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育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 支援ニーズのグループインタビュー調査をとおして

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Academic year: 2021

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(1)■自由論題報告(査読付論文). 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 ――支援ニーズのグループインタビュー調査をとおして――. 澤田景子(名古屋学院大学). キーワード:ダブルケア、支援ニーズ、地域ケアシステム. 1.はじめに. 迫っていると指摘している。晩婚化・晩産化によ る子育て期に入る年齢の上昇と、高齢化による要. 近年、新たな社会的リスクの一つとして「ダブ. 介護高齢者の増加が同時に進展する中で、ダブル. ルケア」が注目されている。ダブルケアは、2012. ケアを経験する者の割合は今後さらに増加するこ. 年に相馬・山下によって生み出された造語であり、. とが推測される。. 狭義では、育児と介護が同時期に発生する状態を. ダブルケア当事者の負担感は、精神的・体力. 指し、広義では家族や親族等との親密な関係にお. 的・経済的にいずれも高いことが指摘されている. ける複数のケア関係とそこにおける複合的課題. (内閣府男女共同参画局 2016)2)ものの、従来か. (相馬・山下 2016)を指すと定義されている。. らの縦割り行政の下で公的な支援は、分野ごとの. 内閣府男女共同参画局(2016)が就業構造基. 断片的なものに留まっている。このようなダブル. 本調査をもとに算出した推計では、未就学児の. ケア問題の放置は、結婚や第 2 子、第 3 子の出産. 育児と親等への日常的な身体ケアを同時に行っ. をあきらめる(相馬・山下 2017、浅野 2018、成. ている者は全国で 25.3 万人、女性が男性の 2 倍、. 田 2018)といった少子化への拍車、ケア離職等. 15 歳以上に占める割合は約 0.2%との結果であっ. による貧困化や生産労働人口の喪失(相馬・山下. た。しかし、ソニー生命・相馬・山下は、育児と. 2017、平岩 2018)、児童や高齢者への虐待・ネグ. 介護が重なる時期は限られていること、育児は未. レクトの誘因ともなりえ、支援体制の構築は急務. 就学期以降も形を変えながら続いていること、親. の課題といえる。. 等への介護は身体ケアのみならず、家事、買い物、. また表 1 に示すとおり、既存の調査結果からダ. サービスの利用手続き、経済支援など様々な形が. ブルケアの様相は男女で異なっており、特に女性. 存在していることを踏まえ、育児と介護の定義を. は配偶者からの支援が得られていないケースが多. 幅広く捉えた実態調査(2018)1)を行った。結果、. く、心身ともに負担が大きいことが明らかとなっ. 大学生以下の子どもを持つ 30 歳から 55 歳の男女. ている。家庭内におけるケアの二重現象は、これ. のうち、現在行っている者と過去に経験したこと. までみられなかった新しい現象という訳ではない. がある者の割合を合わせると 29.1%となり、子育. が、近年の共働き世帯の増加、兄弟姉妹数の減少、. て世代にとってダブルケアは身近な問題として. 地縁関係の希薄化といった社会構造の変化と、旧. 84 .

(2) のうち「自分の希望で主に関わりたい」と回答. した者(回答数:205名) 表表 1:各調査における性別によるダブルケア実態の違い 1.各調査における性別によるダブルケア実態の違い. 自分が中心となって親等の介護をしている人 割合 のうち「自分以外に主にできる人がいない」と 35.7% 62.4% 調査項目 男性 女性 回答した者(回答数:205名) 育児と介護のダブルケアの 内閣府男女 配偶者によるダブルケア当事者への支援頻度 70.7% 37.4% 希薄化といった社会構造の変化と、 女性がケアを担うべきといった 実態に関する調査報告書 共同参画局 旧来から今日まで続く、 が週3~4回以上と回答した者 (回答数:1004名). タイトル. 著者. ダブルケアで「精神的にしんどい」と回答した 家族規範との間で生じる「ひずみ」が、女性への役割偏重や過重な負担をもたらした結果と 39.0% 54.6% 者(回答数:1000名). いえよう(今野・足立2009、相馬・山下2013)。 ダブルケアで「体力的にしんどい」と回答した. 37.0%. 49.4%. 者(回答数:1000名) このようにダブルケア問題は、現代日本が抱える諸課題が複雑に絡み合う中で生み出され ダブルケアに関する調査. ソニー生命・. 自分が中心となって親等の介護をしている人. たといえる。相馬・山下(2017)は、 「ダブルケアを複数の課題や主体を引き寄せる磁石」 相馬・山下 2018 のうち「自分の希望で主に関わりたい」と回答 60.7% 43.0% した者(回答数:205名) としてとらえ、ダブルケア当事者の状況とニーズに基づいた「自治型・包摂型・多世代型地 自分が中心となって親等の介護をしている人. 3) 域ケアシステムの構築」が急務の課題であると述べている 。筆者は、すでに女性ダブルケ のうち「自分以外に主にできる人がいない」と 35.7% 62.4%. 回答した者(回答数:205名) ア当事者の経験世界を丁寧に紐解くことで、 彼女らの多次元に跨るストレスやジレンマの実. 態を明らかにするとともに、‶ケアでつながる家族″を丸ごと捉え、支援する体制の必要性. 来から今日まで続く、女性がケアを担うべきと. て指摘した(澤田・伊東 2018) 。しかしながら、支. いった家族規範との間で生じる「ひずみ」が、女. 援を実践する上では、より具体的な支援の仕組みや. 性への役割偏重や過重な負担をもたらした結果と. 展開の在り方を示すことが必要である。そこで本研. について具体的検討を行う。 このようにダブルケア問題は、現代日本が抱え. 明らかにした上で、求められるダブルケア支援の仕. について指摘した(澤田・伊東2018)。しかしながら、支援を実践する上では、より具体的. な支援の仕組みや展開の在り方を示すことが必要である。そこで本研究では、ダブルケア当. 事者らの支援ニーズについて明らかにした上で、 求められるダブルケア支援の仕組みと展開 いえよう(今野・足立 2009、相馬・山下 2013) 。 究では、ダブルケア当事者らの支援ニーズについて る諸課題が複雑に絡み合う中で生み出されたとい. 組みと展開について具体的検討を行う。. える。相馬・山下(2017)は、 「ダブルケアを複数 2.研究方法. 2.研究方法. の課題や主体を引き寄せる磁石」としてとらえ、ダ 本研究では、 愛知県名古屋市及び岩手県奥州市を拠点とするダブルケア支援団体の協力を ブルケア当事者の状況とニーズに基づいた「自治 本研究では、愛知県名古屋市及び岩手県奥州 得て、現在ダブルケア中、若しくは過去に経験を持つ 30 代から 50 代の女性を対象にグルー 型・包摂型・多世代型地域ケアシステムの構築」が 市を拠点とするダブルケア支援団体の協力を得 プインタビュー調査を行った。調査は、1 グループ 3 名 4)で構成し、名古屋市にて 3 グルー 急務の課題であると述べている 3)。筆者は、すでに. て、現在ダブルケア中、若しくは過去に経験を持. 女性ダブルケア当事者の経験世界を丁寧に紐解く. つ 30 代から 50 代の女性を対象にグループインタ. ことで、彼女らの多次元に跨るストレスやジレンマ. ビュー調査を行った。調査は、1 グループ 3 名. の実態を明らかにするとともに、 “ケアでつながる. で構成し、名古屋市にて 3 グループ、奥州市にて. 家族”を丸ごと捉え、支援する体制の必要性につい. 2 グループの計 15 名を対象(表 2)に、2019 年 6. プ、奥州市にて 2 グループの計 15 名を対象(表 2)に、2019 年 6 月から 11 月にかけて実施. した。調査を行うにあたり、研究目的と方法、データの取り扱いや匿名化、情報の秘密厳守 4) について文章及び口頭にて説明を行い、同意を得た。インタビュー時間は 1 回あたり 1 時間 半から 2 時間程度、また調査は、インタビューガイド. 5). を意識しつつ半構造的に行い、調. 査協力者の了解を得た上で録音し、逐語録を作成した。 表 表 2:調査協力者の概要 2.調査協力者の概要. 人 年代 子の人数 要介護者の続柄 1 30 代 3人 義祖母 2 40 代 2人 実母 3 30 代 1人 義母 4 30 代 2人 義母 5 30 代 2人 実母 6 30 代 2人 実父 7 50 代 1人 義母 8 30 代 2人 実母 9 30 代 2人 実母 10 40 代 2人 義母 11 50 代 2人 実父・実母 12 30 代 1人 実母 13 30 代 2人 実父 14 30 代 1人 実祖母・実母 15 40 代 1人 義母 介護役割:主介護者 8 名 副介護者 7 名 就労形態:正規 1 名 パート 7 名 無職 4 名 その他 3 名 居住形態:同居 8 名 別居 5 名 施設入所 2 名 ※経験者は最も重かった時期の要介護認定 ※過去経験者は最も重かった時期の要介護認定. 要介護認定※ 要介護 4 要介護 5 要介護 3 要介護 3 要介護 4 要介護 2 要介護 1 要介護 1 要介護 5 要介護 2 要支援 2・要介護 5 要介護 1 要介護 5 不明 要介護 1. ダブルケア期間 6年 3年 3 ヶ月 1年 6年 3年 3年 1年 3年 5年 4年 1年 3 ヶ月 1年 9 ヶ月. 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 85. 分析方法は、丹念に意味を読み解くことができる質的データ分析法(佐藤 2008)を採用. した。手順は、➀テキストデータから支援ニーズに関する語りの抽出と要約、➁データその 2.

