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[学会報告] ジョウゼフ・コンラッド協会(英国)第43回大会

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Academic year: 2021

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コンラッド研究 第 9 号

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■ジョウゼフ・コンラッド協会(英国) 第

43 回大会

伊藤正範 2017 年 7 月 7 日から 9 日までロンドンで開催された The 43rd Annual Conference of the Joseph Conrad Society (UK)に出席した。私にとっては英国 コンラッド協会の大会に参加するのはこれが初めてである。ちょうど The Conradian の新刊に拙論が掲載されたというタイミングも重なり、到着早々 の受付では編集主幹のAllan Simmons 氏に歓迎していただいた。 レイヴンズコート・パーク近くの POSK(ポーランド社会文化協会)を 会場として行われた1 日目は、「“Heart of Darkness” 再訪」と「語りの諸相」 を標題として掲げた2 セッションにて計 6 本の研究発表が行われた。一見 するとコンラッド研究における伝統的な主題を扱いながらも、新しい切り 口から分析に取り組もうとする試みが目立ち、特に第2 セッションにおけ るTyphoon や Lord Jim における「沈黙」に注目する発表や、“Freya of the Seven Isles”の「オペラ的構造」に着目する発表には刺激を受けた。

1 日目のスケジュールの終わりには、POSK の一室 Conrad Room でのワ インレセプションがあり、その後、同じ建物内にある Lowiczanca Restaurant に移動して、他の参加者たちとディナーを楽しんだ。初参加ではあったが、 話題の絶えない和気藹々とした時間を過ごすことができた。

2 日目は、11 月の日本コンラッド協会第 3 回全国大会(於東京女子医科 大学)に招待発表者として登壇予定のRichard Ambrosini 氏の発表があった。 “The Lagoon”から The Nigger of the “Narcissus”を経て “Karain”に至るまで

1 日目デ ィナー 前 の Vin d’honneur に向か う参加 者たち 。会 場はPOSK のConrad Room で、部 屋の 中の書 棚 に は日 本 を 含 む 各 国の コ ン ラッ ド関連 文献が 並ぶ。

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学会報告(英国) 21 のConrad の語りの技法の発展を読み解く試みで、その先にある“Youth”の Marlow-narrative へと繋がっていく道筋が精緻に示されていた。第 3 セッシ ョンは “Spectral Conrad”と題されたパネルで、ポーランドの研究者たちが 目下取り組んでいるという共同プロジェクトの最新成果が披露された。 Conrad と “spectrality”をテーマとして、ポーランド文学におけるロマン主 義、あるいはモダニズム的伝統の線上にコンラッドを位置づけようとする 意欲的な研究であった。その後は、Peter Villiers 氏による Under Western Eyes をベースにした寸劇 “Betrayal” が上演され、協会メンバーが演じる登場人 物たちの巧みな台詞まわしを楽しんだ。この日の最後は、Robert Hampson 氏による講演で締めくくられた。The Secret Agent を border-crossing の物語 として読むことによって Conrad 自身のヨーロッパ観に内在する軋轢をあ ぶり出そうとする試みであった。この日は、Ambrosini 氏や Hampson 氏の ようなベテラン研究者たちが、長年の取り組みの中でしっかりと熟成させ てきた研究成果を披露しているのが印象に残った。

3 日目は会場をハイド・パークの傍らに位置する University Women’s Club の一室に移して行われた。“Constructing Identity”と題された第 1 セッショ ンでは日本コンラッド協会の前会長と前々会長が揃い踏みし、日本のコン ラッド研究が精力的に率いられていることを会場に示す形となった。岩清 水由美子氏からは、Victory の登場人物 Schomberg の男性性にまつわる論考 が、ケンブリッジ大学クレア・ホールに客員フェローとして滞在中の奥田 洋子氏からは Nostromo におけるアイデンティティー形成にまつわる論考 が提示され、いずれも活発な質疑応答へと結びついていった。その後はヒ 2 日 目 の ア フ タ ヌ ー ン テ ィ ー 後に行 われた 寸劇 “Betraya l”。 左 奥 で 寝 そ べ っ て い る の は Hald in を 演 じ る Hugh Epstein 氏。3 日間 にわ たって 大会運 営 に 忙 し く 走 り 回 っ て お ら れ た が、決して 疲れ て横に なって い るわけ ではな い。

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ースロー発の帰国便の時間を気にしながらの出席となったが、第2 セッシ ョンのAyse Deniz Temiz 氏による発表は Victory の Heyst の禁欲的な人生観 の背後に、ポーランド出身の哲学者Schopenhauer の影響を読み取るもので、 鋭い洞察と精緻な分析に基づく好論であった。また、Remy Arab-Fuentes 氏 による発表は、Almayer’s Folly や The Secret Agent における genealogy の非 直線性を考察したものであり、今回についてはテクスト分析に終始してい たものの、複雑な系譜を抱えるConrad 自身のバックグラウンドに今後どの ように踏み込んでいくのか、発展性が楽しみな研究であった。両名ともま だキャリアのスタート地点に立ったばかりの若手であるが、これからのコ ンラッド研究を牽引していく研究者として注目したい。 3 日間の会期を通して、若手からベテランに至るまで、それぞれの世代 の研究者たちが各々のなすべきことにしっかりと取り組んでいる姿を見る ことができ、コンラッド研究のまさに genealogy を感じさせてくれる素晴 らしい大会であった。 (いとう まさのり 関西学院大学 教授) 最終日 第1 発 表を務 めた 岩清水 氏。 発表す る奥 田氏。 会場 とな ってい るの はUniversity Women’s Club の 一室 。

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