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〔資 料〕 鞍馬寺所蔵 鞍馬寺融通念仏会再興関係資料

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Academic year: 2021

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(1)

解題  鞍馬弘教総本山鞍馬寺所蔵の融通念仏会再興関係資料を紹介する。いず れも巻子本で、 「融通念佛會  書類四卷 / 鞍馬寺」 と墨書された桐函に 整理番号を付して納められている。以下の四点である。 ・融通念仏再興縁起 (二〇七一番。縦二七二 長二一〇五㎜) (奥) 宴 保丁酉二年五月十五日 東湖安養沙門湛堂慧淑敬  ・融通念仏会規約 (二〇七二番。縦二八〇 長一三一一㎜) (奥) 宴 保丁酉二年 鞍馬寺九院連署 會行事大蔵院明本 ・融通念仏再興由来記 (二〇七三番。縦二七八 長一一七三㎜) (奥) 中川 常宇 誌 ・中川常宇居士の疏 (無番 書名なし。仮称。縦二七七㎜ 長未計測) (奥) 京城優婆塞中川 常宇 疏 右の資料が鞍馬寺に所蔵されていることは柴田六五郎氏 状記 上中下 並續 』 (昭和五七年一二月、 南無山房) によって知った。 宝の翻刻と写真掲載を御許可下さった鞍馬寺様に感謝奉る。 ※ 享保二年 (一七一七) 丁酉五月十五日、 鞍馬寺で融通念仏会が再興され た。 その日は六百年前の永久五年 (一一一七) 丁酉五月十五日午刻、 の良忍上人が阿弥陀仏から速疾往生 融通念仏の法門弥陀の妙偈と十一尊 天得如来の白絹御影を直授されたと同月同日であった。この日は鞍馬寺大 蔵院において一山九院の集会によって融通念仏再興会式が執行され、この 会式を毎歳四月四日の恒例行事とすることが約定された。それは天治二年 (一一二五) 四月四日、鞍馬寺の毘沙門天王が諸天善神を勧進あって、その 名を記した名帳一巻を良忍上人に授与されたと同じ月日を記念してのこと であった。 学苑 資料紹介特集号 第九〇一号 九九~一一八(二〇一五 一一)

鞍馬寺所蔵

鞍馬寺融通念仏会再興関係資料

関口

〔資 料〕

(2)