(3) 月から 11 月にかけて実施した。調査を行うにあ. 2 つ目は、<緊急時を含む既存制度・サービス利. たり、研究目的と方法、データの取り扱いや匿名. 用の確実性の向上>である。ダブルケア当事者の. 化、情報の秘密厳守について文章及び口頭にて説. 中には、例えば、 「一時保育の利用を申請したが. 明を行い、同意を得た。インタビュー時間は 1 回. 空きがなく使えなかった」 、 「予約や事前手続きが. あたり 1 時間半から 2 時間程度、また調査は、イ. 必要なため緊急時に病児保育やショートステイを. ンタビューガイド 5) を意識しつつ半構造的に行. 利用できなかった」のように制度上はすでに存在. い、調査協力者の了解を得た上で録音し、逐語録. しているサービスであっても、必要とする場面で. を作成した。. は使えず自力で乗り切らざるを得なかった経験を. 分析方法は、丹念に意味を読み解くことがで. 持つ人が少なくない。緊急時であっても確実に利. きる質的データ分析法(佐藤 2008)を採用した。. 用ができる既存サービスの拡充や仕組みの整備が. 手順は、①テキストデータから支援ニーズに関す. 求められる。3 つ目には、社会参加が継続できる. る語りの抽出と要約、②データそのものから理. ような<介護制度に限定しない若年層要介護者に. 論を立ち上げる探索的な調査研究に有効とされる. あった支援>である。ダブルケア当事者が介護す. 帰納的アプローチによるオープン・コーディング、. る親は少し前まで仕事をしていた 60 代や 70 代. ③より抽象的・概念的な上位コードの割り当て、. 前半である場合が少なくないため、介護保険制度. ④コードがあらわす概念的カテゴリーの生成、⑤. を利用することに抵抗があり、サービス利用に至. データ、コード、概念的カテゴリー間の継続的な. らないといった声が聞かれた。フォーマル・イン. 比較の繰り返しによる、解釈の妥当性の検討であ. フォーマル双方で若年層要介護者のニーズに合っ. る。本調査では信用性確保のため、調査協力者 2. た支援の充実が望まれる。. 名および研究者 1 名に分析内容を確認してもらい、 解釈が適正であるかの検討を繰り返し行った。. 3.分析結果 分析の結果、ダブルケアに対する支援ニーズは. (2)≪気軽に頼れるインフォーマルサポート≫ インフォーマルサポートに関する上位コードは 4 つ抽出された。インフォーマルサポートは、緊 急時や<ちょっとした時間の手助け>などフォー マルサービスの隙間となるような部分へのニーズ. 7 つの概念的カテゴリーと 22 の上位コード、59. が高い。インフォーマルサポートの形としては、. のコードから構成されており(表 3) 、以下、概. 従来からの地縁や近隣づきあいを基盤とした<近. 念的カテゴリーを≪ ≫、上位コードを< >と. 所の人と気軽に助け合えるネットワーク>づくり. 表記し、説明を行う。. を望む声に加えて、ネット上で今空いている人と. (1)≪柔軟で確実性の高いフォーマルサービス≫ フォーマルサービスに関する上位コードは 3 つ. 頼みたい人をつなげるような<新しい気軽な助け 合いシステム>、病院内の民間保育所を受診時に. 抽出された。1 つ目には、ダブルケア当事者の生. 利用できるような民間サービスのシェアリング、. 活実態に即していない分野ごとの縦割りの利用体. 家族手続きの代行や空き家になった実家の荷物整. 系に対し、<利用目的を分野内に限定しない柔軟. 理といった間接的に生活を支える民間サービスの. な制度・サービス運用>である。これは筆者が以. 拡充を期待している。. 前にも指摘している(澤田・伊東 2018)が、例 えば、就労理由で保育所を利用している場合でも、. (3)≪活用しやすい仕組み≫ 活用しやすい仕組みに関する上位コードは 2 つ. 「仕事帰りに実家に寄って親の身の回りの世話を. 抽出された。ダブルケア当事者らは、フォーマル. してから子どもを迎えにいきたい」というような. サービス、インフォーマルサポートともに、利用. 分野横断的相互補完的な利用ニーズに対応した柔. に至るまでの仕組みがかなり煩雑、またはわから. 軟な利用基準・条件・運用等を求めるものである。. ないと感じている。そのため、日常生活をこなす. 86 .

