 げよ う で はないか、
と当 時 副 会長 であっ た 私 に 対 し相
談 が 持 ち か け ら れ たの であった。
直
ちに会 場内
にい た 環 境デザイ ン部 会の会 員 た ちに声 を か け回り、
こ こ に にわ か 作 りでは あっ た が 時限
の研 究 部 会 が 誕 生 したの である。
日本デザイ ン学 会 とし て はやるべ きことが2
つ あると思わ れ た。一
つ は、
全 国の自 治 体 に おい て実 施 さ れて い るお よ そ500
に 及 ぶ 景 観 に 関 する条 例の実 態 を 把 握 する ことであ り、
今ひと つ は 景 観 法の成 立 に よっ てそ れ が どのよ うな 変 化 を 見 せるかの 調 査である。
これらが 把 握 され れ ば、
自 ず と 我 々 が 今後 何
を、
どの よ う に な すべ きなのか が 浮 か び 上 がって くるであろうと考 え た のであ る。
事 務
局には千葉
大か ら八 馬会
員、
拓殖
大学
の永
見会
員 そ して 環境
デザ
イン部
会で も 活 躍 して いた女 子 美 術 大 学の平 松 会 員 に お願いす る こ と と し、
まず
は 全国の自治 体に対し、
アンケー
ト を出
し て実態
を調べ る作業
に着 手
する こ と と なっ た。 こ の間の こ と は シ ンポ ジウ ム の報告
に詳し い の で詳細
は割 愛
す るが、
環境
デザイ ン部 会
に は全 面 的に協
力いた だく こ と になっ た。 しか し、
当 時は行 政 改 革の一
環で市町村 合 併 が 進 行しつつ あっ た 関 係 も あ り、
第
1
段階
と して会員
が 所 属 する自 治体
に対 して の ア ン ケー
トを 実 施 する こ と と し、
正 月休み 明け を 期 限と し て行 わ れ た。
こ の成 果 を 踏 ま え、2005
年 に 入っ てか ら は 九 州 大 会で 予 定のオー
ガ ナ イ ズ ドセッ シ ョ ン を視 野 に 入 れ 全 国の 自治 体 に 対 して調 査 を 行 う予 定であっ た。
し か し全 国の 自 治 体 数 は膨 大 な数に 上 る 上、
先 述し た市 町 村 合 併の影 響が大きいと考え られ た ところ か ら、
とりあ えず
は 全て の都
道府
県に対 して と、
景 観条
例 を 制 定 している 中でも主 要 な自
治 体 に 限 り発 送 す るこ と と し た経 緯が あ る。
ま た京 都 芸 大の藤 本 会 員が、
自らの学 位 論 文 の テー
マ と し て、
自治 体の景 観へ の取り組 みを テー
マ と し て既 に アンケー
ト調査 を実 施して い た こ と か ら、
こ の調査 に合流 さ せ て い ただく形
で、
4
月 以降
の町村合 併
が終
わっ た時 点
で の動
き を追 跡し よ う と い う こ と に なっ た の で あ る。
ただ国 に よ る市2
デ ザ イ ン 学 研 究 袴 集 号 special issueofiapanesesocietyforthescienceofdesign vol.
15−
1 nD.
5ア 2007 N工 工一
EleotronioJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design町
村合 併 推
進の余 波
は、
担 当部
局確
認の煩雑
さ以上
に、
多
くの 合 併 自治 体で は ど の よ う に取り組む か の方 針 すら決まっ て いな いとこ ろが多
く、
これ が 回答率
に反映
してい る。
九
州 大 会での セッションは その意 味
では 時宜
に か なっ た もの であっ た。
この セ ッ シ ョ ン を機に それまで環 境 デ ザ イン部 会 に 参 加 していな かっ た会
員か ら も研 究 部 会へ の参 加の申 し 込 み が あ り、
景 観 法 に対す る学会
員の意
識の高ま り が感じ られた。
また多 くの会 員 が何
ら か の形で地方
の景 観 行政
に係っ て いることが 浮 か び 上 がっ た。
こ れ は、
景 観ア ドヴァイ ザー
等の制 度を早 期に確立す る必要性
を示 してお り、
同時
に、
その資格
としてどの よ う な 経 歴・
学歴・
技 能を 求 め る の か等の指 針を今 後 早 急に検 討 する必要性
を示唆
して い る。
研 究部 会
と し て は、
時
限の研 究 会であ ると ころ か ら 上 記 を 踏 ま えつ つ、
九 州 大 学での大 会を一
つ の 区 切 りと考 え、
そのまと め を特 集 号
と し て出版
す るこ とで終 了 させたい と考 えていた。
こ の た め セッショ ン以 後は特 集 号の執 筆 者と して各 地の 事 例 を報 告
し て いた だ くこ とや、
景観
ア ドヴ
ァイ ザー
等の制度
に 関 す る提 案 を 紙 上で行う事
に よ り、
会 員と しての責 務を果た して い た だ く事
としたので ある。3 .