鞍馬寺における融通念仏会の再興が成就したについては、会行事となっ た馬山大蔵院明本と優婆塞中川常宇居士の尽力があった。常宇は篤信の念 仏者で、 正徳三年 (一七一三) 春より菩提寺たる伊勢松阪三縁山清光寺を 拠点に山主善誉幡貞を発起主として十万人講念仏会を興し、江戸増上寺主 祐天大僧正から賜った小字の名号札を印施して諸人勧化に精魂を傾けた。 風潮は世に流行し、法縁を結び念仏百声を誓った衆庶は五十万人に及んだ という。次いで常宇は鞍馬寺の融通念仏会の再興に心血を注ぐ。まず馬山 伝統の一乗妙典如法写経会を再建し、享保元年春には自家秘蔵の『融通大 念佛本  』(二巻。 詞書青蓮院道円親王 画土佐古将監光信) を二度までも 今上中御門天皇の叡覧に供して天皇はじめ准母承秋門院の入会を得ると、 翌二年正月十五日大源山大念仏寺忍通とともに馬山に参詣して毘沙門天王 の鴻恩を謝し、十院の集会に旨趣を演説して一山僧衆の入会同心を得、鞍 馬寺融通念仏会の古風再興を成就したのだった。 常宇 (一七二四没) は勢州松阪を本貫とする豪商中川家の三代目清三郎で、 同地の豪商三井家の一族であった。 三井北家初代高利 (法名宗寿) は中川 家初代浄安の長女かね (寿讃) を娶り、 二人の五女みか (寿嶺。 一六七九  一七二四) は常宇に嫁いだ。 しかし常宇 常立兄弟は家業を忘れて仏道に 入り、ことに常宇は江州日野の木食澄禅に帰依して妻 一女とともに出家 し、洛東聖 護 院門 前 に 構 え た 培 蓮居なる自 邸 に仏 殿 を 造作 して 荘厳 し、ま た松阪の清光寺を拠点に 催 した十万人講 や 、鞍馬寺の融通念仏会再興に 莫 大の施 財 をして家業を傾けたから、三井家から商人 失格 の 烙 印を 捺さ れた 人 物 であった。 北家二代高 平 (宗 竺 ) の 遺言状 には家業を忘れた常宇と常 立を 義絶 した旨の 記述 があり、 また北家三代高 房 ( 崇 清) が大 町 人の 栄華 と そ の没 落 を書 き留 めた『 町 人 考見録 』に常宇兄弟の 所 業を 詳 述 し、 先祖 の 冥 加 を忘れ、心のままに ふ るまった ゆ え の天 罰 であると 強 い 非難 を 記 し ている。 しかし 広く 仏 教文 化 史 の 視 点から中川常宇の行 実 を 見 れ ば 、常宇の 果 た した 功績 は 特筆 さ れてしかる べ き ものと 思わ れる。 そ してまた常宇の行 実 の 背景 には木食 弾 誓の再 来 という木食澄禅 や 当 代一流の 律匠 と 称 さ れた 湛 堂慧淑 があったことは忘れてはなるまい。馬山大蔵院において融通念仏再 興会 式 が 始 行 さ れた そ の翌日には、常宇は山また山を 弥陀 寺山上の澄禅を詣してこれを 報告 し、 随喜感 鉢仙 人より 付与 さ れたという 持 蓮 華 一 茎 を 授 けられたのである。また は 『 鞍馬寺融通念佛 會 再興 ノ  』に 満 山十院の入会と 『中興融通念佛 會 規 約 』 は九院の 連署 であって一院を 存 したのである。お そ ら く 天 台 所 立の馬山が大源山 ぬ と 危惧 を 抱 いたのであ ろ う。 そ うした 異議 を 封 ずるためにも 実 践 して衆庶の 尊 崇 を集める木食澄禅 や 安 養 寺 湛堂慧淑 ったものと 考 え られる。 そ れについては 別 に 述 べ たい。なお あたっては 可能 なか ぎ り 原 文 の 表 記 を 尊 重 した。 ☆(上) 永久 五年五月十五日 午 刻 、 阿弥陀 仏 来 現 して 良 来 の御 影 を 授 く 。( 『融通大念佛  』上巻) ☆( 下 )天 治 二年四月四日、 良 忍鞍馬寺通 夜 の 時 、 毘沙門天王、 名 帳 一巻を 良 忍に 授与 す。 (同)

(3)

翻刻 1  □□ □宗 鞍馬寺融通念佛會再興 ノ 縁  原 ルニ 夫 レ 融通念佛會 ハ 昉 ル 二於大原山 ノ 良  上人 ニ 一融通念佛 ハ 者廻 シテ 二 我所唱 ヲ 一 シ 衆 人 ニ 一衆人之唱又通 スル 二 于我 ニ 一 是 レ 也 ナリ 其功踰 ルハ 二 于獨稱 ニ 一者萬萬 ノ 耳 ミ 何 トナレ 者 ハ 衆生無邊 ノ 故 ニ 上人於 テ 二永久丁酉五年五月十五日 ニ 一 感 ス 二阿彌 佛親 ク 授 クルコトヲ 二 此訣 ヲ 一 又鞍馬寺 ノ 毘 沙門天王令 メ 下諸天善神 ヲシテ 一 皆入 ラ 上二 其會 ニ 一 テ 護 ス 二同舟 ヲ 一 於 テ レ ニ 普 ク 勸 ム 二四部 ヲ 一 逮 テ 下 鳥羽上皇與 二皇后 ト 一 入會 シ玉フニ 上 德風之被 ル 翕 キフ 然 トシテ 化 ス レ 之 ニ 至 テ レ 今 ニ 六百載事 ニ ト 雖 トモ レ 未 タ ストレ 息 マ 較 フルニ レ ニ 甚 タ 微 ナリ 京兆 ノ 中川常宇居士常 ニ 以 テ 為

(4)