(4) にもかかわらず、子連れで役所窓口を担当分野ごとに何か所も往復するなど手続き等にかか る負担に対し、簡単かつスムーズに利用できる<手間のない迅速な利用システム>を望 表 3:ダブルケアへの支援ニーズ 上位コード. コード. データの要約. 概念的カテゴリー1≪柔軟で確実性の高いフォーマルサービス≫ 利用目的を分野内 に限定しない柔軟 な制度・サービスの 運用. 緊急時を含む既存 制度・サービスの利 用確実性の向上. 介護制度に限定し ない若年層要介護 者にあった支援. 家族の都合を含めてケアサービ スを利用したい ダブルケアを考慮した柔軟な制 度運用・対応 介護を想定した柔軟な保育基 準・対応 既存のフォーマルサービスの確 実な利用 安心して利用できるサービスの 質の向上 緊急時対応できるフォーマルサ ービスの拡充 緊急時の確実な対応 若年層要介護者が求める社会参 加し続けられる場 若年層要介護者のニーズに合っ た制度・サービス. 家族で出かけるためのショートステイ、家族の用事でサービスを頼みた い、仕事のために介護サービスを頼みたい、保育理由で介護サービスを ダブルケアを考慮した柔軟な制度運用・対応 ダブルケアへの保育基準の考慮、通い介護を考慮した保育基準、延長に対 する保育所の柔軟な対応、子どもを保育所に預けて介護する、 特化したサービスでなくていい、既存のフォーマルサービスの確実な利 用、生活圏域での施設・サービスの量的拡充 安心して利用できるサービスの質の向上 緊急利用できる宿泊・預かりサービス、現行制度の緊急時対応 緊急時に確実に利用できるサービス、急なお願いに対応してほしい、どち らかが病気の時すぐにもう一方を預けたい 若年層要介護者が行きたくなるような場、若年性認知症の方がケアされな がら働ける場所 若年層要介護者向けの新たな制度・サービス、デイサービスのバリエーシ ョン. 概念的カテゴリー2≪気軽に頼れるインフォーマルサポート≫ 近所の人と気軽に 助け合えるネッワ ーク ちょっとした時間 の手助け 新しい気軽な助け 合いのシステム 民間サービスへの 期待. 気軽に近所の人と助け合い. 近所とのネットワーク ちょっとした時間の手助け 新しい気軽な助け合いのシステ ム 民間サービスへの期待. 緊急・ちょっとした用事は近所の助け合いで、気軽に近所と助け合えれば 理想、近所の人に子どもを見守ってもらえると助かる、多世代での助け合 い、 ネットワークがしっかりできると頼みやすい ちょっとした時間助けてほしい、子育てをがっつり頼みたいわけじゃない 今空いている人に頼めるシステム、UberEats みたいなの 民間サービスは気楽、既存民間サービスの拡充・シェアリング、フォーマ ルサービスの隙間を埋める民間サービスへの期待. 概念的カテゴリー3≪活用しやすい仕組み≫ 手間のない迅速な 利用システム 多様なチャンネル でのわかりやすい 情報へのアクセス. 迅速に利用できる仕組み 気軽に頼みたい 介護制度のアピール 簡単に知れる施設・病院の特徴や 口コミ評価 ライフスタイルにあった情報収 集の手段 気軽に調べられるスマホサイ ト・動画 経験者や知っている人から教え てもらえる場や機会 既存の情報ツールを視覚的にわ かりやすく. 手続きの簡単化、早期診断で早期補助、スムーズな対応 気軽に子どもや親を預けたい 介護制度を詳しく知りたい、介護サービスをアピールしてほしい 利用した人からの情報・評価が知りたい、病院の種類を知りたい、見学し て見極めたい、雰囲気・対応のいい施設がいい、口コミサイトがほしい 手軽に時間をかけずに、夜の時間を活用したい、自分の時間は細切れ、昼 には何も入れたくない 空いている時間にスマホで気軽に、Web サイトの充実、動画でわかりやす く説明してほしい、検索ワードで気軽に調べる 経験や情報、口コミを共有できる場、知人から教えてもらえるのは助かる 病院・役所で調べられる、本やパンフでやはり調べる、ポップな表・図解、 マークや写真で施設情報・評価・説明、病院種別のわかりやすい表示. 概念的カテゴリー4≪自分の社会生活の安定と対応力を高めるサポート≫支援 仕事とのバランス がとれる環境づく りへの支援. 先行きを予測し、備 えるための助言. 自分のケア能力を 高めるための支援. 専門職や関係機関 との上手な関わり 方への助言. 両立可能な労働環境を整える支 援 両立可能な施設・保育所をみつけ るサポート ダブルケアへの職場の配慮・理解 病気・症状の今後の目安を知りた い 先行きを予測し、備えるための助 言 基本的なケア方法を知りたい 介護知識ゼロから教えてほしい 言葉を知るところから 認知症の本人にうまく対応でき るように ケアマネジャー・専門職との上手 い付き合い方 周囲に配慮してもらえる方法を 知りたい. 両立可能な職場への転職、両立可能な勤務条件への変更 育休復帰は施設や保育所がみつかるか、両立しやすい施設・保育所探し 職場で対応・配慮を考えてくれる、ダブルケアだといいやすい職場環境 病気が今後どうなるかを知りたい、病気・症状を分かりやすく知りたい、 介護がどうなるかの目安を知りたい 病状を踏まえて備え方を助言してほしい、今後どうすればいいか教えてほ しい、先行きを予測し備えたい 基本的なケア方法を知りたい 知識や情報があればうまくやれた、介護知識ゼロから教えてほしい 言葉を知って状態を認知できる、介護が何かから教えてほしい 認知症の本人にうまく対応できるように ケアマネの能力差を知る、専門職側も言われないと対応できないことを知 る、細かい情報も伝えるようにする、専門職をうまく使えば対処法がみえ てくる 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 87 認定調査でちゃんと考慮してもらえる方法、事前に状況を話して配慮して もらう. 4.