景 観
アドヴ
ァイ ザ
ー
に求 め られ
るも
の景観
法の概
要につ い て は本
誌に永 見 会 員 に よ る 「景 観 法の概 要」と 景観 緑
三法の要 綱が掲 載されて いるの で、
詳 細 は そち ら を参
照 され たい。注目 すべ き は
、
我 が国初
の景 観に関 する総 合 的 な 法 律とし て、
「国 土 交 通省
」 「農林
水 産省
」 「環境省
」 の3
省
が関 わっ て いる事で ある。
ま た、
従 来の古 都 保 存 法や文 化 財 保 護 法に よ る 保存
地 区の場 合 は、
非 常 に 限 られ た2特
別 に価 値
のある地域
に し か認め られて い な かっ た 景 観の保 全 を、
広 く日本の国 土 全 体 を対象
に したこ とであ る。
加 えて、
これ までは 景 観 をいか に 保 全 して い く か という点に力 点が置 か れて い たのを、
「地 域の個性
を伸
ば す よ う多
様 な 形 成 を 図るべ き」 とし て地 域に合っ たデ ザイ ン や色 彩を考
え、
よ り質の高い景 観を 「創 出 」 して い くと い う視 点
が 加わっ た事
であろ う。
こ こ で
、
我々 が こ の法
律 を ど の よ う に 生 か す か に 付いて考 え て み た い。
そ の一
つ と して景 観 法の第11
条に注 目したい。
条 文の主 要 な部
分は下 記の よ う に なっ て いる。
第
十一
条
一
帯と し て良 好な 景観を 形 成 すべ き 土 地 の区 域としてふ さわ しい
一
団の土 地の区 域であって制令
で定め る規模
以上のものにつ いて
、
当 該 土 地の所 有 権又 は建物
の所 有 を 目 的とす る 対 抗 用 件 を 備 え た 地 上
権
も し く は賃借 権
を有
する者
は一
人で ま た は 数 人 が 協 同 して、
景 観 行 政団体に対し、
景観 計 画 の策 定 又 は 変 更 を提 案 す ることが 出 来る。
こ の場 合におい ては
、
当 該 提 案に係る景 観 計 画の素 案 を 添 え な けれ ば ならない。こ の
条
文の後 半
で、
地 域
で活 動
するNPO
法 人 や
公益 法 人等
か らの 提 案を受け入 れる可 能 性を示して いる点に 注目し た い。
ま た 第 五章
では 景 観 行政
団 体の長 はNPO
法
人等
か らの申請
に よ り 「景 観 整 備 機 構 」 に 指 定 す る 事 ができ る と してお り、
景 観 整 備 機 構 は 「良 好 な 景 観の形 成 を促 進 す る た め に 必 要 な 業 務 を 行 うこと。
」 を 認 めてい ることであ る。
デ ザ インはこれ まで、
産 業の 中 に 取 り込 ま れた形で発 展 して き た た め、
デ ザ イ ナー
が 社 会の中で一
人の 生 活 者 と してデ ザ イ ン提 案 を 行 うということ に は潰 れて いない。
ま た従 来のデ ザ イ ン教 育の問 題 点 と して、
大 企 業のデザ イン部 門へ の就 職 に 偏っ て い る現 状があ る。
し か し、
環 境 デ ザ インは一
個のプロダ ク ト 製 品 を 作 り出 す工程 と は 異 な り、
広 く地 域 社 会 全 体 と か か わ り 合っ て、
提 言 を 行っ てい く必 要 が あ り、
今 後 は 自 らの考 え に よっ て、
住 民 に 語 りか け、
行 政 やデベ ロ ッパー
を 動 か し、
地 域 の 景 観 に 対 し能 動 的 に 働 き か けてい く という姿 勢 が 必 要 に なっ て く るであろう。
も う
一
点 留 意 してお く事 が あ る。
そ れ は 景 観ア ドヴ
ァイ ザー
等の資 格 を 与える 教 育の アクレディテー
ショ ンに 含 め るべ き 内容
の問 題である。
例 え ば、
お 江 戸 日本 橋の真 上 を 首 都 高 速 道 路 が走 る 等という 今 日で は 信 じられ ない よ う な 計 画 に 対 す る評 価 は、
工 学 的 知 識 だ けで はでき ない ことである。
効 率 よ く車 を 走 ら せ る た めのカー
ブ や 出 入 り口 のランプ を 計 算 す ること はでき ても、
歴 史 あ る 橋の上 を 高 速 道 路 を 走 らせ る事 が 妥 当 か ど う か は 計 算では 出てこないか らであ る。
ア メ1丿力の
NASAD
(National
Association
ofSchools
ofArt
and