ミト 切 ニ 欲 ス 二再興 ヲ 一 ニ 謂 ヲ ク 以 テ レ ヘヲ 料 ルニ レ 今 ヲ 幌 シ 非 ンハ レ 有 髙貴人 ノ 入會 シ玉フコト 一 其化 ノ 及 フ レ 物 ニ 必不 ト 二普廣 ナラ 一 由 テ レ レニ 詣 シテ 二 鞍馬寺 ニ 一 乞 フハ 二 天王 ノ 冥祐 ヲ 一 有 リ レ年矣 心願不 レ カラ 至 テ 二 去年丙申 ニ 一 シテ 有 リ 二 今上皇帝及 ヒ 國母承秋門院入會 シ玉フコト 一 下 至 二 人 一 俘 シ レ ト云コト 二 霑益 セ 一今春正月十一日 居士詣 シテ 二 鞍馬 ニ 一 ク 謝 ス 二 ノ 恩 ヲ 一 歡喜 シテ 雨 シ レ  ヲ シテ レ ヘ 失聲 ス ニシテ 而又謂 ヲ ラク 古 ヘハ 者此 ノ 山 ノ 衆 皆 入會念佛 シテ 自利利人 ス 而 シテ 在 テ 二 今時 ニ 一 不 二 タ 聞 カ 一 焉若 シ 有 ラハ 三 合 シテ レ 志 ヲ 復 ヘルコト 二 其 ノ 古風 ニ 一 利益何 ソ 淺 鮮 也 ランヤト 遂 ニ 發願 シテ 復 タ 祈 ル 二 之 ヲ 天王 ニ 一 ニ シテレ 歸 ラント 訪 ヒ 二 印明本 ヲ 於山内 ノ 大蔵院 ニ 一 ニ 陳 フルコト 如 シ レ 此 ノ 且 ツ 曰 フ 某 シ 多年詣 ス 二此山 ニ 一 素 ヨリ 非 ス レ 祈 ルニ 二 己 カ 福報 ヲ 一 レ ハ フ 者唯 タヽ 是 レ 此 而 ノミ 已毎 ニ レ 晤 フ 二 法印 ニ 一 タ 二 嘗 テ

(5)

談 シ 及 サ 一 而今果 ス 二其所 ヲ 一レ 冀 フ 故 ニ 不 レ 得 二 タ 默 スルコトヲ 一 三 キハ 其 ノ 於 テ 二 此山 ニ 一 二 スルカ 古風 ヲ 一 チ 在 ンノミ 二 諸院主合 セ レ ヲ 用 ルニ 一レ 力 ヲ 法印聞 テ レ 麻 然 トシテ 無 シ レ レ フル 良 久 シテ 乃 チ 言 ク 予 カ 先師盛純前 ニ 住 ス 二 當院 ニ 一 ニシ 二 心 ヲ 利濟 ニ 一 於 テ レ 善 ニ 勇 ム レ 為 スニ 嘗 テ 謂 ヲモヘラク 本山昔 シ 有 二 如法 冩 ノ 妙 融通大念佛 ノ 兩會 一今廢 シテ レ タリ 久 キヲ  シ セハ 二 再興 セント 一 責 メ 在 リト 二 我 カ 儕 ミニ 一 於 レ是先 ツ 建 テヽ 二 冩  會 ヲ 一 ニ 成 ル 次 ニ 欲 シテ レ 啓 ント 二 融通會 ヲ 一 未 タ スシテレ 果 サ 而沒 ス 予 雖 トモ 二 不肖 ナリト 一 常 ニ 以 テ 二繼述 ヲ 一 レ 懷 ト 今聞 ニ 二居士 ノ 冬 ヲ 一 レ 語 ル 啄相 ヒ 合 ス 非 スシテ 二 天王 ノ 靈被 ニ 一 而何 ソ 予激 二 發 シテ 本山 ノ 衆 一 ヲ 共 ニ 成 サハ 二 此事 ヲ 一 チ 逢 幾 クハ 不 三 止 タヽ 扶 クルノミナラ 二 居士 ノ 大志 ヲ 一 亦 レ ンノミト 償 フコトヲ 二 先師 ノ 遺願 ヲ 一  日居士與 二大源山大念佛寺主 通 上人 一 二 晤 ス 於洛 ノ 之寓居 ニ 一 因 テ ルニ 以 テス 二 昨日 ノ

(6)