(5) 高めるための支援. 介護知識ゼロから教えてほしい 言葉を知るところから 認知症の本人にうまく対応でき るように. 知識や情報があればうまくやれた、介護知識ゼロから教えてほしい 言葉を知って状態を認知できる、介護が何かから教えてほしい 認知症の本人にうまく対応できるように. 上位コード. コード. データの要約. 専門職や関係機関 との上手な関わり 方への助言. ケアマネジャー・専門職との上手 い付き合い方. ケアマネの能力差を知る、専門職側も言われないと対応できないことを知 る、細かい情報も伝えるようにする、専門職をうまく使えば対処法がみえ てくる 認定調査でちゃんと考慮してもらえる方法、事前に状況を話して配慮して もらう. 周囲に配慮してもらえる方法を 知りたい. 4 身内がサポートしてほしい、みんなでみている感じがいい、夫と一緒にや りたい 理解はしてくれる、家事・育児に支障が出ても文句を言わない、気にはし てくれる、子どもをみてくれる、間接的サポートをしてくれる、精神的サ ポートをしてくれる、家族でケアを分担する 具体的に指示する、徐々に介護時間を増やす、責任感を促す、家事・育児 をあえて代わる 家族で今後についての話し合い、在宅介護の限界ラインを話し合う 医師から男性に話してほしい、権威のある人から男性に話してほしい、介 護の専門家から男性に話してほしい、職場から男性に話してほしい、男性 が理解しやすい何かがあるといい、外部の人から男性に助言してほしい 第三者から直接助言してほしい、専門職にもっと家族間に介入してほしい. 概念的カテゴリー5≪家族みんなでケア責任・役割・量分担への働きかけ≫ 家族みんなでケア する感覚の共有と 関係づくり. 家族・身内みんなでケアする状態 に 協力・サポートといっても関与度 は様々 家族内の男性がケア力をあげる. 外部から家族・身内 への働きかけ. 家族・身内で話しあう 男性の受け入れやすい外部のル ートからの働きかけ 専門職から家族に助言してほし い. 概念的カテゴリー6≪一緒にチームとなって支えてくれる継続的横断的な相談支援≫ わかって受け止め てくれる人・場・機 会. ケアに関わるチー ム間の情報の共有 とコーディネート. 対応スキルのある ケアマネ等相談支 援者による支援. わかって寄り添ってくれる第三 者 共感的な相談支援の場がほしい 当事者や経験者がつながる場や 機会 わが家のケースで必要な情報の コーディネート ケアマネ・施設等ともっと密な相 談・情報共有 専門職がチーム間の情報共有 相談支援者の理解と知識を高め てほしい ケアマネのスキルがわかる情報 スキルの高いケアマネ等相談支 援者による支援. 積極的な早期介入 による問題解決. 一緒に考えながら 進んでくれる継続 的な訪問型相談支 援. 積極的な早期介入による問題解 決 介護サービスの利用がなくても 訪問を ケアマネ等相談支援者と一緒に 考えていきたい 定期的な訪問による相談支援 継続的な関わりの丁寧な相談支 援. 自分に寄り添ってくれる第三者がほしい、ケア当事者に寄り添ってくれる 第三者がほしい 共感的な相談支援の場がほしい 経験者は頼りになる、当事者同士が情報共有しあえる場を、当事者団体が あってよかった、当事者団体が助けてくれた 自分に必要な情報にだけアクセスしたい、必要な情報をコーディネートし てほしい、病状にあわせて相談先・サポートを教えてほしい ケアマネ・施設等ともっと情報共有したい、ケアマネ・施設等となんでも 話せる関係に、施設面談の機会があるといい 専門職がチームになって情報共有 相談支援者の知識を高めてほしい、関係者に理解してもらいたい ケアマネの得意分野がわかるものがほしい、ケアマネのレベルがわかるも のがほしい、ケアマネの評判を知りたい ケアマネ等相談支援者の充実、きちんと動いて進めてくれる、熱心で経験 豊富、うまくマッチングしてくれる、いろんな選択肢を提示できる、問題 を整理してくれる、わかりやすく説明してくれる、経過をきちんと説明し てくれる、事業所側に交渉できる、民間サービスも紹介してくれる、他分 野の機関にも適切につないでほしい、家族のことも考えて援助してほし い、福祉・医療人としての正しい姿勢 外部が早く気づいて介入してほしい、本人のサービス利用を勧めてほし い、専門家が困ってないか聞いてほしい、 介護サービスの利用がなくても訪問を ケアマネともっと相談しながら考えたい、ダブルケアについて相談できる 人がほしい、ケアマネの提案を自分でも考えたい 外出できないから家にきて話をきいてほしい、定期訪問がいい 利用に至るまで丁寧な支援を、継続的な関わりの中で連続性を持ってわか ってほしい. 概念的カテゴリー7≪ケアの受け手にも支え手にもやさしい社会環境づくり≫ ケアの受け手も支 え手もオープンに できる社会. 一般の日常生活場 面でのダブルケア への配慮. 病気や障害を隠さなくていい地 域・社会 ダブルケアといいやすい社会 メディアを通じたダブルケアへ の理解 幼稚園・保育所でもダブルケアへ の理解と配慮を PTA 役員・資源回収等での配慮を 両方連れて出かけやすい外出先. 病気・障害に対する理解、隠さなくていい環境、近所の人たちの理解 言葉の認知が広がるといいやすい、実態への理解 メディアを通じたダブルケアへの理解 介護が必要な祖父母を想定した保育教育、幼稚園・保育所でダブルケアへ の理解、保護者・先生たちの理解 選択できる仕組み、負担軽減・分散の体制づくり、一方的でない役割配当 両方満足できる場所、外出先での介護負担軽減、介護者に配慮した外出先. んでいる。また、介護に関する基礎的知識もなく、知人などから介護情報や施設等の評. 88 . 判を聞けるような機会に乏しいダブルケア当事者らは、外部サービスやサポートに関す る情報にアクセスしづらいと感じている。そのため行政窓口などで渡されるパンフレッ ト等による一般的な情報のみならず、視覚的にわかりやすい制度・サービスの説明、サ.

(6) だけでも手一杯な現状であるにもかかわらず、子. 家族に関する上位コードは 2 つ抽出された。多. 連れで役所窓口を担当分野ごとに何か所も往復す. くのダブルケア当事者は、ケア責任・役割・量が. るなど手続き等にかかる負担に対し、簡単かつス. 家族の中で自分に集中している現状に対し、それ. ムーズに利用できる<手間のない迅速な利用シス. らが個人に集中することなく、家族みんなで分担. テム>を望んでいる。また、介護に関する基礎的. できる状況を作り出したいと考えている。そのた. 知識もなく、知人などから介護情報や施設等の評. め、ケアについて家族・身内みんなで話し合う、. 判を聞けるような機会に乏しいダブルケア当事者. 兄弟や夫、父といった家族内の男性がケアへの関. らは、外部サービスやサポートに関する情報にア. 心や関与を高められるような<家族みんなでケア. クセスしづらいと感じている。そのため行政窓口. する感覚の共有と関係づくり>が必要だと考えて. などで渡されるパンフレット等による一般的な情. いる。しかし、それは家族内の話し合いだけでは. 報のみならず、視覚的にわかりやすい制度・サー. なかなか進展しない、険悪にしかならない、関係. ビスの説明、サービス・施設・病院等の特徴や口. 上言いづらいと感じている。そのため専門職に. コミ評価などをスマホや動画といった子育て世代. もっと介入してほしい、医師や職場などの男性が. の情報収集手段にあったコンテンツでも得られる. 受け入れやすい外部のルートから働きかけてほし. ような<多様なチャンネルでわかりやすい情報へ. いといった<外部から家族・身内への働きかけ>. のアクセス>を求めている。. を求めている。. (4)≪自分の社会生活の安定と対応力を高める サポート≫. (6)≪一緒にチームとなって支えてくれる継続 的横断的な相談支援≫. 自分自身へのサポートついては、4 つの上位. 相談支援に関する上位コードは 5 つ抽出された。. コードが抽出された。1 つ目は、ダブルケア当事. ダブルケアでは子どもの成長、自分・家族の仕事. 者らにとって、自分がケアを行う環境を整える上. や健康、親の要介護状態の悪化といった様々な状. で重要な社会生活の安定へのサポートである。特. 況変化に応じて、その都度、各方面のケアバラン. に<仕事とのバランスがとれる環境づくりへの支. スを調整しなければならず、継続的横断的な相談. 援>は、両立可能な労働環境を整える支援、ダブ. 支援を求めている。そしてそれは、日々迷いなが. ルケアであることをいいやすい職場の配慮・理解. らダブルケア生活を送る中で、自分・家族の状況. のほか、両立可能な条件(立地や時間など)を満. や思いを<わかって受け止めてくれる人・場・機. たす保育所や介護施設をみつけるサポートなどの. 会>、わが家のケースで必要な<ケアに関わる. 支援を求めている。. チーム間の情報の共有とコーディネート>、分野. さらに、ダブルケア当事者らは、自分自身がケ. を超えた知識、説明力、提案力、交渉力、倫理観. アに対応する能力を高める必要性も感じている。. を備えた<スキルの高いケアマネ等相談支援者に. これに関連し 3 つの上位コードは、親の病気・症. よる支援>が必要だと感じている。さらに、相談. 状がどうなるのかの<先行きを予測し、備えるた. 支援者の関わり方としては、<積極的な早期介入. めの助言>、ダブルケアや介護に対する知識や理. による問題解決>や必要な時期に必要な支援を<. 解を深めたり、基本的な介護方法や認知症の人へ. 一緒に考えながら進んでくれる継続的な訪問型相. の接し方といった正しい技術を学べるような<自. 談支援>を求めている。. 分のケア能力を高めるための支援>、ケアマネ ジャーなどの<専門職や関係機関との上手な関わ り方への助言>が得られる機会を求めている。. 会環境づくり≫ 社会環境に関する上位コードは 2 つ抽出され. (5)≪家族みんなでケア責任・役割・量分担へ の働きかけ≫. (7)≪ケアの受け手にも支え手にもやさしい社. た。ダブルケア当事者らにとって、ケアの受け手 と支え手双方にもやさしい地域・社会であること. 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 89.

(7) 4.考察 分析結果から、ダブルケア当事者の支援ニーズは 7 つの概念的カテゴリーに区分された。. は、自分や家族の生活が安定するための基礎的条. 普及啓発、PTA 役員・資源回収、お出かけといっ. 件であると考えている。病気や障害、ダブルケア. た<一般の日常生活場面でのダブルケアへの配慮. ここでは概念モデル(図 1)に基づき、それぞれの概念的カテゴリー間の関係性について検. 討を行い、当事者ニーズに基づいたダブルケア支援の仕組みや展開について考察する。 であることを隠さなくていい<ケアの受け手も支 >がなされる環境支援を求めている。 え手もオープンにできる社会>に向けた積極的な. :作用の方向 家族みんなの生活が安定するケアのバランスの実現. 柔軟で確実性の高い フォ―マルサービス. 気軽に頼れる インフォーマルサポート. 自分の社会生活の安定 と対応力を高める支援サポート. 利用目的を分野内に限定しない 柔軟な制度・サービスの運用. 近所の人と気軽に助け合え るネットワーク. 仕事とのバランスがとれ る環境づくりへの支援. 緊急時を含む既存制度・サービ ス利用の確実性の向上. 新しい気軽な助け合いのシ ステム. 先行きを予測し、 備えるため助言. 介護制度に限定しない若年層要介護者にあった支援. 自分のケア能力を 高めるための支援. 民間サービスへの期待. 専門職や関係機関との上 手な関わり方への助言. 活用しやすい仕組み. 家族みんなでケア責任・ 役割・量分担への働きかけ. 手間のない迅速な利用システム 多様なチャンネルでのわかりやすい情報へのアクセス. 家族みんなでケアする 感覚の共有と関係づくり 外部からの 家族・身内への働きかけ 一緒にチームとなって支えてくれる継続的横断的な相談支援 わかって受け止めてくれる人・場・機会. ケアに関わるチーム間の情報の共有とコーディネート. 対応スキルのあるケアマネ等相談支援者による支援 積極的な早期介入による問題解決. 一緒に考えながら進んでくれる継続的な訪問型相談支援. ケアの受け手にも支え手にもやさしい社会環境づくり ケアの受け手も支え手もオープンにできる社会に. 一般の日常生活場面でのダブルケアへの配慮. 図 図1.ダブルケアへの支援ニーズの概念モデル 1.ダブルケアへの支援ニーズの概念モデル. 4-1.自助、互助、共助、公助の一体的な展開. 展開について考察する。. 厚生労働省が掲げる「地域共生社会」の基本コンセプトである、「従来の縦割り制度を見 4.考察 4-1.自助、互助、共助、公助の一体的な展開 直し領域を跨いだ丸ごと支援の仕組み」「 、人々が他人事ではなく我が事として地域でつなが. 厚生労働省が掲げる「地域共生社会」の基本コ. 分析結果から、ダブルケア当事者の支援ニーズ. り互いに支え合いながら暮らすことができる社会」 は、ダブルケア当事者らが求める支援の ンセプトである、 「従来の縦割り制度を見直し領. は 7 つの概念的カテゴリーに区分された。ここで. 在り方と同じ方向性を目指すものだといえる。少子高齢化の進展や公的財政の悪化により、 域を跨いだ丸ごと支援の仕組み」 、「人々が他人事 は概念モデル(図 1)に基づき、それぞれの概念 今後の日本社会では4つの助(自助、互助、共助、公助)の連携により地域課題の解決を図 ではなく我が事として地域でつながり互いに支え 的カテゴリー間の関係性について検討を行い、当 ることが求められているが、ダブルケア当事者らは‶家族みんなの生活が安定するケアバラ 合いながら暮らすことができる社会」は、ダブル 事者ニーズに基づいたダブルケア支援の仕組みや ンスの実現″を≪自分の社会生活の安定と対応力を高める支援≫、≪家族みんなでケア責 90 . 7.