事 トヲ 一 上人驚 テ 曰 ク 予 モ 亦昨詣 ス 二鞍馬 ニ 一 而其心 中 ノ 所念與 二 居士 一冥符 スルコト 如 シ レ カ レ 所 ロ レ スル 二人 相喜 テ 以 テ 為 二竒特 ト 一 大源山 ハ 在 リ 二 ノ 之平野 ニ 一 潔 シ 昔 シ 大原 ノ 初祖開 テ 二 化 ヲ 諸州 ニ 一各有 リ 二 遺跡 一 此山亦其隨一 ニシテ 而今梵刹猶 ヲ 盛 ンナリ 上人 賜 フテ レ 紫 ヲ 住持 シ 揚 ク 二其法化 ヲ 一 ソ 有 レハ 二 入會 ノ 者 ノ 一 チ 授 クルニ 以 テス 二 其 ノ 信 ヲ 一所謂 ル 淨業印符 ト云 者 モノ ナリ 也三月 十八日居士復 タヒ 詣 シ 二鞍馬 ニ 一 偶 タマ  値 ヘリ 二 十 ツ 子院 主 ノ 集會 スルニ 一 皆聞 テ 二居士 ノ 素願 ヲ 一 隨喜讃嘆 シテ 便 チ 入 リ 二 其 ノ 會 ニ 一 誓 テ 欲 ス 下 自行化佗與 二 山川 一 同 フセンコトヲ 中 其 悠久 ヲ 上十院主 ハ 者福生院香海圓光院 賢冲妙壽院仙空瑞照院秀興寳積 院慈忠 祥院實雄月性院證寂大 蔵院明本歡喜院文 戒光院贒道 ナリ

(7)

也居士多 ク 得 テ 二 其 ノ 同志 ヲ 一 益勇 ム 二 於利佗 ニ 一 ニ 欲 ス 四 テ レ 處 ニ 出 シ 二 其 ノ 印符 ヲ 一 メント 三 入會 ノ 者 モノ ヲシテ 二 カラ 於朝 野 ニ 一 ニ 二大源山主 テ ノ 之許 シヲ 一 従 フ 二 事 トニ 于此 コヽ ニ 一 モト 有 テ 二融通念佛和詞 ノ  一 ヒ 傳 フ 而 シテ 其 ノ 中 カ 未 タ スレ 免 レ レ 有 ルコトヲ 二 繁略 一 居士因 テ 為 ニ 加 ヘ 二 刪 サン 補 ホ ヲ 一 新 ニ 二 ンテ 一卷 ヲ 一 ク レ 之 ヲ 噫 アヽ 居士 ノ 之志可 シ レ 謂 ツ レ タリト 矣仲 夏 ノ 初 メ 余應 シテ 二 居士 ノ 齋 ニ 一 ミ ル 二 靈 遍 所現 ノ 毘沙 門天王 ノ 像 ヲ 一 乃 チ 是 レ 居士所感 ノ 者 ノナリ 也其 レ 當 テ 二 此 ノ 時 ニ 一 感 二 ス 是 ノ 靈像 ヲ 一 ニ 亦 タ 偶然 ナ 哉 ランヤ 居士 以 テ 二 其 ノ 所願皆 ナ 得 ルヲ 二 滿足 スルコト 一 不 レ 禁 タ ヘ ニ 歡 一 ニ レ フテ 余 ニ 文以 テ 二 セシメ 其 ノ 由 ヲ 一 勒 シテ 二 之 ヲ 赤金 ニ 一 ク 鎮 ス 二 鞍馬 ヲ 一 ソ 来詣 ノ 者 ノ 讀 テ レ ヲ 知 ラハ レ 有 ルコトヲ 二 其 ノ 事 ト 一 チ 誰 カ 不 ンヤ レ 希 二 欲 セ 其 ノ 入會 ヲ 一 哉果 シテ 有 ラハ 二 希欲 スルコト 一 者應 ニ シ下 於 テ 二 十子院 ニ 一 隨 テ 謁 シ 二 其 ノ 一 ニ 一 従 テ 二 院主 ニ 一 ケ 二 印符 ヲ 一 テ 期 シ 二 毎日

(8)

念佛百聲 ヲ 一 メテ 二 未来際 ヲ 一 永 ク 無 ル 中退轉 上 二 キハ 謝 スルニ 以 スルカ 一レ 物 ヲ 亳 モ 亦 タ 不 レ 許 サ 但 タ 以 テ 二 决誓猛信 ヲ 一 セハ レ 之 ヲ 可 ナリ 也功德之利 洛 ク 及 ホシ 二 一切 ニ 一 同 ク 生 シテ 二 樂土 ニ 一 證 セン 二 大菩提 ヲ 一 レ 居士再興 ノ 之志 ナリ 也  宴 保丁酉二年五月十五日 東湖安 沙門湛堂慧淑敬  印印