(8) ケア当事者らが求める支援の在り方と同じ方向性. 多く聞かれた。そして、わからなかった結果、本. を目指すものだといえる。少子高齢化の進展や公. 来利用したいサービスに行き当たらず、リハビリ. 的財政の悪化により、今後の日本社会では4つの. を十分受けられなかった、負担が多い状態が続い. 助(自助、互助、共助、公助)の連携により地域. た、高い費用になってしまったといった不利益を. 課題の解決を図ることが求められているが、ダブ. 被った経験を持つ人も少なくない。. ルケア当事者らは“家族みんなの生活が安定する. 2000 年から始まった介護保険制度は、社会の. ケアバランスの実現”を≪自分の社会生活の安定. ニーズに対応する形で幾度かの改正を繰り返して. と対応力を高める支援≫、≪家族みんなでケア責. きた。地域密着型サービスなどの新たなサービス. 任・役割・量分担への働きかけ≫といった自助力. 区分が創設され、加算項目も増え、利用条件も厳. を高めるため支援と≪柔軟で確実性の高いフォー. 格化された結果、利用する側にとっては理解が難. マルサービス≫、≪気軽に頼れるインフォーマル. しい複雑な制度となっていったのである。この. サポート≫といった切れ目のない外部支援の整備. ような現象は他分野でも生じており、多くの分. により、自助、互助、共助、公助がそれぞれの特. 野の制度・サービスを跨いで利用しなければなら. 性を生かし、相互補完し合うことで実現したいと. ないダブルケア当事者にとっては、利用への大き. 考えている。. な障壁となっている。ダブルケア当事者らから. つまり、これらは一体的に展開されてこそ、連. は、 「どんどん新たなサービスを増やすのではな. 続性を持った支援が可能となり、生活の安定につ. く、既存の制度・サービスを緊急時も含め確実に. ながるのである。しかしながら現状は、地域に. 利用できるようにしてほしい」といった声も聞か. よってつながりの強弱はありながらも、行政、支. れており、利用する側にとって、わかりやすい制. 援機関、地域組織、当事者支援団体らは互いの実. 度設計に努める必要がある。. 態がみえていなかったり、個々のセクション間の. (2)手続きのスムーズな利用システム. つながりに留まっている。様々なセクションが状. 例えば、介護保険制度はサービス毎に契約など. 況や課題、目的を共有しながらともに展開してい. の取り交わしがあり、その都度、時間を作らなけ. けるような仕組みや制度上の後押し、また、一体. ればならず、行政手続きは課ごとに窓口で順番を. 的な展開を志向する連携・協働の支援モデルの構. 待たなければならない。さらに家族による通い介. 築が望まれる。. 護が増加する中で、遠方家族による各種手続き等 も煩雑である。ダブルケア当事者らは、その度に. 4- 2.互助、共助、公助につながる風通しのよい 利用プロセス. 子どもや親を預ける手配をし、仕事を調整し、限 られた時間内で手続きに追われている。負担なく. 外部からのケアサービス・サポートを受ける上 では、支援ニーズにあったケアサービス・サポー トメニューの拡充とともに、以下に述べるような 利用に至るまでのプロセスの整備が重要な鍵とな る。. 利用に至る手続きが行える仕組みづくりが必要で ある。 (3)手軽でわかりやすい情報環境 ダブルケア世代は、こうした制度・サービス・ サポートに関する情報を専門職等から与えられる. (1)利用する側にとってわかりやすい制度・ サービスの設計. だけでなく、自らも調べ理解した上で相談し、選 定したいとのニーズを持っている。しかしながら、. 特に介護保険制度については、サービス種別が. 窓口などで渡されるパンフレット等はわかりづら. 多すぎる、種別名をみても内容がわからない、同. く、画一的で自分に必要な情報がどれかわからな. じサービス名でも利用基準、内容や値段が違う、. いと感じている。動画などの視覚的にわかりやす. 利用条件があてはまるのかわからないなど不満が. い情報コンテンツ、利用者側の目線からの評価情. 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 91.

(9) 報、膨大な分散された情報の中から欲しい情報が. は、神奈川県横浜市、愛知県名古屋市や岩手県奥. 見つけ出せるようなツールやシステム、スマホ・. 州市でのダブルケアカフェをはじめ各地に増えて. ネットなどによる手軽な情報獲得手段などダブル. はきているものの、まだまだ少ない。このような. ケア世代にあった情報環境の拡充が求められる。. ピアサポート機能の拡充に対するサポートが求め られる。. 4 - 3.横断的な相談支援チームの早期かつ継. (3)多分野、セクションをコーディネートでき. 続的な介入 多岐にわたる分野やセクションを使いこなす必. る高度な相談支援者の育成 厚生労働省は、2021 年度からの導入を目指し、. 要があるダブルケア当事者にとって、これらをつ. 市町村の任意事業として、多様化・複雑化する地. なぎ支える継続的横断的な相談支援者が存在して. 域の福祉ニーズをワンストップで横断的に受け. いるかどうかは、ダブルケア生活が安定的に維持. 止める「断らない相談支援」の導入を進めている。. できるかどうかの要ともいえる。ニーズに基づい. 任意でありながらも、このような相談窓口の設置. た相談支援体制の構築について、以下 3 点に整理. に対し、財政支援を伴う制度的後押しがなされる. をする。. ことへの期待は大きい。. (1)窓口対応力、アウトリーチ機能の強化によ る早期介入. このような相談支援の実現には、ワンストップ で受け止める包括的な相談窓口の設置とともに、. ダブルケア当事者の多くは、自分がダブルケア. 多分野、セクション間のコーディネートが可能な. 状態であると気づくまでに長い時間を要してい. 高度な相談支援技術を備えた人材の育成が大きな. る。それどころか、自分は介護をしていると認識. 課題となる。しかしながら、現状、ダブルケア当. するまでにも相当の時間を要している者も少なく. 事者への相談支援は、相談支援者の経験知、考え. ない。それはサービス・サポートにアクセスでき. 方に委ねられているのが現状である。介護者支援. ない状況を生み出し、知識・支援のないままケア. でみれば、介護者アセスメントシート(日本ケア. 負担を背負い込むことにつながる。またダブルケ. ラー連盟 2012)、家族介護者支援マニュアル(日. ア開始当初は、誰が何のケアをどの程度担うのか、. 本ケアラー連盟 2016、厚生労働省 2018)などの. 外部支援を利用するのか、仕事との両立をどうす. 支援実践をサポートするツールが開発されている。. るのかといった、その家庭でのケアに対する姿勢. ダブルケア支援においても実践モデルの提示や実. やバランスが形作られる重要な時期である。ダブ. 践をサポートするツールの開発、支援力向上に向. ルケア当事者を発見するためのスクリーニングな. けた研修等の開催といった相談支援者を育成する. どにより、育児、介護の分野のみならず企業、病. 仕組みづくりが求められる。. 院、学校関係者などの幅広いセクションがダブル. 一方、筆者の長年の相談支援現場での経験を踏. ケアであることに気付き、早期介入による円滑な. まえると、相談支援を担う人材の質的・量的不足. 支援・サービス・サポートに結びつけられるアウ. が深刻さを増す中、支援ニーズの複雑化、多領域. トリーチ機能の強化が求められる。. 化、高度化に伴い求められる水準の高さに、現. (2)経験・情報が共有できるピアサポート機能 の拡充. 場は疲弊し、戸惑っているのが実情である。情報 環境の拡充や地域支援者による相談対応力の向上、. 孤立しやすいダブルケア当事者らは、自らの経. ピアサポート機能の拡充により幅広い相談支援の. 験を分かち合い、肯定的に受け止めらえる場、制. かたちを模索するとともに、知識・情報の一方向. 度やサービス等の情報のみならず、乗り切り方や. 的な発信とならない育成ツール・プログラムの開. 細かな疑問を相談できる機会を求めていた。しか. 発、スーパーバイズの機会の確保などが求められ. しながら、このような当事者同士が交流できる場. る。. 92 .

(10) じている。このような意識を分野や領域を越えて. 4 - 4.ケア責任・役割・量を家族で分担でき る環境づくりへの支援. 変革していくような働きかけが求められている。 (2)「男性のケア分担」が当たり前となる社会. ダブルケア当事者らの多くは、家族間でのケア. 意識の醸成. 責任・役割・量が過多な状態にあるものの、家族. ダブルケア当事者は過負担な現状を抱え、さま. がそれを認識していない、または認識していても. ざまなダブルケア支援へのニーズを持っていた一. 「我が事」ではないといった状況にあった。家族. 方、家族内の男性パートナー、男性兄弟があまり. の中でみると、大きなケア責任・役割・量を負っ. 介入していないといった現実も浮かび上がった。. ている側の方が少数派であり、訴えづらく話せな. それどころか親を介護することに反対している、. い、家族に訴えても理解がえられないのが実情で. 家事・育児が疎かになると怒る、といった男性も. ある。つまり、このような状況の解決を家族内に. 少なくなかった。また、ケアを分担している男性. 求めることは、ダブルケア当事者らの時間的精神. であっても、ほめてもらいたがる、少しやったこ. 的負担を増すだけで、成果に結びつきにくい。そ. とを大げさに言うといった訴えが聞かれた。これ. のため、ケア責任・役割・量を家族で分担できる. らは、男性にとってケアをしている状態が特別な. ような個別的・社会的な働きかけへのニーズが多. 状態であり、していない状態が普通の状態である. くあげられた。以下、ケアを家族で分担できる環. ことを示している。これは社会全体で生み出され. 境づくりに向けた支援のあり方について 3 点に整. たケア観であり、ダブルケア状態となる以前から. 理をする。. 家族のなかで形づくられているものである。その. (1)ケアを「我が事」として捉える意識の醸成. ため、ダブルケア状態になってから女性が訴えて. 今まで介護について学習したり、みたり、話し. も変わらないばかりか、険悪になるケースも少な. 合った経験がなく、介護を認識できるまでに時間. くない。また、「うちの夫は協力的」と話すダブ. を要したダブルケア当事者は少なくなかった。そ. ルケア当事者の〝協力″の内容も、実に様々なレ. して、事前に介護について学んだり、親の金銭の. ベルがあることもわかった。例えば、介護するこ. 管理方法や介護が必要になった場合にどこで暮ら. とを反対しない、何もしないけど気にはかけてく. したいか、そのために家族はどのような役割を分. れる、だけでも協力的と表現をしていた。実際に. 担するのか、などの話し合いを事前に家族でして. ケアを男女で量的に分担できている家庭は少数派. おけばよかったとの声も多く聞かれた。近年、介. だといえる。このような意識は女性の親やダブル. 護かるた、疑似体験キット、VR 認知症体験など. ケア当事者にも根付いており、社会全体で意識の. 様々な学習ツールが開発され、ツールを活用した. 変革を促していく必要がある。メディア、専門家、. 介護学習プログラムが、地域や学校教育の場など. 職場、学校教育などあらゆる方面を通じて「男性. で取り組まれている。核家族化により、家庭の中. のケア分担」が当たり前となる社会意識を醸成し. にケアが存在していた経験を持つ者が少なくなる. ていくことが求められる。. 中、このような既存のツールを活用したケア学習 の機会の拡充、簡易なセルフチェックシートの開 発などが必要である。. (3)必要に応じた家族アセスメントと関係調整・介入 家族間でケアの共有がなされないために、ダブ ルケア当事者や子どもの生活に支障が出ている. また、ダブルケア当事者らは、産科医や保健師、. ケース、または支障が出るおそれのあるケースに. 行政窓口からは出産時に親の手助けがえられる前. ついては、やはり専門的な介入が必要となる。こ. 提で説明や指導がなされる、保育所の祖父母参観. のような家族への介入をどこが担うのか、家族ア. は祖父母が元気な前提で考えられているなど「介. セスメント、関係調整、介入などの方法について. 護をしている者の存在が想定されていない」と感. 検討を進める必要がある。. 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 93.