(9)

翻刻 2  圓水鏡 中興融通念佛會 約 一毎歳會式建道場於大蔵院 以四月四日為定日當山 天王以此日授諸天善神入 會名簿於良 上人今欲上 酬 天王之神恩而啓此會 於當山乃表不忘其本者也 一當會所修功德併 古今同 行諸人先修引聲彌 經法 次舉和辭讃文後唱念佛一 千 慇懃咒願同法 人存

(10)

者福樂消災信力堅固亡者 離苦超曻增進菩提 下 言後 来 俘 妄增損 法矣 一毎會唱舉樓門水 冬 鑄  和 文以令隨喜諸人知一 會中興之始末勿厭勞煩略 定 矣 一當日齋饌不得盛美兼禁飲 酒雜話等一切非法之事 一自行不立則何能及化佗合 山 衆一其志願策勵信行 而後宜 融通勝行流 萬

(11)

國一切衆生同生浄土也  其不信放 濫厠法會者不 啻違背願主中興之善心抑 又孤  天王平生覆護之 大恩者也 右五條 宴 保丁酉二年 鞍馬寺 福生院執行法印香海 月性院權別當法印賢冲 妙壽院仙空 寳積院慈忠

(12)

祥院實雄 歡喜院文啓 戒光院賢  圓光院 會行事 大蔵院明本 明 本 印

(13)

翻刻 3  培 居 爰に融通念佛の濫觴を尋るに洛北大原 の大德良忍上人永久五年五月十五日阿弥陀 佛より直に授りたまひしに事起りて 少分の行をもて廣大の功德を得るの勝法 たり其頃上一人より下万民まて此會に入 あまさへ當山の毘沙門天王入会ましまし猶 諸天善神を勧て会に入れ同會同行の 人を随逐護念せんと誓給ひしより此法 普く貴賤に蒙り其利等く冥顕に及ひて 既六百年の星霜を經たり然るに世隔り 源遠くして流れ時にあまねからされば予

(14)

おほけなき心願を發せり上一人を始奉りて 道俗貴賤并當山の僧衆悉同心入会し夫 より廣く諸國に傳へて等く出離の門に おもむかしめたまへと此幾年か當山天王の 御前に祈り奉りしが し丙申の年かの願 如意滿足しわきて當山の僧衆随 常な らず廣く諸方にをよぼし遠く萬代に傳へ ん事を祈願せらるされば當山參詣の諸人 をして其趣をしらしむる方便を思ひまうけて 此水鉢を安置し手にむすぶ水のしるべに 此記をよみて不可思議の功德をしり入会の 志を發さしめんと乞願ふものなり依て有

(15)

信の人に告奉る入會の志あらむ人は當山 の内何れの院にもあれ立入て其志を述べ 入會の日より日課の念佛百遍を誓ひ浄業 の印符を受たまへ又一切の願あらん人は 先此會に入て其願成就せば日課念佛の数を 増んと誓べし先たつ父 眷属のために代て 入会し或は他人を勧ても入しめ現には廣 大の德本をうへ冥には天王の御心にも叶ひた まへ但此会に入人一紙一錢の報謝の財を 出す事を用す さもすゝむる人あらば是 皆法を賣りて世を渡る人としるべし猶委 き事は融通念佛の縁起板行せり故に今

(16)

是を略す と 云 中川 常宇 誌 印印

(17)