(11) 5.おわりに ダブルケアは、自身の経験をとおして、将来世 代の者が今後のケアの在り方について向き合う機 会でもあり、ダブルケア当事者は次世代の地域の 担い手となる可能性をもった貴重な地域資源であ るともいえる。 今後、私たちが直面する社会は、ケアの受け手 も支え手も、基盤となる地域のあり方も、既存制 度が前提としてきた社会とは大きく異なる世界で ある。相馬・山下(2016)らが述べているような、 ダブルケアを「磁石」とした複数の変革主体によ るソーシャル・イノベーションが、支援実践のレ ベルにおいても取り組まれ、当事者らが実感を 持って生活の安定を得られるまでの仕組みが丁寧 に形づくられることが必要である。 今後は、男性ダブルケア当事者の実態や支援 ニーズについても明らかにし、より包括的な視点 での検討を加えるとともに、支援を担える人材の. 問題や関係性を含む内容となるため、グループ内 は近隣、知人ではないメンバーで構成した(ダブ ルケア支援団体の活動を通じた知人の場合を除く)。 また同様の観点から聞き手が多くなると発言しづ らくなる傾向があるため、1 グループの人数は 3 名 とした。 5)質問項目は、①ダブルケアの経緯・状況、②支 援・サポートの利用状況、③支援・サポートとの 関わり方・不満・期待、④求める支援・サポート と利用の条件、とした。 【参考文献】 浅野いずみ、2018「ダブルケアの概念に注目した家 族介護者支援のありかたに関する研究」『目白大学 総合科学研究』(14) 、1-10。 今野範子・足立智昭、2009「 「育児と介護を同時進行」 している人への家族支援についての考察―育児と 介護を同時に進行させた体験者に関する実態調査 から見えてくるもの」 『家庭教育研究所紀要』(31)、 5-15。 木下康仁、2015『ケアラー支援の実践モデル』ハー ベスト社。. 育成システムや支援プログラムの構築に向け、専. 厚生労働省、2017「地域共生社会」の実現に向けて」. 門職支援者や地域支援者が抱える支援実践上の課. (2020 年 1 月 24 日 閲 覧、https://www.mhlw.go.jp/stf/. 題などについても明らかにしていきたい。. seisakunitsuite/bunya/0000184346.htm) 。 厚生労働省、2018「市町村・地域包括支援センター による家族介護者支援マニュアル―介護者本人の. 【注】. 人 生 の 支 援 ―」 (2020 年 2 月 16 日 閲 覧、https://. *本稿は経済社会学会第 55 回全国大会において報告. www.mhlw.go.jp/content/12300000/000307003.pdf) 。. した内容を加筆修正したものである。予定討論者で. 佐藤郁哉、2008『質的データ分析法―原理・方法・. ある伊東眞理子先生、座長である松信ひろみ先生か. 実践』新曜社。. らは貴重なコメントを数多く賜った。さらに査読者. 澤田景子・伊東眞理子、2018「ダブルケア(育児と. の方からは多くの有益なご指摘をいただき、心より. 介護の同時進行)を行う者の経験世界の構造と支. 深謝申し上げる。. 援課題に関する一考察」『経済社会学会年報』(40)、. 1)ソニー生命・相馬・山下による調査(2018)では、 育児は大学生以下の子を育てる者とし、親等への. 129-140。 澤田景子、2019「ダブルケアに関する研究の動向」. 介護は身体ケアに限定せず家事や精神的ケア、経. 『名古屋学院大学論集社会科学篇』56(1)、95-115。. 済的支援を含んでいる。調査は全国規模でのイン. 澁谷智子、2018『ヤングケアラー―介護を担う子ど. ターネットリサーチにより実施されており、全回 答者は 17,049 名であった。 2)内閣府男女共同参画局の調査(2016)では、精神. も・若者の現実』中公新書。 相馬直子・山下順子、2016「ダブルケアとは何か」 『調査季報』178:20-25。. 的負担感が子育て 59.6%、介護 65.7%、肉体的負. 相馬直子・山下順子、2013「 《3》社会の変化からコ. 担感が子育て 55.1%、介護 61.9%、経済的負担が. ミュニティ経済の必要性を考える 1 ダブルケア(子. 子育て 48.2%、介護 52.5%であった。. 育てと介護の同時進行)から考える新たな家族政. 3)相馬・山下 2017、72。. 策―世代間連帯とジェンダー平等に向けて」『調査. 4)ダブルケアに関わる話は当事者や家族の個人的な. 季報』171:14-17。. 94 .

(12) 相馬直子・山下順子、2017「ダブルケア(ケアの複 合化) 」 『医療と社会』27(1)、63-75。 ソ ニ ー 生 命・ 相 馬 直 子・ 山 下 順 子、2015「 ダ ブ ル ケ ア に 関 す る 調 査 2015」(2020 年 5 月 9 日 閲 覧、https://www.sonylife.co.jp/company/news/27/ nr_151222.html 1)。 ソ ニ ー 生 命・ 相 馬 直 子・ 山 下 順 子、2017「 ダ ブ ル ケ ア に 関 す る 調 査 2017」(2020 年 5 月 9 日 閲 覧、https://www.sonylife.co.jp/company/news/28/ nr_170317.html) 。 ソ ニ ー 生 命 保 険・ 相 馬 直 子・ 山 下 順 子、2018「 ダ ブ ル ケ ア に 関 す る 調 査 2018」(2019 年 3 月 20 日 閲. 覧、https://www.sonylife.co.jp/company/news/30/. nr_180718.html) 。 内閣府男女共同参画局、2016「育児と介護のダブル ケ ア の 実 態 に 関 す る 調 査 」(2016 年 5 月 22 日 閲 覧、http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/wcare_ research.html) 。 成田光江、2018『複合介護 家族を襲う多重ケア』 創英社。 日 本 ケ ア ラ ー 連 盟、2012「 セ ル フ ア セ ス メ ン ト と ケ ア ラ ー ア セ ス メ ン ト 」(2020 年 1 月 31 日 閲. 覧、http://carersjapan.com/images/reseach2012/. carersreseach2012-03ch2.pdf 日本ケアラー連盟、2016「あなたのまちの介護者支 援ガイド―参考にしたい介護者支援のため 3 つ の 活 動 ―」 (2020 年 2 月 16 日 閲 覧、https://drive. google.com/file/d/1gDjeSJ01nzCq18bAJrcKxAe8IKEM JXAM/view) 平岩和美、2018「理学療法士・作業療法士の育児お よび介護に関する先行研究と課題」『広島都市学園 大学雑誌:健康科学と人間形成』4(1)、25-3。 湯原悦子・尾之内直美、伊藤美智代ら、2013「介護 者セルフアセスメントシートの開発」『日本認知症 ケア学会誌』12(2)、490-503 【付記】 本研究は、名古屋学院大学が文部科学省より採択 された「私立大学研究ブランディング事業(2018 年 度) 」におけるプロジェクトの成果の一部である。. 育児と介護を同時に担うダブルケア当事者への支援実践に関する検討 95.

(13) A Study on Support Practice for Double Care That Both Child-care and Elderly Care :Based on the Support Needs of Double Caregiver Keiko Sawada (Nagoya Gakuin University) A group interview survey was conducted on 15 women in their thirties to fifties who are currently in double care or have experience in the past to make a concrete examination of the support system and development based on the needs of double care parties. From the analysis results, it was found that the double care parties want to realize a“care balance that stabilizes the life of the whole family”by providing support and continuous external services to improve self-help ability. It is desirable to build a model of institutional support and cooperation / collaboration allows various sections to develop integrally while sharing issues and purposes. In addition, it is necessary to improve the process leading to the use of services, to provide an early and continuous intervention of a cross-sectional consultation support team, and to support an environment in which the family can share the responsibility and role of care. Keywords: Double care, Support needs, Community care system. 96 .

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参照

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