翻刻 4  培 居 惟 レ 毎 四月初四日就 テ 二 洛北鞍馬寺 大蔵院 ニ 一 二 建 シ 融通念佛 ノ 道場 ヲ 一 恭 ク 清 メ 二 梵 宇 ヲ 一 テ 備 ヘ 二供儀 ヲ 一 諷 二 誦 シ 東流 ノ 之真詮 ヲ 一 ス 西方 ノ 之洪名 ヲ 一 者右伏 シテ 以 ミレハ 釋尊八萬 ノ 之敎法 ハ 權實各投 スレトモ 二 其機 ニ 一 彌陀六八 之誓願 ノミ  齊 シク 蒙 ムル 二 其益 ヲ 一 永久之 間 タ 大原 ノ 良 上人感 二 シ玉イ 融通 ノ 勝行 ヲ 一 澤及 フ 二于幽顯 ニ 一 遂 ニ 感 ス 下 當山 ノ 多聞天王勸 二 誘 シテ 諸天善神 ヲ 一 ムルコトヲ 上レ 入 ラ 二 ノ 會 ニ 一 良 トニ 以 ミレハ 西方往 生之勝行 ハ 末代出離之 路此會一 ケイ タヒ 啓 ケテ 其益無 シ レ リ 是 ノ 故 ニ 幽冥同 ク 喜 テ 致 ス レ ルコトヲ 二 此 ノ

(18)

神應 一 ン レ 志 二出離 ニ 一 者 モノ 誰 レカ 不 ン レ 喜 ハ レ フコトヲ 二 于此 ノ 際 ニ 一 哉然 ルニ 中古 ヨリ 来 タ 其 ノ 法漸 マヽ 微 ニシテ 唱 ルコト レ 之 ヲ 甚 タ 希 ナリ 矣 弟子立 テヽ 二 分外 ノ 之大志 ヲ 一 致 ス 二 於天王 ヲ ニ 一 宴 保丙申之夏果 シテ 得 タリ レ 如 クナルコトヲ レ 願 ノ 於 テ レ ニ 融 ノ 勝行復 タ 二 シ 于世 ニ 一嗚乎自 ハ レ 非 ル 二 天王 ノ 大威 神力 ニ 一 カ 二 ン ク 々 ノ 寸丹立 ルコトヲ 二 此 ノ 大功 ヲ 一今欲 シテ レ ント レ 酬 ヒ 二 神德 ニ 一 ク 二 ク 此 ノ 會 ヲ 於本山 ニ 一 伏 シテ 願 クハ 此 ノ 行永 ク 傳 ハツテ 二 天下万世 ニ 一 二 導 シ 一切衆生 ヲ 一 業互 ニ 融 シテ 功德 俘 ンコトヲ レ リ 古今同行存 ノ 諸 人同 ク 生 シ 二 九品蓮會之中 ニ 一又願 クハ 弟子平 世所修 ノ 念佛諸善其功不 レ 虚速 ニ 生 シ 二 上 品 ニ 一 二 入 シテ 穢國 ニ 一 シ上リ 天王 ニ 一 シテ 一切 ヲ 一 悉 ク 趣 シメ 二 淨土 ニ 一往還無 ク レ 化々不 リ ンコトヲ レ 唯恐 ヘ ル

(19)

心易 ク レ リ 障縁最 モ 多 シ 伏 シテ 冀 クハ 三寳諸天覆 二 護 シテ 弟子 ヲ 一 レ 二虚假 サ 慢等 ノ 心 ヲ 一 永 ク 令 メ玉ヘ レ 不 ラ レ 二 今日之志 ヲ 一 ニ 願 クハ 子孫世々永 ク 為 リ 二 會 ノ 檀越 ト 一 即 チ 今 マ レ ノ 定 ル 會式 ノ 費用如 ク レ ノ 喜 歳々無 シ ク レ 怠 ルコト 慈悲正直 ニシテ 而歸 二 依 シ 三寳 ニ 一 冨饒壽考 ニシテ 而不 レ 耽 ラ 二世樂 ニ 一 營 二 修 スルニ 善事 ヲ 一 二 自在力 ヲ 一乃至信根堅固 ニシテ 竟 ニ 生 シ 二 浄土 ニ 一 シ 有 ラハ 下 兒孫不 ル レ ラ 二 弟子 カ 之志 ヲ 一 ノ 上 加 ヘテ 二 天王之 威力 ヲ 一 ニ 改 メ 二其志 ヲ 一 幌 シ 不 ル 二 テ 改 メ 一 ノハ 永 ク 離 レシメ下ヘ 二 祖 宗之家 ヲ 一志趣不 レ 多 ラ 直 ニ 伸 フ 二 寸丹 ヲ 一 テ 願 クハ 一 切三寳別 シテハ 當山 ノ 大天王俯 シテ 賜 ヘ 二 鑑 ヲ 一 テ 踵 ス

(20)

京城優婆塞中川

常宇

踵



印印

参照

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